(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】接着特性が向上したアイオノマー中間層
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20241111BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20241111BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20241111BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K5/5415
C08J3/22 CES
B32B27/32 101
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077583
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020505436の分割
【原出願日】2018-07-30
【審査請求日】2023-06-09
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513206153
【氏名又は名称】クラレ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・アンソニー・スミス
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-099803(JP,A)
【文献】特開2009-248377(JP,A)
【文献】特開2009-177089(JP,A)
【文献】特開2014-058409(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157545(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0108094(US,A1)
【文献】特開平08-198974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/26
C08K 5/5415
C08J 3/22
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アイオノマー樹脂と(ii)接着促進添加剤との均質混合物を含有する樹脂組成物であって:
(a)前記アイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、エチレン由来の構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位とを含み、前記α,β-不飽和カルボン酸由来の前記構成単位の少なくとも一部が対イオンで中和されており、前記対イオンがナトリウムカチオンから本質的になり;
(b)前記接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり;かつ、
(c)前記ジアルコキシシラン化合物が前記アイオノマー樹脂の重量を基準として50~
4000重量ppmの範囲の量で前記樹脂組成物中に存在する;
ことを特徴とし、
前記アイオノマー樹脂中の前記α,β-不飽和カルボン酸の含有割合は2~30質量%であり、前記アイオノマー樹脂中の前記α,β-不飽和カルボン酸の中和度は10~60%であり、
前記ジアルコキシシラン化合物は3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである;
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジアルコキシシラン化合物が前記樹脂組成物内に実質的に均一に分布していることを特徴とする、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、及び
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
の共重合した単位から本質的になるジポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%で
あることを特徴とする、
又は、
(B)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、(i)エチレン、
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)2重量%~15重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、及び
(iv)任意選択的な、(iii)+(iv)が15重量%以下であるような量の(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体、
の共重合した単位から本質的になるターポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%で
あることを特徴とする、
請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(i)アイオノマー樹脂粒子と(ii)接着促進添加剤とを含有する粒子状マスターバッチ組成物であって:
(a)前記アイオノマー樹脂粒子のアイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり
、前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、エチレン由来の構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位とを含み、前記α,β-不飽和カルボン酸由来の前記構成単位の少なくとも一部が対イオンで中和されており、前記対イオンがナトリウムカチオンから本質的になり;
(b)前記接着促進添加剤が
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランであり;
(c)前記
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが前記アイオノマー樹脂100重量部を基準として1~10重量部の範囲の量で前記マスターバッチ組成物中に存在し;
(d)前記
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが、前記アイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に前記マスターバッチ組成物中に存在
し、
前記アイオノマー樹脂中の前記α,β-不飽和カルボン酸の含有割合は2~30質量%であり、前記アイオノマー樹脂中の前記α,β-不飽和カルボン酸の中和度は10~60%であることを特徴とする、
粒子状マスターバッチ組成物。
【請求項5】
(A)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、及び
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
の共重合した単位から本質的になるジポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%で
あることを特徴とする、
又は、
(B)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、(i)エチレン、
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)2重量%~15重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、及び
(iv)任意選択的な、(iii)+(iv)が15重量%以下であるような量の(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体、
の共重合した単位から本質的になるターポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%で
あることを特徴とする、
請求項
4に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項6】
(A)請求項
4又は5に記載のマスターバッチ組成物を供給する工程;及び
(B)前記マスターバッチ組成物を、ある量の第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーと混合して、アイオノマー樹脂の総重量を基準として50~5000重量ppmの前記
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの濃度を有する均質混合物を得る工程;
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む層を含む中間層シートであって、
(A)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の前記空気面に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層の引き剥がし粘着力が、少なくとも約20N/cmである(23℃及び50%RHで測定);
(B)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の前記空気面に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層の引き剥がし粘着力が、少なくとも約0.5
N/cmである(湿潤状態の条件下);並びに/又は
(C)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した場合の前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層の引き剥がし粘着力が、(i)約5N/cm超(23℃及び50%RHで測定)であり、かつ。(ii)前記フロートガラス板の前記スズ面に接着した場合(23℃及び50%RHで測定)よりも大きい;
ことを特徴とする、中間層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスに対する接着特性が向上したエチレン酸コポリマーアイオノマー組成物に基づく中間層、及びそのような中間層を含むガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層ガラスは、一般に、2枚のガラスをプラスチック中間層上に積層することにより製造される。固体ガラス板に対する積層ガラスの具体的な利点の1つは、ガラスが中間層シートに接着することによる耐衝撃性及び飛散防止性である。
【0003】
安全積層ガラスでは、ガラスへの中間層の最適な接着は力の均衡である。接着力が大きすぎると、衝撃事象中にエネルギーを吸収及び散逸する積層体の能力が低下し、接着力が小さすぎると、光学的欠陥が生じ(積層時及びその後)、また衝撃時にガラスの破片を保持する中間層の能力に悪影響がある場合もある。
【0004】
多くの様々な材料がプラスチック中間層として使用されてきた。例えば、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール)と可塑剤とを含むシートは、ガラスへの接着性に優れているため、積層ガラスの中間層として広く利用されている。そのような中間層を含む積層ガラスは、優れた透明性、機械的強度、柔軟性、音響減衰、及び飛散防止性を持たせながら製造することができる。
