(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20241111BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2022562989
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 IB2021000278
(87)【国際公開番号】W WO2021214551
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】202041016885
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】518105024
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクス フランス エスアーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】514095099
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ インディア プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TE CONNECTIVITY INDIA PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ルイヤール,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ダエア,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エムディー,サンダレシャン
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-006800(JP,A)
【文献】実開平03-121661(JP,U)
【文献】実開平05-084032(JP,U)
【文献】実開昭57-009172(JP,U)
【文献】特開2010-244892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを成端するための圧着端子であって、
前記圧着端子は、
基部(9)、ならびに前記基部(9)からそれぞれ延びて互いに反対側に位置する第1の側壁(11a)および第2の側壁(11b)を備える圧着セグメント(5)であって、長手軸(A)に沿ってワイヤを配置するように適合されている第1の面(S1)、および前記第1の面(S1)と反対向きの第2の面(S2)を備える圧着セグメント(5)を備えており、
前記第1の側壁(11a)が、前記第2の面(S2)における少なくとも1つのセレーションを備え、前記第2の側壁(11b)が、前記第2の面(S2)における少なくとも2つのセレーションを備え、
前記圧着端子の圧着状態において前記第1の側壁(11a)の前記少なくとも1つのセレーション(13a、130a)の一部分(14a)が前記長手軸(A)に沿って前記第2の側壁(11b)の前記少なくとも2つのセレーション(13b、130b)の一部分(14b)の間に配置されるように、前記第1の側壁(11a)の前記少なくとも1つのセレーション(13a、130a)が、前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に沿って前記第2の側壁(11b)の前記少なくとも2つのセレーション(13b、130b)からずれているとともに、
前記第1の側壁(11a)の前記第1の面(S1)に
形成される、前記第1の側壁(11a)の前記第2の面(S2)における前記少なくとも1つのセレーションに対応する形状のセレーション
は、前記ワイヤに圧着され、かつ、
前記第2の側壁(11b)の前記第1の面(S1)に
形成される、前記第2の側壁(11b)の前記第2の面(S2)における前記少なくとも2つのセレーションに対応する形状のセレーション
は、前記ワイヤに圧着され、
各側壁(11a、11b)において、前記セレーション(13a、13b、130)は、前記側壁(11a、11b)の自由縁部(17a、17b、18a、18b、19a、19b)から離隔しており、
前記セレーション(13a、13b)は、前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に垂直に配置されている、
ことを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記第1の側壁(11a)の前記少なくとも1つのセレーション(13a)の幅(W)は、前記圧着状態において前記セレーション(13a、13b)が形状嵌合接続を実現するように、前記第2の側壁(11b)の2つの連続するセレーション(13b)の間の距離(d)に対応する、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記セレーション(13a、13b、130)の各々が、矩形の断面形状を有する、
請求項1
