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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電気インバータシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20241111BHJP
   H01L 25/10 20060101ALI20241111BHJP
   H01L 25/11 20060101ALI20241111BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241111BHJP
【FI】
H01L23/40 E
H01L25/14 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022572626
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021063700
(87)【国際公開番号】W WO2021239633
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】102020113954.3
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020124822.9
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】522459410
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-12, 85579 Neubiberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランボー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスムート, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, アンソニー
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0145605(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017214488(DE,A1)
【文献】特開2014-011915(JP,A)
【文献】特開2019-187176(JP,A)
【文献】特開2013-187334(JP,A)
【文献】特開2005-278296(JP,A)
【文献】特開2015-006031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34-23/473
H01L 25/00-25/18
H05K 7/20
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気インバータシステム(1)であって、
少なくとも、第1のヒートシンク(2)、第2のヒートシンク(3)及び電気コンデンサ(4)の3つの構成要素を含み、
前記構成要素は、上述した順序で積み重ねられており、
少なくとも1つの固定手段(13A)を更に含み、
前記3つの構成要素は、互いに移動可能ではなく、前記3つの構成要素の各々が少なくとも部分的にそれぞれ隣接する構成要素に平面的に接触するよう、前記固定手段によって固定されており、
前記第1のヒートシンク(2)と前記第2のヒートシンク(3)との間にクランプされた半導体パワーモジュール(5)を更に含み、前記電気コンデンサと前記半導体パワーモジュールを電気的に接続する電気接触要素(15)を更に含む、電気インバータシステム。
【請求項2】
前記固定手段はネジ(13A)であ、 前記構成要素のうちの少なくとも1つは、前記ネジを固定するためのカウンタースレッドを備える、請求項に記載の電気インバータシステム。
【請求項3】
前記第1のヒートシンク(2)、前記第2のヒートシンク(3)及び前記電気コンデンサ(4)は、ネジ接続部を形成するために上下に配置された孔(13)を備える、請求項2に記載の電気インバータシステム。
【請求項4】
前記電気コンデンサは電磁干渉フィルタを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項5】
前記半導体パワーモジュールの表面(5B,5D)は、前記半導体パワーモジュールと前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)との間の熱輸送が改善されるよう、前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)に平面的に接触している、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項6】
前記半導体パワーモジュールは、予め定められた配向においてのみ、前記第1のヒートシンク(2)と前記第2のヒートシンク(3)との間にクランプされ得る、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項7】
前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)のうちの少なくとも1つは、前記半導体パワーモジュールの前記配向を予め定めるラグ(24)を備える、請求項6に記載の電気インバータシステム。
【請求項8】
前記半導体パワーモジュールは、前記電気インバータシステムの第1の面(3A)において外向きに露出している、請求項1~7のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項9】
前記半導体パワーモジュールは、前記第1の面に、前記半導体パワーモジュールの前記配向を予め定める交流接続部を備える、請求項7を引用する請求項8に記載の電気インバータシステム。
【請求項10】
前記半導体パワーモジュールは出力電流センサ(14)を含む、請求項9に記載の電気インバータシステム。
【請求項11】
前記電気コンデンサの前記第1の面にゲートドライバボード(10B)が取り付けられている、請求項~10のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項12】
前記半導体パワーモジュールと電気的に接触された少なくとも1つのコントローラボード(10A)をさらに備え、前記ゲートドライバボード(10B)には、前記コントローラボード(10A)が取り付けられている、又は、前記コントローラボード(10A)は、前記ゲートドライバボード(10B)に埋め込まれている、請求項11に記載の電気インバータシステム。
【請求項13】
前記電気コンデンサは高電圧直流プラグ(4D)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項14】
