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特許7585355ガス状の媒体を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニット
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  • 特許-ガス状の媒体を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ガス状の媒体を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241111BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20241111BHJP
   F04F 5/16 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04089
F04F5/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022574333
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021061071
(87)【国際公開番号】W WO2021249690
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102020207269.8
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,アルミン
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-255429(JP,A)
【文献】実開昭57-006000(JP,U)
【文献】特表2022-500832(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169218(WO,A1)
【文献】実開昭57-079152(JP,U)
【文献】特開昭61-055398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
F04F 5/00-5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体を供給および/または制御するための燃料電池システム(31)用のフィードユニット(1)であって、圧力下にあるガス状の媒体の推進ジェットによって駆動されるジェットポンプ(4)を有しており、前記フィードユニット(1)のアウトレットが燃料電池(32)のアノードインレット(5)に流体接続されており、前記ジェットポンプ(4)が、吸入領域(7)、混合管(9)およびディフューザ領域(11)を有していて、前記ジェットポンプ(4)が、前記ガス状の媒体によって前記ジェットポンプ(4)の縦軸線(52)に対して平行に延在する流れ方向IIIで貫流され、前記ディフューザ領域(11)が前記燃料電池(32)の前記アノードインレット(5)に少なくとも間接的に流体接続している形式のものにおいて、
前記ジェットポンプ(4)がハウジング構造群(6)を有していて、前記ハウジング構造群(6)が構成部分としての基体(8)および混合管インサート(17)を有しており、前記混合管インサート(17)は、特に組み立て時に少なくとも2つの前記混合管インサート(17)が前記基体(8)内に取り付け可能であるように、交換可能であり、
前記基体(8)と前記混合管インサート(17)との間に加熱エレメント(27)が配置されていることを特徴とする、ガス状の媒体を供給および/または制御するための燃料電池システム(31)用のフィードユニット(1)。
【請求項2】
構成部分としての前記基体(8)および前記混合管インサート(17)が共に、前記ジェットポンプ(4)内で少なくとも部分的に流れ領域としての前記吸入領域(7)、前記混合管(9)および前記ディフューザ領域(11)を形成しており、前記混合管インサート(17)が前記縦軸線(52)を中心にして少なくともほぼ完全に回転対称的に延在することを特徴とする、請求項1記載のフィードユニット(1)。
【請求項3】
少なくとも2つの前記混合管インサート(17)が様々な混合管半径(25)および/または様々な混合管長さ(26)を有しており、該混合管長さ(26)が前記縦軸線(52)に対して平行に延在していて、前記混合管半径(25)が前記縦軸線(52)に対して直交する方向に延在していることを特徴とする、請求項1または2記載のフィードユニット(1)。
【請求項4】
前記基体(8)がその内径に少なくとも1つの第1の段部(13)を有していて、前記混合管インサート(17)がその外径の領域にそれぞれ少なくとも1つの第2の段部(14)を有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のフィードユニット(1)。
【請求項5】