または2に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記第1の側壁(11a)の少なくとも1つのセレーション(130a)および前記第2の側壁(11b)のセレーション(130b)が、第3のセレーション(130c)により互いに接続されている、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の圧着端子。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の圧着端子(1)およびワイヤ(4)を備え、
前記ワイヤ(4)は、前記圧着状態において前記圧着端子(1)に囲まれている、
電気コネクタ。
【請求項6】
請求項
5に記載の電気コネクタを作製するための方法であって、
前記電気コネクタ(2)は、ワイヤ(4)と、基部(9)、ならびに前記基部(9)からそれぞれ延びて互いに反対側に位置する第1の側壁(11a)および第2の側壁(11b)を備える圧着セグメント(5)を備える圧着端子(1)とを備え、
前記圧着セグメント(5)は、長手軸(A)に沿ってワイヤを配置するために適合されている第1の面(S1)、および前記第1の面(S1)と反対向きの第2の面(S2)を備え、
前記第1の側壁(11a)は、前記第2の面(S2)における少なくとも1つのセレーション
と、
前記第1の面(S1)に形成される、前記第2の面(S2)における前記少なくとも1つのセレーションに対応する形状のセレーションと、を備え、
前記第2の側壁(11b)は、前記第2の面(S2)における少なくとも2つのセレーション
と、
前記第1の面(S1)に形成される、前記第2の面(S2)における前記少なくとも2つのセレーションに対応する形状のセレーションと、を備え、
前記セレーション(13a、13b)は、前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に垂直に配置されており、
前記方法は、
a)前記ワイヤ(4)を前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に沿って前記第1の面(S1)に配置するステップと、
b)前記圧着端子(1)の前記側壁(11a、11b)を前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に向かって折り曲げるステップと、
c)前記第1の側壁(11a)の前記少なくとも1つのセレーション(13a)の一部分(14a)を前記長手軸(A)に沿って前記第2の側壁(11b)の前記少なくとも2つのセレーション(13b)の一部分(14b)の間に配置することにより、前記圧着セグメント(5)の前記長手軸(A)に沿った前記第1の側壁(11a)の前記セレーション(13a、130a)と前記第2の側壁(11b)の前記セレーション(13b、130b)との間の形状嵌合接続を実現するステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを成端するための圧着端子、および圧着端子を備える電気コネクタに関する。本発明はさらに、電気コネクタを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車産業におけるコネクタに、圧着端子が用いられる場合がある。従来技術において知られている圧着端子には、その内面、すなわち電線を受けることが見込まれる面に、セレーション(serration)が設けられる場合がある。これらのセレーションは、ワイヤの表面に食い込ませることで、酸化物層の存在を排除し、それによりワイヤとそのような圧着端子との間の電気コンタクトを向上させるために用いられる。
【0003】
圧着端子はまた、引き抜き力に対する一定レベルの抵抗力を圧着ワイヤに提供する。引き抜き力は、圧着端子から圧着ワイヤを引き抜くために必要な力である。
【0004】
しかしながら、予期しない強い負荷を受ける特定の条件下において、既知の圧着端子は、ワイヤが圧着端子内で摺動することで電気的接触部に損傷を及ぼすことを防止するための十分な引張強度を提供しない場合がある。
【0005】
これは、そのような圧着端子を備える電気コネクタの寿命に悪影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことから、本発明の目的は、圧着の機械的強度および電気的接触を向上させた圧着端子を提供することである。さらなる目的は、そのような圧着端子を有する電気コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決される。
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載のワイヤを成端するための圧着端子により実現される。
【0009】
本発明の圧着端子は圧着セグメントを備えており、圧着セグメントは、基部と、基部からそれぞれ延びて互いに反対側に位置する第1の側壁および第2の側壁を備える。圧着セグメントは、長手軸に沿ってワイヤを配置するように適合されている第1の面、および第1の面と反対向きの第2の面を備える。第1の側壁は、第2の面における少なくとも1つのセレーションを備え、第2の側壁は、第2の面における少なくとも2つのセレーションを備え、第1の側壁の少なくとも1つのセレーションは、圧着端子の圧着状態において第1の側壁の少なくとも1つのセレーションの一部分が上記長手軸に沿って第2の側壁の少なくとも2つのセレーションの一部分の間に配置されるように、圧着セグメントの長手軸に沿って第2の側壁の少なくとも2つのセレーションからずれている。
