IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-環境形成装置 図1
  • 特許-環境形成装置 図2
  • 特許-環境形成装置 図3
  • 特許-環境形成装置 図4
  • 特許-環境形成装置 図5
  • 特許-環境形成装置 図6
  • 特許-環境形成装置 図7
  • 特許-環境形成装置 図8
  • 特許-環境形成装置 図9
  • 特許-環境形成装置 図10
  • 特許-環境形成装置 図11
  • 特許-環境形成装置 図12
  • 特許-環境形成装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023053356
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2021018468の分割
【原出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2023073406
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020030644
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅昭
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-095063(JP,A)
【文献】特開2007-225496(JP,A)
【文献】特表2011-526688(JP,A)
【文献】特開2010-181221(JP,A)
【文献】特開昭61-139740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335472(US,A1)
【文献】特開2015-064250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記環境形成室の第1壁面側から前記空調室に流入した空気の温度を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記第1壁面に対向する前記環境形成室の第2壁面側に配置され、前記第2壁面から前記第1壁面に向かう方向に、前記空調室から前記環境形成室に空調空気を送出する複数の送風ファンと、
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御することにより、前記環境形成室内に所定の環境を形成する環境形成ステップの変化に同期させて、複数の前記環境形成ステップに関して異なる非均一な温度分布を前記環境形成室内に形成し、
前記環境形成ステップは、前記環境形成室内の温度を一の温度から他の温度へと変化させる温度変化ステップを含む、
環境形成装置。
【請求項2】
対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記環境形成室の第1壁面側から前記空調室に流入した空気の温度を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記第1壁面に対向する前記環境形成室の第2壁面側に配置され、前記第2壁面から前記第1壁面に向かう方向に、前記空調室から前記環境形成室に空調空気を送出する複数の送風ファンと、
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御することにより、前記環境形成室内に所定の環境を形成する環境形成ステップの変化に同期させて、前記環境形成室の内部空間の中央部へ集中的に送風することによる非均一な温度分布と、前記内部空間の周縁部へ集中的に送風することによる非均一な温度分布とを、前記環境形成室内に形成する、環境形成装置。
【請求項3】
対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記環境形成室の第1壁面側から前記空調室に流入した空気の温度を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記第1壁面に対向する前記環境形成室の第2壁面側に配置され、前記第2壁面から前記第1壁面に向かう方向に、前記空調室から前記環境形成室に空調空気を送出する複数の送風ファンと、
制御手段と、
を備え、
前記環境形成室内に所定の環境を形成する環境形成ステップは、前記環境形成室内の温度を変化させる温度変化ステップと、前記環境形成室内の温度を維持する温度維持ステップとを有し、
前記制御手段は、
前記温度変化ステップにおいては、前記複数の送風ファンのうち、前記環境形成室の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させ、前記環境形成室の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に低下させ、
前記温度維持ステップにおいては、前記複数の送風ファンのうち、前記環境形成室の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に低下させ、前記環境形成室の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させる、環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境形成装置に関し、特に、対象物が収容される環境形成室の内部空間の温度分布を細密に制御することが可能な環境形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の被試験物の性能等を評価するための試験として、環境試験が知られている。環境試験では、試験室内に収容された被試験物に対して温度等の環境ストレスを印加することにより、被試験物の性能等が評価される。また、環境試験を実施するための装置として、環境試験装置が知られている。背景技術に係る環境試験装置は、断熱性筐体に囲まれた試験室と、試験室に連通する空調室と、空調室内に配置されたヒータ及びクーラ等の空調装置と、空調装置によって生成された空調空気を空調室の通風路から試験室に送出する送風機とを備えて構成されている。送風機としては、1台の送風ファンが、試験室の一つの側壁側に位置するように配置されている。
【0003】
