IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -変圧器制御システム 図1
  • -変圧器制御システム 図2
  • -変圧器制御システム 図3
  • -変圧器制御システム 図4
  • -変圧器制御システム 図5
  • -変圧器制御システム 図6
  • -変圧器制御システム 図7
  • -変圧器制御システム 図8
  • -変圧器制御システム 図9
  • -変圧器制御システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】変圧器制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20241111BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022566518
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044613
(87)【国際公開番号】W WO2022118363
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山守 渉
(72)【発明者】
【氏名】浜松 浩一
(72)【発明者】
【氏名】金田 啓一
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆文
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-336898(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150461(WO,A1)
【文献】特開2017-034752(JP,A)
【文献】特開2012-165636(JP,A)
【文献】特開平07-169624(JP,A)
【文献】特開2012-060837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に関する系統情報を検出する検出部と、
前記検出部からネットワークを介して前記系統情報を収集し、収集した前記系統情報に基づいて前記電力系統内の母線の電圧である母線電圧の計測と前記電力系統内の各変圧器の運用状態の監視を行う制御部と、
前記母線に接続される変圧器のタップの切り換えを行う切換部と、
を備え、
前記制御部は、計測した前記母線電圧が所定範囲内になるように、前記ネットワークを介して前記切換部に前記タップの切り換えを指示し、
前記制御部は、前記ネットワークを介して前記電力系統内の複数の変圧器の運転を集中的に管理し、前記ネットワークを介して前記複数の変圧器の運転を並列運転と単独運転とのいずれかに切り替え、
現用系の前記制御部と待機系の前記制御部とのうち、現用系の前記制御部は、前記各変圧器の運用状態を常時監視して前記母線電圧が所定範囲内になるように前記ネットワークを介して前記切換部に前記タップの自動切り換えを指示し、待機系の前記制御部は、操作者による手動操作によって上位から送信された操作信号を受信した場合に前記操作信号に基づいて前記ネットワークを介して前記切換部に前記タップの手動切り換えを指示する、
変圧器制御システム。
【請求項2】
電力系統に関する系統情報を検出する検出部と、
前記検出部からネットワークを介して前記系統情報を収集し、収集した前記系統情報に基づいて前記電力系統内の母線の電圧である母線電圧の計測と前記電力系統内の各変圧器の運用状態の監視を行う制御部と、
前記母線に接続される変圧器のタップの切り換えを行う切換部と、
前記ネットワークに接続され、前記制御部との間で前記電力系統に対する機能を分担する機能分担部と、
備え、
前記制御部は、計測した前記母線電圧が所定範囲内になるように、前記ネットワークを介して前記切換部に前記タップの切り換えを指示し、
前記機能分担部は、前記制御部に異常が発生した場合には、前記タップの切り換えを制御する機能を前記制御部から引き継ぐ、
圧器制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ネットワークを介して前記電力系統内の複数の変圧器の運転を集中的に管理し、前記ネットワークを介して前記複数の変圧器の運転を並列運転と単独運転とのいずれかに切り替える、
請求項2に記載の変圧器制御システム。
【請求項4】
用系と待機系のそれぞれの前記制御部は、前記ネットワークを介して前記検出部から前記系統情報を収集する、
請求項1に記載の変圧器制御システム。
【請求項5】
それぞれ現用系と待機系の二系統の前記検出部及び前記切換部を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の変圧器制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記変圧器の運転が単独運転である場合において前記系統情報に基づいて前記変圧器の並列運転の可否を判定し、並列運転が不可能であると判定した場合には前記単独運転から並列運転への切り替えを禁止する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の変圧器制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記系統情報に基づいて並列運転している前記変圧器の数である並列運転数を管理し、前記並列運転数が所定値を超えた場合には、単独運転している前記変圧器の並列運転への移行を禁止する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の変圧器制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記系統情報に基づいて前記変圧器の継続運転が困難であると判定した場合には当該変圧器の運転の停止を前記ネットワーク経由で行い、前記系統情報に基づいて並列運転中の前記変圧器の並列運転が困難であると判定した場合には並列運転が困難であると判定された前記変圧器を前記ネットワーク経由で前記変圧器の並列運転から切り離す