前記電気コンデンサは入力電流センサを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項15】
前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)のうちの1つは貫通孔(16)を含み、前記貫通孔内には電気接触要素としての圧力接点(15)が埋め込まれている、請求項1~14のいずれか1項に記載の電気インバータシステム。
【請求項16】
電気インバータシステムの組立方法であって、
- 第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及び電気コンデンサの3つの構成要素を準備するステップ、
- 半導体パワーモジュール及び固定手段を準備するステップ、
- 前記半導体パワーモジュールを、前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)のうちの一方の上に配置するステップ、
- 前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)のうちの一方並びに前記半導体パワーモジュールを、前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)のうちの他方によって覆うステップ、
- 前記電気コンデンサと前記半導体パワーモジュールの電気接触面が重なり合って位置し、電気接触要素によって接触され得るよう、その間に配置された半導体パワーモジュールを有する前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)と、前記電気コンデンサとを、重ね合わせて配置するステップ、及び、
-少なくとも1つの固定手段を取り付けるステップであって、前記固定手段は、前記第1のヒートシンク(2)及び前記第2のヒートシンク(3)並びに前記電気コンデンサを、それらが互いに対して移動可能ではなく、前記3つの構成要素の各々が少なくとも部分的にそれぞれ隣接する構成要素に平面的に接触するように固定し、前記3つの構成要素を固定することにより、前記半導体パワーモジュールは前記第1のヒートシンク(2)と前記第2のヒートシンク(3)との間にクランプされる、ステップ
を含む方法。
【請求項17】
前記固定手段はネジであり、前記3つの構成要素のうちの少なくとも1つは前記ネジを固定するためのカウンタースレッドを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
更に、ゲートドライバボードが前記電気コンデンサの第1の面に固定される、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクと、半導体パワーモジュールと、電気コンデンサとを含む、電気インバータシステムに関する。電気インバータシステムは、直流を交流に変換する機能を果たす。
【背景技術】
【0002】
実際の電気インバータは、半導体パワーモジュールの形態で作製されている。
【0003】
通常、そのようなシステムは、ボトムアップ設計され、その結果、第1のステップにおいて、個々の必要な機能構成要素が設計され、続いて、これらの構成要素が、電気インバータシステムへと組み立てられる。
【0004】
特許文献1は、そのようなシステムを開示している。
【0005】
特許文献2は、更に、電気インバータを開示している。
【0006】
組み立てのために、個々の構成要素は、組み合わされ、種々の溶接接合及び/又はネジ連結を用いて固定される。
【0007】
個々の構成要素の電気的な接触のために、通常、バスバーが使用される。
【0008】
そのようなシステムの組み立ては、多くの機械的な連結要素及び電気的な接触要素が必要とされ、これらの要素を固定するために多くの作業ステップが実行されなければならないため、多大な労力を要する。
【0009】
そのようなシステムの複雑な設計は、組み立てプロセス中のエラーに対する高い脆弱性と、システム内の機械的な又は電気的な欠陥に対する高い脆弱性との両方をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第3493387号明細書
【文献】欧州特許第1650859号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、従来技術と比較して簡略化された構造を有する電気インバータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、少なくとも部分的に、請求項1による電気インバータシステムによって解決される。
【0013】
少なくとも、第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及び電気コンデンサを構成要素として含む、電気インバータシステムが開示される。これら3つの構成要素は、上述した順序で積み重ねられている。
【0014】
更に、システムは、固定手段を含む。3つの上述した構成要素は、互いに移動可能ではなく、少なくとも部分的に平面的に互いに接触するよう、固定手段によって固定されている。
【0015】
第1のヒートシンクによって終端するシステムの面は、以下において上面と呼ばれる。第2のヒートシンクは、第1のヒートシンクと電気コンデンサとの間に配置されており、2つの上述した構成要素と直接的に接触している。
【0016】
電気コンデンサによって終端するシステムの面は、下面と呼ばれる。しかしながら、システムの種々の実施形態において、上面が下向きに、下面が上向きに、それぞれ配向されていてもよい。
【0017】
更に、システムは、第1及び第2のヒートシンクの間に配置された半導体パワーモジュールを含む。半導体パワーモジュールは、そこで、隣接するヒートシンクの圧力によってクランプされ、それにより固定されている。そこには、複数の半導体パワーモジュールがクランプされ得る。
【0018】
ヒートシンクの間に、1つ又は複数の半導体パワーモジュールが埋め込まれた、1つ又は複数の凹部が形成され得る。
【0019】
凹部は、半導体パワーモジュールが正確にヒートシンクの間に挿入され得るよう、第1若しくは第2のヒートシンクに又は両方のヒートシンクに、形成され得る。
【0020】
電気接触要素が、半導体パワーモジュールを電気コンデンサと電気的に接続する。
【0021】
一実施形態では、システムは、複数の固定手段を備え、当該固定手段の一つ一つが既に、構成要素を、互いに移動可能ではなく、少なくとも部分的に平面的に互いに接触するよう、固定している。複数の固定手段を使用することにより、構成要素は、互いに対して更にひねられ得ないように固定される。更に、このようにして、固定の安定性及び信頼性が向上する。
【0022】