また、下記特許文献1には、試験室の上方の温度調節部内に配置された空調装置と、温度調節部内において左右方向に並んで配置された2台の遠心ファンと、試験室内の温度分布を検出する複数の温度センサとを備えた環境試験装置が開示されている。試験室と温度調節部から下方に伸びる送風路とを仕切る第1の仕切り壁には、上下左右方向に並ぶ多数の通風口が形成されている。同様に、第1の仕切り壁に対向して、試験室と温度調節部から下方に伸びる排気路とを仕切る第2の仕切り壁には、上下左右方向に並ぶ多数の通風口が形成されている。遠心ファンから送出された空調空気は、送風路を通って温度調節部から下方に案内され、第1の仕切り壁の通風口から試験室内に送出される。送出された空調空気は、試験室内を通過した後、第2の仕切り壁の通風口から排気され、排気路を通って上方の温度調節部に案内される。当該環境試験装置では、温度センサの検出結果に基づいて、試験室の内部空間のうち温度ばらつきの大きい領域に重点的に空調空気を送風することによって、試験室内の温度分布が均一になるように2台の遠心ファンの各々の送風量が個別に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5969968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術に係る環境試験装置によると、1台の送風ファンが側壁の略中央部に配置されているため、試験室の内部空間の周縁部に送出される送風量は、中央部に送出される送風量よりも相対的に小さくなる。そのため、周縁部と中央部とで試験室の内部空間に温度差が生じることがあった。また、試験室内に複数の被試験物が並べて収容される場合には、送風機から送出された空調空気は上流の被試験物に遮られて下流の被試験物に届きにくくなることがあり、送風経路の上流側と下流側とで試験室の内部空間に温度差が生じることがあった。このように、上記背景技術に係る環境試験装置によると、様々な要因によって、試験室の内部空間の温度分布に意図しないばらつきが生じる場合があった。
【0006】
上記特許文献1に開示された環境試験装置によると、左右方向に並ぶ2台の遠心ファンの各々の送風量を個別に制御することによって、試験室内の左半領域と右半領域とで風量を互いに異ならせることができる。しかし、左半領域及び右半領域の各領域内に関しては、例えば左側の遠心ファンの送風量を増大すれば左半領域内の風量が全体的に増加し、例えば右側の遠心ファンの送風量を減少すれば右半領域内の風量が全体的に低下する。つまり、左半領域及び右半領域の各領域内の一部分のみの風量を増加又は低下させるという風量制御は不可能である。そのため、上記特許文献1に開示された環境試験装置によると、試験室の内部空間の温度分布を制御するにあたり、その制御の細密度が不十分な場合がある。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された環境試験装置では、試験室の内部空間の温度分布を均一にすることが制御の目標とされている。しかし、環境試験の試験ステップの内容によっては必ずしも均一な温度分布が最適であるとは限らないため、試験ステップの内容に応じて、非均一な温度分布を含む所望の温度分布を試験室内に形成する手段の実現が望まれる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、対象物が収容される環境形成室の内部空間の温度分布を細密に制御することが可能な環境形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る環境形成装置は、対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記環境形成室の第1壁面側から前記空調室に流入した空気の温度を調節することによって空調空気を生成する第1空調手段と、前記第1壁面に対向する前記環境形成室の第2壁面側において複数の方向に沿って並べて配置され、前記第2壁面から前記第1壁面に向かう方向に、前記空調室から前記環境形成室に空調空気を送出する複数の送風ファンと、前記複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
この態様に係る環境形成装置によれば、環境形成室の第2壁面側には複数の送風ファンが複数の方向に沿って並べて配置されており、制御手段は複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御する。このように、複数の方向に沿って並べて配置された複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御することにより、環境形成室内の各領域における空調空気の流れを任意に制御することができる。その結果、均一な温度分布及び非均一な温度分布を含めて、環境形成室の内部空間の温度分布を細密に制御することが可能となる。
【0011】
例えば、均一な温度分布を環境形成室内に形成することにより、複数の対象物が環境形成室内の複数の箇所に分散して収容されている場合であっても、環境形成室内における収容箇所に拘わらず、各対象物に同一の温度ストレスを印加することが可能となる。
【0012】
また、ある特定の非均一な温度分布が最適である環境形成ステップを実行する際に、その非均一な温度分布を環境形成室内に形成することにより、最適な温度分布でその環境形成ステップを実行することが可能となる。
【0013】
上記態様に係る環境形成装置において、前記第1壁面側の複数の箇所に配置された複数の第1温度検出手段をさらに備えることが望ましい。
【0014】
この態様に係る環境形成装置によれば、環境形成室内において空調空気の流れの最下流である第1壁面側の複数の箇所に、複数の第1温度検出手段が配置されている。従って、制御手段は、複数の第1温度検出手段の検出結果に基づいて、所望の温度分布が環境形成室内に正しく形成されているか否かを判定できる。そして、制御手段は、その判定結果に基づいて複数の送風ファンの各々を個別にフィードバック制御することにより、環境形成室内に所望の温度分布を適切に形成することが可能となる。
【0015】
上記態様に係る環境形成装置において、前記複数の第1温度検出手段と、前記複数の送風ファンとは、同数かつ同一のレイアウトで配置されていることが望ましい。
【0016】
この態様に係る環境形成装置によれば、複数の第1温度検出手段と複数の送風ファンとは、同数かつ同一のレイアウトで配置されている。従って、第1温度検出手段と送風ファンとは一対一に対応しているため、制御手段は、第1温度検出手段の検出結果に基づいて、各第1温度検出手段に対応する送風ファンを容易にフィードバック制御することが可能となる。
【0017】
上記態様に係る環境形成装置において、前記複数の送風ファンに対応して配置され、前記複数の送風ファンの各々によって前記環境形成室に送出される空調空気の温度を調節する、複数の第2空調手段をさらに備え、前記制御手段はさらに、前記複数の第2空調手段の各々の空調温度を個別に制御することが望ましい。
【0018】
この態様に係る環境形成装置によれば、複数の送風ファンに対応して複数の第2空調手段が配置されており、制御手段が複数の第2空調手段の各々の空調温度を個別に制御することにより、複数の送風ファンの各々によって環境形成室に送出される空調空気の温度が調節される。従って、複数の送風ファンの各々において、空調空気の流れのみならずその温度をも制御できるため、環境形成室の内部空間の温度分布をより細密に制御することが可能となる。
【0019】
上記態様に係る環境形成装置において、前記制御手段は、前記複数の第1温度検出手段のうちある特定の第1温度検出手段による検出温度が目標設定温度に到達していない場合には、前記複数の送風ファンのうち当該特定の第1温度検出手段に対応する特定の送風ファンの回転速度を増大させ、それでもなお当該特定の第1温度検出手段による検出温度が前記目標設定温度に到達しない場合に、前記複数の第2空調手段のうち当該特定の第1温度検出手段に対応する特定の第2空調手段を駆動させることが望ましい。
