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特許7585384グラフェン金属複合材料、ターゲット及び電磁波防止パッケージ部品
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  • 特許-グラフェン金属複合材料、ターゲット及び電磁波防止パッケージ部品 図1
  • 特許-グラフェン金属複合材料、ターゲット及び電磁波防止パッケージ部品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】グラフェン金属複合材料、ターゲット及び電磁波防止パッケージ部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20241111BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20241111BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 5/00 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 5/02 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20241111BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20241111BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H01L23/06 B
C22C1/10 E
C22C9/00
C22C5/00
C22C5/06
C22C5/02
C22C13/00
C22C1/05 R
C22C21/00 E
C22C5/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023077078
(22)【出願日】2023-05-09
(65)【公開番号】P2023168270
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】111117853
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518043760
【氏名又は名称】慧隆科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】施養明
(72)【発明者】
【氏名】許宏源
(72)【発明者】
【氏名】許家銘
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113481406(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108145169(CN,A)
【文献】国際公開第2013/187298(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108746580(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H01L 23/06
C22C 1/10
C22C 9/00
C22C 5/00
C22C 5/06
C22C 5/02
C22C 13/00
C22C 1/05
C22C 21/00
C22C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を有する基板と、
前記基板と電気的に接続されるように前記基板に設置されている電子部品と、
前記電子部品を包んでいる封止剤層と、
ラフェン金属複合材料により構成されている電磁波防止層と、
ステンレス鋼により構成されている保護層と、を備え
前記グラフェン金属複合材料は、複数枚のグラフェン及び金属を主成分として構成されており、
前記複数枚のグラフェンは、前記金属の結晶格子の間に分散して配列されており、且つ、少なくとも一部の前記グラフェンの間が共有結合でボンディングされており、
前記グラフェン金属複合材料の全体において、
酸素含有量は、10ppm以下にあり、また、
総重量を100wt%として、前記グラフェンの含有量は、3wt%以下にある、ことを特徴とする電磁波防止パッケージ部品。
【請求項2】
前記電磁波防止層の厚さは、4μmであることを特徴とする請求項に記載の電磁波防止パッケージ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン金属複合材料に関し、特にグラフェン金属複合材料並びにそれで構成されたターゲット及び電磁波防止パッケージ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が小型化と共に高出力、高周波及び低消費電力が要求されているので、従来の材料ではそれを満足できない状況が徐々に多くなる。