ヒートシンクは、良好な熱伝導性を有する材料、例えばアルミニウムのような熱伝導性の金属から成るハウジングを含む。ハウジングは、一実施形態では、例えば水のような冷却液を収容するための空洞を含む。例えば、温められた水又は冷却液をシステムから放出し、冷たい水又は冷却液をシステムに供給することにより、ヒートシンクを介して熱がシステムから放出され得る。
【0023】
更なる実施形態では、ヒートシンクは中実に作製されている。これは、製造及び運転コストを低下させる。
【0024】
ヒートシンクは、電気構成要素、特に半導体パワーモジュールを冷却するために、熱を放出する機能を果たす。このために、ヒートシンクは、好ましくは表面積が最も大きい表面で、互いに積み重ねられている。積層方向におけるヒートシンクの寸法は、ヒートシンクの最大表面の寸法と比較して小さい。半導体パワーモジュールは、ヒートシンクの間にクランプされている。
【0025】
インバータシステムが、一実施形態において、外部のヒートシンクに又は十分に冷たい装置の上に直接的に取り付けられる場合、外部のヒートシンク又は十分に冷たい装置は、既にシステムのヒートシンクのうちの1つとしての機能を果たし得る。この例として、モータの冷却ジャケット上でのインバータシステムの取り付けを挙げることができる。
【0026】
一実施形態では、半導体パワーモジュール及び電気コンデンサの外面に金属製の舌部(複数)が形成されており、当該舌部は、金属製のネジのような電気接触要素を介して又は溶接によって、互いに機械的及び電気的に連結されている。
【0027】
電気コンデンサは、直流コンデンサとして作製され得る。コンデンサは、少なくとも1つの実施形態では、ハウジングと、その中に固定されたコンデンサ素子とを含む。コンデンサ内の孔(複数)は、例えば、専らハウジング内に、若しくは、ハウジング及びコンデンサ素子内に、又は、特にハウジングの無い実施形態ではコンデンサ素子内にのみ、形成されている。
【0028】
コンデンサハウジングは、例えば、その内部に孔が形成された外側の取り付け部を含む。取り付け部は、補強され広げられたコンデンサハウジングの外壁であり得る。
【0029】
システムの開示された構造は、機械的な連結要素及び電気的な接触要素の数が最小限に削減され得るという利点を有する。これは、取り付けプロセスを容易にし、それにより時間及びコストを節約する。更に、そのようにして、構成要素の組み立ての際の誤り、構成要素の誤った取り付け、又は、個々の欠陥のある構成要素に起因する誤動作が、容易に回避又は排除され得る。
【0030】
更に、構成要素の数の削減により、システム全体のサイズを小さくすることができ、その結果、コンパクトで省スペースな設計が可能となる。
【0031】
一実施形態では、固定手段はネジである。第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及び電気コンデンサは、ネジ接続部を形成するために上下に配置された穿孔を備える。
【0032】
ネジを固定するために、有利にはカウンタースレッドが用いられる。そのようなカウンタースレッドは、例えばナットのような別個の部材に形成され得る。
【0033】
一実施形態では、構成要素(第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及びコンデンサ)のうちの少なくとも1つは、ネジを固定するためのカウンタースレッドを備える。
【0034】
カウンタースレッドにより、ネジを強固に締め付けることができ、その結果、3つの上述した構成要素を互いに強固に固定するネジ接続部が形成される。
【0035】
例えば第1のヒートシンクがシステムの上面を形成する場合、ネジは、第1のヒートシンクの方向から、上下に配置された穿孔内へ、挿入され得る。ネジ頭部は、次いで、第1のヒートシンクの表面上に載置される。ネジ首部は、第1のヒートシンク全体、第2のヒートシンク全体を通って延び、電気コンデンサの孔内に達する。その場合、少なくとも電気コンデンサの孔は、ネジを固定するためのカウンタースレッドを含む。
【0036】
好ましくは、孔は、コンデンサハウジングの取り付け部に形成されている。一実施形態では、ネジ接続部は、取り付け部全体を貫通し、システムに属さない更なる構成要素まで延び、その結果、上述したシステムは更なる構成要素上に固定されている。
【0037】
更なる例では、電気コンデンサは、システムの上面を形成することができ、ネジは、相応して、コンデンサの方向から、上下に配置された穿孔内へ、挿入され得る。
【0038】
カウンタースレッドは、例えば、穿孔内に埋め込まれた圧入ナットによって提供され得るか、又は、直接的に穿孔の中に刻まれ得る。
【0039】
一実施形態では、圧入ナットは、コンデンサハウジングの穿孔内に埋め込まれている。更なる実施形態では、圧入ナットは、第1のヒートシンクの穿孔内に埋め込まれている。更なる実施形態では、カウンタースレッドは、穿孔のうちの少なくとも1つの中に刻まれている。
【0040】
十分な固定を保証するために、一実施形態では、少なくとも6つのそのようなネジ接続部が設けられ、好ましい実施形態では、少なくとも8つのそのようなネジ接続部が設けられている。ネジ接続部は、均一な間隔で配置されている。
【0041】
しかしながら、ネジ接続部は既に、システムの構成要素を、それらがもはや互いに対して移動可能ではないように、互いに固定している。
【0042】
上述した配置により、システムの主要構成要素は、容易にかつ付加的な支持部材を使用することなく、互いに機械的に固定され得る。
【0043】
第1及び第2のヒートシンクの間に配置された半導体パワーモジュールは、ネジが締め付けられると、ヒートシンクの間にクランプされ、それにより機械的に固定される。これは、取り付けのための更なる構成要素を半導体パワーモジュールに取り付けることが必要とされない、という利点を有する。
【0044】
一実施形態では、電気コンデンサは、電磁干渉(EMI)フィルタを含む。EMIフィルタは、電気コンデンサに直接的に一体化されるか、又は、付加的な部材として電気コンデンサに直接的に組み付けられ得る。EMIフィルタは、電気コンデンサのハウジング内に組み込まれ得る。
【0045】
いずれの場合も、電気コンデンサは、コンデンサ素子及びEMIフィルタの両方を含む。コンデンサ素子及びEMIフィルタは、連結された構成要素として存在する。付加的なEMIフィルタが取り付けられる必要がないため、取り付けにおいて複数の付加的なステップが省略される。EMIフィルタは、パワーモジュール、コンデンサ及びシステム要件(EMI技術に関わる接続、接地、互いに対する構成要素の位置など)に適合されているため、EMIフィルタの開発及び試験のための付加的なコストも省略される。
【0046】
EMIフィルタは、電磁干渉放射を防止し、電磁適合性(EMV)のガイドライン及び電磁放射に関する特定用途向けの制限の遵守に寄与する。
【0047】
電気コンデンサのサイズは、変化し得る。比較的高いコンデンサ出力が必要とされる場合、ハウジング並びにその内部にある電気コンデンサ及びEMIフィルタは、相応して拡大され得る。