請求項1から7のいずれか一項に記載の変圧器制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変圧器制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変電所構内に配置される変圧器ごとに制御装置が配置されており、各制御装置は、各変圧器とメタルケーブルで接続されている。そして、各制御装置は、変電所内の電力系統の電気量演算を行い、各変圧器のタップの切り換えを、メタルケーブルを介して行うことで母線電圧の安定化を図っていた。
【0003】
近年の情報通信技術およびデジタル制御技術の進歩に伴って、各装置間のネットワーク化が進んでいる。例えば、変電所向けの変圧器制御システムでは、国際標準規格IEC61850の制定に伴い、各装置間の接続がメタルケーブルから通信ケーブルへの技術の転換が提案され、変電所構内のネットワーク化が進みつつある。
【0004】
しかしながら、ネットワークを用いた電力系統内の変圧器の制御に関しては未だ提案されていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-164731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ネットワークを用いて電力系統内の母線電圧の安定化を図ることができる変圧器制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の変圧器制御システムは、検出部と、制御部と、切換部とを持つ。検出部は、電力系統に関する系統情報を検出する。制御部は、前記検出部からネットワークを介して前記系統情報を収集し、収集した前記系統情報に基づいて前記電力系統内の母線の電圧である母線電圧の計測と前記電力系統内の各変圧器の運用状態の監視を行う。切換部は、前記母線に接続される変圧器のタップの切り換えを行う。前記制御部は、計測した前記母線電圧が所定範囲内になるように、前記ネットワークを介して前記切換部に前記タップの切り換えを指示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の変圧器制御システムの構成図。
図2】第1の実施形態の変圧器をセンシング対象とするセンシング端末の構成図。
図3】第1の実施形態の開閉装置をセンシング対象とするセンシング端末の構成図。
図4】第1の実施形態の計測装置をセンシング対象とするセンシング端末の構成図。
図5】第1の実施形態のIEDの構成例を示す図。
図6】第1の実施形態の電力系統の一例を示す図。
図7】第1の実施形態の変圧器制御システムの制御方法を示す図。
図8】第1の実施形態における単独運転から並列運転への切り替えの制御方法を示す図。
図9】第2の実施形態の変圧器制御システムの構成図。
図10】第1の実施形態の変圧器制御システムの変形例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の変圧器制御システムを、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の変圧器制御システム1の構成例を示す図である。変圧器制御システム1は、変電所などの電力設備内の電力系統Eに含まれる各変圧器120のタップの切り換えを、ネットワークNW1を介して制御することで電力系統Eを安定化させる。
【0011】
電力系統Eは、母線110、変圧器120、開閉装置130、計測装置140などの各種設備を備える。開閉装置130は、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear)や遮断器、断路器などである。変圧器120は、変圧比を切り替えるタップを備える。計測装置140は、例えば、計器用変圧器(Voltage Transformer)や計器用変流器(Current Transformer)である。なお、電力系統Eでは、二つ以上の変圧器120を有している場合が多い。
【0012】
図1に示す変圧器制御システム1は、例えば、複数のセンシング端末200と、2台のIED(Intelligent Electronic Device)300と、TC(遠方監視制御装置)400と、HMI(human machine interface)500と、を備える。
【0013】
複数のセンシング端末200は、ネットワークNW1に接続される。例えば、複数のセンシング端末200は、プロセスレベルに配置される。例えば、ネットワークNW1は、例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を含む。例えば、ネットワークNW1は、国際標準規格IEC61850で規定されているプロセスバスである。複数のセンシング端末200は、各種設備を介して電力系統Eの系統情報を検出する。複数のセンシング端末200は、検出した系統情報をネットワークNW1を介して各IED300に送信する。例えば、複数のセンシング端末200から各IED300へネットワークNW1を介して送信される系統情報は、デジタルデータである。例えば、センシング端末200は、マージングユニット(Merging Unit)の機能を備える。