【0003】
常用の導電材料、例えば、銅、金、銀は、小型化の要求において、ワイヤとして使用される場合、径長をより小さくすることが要求されるが、径長が小さいほど電気抵抗が高くなるので、電気伝導率及び物性に影響しない範囲内での径長の縮小は、すでに限界に近い。
【0004】
そして、グラフェン(graphene)は、優れた機械的性質、熱伝導率及び電気伝導率を有するので、強度の強化、導電または導熱の複合材料における強化材料として多く使用されている。
【0005】
しかし、グラフェンはその構造上、グラフェンの層の間でファンデルワールス力(van der Walls force)によって上下に結び付き、且つ、グラフェンは金属との親和性(compatibility)が悪いので、強化材料であるグラフェンを金属に分散することが難しい。従って、グラフェンの分散は、グラフェン金属複合材料の課題の一つである。
【0006】
例えば、特許文献1には、グラフェンを銅に分散する方法が開示され、特許文献2には、グラフェンをアルミニウムに分散する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許第105908007号明細書
【文献】中国特許出願公開第105112699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた分散性を有するグラフェン金属複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、複数枚のグラフェン及び金属を主成分として構成されており、
前記複数枚のグラフェンは、前記金属の結晶格子の間に分散して配列されており、且つ、少なくとも一部の前記グラフェンの間が共有結合でボンディングされており、
全体において、
酸素含有量は、10ppm以下にあり、また、
総重量を100wt%として、前記グラフェンの含有量は、3wt%以下にあることを特徴とするグラフェン金属複合材料を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記のグラフェン金属複合材料により構成されていることを特徴とするターゲットを提供する。
【0011】
また、本発明は、電気回路を有する基板と、
前記基板と電気的に接続されるように前記基板に設置されている電子部品と、
前記電子部品を包んでいる封止剤層と、
上記のグラフェン金属複合材料により構成されている電磁波防止層と、
ステンレス鋼により構成されている保護層と、を備えることを特徴とする電磁波防止パッケージ部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成により、本発明のグラフェン金属複合材料は、複数枚のグラフェン及び金属を主成分として構成されており、前記複数枚のグラフェンは、前記金属の結晶格子の間に分散して配列されており、且つ、少なくとも一部の前記グラフェンの間が共有結合でボンディングされており、全体において、酸素含有量は、10ppm以下にあるので、本発明のグラフェン金属複合材料は、構造の欠陥が少なく、安定性が優れ、それで優れた電気伝導率、優れた酸化防止性及び優れた電磁波防止効果を有する。
【0013】
それにより、本発明のグラフェン金属複合材料により構成されたターゲットは、酸化しにくく且つ電気伝導率が高いコーティング膜の形成に使用でき、また、本発明のグラフェン金属複合材料により構成された電磁波防止パッケージ部品は、製造プロセスが簡単の上、優れた電磁波防止効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の電磁波防止パッケージ部品の実施例を示す図である。
図2】電磁波防止パッケージ部品のそれぞれ異なる周波数に対する電磁波シールド効果(shielding effectiveness、SE)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0016】
本発明のグラフェン金属複合材料は、複数枚のグラフェン及び金属により実質的に、即ち複数枚のグラフェン及び金属を主成分として構成されている。
【0017】
前記複数枚のグラフェンは、前記金属の結晶格子の間に分散して配列されており、且つ、少なくとも一部の前記グラフェンの間が共有結合でボンディングされており、少なくとも一部の前記グラフェンと前記金属との間にボンディングがある。
【0018】