【0048】
一実施形態では、電気コンデンサは、少なくとも150kWのコンデンサ出力を有するように寸法が決められている。
【0049】
EMIフィルタは、接地を必要とする。一実施形態では、EMIフィルタの接地は、システムを機械的に固定する機能を果たすのと同一のネジによって実施されている。このために、EMIフィルタの電気接触面は、電気コンデンサの孔の外壁に露出している。金属製のネジは、それによりEMIフィルタと電気的に接触している。ネジは、更にヒートシンクと接触しており、そのようにして必要な接地を確立する。
【0050】
一実施形態では、半導体パワーモジュールの表面は、当該半導体パワーモジュールとヒートシンクとの間の熱輸送が改善されるよう、ヒートシンクに平面的に接触している。
【0051】
更なる実施形態では、ヒートシンクと平面的に接触する半導体パワーモジュールの表面は、熱伝導層によって被覆されている。
【0052】
代替的に又は付加的に、平面的に半導体パワーモジュールに接触するヒートシンクの表面には、熱伝導層が取り付けられている。
【0053】
上述した実施形態では、層は、例えば、熱伝導性固体発泡体又は熱伝導性ペーストを含み得る。
【0054】
そのような熱伝導層は、2つの機能を有する。一方では、冷却されるべき半導体パワーモジュールと2つのヒートシンクとの間の熱伝達が改善される。他方では、場合によっては表面上にあり得る凹凸がならされる。
【0055】
一実施形態では、ヒートシンクのうちの少なくとも1つは、半導体パワーモジュールの配向を予め定めるラグを含む。
【0056】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、その外周に溝を含む。溝は、例えば半円形状であり、モジュールの外周に沿って等間隔に形成されている。少なくとも1つの実施形態では、溝は、パワーモジュールの全高にわたって延びる。
【0057】
ヒートシンクは、半導体パワーモジュールが埋め込まれた後に溝内で接触するラグ又はスタッドを含む。
【0058】
溝及びラグ若しくはスタッドは、半導体パワーモジュールの埋め込みが所望の配向においてのみ可能であるように、配置されている。このために、溝は、少なくとも1つの実施形態では、外周に沿って非対称に配置されている。
【0059】
ラグ又はスタッドは、ヒートシンクの一部である。
【0060】
この場合、凹部の側周に沿った隆起部が、ラグと呼ばれる。凹部の下部又は上部の表面上の隆起部が、スタッドと呼ばれる。ラグ又はスタッドは、正確に溝内に嵌るように成形されている。
【0061】
そのようにして、構成要素が所望の配向で組み込まれ、半導体パワーモジュールが更に所望の配向で電気的に接触されることが、構成要素の構成によって既に保障される。
【0062】
更に、溝及びラグ若しくはスタッドは、半導体パワーモジュールの機械的な固定に寄与する。
【0063】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、第2のヒートシンクの上部の表面と半導体パワーモジュールとが同一平面上に配置されるよう、第2のヒートシンクの凹部内に埋め込まれている。
【0064】
この実施形態では、半導体パワーモジュールを収容するための凹部は、完全に第2のヒートシンク内に形成されている。凹部をヒートシンクのうちの1つに完全に形成することにより、ヒートシンクの製造プロセス及びシステムの組み立てが容易になる。
【0065】
半導体パワーモジュールは、上述した実施形態では、第2のヒートシンクの凹部内に容易に入れることができる。好ましい実施形態では、半導体パワーモジュールは、正確に凹部内に適合する。溝及びラグ若しくはスタッドは、付加的に機械的な固定に寄与し得る。
【0066】
半導体パワーモジュールと第2のヒートシンクの上部の表面が同一平面上にあることにより、第1のヒートシンクは、これらの表面上に容易に載置され、ネジ接続部によって固定されることができ、その結果、半導体パワーモジュールは、ヒートシンクの間に容易にクランプされる。
【0067】
更なる実施形態では、凹部は、第1及び第2のヒートシンク内に対称的に形成されている。それにより、1つのタイプのヒートシンクが製造されるだけでよい。これは、取り付けプロセスを容易にし、必要とされる工具の数を削減する。それにより、取り付け中の時間及びコストが低減される。半導体パワーモジュールをヒートシンクに又はヒートシンクを互いに接触した状態で容易に配置し取り付けるために、ここでも、上述したラグ若しくはスタッドのような簡易な組み立て補助具が意図され得る。
【0068】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、電気接触要素との電気的な接触のための接触面を含む。
【0069】
これらの接触面は、導電性の材料を含み、半導体パワーモジュールの下面に配置されている。
【0070】
半導体パワーモジュールは、接触面が、コンデンサの接触のための電気接触要素の上方に正確に位置決めされるように配置される。
【0071】
好ましい実施形態では、半導体構成要素と電気コンデンサとの間の確実な電気的接触を保障するために、複数の接触面及び対応する電気的接触要素が存在する。一実施形態では少なくとも2つの、別の実施形態では少なくとも3つの、接触面及び対応する接触要素が存在する。
【0072】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、近似的に矩形の底面を有する本体を含む。接触面は、半導体パワーモジュールの本体から突出する舌部上に配置され得る。その場合、各舌部上に接触面が配置されている。舌部は、半導体パワーモジュールの背面に配置されている。舌部全体は、導電性の材料、例えば金属を含み得る。
【0073】
舌部は、システムの背面で露出し得る。したがって、それらは、ネジ又は溶接のような電気接触要素を介して、システムの背面の電気コンデンサの対応する舌部と接続され得る。舌部は、このために、半導体パワーモジュールとコンデンサとの間に配置された第2のヒートシンクの背面に対して平行に配向されるよう、相応して曲げられ得る。
【0074】
上述した接触により、半導体パワーモジュールの電気的な接触のための付加的なバスバーを省略することができ、これは、システムの構造及び複雑さ、並びに、その取り付けプロセスを簡易化する。加えて、例えば(接触)部分の固定のためのドームのような、付加的な機械的部材も省略され、これによってもコストが低減される。
【0075】
半導体パワーモジュールの本体は、この実施形態では、本体の表面上に形成された冷却面を含み得る。冷却面は、熱伝導層と平面的に接触している。冷却面を介して、好ましくは熱がヒートシンクへ放出され得る。
【0076】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、システムの第1の面で外向きに露出している。