【0020】
この態様に係る環境形成装置によれば、制御手段は、特定の第1温度検出手段による検出温度が目標設定温度に到達していない場合には、当該特定の第1温度検出手段に対応する特定の送風ファンの回転速度を増大させ、それでもなお当該特定の第1温度検出手段による検出温度が目標設定温度に到達しない場合に、当該特定の第1温度検出手段に対応する特定の第2空調手段を駆動させる。従って、特定の送風ファンの回転速度を増大させると特定の第1温度検出手段による検出温度が目標設定温度となる場合には、特定の第2空調手段を駆動する必要がないため、特定の第2空調手段を駆動することに伴う過熱又は過冷却の発生の可能性を低減することが可能となる。
【0021】
上記態様に係る環境形成装置において、前記第2壁面側の複数の箇所に配置された複数の第2温度検出手段をさらに備えることが望ましい。
【0022】
この態様に係る環境形成装置によれば、環境形成室内において空調空気の流れの最上流である第2壁面側の複数の箇所に、複数の第2温度検出手段が配置されている。従って、第1空調手段及び第2空調手段によって空調空気の温度が許容上限値より過熱されている場合又は許容下限値より過冷却されている場合には、制御手段は、複数の第2温度検出手段の検出結果に基づいて、過熱又は過冷却の発生場所を特定できる。そして、制御手段は、その特定結果に基づいて複数の第2空調手段の各々を個別にフィードバック制御することにより、複数の送風ファンによって環境形成室に送出される空調空気の温度を許容上限値以下又は許容下限値以上に抑えることができる。その結果、過熱又は過冷却された空調空気に曝されることに起因する対象物の故障等を予め回避することが可能となる。
【0023】
上記態様に係る環境形成装置において、前記複数の第2温度検出手段と、前記複数の送風ファンとは、同数かつ同一のレイアウトで配置されていることが望ましい。
【0024】
この態様に係る環境形成装置によれば、複数の第2温度検出手段と複数の送風ファンとは、同数かつ同一のレイアウトで配置されている。従って、第2温度検出手段と第2空調手段とは一対一に対応しているため、制御手段は、第2温度検出手段の検出結果に基づいて、各第2温度検出手段に対応する第2空調手段を容易にフィードバック制御することが可能となる。
【0025】
上記態様に係る環境形成装置において、前記複数の送風ファンの各々は、直流モータによって駆動されることが望ましい。
【0026】
この態様に係る環境形成装置によれば、複数の送風ファンの各々は直流モータによって駆動される。従って、交流モータによって駆動する場合と比較すると、制御手段は、応答性良く送風ファンを制御できるとともに、低速域から高速域まで広い調整範囲で送風ファンの回転速度を制御することが可能となる。
【0027】
本発明の一態様に係る環境形成装置は、対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記環境形成室の第1壁面側から前記空調室に流入した空気の温度を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記第1壁面に対向する前記環境形成室の第2壁面側に配置され、前記第2壁面から前記第1壁面に向かう方向に、前記空調室から前記環境形成室に空調空気を送出する複数の送風ファンと、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御することにより、前記環境形成室内に所定の環境を形成する環境形成ステップの変化に同期させて、非均一な温度分布を前記環境形成室内に形成することを特徴とするものである。
【0028】
この態様に係る環境形成装置によれば、環境形成室の第2壁面側には複数の送風ファンが配置されており、制御手段は、複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御することにより、環境形成ステップの変化に同期させて、非均一な温度分布を環境形成室内に形成する。従って、特定の非均一な温度分布が最適である環境形成ステップを実行する際に、制御手段が複数の送風ファンの各々の回転速度を個別に制御してその非均一な温度分布を環境形成室内に形成することによって、最適な温度分布でその環境形成ステップを実行することが可能となる。
【0029】
上記態様に係る環境形成装置において、前記環境形成ステップは、前記環境形成室内の温度を変化させる温度変化ステップと、前記環境形成室内の温度を維持する温度維持ステップとを有し、前記制御手段は、前記温度変化ステップにおいては、前記複数の送風ファンのうち、前記環境形成室の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させ、前記環境形成室の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に低下させ、前記温度維持ステップにおいては、前記複数の送風ファンのうち、前記環境形成室の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に低下させ、前記環境形成室の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させることが望ましい。
【0030】
この態様に係る環境形成装置によれば、制御手段は、温度変化ステップにおいては、複数の送風ファンのうち、環境形成室の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させる。対象物は、環境形成室の内部空間の中央部に収容されることが多い。そのため、中央部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させることにより、対象物に向けてより多くの空調空気を送出できるため、対象物に対して温度ストレスを効率的に印加することが可能となる。その結果、中央部に複数の対象物が収容されている場合に、温度変化ステップの実行中における対象物の温度遷移を促進できるとともに温度ばらつきを低減することが可能となる。また、制御手段は、温度維持ステップにおいては、複数の送風ファンのうち、環境形成室の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファンの回転速度を相対的に増大させる。これにより、周縁部である環境形成室の壁面、天井面、及び床面に向けて、より多くの空調空気を送出することができる。その結果、環境形成室の外気温が環境形成室の内部空間の温度に及ぼす影響を緩和できるため、環境形成室内の温度を安定的に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、対象物が収容される環境形成室の内部空間の温度分布を細密に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
図2】複数の送風ファンの配置レイアウトを模式的に示す図である。
図3】複数のサブヒータの配置レイアウトを模式的に示す図である。
図4】複数の直流モータの配置レイアウトを模式的に示す図である。