前記グラフェン金属複合材料は、酸素含有量が10ppm以下にあり、総重量を100wt%として、前記グラフェンの含有量は、3wt%以下にある。
【0019】
前記金属は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、または錫(Sn)である。
【0020】
グラフェンの比重は非常に小さいので、グラフェン金属複合材料において、グラフェンの含有量が3wt%を超えると、グラフェンが集合して分散しにくくなり、また、グラフェンの含有量が低すぎると、複合材料を強化する効果が現れにくくなる。
【0021】
好ましくは、グラフェン金属複合材料の総重量を100wt%として、グラフェンの含有量は、0.02wt%~0.5wt%の範囲にあり、より好ましくは、グラフェン金属複合材料の総重量を100wt%として、グラフェンの含有量は、0.02wt%~0.3wt%の範囲にある。
【0022】
前記グラフェン金属複合材料の熱伝導率は、460W/mK以上にある。
【0023】
以下、本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法を説明する。
【0024】
先ず、ステップAを行う。ステップAにおいて、金属粉末と、改質グラフェン粉末と、接着剤(binder)とを混合して複合粉末原料を得る。
【0025】
該金属粉末は、銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、パラジウム、または錫などの金属の粉末であり得る。
【0026】
該改質グラフェン粉末は、表面改質された複数枚のグラフェンを含む。
【0027】
該改質グラフェン粉末の添加量は、添加される該金属粉末の重量の0.02%~3%の範囲である。
【0028】
グラフェンの表面改質に使用する基は、酸素、窒素などの官能基を含有する基であり得る。
【0029】
一部の実施形態において、該基は、脂肪酸から選ばれたものであり、例えばステアリン酸が挙げられる。
【0030】
該接着剤の添加量は、添加される該改質グラフェン粉末の重量の0.1%~10%の範囲である。
【0031】
該接着剤は、自身の総重量を100wt%として、5wt%~20wt%の範囲にある分散剤と、0.5wt%~2wt%の範囲にあるカップリング剤(coupling agent)と、残余である蝋または低分子量熱可塑性重合物とを含む。
【0032】
該分散剤は、メチルペンタノール(methylpentanol)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、またはポリエチレングリコール脂肪酸(polyethylene glycol fatty acid)であり得る。
【0033】
該カップリング剤は、チタン酸エステル(titanic acid ester)または有機クロム化合物(organic chromium compound)から選ばれる。
【0034】
該蝋は、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス(microcrystalline wax)であり得る。
【0035】
該低分子量熱可塑性重合物は、アクリルなどであり得る。
【0036】
チタン酸エステル及び有機クロム化合物は、周辺電子に対する結合力(bonding force)が強い上、チタン酸エステルは、軽いという利点があり、有機クロム化合物(有機クロム配位化合物)は、側鎖を有するのでボンディングをより多く形成できる。
【0037】
従って、必要に応じて適切なカップリング剤(チタン酸エステルまたは有機クロム化合物)を選択でき、改質グラフェン粉末と、金属粉末との間のボンディング強度を強化できて、少なくとも一部の前記グラフェンと前記金属との間にボンディングが生じることができる。
【0038】
分散剤及び蝋は、改質されたグラフェンの分散及び分散後の改質されたグラフェンの安定化を向上させることができる。
【0039】
詳しく説明すると、ステップAでは、金属粉末と、改質グラフェン粉末と、接着剤とを、混練(kneading)、遊星式攪拌(planetary stirrer)または遊星ボールミル(planetary ball mill)などの方法で混合すると共に、混合中にグラフェンとグラフェンの表面改質に使用する基との間のボンディングを切断できる熱が生じるように制御し、それにより、混合中に、該表面改質に使用する基とグラフェンとの間のボンディングが熱を吸収した後ボンディングが切断されて、該表面改質に使用する基がグラフェンから離脱する。
【0040】
また、グラフェン中のボンディングが切断された炭素原子は、他のグラフェン中のボンディングが切断された炭素原子とボンディングすることができると共に、カップリング剤により、ボンディングが切断されたグラフェンと金属粉末との間でのボンディングが促進され、それにより、少なくとも一部のグラフェンが、互いに平面状に接続され且つ金属粉末を幾重にも包んで、複合粉末原料を構成する。