【0005】
少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマー(アイオノマー)も、例えば、US3404134、US3344014、US7445683B2、US7763360B2、US7951865B1、US7960017B2、US8399097B2、US8399098B2、US2017/0320297A1、US2018/0117883A1、WO2016/076336A1、WO2016/076337A1、WO2016/076338A1、WO2016/076339A1、及びWO2016/076340A1に開示されるような、積層安全ガラスを作製するための中間層として使用されてきた。
【0006】
優れた曲げ強度及び光学特性を有する中間層を製造するためにアイオノマー樹脂を選択することができるものの、ガラスへの接着特性は最適ではない場合がある。特に、アイオノマーは中和された酸コポリマーであるため、特に高湿度環境では積層欠陥が発生する傾向がある。
【0007】
例えば、フロートガラスの中間層としてアイオノマー樹脂が使用される場合、ガラスの「空気面」ではなく「スズ面」で接着性が十分であることが多いため、「スズ面」が中間層に確実に接触するようにそのようなガラス板を適切に位置合わせするために、積層プロセス中に特別な予防措置を考慮する必要がある。
【0008】
プライマー並びにガラス及び中間層の他の表面処理を使用して接着性の問題を解決に役立てることが提案されている(例えばUS2016/0159042A1を参照)が、これは積層プロセスにコスト及び煩雑さを付加し、またそのような表面処理は、前述したように、衝撃事象中にエネルギーを吸収及び散逸する積層体の能力を損なう可能性がある過度の接着力を生じさせることが多い。
【0009】
アイオノマー樹脂の変性及び添加剤の配合も試みられてきた。例えば、エチレン酸コポリマーの酸レベルを上げると、最終的なアイオノマーの接着特性が向上する。しかしながら、酸価をどの程度増加できるかには、実用的及び経済的な制限が存在する。添加剤も使用されているものの、成功は限定的である。
【0010】
特に、シランは、多くの異なる樹脂系においてガラスへの優れた接着促進剤であることが知られている。しかしながら、US20110105681A1に開示されているように、通常アイオノマー、特にナトリウムで中和されたアイオノマーと共にシランを使用すると、ゲルが生成し、満足できる形でシート押出を完了できる溶融流れを生成することができない。この特定の刊行物は、特定の種類の亜鉛で中和されたアイオノマーのみと組み合わせて使用できるアミノ基含有ジアルコキシシランの狭い分類を特定した。
【0011】
US20110105681A1の教示とは対照的に、今回、ナトリウムで中和されたアイオノマーのガラス接着促進剤として、特定の分類のシランが非常に具体的な量かつ限られた条件下で首尾よく有利に使用でき、それにより中間層とガラスとの間の接着特性が向上した中間層及びガラス積層体の作製におけるそのようなアイオノマーの最適な使用が可能になることが分かった。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、(i)アイオノマー樹脂と(ii)接着促進添加剤との均質混合物を含有する樹脂組成物であって:
(1)アイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり;
(2)接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり;
(3)ジアルコキシシラン化合物がアイオノマー樹脂の重量を基準として約50~約5000重量ppmの範囲の量で樹脂組成物中に存在する;
樹脂組成物を提供することによって上記課題に対処する。
【0013】
上記樹脂組成物の一実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は周囲条件で液体である。別の実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は、樹脂組成物内に実質的に均一に分布している。別の実施形態では、樹脂組成物は粒子状樹脂組成物であり、アイオノマー樹脂は粒子状アイオノマー樹脂であり、ジアルコキシシラン化合物は、アイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に(または実質的に)樹脂組成物中に存在する。
【0014】
別の態様では、本発明は、(i)アイオノマー樹脂粒子と(ii)接着促進添加剤とを含有する粒子状マスターバッチ組成物であって:
(1)アイオノマー樹脂粒子のアイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり;
(2)接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり;
(3)ジアルコキシシラン化合物がアイオノマー樹脂100重量部を基準として約1~約10重量部の範囲の量でマスターバッチ組成物中に存在し;
(4)ジアルコキシシラン化合物がアイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に(または実質的に)樹脂組成物中に存在する;
粒子状マスターバッチ組成物を提供する。
【0015】
上記マスターバッチ組成物の一実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は周囲条件で液体である。別の実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は、粒子状マスターバッチ組成物内に実質的に均一に分布している。
【0016】
別の態様では、本発明は、樹脂組成物を製造する第1の方法を提供し、
前記方法は、
(A)(i)アイオノマー樹脂粒子と(ii)接着促進添加剤とを含有するマスターバッチ組成物を供給する工程であって:
(1)アイオノマー樹脂粒子のアイオノマー樹脂が第1のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、
(2)接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり、
(3)ジアルコキシシラン化合物がアイオノマー樹脂100重量部を基準として約1~約10重量部の範囲の量でマスターバッチ組成物中に存在し、
(4)ジアルコキシシラン化合物がアイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に(または実質的に)樹脂組成物中に存在する、
工程;並びに
(B)マスターバッチ組成物を、ある量の第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーと混合して、アイオノマー樹脂の総重量を基準として約50~約5000重量ppmの前記ジアルコキシシラン化合物の濃度を有する均質混合物を得る工程;
を含む。
【0017】
第1及び第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーは同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
上記方法の一実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は周囲条件で液体である。別の実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は、樹脂組成物内に実質的に均一に分布している。別の実施形態では、混合工程は溶融ブレンド工程である。別の実施形態では、第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーは微粒子であり、混合工程は、第1と第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの両方について非軟化条件下で行われ、樹脂組成物は粒子状樹脂組成物である。
【0019】
別の態様では、本発明は、粒子状樹脂組成物の製造方法を提供し、前記方法は、
(A)(i)表面を有するアイオノマー樹脂粒子と(ii)接着促進添加剤を供給する工程であって、(1)アイオノマー樹脂粒子のアイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、(2)接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物である工程;並びに
(B)アイオノマー樹脂の非軟化条件下で粒子を接着促進添加剤と物理的に混合し、アイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に(または実質的に)存在するジアルコキシシラン化合物を有する粒子を製造する工程;
を含み、ジアルコキシシラン化合物は、アイオノマー樹脂の総重量を基準として約50~約5000重量ppmの濃度が樹脂組成物中で得られるような量で供給される。
【0020】
上記方法の一実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は周囲条件で液体である。別の実施形態では、アルコキシシラン化合物は粒子状樹脂組成物内に実質的に均一に分布している。
【0021】
上記全ての組成物及び方法の一実施形態では、ジアルコキシシラン化合物は2つのアルコキシシラン基に加えてカルボン酸反応性基を含む。一実施形態では、カルボン酸反応性基はアミノ基またはグリシジル基である。
【0022】
別の態様では、本発明は、上記粒子状樹脂組成物の1つをせん断下で溶融ブレンドして溶融ブレンドを製造し、次いでダイを通して溶融ブレンドをシート形態へと押し出し、その後、シート形態を冷却して樹脂を固化させることによる、アイオノマー樹脂のシートの製造方法を提供する。一実施形態では、シートは上面及び底面を有し、シートは、固化の前に上面及び底面のうちの一方または両方で、あるパターンでエンボス加工される。
【0023】
別の態様では、本発明は、そのような樹脂組成物の中間層シート、及び例えば本発明による中間層が挟まれた2枚のガラス板を含む、そのような中間層シートから製造されたガラス積層体を提供する。
【0024】
一実施形態では、中間層シートは、ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーを含む層を含み、中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され(実施例に記載の通り)、かつナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の空気面に接着される場合、フロートガラス板の空気面に接着したナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層の引き剥がし粘着力は、少なくとも約20N/cmである(実施例に記載の通り23℃及び50%RHで測定)。
【0025】
別の実施形態では、中間層シートは、ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーを含む層を含み、中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され(実施例に記載の通り)、かつナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の空気面に接着される場合、フロートガラス板の空気面に接着したナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層の引き剥がし粘着力は、湿潤状態の条件下で少なくとも約0.5、または少なくとも約1N/cmである(実施例に記載の通りに測定)。