図5】複数の温度センサの配置レイアウトを模式的に示す図である。
図6】複数の温度センサの配置レイアウトを模式的に示す図である。
図7】環境試験装置が備える制御部を示す図である。
図8】制御部による環境試験装置の制御方法を示すフローチャートである。
図9】環境試験装置による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。
図10】複数の送風ファンの配置レイアウトの変形例を模式的に示す図である。
図11】複数の送風ファンの配置レイアウトの変形例を模式的に示す図である。
図12】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
図13】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0034】
<環境試験装置1の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。本実施の形態の例において、環境形成装置は、対象物である被試験物6に対して所定の温度ストレスを印加することによって被試験物6の性能等を評価するための環境試験装置1として構成されている。但し、環境試験装置1は、加湿器が追加実装されることによって、被試験物6に対して所定の温度ストレス及び湿度ストレスを印加する恒温恒湿槽として構成されても良い。また、環境試験装置1は、被試験物6に対して所定の温度ストレス及び電圧ストレスを印加することによって初期不良品をスクリーニングするためのバーンイン試験装置として構成されても良い。被試験物6は、例えば、回路基板等の電子部品である。なお、以下の説明では、図1に示したように、水平方向に沿って延在するX軸と、鉛直方向に沿って延在するY軸と、X軸及びY軸の双方に直交するZ軸とを有する直交座標系によって、方向を規定するものとする。図1に示した直交座標系には、X軸の延在方向と反対の方向に延在するW軸を示している。
【0035】
環境試験装置1は、断熱性の筐体2によって囲まれた試験室3(環境形成室)及び空調室4を備えている。試験室3は、互いに対向する第1壁面7及び第2壁面9を有している。空調室4は、第1壁面7と筐体2の内面2Aとによって区画される第1空間部41と、第2壁面9と筐体2の内面2Bとによって区画される第2空間部42と、第1空間部41と第2空間部42とを接続する接続空間部43と、を有している。第1壁面7には複数の通風口8が形成されており、第2壁面9には複数の通風口10が形成されている。試験室3と空調室4とは、これら複数の通風口8,10を介して互いに連通している。なお、複数の通風口8が形成された第1壁面7は省略されても良く、その場合は、筐体2の内面2Aが試験室3の第1壁面となる。また、第1壁面7又は内面2Aは、外部から試験室3にアクセスするための扉の内面であっても良く、その場合は、扉の内面が試験室3の第1壁面となる。
【0036】
試験室3内には、棚板5が設置されている。棚板5は、複数の棒状部材が交差配列された格子状の外観形状を有している。被試験物6は、棚板5上に載置されている。図1に示した例では、棚板5が試験室3内において複数段に設置され、各棚板5上に複数の被試験物6が並べて載置されることにより、試験室3の内部空間の中央部に複数の被試験物6が収容されている。但し、試験室3内に設置される棚板5の段数は1段以上であれば良く、また、各棚板5上に載置される被試験物6の個数は1個以上であれば良い。
【0037】
空調室4の接続空間部43内には、冷却装置としてのクーラ11と、加熱装置としてのメインヒータ12とが配置されている。クーラ11及びメインヒータ12は、第1空調手段として機能し、試験室3から第1壁面7の通風口8を介して空調室4に流入した空気を冷却又は加熱することによって、所望の温度に調整された空調空気を生成する。後述する制御部30によって、クーラ11及びメインヒータ12の空調温度が制御される。
【0038】
また、試験室3内には、後述する複数の温度センサ17,18が配置されている。
【0039】
試験室3の第2壁面9側には、複数の送風ファン13が配置されている。送風ファン13は、直流モータ14と、直流モータ14の回転軸15の先端部に固定された複数の羽根と、を有する軸流ファンとして構成されている。直流モータ14は、筐体2の外部に配置されている。回転軸15は、筐体2の外壁を貫通し、空調室4内を試験室3に向かってW方向に沿って延在している。回転軸15の先端部は、第2壁面9の通風口10の中心と同心位置に配置されている。送風ファン13の羽根は、通風口10と同一面内に配置されている。直流モータ14が駆動されて送風ファン13が回転すると、空調空気が空調室4から通風口10を介して試験室3内に送出される。送風ファン13の羽根はY-Z平面内で回転するため、送風ファン13によって試験室3内に送出された空調空気は、図1中の太い直線矢印で示すように概ねW方向に向かって進行し、試験室3内を通過した後、第1壁面7の通風口8から空調室4に排気される。
【0040】
図2は、複数の送風ファン13の配置レイアウトを模式的に示す図であり、図1に示したラインII-IIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。本実施の形態の例において、環境試験装置1は、Y方向及びZ方向の各方向に沿って3個の送風ファン13が互いに離間して並べられ、3行×3列のマトリクス状に配列された、合計9個の送風ファン131~139を備えている。送風ファン131~139は、第2壁面9の中央部及び周縁部を含む全領域に跨って分散配置されている。後述する制御部30によって、送風ファン131~139の各々の回転速度が個別に制御される。
【0041】
また、第2壁面9には、複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の通風口10が形成されている。本実施の形態の例では、3行×3列のマトリクス状に合計9個の円形の通風口101~109が形成されている。各通風口101~109は、その円の中心が各送風ファン131~139の回転軸15と同心となる位置に形成されている。
【0042】
図1に示したように、空調室4の第2空間部42内には、各送風ファン13に対応してサブヒータ16が配置されている。サブヒータ16は、送風ファン13の羽根と直流モータ14との間で、羽根に近接する位置に配置されている。サブヒータ16は、送風ファン13の回転軸15の回転動作に干渉しない位置及び形状で配置されている。サブヒータ16は、第2空調手段として機能し、メインヒータ12によって生成された空調空気をさらに加熱することにより、各送風ファン13によって試験室3内に送出される空調空気の温度を微調整する。
【0043】
図3は、複数のサブヒータ16の配置レイアウトを模式的に示す図であり、図1に示したラインIII-IIIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数のサブヒータ16が配置されている。本実施の形態の例では、3行×3列のマトリクス状に合計9個のサブヒータ161~169が配置されている。後述する制御部30によって、サブヒータ161~169の各々の空調温度が個別に制御される。