前記フィードユニット(1)が前記ジェットポンプ(4)の隣に調量弁(10)を有しており、これによって前記フィードユニット(1)が組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置(3)として構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のフィードユニット(1)。
【請求項6】
前記基体(8)および前記混合管インサート(17)が異なる材料より成っていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のフィードユニット(1)。
【請求項7】
前記混合管インサート(17)の表面粗さが、流路の領域内で前記基体(8)の表面粗さよりも低いことを特徴とする、請求項記載のフィードユニット(1)。
【請求項8】
前記混合管インサート(17)の熱容量が前記基体(8)の熱容量よりも小さい、および/または、前記混合管インサート(17)の熱伝導率が前記基体(8)の熱伝導率よりも高いことを特徴とする、請求項または記載のフィードユニット(1)。
【請求項9】
前記ガス状の媒体が水素であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のフィードユニット(1)。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載のフィードユニット(1)の使用法において、燃料電池システム(31)内で使用する、フィードユニット(1)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状の媒体、特に水素を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニット、特に燃料電池駆動装置を有する車両に使用するために設けられるフィードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両分野において、液体状の燃料の他に、将来的にガス状の燃料もますます重要になっている。特に燃料電池駆動装置を有する車両では水素ガス流を制御する必要がある。この場合、ガス流はもはや、液体状の燃料を噴射する場合のように断続的に制御されるのではなく、ガスは少なくとも1つのタンク、特に高圧タンクから取り出され、中圧管路システムの流入管路を介してエジェクタユニットにガイドされる。このエジェクタユニットは、低圧管路システムの接続管路を介してガスを燃料電池に導く。
【0003】
特許文献1から、ガス状の媒体、特に水素を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニットが公知である。この場合、フィードユニットは、圧力下にあるガス状の媒体の推進ジェットによって駆動される少なくとも1つのジェットポンプを有しており、フィードユニットのアウトレットは燃料電池のアノードインレットに流体接続されている。ジェットポンプの基体内にノズルが配置されており、ジェットポンプの基体は、吸入領域、混合管およびディフューザ領域を有していて、ガス状の媒体によって、ジェットポンプの縦軸線に対して平行に延在する流れ方向で貫流される。
【0004】
特許文献1により公知のフィードユニットはある程度の欠点を有し得る。
【0005】
様々に変化する燃料電池の大きさおよび燃料電池出力に基づく様々な顧客要求によって、例えば混合管半径および/または混合管長さ等の特に混合管の領域内に、また吸入領域および/またはディフューザ領域の隣接する流れ領域内でも、内側の流れの輪郭の幾何学的な形態に関して様々な大きさのジェットポンプが必要となり得る。これらの様々な特殊な顧客要求は、個別の部分平面に関連して、特にフィードユニットの基体、またフィードユニット全体に至る構造群平面に関連して高いバリエーション多様性を生ぜしめる。これによって、高価なロジスティックコスト、製造コスト、高価な装備コスト、付加価値連鎖の始まりにおける少ないバリエーション形成並びに少量の装入量によるコスト的な欠点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許公開第102018213313号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、ガス状の媒体、特に水素を供給および/または制御するための燃料電池システム用のフィードユニットであって、圧力下にあるガス状の媒体の推進ジェットによって駆動されるジェットポンプを有しており、フィードユニットのアウトレットが燃料電池のアノードインレットに流体接続されており、ジェットポンプが、吸入領域、混合管およびディフューザ領域を有していて、ガス状の媒体によってジェットポンプの縦軸線に対して平行に延在する流れ方向IIIで貫流され、ディフューザ領域が燃料電池のアノードインレットに少なくとも間接的に流体接続している。