【0026】
別の実施形態では、中間層シートは、ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーを含む層を含み、中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され(実施例に記載の通り)、かつナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板に接着される場合、ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層の引き剥がし粘着力は、フロートガラス板の空気面に接着した場合、(i)約5N/cm超(実施例に記載の通り23℃及び50%RHで測定)、または約10N/cm超(実施例に記載の通り23℃及び50%RHで測定)であり、かつ、(ii)フロートガラス板のスズ面に接着した場合(実施例に記載の通り23℃及び50%RHで測定)よりも大きい。
【0027】
本発明のこれら及び他の実施形態、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより当業者により容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明は、樹脂組成物、マスターバッチ組成物、そのようなマスターバッチ組成物を使用して調製される樹脂組成物、そのような樹脂組成物から調製される中間層、及びそのような中間層を含む積層ガラスに関する。詳細は以降に示されている。
【0029】
本明細書の文脈において、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、別段の指示がない限り、あらゆる目的のために、完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0031】
明示的に言及されている場合を除き、商標は大文字で示されている。
【0032】
別段の記載がない限り、全てのパーセンテージ、部、比などは重量基準である。
【0033】
別段の記載がない限り、psi単位で表される圧力はゲージ圧であり、kPa単位で表される圧力は絶対圧である。ただし、圧力差は絶対値として表される(例えば、圧力1は圧力2よりも25psi大きい)。
【0034】
量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、または上限値及び下限値の列挙として与えられる場合、これは、範囲が個別に開示されているか否かに関わらず、範囲の任意の上限及び下限の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。本明細書で数値の範囲が列挙される場合、別段の記載がない限り、範囲はその端点、及び範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図されている。本開示の範囲は、範囲を定義する際に列挙された具体的な値に限定されることは意図されていない。
【0035】
「約」という用語が使用される場合、これは特定の効果または結果が一定の許容誤差内で得られ得ることを意味するために使用され、当業者は許容誤差を得る方法を認識している。「約」という用語が範囲の値または端点を述べる際に使用される場合、その開示は、言及される具体的な値または端点を含むと理解すべきである。
【0036】
本明細書で使用する用語「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」、またはこれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含を網羅することが意図されている。例えば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていないか、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有のその他の要素も含むことができる。
【0037】
移行句「からなる」は、請求項で規定されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外し、通常関連する不純物を除いた列挙された材料以外の材料の包含に対して請求項を閉じる。プリアンブルの直後ではなく、請求項のボディの句に「からなる」という句が現れる場合、それはその句に記載されている要素のみを制限し、その他の要素は全体として請求項から除外されない。
【0038】
移行句「本質的に~からなる」は、請求項の範囲を特定の材料または工程、及び請求項に記載の発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響しないものに限定する。「本質的に~からなる」請求項は、「からなる」形式で記載されたクローズドクレームと「含む」形式で書かれた完全なオープンクレームの中間的な位置を占める。添加剤に適したレベルである本明細書で規定される任意選択的な添加剤、及び微量の不純物は、「本質的に~からなる」という用語によっては組成物から除外されない。
【0039】
更に、明示的に逆であるとの記載がない限り、「または」及び「及び/または」は、包括的であって排他的ではないことを指す。例えば、条件AまたはB、またはA及び/またはBは、次のいずれかに1つによって満たされる:Aは真(または存在する)かつBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)かつBは真(または存在)、及びAとBの両方が真(または存在する)。
【0040】
本明細書の様々な要素及び構成要素を説明するための「a」または「an」の使用は、便宜的なものにすぎず、本開示の一般的な意味を与える。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように解釈すべきであり、単数形には、そうでないことを意味することが自明でない限り、複数形も含まれる。
【0041】
本明細書で使用される「主な部分」または「主に」という用語は、本明細書で別段の定義がない限り、言及されている材料の50%を超えることを意味する。規定されていない場合、パーセントは分子(水素やエチレンなど)について言及されている場合にはモル濃度基準であり、その他の場合は重量基準(添加剤含有率など)である。
【0042】
本明細書で使用される「実質的な部分」または「実質的に」という用語は、別段の規定がない限り、使用される状況の当業者によって理解されるように、全てまたはほとんど全てまたは大多数を意味する。工業規模または商業規模の状況で通常発生する100%からの若干の合理的な相違を考慮することが意図されている。
【0043】
用語「欠乏した」または「減少した」は、元々存在していたものから減少したことと同義である。例えば、流れから材料の大部分を除去すると、その材料が実質的に欠乏した材料欠乏流れが生成することになる。逆に、「強化された」または「増加した」という用語は、元々存在していたものよりも多いことと同義である。
【0044】
本明細書で使用される「コポリマー」という用語は、2種以上のコモノマーの共重合により得られる共重合した単位を含むポリマーを指す。これに関連して、コポリマーは、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量、例えば「エチレンと15重量%のアクリル酸とを含むコポリマー」、または同様の説明に関連して本明細書に記載される場合がある。このような記載は、コモノマーを共重合した単位として言及していないという点で;コポリマーの従来の命名法、例えば国際純正・応用化学連合(IUPAC)の命名法が含まれていない点で;製品ごとの用語を使用しないという点で;または別の理由で;略式であるとみなされる場合がある。しかし、本明細書では、構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量に関するコポリマーの説明は、そのコポリマーが特定のコモノマーの共重合した単位を(規定されている場合は特定の量で)含むことを意味する。必然的に、コポリマーは、限定的な状況で明確にそのように述べられていない限り、所定のコモノマーを所定の量で含む反応混合物の生成物ではない。
【0045】
用語「ジポリマー」は、本質的に2種のモノマーからなるポリマーを指し、用語「ターポリマー」は、少なくとも3種のモノマーを含むポリマーを指す。
【0046】
本明細書で使用される「酸コポリマー」という用語は、α-オレフィン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、及び任意選択的な他の適切なコモノマー(複数可)(例えばα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル等)の共重合した単位を含むコポリマーを指す。
【0047】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」という用語は、単独で、または「(メタ)アクリレート」などの組み合わされた形態で、アクリルまたはメタクリル、例えば「アクリル酸またはメタクリル酸」、または「アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート」を指す。
【0048】
本明細書で使用される「アイオノマー」という用語は、通常、カルボン酸塩、例えば、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸アルカリ土類塩、カルボン酸遷移金属塩、及び/またはそのようなカルボン酸塩の組み合わせであるイオン性基を含むポリマーを指す。そのようなポリマーは、通常、例えば塩基との反応により、本明細書で定義される酸コポリマーである前駆体または親ポリマーのカルボン酸基を部分的にまたは完全に中和することにより製造される。本明細書で使用されるアルカリ金属アイオノマーは、ナトリウムアイオノマー、例えばエチレンとメタクリル酸とのコポリマーであり、共重合されたメタクリル酸単位のカルボン酸基の全てまたは一部が中和されており、実質的に全ての中和されたカルボン酸基はカルボン酸ナトリウムの形態である。
【0049】
便宜上、本発明の多くの要素が別々に説明されており、選択肢の列挙が示される場合があり、数値が範囲内にある場合がある。しかしながら、本開示の目的のためには、任意のそのような別個の構成要素、列挙されている項目または範囲の任意の組み合わせの任意の請求項についての本開示の範囲または本開示のサポートに対する限定とみなされるべきではない。別段の記載がない限り、本開示との可能なあらゆる組み合わせは、あらゆる目的のために明示的に開示されているとみなされるべきである。
【0050】
本明細書に記載のものと類似のまたは均等な方法及び材料を本開示の実施または試験において使用できるものの、適切な方法及び材料が本明細書に記載されている。したがって、本明細書の材料、方法、及び実施例は、例示的なものにすぎず、具体的に記載されている場合を除き、限定することを意図していない。
【0051】
詳細な説明
アイオノマー
