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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 651K
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023111690
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2019080273の分割
【原出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2023118945
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2018124744
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直澄
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘明
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042094(JP,A)
【文献】特開2017-224783(JP,A)
【文献】特開2018-022861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸状を有するパターンが形成された表面を有する基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の前記表面に、室温以上の凝固点を有する第1の昇華性物質と、前記第1の昇華性物質よりも高い蒸気圧を有する第2の昇華性物質とが互いに混ざり合った混合乾燥補助物質であって、前記第1の昇華性物質の凝固点よりも低い凝固点を有する混合乾燥補助物質を供給するための混合乾燥補助物質供給ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面から前記第2の昇華性物質を蒸発させるための蒸発ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面から前記第1の昇華性物質を除去するための除去ユニットと、
前記混合乾燥補助物質供給ユニット、前記蒸発ユニットおよび前記除去ユニットを制御する制御装置とを含み、
前記制御装置が、
前記基板の表面に、前記混合乾燥補助物質供給ユニットによって前記混合乾燥補助物質を供給する混合乾燥補助物質供給工程と、
前記基板の表面に存在する前記混合乾燥補助物質から前記第2の昇華性物質を前記蒸発ユニットによって蒸発させることにより、前記第1の昇華性物質を少なくとも含む固化膜を形成する固化膜形成工程と、
前記固化膜に含まれる前記第1の昇華性物質を、前記除去ユニットによって除去する除去工程とを実行する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記蒸発ユニットによる前記第2の昇華性物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を実行する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低い、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記固化膜形成工程によって形成される前記固化膜が、前記第2の昇華性物質を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2の昇華性物質が、室温以上の凝固点を有している、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の昇華性物質および前記第2の昇華性物質が、互いに可溶性を有している、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記混合乾燥補助物質が、前記第1の昇華性物質を、前記第2の昇華性物質より少ない割合で含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記混合乾燥補助物質が、前記第1の昇華性物質および前記第2の昇華性物質のうち少なくとも一方に可溶な溶媒であって、前記第1の昇華性物質の蒸気圧および前記第2の昇華性物質の蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する溶媒をさらに含み、
前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記蒸発ユニットによる前記溶媒および前記第2の昇華性物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を実行する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板保持ユニットによって保持されている基板を、当該基板の中央部を通る回転軸線回りに回転させるための回転ユニットをさらに含み、
前記制御装置が、前記固化膜形成工程に並行しておよび/または前記固化膜形成工程に先立って、前記回転ユニットによって前記基板を回転させて前記基板の表面から前記混合乾燥補助物質の一部を遠心力によって排除して、前記基板の表面に形成されている前記混合乾燥補助物質の液膜の膜厚を減少させる膜厚減少工程をさらに実行する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面を冷却するための冷却ユニットをさらに含み、
前記制御装置が、前記除去工程に並行して、前記基板の表面を冷却する冷却工程をさらに実行する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面に対し処理液を供給するための処理液供給ユニットをさらに含み、
前記制御装置が、前記混合乾燥補助物質供給工程に先立って、前記処理液供給ユニットによって前記基板の表面に処理液を供給する工程をさらに実行し、
前記制御装置が、前記混合乾燥補助物質供給工程において、処理液が付着している前記基板の表面に前記混合乾燥補助物質を供給する工程を実行する、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記蒸発ユニットが、前記基板保持ユニットによって保持されている基板を加熱するための加熱ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板に気体を吹き付けるための気体吹き付けユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周囲の空間を減圧する減圧ユニットとのうちの少なくとも一つを含み、
前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記加熱ユニットによって前記混合乾燥補助物質を加熱する工程と、前記気体吹き付けユニットによって前記混合乾燥補助物質に気体を吹き付ける工程と、前記減圧ユニットによって前記混合乾燥補助物質の周囲の空間を減圧する減圧工程とのうちの少なくとも一つを実行する、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御装置が、前記除去工程において、前記固化膜を固体から気体に昇華させる昇華工程と、前記固化膜の分解により前記固化膜を液体状態を経ずに気体に変化させる分解工程と、前記固化膜の反応により前記固化膜を液体状態を経ずに気体に変化させる反応工程とのうちの少なくとも一つを実行する、請求項1~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
第1のチャンバと、
前記第1のチャンバとは別の第2のチャンバと、
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で基板を搬送するための基板搬送ユニットとをさらに含み、
前記制御装置が、前記第1のチャンバの内部で前記固化膜形成工程を実行し、かつ前記第2のチャンバの内部で前記除去工程を実行する、請求項1~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
室温以上の凝固点を有する第1の昇華性物質と前記第1の昇華性物質よりも高い蒸気圧を有する第2の昇華性物質とが互いに混ざり合った混合乾燥補助物質であって、前記第1の昇華性物質の凝固点よりも低い凝固点を有する混合乾燥補助物質を、基板の表面であって凹凸状を有するパターンが形成された表面に供給する混合乾燥補助物質供給工程と、
前記基板の表面に存在する前記混合乾燥補助物質から前記第2の昇華性物質を蒸発させることにより、前記第1の昇華性物質を少なくとも含む固化膜を形成する固化膜形成工程と、
前記固化膜に含まれる前記第1の昇華性物質を除去する除去工程とを含む、基板処理方法。
【請求項16】
前記固化膜形成工程が、前記第2の昇華性物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を含む、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低い、請求項15または16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記固化膜形成工程によって形成される前記固化膜が、前記第2の昇華性物質を含む、請求項1517のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記第2の昇華性物質が、室温以上の凝固点を有している、請求項1518のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記第1の昇華性物質および前記第2の昇華性物質が、互いに可溶性を有している、請求項1519のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記混合乾燥補助物質が、前記第1の昇華性物質を、前記第2の昇華性物質より少ない割合で含有する、請求項1520のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記混合乾燥補助物質が、前記第1の昇華性物質および前記第2の昇華性物質のうち少なくとも一方に可溶な溶媒であって、前記第1の昇華性物質の蒸気圧および前記第2の昇華性物質の蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する溶媒をさらに含み、
前記固化膜形成工程が、前記溶媒および前記第2の昇華性物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を含む、請求項1521のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、湿式の基板処理が実施される。
たとえば、ドライエッチング工程等を経て、凹凸を有する微細なパターンを形成した基板の表面(パターン形成面)には、反応副生成物であるエッチング残渣、金属不純物や有機汚染物質等が付着していることがある。これらの物質を基板の表面から除去するために、薬液(エッチング液、洗浄液等)を用いた薬液処理が実施される。また、薬液処理の後には、薬液をリンス液によって除去するリンス処理が行われる。典型的なリンス液は、脱イオン水等である。その後、基板の表面からリンス液を除去することによって基板を乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0003】
近年、基板の表面に形成される凹凸状のパターンの微細化に伴い、パターンの凸部のアスペクト比(凸部の高さと幅の比)が大きくなる傾向がある。そのため、乾燥処理の際に、パターンの凸部間の凹部に入り込んだリンス液の液面(リンス液と、その上の気体との界面)に作用する表面張力によって、隣り合う凸部同士が引き寄せられて倒壊する場合がある。
【0004】