【0044】
図4は、複数の直流モータ14の配置レイアウトを模式的に示す図であり、図1に示したラインIV-IVに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。本実施の形態の例では、3行×3列のマトリクス状に合計9個の直流モータ141~149が配置されている。
【0045】
図1に示したように、第1温度検出手段としての複数の温度センサ17が、試験室3の第1壁面7に近接して配置されている。第1壁面7は送風ファン13による空調空気の送風経路の最下流に位置しているため、温度センサ17によって当該最下流における試験室3内の空気の温度が検出される。
【0046】
図5は、複数の温度センサ17の配置レイアウトを模式的に示す図であり、図1に示したラインV-Vに沿った位置をW方向に眺めた平面図に相当する。複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の温度センサ17が配置されている。本実施の形態の例では、3行×3列のマトリクス状に合計9個の温度センサ171~179が配置されている。温度センサ171~179による各々の検出温度は、後述する制御部30に入力される。温度センサ171~179は、複数の棒状部材が交差配列された格子状のフレーム20の各交点に配置されている。このフレーム20は、第1壁面7に近接して試験室3の内壁に固定される。また、図1に示したように、各温度センサ171~179は、対応する送風ファン131~139の回転軸15の延長線上に配置されている。
【0047】
図1に示したように、第2温度検出手段としての複数の温度センサ18が、試験室3の第2壁面9に近接して配置されている。温度センサ18は、送風ファン13に近接して配置されている。第2壁面9は送風ファン13による空調空気の送風経路の最上流に位置しているため、温度センサ18によって当該最上流における試験室3内の空気の温度が検出される。
【0048】
図6は、複数の温度センサ18の配置レイアウトを模式的に示す図であり、図1に示したラインVI-VIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の温度センサ18が配置されている。本実施の形態の例では、3行×3列のマトリクス状に合計9個の温度センサ181~189が配置されている。温度センサ181~189による各々の検出温度は、後述する制御部30に入力される。温度センサ181~189は、複数の棒状部材が交差配列された格子状のフレーム21の各交点に配置されている。このフレーム21は、第2壁面9に近接して試験室3の内壁に固定される。また、図1に示したように、各温度センサ181~189は、対応する送風ファン131~139の回転軸15の延長線上に配置されている。
【0049】
図7は、環境試験装置1が備える制御部30を示す図である。制御部30として機能するCPU等のプロセッサは、筐体2の外部に配置されている。制御部30には、温度センサ171~179から温度検出信号S11~S19がそれぞれ入力される。また、制御部30には、温度センサ181~189から温度検出信号S21~S29がそれぞれ入力される。制御部30は、駆動信号S3によってクーラ11の駆動を制御する。制御部30は、駆動信号S4によってメインヒータ12の駆動を制御する。制御部30は、駆動信号S51~S59によって直流モータ141~149の出力を個別に制御することにより、送風ファン131~139の回転速度を0以上かつ最大値Vmax以下の範囲内で個別に制御する。制御部30は、駆動信号S61~S69によってサブヒータ161~169を個別に駆動することにより、メインヒータ12を通過した空調空気の温度を、サブヒータ161~169による追加加熱によって個別に制御する。これにより、送風ファン131~139の各々によって試験室3に送出される空調空気の温度が、サブヒータ161~169によって個別に調整される。
【0050】
<環境試験装置1の動作>
図8は、制御部30による環境試験装置1の制御方法を示すフローチャートである。ここでは、許容上限温度Tmax未満の所定の高温(例えば150℃)を目標設定温度TPとして、当該目標設定温度TPの均一な温度分布を試験室3内に形成する場合の動作について説明する。初期状態では、クーラ11、メインヒータ12、サブヒータ161~169、及び送風ファン131~139は、いずれも駆動が停止されている。
【0051】
被試験物6が棚板5上に載置された後に環境試験の実行開始命令が入力されると、まずステップSP101において制御部30は、駆動信号S51~S59によって直流モータ141~149を駆動することにより、初期値V0(<Vmax)の回転速度で全ての送風ファン131~139の駆動を開始する。
【0052】
次にステップSP102において、制御部30は、温度センサ171~179,181~189から温度検出信号S11~S19,S21~S29を入力する。そして、制御部30は、温度検出信号S11~S19,S21~S29で表される検出温度T171~T179,T181~T189の中の最大値を特定し、当該最大値が目標設定温度TP未満であるか否かを判定する。この時点ではメインヒータ12はまだ駆動されておらず、試験室3の内部空間の温度は常温であるため、当該最大値は目標設定温度TP未満となる。
【0053】
検出温度T171~T179,T181~T189の最大値が目標設定温度TP未満である場合(ステップSP102:YES)は、ステップSP103に移行し、制御部30が、駆動信号S4によってメインヒータ12を制御することにより、メインヒータ12の出力を所定量だけ増大させる。これにより、メインヒータ12は空気の加熱を開始する。そして、制御部30は、ステップSP102の判定を再度実行する。メインヒータ12の駆動開始直後は試験室3の内部空間の温度はさほど上昇していないため、しばらくの間はステップSP102,SP103の処理が繰り返し実行される。
【0054】
試験室3の内部空間の温度が上昇し、検出温度T171~T179,T181~T189の最大値が目標設定温度TP以上となる(ステップSP102:NO)と、制御部30は、送風ファン13N(本実施の形態の例ではNは1~9)のそれぞれに関して以下の処理を実行する。以下では代表的に送風ファン131に関する処理について説明するが、他の送風ファン132~139に関しても同様の処理が実行される。
【0055】
まずステップSP104において、制御部30は、現在設定されている送風ファン131の回転速度V1が最大値Vmax以上であるか否かを判定する。この時点では送風ファン131の回転速度V1は初期値V0に設定されているため、回転速度V1は最大値Vmax未満となる。
【0056】
回転速度V1が最大値Vmax未満である場合(ステップSP104:NO)は、ステップSP105に移行し、制御部30が、送風ファン131に対応する温度センサ171から入力される温度検出信号S11に基づいて、温度センサ171の検出温度T171が目標設定温度TP未満であるか否かを判定する。
【0057】