本発明によれば、アイオノマー樹脂は、ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、これは、エチレン由来の構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位と、以下で記載する任意選択的な他の構成単位とを有する樹脂を含み、この中のα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の少なくとも一部がナトリウムイオンで中和されている。
【0052】
ベースポリマーとして機能するエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーにおいて、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有割合は、典型的には2質量%以上、または5質量%以上(コポリマー全体の質量基準)である。更に、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有割合は、典型的には30質量%以下である(コポリマー全体の質量基準)。
【0053】
アイオノマーを構成するα,β-不飽和カルボン酸の例としては、限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される。別の実施形態では、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0054】
エチレン酸コポリマーは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどの1種以上の追加のコモノマー(複数可)の共重合した単位を更に含んでいてもよい。存在する場合、3~10個、または3~8個の炭素を有するアルキルエステルが典型的に使用される。不飽和カルボン酸の適切なエステルの具体例としては、限定するものではないが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、追加のコモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルアセテート、及びこれらの2種以上の混合物から選択される。別の実施形態では、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、及びイソブチルメタクリレートのうちの1種以上である。別の実施形態では、追加のコモノマーはn-ブチルアクリレートとイソブチルアクリレートのうちの一方または両方である。
【0055】
好適なエチレン酸コポリマーは、190℃及び2.16kgでASTM法D1238-89に従って決定される、約1から、または約2から、約4000g/10分まで、または1000g/10分まで、または約400g/10分までのメルトフローレート(MFR)を有する。
【0056】
最後に、適切なエチレン酸コポリマーは、例えば、US3404134、US5028674、US6500888B2、US6518365B1、US8334033B2、及びUS8399096B2に記載の通りに合成することができる。一実施形態では、US8399096B2に記載の方法が使用され、十分に高レベルかつ相完的な量の第2のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体が反応混合物中に存在する。
【0057】
アイオノマーを得るために、エチレン酸コポリマーは、1種以上の塩基との反応により部分的に中和される。エチレン酸コポリマーを中和するための適切な手順の例は、US3404134及びUS6518365B1に記載されている。中和後、エチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の水素原子の約1%、または約10%、または約15%、または約20%から、約90%、または約60%、または約55%、または約30%が、他のカチオンに置き換えられる。言い換えると、エチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量の約1%、または約10%、または約15%、または約20%から、約90%、または約60%、または約55%、または約30%が中和される。別の代替表現では、酸基は、中和されていないエチレン酸コポリマーについて計算または測定されたエチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量を基準として、約1%、または約10%、または約15%、または約20%から、約90%、または約60%、または約55%、または約30%のレベルまで中和される。中和レベルは、具体的な最終用途に合わせて調整することができる。
【0058】
アイオノマー中のカルボキシレートアニオンの対イオンはナトリウムカチオンである。本発明で使用されるアイオノマーはナトリウムで中和されたアイオノマーであるが、ナトリウムカチオン以外の対イオンが、アイオノマー中のカルボキシレート基の合計当量を基準として5当量%未満、または3当量%未満、または2当量%未満、または1当量未満の少量で存在していてもよい。一実施形態では、対イオンは実質的にナトリウムイオンである。
【0059】
ナトリウム以外の適切なカチオンとしては、アイオノマー組成物が合成され、加工され、使用される条件下で安定な正に帯電した任意の種が挙げられる。適切なカチオンが2種以上の組み合わせで使用されてもよい。典型的には、そのような他のカチオンは金属カチオンであり、これは一価、二価、三価、または多価であってもよい。一価金属カチオンとしては、限定するものではないが、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのカチオンが挙げられる。二価金属カチオンとしては、限定するものではないが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのカチオンが挙げられる。三価金属カチオンとしては、限定するものではないが、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのカチオンが挙げられる。多価金属カチオンとしては、限定するものではないが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄などのカチオンが挙げられる。金属カチオンが多価である場合、US3404134に記載されているように、ステアレート、オレエート、サリシレート、及びフェノレートのラジカルなどの錯化剤が含まれていてもよい。典型的には、存在する場合、使用される金属カチオンは、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウムなどの一価または二価の金属カチオン、及びこれらの金属カチオンの1種以上の組み合わせである。
【0060】
一実施形態では、ナトリウム以外の対イオンは、関連分野の当業者によって認識されるように、多くても工業的な状況で典型的に見られるような「汚染」量で存在する。
【0061】
得られたナトリウムで中和されたエチレン酸コポリマーは、190℃及び2.16kgでASTM法D1238-89に従って決定される、対応するエチレン酸コポリマーよりも低いメルトインデックスを有する。アイオノマーのメルトインデックスは、エチレン酸コポリマーのメルトインデックス、共重合した酸の量、中和レベル、カチオンの属性及びその価数などの多くの要因に依存する。更に、アイオノマーのメルトインデックスの望ましい値は、意図される最終用途によって決定される場合がある。しかしながら、典型的には、アイオノマーは、190℃及び2.16kgでASTM法D1238-89に従って決定される、約1000g/10分以下、または約750g/10分以下、または約500g/10分以下、または約250g/10分以下、または約100g/10分以下、または約50g/10分以下、または約25g/10分以下、または約20g/10分以下、または約10g/10分以下、または約7.5g/10分以下のメルトインデックスを有する。
【0062】
一実施形態では、アイオノマーは、
(i)エチレン、及び
(ii)約10重量%から、または約15重量%から、または約18重量%から、または約20重量%から、約30重量%まで、または約25重量%まで、または約23重量%まで、または約22重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
の共重合した単位を含む(これらから本質的になる)、少なくとも部分的にナトリウムで中和されたエチレン酸ジポリマーであり、
共重合した単位の重量パーセンテージはエチレン酸コポリマーの総重量基準であり、共重合した単位の重量パーセンテージの合計は100重量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する。
【0063】
一実施形態では、アイオノマーは、
(i)エチレン、
(ii)約10重量%から、または約15重量%から、または約18重量%から、または約20重量%から、約30重量%まで、または約25重量%まで、または約23重量%まで、または約22重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)約2重量%から、または約3重量%から、または約4重量%から、または約5重量%から、約15重量%まで、または約12重量%まで、または約11重量%まで、または約10重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、及び
(iv)任意選択的な、(iii)+(iv)が約15重量%以下、または約12重量%以下、または約11重量%以下であるような量の(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体、
の共重合した単位を含む、少なくとも部分的にナトリウムで中和されたエチレン酸ターポリマーであり、
共重合した単位の重量パーセンテージはエチレン酸コポリマーの総重量基準であり、共重合した単位の重量パーセンテージの合計は100重量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する。
【0064】
そのようなターポリマーアイオノマーは、WO2015/199750A1、WO2014/100313A1、及びUS2017/0320297A1に概略的に開示されている。
【0065】
上記のジポリマーまたはターポリマーの一実施形態では、α,β-不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0066】
上記のターポリマーの一実施形態では、α,β-不飽和カルボン酸エステルは、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、またはこれらの混合物である。
【0067】
上記のターポリマーの一実施形態では、コポリマーは、(i)、(ii)、及び(iii)の共重合した単位から本質的になる。
【0068】
シラン
本発明に従って使用するために適したシランは、ジアルコキシシランである。理論に拘束されるものではないが、シランの加水分解されたシラノール部分がガラス表面(シラノール)との接着結合を形成することができ、それによってポリマーとガラス表面との間の界面での接着力を高めると考えられる。その場合、シラン分子の残りの部分は、周囲のアイオノマー樹脂「マトリックス」と何らかの形である程度「固定」する必要がある。これを達成する1つの方法は、シランが化学的にまたはイオン結合または水素結合または十分なファンデルワールス力を介して結合できるような都合のよい形で相互作用するように、または立体的に中間層とガラス表面との間の「橋掛け」ができるような大きさ及び形状であるように、官能基を選択することであり、それにより有利なシラン添加剤なしで同じ中間層上での接着力が増加する。