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に関連して、フィードユニットの本発明による形態は、ジェットポンプがハウジング構造群を有していて、このハウジング構造群が構成部分としての基体および混合管インサートを有しており、混合管インサートは、特に組み立て時に少なくとも2つの混合管インサートが基体内に取り付け可能であるように、交換可能である、という利点を提供する。このような形式で、ジェットポンプの内側の流れの輪郭の幾何学的な形状に関する様々な顧客要求において、分散が混合管インサートによって描かれることが可能であり、これに対して基体は一定である、という利点が得られる。この場合、組み立て時に、流れの幾何学形状に関するそれぞれ必要とされる要求を表すそれぞれ1つの混合管インサートが基体内に取り付けられる。基体は、その幾何学的な形態に関して顧客の要求に関係なく、一定である。したがって、ジェットポンプの内側の流れの輪郭の様々な顧客要求および/または幾何学的形態のために、ジェットポンプの同一の基体を使用することができる。このような形式で、個別の部分平面、特にフィードユニットの基体、またフィードユニット全体に至る構造群平面に関するバリエーション多様性は低減される。これによって、ロジスティック費用および/または製造費用が削減され、それによりロジスティックコストおよび/または製造コストが削減され得る、という利点が得られる。さらに、基体の装入量が増大されるので、装備コストが低減され得る。この場合、フィードユニット全体のコストは低減され、これに対してさらにそれぞれのフィードユニットの製造時間および/または生産時間は短縮され得る。
【0009】
従属請求項は本発明の好適な発展形態に関するものである。
【0010】
フィードユニットの好適な実施形態によれば、構成部分としての基体および混合管インサートが共に、ジェットポンプ内で少なくとも部分的に流れ領域としての吸入領域、混合管およびディフューザ領域を形成している。このような形式で、ジェットポンプの内側の流れの輪郭の少なくともほぼ一部が基体と混合管インサートとによって形成され、これにより、製造コストは削減され得る。何故ならば、流れの輪郭の幾何学形状は、これら2つの構成部分内にだけ、1つの製造プロセスによって形成されればよいからである。本発明による混合管インサートの成形は、この構成部分のための製造コストが著しく低減され得るという利点を提供する。何故ならば、この構成部分は例えば施削加工法等の安価な方法を用いて製造され得るからである。このような形式で、フィード装置全体のコストは低減され得る。
【0011】
フィードユニットの特に好適な発展形態によれば、少なくとも2つの混合管インサートが様々な混合管半径および/または様々な混合管長さを有しており、この場合、混合管長さが縦軸線に対して平行に延在していて、混合管半径が縦軸線に対して直交する方向に延在している。このような形式で、フィードユニットの製造バリエーションが少なくともほぼ完全に構成部分としての混合管インサートにシフトされ、これによって、フィードユニットを製造するための製造コストおよび/またはロジスティックコストが削減され得る、という利点が得られる。様々な混合管半径および/または様々な混合管長さを有する様々な混合管インサートを取り付けることができることによって、それぞれの顧客要求に適合する多数の流れの輪郭をジェットポンプおよびフィードユニットに形成することができる。この場合、必要な体積流量、圧力、燃料電池の理想的な作動点、燃料電池システム内に取り付けられたジェットポンプの数、温度、車両全体および/または燃料電池の出力等のファクターが、必要とされる混合管半径および必要とされる混合管長さに影響を与える。この場合、フィードユニットおよび/またはジェットポンプに関する様々な顧客要求は、組み立て時にそれぞれ適合する混合管インサートを取り付け、これに対してジェットポンプの標準的な基体はそのまま維持され得るように、実現され得る。したがって、ジェットポンプの効率は改善され、これに対して、総コスト、特にジェットポンプおよびフィードユニットの製造コストは低減され得る。
【0012】
フィードユニットの好適な実施形態によれば、基体がその内径に少なくとも1つの第1の段部を有していて、混合管インサートがその外径の領域にそれぞれ少なくとも1つの第2の段部を有している。このような形式で、それぞれ必要とされる混合管インサートが縦軸線の方向で基体内に押し込まれることによって、迅速かつ安価な組み立てが実現され得る。この場合、混合管インサートは、縦軸線に対して直交する方向で、その外径が基体の内径と少なくとも間接的に当接するように、固定される。縦軸線の方向で、混合管インサートは一方向で第2の段部によって固定されており、第2の段部は基体の第1の段部に当接する。さらに、混合管インサートは、混合管インサートの外径を小さくし、それによってより簡単な組み立てを可能にするために、組み立て前に冷却されてよい。
【0013】