【0010】
圧着セグメントの第2の面にセレーションを設けることにより、圧着セグメントをより構造的に強くすることができる。それにより、第2の面、すなわち圧着セグメントの外面におけるセレーションの存在により、圧着端子の構造パラメータを向上させることが可能となる。
【0011】
また、引き抜き力に応じた変形に対する圧着端子の抵抗力を増大させることができるため、圧着端子をより高剛性にすることができる。
【0012】
したがって、圧着状態におけるセレーションの互いに対する位置により、圧着セグメントの長手軸に平行な方向において印加される引き抜き力に対する抵抗力などの圧着端子の機械的挙動を向上させることが可能となる。
【0013】
結果として、圧着端子とワイヤとの間の電気的接触、およびそれにより電気的安定性を向上させることができる。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0015】
様々な有利な実施形態に従って、圧着端子をさらに改善することができる。
【0016】
一実施形態によれば、第1の側壁の少なくとも1つのセレーションの幅は、圧着状態においてセレーションが形状嵌合接続(form-fit connection)を実現するように、第2の側壁の2つの連続するセレーションの間の距離に対応してよい。
【0017】
圧着状態における形状嵌合接続により、第1の側壁のセレーションを、上記長手軸に沿って第2の側壁のセレーションと噛み合わせることができる。低速曲げ試験に対する本発明の圧着端子の性能を向上させることができる。
【0018】
一実施形態によれば、セレーションは、圧着セグメントの長手軸に垂直に配置されてよい。
【0019】
ゆえに、引き抜き力が各セレーションの表面に垂直に生じ、これにより圧縮応力およびせん断応力が生じる。それにより、圧着セグメントの長手軸に平行な方向に印加される引き抜き力に対する圧着端子の抵抗力を増大させることができる。
【0020】
一実施形態によれば、セレーションの各々が、矩形の断面形状を有してよい。
【0021】
それにより、圧着状態において、圧着セグメントの長手軸に平行な方向に印加される引き抜き力に対する抵抗力を、平面どうしの接触によりさらに向上させることができる。
【0022】
一実施形態によれば、第1の側壁の少なくとも1つのセレーションおよび第2の側壁のセレーションが、第3のセレーションにより互いに接続されてよい。
【0023】
ゆえに、セレーションは、第1の側壁から基部を通って反対側の(第2の)側壁まで連続的に設けられてよい。したがって、圧着セグメントをさらに構造的に強くかつ高剛性にすることができる。
【0024】
加えて、そのようなセレーションを得るための製造方法を簡略化することができる。
【0025】
一実施形態によれば、各側壁において、セレーションは、側壁の自由縁部から離隔していてよい。
【0026】
ゆえに、圧着セグメントの剛性を、圧着端子の圧着を容易にするようなものとすることができる。それにより、圧着セグメントの剛性を、圧着されることが見込まれるワイヤに応じて有利に適合させることができる。
【0027】
本発明の目的はまた、上述の実施形態のうちのいずれか1つに係る圧着端子およびワイヤを備える電気コネクタにより実現され、ワイヤは、圧着状態において圧着端子に囲まれる。
【0028】
本発明の圧着端子により、圧着セグメントとワイヤとの間の電気的接触、およびそれにより電気コネクタの電気的安定性を向上させることができる。さらに、セレーションの噛み合いにより、圧着領域における電気コネクタの堅牢性を高めることができる。
【0029】
本発明の目的はさらに、上述の電気コネクタを作製するための請求項8に記載の方法により実現される。上記電気コネクタは、ワイヤと、圧着端子とを備えている。圧着端子は、基部と、基部からそれぞれ延びて互いに反対側に位置する第1の側壁および第2の側壁とを備える圧着セグメントを備える。圧着セグメントは、長手軸に沿ってワイヤを配置するために適合されている第1の面、および第1の面と反対向きの第2の面を備え、第1の側壁は、第2の面における少なくとも1つのセレーションを備え、第2の側壁は、第2の面における少なくとも2つのセレーションを備える。
本方法は、a)ワイヤを圧着セグメントの長手軸に沿って第1の面に配置するステップと、b)圧着端子の側壁を圧着セグメントの長手軸に向かって折り曲げるステップと、c)第1の側壁の少なくとも1つのセレーションの一部分を上記長手軸に沿って第2の側壁の少なくとも2つのセレーションの一部分の間に配置することにより、圧着セグメントの長手軸に沿った第1の側壁のセレーションと第2の側壁のセレーションとの間の形状嵌合接続を実現するステップとを備える。
【0030】
本発明の方法により、圧着セグメントとワイヤとの間の電気的接触が向上した電気コネクタが得られる。結果として、電気コネクタの電気的安定性が向上する。さらに、セレーションの形状嵌合接続により、圧着領域における得られる電気コネクタの堅牢性および引き抜き力に対する抵抗力が高まる。
【0031】