【0041】
そして、ステップBを行う。ステップBでは、該複合粉末原料を型に置き、真空ホットプレス焼結(vacuum hot pressing sintering)方法で、該複合粉末原料中の金属粉末を溶融し互いに合わさって1つの金属体にすると共に、少なくとも一部のグラフェンが共有結合により立体網状になって該金属体内でボンディングされるようになる。同時に、焼結の高温で接着剤、離脱した表面改質に使用する基などの有機物を気化して除去することにより、グラフェン金属複合材料の半製品が得られる。
【0042】
真空ホットプレス焼結の温度は、金属粉末の種類に応じて変えることができ、加圧且つ真空の状況で焼結するので、より低い温度で焼結することができる。
【0043】
金属粉末が銅粉末である例において、ステップBでは、700℃で真空ホットプレス焼結を行うことができる。
【0044】
グラフェンは、溶融せずまた沸点が該金属及び該有機物の沸点より遥かに高いので、焼結中に破壊されない一方、有機不純物(例えばグラフェンの表面改質に使用する基、接着剤など)の大半が気化されて除去される。
【0045】
従って、ステップBで得られたグラフェン金属複合材料の半製品は、実質的にグラフェン及び金属のみを含む。且つ、グラフェンは、金属体に均一に分散されている。
【0046】
グラフェンの各炭素原子は、自身のsp結合により蜂の巣のような六角形格子構造を構成してシート状になるので、焼結後、グラフェンは、金属の結晶格子の原子の間に分散して配列されるようになり、且つ、少なくとも一部のグラフェンの間が共有結合でボンディングされるので、安定性が高いグラフェン金属複合材料の半製品を得られる。
【0047】
そして、ステップCを行う。ステップCでは、該グラフェン金属複合材料の半製品を真空製錬(smelting)してグラフェン金属複合材料を得る。
【0048】
ステップA及びステップBを行った後の時点では、他のグラフェンとボンディングしていないまたは金属とボンディングしていないグラフェンのグラフェン金属複合材料の半製品における分散は乱雑であるので、真空製錬でグラフェン金属複合材料の半製品を溶融して液状にすることにより、分散が乱雑なグラフェンを金属に均一に分散させることができる。
【0049】
また、金属粉末内に不純物として存在する金属酸化物は、真空製錬により金属に還元できるので、最終的に得られたグラフェン金属複合材料の酸素含有量が10ppm以下となり得る。
【0050】
従って、本発明の製造方法により製造されたグラフェン金属複合材料は、複数枚のグラフェン及び金属を主成分として構成され、そして元の金属材料より優れた熱伝導率及び電気伝導率を有する上、特に優れた酸化防止性を更に有する。
【0051】
この実施形態において、真空製錬は、窒素雰囲気において1300℃に加熱する条件で行う。
【0052】
また、真空製錬中に金属粉末内の該金属酸化物が更に還元されるので、本発明に使用する金属の原料は、高純度の無酸素金属(例えば無酸素銅)を使用する必要がなく、一般の金属を原料として使用して、本発明のグラフェン金属複合材料を得られる。
【0053】
更に、本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、ステップBの前に、ステップB’を行うことができる。ステップB’では、低温で蝋を除去して脱蝋半製品を得る。該脱蝋半製品がステップB及びステップCを経ることによっても、同じく本発明のグラフェン金属複合材料を得られる。
【0054】
より詳しく説明すると、ステップB’では、ステップAで得られた複合粉末原料を加熱して、該複合粉末原料を液体混合材料に形成する。そして、該液体混合材料を型に置き、冷間成形(cold forming)で該液体混合材料を固化して素地(green body)とする。そして、該素地に対して脱バインダ工程(debinding process)を行って、該素地中の接着剤を除去して脱蝋半製品に形成する。
【0055】
より具体的に説明すると、脱バインダ工程は、140℃~170℃での熱脱蝋(thermal debinding)により該素地を熱処理する。該熱脱蝋の熱処理は、不活性ガスをフロー媒体(flow medium)として、加熱して該素地内の接着剤を熱分解(pyrolysis)して気化し、フロー媒体で該素地外に排出することにより、該素地中の接着剤が除去されて、脱蝋半製品が得られる。
【0056】
また、熱脱蝋の熱処理の温度は、金属粉末の融点より低く、接着剤の融点または沸点より高い温度が好ましい。140℃~170℃に加熱すると、グラフェンは、溶融せず且つ沸点が該金属及び該接着剤の沸点より遥かに高いので、熱処理中に構造が破壊されない。