【0077】
それにより、外部への電気的な接触が容易に可能となる。
【0078】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、第1の面に、少なくとも1つの交流接続部を含む外部への電気接点を含む。交流接続部は、半導体パワーモジュールが所望の方向にのみ配向され得るように作製されている。
【0079】
一実施形態では、交流接続部は、半導体パワーモジュールの第1の面でシステムから突出する金属製の舌部として作製されている。
【0080】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、システムの第1の面に接触するピンを含む。ピンは、半導体パワーモジュールの埋め込みが所望の配向においてのみ可能であるように作製されている。
【0081】
一実施形態では、ピンは、半導体パワーモジュールの第1の面に対して垂直に、当該半導体パワーモジュールから離れるように突出する。
【0082】
更なる実施形態では、ピンは、半導体パワーモジュールの第1の面の前で90°の角度で曲がり、第2のヒートシンクの第1の面に対して平行に延びる。それにより、半導体パワーモジュールの取り付けは、予め定められた配向においてのみ可能である。
【0083】
少なくとも1つの実施形態では、ピンは、導電性の材料、例えば金属を含み、更に、半導体パワーモジュールのコントローラボードとの電気的な接触の機能を果たす。
【0084】
コントローラボードは、半導体パワーモジュールを制御する機能を果たし、例えばゲートドライバボードによって制御され得る。
【0085】
一実施形態では、半導体パワーモジュールは、出力電流センサを含む。出力電流センサは、好ましくは、半導体パワーモジュールの第1の面に配置されている。出力電流センサは、出力される交流電流を測定する。
【0086】
出力電流センサは、好ましくは、電流がシステムから流出する交流接続部に取り付けられている。
【0087】
一実施形態では、交流接続部は、外部への接触のための電気接触面を備える舌部を含む。この実施形態では、出力電流センサは、上述した舌部に取り付けられている。
【0088】
一実施形態では、コンデンサの第1の面に、ゲートドライバボードが取り付けられている。ゲートドライバボードは、インバータシステム内の半導体パワーモジュールを制御する機能を果たす。
【0089】
ゲートドライバボードは、コンデンサハウジングの第1の面上に直接的に差し込まれ得るか、又は、コンデンサハウジングの第1の面上にネジ接続によって固定され得る。
【0090】
一実施形態では、ゲートドライバボードには少なくとも1つのコントローラボードが取り付けられており、当該コントローラボードは、電気接触要素を介して、半導体パワーモジュールの第1の面と電気的に接触している。
【0091】
コントローラボードは、ゲートドライバボード内に直接的に埋め込まれ得るか、又は、その第1の面上に取り付けられ得る。
【0092】
一実施形態では、存在する各半導体パワーモジュールについて1つのコントローラボードが、ゲートドライバボードに取り付けられている。コントローラボードは、半導体パワーモジュールに電気的に接触している。
【0093】
コントローラボードは、上述したピンを介して、半導体パワーモジュールと電気的に接続され得る。コントローラボードは、半導体パワーモジュールを制御する機能を果たす。
【0094】
ゲートドライバボード及びコントローラボード並びに任意の(出力)電流センサの接触は、システム内へのコンデンサの取り付けと同時に、上述した構成要素の配置を通じて行われる。
【0095】
更なる実施形態では、電気コンデンサは、高電圧直流プラグを含む。このようにして、電気コンデンサは、容易に外部から電気的に接触させることができ、それにより、インバータシステムは、回路内に組み込まれ得る。
【0096】
高電圧直流プラグは、コンデンサハウジングから突出する金属製の舌部の形態で作製され得る。
【0097】
一実施形態では、電気コンデンサは、入力電流センサを含む。入力電流センサは、入力される交流を測定する。したがって、それは直流電流センサである。
【0098】
一実施形態では、少なくとも1つのヒートシンクは通気開口を含む。そのような通気開口は、ヒートシンクと環境との熱交換を向上させる。それにより、より多くの熱を放出することができ、冷却を向上させることができる。
【0099】
一実施形態では、ヒートシンクのうちの1つは、電気接触要素として圧力接点が埋め込まれた貫通孔を含む。
【0100】
圧力接点は、電気コンデンサの上面上に直接的に配置され固定され得る。圧力接点は、種々の実施形態において、例えば、コンデンサの上面上のバネ、コンパクトスタッド、又は、半球形若しくは円板形の隆起として、作製され得る。積層方向における圧力接点の高さは、第2のヒートシンクの、下面から凹部の下部の表面までの高さに対応する。
【0101】
圧力接点は、導電性の材料、好ましくは金属を含む。圧力接点は、半導体パワーモジュールの接触面に接触し、それにより当該接触面と電気的に接触する。したがって、圧力接点を介して、半導体パワーモジュールと電気コンデンサとの間の電気的な接触が提供される。
【0102】
圧力接点を使用することにより、半導体パワーモジュールの電気的な接触のための付加的なバスバーが省略され得る。この場合、電気的な接触のために代替的に可能なネジ連結又は溶接接合も省略され、これは、取り付けプロセスを更に簡易化する。
【0103】
一実施形態では、第2のヒートシンクは、圧力接点が挿入され得る貫通孔を含む。貫通孔は、半導体パワーモジュールの接触面の下方に配置されるように、位置付けられている。
【0104】
貫通孔及び圧力接点の上述した配置は、電気コンデンサ及び第2のヒートシンクが所望の配向においてのみ組み立てられることを可能にする。更に、上述した構造により、個々の構成要素の機械的な固定が支援される。
【0105】
更なる実施形態では、圧力接点は付加的な部材として作製されており、当該部材は、貫通孔内に埋め込まれていると共に、そのために設けられたコンデンサの上面の接触面を、半導体パワーモジュールの下面上の対応する接触面に電気的に接続するように、寸法が決められている。
【0106】
ネジ接続部を締め付けることにより、圧力接点は、貫通孔内でクランプされ、圧力によって、隣接する接触面と電気的に接触する。
【0107】
本発明は、更に、複数のステップを含む、電気インバータシステムを組み立てるための方法を開示する。ステップは、以下のように実施される:
【0108】
- 第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及び電気コンデンサを準備するステップ
【0109】
- 半導体パワーモジュール及び固定手段を準備するステップ
【0110】
複数の半導体パワーモジュールも使用され得る。列挙された構成要素は、上述した構成要素に対応し得る。