さらなる特徴および利点について、図面を参照して説明する。本説明において、本発明の好適な実施形態を示すことを意図した添付の図面が参照される。そのような実施形態は、本発明の全範囲を表すものではないことを理解されたい。
【0032】
添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示すために、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する。これらの図面は、本説明とともに、本発明の原理を説明する働きを果たす。図面は、単に本発明がどのように実施および使用され得るかの好適かつ代替的な例を示すことを目的としたものであり、示され説明されている実施形態のみに本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個々にまたは種々の組み合わせで、本発明に係る解決策を形成し得る。よって、以下で説明されている実施形態は、単独またはそれらの任意の組み合わせのいずれとみなされてもよい。さらなる特徴および利点が、添付の図面に示すような本発明の様々な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。図面において、同様の参照符号は、同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】非圧着状態における、すなわち圧着端子を折り曲げて圧着し始める前の、本発明に係る圧着端子の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】部分的に折り曲げられた状態における第1の実施形態に係る圧着端子を示す図である。
【
図3】圧着状態における本発明に係る電気コネクタを示す図である。
【
図4】
図3に示す電気コネクタの模式的な切断図である。
【
図5】非圧着状態における、すなわち圧着端子を折り曲げて圧着し始める前の、本発明に係る圧着端子の第2の実施形態を示す図である。
【
図6】電気コネクタを作製するための方法に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【0035】
図1は、ワイヤを成端するための本発明の圧着端子の第1の実施形態に係る圧着端子1の平面図である。圧着端子1は、
図1において平坦構成で示されている。
【0036】
圧着端子1は、金属薄板から作製される。
【0037】
圧着端子1は、電気コンタクト部分3およびそれに隣接する圧着セグメント5を備える。圧着セグメント5の他端部において、圧着端子1は、部分7における電気ピンまたはソケットのコンタクト要素を備える。
【0038】
電気コンタクト部分3は、相手側コンタクトを受けるように構成される。電気コンタクト部分3は、任意の特定の相手側コンタクトを収容するように任意の形状であってよい。よって、圧着端子1は、様々な形状のオスまたはメスのコンタクトのいずれかに適合する。
【0039】
圧着セグメント5は、圧着セグメント5の長手軸Aに沿って、芯線(
図1では不図示)、すなわちワイヤの剥き出しの導体を受けるように構成される。
【0040】
圧着セグメント5は、基部9、ならびに基部9からそれぞれ延びて互いに反対側に位置する第1の側壁11aおよび第2の側壁11bを備える。第1の側壁11aおよび第2の側壁11bは、長手軸Aに垂直な方向に沿って基部9から延びる。
【0041】
第1の側壁11aおよび第2の側壁11bは、圧着セグメント5に配置されるワイヤを圧着するように、長手軸Aに向かって折り曲げられるように構成される。そのような圧着端子1を備える電気コネクタを作製するための方法については後述する。
【0042】
図1は、圧着セグメント5の第1の面S1のみを示す。圧着端子1の圧着状態において、第1の面S1は、圧着端子1の内面、すなわち圧着ワイヤと接触する面に対応する。
【0043】
部分的に折り曲げられた状態の圧着端子1を示す
図2の図は、第1の面S1の反対側の圧着セグメント5の第2の面S2を示すことを可能とする。圧着端子1の圧着状態において、第2の面S2は、圧着端子1の外面、すなわち圧着ワイヤと接触しない面に対応する。
【0044】
以下、
図1および
図2の両方を参照して、圧着端子1について説明する。
【0045】
本発明の圧着端子1には、第1の面S1および第2の面S2においてセレーション13a、13bが各側壁11a、11bに設けられる。ゆえに、
図2において見ることができるように、圧着端子1の各側壁11a、11bはそれぞれ、その面S1、S2の両方にセレーション13a、13bを備える。第1の面S1における突出するセレーションは、反対側の第2の面S2における凹部に対応する。ゆえに、セレーション13a、13bは、面S1、S2の一方における突出部および反対側の面S1、S2における凹部を形成する。これは、セレーション13a、13bが圧着セグメント5を型押し加工することにより製造され得るためである。この構造面については、
図4を参照してさらに説明する。
本発明は、第1の側壁11aが第2の面S2における少なくとも1つのセレーション13aを備え、第2の側壁11bが第2の面S2における少なくとも2つのセレーション13bを備えることにより実現され得る。
図1および