フィードユニットの特に好適な実施形態によれば、フィードユニットはジェットポンプの隣に調量弁を有しており、これによってフィードユニットが組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置として構成されている。このような形式で、一方では、調量弁とジェットポンプとの間のできるだけ短い流路接続部が実現され得るという利点が得られる。何故ならば、これら2つの構成部材は、1つの共通の基体内に空間的に直に互いに隣り合って位置していて、かつ/またはこれら2つの構成部材間の流路接続部は流れの変向を少なくともほぼ有していないからである。この場合、ガス状の媒体と流路との間の摩擦損失は低減され、それによってフィード装置の効率は改善され得る。他方では、調量弁とジェットポンプとが基体の内側および/または基体に接して配置されている、組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置としてのフィードユニットの好適な実施形態によって、これら2つの構成部材の表面は縮小され、それによってフィードユニットの改善された冷間始動能力が得られる。この場合、構成部材としての調量弁およびジェットポンプは、車両の停止時に低い温度でゆっくりと冷却される。しかも、組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置として構成された構成部材としての調量弁およびジェットポンプの比較的素早い加熱が可能である。このような形式で、例えばシステム内または構成部材内におけるアイスブリッジが減少されることによって、フィードユニットの故障の確率は低下され、フィードユニットの耐用年数は高められ得る。
【0014】
特に好適な発展形態によれば、基体と混合管インサートとの間に加熱エレメントが配置されている。このような形式で、0℃を下回る低い温度での車両全体および/または燃料電池システムの長い停止時間において、内側の流れの輪郭の範囲内でガス状の媒体内に場合によっては存在する水が氷および/またはアイスブリッジを形成し得ることによって、ジェットポンプおよび/またはフィードユニット全体の改善された冷間始動手順が得られる。この場合、角の尖ったアイスブリッジが表面に損傷を与えることによって、ジェットポンプの流れにとって重要な表面および/またはジェットポンプの後続のその他の構成部材が損傷を被ることがある。加熱エレメントによって、アイスブリッジは、冷間始動手順中に溶解し、それによりフィードユニットおよび燃料電池システム全体が運転開始される前に除去され得る。このような形式で、例えばシステム内または構成部分内でアイスブリッジが減少されることによって、フィードユニットの故障確率は低下され、フィードユニットの耐用年数は高められ得る。
【0015】
フィードユニットの好適な実施形態によれば、基体と混合管インサートとが異なる材料より成っている。このような形式で、基体の材料は、圧縮強さまたは耐食性への要求を満たすように選択され、これに対して、混合管インサートの材料は、これが素早くかつ安価に加工可能であるように選択されるという利点が得られる。このような形式で、基体および混合管インサートに対する様々な要求を様々な材料選択によって可能な限り最良に満たすことができることによって、ジェットポンプおよびフィードユニットのコストは低減され得る。さらにこれによって、ジェットポンプの耐用年数は高められ、かつ/またはフィードユニットの全重量は低減され得る。
【0016】
好適な発展形態によれば、混合管インサートが、流路の領域内で高い表面品質および/または低い表面粗さを有している。このような形式で、ガス状の媒体とジェットポンプおよび/またはフィードユニットの内側の流れの輪郭との間の摩擦損失は低減され得るという利点が得られる。これによってフィードユニットの効率は改善され得る。
【0017】
フィードユニットの特に好適な実施形態によれば、混合管インサートが少なくとも部分的に、小さい熱容量および/または高い熱伝導率を有する材料より製造されている。このような形式で、冷間始動手順において混合管インサートだけが適切に加熱され、これに対して、基体は一緒に完全に加熱される必要はない。このような形式で、ヒータ出力を低下させることができる。何故ならば、混合管インサートは基体よりも早く加熱され、それによりフィードユニットの運転コストは特に冷間始動手順において低減され得るからである。
【0018】
本発明は、ここに記載した実施例および前記実施例において強調された態様だけに限定されるものではない。むしろ、請求項に記載した範囲内で、当業者の取り扱いの枠内にある多くの変化形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ジェットポンプおよび調量弁を備えたフィードユニットの概略的な断面図である。
図2図1においてXで示された、ハウジング構造群を備えたフィードユニットのジェットポンプの部分の拡大図である。
図3】構造部分としての基体、混合管インサート、加熱エレメントおよびシールエレメントを備えたハウジング構造群の、図2においてXIで示された部分を示す図である。
図4】燃料電池およびフィードユニットを備えた本発明による燃料電池装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を、図面を用いて以下に詳しく説明する。