【0069】
一実施形態では、各アルコキシ基は、それぞれ1~3個の炭素原子を含む。好適な例としては、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ(メチル)ビニルシラン、1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、メチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピル-N-シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0070】
別の実施形態では、アルコキシ基に加えて、シランは、アイオノマー樹脂マトリックスに結合するための「活性」化学基、例えばアミノ基やグリシジル基などのカルボン酸反応性基も含む。好適な例としては、γ-アミノプロピル-N-シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0071】
望ましくは、シランは周囲条件下(例えば20℃)で液体である。具体的なそのような例としては、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CAS#3069-29-2)及び3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(CAS#2897-60-1)が挙げられる。
【0072】
追加的な接着力調節剤
シランの使用に加えて、望まれる場合には、ガラスなどへの中間層の接着を更に制御することも可能である。
【0073】
例えば、官能基がカルボキシル基及びカルボキシル基の誘導体基(以降カルボキシル基という)から選択される少なくとも1つの基である反応性官能基含有オレフィンポリマー(以降カルボキシル基含有オレフィン系ポリマーという)も接着力調節剤として使用することができる。適切なカルボキシル基含有オレフィン系ポリマーは、例えばUS7989083B2に開示されている。
【0074】
積層体の十分な完全性を維持する(例えば層間剥離欠陥を防止する)ため及び破壊後の状態におけるガラスの十分な保持を維持するためには臨界最小レベルの接着力が必要であるが、得られる積層体の衝撃性能の最適化または調整を意図的に行うことができる。接着力調節剤の最適な添加量(累積)は、使用される添加剤と接着力が調節される樹脂によって異なるものの、得られる積層体のガラスへの接着力がパンメル試験(WO03/033583A1などに記載)において約3以上約10以下に通常調節されるように調整することが好ましい。特に、高い耐貫通性が必要とされる場合には接着力が約3以上約6以下となるように接着力調節剤の添加量を調整することがより好ましい一方で、高いガラス飛散防止性が必要とされる場合には接着力が約7以上約10以下となるように接着力調節剤の添加量を調整することがより好ましい。
【0075】
その他の添加剤
前述したシラン及び他の接着力調節剤以外に、本発明の樹脂組成物及びマスターバッチは、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、遮熱材料(赤外線吸収剤)など、またはこれらの混合物などの1種以上の他の添加剤を含有していてもよい。そのような他の添加剤は、一般的な意味で、関連分野の当業者に周知である。
【0076】
酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。これらのうち、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0077】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート及び2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリル系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3-trix(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、及びトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ)-5-メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、及び2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0078】
リン系酸化防止剤の例としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸フェニルジイソデシル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(ジノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチル)、亜リン酸トリス(シクロヘキシルフェニル)、亜リン酸2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、及び10-デシルオキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレンなどのモノ亜リン酸系化合物;4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、及びテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイトなどのジ亜リン酸系化合物;等が挙げられる。これらの中でもモノ亜リン酸系化合物が好ましい。
【0079】
硫黄系酸化防止剤の例としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0080】
これらの酸化防止剤は、単独で、またはこれらの2種以上の組み合わせで使用することができる。最終樹脂組成物において、利用される酸化防止剤は、典型的には、アイオノマー樹脂100重量部を基準として約0.001重量部以上、または約0.01重量部以上である。更に、利用される酸化防止剤の量は、典型的には、アイオノマー樹脂100重量部を基準として、約5重量部以下、または約1重量部以下である。マスターバッチ組成物では、[数字を追加]。
【0081】
紫外線吸収剤の例としては、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α’-)ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、及び2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)トリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、及び4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
【0082】
これらの紫外線吸収剤は、単独で、またはこれらの2種以上の組み合わせで使用することができる。最終樹脂組成物において、利用される紫外線吸収剤は、典型的には、アイオノマー樹脂の重量を基準として約10重量ppm以上、または約100重量ppm以上である。更に、利用される紫外線吸収剤の量は、典型的には、アイオノマー樹脂の重量を基準として約50,000ppm以下、または約10,000ppm以下である。
【0083】
いくつかの実施形態では、2つ以上のタイプのUV吸収剤を組み合わせて使用することもできる。
【0084】
別の実施形態では、UV吸収剤が添加されないか、積層体が実質的にUV吸収添加剤を含まない。
【0085】
光安定剤の例としては、Adeka Corporation製の「ADEKA STAB LA-57」(商品名)、Ciba Specialty Chemicals Inc.製の「TINUVIN 622」(商品名)などのヒンダードアミン系材料が挙げられる。
【0086】
積層体に遮熱機能を付与するために本発明の中間層の中に遮熱材料として遮熱微粒子または遮熱化合物を配合して積層ガラスを作製すると、1,500nmの波長における透過率を約50%以下に制御することができ、あるいはTDS値(ISO 13837:2008から計算)を約43%未満に制御することができる。
【0087】
遮熱微粒子の例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)などの金属ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などの金属ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などの金属ドープ酸化亜鉛、一般式:MmWOn(Mは金属元素を表し、mは約0.01以上約1.0以下であり、nは約2.2以上約3.0以下である)で表される金属元素複合タングステン酸化物、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O5)、六ホウ化ランタンなどが挙げられる。これらの中でも、ITO、ATO、及び金属元素複合タングステン酸化物が好ましく、金属元素複合タングステン酸化物がより好ましい。金属元素複合タングステン酸化物中のMで表される金属元素の例としては、Cs、Tl、Rb、Na、Kなどが挙げられ、特にCsが好ましい。遮熱性の観点から、mは好ましくは約0.2以上または約0.3以上であり、これは好ましくは約0.5以下または約0.4以下である。
【0088】
最終的な積層体の透明性の観点からは、遮熱微粒子の平均粒径は、好ましくは約100nm以下、または約50nm以下である。なお、本明細書でいう遮熱粒子の平均粒径とは、レーザー回折装置により測定されるものを意味する。
【0089】
最終樹脂組成物において、遮熱微粒子の含有率は、アイオノマー樹脂の重量に対して好ましくは約0.01重量%以上、または約0.05重量%以上、または約0.1重量%以上、または約0.2重量%以上である。更に、遮熱微粒子の含有率は、好ましくは約5重量%以下、または約3重量%以下である。
【0090】
遮熱化合物の例としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物などが挙げられる。遮熱性を更に改善する観点からは、遮熱性化合物が金属を含むことが好ましい。金属の例としては、Na、K、Li、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、V、Ca、Alなどが挙げられ、Niが特に好ましい。
【0091】
遮熱化合物の含有率は、アイオノマー樹脂の重量を基準として、好ましくは約0.001重量%以上、または約0.005重量%以上、または約0.01重量%以上である。更に、遮熱性化合物の含有率は、好ましくは約1重量%以下、または約0.5重量%以下である。
【0092】
樹脂組成物の製造
本発明の樹脂組成物は、様々な組成物を押出機に供給し、例えば溶融押出または成形により最終的な形状へと最終的に形成できる実質的に均一な混合物を生成するためにアイオノマー樹脂の溶融条件下で成分を均質に混合することにより、溶融ブレンドとして製造することができる。
【0093】