下記特許文献1には、チャンバの内部において基板の表面に存在するリンス液を、昇華性物質としてのターシャリーブタノールの液体に置換した後、ターシャリーブタノールの膜状の凝固体を形成し、その後、凝固体に含まれるターシャリーブタノールを固相から液相を経ずに気相に変化させることにより、基板の表面を乾燥させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-142069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ターシャリーブタノールの凝固点は、一般的な基板処理に用いられる室温(22℃~25℃の範囲内で、たとえば約23℃)より、やや高い(約25.7℃)。そのため、ターシャリーブタノールのような室温以上の凝固点を有する昇華性物質を用いる場合、配管内での凝固を防止するために、配管内の昇華性物質に熱を与える必要がある。具体的には、温度調節機構を配管に設けることが考えられる。この場合、昇華性物質が流通する配管の全域に、温度調節機構を設けることが望ましい。そのため、コストが大きく増大するおそれがある。また、装置トラブルによる温度調節機構の停止等により、昇華性物質が配管内で凝固すると、復旧のために多大の時間を要してしまう。すなわち、ターシャリーブタノールのような室温以上の凝固点を有する昇華性物質をそのまま基板乾燥に用いる場合には、配管内での昇華性物質の凝固の懸念が残る。
【0007】
そのような懸念を取り除くべく、室温より低い凝固点を有する昇華性物質を基板乾燥に用いることが考えられる。しかしながら、常温よりも低い凝固点を有する昇華性物質は、一般的に非常に高価である。そのため、このような昇華性物質を基板乾燥に用いると、コストが大きく増大するおそれがある。常温よりも低い凝固点を有する昇華性物質は、室温において自然に凝固することはない。そのため、チャンバの内部において、昇華性物質を凝固させるために冷却装置等を用いる必要がある。この場合も、コストが大きく増大するおそれがある。
【0008】
また、低い凝固点を有する昇華性物質を凝固させるには、冷媒の温度も低くする必要がある。しかしながら、冷媒用配管の設置状況によっては、装置内に結露が発生し、故障の原因となり得るため、断熱材設置などの余剰のコストが発生するおそれもある。
すなわち、乾燥補助物質(昇華性物質)の意図しない凝固を、大きなコストアップなく抑制または防止しながら、基板の表面を良好に処理することが求められている。
【0009】
そして、基板の表面に供給された乾燥補助物質を、大きなコストアップなく良好に固化させることも求められている。
【0010】
そこで、この発明の目的の一つは、乾燥補助物質の意図しない凝固を大きなコストアップなく回避しながら、基板の表面を良好に処理することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板の表面に供給された乾燥補助物質を、大きなコストアップなく良好に固化することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1の局面は、基板を保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面に、室温以上の凝固点を有する第1の乾燥補助物質と、前記第1の乾燥補助物質よりも高い蒸気圧を有する第2の乾燥補助物質とが互いに混ざり合った混合乾燥補助物質であって、前記第1の乾燥補助物質の凝固点よりも低い凝固点を有する混合乾燥補助物質を供給するための混合乾燥補助物質供給ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面から前記第2の乾燥補助物質を蒸発させるための蒸発ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面から前記第1の乾燥補助物質を除去するための除去ユニットと、前記混合乾燥補助物質供給ユニット、前記蒸発ユニットおよび前記除去ユニットを制御する制御装置とを含み、前記制御装置が、前記基板の表面に、前記混合乾燥補助物質供給ユニットによって前記混合乾燥補助物質を供給する混合乾燥補助物質供給工程と、前記基板の表面に存在する前記混合乾燥補助物質から前記第2の乾燥補助物質を前記蒸発ユニットによって蒸発させることにより、前記第1の乾燥補助物質を少なくとも含む固化膜を形成する固化膜形成工程と、前記固化膜に含まれる前記第1の乾燥補助物質を、前記除去ユニットによって除去する除去工程とを実行する、基板処理装置を提供する。
【0012】
この明細書において、「室温」とは、日本国内外問わず、基板処理装置が設置される空調環境内における温度をいう。一般的には、22℃~25℃の範囲内で、たとえば約23℃である。
この構成によれば、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質とが混ざり合った混合乾燥補助物質が、基板の表面に供給される。第1の乾燥補助物質は、室温以上の凝固点を有しているため、室温の温度条件下においてその一部または全体が固体状をなすことがある。第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質との混合による凝固点降下により、混合乾燥補助物質の凝固点が、第1の乾燥補助物質の凝固点よりも低くなっている。すなわち、混合乾燥補助物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、混合乾燥補助物質の凝固点は低い。したがって、混合乾燥補助物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。これにより、乾燥補助物質の意図しない凝固を大きなコストアップなく回避しながら、基板の表面を良好に処理することが可能である。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記第1の乾燥補助物質が、昇華性を有する第1の昇華性物質を含み、前記第2の乾燥補助物質が、昇華性を有する第2の昇華性物質を含む。
この構成によれば、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが混ざり合った混合昇華性物質が、基板の表面に供給される。第1の昇華性物質は、室温以上の凝固点を有しているため、室温の温度条件下においてその一部または全体が固体状をなすことがある。第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合による凝固点降下により、混合昇華性物質の凝固点が、第1の昇華性物質の凝固点よりも低くなっている。すなわち、混合昇華性物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、混合昇華性物質の凝固点は低い。したがって、混合昇華性物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。これにより、乾燥補助物質の意図しない凝固を、大きなコストアップなく回避しながら、基板の表面を良好に処理することが可能である。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記蒸発ユニットによる前記第2の乾燥補助物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を実行する。
この構成によれば、蒸発ユニットによって、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質から第2の昇華性物質が優先的に蒸発させられる。混合乾燥補助物質からの第2の昇華性物質の蒸発に伴い、混合乾燥補助物質における第1の昇華性物質の含有割合が上昇する。これに伴って、混合乾燥補助物質の凝固点が上昇し、この凝固点が室温に達すると、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質の固化が開始される。これにより、混合乾燥補助物質の固化膜が形成される。混合乾燥補助物質の凝固点の上昇を利用して混合乾燥補助物質を固化(凝固)させるから、混合乾燥補助物質の固化のために混合乾燥補助物質を冷却させることは必ずしも必要ではない。したがって、基板の表面に供給された乾燥補助物質を、大きなコストアップなく良好に固化することが可能である。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低い。
この構成によれば、混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低いので、室温において、混合乾燥補助物質が液状を維持する。そのため、乾燥補助物質の意図しない凝固を確実に回避できる。
この発明の一実施形態では、前記固化膜形成工程によって形成される前記固化膜が、前記第2の乾燥補助物質を含む。
【0016】
この構成によれば、固化膜形成工程によって、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質とを含む固化膜が形成される。固化膜に含まれる第1の乾燥補助物質の含有割合が、固化膜に含まれる第2の乾燥補助物質の含有割合より多い。
この発明の一実施形態では、前記第2の乾燥補助物質が、室温以上の凝固点を有している。
【0017】
この構成によれば、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質との混合による凝固点降下により、混合乾燥補助物質の凝固点は第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質の凝固点に比べて低い。したがって、混合乾燥補助物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記第1の乾燥補助物質および前記第2の乾燥補助物質が、互いに可溶性を有している。
この構成によれば、混合昇華性物質において、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが互いに溶け合った態様にできる。そのため、混合昇華性物質において、1の昇華性物質と第2の昇華性物質とを偏りなく均一に混ざり合わせることができる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記混合乾燥補助物質が、前記第1の乾燥補助物質を、前記第2の乾燥補助物質より少ない割合で含有する。
この構成によれば、混合乾燥補助物質において、固化膜形成工程の開始前の固化膜に主に含まれるようになる第1の乾燥補助物質の含有割合が、蒸発工程において蒸発除去可能な第2の乾燥補助物質の含有割合より少ない。そのため、固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くできる。
【0020】
固化前の液膜の膜厚が厚ければ厚いほど、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力(歪み)が大きくなる。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力を、できるだけ小さくできる。
また、固化膜の膜厚が薄ければ薄いほど、除去工程後において基板の表面に残存する残渣が少ない。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜の膜厚を薄く調整できる。これにより、除去工程後における残渣の発生を抑制できる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記混合乾燥補助物質が、前記第1の乾燥補助物質および前記第2の乾燥補助物質のうち少なくとも一方に可溶な溶媒であって、前記第1の乾燥補助物質の蒸気圧および前記第2の乾燥補助物質の蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する溶媒をさらに含む。そして、前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記蒸発ユニットによる前記溶媒および前記第2の乾燥補助物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を実行してもよい。
【0022】
この構成によれば、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質の少なくとも一方が溶媒に溶け込む。溶媒が有する表面張力が、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質が有する表面張力よりも低い場合には、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質の表面張力を低くできる。それにより、基板の表面に形成される混合乾燥補助物質の液膜の膜厚を低く抑えることができる。これにより、固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることが可能である。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚をさらに薄くすることで、固化膜の膜厚をさらに薄く調整できる。これにより、除去工程後における残渣の発生を抑制できる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットによって保持されている基板を、当該基板の中央部を通る回転軸線回りに回転させるための回転ユニットをさらに含む。そして、前記制御装置が、前記固化膜形成工程に並行しておよび/または前記固化膜形成工程に先立って、前記回転ユニットによって前記基板を回転させて前記基板の表面から前記混合乾燥補助物質の一部を遠心力によって排除して、前記基板の表面に形成されている前記混合乾燥補助物質の液膜の膜厚を減少させる膜厚減少工程をさらに実行する。