【0021】
図1による図は、フィードユニット1の概略的な断面図を示し、フィードユニット1は組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置3を有している。組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置3は、調量弁10およびジェットポンプ4を有しており、この場合、調量弁10は、例えばねじ締結によってジェットポンプ4、特にジェットポンプ4の基体8に接続されている。
【0022】
ジェットポンプ4は、第1のインレット28、第2のインレット36a、吸入領域7、混合管9およびディフューザ領域11を有している。調量弁10は、第2の他のインレット36bおよびノズル12を有している。調量弁10は、特に縦軸線52の方向でジェットポンプ4、特にジェットポンプ4の基体8の開口内に押し込まれている。
【0023】
さらに図1には、組み合わせ型の弁/ジェットポンプ装置3が供給しようとする媒体によって流れ方向IIIで貫流されることが示されている。弁/ジェットポンプ装置3の貫流される領域の大部分が少なくとも概ね管状に構成されていて、特にHOおよびNの成分を含むHであるガス状の媒体を、フィードユニット1内で供給および/または誘導するために用いられる。ガス状の媒体は、基体8の内部で中央の流れ領域19を、縦軸線52に対して平行に流れ方向IIIで貫流し、この場合、中央の流れ領域19は、吸入領域7内のノズル12の開口の領域から始まって、混合管9を通ってディフューザ領域11内まで、例えばこのディフューザ領域11を超えて延在していて、特にフィードユニット1の貫流横断面の少なくともほぼ一定の直径を有する領域内まで達している。この場合、弁/ジェットポンプ装置3に、一方では第1のインレット28を介して再循環が供給され、この再循環は、特に、燃料電池32のアノード領域38(図4参照)、特にスタックからの未消費のHであるが、再循環は水および窒素を有していてもよい。再循環は、第1の流路IVを通って弁/ジェットポンプ装置3内に流入する。他方では、第2の流路Vで第2のインレット36を通って弁/ジェットポンプ装置3の外から、ガス状の燃料媒体、特にHが弁/ジェットポンプ装置3の開口および/または基体8および/または調量弁10内に流入し、この場合、燃料媒体は、タンク34から到来してよく、特に5barよりも大きい高圧下にある。第2のインレット36a、bは、基体8および/または調量弁10の構成部分を通って延在している。燃料媒体は、調量弁10からアクチュエータおよび完全に閉鎖可能な弁部材によって、特に断続的にノズル12を通って吸入領域7および/または混合管9内に放出される。ノズル12を通って流入する燃料媒体として用いられるHは、第1のインレット28からフィードユニット1内に流入する再循環媒体に対する圧力差および/または速度差を有しており、この場合、燃料媒体は、特に少なくとも5barのより高い圧力を有している。いわゆるジェットポンプ効果が発生すると、再循環媒体がより小さい圧力で、例えばフィードユニット1に前置接続された側路形圧縮機を使用することによって、フィードユニット1の中央の流れ領域19内に供給される。この場合、燃料媒体は、前記圧力差および特に音速にほぼ近い高い速度で、ノズル12を通って吸入領域7および/または混合管9の中央の流れ領域19内に流入する。この場合、ノズル12は、貫流横断面の形の内側の切欠を有しており、この切欠を通してガス状の媒体が、特に調量弁10から到来して吸入領域7および/または混合管9内に流入するように流れることが可能である。燃料媒体は、既に吸入領域7および/または混合管9の中央の流れ領域19内に存在している再循環媒体にぶつかる。燃料媒体と再循環媒体との間の高い速度差および/または圧力差に基づいて、媒体間で内部摩擦および乱流が発生する。この際に、速い燃料媒体と概ね遅い再循環媒体との間の境界層内でせん断応力が発生する。この応力は、パルス伝達を生ぜしめ、この際に、再循環媒体は加速され、引き裂かれる。パルス受信の原理に従って混合が行われる。この場合、再循環媒体は流れ方向IIIで加速され、再循環媒体に圧力低下が発生し、これによって吸入作用が生じ、それにより、さらなる再循環媒体が第1のインレット28の領域から後供給される。この作用は、ジェットポンプ作用と呼ばれてよい。調量弁10により燃料媒体の配量を制御することによって、再循環媒体の供給率が調整され、運転状態および運転要求に応じて燃料電池システム31(図1には示されていない)全体のそれぞれの必要に合わせられる。調量弁10が閉じた状態にある、フィードユニット1の運転状態の一例において、燃料媒体が第2のインレット36からジェットポンプ4の中央の流れ領域19内に後から流入することは阻止されるので、燃料媒体は流れ方向IIIで再循環媒体に向かって吸入領域7および/または混合管9内にそれ以上流入することはなく、それによりジェットポンプ作用は中断される。
【0024】