【0111】
- 半導体パワーモジュールを、ヒートシンクのうちの1つの上に配置するステップ半導体パワーモジュールは、そこに存在する凹部内に埋め込まれ得る。凹部は、第1のヒートシンクにおいても、第2のヒートシンクにおいても、又は、両方のヒートシンクにおいて、形成され得る。
【0112】
半導体パワーモジュールは、正確に凹部内に挿入され得る。このために、半導体パワーモジュールの外周は溝を備えることができ、凹部は、半導体パワーモジュールが埋め込まれた後に溝内で接触するラグ又はスタッドを含む。
【0113】
それにより、取り付け中に半導体パワーモジュールが滑って位置ずれする可能性は、もはやない。
【0114】
- 第1のヒートシンク及び半導体パワーモジュールを、第2のヒートシンクによって覆うステップ
【0115】
半導体パワーモジュールは、2つのヒートシンクの間にクランプされている。
【0116】
- その間に配置された半導体パワーモジュールを有するヒートシンクと、電気コンデンサとを、重ね合わせて配置するステップ
【0117】
第2のヒートシンクは、コンデンサ及び半導体パワーモジュールの電気接触面が互いに上下に位置し、電気接触要素によって接触され得るように、電気コンデンサ上に又はその逆に配置されている。
【0118】
- 少なくとも1つの固定手段を取り付けるステップであって、当該固定手段は、2つのヒートシンク及びコンデンサを、それらが互いに対して移動可能ではなく、少なくとも部分的に互いに平面的に接触するように固定する、ステップ
【0119】
更に、2つのヒートシンク及びコンデンサを固定することにより、半導体パワーモジュールはヒートシンクの間にクランプされる。
【0120】
一実施形態では、固定手段はネジであり、上述した構成要素のうちの少なくとも1つは、ネジを固定するためのカウンタースレッドを備える。
【0121】
この実施形態では、上述した構成要素は、ネジを収容するための孔を含む。
【0122】
孔は、ネジを固定するためのカウンタースレッドを備える。このために、例えば、圧入ナットが孔内に挿入され得る。
【0123】
単一のネジが、第1のヒートシンク、第2のヒートシンク及び電気コンデンサにわたって延び、これらの構成要素を、それらが部分的に互いに平面的に接触し、もはや互いに対して移動可能ではないように、互いに固定する。
【0124】
一実施形態では、少なくとも6つのそのようなネジが、好ましい実施形態では少なくとも8つのそのようなネジが、構成要素を固定するために、そのために設けられた孔内に挿入される。
【0125】
複数の固定手段を使用することにより、構成要素は、互いに対してもはやひねられ得ないように固定されている。更に、固定の強度及び信頼性が向上する。
【0126】
ネジを固定するために、当該ネジは、カウンタースレッドにねじ込まれ、強固に締め付けられる。上述した構成要素を固定する際、半導体パワーモジュールは、ヒートシンクの間に固定される。例えば、モジュールは、凹部内の機械的な圧力によって、ヒートシンクの間にクランプされる。
【0127】
一実施形態では、上述した圧力接点は、電気接触要素として使用される。ネジが固定された後、圧力接点は、半導体パワーモジュール及びコンデンサが電気的に接触するよう、それらの接触面に押し付けられる。
【0128】
更なる実施形態では、半導体パワーモジュール及びコンデンサの電気接触面の間に、電気接触要素として、溶接又はネジ接続部が取り付けられる。これは、更なるプロセスステップを必要とする。
【0129】
一実施形態では、更に、ゲートドライバボードが、電気コンデンサの第1の面に固定される。ゲートドライバボードは、コンデンサハウジングの第1の面上に差し込まれ得るか、又は、これとネジ止めされ得る。
【0130】
開示された方法により、電気インバータシステムを組み立てる際、機械的な連結要素及び電気的な接触要素の数が、最小限に低減され得る。それにより、取り付けステップの数を削減することができ、取り付けプロセスを迅速かつ安価に実行することができる。
【0131】
更に、そのようにして、構成要素の組み立ての際の誤り、構成要素の誤った取り付け、又は、個々の欠陥のある構成要素に起因する誤動作が、容易に回避又は排除され得る。
【0132】
以下において、本発明が、実施例及びこれに付随する図面に基づいて、詳細に説明される。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】電気インバータシステムの第1の実施形態の前面からの斜視図である。
図2】電気インバータシステムの第1の実施形態の背面からの斜視図である。
図3】半導体パワーモジュール及び付属する接触要素の第1の実施形態の下面からの斜視図である。
図4】ヒートシンクの第1の実施形態の斜視図である。
図5】電気インバータシステムの第2の実施形態の側面からの分解斜視図である。
図6】半導体パワーモジュールの第2の実施形態の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
図面において類似の又は明らかに同一の要素には、同一の参照符号が付されている。図面及び図面中の大きさの比率は、縮尺どおりではない。
【0135】
図1は、電気インバータシステム1の第1の実施例を、斜視図で示す。電気インバータシステム1は、上下に重なり合って配置され、互いに機械的に固定され、互いに電気的に接続された、複数の構成要素を含む。
【0136】
構成要素は、第1のヒートシンク2及び第2のヒートシンク3並びにコンデンサ4を含む。コンデンサ4は、外へ向かってコンデンサハウジング4Aによって閉じられている。
【0137】
本実施形態において、第1のヒートシンク2は、別のアセンブリの上に固定され得る最も下の構成要素であり、その上には、第2のヒートシンク3及びコンデンサ4が装着されている。例えば、構造全体はモータに固定され得る。
【0138】
第1のヒートシンク2と第2のヒートシンク3との間に、本実施例では3つの半導体パワーモジュール5が配置されている。半導体パワーモジュール5は、ヒートシンク2とヒートシンク3との間にそのために設けられた凹部内に正確に埋め込まれている。
【0139】
凹部は、ヒートシンクの前面3Aに開口6を備える。開口6は、半導体パワーモジュール5が電気的な接触のために外部に到達できることを保証する。
【0140】
このために、半導体パワーモジュール5は、それぞれ1つの前側舌部7を含む。前側舌部7を介して、出力される交流電流は、意図された用途に導かれ得る。用途は、例えばモータ、特に自動車用モータである。
【0141】
電気的な接触のために、舌部7は、例えば、そのために設けられた外部接点8Aに、金属ネジ8Bによってネジ止めされている。支持部8Cは、単に支持体としての機能を果たし、外部接点8Aの機械的な固定を支援する。
【0142】
舌部7は、導電性材料、好ましくは高い導電性を有する金属を含む。
【0143】