【0024】
この構成によれば、固化膜形成工程に並行しておよび/または固化膜形成工程に先立って、膜厚減少工程が実行される。そのため、固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くできる。
固化前の液膜の膜厚が厚ければ厚いほど、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力(歪み)が大きくなる。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力を、できるだけ小さくできる。
【0025】
また、固化膜の膜厚が薄ければ薄いほど、除去工程後において基板の表面に残存する残渣が少ない。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜の膜厚を薄く調整できる。これにより、除去工程後における残渣の発生を抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面を冷却するための冷却ユニットをさらに含む。そして、前記制御装置が、前記除去工程に並行して、前記基板の表面を冷却する冷却工程をさらに実行してもよい。
【0026】
この構成によれば、基板の表面の冷却により、基板の表面に形成される固化膜が凝固点(融点)以下に維持される。そのため、固化膜に含まれる乾燥補助物質を、当該乾燥補助物質の融解を抑制または防止しながら昇華させることができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットに保持されている基板の表面に対し処理液を供給するための処理液供給ユニットをさらに含む。そして、前記制御装置が、前記混合乾燥補助物質供給工程に先立って、前記処理液供給ユニットによって前記基板の表面に処理液を供給する工程をさらに実行する。さらに、前記制御装置が、前記混合乾燥補助物質供給工程において、処理液が付着している前記基板の表面に前記混合乾燥補助物質を供給する工程を実行する。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記蒸発ユニットが、前記基板保持ユニットによって保持されている基板を加熱するための加熱ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板に気体を吹き付けるための気体吹き付けユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周囲の空間を減圧する減圧ユニットとのうちの少なくとも一つを含む。そして、前記制御装置が、前記固化膜形成工程において、前記加熱ユニットによって前記混合乾燥補助物質を加熱する工程と、前記第1の気体吹き付けユニットによって前記混合乾燥補助物質に気体を吹き付ける工程と、前記固化膜の周囲の空間を減圧する減圧工程とのうちの少なくとも一つを実行する。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記制御装置が、前記除去工程において、前記固化膜を固体から気体に昇華させる昇華工程と、前記固化膜の分解により前記固化膜を液体状態を経ずに気体に変化させる分解工程と、前記固化膜の反応により前記固化膜を液体状態を経ずに気体に変化させる反応工程とのうちの少なくとも一つを実行する。
前記昇華工程は、前記固化膜に気体を吹き付ける気体吹き付け工程と、前記固化膜を加熱する加熱工程と、前記固化膜の周囲の空間を減圧する減圧工程と、前記凝固体に光を照射する光照射工程と、前記凝固体に超音波振動を与える超音波振動付与工程とのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0029】
この発明の一実施形態では、第1のチャンバと、前記第1のチャンバとは別の第2のチャンバと、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で基板を搬送するための基板搬送ユニットとをさらに含む。そして、前記制御装置が、前記第1のチャンバの内部で前記固化膜形成工程を実行し、かつ前記第2のチャンバの内部で前記除去工程を実行する。
この構成によれば、第1のチャンバの中に基板が収容されている状態で、基板の表面上の混合乾燥補助物質に含まれる第2の乾燥補助物質を蒸発によって除去する。その後、基板を第1のチャンバから第2のチャンバに搬送する。そして、第2チのャンバの中に基板が収容されている状態で、固化膜を基板の表面から除去させる。このように、固化膜の形成と、固化膜の除去とを、別々のチャンバで行うので、第1チャンバおよび第2チャンバ内の構造を簡素化でき、個々のチャンバを小型化できる。
【0030】
前記基板保持ユニットにより保持される前記基板が、凹凸状を有するパターンが形成された表面を有していてもよい。
この発明の第2の局面は、室温以上の凝固点を有する第1の乾燥補助物質と前記第1の乾燥補助物質よりも高い蒸気圧を有する第2の乾燥補助物質とが互いに混ざり合った混合乾燥補助物質を、基板の表面に供給する混合乾燥補助物質供給工程と、前記基板の表面に存在する前記混合乾燥補助物質において前記混合乾燥補助物質に含まれる少なくとも前記第1の乾燥補助物質を前記固化膜形成工程によって析出させることにより、固化膜を形成する固化膜形成工程と、前記固化膜を除去する除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0031】
この方法によれば、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質とが混ざり合った混合乾燥補助物質が、基板の表面に供給される。第1の乾燥補助物質は、室温以上の凝固点を有しているため、室温の温度条件下においてその一部または全体が固体状をなすことがある。第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質との混合による凝固点降下により、混合乾燥補助物質の凝固点が、第1の乾燥補助物質の凝固点よりも低くなっている。すなわち、混合乾燥補助物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、混合乾燥補助物質の凝固点は低い。したがって、混合乾燥補助物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。これにより、乾燥補助物質の意図しない凝固を大きなコストアップなく回避しながら、基板の表面を良好に処理することが可能である。
【0032】
この発明の他の実施形態では、前記第1の乾燥補助物質が、昇華性を有する第1の昇華性物質を含み、前記第2の乾燥補助物質が、昇華性を有する第2の昇華性物質を含む。
この方法によれば、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが混ざり合った混合昇華性物質が、基板の表面に供給される。第1の昇華性物質は、室温以上の凝固点を有しているため、室温の温度条件下においてその一部または全体が固体状をなすことがある。第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合による凝固点降下により、混合昇華性物質の凝固点が、第1の昇華性物質の凝固点よりも低くなっている。すなわち、混合昇華性物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、混合昇華性物質の凝固点は低い。したがって、混合昇華性物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。これにより、乾燥補助物質の意図しない凝固を、大きなコストアップなく回避しながら、基板の表面を良好に処理することが可能である。
【0033】
この発明の他の実施形態では、前記固化膜形成工程が、前記第2の乾燥補助物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を含む。
この方法によれば、蒸発ユニットによって、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質から第2の昇華性物質が優先的に蒸発させられる。混合乾燥補助物質からの第2の昇華性物質の蒸発に伴い、混合乾燥補助物質における第1の昇華性物質の含有割合が上昇する。これに伴って、混合乾燥補助物質の凝固点が上昇し、この凝固点が室温に達すると、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質の固化が開始される。これにより、混合乾燥補助物質の固化膜が形成される。混合乾燥補助物質の凝固点の上昇を利用して混合乾燥補助物質を固化(凝固)させるから、混合乾燥補助物質の固化のために混合乾燥補助物質を冷却させることは必ずしも必要ではない。したがって、基板の表面に供給された乾燥補助物質を、大きなコストアップなく良好に固化することが可能である。
【0034】
この発明の他の実施形態では、前記混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低い。
この方法によれば、混合乾燥補助物質の凝固点が室温よりも低いので、室温において、混合乾燥補助物質が液状を維持する。そのため、乾燥補助物質の意図しない凝固を確実に回避できる。
この発明の他の実施形態では、前記固化膜形成工程によって形成される前記固化膜が、前記第2の乾燥補助物質を含む。
【0035】
この方法によれば、固化膜形成工程によって、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質とを含む固化膜が形成される。固化膜に含まれる第1の乾燥補助物質の含有割合が、固化膜に含まれる第2の乾燥補助物質の含有割合より多い。
この発明の他の実施形態では、前記第2の乾燥補助物質が、室温以上の凝固点を有している。
【0036】
この構成によれば、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質の凝固点がたとえ室温以上である場合であっても、第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質との混合による凝固点降下により、混合乾燥補助物質の凝固点は第1の乾燥補助物質と第2の乾燥補助物質の凝固点に比べて低い。したがって、混合乾燥補助物質を液状に維持しておくための熱エネルギーの低減を図ることができる。
【0037】
この発明の他の実施形態では、前記第1の乾燥補助物質および前記第2の乾燥補助物質が、互いに可溶性を有している。
この方法によれば、混合昇華性物質において、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが互いに溶け合った態様にできる。そのため、混合昇華性物質において、1の昇華性物質と第2の昇華性物質とを偏りなく均一に混ざり合わせることができる。
【0038】
この発明の他の実施形態では、前記混合乾燥補助物質が、前記第1の乾燥補助物質を、前記第2の乾燥補助物質より少ない割合で含有する。
この方法によれば、混合乾燥補助物質において、固化膜形成工程の開始前の固化膜に主に含まれるようになる第1の乾燥補助物質の含有割合が、蒸発工程において蒸発除去可能な第2の乾燥補助物質の含有割合より少ない。そのため、固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くできる。
【0039】
固化前の液膜の膜厚が厚ければ厚いほど、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力(歪み)が大きくなる。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜形成工程によって形成される固化膜に残留する内部応力を、できるだけ小さくできる。
また、固化膜の膜厚が薄ければ薄いほど、除去工程後において基板の表面に残存する残渣が少ない。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることで、固化膜の膜厚を薄く調整できる。これにより、除去工程後における残渣の発生を抑制できる。
【0040】