図2に示す第1の実施形態において、各側壁11a、11bは、複数のセレーション13a、13bを備える。
【0046】
各セレーション13a、13bは、圧着セグメント5の長手軸Aに実質的に垂直な方向に沿って長手方向に延びる。よって、
図1に示すように、各セレーション13a、13bは、軸Yに平行な方向に沿って延びる。
【0047】
第1の側壁11aの複数のセレーション13aは、互いに平行である。第2の側壁11bの複数のセレーション13bについても同様である。
【0048】
セレーション13a、13bは、寸法が同じである。セレーション13a、13bの寸法は、圧着されるワイヤに応じて適合されてよい。
【0049】
しかしながら、第1の側壁11aのセレーション13aは、圧着セグメント5の長手軸Aに沿って第2の側壁11bのセレーション13bからずれている。ゆえに、圧着端子1の圧着状態において、
図3に示すように、第1の側壁11aのセレーション13aは、長手軸Aに沿って第2の側壁11bのセレーション13bと噛み合うように構成される。
【0050】
図1において見ることができるように、第1の側壁11aの第1のセレーション15aは、長手軸Aと直角を成さない角度α(アルファの記号)により示すように、第2の側壁11bの第1の対応するセレーション15bと位置合わせされない。
【0051】
第1の側壁11aのセレーション13aは、少なくともセレーション13a、13bの幅Wであるオフセット量だけ第2の側壁11bのセレーション13bからずれている。
図1において見ることができるように、第1の側壁11aのセレーション13aの幅Wは、第2の側壁11bの2つの連続するセレーション13bの間の距離dに対応する。したがって、圧着状態において、セレーション13a、13bは、形状嵌合接続を実現する。ゆえに、圧着状態においてセレーション13a、13bが噛み合うこと(interlocking)が可能となる。
【0052】
図1において見ることができるように、各側壁11a、11bにおいて、セレーション13a、13bは、側壁11a、11bの自由縁部17a~b、18a~b、19a~bから離隔している。ゆえに、圧着セグメント5の剛性を、圧着端子1の圧着を容易にするようなものとすることができる。それにより、圧着セグメント5の剛性を、圧着されることが見込まれるワイヤに応じて有利に適合させることができる。変形例においては、セレーション13a、13bが、長手軸Aに平行な方向に沿って延びる縁部に対応する自由縁部18a、18bまで延ばされる。
【0053】
図3は、圧着端子1およびワイヤ4を備える圧着状態における電気コネクタ2を示す。既に説明し、
図1および
図2に示すものと同じ参照符号を有する要素については、改めて詳細に説明はしないが、上記の説明への参照は行われる。
【0054】
圧着状態において、第1の側壁11aのセレーション13aの一部分14aが、上記長手軸Aに沿って第2の側壁11bのセレーション13bの一部分14bの間に配置される。
図3における点線領域19により示すように、セレーション13a、13bの一部分14a、14bは、圧着状態において形状嵌合接続を実現する。
【0055】
一部分14a、14bは、セレーション13a、13bの端部に対応し得る。
【0056】
形状嵌合接続により、セレーション13a、13bを機械的ロックによって接合することが可能となる。それにより、圧着状態においてセレーション13a、13bが噛み合う。
【0057】
図3はまた、各セレーション13a、13bが矩形の断面形状を有することを示す。ゆえに、引き抜き力が長手軸Aに沿って、すなわち各セレーション13a、13bの平面に実質的に垂直にワイヤ4に生じると、圧縮応力およびせん断応力が有利に生じる。
【0058】
変形例において、各セレーション13a、13bは、実質的に台形の断面形状を有する。
【0059】
圧着セグメント5の第1の面S1および第2の面S2にセレーション13a、13bを設けることにより、圧着セグメント5をより構造的に強くかつ高剛性にすることができる。第2の面S2、すなわち圧着セグメント5の外面におけるセレーション13a、13bの存在により、圧着端子1の構造パラメータを向上させることが可能となる。
【0060】
第1の面S1は、
図4において視認可能である。
図4は、
図3に示す電気コネクタ2の模式的な切断図を示す。既に説明し、
図1~
図3に示すものと同じ参照符号を有する要素については、改めて詳細に説明はしないが、上記の説明への参照は行われる。
【0061】
図4は、各セレーション13a、13bが、反対側の第2の面S2における突出部22aに対応する第1の面S1における凹部21aを備えることを示すことを可能とする。これは、セレーション13a、13bが圧着セグメント5を型押し加工することにより製造され得るためである。
【0062】
圧着状態におけるセレーション13a、13bの噛み合いにより、圧着セグメント5の長手軸Aに平行な方向において印加される引き抜き力Fに対する抵抗力などの圧着端子1の機械的挙動を向上させることが可能となる。
【0063】
よって、圧着端子1の両方の面S1、S2におけるセレーション13a、13bにより、圧着状態の圧着端子1におけるワイヤ4の圧縮を強め、それによりワイヤ4と圧着端子1との間の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0064】