検出温度T171が目標設定温度TP以上である場合(ステップSP105:NO)は、送風ファン131による送風経路の最下流で、目標設定温度TPまで空気の温度が上昇していると言え、当該送風経路において、それより上流の全領域で温度上昇は完了していると考えられる。この場合、ステップSP110に移行し、制御部30は、環境試験の終了命令が入力されたか否かを判定する。
【0058】
検出温度T171が目標設定温度TP未満である場合(ステップSP105:YES)は、送風ファン131による送風経路の最下流で、目標設定温度TPまで空気の温度が上昇していないことから、送風ファン131によって試験室3に送出された空調空気がその送風経路の最下流まで十分に到達していないと考えられる。この場合、ステップSP106に移行し、制御部30は、送風ファン131に対応する直流モータ141を駆動信号S51によって制御することにより、送風ファン131の回転速度V1を所定量だけ増大させる。これにより、送風ファン131によって試験室3に送出される空調空気の風量が増大される。次に制御部30は、ステップSP104の判定を再度実行する。
【0059】
回転速度V1を増大させても検出温度T171が目標設定温度TP以上に上昇しない場合には、回転速度V1が最大値VmaxとなるまでステップSP104~SP106の処理が繰り返し実行される。このフィードバック制御により送風ファン131の回転速度V1が徐々に増大され、その結果、送風ファン131によって試験室3に送出される空調空気の風量が徐々に増大する。
【0060】
回転速度V1が最大値Vmax以上となる(ステップSP104:YES)と、それ以上は回転速度V1を増大できないため、制御部30は、送風ファン131によって送出される空調空気の温度を上昇させる処理に移行する。まずステップSP107において、制御部30は、送風ファン131に対応する温度センサ181から入力される温度検出信号S21に基づいて、温度センサ181の検出温度T181が許容上限温度Tmax未満であるか否かを判定する。
【0061】
検出温度T181が許容上限温度Tmax以上である場合(ステップSP107:NO)は、送風ファン131によって試験室3に送出される空調空気の温度をそれ以上に上昇させることができない。この場合、制御部30はステップSP110を実行する。
【0062】
検出温度T181が許容上限温度Tmax未満である場合(ステップSP107:YES)は、ステップSP108に移行し、制御部30は、送風ファン131に対応する温度センサ171から入力された温度検出信号S11に基づいて、温度センサ171の検出温度T171が目標設定温度TP未満であるか否かを判定する。ステップSP104からステップSP107に移行した直後の時点では、まだサブヒータ161は駆動されていないため、検出温度T171は目標設定温度TP未満である可能性が高い。
【0063】
検出温度T171が目標設定温度TP未満である場合(ステップSP108:YES)は、ステップSP109に移行し、制御部30は、送風ファン131に対応するサブヒータ161を駆動信号S61によって制御することにより、サブヒータ161の出力を所定量だけ増大させる。これにより、サブヒータ161の駆動が開始され、送風ファン131によって試験室3に送出される空調空気の温度が上昇する。そして、制御部30は、ステップSP107の判定を再度実行する。
【0064】
サブヒータ161の出力を増大させても検出温度T171が目標設定温度TP以上に上昇しない場合には、検出温度T181が許容上限温度Tmax未満である限り、ステップSP107~SP109の処理が繰り返し実行される。このフィードバック制御により、送風ファン131によって試験室3に送出される空調空気の温度は、サブヒータ161による追加加熱によって徐々に上昇する。
【0065】
検出温度T171が目標設定温度TP以上となる(ステップSP108:NO)と、送風ファン131による送風経路の最下流で、目標設定温度TPまで空気の温度が上昇していることから、当該送風経路において、それより上流の全領域で温度上昇は完了していると考えられる。この場合、次に制御部30はステップSP110を実行する。
【0066】
ステップSP110において、制御部30は、環境試験の終了命令が入力されたか否かを判定する。環境試験の終了命令が入力されていない場合(ステップSP110:NO)は、制御部30はステップSP102以降の処理を繰り返し実行する。一方、環境試験の終了命令が入力された場合(ステップSP110:YES)は、制御部30は環境試験装置1の運転を停止する。
【0067】
なお、以上の説明では、送風ファン131~139に対応してサブヒータ161~169を設け、加熱処理において、メインヒータ12によって加熱された空調空気を、サブヒータ161~169によって個別に追加加熱する例について述べた。この例に限らず、送風ファン131~139に対応してサブクーラを設け、冷却処理において、メインクーラ(クーラ11)によって冷却された空調空気を、サブクーラによって個別に追加冷却する構成を採用することもできる。また、メインヒータ12、クーラ11、サブヒータ161~169、及びサブクーラは、送風ファン131~139を駆動する前に駆動を始めてもよい。
【0068】
<環境試験装置1の作用効果>
本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、試験室3の第2壁面9側には複数の送風ファン131~139が複数の方向(上記の例ではY方向及びZ方向)に沿って並べて配置されており、制御部30は複数の送風ファン131~139の各々の回転速度V1~V9を個別に制御する。このように、複数の方向に沿って並べて配置された複数の送風ファン131~139の各々の回転速度V1~V9を個別に制御することにより、試験室3内の各領域における空調空気の流れを任意に制御することができる。その結果、均一な温度分布及び非均一な温度分布を含めて、試験室3の内部空間の温度分布を細密に制御することが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、試験室3内において空調空気の流れの最下流である第1壁面7側の複数の箇所に、第1温度検出手段としての複数の温度センサ171~179が配置されている。従って、制御部30は、温度センサ171~179の検出結果に基づいて、所望の温度分布が試験室3内に正しく形成されているか否かを判定できる。そして、制御部30は、その判定結果に基づいて各送風ファン131~139を個別にフィードバック制御することにより、試験室3内に所望の温度分布を適切に形成することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、複数の温度センサ171~179と複数の送風ファン131~139とは、同数かつ同一のレイアウトで配置されている。このように、温度センサ171~179と送風ファン131~139とは一対一に対応しているため、制御部30は、温度センサ171~179の検出結果に基づいて、各温度センサ171~179に対応する送風ファン131~139を容易にフィードバック制御することが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、第2空調手段としての複数のサブヒータ161~169が、複数の送風ファン131~139に対応して配置されている。