この発明の他の実施形態では、前記混合乾燥補助物質が、前記第1の乾燥補助物質および前記第2の乾燥補助物質のうち少なくとも一方に可溶な溶媒であって、前記第1の乾燥補助物質の蒸気圧および前記第2の乾燥補助物質の蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する溶媒をさらに含む。そして、前記固化膜形成工程が、前記溶媒および前記第2の乾燥補助物質の蒸発に伴う、前記混合乾燥補助物質の凝固点の上昇によって、前記固化膜を形成する工程を含む。
【0041】
この方法によれば、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質の少なくとも一方が溶媒に溶け込む。溶媒が有する表面張力が、第1の乾燥補助物質および第2の乾燥補助物質が有する表面張力よりも低い場合には、基板の表面に存在する混合乾燥補助物質の表面張力を低くできる。それにより、基板の表面に形成される混合乾燥補助物質の液膜の膜厚を低く抑えることができる。これにより、固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚を薄くすることが可能である。固化膜形成工程の開始前における液膜の膜厚をさらに薄くすることで、固化膜の膜厚をさらに薄く調整できる。これにより、除去工程後における残渣の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3図3は、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とを含む混合昇華剤の状態平衡図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る基板処理装置による処理対象の基板の表面を拡大して示す断面図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る処理ユニットにおいて実行される第1の基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
図7A-7C】図7A~7Cは、前記第1の基板処理例が実行されているときの基板の周辺の状態を示す模式図である。
図7D-7F】図7D~7Fは、図7Cの次の工程を示す模式図である。
図8図8は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図9図9は、第1の昇華性物質、第2の昇華性物質および混合用溶媒を含む混合昇華剤の状態平衡図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る処理ユニットにおいて実行される第2の基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
図12A-12C】図12A~12Cは、前記第2の基板処理例が実行されているときの基板の周辺の状態を示す模式図である。
図12D-12F】図12D~12Fは、図12Cの次の工程を示す模式図である。
図12G図12Gは、図12Fの次の工程を示す模式図である。
図13A図13Aは、凝固膜形成工程において形成される凝固膜における結晶の状態を示す模式的な平面図である。
図13B図13Bは、前記処理ユニットにおいて実行される第3の基板処理例を説明するための流れ図である。
図14図14は、第1の変形例を示す模式的な図である。
図15図15は、第2の変形例を示す模式的な図である。
図16図16は、第3の変形例を示す模式的な図である。
図17図17は、第4の変形例を示す模式的な図である。
図18図18は、第5の変形例を示す模式的な図である。
図19図19は、チャンバから、溶媒除去ユニットへの基板の搬送について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、薬液およびリンス液を含む処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容する基板収容器が載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRおよび基板搬送ロボットCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。インデクサロボットIRは、基板収容器と基板搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。基板搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。基板処理装置1は、常圧かつ室温(たとえば約23℃)環境下で設置されている。
【0044】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面(基板Wの表面Wa(図4参照))に薬液(処理液)を供給する薬液供給ユニット(処理液供給ユニット)6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面にリンス液(処理液)を供給するリンス液供給ユニット(処理液供給ユニット)7と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に置換用溶媒(処理液)を供給する置換用溶媒供給ユニット(処理液供給ユニット)8と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に混合昇華剤(混合昇華性物質、混合乾燥補助物質)を供給する混合昇華剤供給ユニット(混合昇華性物質供給ユニット、混合乾燥補助物質供給ユニット)9と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に対向し、基板Wの上方の空間をその周囲の雰囲気から遮断する遮断部材10と、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面(基板Wの裏面Wb(図7A等参照))の中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル11と、スピンチャック5の側方を取り囲む筒状の処理カップ12とを含む。
【0045】
チャンバ4は、スピンチャック5やノズルを収容する箱状の隔壁13と、隔壁13の上部から隔壁13内に清浄空気(フィルタによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)14と、隔壁13の下部からチャンバ4内の気体を排出する排気ダクト15と、排気ダクト15の他端に接続された排気装置99とを含む。FFU14は、隔壁13の上方に配置されており、隔壁13の天井に取り付けられている。FFU14は、隔壁13の天井からチャンバ4内に下向きに清浄空気を送る。排気装置99は、処理カップ12の底部に接続された排気ダクト15を介して、処理カップ12の内部を吸引する。FFU14および排気装置99により、チャンバ4内にダウンフロー(下降流)が形成される。基板Wの処理は、チャンバ4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0046】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ(回転ユニット、蒸発ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)16と、このスピンモータ16の駆動軸と一体化されたスピン軸17と、スピン軸17の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース18とを含む。
【0047】
スピンベース18は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面18aを含む。上面18aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材19が配置されている。複数個の挟持部材19は、上面18aの周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。
遮断部材10は、遮断板(対向部材)20と、遮断板20の中央部を上下方向に貫通する上面ノズル21とを含む。遮断板20には、電動モータ等を含む構成の遮断板回転ユニット26が結合されている。遮断板回転ユニット26は、遮断板20を、回転軸線A1と同軸の回転軸線(図示しない)まわりに回転させる。
【0048】
遮断板20は、その下面に、基板Wの上面全域に対向する円形の基板対向面(対向面)20aを有している。基板対向面20aの中央部には、遮断板20を上下に貫通する円筒状の貫通穴20bが形成されている。貫通穴20bに、上面ノズル21が挿通している。基板対向面20aの外周縁には、全域に亘って下方に向けて突出する筒状部が形成されていてもよい。
【0049】
上面ノズル21は、遮断板20に一体昇降移動可能に取り付けられている。上面ノズル21は、その下端部に、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面中央部に対向する吐出口21aを形成している。
遮断部材10には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の遮断部材昇降ユニット22(図4参照)が結合されている。遮断部材昇降ユニット22は、遮断板20および上面ノズル21を鉛直方向に昇降する。
【0050】
遮断部材昇降ユニット22は、遮断板20を、基板対向面20aがスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に近接する遮断位置(図7C~7Eに示す位置)と、遮断位置よりも大きく上方に退避した退避位置(図2に示す位置)の間で昇降させる。遮断部材昇降ユニット22は、遮断位置および退避位置の双方において遮断板20を保持可能である。遮断位置は、基板対向面20aが基板Wの表面Waとの間に、遮断空間30(図7C~7E等参照)を形成するような位置である。遮断空間30は、その周囲の空間から完全に隔離されているわけではないが、当該周囲の空間から遮断空間30への気体の流入はない。すなわち、遮断空間30は、実質的にその周囲の空間と遮断されている。
【0051】
上面ノズル21には、気体配管24が接続されている。気体配管24には、気体配管24を開閉する気体バルブ25が介装されている。気体配管24に付与される気体は、除湿された気体、とくに不活性ガスである。不活性ガスは、たとえば、窒素ガスやアルゴンガスを含む。気体バルブ25が開かれることにより、上面ノズル21に不活性ガスが供給される。これにより、吐出口21aから不活性ガスが下向きに吐出され、吐出された不活性ガスが基板Wの表面Waに吹き付けられる。なお、気体は、空気等の活性ガスであってもよい。この実施形態では、上面ノズル21、気体配管24および気体バルブ25によって、気体吹き付けユニット(蒸発ユニット、気体供給ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)が構成されている。
【0052】
薬液供給ユニット6は、薬液ノズル31と、薬液ノズル31が先端部に取り付けられたノズルアーム32と、ノズルアーム32を移動させることにより、薬液ノズル31を移動させるノズル移動ユニット33(図4参照)とを含む。ノズル移動ユニット33は、揺動軸線まわりにノズルアーム32を水平移動させることにより、薬液ノズル31を水平に移動させる。ノズル移動ユニット33は、モータ等を含む構成である。ノズル移動ユニット33は、薬液ノズル31から吐出される薬液が基板Wの表面Waに着液する処理位置と、平面視でスピンチャック5の周囲に設定された退避位置との間で、薬液ノズル31を水平に移動させる。換言すると、処理位置は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの表面Waに供給される位置である。さらに、ノズル移動ユニット33は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの表面Waの中央部に着液する中央位置と、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの表面Waの周縁部に着液する周縁位置との間で、薬液ノズル31を水平に移動させる。中央位置および周縁位置は、いずれも処理位置である。
【0053】
薬液供給ユニット6は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管34と、薬液配管34を開閉する薬液バルブ35とを含む。薬液バルブ35が開かれると、薬液供給源からの薬液が、薬液配管34から薬液ノズル31に供給される。これにより、薬液ノズル31から薬液が吐出される。