混合管9を通過した後で、特に再循環媒体と燃料媒体とから成る混合された、供給しようとする媒体は、流れ方向IIIでディフューザ領域11内に流入し、この際に、ディフューザ領域11内で流れ速度の低下が生じ得る。ディフューザ領域11から、媒体はさらに例えば燃料電池32のアノード領域38内に流入する。
【0025】
さらに、図1に示したフィードユニット1はジェットポンプ作用および供給効果を追加的に改善し、かつ/または冷間始動過程および/または製造費用および組み立て費用をさらに改善する技術的特徴を有している。この場合、ディフューザ領域11の内側の貫流横断面の領域の部分は、特に流れ方向IIIで拡大して円錐形に延在している。ディフューザ領域11の部分がこのように成形されていることによって、運動エネルギが圧力エネルギに変換され、それによってフィードユニット1の可能な供給量がさらに高められ、したがって、より多くの供給しようとする媒体、特にHが燃料電池32に供給され、それによって燃料電池システム31全体の効率が高められ得る、という有利な効果が得られる。
【0026】
本発明によれば、吸入領域7内および/または混合管9内への燃料媒体の精確な調量および改善された調量機能を可能にするために、調量弁10は、比例弁10として構成されていてよい。フィードユニット1の流れの幾何学形状および効率をさらに改善するために、ノズル12および混合管9は回転対称的に構成されており、ノズル12はジェットポンプ4の混合管9に対して同軸的に延在している。
【0027】
図2は、ハウジング構造群6を備えた、フィードユニット1のジェットポンプ4の、図1においてXで示した部分の拡大図を示す。ハウジング構造群6は、構造部分としての基体8および混合管インサート17を有している。ジェットポンプ4はノズル12を有しており、ノズル12はその内側に、縦軸線52を中心にして回転対称的に内側の流れ開口20を有している。流れ開口20は、中央の流れ領域19および/または吸入領域7を第2のインレット36に接続し、この流れ開口20を通って燃料媒体が流れ得る。ジェットポンプ4はハウジング構造群6を有している。ハウジング構造群6は、構成部分としての基体8および混合管インサート17を有しており、混合管インサート17は、特に組み立て時に、少なくとも2つの混合管インサート17が基体8内に取り付け可能であるように、交換可能である。このような形式で、フィードユニット1およびひいてはジェットポンプ4は、混合管インサート17だけを交換し、基体8は特にモジュール原理の枠内で様々な顧客要求のために使用され得るように、様々な顧客要求および/または仕様書要求に合わせられる。この場合、構造部分としての基体8および混合管インサート17は共に少なくとも部分的に、ジェットポンプ4の内部の流れ領域としての吸入領域7、混合管9およびディフューザ領域11を形成し、この場合、混合管インサート17は、縦軸線52を中心として少なくともほぼ完全に回転対称的に延在している。さらに、少なくとも2つの混合管インサート17は、様々な混合管半径25および/または様々な混合管長さ26を有しており、混合管長さ26は縦軸線52に対して平行に延在していて、混合管半径25は縦軸線52に対して直交する方向に延在している。この場合、混合管半径25は、縦軸線52とそれぞれの混合管インサート17の内側に位置する壁部35との間に形成される。
【0028】
さらに図2に示されているように、基体8はその内径に少なくとも1つの第1の段部13を有していて、混合管インサート17はその外径領域にそれぞれ少なくとも1つの第2の段部14を有している。混合管インサート17は、この模範的な実施例では2つの第1の段部13を有している。この場合、少なくとも1つの第1の段部13が縦軸線52の方向で第2の段部に当接している。このような形式で、混合管インサート17は、組み立て時に、混合管インサート17の第1の段部13が基体8の第2の段部14に当接するまで縦軸線52の方向で基体8内に押し込まれ、それによって、構造部分としての基体8と混合管インサート17とが特に縦軸線52の方向で互いに正確に整列され、内側の流れの輪郭が要求通りに形成されることが保証され得る。追加的にジェットポンプ4の本発明による実施態様を改善する手段は、少なくとも1つのシールエレメント15をジェットポンプ4の構成部分の段部13,14の間に配置することである。
【0029】
特にジェットポンプ4の再循環能力に関する顧客側の様々な要求に基づいて、ジェットポンプ4の中央の流れ領域19の範囲内に個別の最適な内側幾何学形状の大きい分散を発生させることができる。多くの場合、最適な幾何学形状の設計は、混合管9および/または直に隣接する流れ範囲である吸入領域7および/またはディフューザ領域11の範囲内だけが決定的に異なっている。したがって、フィードユニット1のモジュール式の構造が提案されており、このモジュール式の構造において、流れの幾何学形状の領域内の分散は構造部分としての混合管インサート17内へずらされ、ジェットポンプ4の基体8は一定に設計されている。これによって、同一部分の数が増やされ、ひいてはコスト、特に分散コストが低減され得る。これにより、フィードユニット1は、例えば顧客に応じた混合管インサート17を備えた「プラットホーム」ハウジング構造群を有する。