結果として、圧着端子1とワイヤ4との間の電気的接触、およびそれにより電気的安定性を向上させることができる。ゆえに、電気コネクタ2の機械的特性および電気的特性を高めることができる。
【0065】
圧着セグメント5の第1の面S1、すなわち内面において、セレーション13a、13bを用いてワイヤ2の表面に食い込ませることで、存在し得る非導電性の表面酸化物層を除去することができる。第1の面S1におけるセレーション13a、13bにより、そのような酸化物層が存在する場合であっても、ワイヤ2と圧着セグメント5との間で確実な電気的接触が実現されることを保証することが可能となる。
【0066】
図5は、非圧着状態における、すなわち圧着端子100を折り曲げて圧着し始める前の、本発明に係る圧着端子100の第2の実施形態を示す。既に説明し、
図1および
図2に示すものと同じ参照符号を有する要素については、改めて詳細に説明はしないが、上記の説明への参照は行われる。
【0067】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の第1の側壁11aのセレーション13aおよび第2の側壁11bの対応するセレーション13bが、単一のセレーション130によって置き換えられる。第2の実施形態において、
図5において見ることができるように、各セレーション130は、第1の側壁11aから基部9および第2の側壁11bを通して連続的に延びる。ゆえに、第1の側壁11aのセレーション130の第1の部分130aは、圧着セグメント5の基部9のセレーション130の第3の部分130cにより、第2の側壁11bのセレーション130の第2の部分130bに接続される。
【0068】
その結果、圧着セグメント5をさらに構造的に強くかつ高剛性にすることができる。加えて、そのようなセレーションを得るための製造方法を簡略化することができる。
【0069】
図5において見ることができるように、セレーション130は、圧着セグメント5の長手軸Aに垂直に配置される直線により形成されない。代わりに、セレーション130は、第1の側壁11aにおけるセレーション130の一部分130aが第2の側壁11bにおける同じセレーション130の一部分130bに対して長手軸Aに沿ってずれるように、わずかに「Z字形状」である。第1の側壁11aにおけるセレーション130の一部分130aの、第2の側壁11bにおける同じセレーション130の一部分130bに対する位置ずれは、長手軸Aと直角を成さない角度α(アルファの記号)により示されている。
【0070】
図6は、上述のような電気コネクタ2を作製するための方法に関するブロック図を示す。本方法は、完全に自動化された方式で実現することができる。
【0071】
第1のステップ「a」において、ワイヤ4が、圧着セグメント5の長手軸Aに沿って第1の面S1に配置される。ワイヤとは、ここでは芯線、すなわちワイヤの剥き出しの導体を指すことを理解されたい。
【0072】
次のステップ「b」において、圧着端子1の、互いに反対側に位置する側壁11a、11bが、圧着セグメント5の長手軸Aに向かって折り曲げられる。
【0073】
次のステップ「c」において、第1の側壁11aのセレーション13aの一部分14aが、上記長手軸Aに沿って第2の側壁11bのセレーションの一部分14bの間に配置される。それにより、第1の側壁11aのセレーション13aは、圧着セグメント5の長手軸Aに沿って第2の側壁11bのセレーション13bと形状嵌合接続を形成する。形状嵌合接続により、セレーション13a、13bを機械的ロックによって接合することが可能となる。それにより、圧着状態においてセレーション13a、13bが噛み合う。
【0074】
特定の例に関して実施形態を説明したが、本発明が限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて開示の実施形態に対する多数の変更が行われてよい。よって、様々な実施形態および例は、開示の特定の形態に限定されることを意図したものではない。むしろそれらは、特許請求の範囲内に収まる変形例および代替例を含み、個々の特徴は、本発明に係るさらなる実施形態または例を得るために互いに自由に組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0075】
1 第1の実施形態に係る圧着端子
2 電気コネクタ
3 電気コンタクト部分
4 ワイヤ
5 圧着セグメント
7 電気ピンまたはソケットのコンタクト要素部分
9 基部
11a 側壁
11b 反対側の側壁
13a セレーション
13b セレーション
14a セレーションの一部分
14b セレーションの一部分
15a セレーション
15b セレーション
17a、17b 自由縁部
18a、18b 自由縁部
19a、19b 自由縁部
21a 凹部
21b 突出部
100 第2の実施形態に係る圧着端子
130 セレーション
130a セレーション130の第1の部分
130b セレーション130の第2の部分
130c セレーション130の第3の部分
A 長手軸
α(アルファ) 角度
d 2つのセレーションの間の距離
F 力
S1 第1の面
S2 第2の面
W セレーションの幅
X、Y カルテシアン座標系