【0057】
本発明のグラフェン金属複合材料は、ワイヤ、フィルムにすることができ、またはコーティング用のターゲットにすれば、酸化しにくく且つ電気伝導率が高い導電コーティング膜を形成することができるので、様々な分野に利用できる。
【0058】
以下、各具体例及び比較例で、本発明のグラフェン金属複合材料の特性を説明する。
具体例
具体例では、100g(100wt%)の銅粉末(三井金属アクト株式会社、型番:MA-CC-S)と、3g(銅粉末の重量の3wt%)の改質グラフェン粉末(台湾EnerAge Inc.、型番:P-PG20)とを使用して、上記のグラフェン金属複合材料の製造方法によりグラフェン銅複合材料を製造した。
【0059】
具体例のグラフェン銅複合材料は、酸素・窒素・水素分析装置(型番:EMGA 930)でASTM E2575-19に基づいて測定された。その結果、該グラフェン銅複合材料の酸素含有量は、6.0ppmであり、無酸素銅(OFC)の酸素含有量(0.003%未満)より遥かに低い。
比較例
比較例では、100g(100wt%)の銅粉末(三井金属アクト株式会社、型番:MA-CC-S)と、3g(銅粉末の重量の3wt%)の改質グラフェン粉末(台湾EnerAge Inc.、型番:P-PG20)とを使用して、上記のグラフェン金属複合材料の製造方法のステップA及びステップBのみを行って、グラフェン銅複合材料を製造した。
【0060】
具体例及び比較例のグラフェン銅複合材料を圧延(rolling)して100mm×60mm×0.2mm(長さ×幅×厚さ)のシートにして、該各シートの表面から5つの点(T1~T5)を取って電気伝導率(%IACS)の測定を行った。電気伝導率の測定結果は表1に示される。
【0061】
電気伝導率(%IACS)は、国際的に採択された焼鈍標準軟銅の電気伝導率を、100%IACS(international annealed copper standard)として、公式(σ/58.0×100%)で算出された。σは、体積抵抗率である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果によれば、ステップBの焼結で得られた一般のグラフェン金属複合材料と比べて、ステップCの製錬を行った本発明のグラフェン金属複合材料は、より優れた電気伝導率を有するのみならず、より優れた導電の均一性を有する。
【0064】
表2において、市販の6N OFC(無酸素銅)及び具体例のグラフェン金属複合材料(表2ではG-Cuで示される)のそれぞれから作成した径長(diameter)1.2milのワイヤの電気伝導率(electrical conductivity)、破壊強さ(break strength、BS)、伸長強さ(elongation strength)、ヤング係数(Young’s module)、降伏強さ(yield strength)、最大抗張力(ultimate tensile strength、UTS)、靱性(toughness) 及び最大負荷(maximum load)の測定結果が示される。
【0065】
【表2】
【0066】
そして、具体例のグラフェン金属複合材料を、径長が異なるワイヤに作成して、各ワイヤの抵抗(resistance)、破壊荷重(break load)、伸長率(elongation)、引張強度(tensile strength)及び電気伝導率(electrical conductivity)を測定した。その測定結果は表3に示される。
【0067】
【表3】
【0068】
表2に示されるように、同じ径長の条件において、具体例のグラフェン金属複合材料で作成されたワイヤの電気伝導率は、明らかに純銅(6N OFC)で作成されたワイヤの電気伝導率より優れた。
【0069】
表3に示されるように、具体例のグラフェン金属複合材料で作成されたワイヤは、径長が小さいほど電気伝導率が高く、且つ径長が0.05mm以下である時の電気伝導率が銀の電気伝導率(105%IACS)より高く、それは、本発明のグラフェン金属複合材料が優れた電気伝導率を有することを示す。
【0070】
また、以下の実施例で本発明のグラフェン金属複合材料を電磁波を防止できる電磁波防止パッケージ部品に適用することを説明する。
【0071】
図1に示されるように、電磁波防止パッケージ部品は、基板31と、ワイヤ321により基板31と電気的に接続されるように基板31に設置されている電子部品32と、電子部品32を包んでいる封止剤層33と、封止剤層33を覆うように形成されている電磁波防止層34と、電磁波防止層34に被布している保護層35とを備える。
【0072】