【0014】
系統情報は、電力系統Eの電気量、電力系統Eの電力の需給状態、電力系統Eの接続状態、電力系統E内の変圧器120の運用状態などの情報を含む。電力系統Eの電気量は、電力系統Eにおける各母線110の電圧レベルや電流レベル、位相角などに関する情報である。電力の需給状態とは、電力系統Eの負荷の情報や電力系統Eに接続される発電機の発電量などの情報を含む。電力系統Eの接続状態とは、電力系統Eに含まれる遮断器や断路器の接続情報を含む。変圧器120の運用状態は、変圧器120が停止しているのか又は作動しているのかを示す情報や、変圧器120のタップ電圧、変圧器120において現在選択されているタップの情報(以下、「タップ値」という。)などを含む。なお、例えば、タップ値は、変圧比や巻線比などを示す情報であってもよい。
【0015】
例えば、センシング端末200は、電力系統E内の設備ごとに対応して設置される。センシング端末200は、対応する設備をセンシング対象として、そのセンシング対象から情報を受信してもよい。また、センシング端末200は、ネットワークNW1を介してIED300から得られる指令に基づいて、各開閉装置130の開閉制御、各変圧器120のタップの切り換え、各変圧器120の運用の開始や停止などを制御することができる。以下の説明において、センシング対象が変圧器120であるセンシング端末200を「センシング端末200LR」と称する。また、センシング対象が開閉装置130であるセンシング端末200を「センシング端末200S」と称する。また、センシング対象が計測装置140であるセンシング端末200を「センシング端末200M」と称する。
【0016】
2台のIED300のうち、一方のIED300が現用系であり、他方のIEDが待機系である。以下の説明では、現用系のIED300を「IED300-1」と称し、待機系のIED300を「IED300-2」と称する。ただし、第1の実施形態の変圧器制御システム1は、現用系のIED300-1を備えていればよく、待機系のIED300-2を備えなくてもよい。IED300-1とIED300-2とは、同一の構成を有しており、それぞれを区別しない場合には単にIED300を称する。なお、IED300は、「制御部」の一例である。現用系と待機系のそれぞれのIED300は、ネットワークNW1を介して系統情報を収集する。
【0017】
IED300は、ネットワークNW1に接続される。例えば、IED300は、ベイレベルに配置される。IED300は、複数のセンシング端末200からネットワークNW1を介して系統情報を収集する。IED300は、系統情報に基づいて電力系統Eの保護や監視に係る処理を実行する。IED300は、収集した系統情報に基づいて電力系統E内の母線110の電圧である母線電圧を計測する。また、IED300は、系統情報に基づいて電力系統E内の全ての変圧器120の制御及び運用状態の監視を行う。例えば、IED300は、計測した母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1及びセンシング端末200LRを介して電力系統E内の単独運転中の変圧器のタップの切換制御、あるいは、並列運転中の複数の変圧器のタップの切換を一括して制御する第1の機能を実行する。
【0018】
IED300は、ネットワークNW2を介してTC400に接続される。IED300は、ネットワークNW2を介して系統情報をTC400に送信してもよい。また、IED300は、ネットワークNW2を介してTC400から情報を受信する。ネットワークNW2は、例えば、インターネットやLAN、WAN等を含む。例えば、ネットワークNW2は、国際標準規格IEC61850で規定されているステーションバスである。
【0019】
TC400は、ネットワークNW2に接続される。また、TC400は、HMI500に接続される。例えば、TC400は、ステーションレベルに配置される。TC400は、HMI500とIED300との間の情報を中継する。なお、冗長化のために、現用系と待機系の2台のTC400がネットワークNW2に接続されてもよい。なお、HMI500は、TC400を介さずにネットワークNW2経由でIED300に接続されてもよい。
【0020】
HMI500は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。HMI500は、例えば、操作者からの操作を受け付け、その操作に応じた操作信号をTC400及びネットワークNW2を介してIED300に送信することができる。
【0021】
次に、第1の実施形態のセンシング端末200LRの構成例について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態のセンシング端末200LRの構成例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、センシング端末200LRは、例えば、検出部210と、通信部211と、切換部212と、を備える。
【0023】
検出部210は、電力系統Eの変圧器120からアナログデータを検出する。検出部210は、検出したアナログデータをデジタルデータに変換する。例えば、検出部210は、変圧器120の運用状態、変圧器120の2次側電圧、または、母線電圧、及びタップ値などの情報である変圧器情報を示すアナログデータを検出し、そのアナログデータをデジタルデータに変換する。
【0024】