薬液配管34に供給される薬液は、洗浄液およびエッチング液を含む。さらに具体的には、薬液は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)および界面活性剤、腐食防止剤の少なくとも1つを含む液である。
【0054】
リンス液供給ユニット7は、リンス液ノズル36を含む。リンス液ノズル36は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。リンス液ノズル36には、リンス液供給源からのリンス液が供給されるリンス液配管37が接続されている。リンス液配管37の途中部には、リンス液ノズル36からのリンス液の供給/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ38が介装されている。リンス液バルブ38が開かれると、リンス液配管37からリンス液ノズル36に供給されたリンス液が、リンス液ノズル36の下端に設定された吐出口から吐出される。また、リンス液バルブ38が閉じられると、リンス液配管37からリンス液ノズル36のリンス液の供給が停止される。リンス液は、水である。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0055】
また、リンス液供給ユニット7は、リンス液ノズル36を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を基板Wの面内で走査させるリンス液ノズル移動装置を備えていてもよい。
さらに、リンス液供給ユニット7は、上面ノズル21を、リンス液ノズルとして備えていてもよい。すなわち、リンス液配管37からのリンス液が上面ノズル21に供給されていてもよい。
【0056】
図2に示すように、置換用溶媒供給ユニット8は、置換用溶媒ノズル41と、置換用溶媒ノズル41が先端部に取り付けられたノズルアーム42と、ノズルアーム42を移動させることにより、置換用溶媒ノズル41を移動させるノズル移動ユニット43(図4参照)とを含む。ノズル移動ユニット43は、揺動軸線まわりにノズルアーム42を水平移動させることにより、置換用溶媒ノズル41を水平に移動させる。ノズル移動ユニット43は、モータ等を含む構成である。ノズル移動ユニット43は、置換用溶媒ノズル41から吐出される置換用溶媒が基板Wの表面Waに着液する処理位置と、平面視でスピンチャック5の周囲に設定された退避位置との間で、置換用溶媒ノズル41を水平に移動させる。換言すると、処理位置は、置換用溶媒ノズル41から吐出された置換用溶媒が基板Wの表面Waに供給される位置である。
【0057】
図2に示すように、置換用溶媒供給ユニット8は、置換用溶媒ノズル41に置換用溶媒を案内する置換用溶媒配管44と、置換用溶媒配管44を開閉する置換用溶媒バルブ45とを含む。置換用溶媒バルブ45が開かれると、置換用溶媒供給源からの置換用溶媒が、置換用溶媒配管44から置換用溶媒ノズル41に供給される。これにより、置換用溶媒ノズル41から置換用溶媒が吐出される。
【0058】
置換用溶媒配管44に供給される置換用溶媒は、混合昇華剤供給ユニット9によって供給される混合昇華剤に対する可溶性(混和性)を有している。すなわち、置換用溶媒は、混合昇華剤に含まれる、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質に対する可溶性(混和性)を有している。置換用溶媒は、基板Wの表面Waへの混合昇華剤の供給に先立って表面Waに供給される前供給液として用いられる。
【0059】
後述する基板処理例では、基板Wの表面Waへのリンス液の供給後、基板Wの表面Waへの混合昇華剤の供給に先立って、表面Waに置換用溶媒が供給される。そのため、置換用溶媒が、さらにリンス液(水)に対しても、可溶性(混和性)を有していることが望ましい。
置換用溶媒配管44に供給される置換用溶媒の具体例は、たとえばIPA(isopropyl alcohol)に代表される有機溶媒である。このような有機溶媒として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノールを例示できる。また、有機溶媒としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、他の成分と混合した液体であってもよい。また、それ以外の溶媒を用いることもできる。
【0060】
図2に示すように、混合昇華剤供給ユニット9は、混合昇華剤ノズル46と、混合昇華剤ノズル46が先端部に取り付けられたノズルアーム47と、ノズルアーム47を移動させることにより、混合昇華剤ノズル46を移動させるノズル移動ユニット48(図4参照)とを含む。ノズル移動ユニット48は、揺動軸線まわりにノズルアーム47を水平移動させることにより、混合昇華剤ノズル46を水平に移動させる。ノズル移動ユニット48は、モータ等を含む構成である。ノズル移動ユニット48は、混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤が基板Wの表面Waに着液する処理位置と、平面視でスピンチャック5の周囲に設定された退避位置との間で、混合昇華剤ノズル46を水平に移動させる。換言すると、処理位置は、混合昇華剤ノズル46から吐出された混合昇華剤が基板Wの表面Waに供給される位置である。さらに、ノズル移動ユニット48は、混合昇華剤ノズル46から吐出された混合昇華剤が基板Wの上面中央部に着液する中央位置と、混合昇華剤ノズル46から吐出された混合昇華剤が基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置との間で、混合昇華剤ノズル46を水平に移動させる。中央位置および周縁位置は、いずれも処理位置である。
【0061】
図2に示すように、混合昇華剤供給ユニット9は、混合昇華剤ノズル46に混合昇華剤を案内する混合昇華剤配管49と、混合昇華剤配管49を開閉する混合昇華剤バルブ50とを含む。混合昇華剤供給源において、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質を事前に混合することにより、混合昇華剤が調整されている。混合昇華剤バルブ50が開かれると、混合昇華剤供給源からの混合昇華剤が、混合昇華剤配管49から混合昇華剤ノズル46に供給される。これにより、混合昇華剤ノズル46から混合昇華剤が吐出される。
【0062】
混合昇華剤配管49に供給される混合昇華剤(混合乾燥補助物質)は、昇華性を有する第1の昇華性物質(第1の乾燥補助物質)と、昇華性を有する第2の昇華性物質(第2の乾燥補助物質)とが互いに混ざり合った昇華性物質である。第1の昇華性物質と、第2の昇華性物質とは互いに可溶性を有している。混合昇華剤において、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが互いに溶け合った態様になっている。そのため、混合昇華剤において、1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが偏りなく均一に混ざり合っている。
【0063】
第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の組み合わせの例として、シクロヘキサノールおよびターシャリーブタノールを例示できる。この場合、第1の昇華性物質(シクロヘキサノール)の凝固点TF1は、大気圧下において、たとえば約24℃である。また、第2の昇華性物質(ターシャリーブタノール)の凝固点TF2は、大気圧下において、25.7℃である。室温(RT)は外気の温度にも影響されるため必ずしも、一定でないが概ね23℃に設定されている。この場合、大気圧下において、第1の昇華性物質(シクロヘキサノール)および第2の昇華性物質の凝固点は、僅かながら、ともに室温(RT)よりも高い(すなわち、室温以上である)。そのため、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、室温(RT)の温度条件下において、その一部および全体が固体状をなす。
【0064】
この第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の組み合わせの例では、第2の昇華性物質の凝固点TF2が第1の昇華性物質の凝固点TF1よりも高い場合を例に挙げた。しかしながら、第2の昇華性物質の凝固点TF2が第1の昇華性物質の凝固点TF1以下であってもよい。
図3は、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とを含む混合昇華剤の状態平衡図である。第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合による凝固点降下により、混合昇華剤の凝固点TFMが、第1の昇華性物質の凝固点TF1および第2の昇華性物質の凝固点TF2よりも下がる。混合昇華剤の凝固点TFMが、混合昇華剤に含まれる第1の昇華性物質の含有割合に依存する。図3には、混合昇華剤の凝固点曲線FPCが記載されている。混合昇華剤に含まれる第1の昇華性物質の含有割合が、好適範囲PR内にある場合のみ、混合昇華剤の凝固点TFMが室温(RT)未満の温度に下がり、室温環境下で、混合昇華剤が液体状をなす。
【0065】
この実施形態では、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合比(含有割合比)は、重量比でたとえば1:5である。図3に示すように、この条件下において、混合昇華剤の凝固点TFMが室温未満の温度に下がる。
チャンバ4外には、基板処理装置と一体的にまたは基板処理装置と分離して、薬液供給装置が設置されている。この薬液供給装置も室温・常圧の環境下に設置されている。薬液供給装置には、混合昇華剤を貯留するための貯留タンクが設けられている。室温環境下で、混合昇華剤が液体状をなしている。そのため、昇華性物質を液状に維持しておくための加熱装置等が不要である。また、このような加熱装置を設ける場合であっても、混合昇華剤を常時加熱しておく必要はない。そのため、必要な熱量の削減を図ることができ、その結果コストダウンを図ることができる。
【0066】
図2に示すように、下面ノズル11は、スピンチャック5に保持された基板Wの下面の中央部に対向する単一の吐出口11aを有している。吐出口11aは、鉛直上方に向けて液を吐出する。吐出された液は、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面の中央部に対してほぼ垂直に入射する。下面ノズル11には、下面供給配管51が接続されている。下面供給配管51は、鉛直に配置された中空軸からなるスピン軸17の内部に挿通されている。
【0067】
図2に示すように、下面供給配管51には、冷却流体配管52と、加熱流体配管53とが、それぞれ接続されている。冷却流体配管52には、冷却流体配管52を開閉するための冷却流体バルブ56が介装されている。冷却流体は、冷却液であってもよいし、冷却気体であってもよい。冷却液が常温水であってもよい。冷却流体は、混合昇華剤の凝固点TFMよりも低い温度を有している。
【0068】
加熱流体配管53には、加熱流体配管53を開閉するための加熱流体バルブ57が介装されている。加熱流体は、温水等の加熱液であってもよいし、高温のN等の加熱気体であってもよい。加熱流体は、混合昇華剤の凝固点TFMよりも高い液温を有している。
加熱流体バルブ57が閉じられている状態で冷却流体バルブ56が開かれると、冷却流体供給源からの冷却流体が、冷却流体配管52および下面供給配管51を介して下面ノズル11に供給される。下面ノズル11に供給された冷却流体は、吐出口11aからほぼ鉛直上向きに吐出される。下面ノズル11から吐出された冷却流体液は、スピンチャック5に保持された基板Wの下面中央部に対してほぼ垂直に入射する。
【0069】
冷却流体バルブ56が閉じられている状態で加熱流体バルブ57が開かれると、加熱流体供給源からの加熱流体が、加熱流体配管53および下面供給配管51を介して下面ノズル11に供給される。下面ノズル11に供給された加熱流体は、吐出口11aからほぼ鉛直上向きに吐出される。下面ノズル11から吐出された加熱液は、スピンチャック5に保持された基板Wの下面中央部に対してほぼ垂直に入射する。この実施形態では、下面ノズル11、冷却流体配管52および冷却流体バルブ56によって冷却ユニットが構成されている。また、下面ノズル11、加熱流体配管53および加熱流体バルブ57によって加熱ユニット(蒸発ユニット)が構成されている。
【0070】