関連技術の当業者によって認識されるように、溶融ブレンドにおいて、シランを十分な程度の均一性でモノマー樹脂の中にブレンドするのに十分な強さの混合に確実にするように注意しなければならない。通常、押出混錬によるこの高度の混合は、押出機の中で十分なせん断時間と滞留時間を形成することによって行われる。また、望ましくない反応、混錬中の局所的な高濃度のシラン、高温によるシラン及びポリマー樹脂の分解を回避するようにも注意しなければならない。正しい処理装置と最適化された処理条件を選択することにより、変色した樹脂、ゲル、または劣化した生成物(例えば黒い斑点)の形成を回避することができる。
【0094】
例えば、シランの加水分解の程度は、水分への過度の暴露により及び長い時間で高められ、おそらく外部の水分との接触を制御するための更なる検討を必要とすることがよく理解される。例えば、望ましい最小限度のシランの加水分解に維持するために、乾燥空気または窒素によるブランケットが必要になる場合がある。
【0095】
本発明の一実施形態では、樹脂組成物は、第1のアイオノマー樹脂のマスターバッチに高濃度のシランを供給し、次いでこれを同じアイオノマー樹脂及び/または第2のアイオノマー樹脂に添加することにより低下させて望みのシラン最終濃度の組成物を得ることによって調製される。
【0096】
本発明によるマスターバッチ組成物の一実施形態では、これはアイオノマー樹脂粒子表面に吸収されたシラン添加剤を含む粒子状マスターバッチ組成物であり、ジアルコキシシラン化合物は、アイオノマー樹脂100重量部を基準として、約1重量部から、または約2.5重量部から、または約5重量部から、約10重量部まで、または約8重量部までの範囲の量でマスターバッチ組成物中に存在する。
【0097】
望ましくは、シランは液体であり、このマスターバッチ組成物は、アイオノマー樹脂の非軟化条件下で、言い換えるとアイオノマー樹脂が著しく凝集するか元の粒子形態を失う程度まで溶融または軟化しない条件下で、アイオノマー樹脂粒子と液体シランとを物理的に混合することにより調製することができる。この場合、シランは最小限の反応または分解で粒子表面に吸収される。
【0098】
マスターバッチ組成物を調製するための適切なサイズのアイオノマー樹脂粒子は、実質的には約0.1mmから、または約0.2mmから、約5mmまで、または約4mmまで、または約2mmまで、または約1mmまでのサイズ範囲である。このような粒子は、ステージミクロメーターを備えた光学顕微鏡で測定することができる。0.01mmの目盛りを有する1mmのステージミクロメーターを使用して、最大1mmの粒子を測定することができる。1mmを超える粒子は、0.05mmの目盛りを有する25mmのステージミクロメーターを使用して測定することができる。直径については、または楕円形または不規則な形状の粒子の場合、樹脂からランダムに選択した20個の粒子の最大寸法を測定し、20個の粒子の平均を使用して全体の粒子サイズを特徴付けることができる。
【0099】
一実施形態では、マスターバッチを調製するための粒子は、例えば低温粉砕によって名目上のペレットサイズから小さくされる。例えば、アイオノマー樹脂ペレットを直径約4mmの名目上の平均粒子サイズから、約0.1mm~約0.5mmの粒子サイズの範囲の大体の平均粒子サイズまで小さくするために、低温粉砕を使用することができる。この方法で粒子サイズを小さくすると、粒子の重量に対する粒子の表面積が増加する。また、これらの粒子は、粉砕プロセス中に破砕され、不規則な形状であり、これにより、名目上球形であるアイオノマー樹脂ペレット形状と比較して、粒子重量に対して表面積を更に増加させることができる。低温粉砕プロセスは、関連分野の当業者に広く周知であり、典型的には粉砕/製粉プロセスの前に液体窒素を使用してペレットを冷却することを含む。冷却された後、ペレットは機械式ミルを通過する。液体窒素を使用してペレットを冷却することにより、加熱を戻したり、ポリマーを劣化させたりすることなしに、より効果的にサイズを小さくすることができる。
【0100】
これらのアイオノマー樹脂粒子は、例えば水中溶融切断などの他の慣用的手段(例えば約0.5~約1.5mmの平均径を有する「マイクロペレット」)または関連技術分野の当業者に周知の他の方法により調製することもできる。
【0101】
あるいは、粒子状樹脂組成物は、粒子状アイオノマー樹脂と上記シラン添加剤(樹脂粒子の表面にシラン添加剤を吸収させる)とを、成分の最終濃度が得られる量で混合することにより、直接調製することができる。
【0102】
シラン添加剤は、アイオノマー樹脂の重量を基準として、約50重量ppmから、または約100重量ppmから、または約250重量ppmから、または約500重量ppmから、または約750重量ppmから、約5000重量ppmまで、または約4000重量ppmまで、または約2000重量ppmまで、または1500重量ppmまで、または約1250重量ppmまでの量で最終樹脂組成物中に存在する。
【0103】
追加的な添加剤が存在する場合、それはマスターバッチの一部として混合することができ、あるいは関連分野の当業者によって認識されるように、従来の手段により最終樹脂組成物の調製中に添加することができる。
【0104】
シート/中間層
本発明の樹脂組成物のシートは、ガラス積層体用の中間層を製造するのに適した従来の溶融押出または溶融成形プロセスによって調製することができる。そのようなプロセスは、上で組み込まれた刊行物によって例示されているように、関連分野の当業者に周知である。
【0105】
シートは、単層シートであっても多層シートであってもよい。例えば、2つの外層と他の任意選択的な内層との間に挟まれた機能性コア層を有する多層シートを形成することができる。一実施形態では、多層中間層の外層の少なくとも一方(または両方)が、本発明による樹脂組成物のシートである。
【0106】
機能性コア層の一例として、ポリスチレンコポリマー中間膜(JP2007-91491Aを参照)などの音響減衰層、ポリビニルアセタール層(US2013/0183507A1、US8741439B2、JP2012-214305A、及びUS8883317B2を参照)、粘弾性アクリル層(US7121380B2を参照)、スチレンとゴム系樹脂モノマーとのコポリマーを含む層(JP2009-256128Aを参照)、ポリオレフィンを含む層(US2012/0204940A1を参照)、エチレン/酢酸ビニルポリマーを含む層(WO2015/013242A1を参照)、エチレン酸コポリマーを含む層(WO2015/085165A1を参照)を挙げることができる。
【0107】
特定の一実施形態では、中間層は、WO2016/076336A1、WO2016/076337A1、WO2016/076338A1、WO2016/076339A1、WO2016/076340A1、及びUS2017/0320297A1に開示されているような熱可塑性エラストマー樹脂である。より具体的な実施形態では、熱可塑性エラストマー樹脂は、
(i)芳香族ビニルポリマーブロックを基準として、約60mol%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含む芳香族ビニルポリマーブロック(a)、及び
(ii)脂肪族不飽和ポリマーブロックを基準として、約60mol%以上の共役ジエンモノマー単位を含む脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)、
を有するブロックコポリマーの水素化生成物であり、
脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)は、共役ジエンモノマー単位としてイソプレン単位及びブタジエン単位を合計で約50mol%以上含み、
共役ジエンモノマー単位由来の脂肪族不飽和ポリマーブロックの残留炭素-炭素二重結合の量は、約2~約40mol%である。
【0108】
更に、中間層は、全体として実質的に一定の厚さを有する対称な形であってもよく、あるいは中間層の一部が別の部分よりも厚い非対称な形であってもよい(例えばUS2017/0320297A1及びUS2018/0117883A1で説明されている部分的または完全な「くさび形」)。更に、積層体は、実質的に透明であってもよく、あるいは全部または一部に色を有していてもよい(例えばUS2017/0320297A1及びUS2018/0117883A1で説明されている「シェードバンド」)。
【0109】
対称構造では、中間層は、約320μm以上、または約420μm以上の総膜厚を有す必要がある。更に、総膜厚は約1250μm以下、または約1,000μm以下である必要がある。
【0110】
くさび形などの非対称構造では、中間層の薄い部分は対称構造の厚さを有する必要があるが、厚い部分の厚さはくさび角などの様々なパラメータに依存する。くさび形の中間層の一実施形態では、厚い方の端部は、約1850μm以下、または約1600μm以下、または約1520μm以下、または約1330μm以下、または約1140μm以下の厚さを有し、薄い方の端部は、約600μm以上、または約700μm以上、または約760μm以上の厚さを有する。
【0111】
更に、積層体の製造において脱気を支援するための従来知られている方法によって、本発明の中間層の表面にエンボスなどの凹凸構造が形成されてもよい。エンボスの形状は特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。
【0112】
一実施形態では、積層ガラス用の中間層のうちの少なくとも1つの表面(及び好ましくは両方の表面)が成形される。積層ガラス用中間層の少なくとも片面を成形することにより、積層ガラスが製造される場合に、積層ガラス用中間層とガラスとの間の界面に存在する気泡が積層ガラスの外側に逃げやすくなり、そのため、積層ガラスの外観を好ましくすることができる。エンボスロール法により積層ガラス用の中間層の少なくとも片面を成形することが好ましい。積層ガラス用中間層の表面を成形することにより、積層ガラス用中間層の表面に凹部及び/または凸部が形成される。
【0113】
エンボスロール法で使用されるエンボスロールは、例えば、望まれる凹凸パターンを有しており凹凸パターンを金属ロールの表面に転写する彫刻ミル(マザーミル)を使用することにより製造することができる。更に、エンボスロールはレーザーエッチングを使用して製造することもできる。加えて、上述したように金属ロールの表面に微細な凹凸パターンを形成した後、微細な凹凸パターンを有する表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、またはガラスビーズなどの研磨材料を使用してブラスト処理を行うことができ、これにより、より微細な凹凸パターンを形成することもできる。
【0114】
また、エンボスロール法で使用されるエンボスロールには、剥離処理されていることが好ましい。剥離処理されていないエンボスロールが使用される場合、エンボスロールから積層ガラス用中間層を剥離することが困難になる。剥離処理の方法の例としては、シリコーン処理、Teflon(登録商標)処理、及びプラズマ処理などの公知の方法が挙げられる。
【0115】
エンボスロール法などにより成形された積層ガラスの中間層の表面の凹部の深さ及び/または凸部の高さ(以降「エンボス部の高さ」という場合がある)は、典型的には約5μm以上、または約10μm以上、または約20μm以上である。エンボス部の高さは、典型的には約150μm以下、または約100μm以下、または約80μm以下である。
【0116】
本発明において、エンボス部の高さとは、JIS B 0601(2001)で規定されている最大高さ粗さ(Rz)を指す。エンボス部の高さは、例えばレーザー顕微鏡などの共焦点原理を利用して測定することができる。なお、エンボス部の高さ、すなわち凹部の深さまたは凸部の高さは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々であってもよい。
【0117】