通信部211は、ネットワークNW1を介してIED300と情報を送受する。通信部211は、検出部210で変換された変圧器情報のデジタルデータを、ネットワークNW1を介してIED300に一定周期ごとに、あるいは、状態変化時に送信する。また、通信部211は、IED300からネットワークNW1を介してタップの制御指令を受信すると、その制御指令を切換部212に送信する。
【0025】
切換部212は、変圧器120のタップを切り換える。具体的には、切換部212は、制御指令に基づいて変圧器120のタップを切り換えることで変圧器120の変圧比を変調整する。
【0026】
図3は、第1の実施形態のセンシング端末200Sの構成例を示す図である。図3に示すように、センシング端末200Sは、例えば、検出部220と、通信部221と、開閉制御部222と、を備える。
【0027】
検出部220は、開閉装置130の開閉状態を検出する。検出部220は、検出した開閉装置130の開閉状態をデジタルデータに変換する。
【0028】
通信部221は、ネットワークNW1を介してIED300と情報を送受する。通信部221は、検出部220で変換されたデジタルデータを、ネットワークNW1を介してIED300に一定周期ごとに、あるいは、状態変化時に送信する。また、通信部221は、IED300からネットワークNW1を介して開閉装置130を導通状態(オン状態)にする開閉(オン/オフ)制御指令を受信すると、その開閉装置130を導通状態にする開閉(オン/オフ)制御指令を開閉制御部222に送信する。通信部221は、IED300からネットワークNW1を介して開閉装置130を遮断状態(オフ状態)にする遮断指令を受信すると、その遮断指令を開閉制御部222に送信する。
【0029】
開閉制御部222は、開閉装置130を導通状態にする開閉(オン/オフ)制御指令を受信した場合には、センシング対象の開閉装置130を導通状態に切り替える。開閉制御部222は、遮断指令を受信した場合には、センシング対象の開閉装置130を遮断状態に切り替える。
【0030】
図4は、第1の実施形態のセンシング端末200Mの構成例を示すである。図4に示すように、センシング端末200Mは、例えば、検出部230と、通信部231と、を備える。
【0031】
検出部230は、計器用変成器や計測設備・装置である計測装置140の計測値を示すアナログデータを検出する。検出部230は、検出したアナログデータをデジタルデータに変換する。
【0032】
通信部231は、ネットワークNW1を介してIED300と情報を送受する。通信部231は、検出部230で変換されたデジタルデータを、ネットワークNW1を介してIED300に一定周期ごとに、あるいは、状態変化時に送信する。
【0033】
次に、第1の実施形態のIED300の構成例について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態のIED300の構成例を示す図である。
【0034】
図5に示すように、IED300は、通信部310と、通信部320と、情報処理部330と、を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0035】
通信部310は、ネットワークNW1に接続されており、ネットワークNW1を介して各センシング端末200と情報を送受する。
【0036】
通信部320は、ネットワークNW2に接続されており、ネットワークNW2及びTC400を介してHMI500と情報を送受する。
【0037】
情報処理部330は、通信部310から得られた各種デジタル信号である系統情報に基づいて電力系統Eに含まれる複数の変圧器120を集中制御する。情報処理部330は、系統情報に基づいて母線電圧を計測する。そして、情報処理部330は、母線電圧が第1設定値と第2設定値との範囲内になるように、ネットワークNW1を介してタップの切り換えを制御する。なお、第2設定値は、第1設定値よりも小さい値であってもよいし第1設定値と同一の値であってもよい。例えば、情報処理部330は、計測した母線電圧が第1設定値を超えた場合には、変圧器120の変圧比を下げる制御指令を、ネットワークNW1を介してセンシング端末200LRに送信することで、センシング端末200LRに変圧器120のタップの切り換えを指示して変圧器120の2次電圧、または、母線電圧を下げる。また、情報処理部330は、計測した母線電圧が第2設定値を下回った場合には、変圧器120の変圧比を上げる制御指令を、ネットワークNW1を介してセンシング端末200LRに送信することでセンシング端末200LRに変圧器120のタップの切り換えを指示してタップ電圧を上げる。
【0038】
情報処理部330は、ネットワークNW1を介して電力系統E内の複数の変圧器120の運転を集中的に管理し、系統情報に基づいて開閉装置130の開閉状態や各変圧器120の運転状態を確認することで、複数の変圧器120の運転が並列運転か単独運転かを判定する。例えば、情報処理部330は、ネットワークNW1を介して開閉装置130の開閉状態を遮断状態又は導通状態に制御したり、複数の変圧器120の運転を制御したりすることで、複数の変圧器120の運転を並列運転と単独運転とのいずれかに切り替える指示を行う。
【0039】