図2に示すように、処理カップ12は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ12は、スピンベース18を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で、処理液やリンス液、溶剤、混合昇華剤等の液体が基板Wに供給されると、基板Wに供給された液体が基板Wの周囲に振り切られる。これらの液体が基板Wに供給されるとき、処理カップ12の上端部12aは、スピンベース18よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された液体は、処理カップ12によって受け止められる。そして、処理カップ12に受け止められた液体は、図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0071】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0072】
また、制御装置3には、制御対象として、スピンモータ16、遮断部材昇降ユニット22、遮断板回転ユニット26、ノズル移動ユニット33,43,48等が接続されている。制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ16、遮断部材昇降ユニット22、遮断板回転ユニット26、ノズル移動ユニット33,43,48等の動作を制御する。
【0073】
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、気体バルブ25、薬液バルブ35、リンス液バルブ38、置換用溶媒バルブ45、混合昇華剤バルブ50、冷却流体バルブ56、加熱流体バルブ57等を開閉する。
以下では、パターン形成面である、表面Waにパターン100が形成された基板Wを処理する場合について説明する。
【0074】
図5は、基板処理装置1による処理対象の基板Wの表面Waを拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面Waにパターン100が形成されている。パターン100は、たとえば微細パターンである。パターン100は、図5に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体101が行列状に配置されていてもよい。この場合、構造体101の線幅W1はたとえば3nm~45nm程度に、パターン100の隙間W2はたとえば10nm~数μm程度に、それぞれ設けられている。パターン100の高さTは、たとえば、0.2μm~1.0μm程度である。また、パターン100は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する高さTの比)が、たとえば、5~500程度であってもよい(典型的には、5~50程度である)。
【0075】
また、パターン100は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターン100は、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターン100は、たとえば絶縁膜を含む。また、パターン100は、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターン100は、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターン100は、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえばTiN膜)であってもよい。
【0076】
また、パターン100は、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図6は、処理ユニット2による基板処理例(第1の基板処理例)を説明するための流れ図である。図7A~7Fは、この基板処理例が実行されているときの基板Wの周辺の状態を示す模式図である。
【0077】
処理ユニット2によって基板Wに第1の基板処理例が施されるときには、チャンバ4の内部に、未処理の基板Wが搬入される(図6のステップS1)。
制御装置3は、ノズル等が全てスピンチャック5の上方から退避しており、遮断部材10が退避位置に配置されている状態で、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(図1参照)のハンドHをチャンバ4の内部に進入させる。これにより、基板Wがその表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に保持される。
【0078】
スピンチャック5に基板Wが保持された後、制御装置3は、スピンモータ16を制御してスピンベース18の回転速度を、所定の液処理速度(約10~1500rpmの範囲内で、たとえば約500rpm)まで上昇させ、その液処理速度に維持させる。
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置3は、薬液工程(図6のステップS2)を実行開始する。具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット33を制御して、薬液ノズル31を、退避位置から処理位置に移動させる。また、制御装置3は、薬液バルブ35を開く。これにより、薬液配管34を通って薬液ノズル31に薬液が供給され、薬液ノズル31の吐出口から吐出された薬液が基板Wの表面Waに着液する。
【0079】
また、薬液工程(S2)において、制御装置3が、ノズル移動ユニット23を制御して、薬液ノズル31を、基板Wの表面Waの周縁部に対向する周縁位置と、基板Wの上面の中央部に対向する中央位置との間で移動するようにしてもよい。この場合、基板Wの上面における薬液の着液位置が、基板Wの表面Waの全域を走査させられる。これにより、基板Wの表面Waの全域を均一に処理できる。
【0080】
薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ35を閉じて、薬液ノズル31からの薬液の吐出を停止する。これにより、薬液工程(S2)が終了する。また、制御装置3は、薬液ノズル31を退避位置に戻す。
次いで、制御装置3は、基板W上の薬液をリンス液に置換して、基板Wの表面Waを洗い流すリンス工程(図6のステップS3)を実行する。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ38を開く。それにより、回転状態の表面Waの中央部に向けて、リンス液ノズル36からリンス液が吐出される。基板Wの表面Waに供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動して、基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出される。これにより、基板W上に付着している薬液がリンス液によって洗い流される。
【0081】
リンス液バルブ38が開かれてから予め定める期間が経過すると、制御装置3はリンス液バルブ38を閉じる。これにより、リンス液供給工程(S3)が終了する。
次いで、制御装置3は、置換工程(図6のステップS4)を実行する。置換工程(S4)は、基板W上のリンス液を、リンス液(水)および混合昇華剤の双方に親和性を有する置換用溶媒(この例では、IPA等の有機溶媒)に置換する工程である。
【0082】
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット43を制御して、置換用溶媒ノズル41を、スピンチャック5の側方の退避位置から、基板Wの表面Waの中央部に上方に移動させる。そして、制御装置3は、置換用溶媒バルブ45を開いて、基板Wの上面(表面Wa)の中央部に向けて置換用溶媒ノズル41から、液体の置換用溶媒を吐出する。基板Wの表面Waに供給された置換用溶媒は、基板Wの回転による遠心力を受けて表面Waの全域に広がる。これにより、基板Wの表面Waの全域において、当該表面Waに付着しているリンス液が、有機溶媒によって置換される。基板Wの表面Waを移動する有機溶媒は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出される。
【0083】
置換工程(S4)は、前記液処理速度で基板Wを回転させながら行われていてもよい。また、置換工程(S4)は、基板Wを、前記液処理速度よりも遅い液盛り速度で回転させながら、あるいは、基板Wを制止させながら行うようにしてもよい。
置換用溶媒の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、置換用溶媒バルブ45を閉じて、置換用溶媒ノズル41からの置換用溶媒の吐出を停止する。これにより、置換工程(S4)が終了する。また、制御装置3は、置換用溶媒ノズル41を退避位置に戻す。
【0084】
次いで、制御装置3は、混合昇華剤供給工程(混合乾燥補助物質供給工程。図6のステップS5)を実行する。
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット48を制御して、混合昇華剤ノズル46を、スピンチャック5の側方の退避位置から、基板Wの表面Waの中央部に上方に移動させる。そして、制御装置3は、混合昇華剤バルブ50を開いて、図7Aに示すように、基板Wの上面(表面Wa)の中央部に向けて混合昇華剤ノズル46から混合昇華剤を吐出する。前述のように、混合昇華剤ノズル46に供給される混合昇華剤は、その凝固点TFMが、大気圧下において室温未満になるように、第1の昇華性物質の含有割合が定められている。そのため、混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤は、液体状を維持している。
【0085】
基板Wの表面Waの中央部に着液した混合昇華剤は、基板Wの表面Waの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの表面Waに、基板Wの表面Waの全域を覆う混合昇華剤の液膜71が形成される。混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤が液体状を維持しているので、液膜71を良好に形成できる。混合昇華剤供給工程(S5)において、基板Wの表面Waに形成される混合昇華剤の液膜71の膜厚W11の高さは、パターン100の高さT(図5)に対して十分に高い。
【0086】
混合昇華剤供給工程(S5)は、前記液処理速度で基板Wを回転させながら行われていてもよい。また、混合昇華剤供給工程(S5)は、基板Wを、前記液処理速度よりも遅い液盛り速度(基板Wの上面の混合昇華剤の液膜71に作用する遠心力が混合昇華剤と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗するような速度。たとえば5rpm)で回転させながら、あるいは、基板Wを静止させながら行うようにしてもよい。
【0087】
混合昇華剤の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、混合昇華剤バルブ50を閉じる。これにより、基板Wの表面Waへの混合昇華剤の供給が停止される。また、制御装置3は、混合昇華剤ノズル46を退避位置に戻す。
次いで、図7Bに示すように、混合昇華剤の液膜71の膜厚を減少させる膜厚減少工程(図6のステップS6)が実行される。
【0088】
具体的には、制御装置3は、基板Wの表面Waに混合昇華剤を供給せずに、スピンモータ16を制御してスピンベース18を所定速度で回転させる。これにより、基板の表面Waに大きな遠心力が加わり、液膜71に含まれる混合昇華剤が基板Wの表面Waから排除され、液膜71の膜厚が減少する。その結果、図7Bに示すように、基板Wの表面Waに、混合昇華剤の薄膜72が形成される。薄膜72の膜厚W12は、液膜の膜厚W11よりも薄く、すなわち低い。薄膜72の膜厚W12は、数百ナノメートル~数マイクロメートルのオーダーである。薄膜72の上面は、表面Waに形成されている各パターン100(図5参照)の上端よりも上方に位置する。薄膜72の膜厚W12は、基板Wの回転速度を調整することによって調整される。
【0089】
混合昇華剤の吐出停止から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、膜厚減少工程(S6)を終了させ、次いで固化膜形成工程(図6のステップS7)を実行する。
固化膜形成工程(S7)は、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質を含む固化膜73を形成する。固化膜形成工程(S7)は、基板Wの表面Wa上の薄膜72に含まれる混合昇華剤から第2の昇華性物質を揮発、すなわち室温(常温)で蒸発させる工程である。第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とは蒸気圧に差があるため、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質を含む混合昇華剤を蒸発させようとすると、蒸気圧の高い第2の昇華性物質が優先して蒸発する。