エンボスロール法などによって付与される形状の形態の例としては、格子、斜め格子、斜め楕円、楕円、斜め溝、及び溝が挙げられる。そのような形態の傾斜角は、典型的には、フィルムの流れ方向(MD方向)に対して約10°~約80°である。更に、成形パターンは、規則的なパターンもしくは不規則なパターン(ランダムなマットパターン等)、またはUS7351468B2に開示されているようなパターンであってもよい。
【0118】
エンボスロール法などによる成形は、積層ガラスの中間層の片面で行われてもよく、あるいは両面で行われてもよいが、より典型的には両面で行われる。
【0119】
積層体
従来公知の方法によって本発明の積層体を製造することが可能である。その例としては、真空ラミネーターの使用、真空バッグの使用、真空リングの使用、ニップロールの使用などが挙げられる。加えて、仮圧着の後に得られた積層体を最終接着のためにオートクレーブに入れる方法が使用されてもよい。
【0120】
真空ラミネーターを使用する場合、例えば、太陽電池の製造に使用される公知の装置を使用することができ、アセンブリは、約100℃以上、または約130℃以上、かつ約200℃以下、または約170℃以下の温度で約1×10-6MPa以上かつ約3×10-2MPa以下の減圧下で積層される。真空バッグまたは真空リングを使用する方法は、例えば、EP1235683A1(CA2388107A1)に記載されており、例えば、アセンブリは、約130℃以上かつ約145℃以下で約2×10-2MPaの圧力下で積層される。
【0121】
ニップロールを使用する場合、例えば、スキン樹脂の流動開始温度以下の温度で最初の仮圧着を行った後、更に流動開始温度に近い条件下で仮圧着を行う方法が例示される。具体的には、例えば、アセンブリを赤外線ヒーターなどで約30℃以上約100℃以下に加熱した後、ロールで脱気し、更に約50℃以上約150℃以下で加熱し、続いてロールで圧着することで接着または仮接着を行う方法が例示される。
【0122】
仮圧着後に補足的に行われるオートクレーブ処理はモジュールの厚さまたは構成に応じて可変であるが、例えば、約120℃以上約160℃以下の温度で約0.5時間以上約2時間以下の間、約1MPa以上約15MPaの圧力で行われる。
【0123】
あるいは、積層体を処理するために周知の「オートクレーブなし」プロセスが使用されてもよい。
【0124】
有利には、積層ガラスを作製するために使用されるガラスは特に限定されない。フロート板ガラス、研磨板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収ガラスなどの無機ガラス、及びポリメチルメタクリレートやポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラスなどを使用することができる。これらのガラスは、無色、着色、透明、または不透明のガラスのいずれであってもよい。これらのガラスは、単独で使用されてもよく、あるいはこれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0125】
本発明の積層ガラスは、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、またはヘッドアップディスプレイ用ガラス;窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、ショーウインドー、バルコニー、手すり壁などの建築部材;会議室のパーティションガラス部材;ソーラーパネル;などに好適に使用することができる。このような利用の詳細な情報については、上で参照により組み込まれた刊行物の中で見ることができる。
【0126】
本発明は、積層ガラスの特性の以下の具体的な実施例から更に理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0127】
実施例で使用した材料は以下の通りである。
【0128】
実施例で使用したガラスは、標準的なアニールが行われたソーダ石灰ガラスであった(Guardian Industries,Inc.,Galax VA,USAから入手)。
【0129】
アイオノマー1(I1):E.I.du Pont de Nemours&Co.(Wilmington,DE,USA)から入手した部分的に中和されたエチレン酸ジポリマーアイオノマー(21.7%のメタクリル酸、Naで26%中和、MI=1.8@190℃)。
【0130】
シラン1(S1):γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-187、Momentive Performance Materials,Inc.,Waterford,NY USAから入手可能)。
【0131】
シラン2(S2):3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(CoatOSil(登録商標)2287、Momentive Performance Materials,Inc.,Waterford,NY USAから入手可能)。
【0132】
シラン3(S3):N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-2120、Momentive Performance Materials,Inc.,Waterford,NY USAから入手可能)。
【0133】
アイオノマーシートの作製
シランを含む実施例については、以下の手法を利用した:
1200gのアイオノマー樹脂を、大きな口の金属ねじ蓋を備えた清浄なポリプロピレンプラスチック製容器(容量2ガロン)の中に0.1gの最も近くまで量り入れた。指示された濃度を得るための特定の量の液体シランを、適切な換気の下で、適切な実験室の安全慣行に従って、容器の中にピペットで入れた。次いで、容器を蓋で密閉し、手作業で2分間十分に振とうして、液体をアイオノマー樹脂ペレットの塊全体に分散させた。ブレンドの最初の調製から1時間後に混合物を1分間再び振とうし、吸収された樹脂をフィーダーのホッパーに供給する前に再度1分間振とうした。上の操作は、周囲の温度と湿度の条件で行った(名目上23C及び50%RHであるが、湿度が制御された環境ではない)。調製から約4時間以内に、以下のアイオノマーシート作製方法に記載されるように、較正されたオーガー式フィーダーによりシラン/樹脂ブレンドを押出機に供給した。
【0134】
実施例CE-8~CE-11の樹脂ペレットを吸収させるためにシラン1(S1)を使用した。実施例1~13の樹脂ペレットを吸収させるためにシラン2(S2)を使用した。実施例14~17の樹脂ペレットを吸収させるためにシラン3(S3)を使用した。
【0135】
アイオノマー樹脂及びシラン添加剤(存在する場合)は、較正したピッグテール型オーガーを備えたK-Tronフィーダー(Coperion GmbH)を使用して、表Iに示す以下の温度プロファイルで、約5~7ポンド/時間で直径18mmのLiestritzの2軸混錬押出機(スクリュー速度を200rpmに設定)へ供給し、ポリマーストランドへと押し出した(2つの6mm穴ダイ)。
【表1】
【0136】
ポリマーのスループットは、所定のスループットまたは滞留時間及びその結果として得られるせん断条件を得るためにスクリュー速度を調整することによって制御した。両方の押出機の場合、溶融ストランドを周囲温度の脱塩水を含む水バッチを通して引き出し、余分な水を圧縮空気で吹き飛ばし、ストランドを回転カッター(Conair)に供給して切断されたストランドペレットを得た。次いで、これらのペレットを、わずかに乾燥した窒素パージを行いながら、50℃の真空オーブン中で一晩乾燥した。その後、ペレットを、寸法150mmx200mm、名目上の厚さ0.76mmの試験片へと圧縮成形した。次に、これらの試験片を乾燥雰囲気に維持するか、指示されている場合には以下に示す通りに積層前に様々な湿度条件においた。
【0137】
積層体の作製方法
以下の方法により、各アイオノマーシートから積層ガラスを作製した。アニールしたガラス板(100x100x3mm)をリン酸三ナトリウム(5g/l)の脱イオン水溶液で50℃で5分間洗浄し、その後脱イオン水で十分にすすいでから乾燥した。表1に列挙されている各アイオノマーシート(それぞれ厚さ約0.76mm)それぞれの3つの層を積み重ね、2枚のガラス板の間に配置した(厚さ2.28mmの中間層を得るため)。
【0138】
アイオノマーシートの水分レベルは、室内環境(約35%RH)への接触時間を最小限にすることにより0.08重量%以下に維持するか、以下の実施例で示す温度及び湿度レベルに10日間暴露した(試料はEspec湿度チャンバー-LHU-113型の中に置いた)。
【0139】
アイオノマーシートの水分レベルは、150℃の加熱チャンバー温度で電量カールフィッシャー法(Metrohm800型)を使用してサンプルバイアルについて測定した。アイオノマーシートは、合計0.40gの重さのサンプルバイアルに適合するように小片へと切断した。
【0140】
その後、予め積層したアセンブリを、ガラス板との各層の相対的な位置を維持するために、2か所でポリエステルテープ片を用いて一体にテープで留めた。層内から空気を除去し易くするために、ナイロン生地のストリップをアセンブリの周囲に配置した。アセンブリをナイロン製の真空バッグに入れて密封し、その後真空ポンプに接続した。内部から空気を実質的に除去できるように真空にした(バッグ内の空気圧を50ミリバール絶対圧未満に低下させた)。次いで、バッグに入れたアセンブリを対流式空気オーブンで120℃に加熱し、30分間保持した。その後、冷却ファンを使用してアセンブリを室温近くまで冷却し、アセンブリを真空源から離し、バッグを取り外すことで、ガラスと中間層が完全に予備圧縮されたアセンブリを得た。
【0141】
その後、アセンブリを空気オートクレーブの中に入れ、温度及び圧力を周囲温度から135℃まで13.8barで15分かけて上昇させた。この温度と圧力を30分間保持した後、約2.5℃/分の冷却で温度を40℃まで下げることにより圧力を周囲圧力に戻し(15分かけて)、最終的な積層体をオートクレーブから取り出した。
【0142】
ヘイズの測定
積層体を、WINDEXガラスクリーナー(S.C.Johnson&Son,Inc.)及びリントフリーの布を使用して十分にきれいにし、有効な光学測定の実施を妨げる可能性のある気泡及びその他の欠陥がないことを確認するために検査した。その後、Haze-gard Plusヘイズメーター(Byk-Gardner)により積層体を評価してヘイズのパーセント測定値を得た。ヘイズの測定は、米国国家規格(ANSI Z26.1-1966)「Safety Code for Safety Glazing Materials for Glazing Motor Vehicles Operating on Land Highways」に概説されている慣行に従った。前記規格の
図5及び6と共に、セクション5.17及び5.18の試験では、光沢材料のヘイズレベルを測定するための適切な方法及び装置構成について詳しく説明されている。Haze-gard Plusヘイズメーターは、以降の全ての測定で使用したこの規格の適切な基準を満たしている。米国国立標準局(現在のNIST)で追跡可能なヘイズ標準を使用して、装置が十分に較正され適切に作動することを確認した。
【0143】
【0144】
結果から分かるように、添加されたシランの添加は、得られた積層体のヘイズに実質的に悪影響を及ぼさなかった。
【0145】
引き剥がし粘着力の測定
引き剥がし粘着力の測定を可能にするために、以下の例外を除いて、いくつかのサンプルを上記の通りに作製した。
【0146】