そして、制御部30が各サブヒータ161~169の空調温度を個別に制御することにより、各送風ファン131~139によって試験室3に送出される空調空気の温度が調節される。従って、各送風ファン131~139において、空調空気の流れのみならずその温度をも制御できるため、試験室3の内部空間の温度分布をより細密に制御することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、制御部30は、温度センサ17Nによる検出温度T17Nが目標設定温度TPに到達していない場合には、温度センサ17Nに対応する送風ファン13Nの回転速度VNを増大させ、それでもなお検出温度T17Nが目標設定温度TPに到達しない場合に、温度センサ17Nに対応するサブヒータ16Nを駆動させる。従って、送風ファン13Nの回転速度VNを増大させると検出温度T17Nが目標設定温度TPとなる場合には、サブヒータ16Nを駆動する必要がないため、サブヒータ16Nを駆動することに伴う過熱の発生の可能性を低減することが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、試験室3内において空調空気の流れの最上流である第2壁面9側の複数の箇所に、第2温度検出手段としての複数の温度センサ181~189が配置されている。従って、メインヒータ12及びサブヒータ161~169によって空調空気の温度が許容上限温度Tmaxより過熱されている場合、制御部30は、温度センサ181~189の検出結果に基づいて、過熱の発生場所を特定できる。そして、制御部30は、その特定結果に基づいて各サブヒータ161~169を個別にフィードバック制御することにより、各送風ファン131~139によって試験室3に送出される空調空気の温度を許容上限温度Tmax以下に抑えることができる。その結果、過熱された空調空気に曝されることに起因する被試験物6の故障を予め回避することが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、複数の温度センサ181~189と複数の送風ファン131~139とは、同数かつ同一のレイアウトで配置されている。このように、温度センサ181~189とサブヒータ161~169とは一対一に対応しているため、制御部30は、温度センサ181~189の検出結果に基づいて、各温度センサ181~189に対応するサブヒータ161~169を容易にフィードバック制御することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、各送風ファン131~139は直流モータ141~149によって駆動される。従って、交流モータによって駆動する場合と比較すると、制御部30は、応答性良く送風ファン131~139を制御できるとともに、低速域から高速域まで広い調整範囲で送風ファン131~139の回転速度V1~V9を制御することが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、制御部30は、各送風ファン131~139の回転速度V1~V9を個別に制御することにより、均一な温度分布を試験室3内に形成する。従って、複数の被試験物6が試験室3内の複数の箇所に分散して収容されている場合であっても、試験室3内における収容箇所に拘わらず、各被試験物6に同一の温度ストレスを印加することが可能となる。
【0077】
<第1変形例>
上記実施の形態では、制御部30は、目標設定温度TPの均一な温度分布を試験室3内に形成したが、被試験物6に対して実行される環境試験の試験ステップに同期させて、各試験ステップに最適な非均一の温度分布を形成しても良い。
【0078】
図9は、環境試験装置1による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。時刻T0において常温状態からスタートし、時刻T1においてメインヒータ12の駆動による常温状態から高温状態に向けての加熱制御が開始され、時刻T2において高温状態への遷移が完了している。高温状態での試験室3内の温度は、例えば150℃である。時刻T2から時刻T3まではメインヒータ12の駆動により高温状態が維持されており、この期間が高温さらし期間となる。高温さらし期間は、例えば30分である。時刻T3においてクーラ11の駆動による高温状態から低温状態に向けての冷却制御が開始され、時刻T4において低温状態への遷移が完了している。低温状態での試験室3内の温度は、例えば-40℃である。時刻T4から時刻T5まではクーラ11の駆動により低温状態が維持されており、この期間が低温さらし期間となる。低温さらし期間は、例えば30分である。時刻T5においてメインヒータ12の駆動による低温状態から高温状態に向けての加熱制御が開始され、時刻T6において高温状態への遷移が完了している。
【0079】
時刻T2から時刻T6までの一連のサイクルが温度サイクルの単位サイクルとなり、この単位サイクルが所望のサイクル数(例えば1000サイクル)繰り返される。このように、環境試験装置1によって被試験物6に対し実行される環境試験の単位サイクルは、試験室3内の温度を変化させる温度変化ステップ(時刻T3~T4,T5~T6)と、試験室3内の温度を維持する温度維持ステップ(時刻T2~T3,T4~T5)とを有している。
【0080】
温度変化ステップにおいて、制御部30は、駆動信号S51~S59によって直流モータ141~149の駆動を制御することにより、試験室3の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファン135の回転速度V5を相対的に増大させ、試験室3の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファン131~134,136~139の回転速度V1~V4,V6~V9を相対的に低下させる。
【0081】
これにより、温度を上昇させる場合の温度変化ステップにおいては、送風ファン13による空調空気の送風経路の横断面(Y-Z平面)に関して、中央部の温度が相対的に高く、周縁部の温度が相対的に低い、非均一な温度分布が試験室3内に形成される。なお、温度を上昇させる場合の温度変化ステップにおいて、制御部30は、送風ファン135に対応するサブヒータ165を駆動することによって、試験室3の内部空間の中央部に向けて送出される空調空気を追加加熱しても良い。
【0082】
また、温度を降下させる場合の温度変化ステップにおいては、送風ファン13による空調空気の送風経路の横断面(Y-Z平面)に関して、中央部の温度が相対的に低く、周縁部の温度が相対的に高い、非均一な温度分布が試験室3内に形成される。なお、温度を降下させる場合の温度変化ステップにおいて、制御部30は、送風ファン135に対応する上述のサブクーラを駆動することによって、試験室3の内部空間の中央部に向けて送出される空調空気を追加冷却しても良い。
【0083】