基板31は、電気回路を有する回路基板である。
【0073】
封止剤層33は、高分子材料、例えばエポキシ樹脂により構成されている。
【0074】
電磁波防止層34は、本発明のグラフェン金属複合材料により構成されており、この実施例において、電磁波防止層34は、上記の具体例のグラフェン金属複合材料により構成されている。
【0075】
保護層35は、ステンレス鋼により構成されている
図2は、電磁波防止パッケージ部品のそれぞれ異なる周波数に対する電磁波シールド効果(shielding effectiveness、SE)の測定結果を示すグラフである。
【0076】
電磁波シールド効果(単位:db)は、以下のように定義される。
【0077】
入射波(b)が材料により遮蔽された後一部が透過波(a)となるが、その際、該材料の電磁波シールド効果(SE)は、下式により算出される。
SE=10×log(Pb/Pa)
P:エネルギー場(energy field)強度(Watts/m)。
【0078】
図2に示されるように、実施例1は、グラフェン金属複合材料を使用して電磁波防止層34を構成したものであり、図1に示される電磁波防止パッケージ部品の構造(封止剤層33/電磁波防止層34(4μm)/ステンレス鋼保護層35(0.6μm))を有する。
【0079】
実施例2は、封止剤層33と電磁波防止層34との間にステンレス鋼中間層(封止剤層33/ステンレス鋼中間層(0.6μm)/電磁波防止層34(4μm)/ステンレス鋼保護層35(0.6μm))を更に有する以外、実施例1と類似している。
【0080】
比較例1は、純銅を使用して電磁波防止層34を構成する以外、実施例2と類似している。
【0081】
純銅と封止剤層33との密着性が悪いので、従来技術では、純銅を電磁波防止材料として使用する場合には、封止剤層33に純銅の電磁波防止層34を形成する前に、封止剤層33と純銅の電磁波防止層34との中間材料として封止剤層33にステンレス鋼中間層を形成する必要があり、その後、該ステンレス鋼中間層に純銅の電磁波防止層34を形成し、更に純銅の電磁波防止層34にステンレス鋼保護層35を形成する。比較例1の構造はこのようにして得られたものである。
【0082】
それに対して、本発明のグラフェン金属複合材料を電磁波防止層34として使用する際には、グラフェンで高分子材料との親和性を上げることができて、電磁波防止層34と封止剤層33との密着性が向上するので、封止剤層33に直接に電磁波防止層34を形成することができ、従来技術のように該ステンレス鋼中間層を形成する必要がなくなり、製造プロセスを簡単化できる。
【0083】
また、図2によれば、実施例1及び実施例2の電磁波防止効果は、比較例1の電磁波防止効果より優れ、且つ、実施例1は、6GHzにおける電磁波シールド効果が70dbを超えて比較例1の30dbより遥かに優れた。
【0084】
即ち、本発明のグラフェン金属複合材料を電磁波防止層34として作成されたパッケージ構造は、従来の構造からステンレス鋼中間層を省略できてより薄く構成でき且つより優れた電磁波防止効果を有する。
【0085】
上記の内容によれば、本発明のグラフェン金属複合材料は、更に真空製錬を行うことにより得られるので、グラフェンをより金属に均一に分散させることができて、グラフェン金属複合材料の特性が向上する。
【0086】
また、真空製錬の過程において、金属粉末内の金属酸化物は、金属に還元するので、本発明のグラフェン金属複合材料の酸素含有量が10ppm以下になり得、該グラフェン金属複合材料の構造の欠陥を減らすことができて、該グラフェン金属複合材料の電気伝導率、熱伝導率などの特性を上げると共に、より優れた酸化防止性を有する。
【0087】
本発明のグラフェン金属複合材料を伸ばしてワイヤまたはシートを作成すると、伸ばす過程においてグラフェンの方向性が増加し、金属の結晶格子の間にあるグラフェンと金属との相乗効果が更に向上するので、元の金属材料より優れた電気伝導率、熱伝導率、物理特性などを奏する。
【0088】
そして、本発明のグラフェン金属複合材料を電磁波防止として使用すると、電磁波防止パッケージ部品の製造プロセスを簡単化できる上、純銅より優れた電磁波防止効果を有する。
【0089】
従って、本発明の目的を確実に達成できる。
【0090】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能で有る。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のグラフェン金属複合材料はターゲットや電磁波防止パッケージ部品に使用することに適する。
【符号の説明】
【0092】
31 基板
32 電子部品
321 ワイヤ
33 封止剤層
34 電磁波防止層
35 保護層
図1
図2