舌部7に加えて、半導体パワーモジュール5は、更に、モジュール5を所属するコントローラボード10Aと接触させるための金属製のピン9を含む。各半導体パワーモジュール5は、それぞれ固有のコントローラボード10Aを有する。本実施例では、半導体パワーモジュール5ごとに7本のピン9が設けられているので、半導体パワーモジュール5は、コントローラボード10Aを介して制御され得る。
【0144】
ゲートドライバボード10Bが、本実施形態では、コンデンサハウジング4Aの前面上に直接的に固定されており、このために、コンデンサハウジング4Aは、4本の取り付けスタッド4Bを備える。ゲートドライバボード10Bは、これらの取り付けスタッド4Bに差し込まれている。
【0145】
代替的に、ゲートドライバボード10Bは、コンデンサハウジング4Aの前面に、ネジ接続によって固定され得る。
【0146】
ゲートドライバボード10Bは、コントローラボード10Aを制御し、当該コントローラボード10Aは、ゲートドライバボード10B内に直接的に埋め込まれているか、又は、本実施例のようにその外面に取り付けられている。コントローラボード10Aは、上述したように、ピン9を介して半導体パワーモジュール5に接触している。
【0147】
半導体パワーモジュール5の背面には、当該半導体パワーモジュール5が背面3Bにおいても電気的に接触され得るよう、凹部が、図2に示されているように、同様にヒートシンク2若しくは3内の開口6によって開けられている。
【0148】
本実施形態では、半導体パワーモジュール5は、このために、それぞれ3つの金属製の舌部11を備える。舌部は、コンデンサ4の対応する接触要素を電気的に接触させるために、第2のヒートシンクの外面に対して平行に、コンデンサ4の方向に90°だけ曲げられている。
【0149】
対応する接触要素は、例えば、コンデンサハウジング4Aの外面に露出しているコンデンサ4のバスバー12の接触面である。
【0150】
接触のために、金属製の舌部11は、バスバー12に溶接されている。
【0151】
接触の代替的な形態は、ネジ接続部(図示せず)である。このために、バスバー12の接触面及び金属製の舌部11に孔が開けられる。金属製の導電性のネジを挿入することにより、コンデンサ4と半導体パワーモジュール5は、電気的に接続され得る。
【0152】
コンデンサハウジング4Aは、プラスチック材料を含む。第2のヒートシンク3と対向する側において、コンデンサハウジング4Aは、ヒートシンク2/3をコンデンサハウジング4Aに取り付けるための取り付け部4Cを備える。
【0153】
本実施形態では、取り付け部4Cの底面は、コンデンサハウジング4Aの残りに比べて、広げられている。それにより、コンデンサ4の取り付け部4Cの底面は、ヒートシンク4と同じ寸法を有する。
【0154】
代替的な実施形態では、コンデンサハウジング4A全体の底面は、ヒートシンク2若しくは3と同じ寸法を有し得る。更なる実施形態では、取り付け部4Cは、ヒートシンク2/3よりも小さい寸法を有する。
【0155】
取り付け部4Cは、コンデンサ4を第2のヒートシンク3に固定する機能を果たす。このために、取り付け部4Cには、8つ(コンデンサ4の前面及び背面にそれぞれ4つ)の孔13が、コンデンサの底面に対して垂直に開けられている。孔13は、カウンタースレッドを備え得る。
【0156】
孔13は、第2及び第1のヒートシンク2の対応する孔13の上方に、共線的に配置されている。少なくとも第1のヒートシンク2の孔13は、本実施形態では、カウンタースレッドを備える。それにより、ネジ13Aによって、上述した構成要素は、容易に連結され、互いに固定され得る。
【0157】
第1のヒートシンク2の孔13は、同一のネジ13Aによってシステム1全体が別の部材に取り付けられ得るよう、一貫したものとして作製され得る。そのような部材は、例えばモータであり得る。
【0158】
更なる実施形態では、システム1全体は、逆の順序で積み重ねられ得る。その場合、ネジ13Aは、第1のヒートシンク2の側から孔13に挿入され、コンデンサ4の取り付け部4Cの孔13内のカウンタースレッドに固定される。
【0159】
代替的な実施形態では、上述した構成要素を固定するために、より少ない又はより多いネジ接続部が用いられ得る。ネジ接続部は、構成要素(第1のヒートシンク2、第2のヒートシンク3、コンデンサ4)上で可能な限り均一な圧力分布を達成するために、等間隔で配置されている。
【0160】
コンデンサ4は、コンデンサハウジング4Aの内部に、例えば直流コンデンサ素子のような少なくとも1つのコンデンサ素子と、更に電磁干渉(EMI)のためのフィルタと、を含む。
【0161】
EMIフィルタは、コンデンサ素子に直接的に一体化されているか、又は代替的に、独立した構成要素として作製されているものの直接的にコンデンサ素子と共に組み込まれている。いずれの場合も、2つの構成要素は、共にコンデンサハウジング4A内に配置されている。それにより、EMIフィルタを別個に取り付けることは不要である。この付加的な取り付けステップを省略することにより、取り付け方法及び取り付け中のエラーに対する脆弱性が簡易化される。取り付けプロセスのコスト及び時間は低減され得る。
【0162】
EMIフィルタの必要な接地には、コンデンサ4を機械的に固定する機能を果たすのと同一のネジ13Aが使用される。このために、EMIフィルタの電気接触面は、コンデンサハウジング4Aの取り付け部4Cの孔13の側壁に露出している。接触面は、金属ネジ13Aによって接触されると共に、ヒートシンク2又は3と電気的に接続される。
【0163】
コンデンサ4は、入力及び出力電流接続部を有する。
【0164】
入力電流接続部としては、高電圧直流プラグ4Dが用いられる。これは、本実施例では、コンデンサハウジング4Aからその側面4Eにおいて突出する2つの金属製の導電性の舌部4Dの形態である。舌部4Dは、対応する電流接続部に連結され得る。
【0165】
出力電流接続部としては、上述したバスバー12が用いられる。
【0166】
入力又は出力電流を測定するために、いくつかの実施例では、適切なセンサが取り付けられている。
【0167】
好ましくは、出力電流センサが使用される。出力電流センサは、例えば、半導体パワーモジュール5の外部接点である舌部11に取り付けられている。
【0168】
図3には、半導体パワーモジュール5が詳細に示されている。半導体パワーモジュール5は、半導体エレクトロニクスを含む本体5Aを含む。
【0169】
更に、半導体パワーモジュール5の下面5B上には、熱伝導層5Cが塗布されている。これらは、例えば、TIM(Thermal Interface Material)ペースト又は熱伝導性発泡体である。熱伝導層5Cは、高粘性状態を有し、半導体パワーモジュール5と隣接するヒートシンク2/3との間の熱伝導を向上させる。モジュール5の上面5D上には、同様に、熱伝導層5Cが塗布され得る。
【0170】
