IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲーの特許一覧

特許7585398ビニルシクロヘキセンのジアルデヒドの調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ビニルシクロヘキセンのジアルデヒドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20241111BHJP
   C07C 47/32 20060101ALI20241111BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20241111BHJP
   C07C 31/27 20060101ALI20241111BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/32
C07C29/141
C07C31/27
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023108019
(22)【出願日】2023-06-30
(65)【公開番号】P2024008879
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】22183349.4
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】キャロリン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベラー
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01368434(GB,A)
【文献】特表2003-505438(JP,A)
【文献】国際公開第2011/005822(WO,A1)
【文献】特開昭53-050102(JP,A)
【文献】特開2012-188413(JP,A)
【文献】ChemCatChem,2018年,10,pp.4126-4133
【文献】European Journal of Inorganic Chemistry,2002年,pp.711-716
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B,C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最初にビニルシクロヘキセンを入れ、
b)式(I):
【化1】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Rは、-H、-(C-C12)-アルキル、-Phから選択される。)
の化合物を添加し、
c)錯体を形成できるPt化合物を添加し、
d)ヨウ素化合物を添加し、
あるいは、c及びd)に代えて、PtI を添加し、
e)COおよびH中に入れ、
f)前記工程a)~前記工程e)の反応混合物を加熱して、前記ビニルシクロヘキセンをジアルデヒドに転化する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記Rおよび前記Rは、-Hである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記R、前記R、前記R、前記Rは、-Phである、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記Rおよび前記Rは、-(C-C12)-アルキルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記Rおよび前記Rは、-CHである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記化合物(I)は、構造(1):
【化2】
を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
前記Pt化合物は、Pt(II)I、Pt(IV)I、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II)、Pt(II)(acac)、Pt(0)(PPh、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2)、Pt(0)(エチレン)(PPh、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0)、Pt(II)(OAC)溶液、Pt(0)(t-Bu)、Pt(II)(COD)Me、Pt(II)(COD)I、Pt(IV)IMe、Pt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)から選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
前記PtIは、ビニルシクロヘキセンを基準としてモル%で測定した値が0.1モル%~5モル%の範囲となる量で添加される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項9】
追加工程として、
e’)溶媒を添加する工程
を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】
追加工程として、
g)前記ジアルデヒドをジオールに転化する工程
を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項11】
前記ジアルデヒドからジオールへの転化が「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)を用いて行われる、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルシクロヘキセンのジアルデヒドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2009/0171125号明細書は、環状オレフィンのヒドロホルミル化方法を記載している。文献中、Rh触媒が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2009/0171125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規のヒドロホルミル化方法を提供することである。この方法は、従来技術から知られている方法と比較して、収率の増加をもたらさなければならない。
【0005】
この目的は、請求項1記載の方法により達成される。
【0006】
a)最初にジビニルシクロヘキセンを入れ
b)式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Rは、-H、-(C-C12)-アルキル、-Phから選択される。)
の化合物を添加し、
c)錯体を形成できるPt化合物を添加し、
d)ヨウ素化合物を添加し、
e)COおよびH中に入れ、
f)工程a)~工程e)の反応混合物を加熱して、ビニルシクロヘキセンをジアルデヒドに転化する工程
を含む方法。
【0009】
この方法において、工程a)~工程e)は、所望のいかなる順序でも実施することができる。ただし、一般的には、工程a)~工程d)において共反応物を最初に入れた後に、COおよびHを添加する。
【0010】
工程c)および工程d)は、例えばPtIを添加することにより、単一工程で実施することも可能である。
【0011】