【0030】
さらに図2に示されているように、中央の流れ領域19内にフィードユニット1の外側から第1のインレット28を通ってガス状の再循環媒体、特にHが流入し、この場合、ガス状の再循環媒体は例えば燃料電池スタックから供給される。このガス状の再循環媒体は、流れ方向IIIでノズル12と基体8との間を通って吸入領域7および/または混合管9内に流入する。
【0031】
図3には、構成部分としての基体8、混合管インサート17、加熱エレメント27および少なくとも1つのシールエレメント15を備えた混合管9の領域内の、図2においてXIで示されたハウジング構造群6の部分が示されている。加熱エレメント27は基体8と混合管17との間に位置していてよい。この場合、基体8が第1の段部13を有していて、混合管インサート17が第2の段部14を有しており、加熱エレメント27は図示の模範的な実施例では、縦軸線52の方向で第1の段部13と第2の段部14との間に位置していることが示されている。加熱エレメント27は、縦軸線52を中心にして少なくとも概ね回転対称的および/またはスリーブ状に周回するように延在していてよい。加熱エレメント27によって、例えば冷間始動時に特にジェットポンプ4のフィードユニット1内で氷が形成される危険性は阻止され得る。何故ならば、加熱エレメント27に、例えば電気式の加熱エレメント27においては電気エネルギの形のエネルギが供給されることによって、氷は解かされるからである。しかも、冷間始動時に、そうでなければ冷たい混合管内で水が再凍結することは阻止され得る。加熱エレメント27の接触接続は、例えば基体8内の孔を通して実現され得る。この場合、図3に示された模範的な実施例では、例えばOリング15として構成され得る、回転軸線52回りを環状に巡るそれぞれ別個のシールエレメント15が、加熱エレメント27を、ジェットポンプ4の中央の流れ領域19から供給されるガス状の媒体および/またはその他の液体に対してカプセル状に閉じ込めることが示されており、その結果、例えば電気構成部分の損傷は避けられ得る。
【0032】
さらに、基体8および混合管インサート17が様々な材料より成っていれば好適である。この場合、好適な形式で、混合管インサート17は少なくとも部分的に、特に基体8の材料と比較して小さい熱容量および/または高い熱伝導率を有している材料から製造されている。このような形式で、加熱エレメント27によって混合管インサート17の迅速な加熱が得られ、これに対して基体8はわずかに加熱されるだけである。これによって、基体8を不必要に加熱するエネルギは低減される。何故ならば、混合管インサートの表面の領域内のアイスブリッジだけが除去されるべきだからである。さらに、混合管インサート17が、流路の範囲内に特に基体8と比較して高い表面品質および/または低い表面粗さを有していれば、さらに好適である。流れの輪郭にとって、高い表面品質および/または低い表面粗さ、ガス状の媒体とフィードユニット1との間のより小さい摩擦損失が重要であるが、この場合、流れの輪郭は、少なくともほぼ混合管インサート17の領域内だけに存在する。これによって、フィードユニット1の製造コストは低減され、これに対してフィードユニット1の効率は高められ得る。
【0033】
図4には、燃料電池システム31、特にアノード循環路の模範的な実施例が示されている。この場合、フィードユニット1は接続管路29を介して、アノード領域38およびカソード領域40を有する燃料電池32と接続されていることが示されている。さらに、再循環管路23が設けられており、この再循環管路23は、燃料電池32のアノード領域38を第1のインレット28、ひいては特にフィードユニット1の吸入領域7に接続する。再循環管路23によって、燃料電池32の運転時にアノード領域38内で利用できない第1のガス状の媒体が、第1のインレット28に戻される。この第1のガス状の媒体は、特に前記再循環媒体である。
【0034】
さらに図4に示されているように、タンク34内に溜められた第2のガス状の媒体は流入管路21を介して、フィードユニット1および/またはジェットポンプ4の特に第2のインレット36として構成された流入領域に供給される。この第2のガス状の媒体は特に燃料媒体である。
【符号の説明】
【0035】
1 フィードユニット
3 弁/ジェットポンプ装置
4 ジェットポンプ
5 アノードインレット
6 ハウジング構造群
7 吸入領域
8 基体
9 混合管
10 調量弁、比例弁
11 ディフューザ領域
12 ノズル
13 第1の段部
14 第2の段部
15 シールエレメント、Oリング
17 混合管インサート
19 中央の流れ領域
20 流れ開口
21 流入管路
23 再循環管路
25 混合管半径
26 混合管長さ
27 加熱エレメント
28 第1のインレット
29 接続管路
31 燃料電池システム
32 燃料電池
36 第2のインレット
36a 第2のインレット
36b その他のインレット
38 アノード領域
40 カソード領域
52 縦軸線、回転軸線
III 流れ方向
IV 第1の流路
図1
図2
図3
図4