例えば、複数の変圧器120が並列運転している場合において、複数の変圧器120のいずれかに異常が発生した場合には、情報処理部330は、ネットワークNW1を介して複数の変圧器120を単独運転に切り替えさせる。情報処理部330は、複数の変圧器120を単独運転に切り替えた後に、異常がある変圧器120の運転を停止させてもよい。なお、例えば、情報処理部330は、ネットワークNW1を介して収集した系統情報に含まれる各変圧器120の運転状態に基づいて、各変圧器120が正常か否かを判定する。また、例えば、複数の変圧器120が単独運転している場合において、複数の変圧器120のいずれかに異常が発生した場合には、情報処理部330は、ネットワークNW1を介して異常が発生した単独運転中の変圧器120に接続されている負荷(例えば電力を供給する送電線等)を健全な他の変圧器120(以下、「健全変圧器」という。)の負荷として移すことができる。そして、情報処理部330は、複数の変圧器120を並列運転に切り替えた後に、異常がある変圧器120の運転を停止させてもよい。
【0040】
情報処理部330は、系統情報に基づいて単独運転中の変圧器120を並列運転に切り替えることができるか否かを判定し、並列運転への切り替えが不可能であると判定した場合には単独運転から並列運転への切り替えを禁止する。例えば、並列運転への切り替えが不可能である場合とは、IED300、センシング端末200やネットワークNW1などに異常が発生した場合や並列運転を行う変圧器120の数に制限がある場合等である。
【0041】
情報処理部330は、系統情報に基づいて並列運転中の変圧器120の数である並列運転数を管理し、その並列運転数が予め設定された所定値に到達した場合には、単独運転している変圧器120の並列運転への移行を禁止してもよい。これにより、情報処理部330は、予め設定された台数を超えて変圧器120が並列運転されることを防止することができる。また、情報処理部330は、系統情報に基づいて変圧器120の継続運転が困難であると判定した場合には当該変圧器120の運転の停止をネットワークNW1経由で行い、系統情報に基づいて変圧器120の並列運転が困難であると判定した場合には、負荷(例えば電力を共有する送電線等)を残りの健全変圧器に移した上で、並列運転が困難と判定された変圧器120を並列運転中の変圧器群から切り離して停止させる。また、情報処理部330は、系統情報に基づいて変圧器120の並列運転が困難であると判定した場合には、負荷を分散させた上で変圧器120の並列運転から単独(分離)運転への切替をネットワークNW1経由で行ってもよい。
変圧器120の継続運転が困難である場合とは、例えば、変圧器120に異常が発生した場合である。変圧器120の並列運転が困難である場合とは、並列運転中の変圧器120に異常が発生した場合である。
【0042】
情報処理部330は、変圧器120の運転が単独運転である場合において系統情報に基づいて変圧器120の並列運転の可否を判定し、並列運転が不可能であると判定した場合には単独運転から並列運転への切り替えを禁止してもよい。情報処理部330は、系統情報に基づいて並列運転している変圧器120の数である並列運転数を管理し、その並列運転数が所定値を超えた場合には、単独運転している変圧器120の並列運転への移行を禁止してもよい。
【0043】
以下において、図6に示す変電所構内にある電力系統Eに適用される変圧器制御システム1の構成例を説明する。
【0044】
図4に示す電力系統Eは、例えば、2つの母線110-1,110-2と、2台の変圧器120-1,120-2と、20台の開閉装置130-1~130-20と、4台の計測装置140-1~140-4と、を備える。
【0045】
母線110-1は、甲母線110-1aと乙母線110-1bとを含む二重母線方式の母線である。母線110-2は、甲母線110-2aと乙母線110-2bとを含む二重母線方式の母線である。例えば、母線110-1が275[kV]系統の母線であり、母線110-2が500[kV]系統の母線である。
【0046】
変圧器120-1と変圧器120-2とは、電圧階級の異なる母線110-1と母線110-2との間に接続される。変圧器120-1と変圧器120-2とは、互いに並列に接続が可能である。
【0047】
開閉装置130-1は、変圧器120-1と変圧器120-2との間の甲母線110-1aに直列に接続されている。開閉装置130-1が遮断状態である場合には、甲母線110-1aは2つの甲母線111,112に分離される。開閉装置130-2は、変圧器120-1と変圧器120-2との間の乙母線110-1bに直列に接続されている。開閉装置130-2が遮断状態である場合には、乙母線110-1bは、2つの乙母線113,114に分離される。なお、変圧器120-1及び変圧器120-2が並列運転である場合には、開閉装置130-1と開閉装置130-2とはともに導通状態である。変圧器120-1及び変圧器120-2がともに単独運転である場合には、例えば開閉装置130-1と開閉装置130-2とはともに遮断状態である。
【0048】
開閉装置130-3は、変圧器120-1と変圧器120-2との間の甲母線110-2aに直列に接続されている。開閉装置130-3は、甲母線110-2aを2つの甲母線115,116に分離可能である。開閉装置130-4は、変圧器120-1と変圧器120-2との間の乙母線110-2bに直列に接続されている。開閉装置130-4は、乙母線110-2bを2つの乙母線117,118に分離可能である。
【0049】
開閉装置130-5は、甲母線111と乙母線113との間に接続されている。開閉装置130-6は、甲母線112と乙母線114との間に接続されている。
【0050】
開閉装置130-7は、甲母線115と乙母線117との間に接続されている。開閉装置130-8は、甲母線116と乙母線118との間に接続されている。
【0051】
開閉装置130-9は、変圧器120-1と甲母線111及び乙母線113との間に接続されている。開閉装置130-10は、変圧器120-1と甲母線115及び乙母線117との間に接続されている。
【0052】