半導体パワーモジュール5の背面には、コンデンサ4との電気的な接触のために、それぞれ3つの舌部11が存在する。舌部の第1の部分11Aは、モジュール5の本体5Aに対して平行に作製されている。第2の部分11Bは、90°の角度で上方へ曲げられている。それにより、舌部11は、そのために設けられたコンデンサ4のバスバー12の接触面に、容易に溶接され得る。
【0171】
モジュール5の前面には、それぞれ、外部への電気的な接触のための舌部7と、コントローラボード10の接触のための金属製のピン9とが取り付けられている。更に、モジュール5は、本体5Aの下面5Bの前面付近に取り付けられた、出力電流センサ14を含む。
【0172】
更に、モジュール5は、前面及び背面に溝5Eを備える。溝5Eは、モジュール5の外周に半円形の凹部として形成されている。モジュール5の前面及び背面に対称的に取り付けられたそれぞれ2つの溝5Eの位置は異なる。
【0173】
溝5Eは、ヒートシンク2若しくは3の凹部の周縁面の対応するラグに適合する。それにより、溝5Eによって、凹部への挿入の際のモジュール5の所望の配向が達成され得る。しかしながら、更に、所望の配向は、舌部7若しくは11及びピン9のような既存の接触要素によっても、予め定められる。
【0174】
ラグに代えて、ヒートシンクの凹部は、溝5Eに適合するスタッドも含むことができ、その結果、モジュール5は、凹部内で正確に取り付けられ得る。
【0175】
半導体パワーモジュール5は、ヒートシンク2/3の付属する凹部に正確に埋め込まれ、ネジ13Aが締め付けられる際に押圧されることによって、ヒートシンクの間に機械的に固定される。それにより、半導体パワーモジュール5を機械的に取り付けるための付加的な部材は不要である。これにより、取り付けプロセスが簡略化される。
【0176】
図4は、第1の実施例で使用されるヒートシンクの実施形態を示す。第1の実施例では、第1のヒートシンク2及び第2のヒートシンク3は、同じように作製されている。それにより、1つの製造プロセスで、2つのヒートシンクが製造され得る。
【0177】
半導体パワーモジュール5を収容するための凹部23が存在する内側21と、外側22とは区別される。
【0178】
本発明のヒートシンク2は、その内側21に3つの凹部23を含み、これらの凹部は、半導体パワーモジュール5が凹部のうちの1つに正確に適合するように成形されている。凹部23の外周には、モジュール5の外側の対応する溝に挿入されるラグ24が設けられている。ラグ及び溝は、一方では、モジュール5を機械的に固定する機能を果たし、他方では、モジュール5が正しい配向で凹部23内に組み込まれることを確実にする。
【0179】
ヒートシンクは、例えばアルミニウム部品である。ヒートシンク2/3は、例えば水のような冷却液が貫流することができ、それにより熱をシステムから放出する、流路を含む。
【0180】
更に、ヒートシンク2及び3の両方は、ヒートシンク2/3を互いに及びコンデンサ4に機械的に固定するネジ13Aを受容するための孔13を含む。
【0181】
図5は、インバータシステム1の第2の実施例を示す。
【0182】
第2の実施例は、ここでも、第1のヒートシンク2、第2のヒートシンク3及びコンデンサ4を含む。
【0183】
第1の実施例のものと同様の第2の実施例の特徴は、新たに説明されない。
【0184】
本実施形態において、コンデンサ4は、別のアセンブリの上に固定され得る最も下の構成要素であり、その上には、ヒートシンク2/3が装着されている。例えば、構造全体はモータの上に固定され得る。
【0185】
第1の実施例とは異なり、第2実施例のコンデンサ4は、底面が広げられた取り付け部4Cを備えていない。コンデンサハウジング4A全体の底面は、ヒートシンク2若しくは3の底面と同一の寸法を有する。
【0186】
更に、第1の実施例とは異なり、ネジ13Aは、第1のヒートシンク2の側から挿入されている。少なくともコンデンサ4の取り付け部4Cの孔13は、その中にネジ13が締め付けられ固定され得るカウンタースレッドを含む。
【0187】
高電圧直流プラグ4は、本実施形態では、ヒートシンク2/3に対向するコンデンサハウジング4Aの下面に取り付けられている。ここに、直接的に入力電流が接続され得る。
【0188】
コンデンサ素子若しくはEMIフィルタと半導体パワーモジュール5との間の電気的な接触は、ここでは、圧力接点15によって達成される。
【0189】
そのために、コンデンサ4の上面上に圧力接点15が取り付けられており、当該圧力接点は、導電性の材料、好ましくは導電性の金属を含む。接点15は、例えばバネ又はコンパクトなスタッドとして作製され得る。
【0190】
インバータシステム1を組み立てる際、第2のヒートシンク3は、コンデンサハウジング4Aの上面上に配置される。第2のヒートシンク3は、その中に圧力接点15が挿入され得る貫通孔16を含む。その際、圧力接点15とヒートシンク3との間の電流を回避するために、圧力接点15は、絶縁性のプラスチックジャケットによって囲まれている。代替的に、貫通孔16の内壁は、絶縁性のプラスチックジャケットで被覆されていてもよい。
【0191】
半導体パワーモジュール5を、そのために設けられた凹部23内に埋め込む際、モジュール5は、接触面17が直接的に圧力接点15上に載置されるように位置決めされている。接触面17は、金属舌部11の表面であってもよいし、モジュール5の本体5A上に直接的に配置されていてもよい。その場合、金属舌部11は必要とされない。
【0192】
その接触面17が本体5A上に直接的に配置された、そのようなモジュール5は、図6に示されている。
【0193】
半導体パワーモジュール5を収容するための凹部23は、ここでは、完全に第2のヒートシンク3内に作製されている。これにより、半導体パワーモジュールは、容易に凹部23内に埋め込まれ得る。それに反して、第1のヒートシンク3には、凹部が設けられていない。
【符号の説明】
【0194】
1 電気インバータシステム
2 第1のヒートシンク
21 ヒートシンクの内側
22 ヒートシンクの外側
23 凹部
24 ラグ
3 第2のヒートシンク
3A ヒートシンクの前面
3B ヒートシンクの背面
4 コンデンサ
4A コンデンサハウジング
4B 取り付けスタッド
4C 取り付け部
4D 高電圧直流プラグ
4E コンデンサの側面
5 半導体パワーモジュール
5A パワーモジュールの本体
5B パワーモジュールの下面
5C 熱伝導層
5D パワーモジュールの上面
5E 溝
6 ヒートシンクの間の開口
7 前側の金属舌部
8A 外部接点
8B 金属ネジ
8C 支持部
9 ピン
10A コントローラボード
10B ゲートドライバボード
11 後側の金属舌部
11A 第1の部分
11B 第2の部分
12 バスバー
13 孔
13A ネジ
14 出力電流センサ
15 圧力接点
16 貫通孔
17 接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6