図1に示したように、被試験物6は試験室3の内部空間の中央部に収容されているため、このように送風ファン131~139の駆動力を中央部の送風ファン135に集中させる風量制御(中央集中制御)を行うことによって、被試験物6に向けてより多くの空調空気を送出することができる。
【0084】
一方、温度維持ステップにおいて、制御部30は、駆動信号S51~S59によって直流モータ141~149の駆動を制御することにより、試験室3の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファン135の回転速度V5を相対的に低下させ、試験室3の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファン131~134,136~139の回転速度V1~V4,V6~V9を相対的に増大させる。
【0085】
これにより、高温で温度維持する場合の温度維持ステップにおいては、送風ファン13による空調空気の送風経路の横断面(Y-Z平面)に関して、中央部の温度が相対的に低く、周縁部の温度が相対的に高い、非均一な温度分布が試験室3内に形成される。なお、高温で温度維持する場合の温度維持ステップにおいて、制御部30は、送風ファン131~134,136~139に対応するサブヒータ161~164,166~169を駆動することによって、試験室3の内部空間の周縁部に向けて送出される空調空気を追加加熱しても良い。
【0086】
また、低温で温度維持する場合の温度維持ステップにおいては、送風ファン13による空調空気の送風経路の横断面(Y-Z平面)に関して、中央部の温度が相対的に高く、周縁部の温度が相対的に低い、非均一な温度分布が試験室3内に形成される。なお、低温で温度維持する場合の温度維持ステップにおいて、制御部30は、送風ファン131~134,136~139に対応する上述のサブクーラを駆動することによって、試験室3の内部空間の周縁部に向けて送出される空調空気を追加冷却しても良い。
【0087】
このように送風ファン131~139の駆動力を周縁部の送風ファン131~134,136~139に集中させる風量制御(周縁集中制御)を行うことによって、試験室3の壁面、天井面、及び床面に向けて、より多くの空調空気を送出することができる。
【0088】
上記のように制御部30は、複数の送風ファン13の各々の回転速度を個別に制御することによって、非均一な温度分布を試験室3内に形成する。本変形例においては、複数の送風ファン13は必ずしも複数の方向に沿って並べて配置されている必要はない。制御部30は、少なくとも一方向に沿って並べて配置された複数の送風ファン13の各々の回転速度を個別に制御することによって、非均一な温度分布を試験室3内に形成することができる。
【0089】
本変形例に係る環境試験装置1によれば、制御部30は、温度変化ステップにおいては、試験室3の内部空間の中央部に向けて空調空気を送出する送風ファン135の回転速度V5を相対的に増大させる。被試験物6は、試験室3の内部空間の中央部に収容されることが多い。そのため、中央部に向けて空調空気を送出する送風ファン135の回転速度V5を相対的に増大させることにより、被試験物6に向けてより多くの空調空気を送出でき、被試験物6に対して温度ストレスを効率的に印加することが可能となる。そして、中央部に複数の被試験物6が収容されている場合に、温度変化ステップの実行中における被試験物6の温度遷移を促進できるとともに温度ばらつきを低減することが可能となる。また、制御部30は、温度維持ステップにおいては、試験室3の内部空間の周縁部に向けて空調空気を送出する送風ファン131~134,136~139の回転速度V1~V4,V6~V9を相対的に増大させる。これにより、周縁部である試験室3の壁面、天井面、及び床面に向けて、より多くの空調空気を送出することができる。その結果、試験室3の外気温が試験室3の内部空間の温度に及ぼす影響を緩和できるため、試験室3内の温度を安定的に維持することが可能となる。
【0090】
<第2変形例>
上記実施の形態では、環境試験装置1は3行×3列のマトリクス状に配列された合計9個の送風ファン131~139を備えていたが、複数の送風ファン13の配置レイアウトはこの例に限定されない。
【0091】
図10,11は、複数の送風ファン13の配置レイアウトの変形例を模式的に示す図であり、図1に示したラインII-IIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。
【0092】
図10に示した例において、環境試験装置1は、Y方向及びZ方向の各方向に沿って4個の送風ファン13が互いに離間して並べられ、4行×4列のマトリクス状に配列された、合計16個の送風ファン13を備えている。制御部30は、これら16個の送風ファン13の各々の回転速度を個別に制御する。なお、図10に示した例に限らず、環境試験装置1は、少なくとも2行×少なくとも2列のマトリクス状に配列された少なくとも4個の送風ファン13を備えていれば良い。また、第2壁面9の縦横比に応じて、各行に属する複数の送風ファン13の個数と各列に属する複数の送風ファン13の個数とが、互いに異なっていても良い。
【0093】
図11に示した例において、環境試験装置1は、第2壁面9の中央部に配置された大型の送風ファン13Lと、第2壁面9の四隅に配置された小型の送風ファン13Sとを備えている。つまり、第2壁面9の二つの対角線の各々に沿って、送風ファン13Lと2個の送風ファン13Sとが並べて配置されている。制御部30は、送風ファン13L,13Sの各々の回転速度を個別に制御する。このように、複数の送風ファン13が必ずしもマトリクス状に配置されている必要はなく、また、複数の送風ファン13のサイズが全て同一である必要もない。
【0094】
本変形例によっても、制御部30が複数の送風ファン13の各々の回転速度を個別に制御することにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、以上の説明では、環境形成装置が環境試験装置1として構成されている例について述べたが、この例には限られない。環境形成装置は、対象物であるワークに対して熱処理を施すために所定の高温環境を形成する熱処理装置として構成されても良い。また、環境形成装置は、対象物である食品を加熱するために所定の高温環境を形成する調理装置として構成されても良い。
【0096】
図12,13は、他の変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。図12に示すように、送風ファン13の羽根は、通風口10よりもX方向(第2空間部42側)に配置されていても良い。また、図13に示すように、送風ファン13の羽根は、通風口10よりもW方向(試験室3側)に配置されていても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 環境試験装置
3 試験室
4 空調室
7 第1壁面
9 第2壁面
11 クーラ
12 メインヒータ
13,131~139 送風ファン
14,141~149 直流モータ
16,161~169 サブヒータ
17,171~179,18,181~189 温度センサ
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13