開閉装置130-11は、変圧器120-2と甲母線112及び乙母線114との間に接続されている。開閉装置130-12は、変圧器120-2と甲母線116及び乙母線118との間に接続されている。
【0053】
開閉装置130-13(例えば、断路器)は、開閉装置130-9と甲母線111との間に接続される。開閉装置130-14(例えば、断路器)は、開閉装置130-9と乙母線113との間に接続される。
【0054】
開閉装置130-15(例えば、断路器)は、開閉装置130-11と甲母線112との間に接続される。開閉装置130-16(例えば、断路器)は、開閉装置130-11と乙母線114との間に接続される。
【0055】
開閉装置130-17(例えば、断路器)は、開閉装置130-10と甲母線115との間に接続される。開閉装置130-18(例えば、断路器)は、開閉装置130-10と乙母線117との間に接続される。
【0056】
開閉装置130-19(例えば、断路器)は、開閉装置130-12と甲母線116との間に接続される。開閉装置130-20(例えば、断路器)は、開閉装置130-12と乙母線118との間に接続される。
【0057】
計測装置140-1は、甲母線111の電圧を計測する計器用変圧器である。計測装置140-2は、乙母線113の電圧を計測する計器用変圧器である。計測装置140-3は、甲母線112の電圧を計測する計器用変圧器である。計測装置140-4は、乙母線114の電圧を計測する計器用変圧器である。なお、計測装置140は、母線110-2に対しても接続されているが、説明の便宜上、母線110-2に接続されている計測装置140の説明を省略する。
【0058】
変圧器制御システム1は、2台のセンシング端末200LR-1,200LR-2と、2台のセンシング端末200M-1~200M-12と、6台のセンシング端末200S-1~200S-12と、を備える。
【0059】
センシング端末200LR-1は、変圧器120-1をセンシング対象として、タップの切り換えや変圧器120-1の運用状態の検出を行う。センシング端末200LR-2は、変圧器120-2をセンシング対象として、タップの切り換えや変圧器120-2の運用状態の検出を行う。
【0060】
センシング端末200S-k(k=1、2、…12)は、開閉装置130-kをセンシング対象として開閉装置130-kの開閉状態の検出や開閉装置130-kの開閉を行う。
【0061】
センシング端末200M-1は、計測装置140-1及び計測装置140-2をセンシング対象として計測装置140-1及び計測装置140-2の計測値の検出を行う。センシング端末200M-2は、計測装置140-3及び計測装置140-4をセンシング対象として計測装置140-3及び計測装置140-4の計測値の検出を行う。
【0062】
以下に、図6の示す電力系統Eの各変圧器120を制御する変圧器制御システム1の制御方法の一例を、図7を用いて説明する。なお、図7では、変圧器120-1と変圧器120-2とが並列運転している場合を例として説明する。
【0063】
センシング端末200M-1は、計測装置140-1及び計測装置140-2の各計測値をAD変換し、AD変換したデジタルデータを、ネットワークNW1を介してIED300に常時送信している。IED300-1は、現用系として動作しており、ネットワークNW1を介して得られたデジタルデータを収集し(ステップS101)、そのデジタルデータに基づいて母線110-1の母線電圧を常時計測する(ステップS102)。IED300-1は、計測した母線電圧が事前に設定された第1設定値と第2設定値との間の所定範囲内か否かを判定する。例えば、IED300-1は、計測した母線電圧が第1設定値を超えたか否かを判定する(ステップS103)。IED300-1は、計測した母線電圧が第1設定値を超えていない場合には、母線電圧が第2設定値を下回っているか否かを判定する(ステップS104)。
【0064】
IED300-1は、ステップS103の判定の結果、計測した母線電圧が第1設定値を超えている場合には、変圧器120の変圧比を下げる制御指令をネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-1及びセンシング端末200LR-2に送信する(ステップS105)。これにより、IED300-1は、各センシング端末200LRに対して変圧器120-1及び変圧器120-2のタップの切り換えを指示し、タップ値を上げる制御を行う。具体的には、センシング端末200LR-1は、ステップS105によって送信された制御指令を受信すると、変圧器120-1のタップを切り換えてタップ値を下げる。また、センシング端末200LR-2は、ステップS105によって送信された制御指令を受信すると、変圧器120-2のタップを切り換えてタップ値を下げる。
【0065】
ステップS104において、IED300-1は、計測した母線電圧が第2設定値を下回った場合には、変圧器120の変圧比を上げる制御指令を、ネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-1及びセンシング端末200LR-2に送信する(ステップS106)。これにより、IED300-1は、各センシング端末200LRに対して変圧器120-1及び変圧器120-2のタップの切り換えを指示して、タップ値を上げる制御を行う。具体的には、センシング端末200LR-1は、ステップS106によって送信された制御指令を受信すると、変圧器120-1のタップを切り換えてタップ値を上げる。また、センシング端末200LR-2は、ステップS106によって送信された制御指令を受信すると、変圧器120-2のタップを切り換えてタップ値を上げる。