【0090】
この実施形態では、固化膜形成工程(S7)が、基板Wの表面Waに、気体としての不活性ガスを吹き付ける気体吹き付け工程と、基板Wの表面Waを加熱する加熱工程と、基板Wを所定の回転速度で回転させる基板回転工程とを含む。気体吹き付け工程と、加熱工程と、基板回転工程とは、互いに並行して実行される。
制御装置3は、固化膜形成工程(S7)の開始に先立って遮断部材昇降ユニット27を制御し、図7Cに示すように、遮断部材10を下降させ遮断位置に配置する。
【0091】
気体吹き付け工程において、制御装置3が気体バルブ25を開く。それにより、図7Cに示すように、回転状態の基板Wの表面Waの中央部に向けて、上面ノズル21の吐出口21aから除湿された不活性ガスが吐出される。上面ノズル21からの不活性ガスは、基板Wの表面Waに吹き付けられる。また、遮断空間30を基板Wの表面Waに吹き付けられた不活性ガスは、遮断空間30を基板Wの外周部に向けて移動する。このような不活性ガスの吹き付けにより、薄膜72に含まれる混合昇華剤のうち蒸気圧の高い第2の昇華性物質が優先して蒸発する。
【0092】
また、加熱工程において、制御装置3が、冷却流体バルブ56を閉じながら加熱流体バルブ57を開く。それにより、図7Cに示すように、回転状態の基板Wの裏面Wbの中央部に、下面ノズル11から加熱流体が供給される。基板Wの裏面Wbに供給された加熱流体は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの外周部に向けて広がる。これにより、基板Wの裏面Wbの全域に加熱流体が供給されて、基板Wの表面Waの全域において、混合昇華剤の薄膜72が加熱される。このような混合昇華剤の薄膜72の加熱により、薄膜72に含まれる混合昇華剤のうち蒸気圧の高い第2の昇華性物質が優先して蒸発する。
【0093】
気体吹き付け工程および加熱工程において、混合昇華剤の薄膜72に含まれる混合昇華剤のうち、蒸気圧の高い第2の昇華性物質(たとえば、ターシャリーブタノール)が優先して蒸発する。第2の昇華性物質の蒸発に伴って、図3に示す白抜き矢印のように、混合昇華剤の薄膜72に含まれる第1の昇華性物質(たとえば、シクロヘキサノール)の含有割合が上昇する。混合昇華剤の凝固点TFMは、第1の昇華性物質の含有割合の上昇に伴って、図3に示すように共晶点まで一旦下がる。その後、混合昇華剤の凝固点TFMは、第1の昇華性物質の含有割合の上昇に伴って上昇する。そして、第1の昇華性物質の含有割合が好適範囲PR(図3参照)の上限を超えて混合昇華剤の凝固点TFMが室温を上回ると、混合昇華剤に含まれる第1の昇華剤物質が基板Wの表面Waにおいて凝固する。このようなメカニズムにより、混合昇華剤の薄膜72の固化が進行し(固体状の第1の昇華剤物質が析出し)、これにより、混合昇華剤の固化膜73が形成される。この固化膜73においては、第1の昇華剤物質は固体状態にあるが、第2の昇華性物質は液体状態にある。より具体的には、量の多い固体状態の第1の昇華剤物質によって、量の少ない第2の昇華性物質が分散している。そして、第2の昇華性物質が第1の昇華剤物質に包まれるようになる。
【0094】
また、遮断部材10が遮断位置に配置されかつ基板Wの上方に不活性ガスの気流が形成された状態において加熱工程が実行されるので、基板Wの裏面Wbに供給される加熱流体(たとえば加熱液体)が基板Wの表面Wa側に飛散して、基板Wの表面Waに付着することを確実に防止できる。
不活性ガスの吐出開始から予め定める期間が経過すると、図7Dに示すように、薄膜72の全てが固化し、基板Wの表面Waに、基板Wの表面Waの全域を覆う固化膜73が形成される。固化膜73の形成が終了するタイミングで、制御装置3が加熱流体バルブ57を閉じる。これにより、基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給が停止される。
【0095】
固化膜73は、第1の昇華性物質に限られず、第2の昇華性物質も含んでいる。しかしながら、混合昇華剤の凝固点TFMの上昇に伴う固体状の混合昇華剤の析出によって固化膜73を形成する方式では、固化膜73の形成時において、固化膜73に含まれる第1の昇華性物質の含有割合は多くなる(図3参照)。すなわち、固化膜形成工程(S7)において極めて多量の第2の昇華性物質が蒸発によって失われる。その結果、固化膜73の膜厚W13が、固化膜形成工程(S7)の開始時における薄膜72の膜厚W12よりも薄く(たとえば、約1/3~約1/5程度)できる。固化膜73の膜厚は、パターン100の高さTよりも高い範囲内において可能な限り薄く(低く)設定されることが望ましい。固化膜73の膜厚は、薄膜72の厚みや、混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤における、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合比によって調整される。固化膜形成工程(S7)において、薄膜72から第2の昇華性物質を全て除去できるのであれば、固化膜73を、第1の昇華性物質を含むが第2の昇華性物質を含まない態様にすることは可能である。
【0096】
この実施形態では、固化膜形成工程(S7)の開始前に膜厚減少工程(S6)が実行され、かつ第2の昇華性物質の含有割合が第1の昇華性物質の含有割合よりも多いので、固化膜形成工程(S7)の開始直前における液膜(薄膜72)の膜厚を薄く設けることができる。
固化前の液膜(薄膜72)の膜厚が厚ければ厚いほど、固化膜形成工程(S7)によって形成される固化膜73に残留する内部応力(歪み)が大きくなる。固化膜形成工程(S7)の開始直前における液膜(薄膜72)の膜厚を薄くすることで、固化膜形成工程(S7)によって形成される固化膜73に残留する内部応力を、できるだけ小さくできる。
【0097】
また、固化膜73の膜厚が薄ければ薄いほど、除去工程(S8)後において基板Wの表面Waに残存する残渣が少ない。固化膜形成工程(S7)の開始前における固化膜73の膜厚を薄くすることで、固化膜73の膜厚を薄く調整できる。これにより、除去工程(S8)後における残渣の発生を抑制できる。
固化膜73の形成後は、図7Eに示すように、固化膜73に含まれる昇華剤物質が固体から気体に昇華する。すなわち、固体状の第1の昇華性物質が昇華し、かつ液体状の第2の昇華剤は蒸発する。この実施形態では、第1の昇華性物質の昇華によって、固化膜73に含まれる第1の昇華性物質を液状化させずに除去する(液体状態を経ずに気化させる)除去工程(S8)が実現される。
【0098】
また、固化膜73の昇華を促進させるために、除去工程(S8)に並行して、制御装置3が、基板Wを高速で回転させる基板高回転工程(スピンオフ)と、基板Wの表面Waに気体を吹き付ける気体吹き付け工程とが実行される。
基板高回転工程(スピンオフ)は、基板Wを所定の高回転速度(たとえば300~1200rpmのうちの所定速度)で回転させる。この高回転速度は、固化膜形成工程(S7)における基板Wの回転速度よりも速いことが望ましい。また、制御装置3は、遮断板回転ユニット26を制御して、遮断板20を基板Wの回転と同方向に同等の速度で回転させる。基板Wの高速回転に伴って、固化膜73と、その周囲の雰囲気との接触速度を増大させることができる。これにより、固化膜73の昇華を促進させることができ、短期間のうちに固化膜73を昇華させることができる。
【0099】
また、除去工程(S8)に並行して実行される気体吹き付け工程は、固化膜形成工程(S7)に含まれる気体吹き付け工程と同等の工程である。すなわち、上面ノズル21の吐出口21aからの不活性ガスの吐出が、除去工程(S8)においても継続して実行される。このような気体の吹き付けにより、固化膜73に含まれる第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の昇華が促進される。
【0100】
また、この実施形態では、除去工程(S8)に並行して、基板Wの表面Waを冷却する冷却工程が実行される。具体的には、制御装置3は、加熱流体バルブ57を閉じながら冷却流体バルブ56を開く。それにより、基板Wの下面(裏面Wb)に下面ノズル11から冷却流体が供給される。基板Wの裏面Wbに供給された冷却流体は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの外周部に向けて広がる。これにより、基板Wの裏面Wbの全域に冷却流体が供給されて、基板Wの表面Waの全域において固化膜73が冷却される。基板Wの表面Waの固化膜73が凝固点(融点)以下に維持されるので、固化膜73に含まれる昇華性物質を、融解を抑制または防止しながら昇華させることができる。
【0101】
これにより、除去工程(S8)において、図7Fに示すように、固化膜73に含まれる昇華性物質を全て気化(昇華)させることにより、基板Wの表面Waから除去できる。混合昇華剤を、液体状態を経ずに気化させることにより基板Wの表面Waを乾燥するので、パターン倒壊を効果的に抑制または防止しながら、基板Wの表面Waを乾燥させることができる。
【0102】
また、固化膜形成工程(S7)にて開いた加熱流体バルブ57を開いたままにした状態、冷却工程で冷却流体と加熱流体の混合流体を供給してもよい。混合流体は基板Wの表面Waの固化膜73が凝固点(融点)以下に維持できればよい。
その後、基板Wの表面Waの全域から混合昇華剤が除去された後の所定のタイミングで、制御装置3は、スピンモータ16を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。また、制御装置3は、冷却流体バルブ56および気体バルブ25を閉じる。また、制御装置3は、遮断部材昇降ユニット27を制御して、遮断部材10を退避位置まで上昇させる。
【0103】
その後、基板搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット2外へと搬出する(図6のS9:基板W搬出)。搬出された基板Wは、基板搬送ロボットCRからインデクサロボットIRへと渡され、インデクサロボットIRによって、基板収容器Cに収納される。
以上により第1の実施形態によれば、混合昇華剤供給工程(S5)において、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質とが混ざり合った混合昇華剤が、基板Wの表面Waに供給される。第1の昇華性物質は、室温以上の凝固点TF1を有しているため、室温の温度条件下において一部または全体が固体状をなす。この実施形態では、混合昇華剤の凝固点TFMが室温よりも低く設定されている。そのため、室温において、混合昇華剤が液状を維持する。そのため、昇華性物質の意図しない凝固を大きなコストアップなく回避しながら、基板Wの表面Waを良好に乾燥させることが可能である。
【0104】
また、混合昇華剤供給工程(S5)の後に実行される固化膜形成工程(S7)において、基板Wの表面Waに存在する混合昇華剤から第2の昇華性物質が優先的に蒸発させられる。混合昇華剤からの第2の昇華性物質の蒸発に伴い、混合昇華剤における第1の昇華性物質の含有割合が上昇する。これに伴って、混合昇華剤の凝固点TFMが上昇し、この凝固点TFMが室温に達すると、基板Wの表面Waに存在する混合昇華剤の固化が開始される。これにより、混合昇華剤の固化膜73が形成される。混合昇華剤の凝固点TFMの上昇を利用して混合昇華剤を固化(凝固)させるから、混合昇華剤の固化のために混合昇華剤を冷却させることは必ずしも必要ではない。したがって、基板Wの表面Waに供給された昇華性物質を大きなコストアップなく良好に固化することが可能である。
【0105】
図8は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201に備えられる処理ユニット202の構成例を説明するための図解的な断面図である。図9は、第1の昇華性物質、第2の昇華性物質および混合用溶媒とを含む混合昇華剤の状態平衡図である。
第2の実施形態において、前述の第1の実施形態と共通する部分には、それぞれ、図1図7の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
【0106】
第2の実施形態に係る処理ユニット202が、第1の実施形態に係る処理ユニット2(図2参照)と相違する点は、混合昇華剤配管49に付与される混合昇華剤の種類である。