アニールされたガラスにスクライバーで印を付け、100mm×200mmの長方形に切断し、続いて前述の手順に従って洗浄した。シリコーン接着剤付きの薄いポリエステルテープ(厚さ25umx幅25mm)を2つの平行なストリップとなるように「対象面」(空気面またはスズ面)のガラス表面に貼り付け、間に均一な25mm幅の接着領域を得た。この手順により、標準的な引き剥がし粘着力試験方法で従来行われているようにポリマー層を切断して剥離ストリップを作成する必要なしに、非常に境界が明確な接着領域を形成することができる。中間層試験片の上に、FEPフィルムの薄い4ミルシートをプラスチックシートの上に配置した後、2番目のガラス片を上に配置することで、積層工程のための比較的平坦な表面を得て、一番上のガラス片を除去するための剥離層として機能させた。次いで、全ての積層工程を上記の通りに行った。その後、上記のプロセスで製造した様々なサンプルについて、機械試験装置(INSTRON 1122型、Instron Industrial Products,Norwood,MA USA)により90°の角度の引き剥がし粘着力測定を行った。剥離は、標準的な実験室条件(名目上23℃及び50%RH)下で1cm/分の割合のクロスヘッド速度で行った。約100mmのサンプルを引き剥がした後、脱塩水をガラスと剥離界面に塗布し、界面が液体の水に完全に浸るようにした。その後、剥離速度を0.25mm/分に下げ、更に約100mmのサンプルが試験されるまで、試験を数時間継続した。この最終試験期間中にサンプルが確実に「湿潤」状態を維持するのに十分な水が存在していた。データは、コンピューターソフトウェア(INSTRON Bluehill IIIソフトウェア、Instron Industrial Products,Norwood,MA USA)により収集し、「50%RH」及び「湿潤状態」の引き剥がし試験の項目の平均の力のレベルを計算した。
【0147】
【0148】
【表3-2】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] (i)アイオノマー樹脂と(ii)接着促進添加剤との均質混合物を含有する樹脂組成物であって:
(a)前記アイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり;
(b)前記接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり;かつ、
(c)前記ジアルコキシシラン化合物が前記アイオノマー樹脂の重量を基準として50~5000重量ppmの範囲の量で前記樹脂組成物中に存在する;
ことを特徴とする樹脂組成物。
[2] 前記ジアルコキシシラン化合物が周囲温度で液体であることを特徴とする、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記ジアルコキシシラン化合物が前記樹脂組成物内に実質的に均一に分布していることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記ジアルコキシシラン化合物の各アルコキシ基がそれぞれ1~3個の炭素原子を含む、及び/又は前記ジアルコキシシラン化合物は前記アルコキシ基に加えて前記アイオノマー樹脂に結合するための活性化学基も含むことを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[5] 前記活性化学基がアミノ基及びグリシジル基から選択されることを特徴とする、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記ジアルコキシシラン化合物が、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランから選択されることを特徴とする、[1]に記載の樹脂組成物。
[7] 前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、エチレン由来の構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位とを含み、前記α,β-不飽和カルボン酸由来の前記構成単位の少なくとも一部が対イオンで中和されており、前記対イオンがナトリウムカチオンから本質的になる、[1]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[8] (A)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、及び
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
の共重合した単位から本質的になるジポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%であり、前記α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成することを特徴とする、
又は、
(B)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)2重量%~15重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、及び
(iv)任意選択的な、(iii)+(iv)が15重量%以下であるような量の(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体、
の共重合した単位から本質的になるターポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%であり、前記α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成することを特徴とする、
[8]に記載の樹脂組成物。
[10] (i)アイオノマー樹脂粒子と(ii)接着促進添加剤とを含有する粒子状マスターバッチ組成物であって:
(a)前記アイオノマー樹脂粒子のアイオノマー樹脂がナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり;
(b)前記接着促進添加剤がジアルコキシシラン化合物であり;
(c)前記ジアルコキシシラン化合物が前記アイオノマー樹脂100重量部を基準として1~10重量部の範囲の量で前記マスターバッチ組成物中に存在し;
(d)前記ジアルコキシシラン化合物が、前記アイオノマー樹脂粒子の表面に吸収されたものとして主に前記マスターバッチ組成物中に存在することを特徴とする、
粒子状マスターバッチ組成物。
[11] 前記ジアルコキシシラン化合物の各アルコキシ基がそれぞれ1~3個の炭素原子を含む、及び/又は前記ジアルコキシシラン化合物は前記アルコキシ基に加えて前記アイオノマー樹脂に結合するための活性化学基も含むことを特徴とする、[10]に記載のマスターバッチ組成物。
[12] 前記活性化学基がアミノ基及びグリシジル基から選択されることを特徴とする、[11]に記載のマスターバッチ組成物。
[13] 前記ジアルコキシシラン化合物が、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランから選択されることを特徴とする、[10]に記載のマスターバッチ組成物。
[14] 前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、エチレン由来の構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位とを含み、前記α,β-不飽和カルボン酸由来の前記構成単位の少なくとも一部が対イオンで中和されており、前記対イオンがナトリウムカチオンから本質的になる、[10]~[13]のいずれか1つに記載のマスターバッチ組成物。
[15] (A)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、及び
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
の共重合した単位から本質的になるジポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%であり、前記α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成することを特徴とする、
又は、
(B)前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーが、
(i)エチレン、
(ii)10重量%~30重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)2重量%~15重量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、及び
(iv)任意選択的な、(iii)+(iv)が15重量%以下であるような量の(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体、
の共重合した単位から本質的になるターポリマーであり、
前記共重合した単位の重量パーセンテージが前記エチレン酸コポリマーの総重量基準であり、前記共重合した単位の重量パーセンテージの合計が100重量%であり、前記α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成することを特徴とする、
[14]に記載のマスターバッチ組成物。
[16] (A)[10]~[15]のいずれか1つに記載のマスターバッチ組成物を供給する工程;及び
(B)前記マスターバッチ組成物を、ある量の第2のナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーと混合して、アイオノマー樹脂の総重量を基準として50~5000重量ppmの前記ジアルコキシシラン化合物の濃度を有する均質混合物を得る工程;
を含む、樹脂組成物の製造方法。
[17] ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーを含む層を含む中間層シートであって、
(A)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の前記空気面に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層の引き剥がし粘着力が、少なくとも約20N/cmである(23℃及び50%RHで測定);
(B)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板の前記空気面に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層の引き剥がし粘着力が、少なくとも約0.5である(湿潤状態の条件下);並びに/又は
(C)前記中間層シートが34℃及び50%の相対湿度で前処理され、かつ前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの前記層が空気面とスズ面とを有するフロートガラス板に接着される場合に、前記フロートガラス板の前記空気面に接着した場合の前記ナトリウムで中和されたエチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーの層の引き剥がし粘着力が、(i)約5N/cm超(23℃及び50%RHで測定)であり、かつ、(ii)前記フロートガラス板の前記スズ面に接着した場合(23℃及び50%RHで測定)よりも大きい;
ことを特徴とする、中間層シート。