【0066】
センシング端末200LR-1は、変圧器120-1のタップを切り換えた後、変圧器120-1のタップ値を取り込み、ネットワークMW1を介してIED300に送信する。同様に、センシング端末200LR-2は、変圧器120-2のタップを切り換えた後、変圧器120-2のタップ値を取り込み、ネットワークMW1を介してIED300に送信する。
【0067】
IED300-1は、ネットワークMW1を介して変圧器120-1及び変圧器120-2のそれぞれのタップ値の情報を収集し、収集したタップ値の情報に基づいて変圧器120-1及び変圧器120-2のそれぞれのタップの切り替わりを確認する(ステップS107)。IED300-1は、変圧器120のタップの切り替わりが確認できない場合には、その変圧器120に異常が発生していると判定してもよい。
【0068】
変圧器120-1及び変圧器120-2がともに単独運転している場合には、IED300-1は、センシング端末200M-1からの計測値に基づいて甲母線111又は乙母線113の母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-1に制御指令を送信する。同様に、IED300-1は、センシング端末200M-2からの計測値に基づいて甲母線112又は乙母線114の母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-2に制御指令を送信する。これにより、IED300-1は、単独運転している変圧器120-1及び変圧器120-2の各タップ値を独立して制御し、母線の安定化を図ることができる。
【0069】
以下に、変圧器120-1及び変圧器120-2の単独運転から並列運転への切り替えの制御方法の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態における単独運転から並列運転への切り替えの制御方法を示す図である。
【0070】
IED300-1は、ネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-1及びセンシング端末200LR-2から各変圧器120-1及び変圧器120-2の各タップ値の情報を収集する(ステップS201)。IED300-1は、各タップ値がずれている場合には、ネットワークNW1を介してセンシング端末200LR-1及びセンシング端末200LR-2と通信して各タップ値を揃える(ステップS202)。例えば、IED300-1は、変圧器120-1のタップ値の方が高い場合には、変圧器120-1のタップ値を下げて変圧器120-2のタップ値と同一になるように、センシング端末200LR-1に制御指令を送信する。
【0071】
IED300-1は、変圧器120-1のタップ値と変圧器120-2のタップ値とが揃うと、センシング端末200S-1及びセンシング端末200S-2に対して開閉装置130を導通状態にする開閉(オン/オフ)制御指令を送信する(ステップS203)。これにより、センシング端末200S-1は、開閉装置130を導通状態にする開閉(オン/オフ)制御指令を受信すると開閉装置130-1を遮断状態から導通状態に切り替える。センシング端末200S-2は、開閉装置130を導通状態にする開閉(オン/オフ)制御指令を受信すると開閉装置130-2を遮断状態から導通状態に切り替える。したがって、変圧器120-1及び変圧器120-2の運転が単独運転から並列運転に切り替えられる。なお、IED300-1は、単独運転から並列運転への切り替えの契機が変圧器120-1及び変圧器120-2のいずれかの異常の発生である場合には、ステップS203の後に、ネットワークNW1を介して異常が発生した変圧器120を停止させる。ここで、停止とは、例えば、開閉装置130-9あるいは開閉装置130-11を遮断状態に切り替えることである。
【0072】
以上説明した変圧器制御システム1では、IED300とセンシング端末200LRとがネットワークNW1を介して接続される。そして、IED300は、母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1を介して及びセンシング端末200LRに変圧器120のタップの切り換えを指示することで、ネットワークNW1を用いて電力系統E内の母線電圧の安定化を図ることができる。また、1台のIED300で全台数の変圧器120を一括で制御することが可能となるため、メタルケーブルを含めたハードウェアが削減される。
【0073】
なお、第1の実施形態において、現用系のIED300-1と待機系のIED300-2とのうち、一方のIED300(例えば、IED300-1)は、計測した母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1を介して変圧器120タップの切り換えを制御し、他方のIED300(例えば、IED300-2)は、上位から操作信号を受信した場合に操作信号に基づいてネットワークNW1を介して変圧器120のタップの切り換えを制御しても良い。例えば、IED300-1は、系統情報に基づいて自動で変圧器120のタップを切り換える。一方、IED300-2は、操作者が変圧器120を切り替える手動操作を行った場合に、変圧器120のタップを切り換える。したがって、例えば、IED300-2は、HMI500からネットワークNW2を介しタップ値を上げる操作信号を受信した場合には、センシング端末200LRに対してタップ値を上げる制御指令をネットワークNW1を介して送信する。一方、例えば、IED300-2は、HMI500からネットワークNW2を介しタップ値を下げる操作信号を受信した場合には、センシング端末200LRに対してタップ値を下げる制御指令をネットワークNW1を介して送信する。これにより、操作者の手動によっても変圧器120のタップを切り換えることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の変圧器制御システム1Aについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0075】