本方法の一変形例では、PtIを添加することにより、Pt化合物およびヨウ素化合物を一工程で添加する。
【0012】
表現「(C-C12)-アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C-C)-アルキル基、より好ましくは(C-C)-アルキル、最も好ましくは(C-C)-アルキルである。
【0013】
適切な(C-C12)-アルキル基は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0014】
本方法の一変形例では、RおよびRは-Hである。
【0015】
本方法の一変形例では、R、R、R、Rは-Phである。
【0016】
本方法の一変形例では、RおよびRは-(C-C12)-アルキルである。
【0017】
本方法の一変形例では、RおよびRは-CHである。
【0018】
本方法の一変形例では、化合物(I)は、構造(1):
【0019】
【化2】
【0020】
を有する。
【0021】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)I、Pt(IV)I、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II)、Pt(II)(acac)、Pt(0)(PPh、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2)、Pt(0)(エチレン)(PPh、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0)、Pt(II)(OAC)溶液、Pt(0)(t-Bu)、Pt(II)(COD)Me、Pt(II)(COD)I、Pt(IV)IMe、Pt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)から選択される。
【0022】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)I、Pt(II)(acac)から選択される。
【0023】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)Iである。
【0024】
本方法の一変形例では、ヨウ素化合物は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、NHX、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキル、ハロゲン化トリアルキル、ハロゲン化テトラアルキル、ハロゲン化シクロアルキルアンモニウムから選択される。
【0025】
本方法の一変形例では、ヨウ素化合物は、Pt(II)I 、LiIから選択される。
【0026】
本方法の一変形例では、PtIは、ビニルシクロヘキセンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~5モル%の範囲となるような量で添加される。
【0027】
本方法の一変形例では、PtIは、ビニルシクロヘキセンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~3モル%の範囲となるような量で添加される。
【0028】
本方法の一変形例では、PtIは、ビニルシクロヘキセンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~1モル%の範囲となるような量で添加される。
【0029】
本方法の一変形例では、本方法は追加工程としてe’)溶媒を添加する工程含む。
【0030】
本方法の一変形例では、溶媒は、THF、DCM、ACN、ヘプタン、DMF、トルエン、テキサノール、ペンタン、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、マロサーム、プロピレンカーボネート、MTBE、ジグライム、トリグライム、ジエチルエーテル、ジオキサン、イソプロパノール、tert-ブタノール、イソノナノール、イソブタノール、イソペンタノール、酢酸エチルから選択される。
【0031】
本方法の一変形例では、溶媒は、THF、DCM、ACN、ヘプタン、DMF、トルエン、テキサノールから選択される。
【0032】
本方法の一変形例では、COおよびHは、1MPa(10バール)~6MPa(60バール)の範囲の圧力で供給される。
【0033】
本方法の一変形例では、COおよびHは、1MPa(20バール)~6MPa(50バール)の範囲の圧力で供給される。
【0034】
本方法の一変形例では、反応混合物は、30℃~150℃の範囲の温度に加熱される。
【0035】
本方法の一変形例では、反応混合物は、80℃~140℃の範囲の温度に加熱される。
【0036】
本方法の一変形例では、本方法は、追加工程としてg)ジアルデヒドをジオールに転化する工程を含む。
【0037】
本方法の一変形例では、ジアルデヒドからジオールへの転化は、「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)を用いて実施される。
【0038】
本方法に加えて、(2a)および(2b)のアルデヒド混合物と、(3a)および(3b)のアルコール混合物も特許請求されている。
【0039】
化合物(2a)および化合物(2b):
【0040】
【化3】
【0041】
を含むアルデヒド混合物。
【0042】
化合物(3a)および化合物(3b):
【0043】
【化4】
【0044】
を含むアルコール混合物。
【0045】
本発明は、実施例を参照して以下にさらに詳細に説明されるものとする。
【実施例
【0046】
実験の説明
ビニルシクロヘキセンのジアルデヒドへの転化
【0047】
【化5】
【0048】
10ミリモルの4ビニルシクロヘキサ-1-エン、10mLの無水トルエン、0.5モル%のPtI、2.2当量のキサントホス(1)(Ptベース)を、アルゴン下、Parr Instruments社製の25mL鋼製オートクレーブ内に入れる。そのオートクレーブを合成ガス(CO:H=1:1)で40バールに加圧し、120℃に加熱して撹拌することにより反応を開始する。この反応は、40バール、120℃で3.5時間行う。次いで、オートクレーブを冷却し、圧力を解放してGCサンプルを採取する。
【0049】
比較例では、PtIの代わりにRh(acac)(CO)を添加した。
Rh(acac)(CO)による反応は11時間にわたって行った。
【0050】
ジアルデヒド(2a)+(2b)の収率:
PtI:92%
Rh(acac)(CO):14%未満
【0051】
ジアルデヒドのジオールへの転化
【0052】
【化6】
【0053】
30ミリモルのジアルデヒドの異性体混合物、25mLの無水トルエン、176mgの「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)を、アルゴン下、Parr社製の100mL圧力オートクレーブに移す。そのオートクレーブを水素で50バールに加圧し、撹拌しながら100℃で1時間、110℃でさらに30分間反応を行った。その後、反応を停止した(オートクレーブを冷却し、圧力を解放した)。その反応溶液をシュレンク容器に移す。2つの相が形成されたので、下相を分離し、真空中でトルエンを除去した。これにより、ジオール(3a)+(3b)の異性体混合物が得られる。
【0054】
ジオール(3a)+(3b)の収率:85%
【0055】
実験結果が示すように、本目的は、本発明による方法により達成される。