図9は、第2の実施形態の変圧器制御システム1Aの構成例を示す図である。変圧器制御システム1Aは、図1に示した第1の実施形態の変圧器制御システム1と比較すると、待機系のIED300-2ではなく、IED300とは独立して動作するIED600を備える点が異なる。IED600は、変圧器制御システム1Aの構成内において、IED300とは別に、他の制御や監視を行うことを主に配置される。例えば、IED300が第1の実施形態で説明した電力系統E内のすべての変圧器120を一括して制御する第1の機能を実行し、IED600が第1の機能とは異なる第2の機能を実行する。
【0076】
図9に示す変圧器制御システム1Aは、例えば、複数のセンシング端末200と、IED300と、TC400と、HMI500と、IED600と、を備える。IED600は、「機能分担部」の一例である。
【0077】
IED600は、ネットワークNW1に接続される。例えば、IED600は、ベイレベルに配置される。ネットワークNW1に接続される変圧器制御システム1Aにおいて、IED300とは別に分散配置されるIED600は、複数のセンシング端末200からネットワークNW1を介して系統情報を収集する。IED600は、IED300との間で電力系統Eに対する第1の機能と第2の機能とを分担して、IED300とは独立して動作する。例えば、IED600は、第2の機能として開閉装置130-5~130-8の開閉状態を制御する機能を有する。ここで、IED600は、第1の機能を有しているが、IED300が正常に動作している場合には第1の機能を実行せずに、第2の機能を実行する。IED300に異常が発生すると、IED300からネットワークNW2を介してIED600に異常の発生が通知される。IED600は、IED300から異常の発生の通知を受け取ると、IED300の機能を引き継いで実行する。例えば、IED600は、IED300に異常が発生すると、第1の機能と、第1の機能(タップ制御)と共にIED600が主として実行している第2の機能とを実行する。なお、IED300とIED600とは相互監視してもよい。
【0078】
なお、変圧器制御システム1Aにおける変圧器120の制御方法は、図7と同様の処理であるため、説明を省略する。変圧器制御システム1Aにおける単独運転から並列運転への切り替え方法は、図8と同様の処理であるため、説明を省略する。IED300に異常が発生した場合には、IED600は、第2の機能に加えて、図7に示す変換器制御機能や図8に示す単独運転から並列運転への切り替えを行う。
【0079】
以上説明した第2の実施形態の変圧器制御システム1Aは、第1の実施形態の変圧器制御システム1と同様の効果を奏する他、IED300に異常が発生した場合であっても待機系のIED300を用いることなく第1の機能を継続して実行することができる。
【0080】
上記各実施形態では、現用系と待機系との二系統のセンシング端末200を備えてもよい。
【0081】
また、第1の実施形態の変圧器制御システム1は、第2の実施形態で説明したIED600を更に備えてもよい。また、IED600の待機系を更に備えてもよい。
【0082】
上記各実施形態の変圧器制御システム1,1Aは、ネットワークNW3を介してTC400に接続される給電所(又は制御所)700が接続される。図10は、給電所700を備えた変圧器制御システム1Bの一例である。変圧器制御システム1Bでは、TC400は、変電所構外に配置されている給電所700(系統運用)に配置の計算機システムと接続される。IED300は、変電所構内に配置の系統・設備・装置の運用状態をTC400経由で給電所700に通知すると共に、給電所700からの各種指令により変電所構内に配置の機器の開閉制御や、変圧器120のタップ制御を行う。開閉制御やタップ制御などの各種制御は、「遠方制御方式」と「直接制御方式」のうちいずれかで実施される。「遠方制御方式」とは、TC400経由で給電所700の遠方に配置された計算機システムからの制御が可能な方式である。「直接制御方式」とは、変電所構内に配置のHMI500からの制御が可能な方式ある。例えば、「遠方制御方式」と「直接制御方式」のうちいずれか制御権が与えられ、その制御権が与えられた方式で、開閉制御やタップ制御などの各種制御が実施される。例えば、この制御権は、スイッチなどによって「遠方制御方式」と「直接制御方式」とのいずれかに切り替え可能である。なお、HMI500とTC400とは、一体構成であってもよいし、それぞれ分離して配置されてもよい。
【0083】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ネットワークNW1を介して収集した系統情報に基づいて計測した母線電圧が所定範囲内になるようにネットワークNW1を介して切換部212と通信して変圧器120のタップの切り換えを制御することにより、ネットワークNW1を用いて電力系統E内の母線電圧の安定化を図ることができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10