第2の実施形態において混合昇華剤配管49に付与される混合昇華剤は、昇華性を有する第1の昇華性物質と、前記第1の昇華性物質よりも低い蒸気圧を有しかつ昇華性を有する第2の昇華性物質と、混合用溶媒(溶媒)と、が互いに混ざり合った混合物質である。昇華性物質は、室温(RT)以上の凝固点TPF1図9参照)を有している。室温(RT)は、外気の温度にも影響されるため必ずしも、一定でないが概ね23℃に設定されている。第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、混合用溶媒に対して共に相溶性を有している。そのため、混合昇華剤において、第1の昇華性物質、第2の昇華性物質と混合用溶媒とが互いに溶け合った態様になっている。したがって、混合昇華剤において、昇華性物質と混合用溶媒とが偏りなく均一に混ざり合っている。
【0107】
第2の実施形態に係る混合昇華剤に含まれる第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、それぞれ、アミノ基、ヒドロキシ基またはカルボニル基の少なくともいずれか一つを有する。但し、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質が一分子あたりに有するヒドロキシ基は最大で1つである。第1の昇華性物質と、第2の昇華性物質とは、互いに異なる物質である。第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、それぞれ独立に五員環または六員環の炭化水素環または複素環を含む。
【0108】
第1の昇華性物質および第2の昇華性物質において、それぞれ独立に、アミノ基および又はカルボニル基は、炭化水素環または複素環における環の一部であり、ヒドロキシ基は、炭化水素環または複素環における環に直接付加される。すなわち、カルボキシル基を有する化合物は、この形態では第1の昇華性物質または第2の昇華性物質に該当しない。好適には、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、それぞれ独立にかご型の立体構造の母骨格を有する。かご型の立体構造として、例えば1,4-Diazabicyclo[2.2.2]octane(以下、DABCO)が挙げられる。分子量と比して、かさ高さを抑制できる点が有利である。別の態様として、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質において、それぞれ独立に、アミノ基が環に直接付加される態様も好適である。例えば、1-アダマンタンアミンは、かご型の立体構造の母骨格を有し、アミノ基は環の一部ではなく、環に直接付加される。
【0109】
第1の昇華性物質および第2の昇華性物質では、それぞれ独立に、一分子あたりに有するアミノ基が1~5つ(より好適には1~4つ、さらに好適には2~4つ)、カルボニル基が1~3つ(より好適には1~2つ)、および又はヒドロキシ基が1つであることが好ましい。アミノ基はC=N-(イミノ基)のように、窒素原子の結合手が二重結合に使用される態様も含む。アミノ基の数は一分子中に存在する窒素原子の数で数える。一分子中にアミノ基、カルボニル基またはヒドロキシ基のいずれか1種類を有する形態が、本発明の好適な一態様である。別の一態様として、一分子中にカルボニル基とアミノ基を有することも好適である。
【0110】
また、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の分子量は、それぞれ独立に80~300(好ましくは90~200)である。理論に拘束されないが、分子量が大きすぎると、気化の際にエネルギーが必要になり本発明にかかる方法に適さないと考えられ得る。
第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の具体例として、それぞれ、次に述べるものが挙げられる。すなわち、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、それぞれ独立に、無水フタル酸、カフェイン、メラミン、1,4-ベンゾキノン、樟脳、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン、1-アダマンタノール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ボルネオール、(-)-ボルネオール、(±)-イソボルネオール、1,2-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオン、(±)-カンファーキノン、(-)-カンファーキノン、(+)-カンファーキノン、1-アダマンタンアミンの少なくとも一つを含む。
【0111】
第2の昇華性物質は、第1の昇華性物質よりも低い蒸気圧を有している。第2の昇華性物質は単一の種類の化合物からなる。例えば、無水フタル酸とカフェインが同時に第2の昇華性物質として混合昇華剤に含まれることがない。しかしながら、なお、無水フタル酸が第2の昇華性物質として、カフェインが第1の昇華性物質として混合昇華剤に含まれる態様はあり得る、但し、具体例で挙げられた中で光学異性体のものは、他の成分と混合された態様で存在していてもよい。
【0112】
第1の昇華性物質および/または第2の昇華性物質は、微量の不純物が混入していてもよい。たとえば、第2の昇華性物質が無水フタル酸の場合、第2の昇華性物質の全量を基準にして不純物(無水フタル酸以外)が2質量%以下(好適には1質量以下、より好適には0.1質量%以下、さらに好適には0.01質量%以下)存在するようにしてもよい。
混合昇華剤ノズル46に付与される混合昇華剤は、第2の昇華性物質を、第1の昇華性物質と比較して少ない/または多い含有割合(濃度)で含む。第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の質量の和は、混合昇華剤の全体の質量を基準として、1~40質量%(より好適には1~30質量%、さらに好適には2~20質量%)である。昇華性物質(第1の昇華性物質および第2の昇華性物質)の量が少なすぎると、凝固膜273の形成が困難になり、パターン倒壊を抑制する効果が少なくなるおそれがある。混合昇華剤に含まれる、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の質量比(含有比)は99:1~1:99(より好適には95:5~5:95、さらに好適には90:10~10:90、よりさらに好適には80:20~20:80)である。第2の昇華性物質に対する第1の昇華性物質の質量比(含有比)が0.5~20(より好適には1~20、さらに好適には5~20)であってもよい。第2の昇華性物質は、混合昇華剤に数パーセントの割合でしか含まれていない場合には、第2の昇華性物質は添加されているに過ぎず、添加剤として機能する。
【0113】
第2の実施形態に係る混合昇華剤に含まれる混合用溶媒は、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質よりも高い蒸気圧を有している。混合用溶媒は、たとえばIPAに代表される有機溶媒である。有機溶媒として、IPA以外に、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL。大気圧下における凝固点:約-26℃、室温大気圧下における蒸気圧:670Pa)等の乳酸エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等、を挙げることができる。
【0114】
前記エーテル類が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME(1-メトキシ-2-プロパノール。大気圧下における凝固点:約-97℃、室温大気圧下における蒸気圧:1.5kPa))、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE(1-エトキシ-2-プロパノール。大気圧下における凝固点:約-100℃、室温大気圧下における蒸気圧:520Pa))等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA(1-メトキシ-2-プロパノールアセタート。大気圧下における凝固点:約-87℃、室温大気圧下における蒸気圧:490Pa)))、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類を含んでいてもよい。
【0115】
好ましくは、有機溶媒は、MeOH、EtOH、IPA、THF、PGEE,ベンゼン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンの少なくとも一つを含む。より好ましくは、有機溶媒は、MeOH、EtOH、IPA、PGEEおよびアセトンの少なくとも一つを含む。さらに好ましくは、有機溶媒は、MeOH、EtOH、IPA、PGEEの少なくとも一つを含む。また、混合用溶媒として用いられる溶媒としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、複数の成分を混合した溶媒であってもよい。混合用溶媒が2種の有機溶媒を含む場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30、さらに好ましくは40:60~60:40である。
【0116】
また、前述のように、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質は、混合用溶媒に対して可溶性を有しているが、第2の昇華性物質の混合用溶媒に対する溶解度は、前記第1の昇華性物質の前記溶媒に対する溶解度よりも大きい。なお、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の少なくとも一方が、混合用溶媒に対して可溶性を有していれば足りる。
さらに、第2の昇華性物質の凝固点は、第1の昇華性物質の凝固点よりも高い。
【0117】
なお、第1の昇華性物質と混合用溶媒とは互いに可溶性を有している必要があるが、第2の昇華性物質は、第1の昇華性物質および混合用溶媒の少なくとも一方に対して可溶性を有していればよい。
第2の昇華性物質の大気圧における沸点が、第1の昇華性物質の大気圧における沸点より高く、かつ第1の昇華性物質の大気圧における沸点が混合用溶媒の大気圧における沸点よりも高いことが好ましい。第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の沸点は、100~300℃であることが好ましく、150~295℃であることがより好ましい。混合用溶媒の沸点は、50~170℃であることが好ましく、50~150℃であることより好ましく、60~140℃であることがさらに好ましい。
【0118】
また、第2の昇華性物質の蒸気圧が第1の昇華性物質の蒸気圧よりも低く、第1の昇華性物質の蒸気圧が混合用溶媒の蒸気圧よりも低いことが好ましい。
また、第2の実施形態に係る混合昇華剤が、界面活性剤、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤等の添加剤を含んでいてもよい。
図9に示すように、第1の昇華性物質と混合用溶媒との混合による凝固点降下により、混合昇華剤の凝固点TPFMが、第1の昇華性物質の凝固点TPF1よりも下がる。混合昇華剤の凝固点TPFMが、混合昇華剤における第1の昇華性物質の濃度に依存する。図3には、混合昇華剤の凝固点曲線FPCが記載されている。混合昇華剤における第1の昇華性物質の濃度が、混合昇華剤の凝固点TPFMが室温(RT)未満の温度に下がり、室温環境下で混合昇華剤が液体状をなす。なお、前述のように、混合昇華剤における第2の昇華性物質の含有割合が第1の昇華性物質に比べて小さいので、第2の昇華性物質の、凝固点降下に与える影響はほとんど無視できる。
【0119】
この実施形態において、混合昇華剤配管49に付与される混合昇華剤に含まれる、第1の昇華性物質、第2の昇華性物質および混合用溶媒の好適な組み合わせの例として、樟脳、ナフタレンおよびIPAの組み合わせを例示できる。
図8に示すように、第2の実施形態に係る処理ユニット202が、第1の実施形態に係る処理ユニット2(図2参照)と相違する他の点は、上面ノズル21に、気体配管24だけでなく、加熱気体配管204が接続される点である。
【0120】
図8に示すように、加熱気体配管204には、加熱気体配管204を開閉するための加熱気体バルブ205が介装されている。加熱気体配管204に付与される加熱気体は、除湿された加熱気体、とくに不活性ガスである。不活性ガスは、たとえば、窒素ガスやアルゴンガスを含む。なお、加熱気体は、空気等の活性ガスであってもよい。加熱気体は、混合昇華剤の凝固点TPFMよりも高い液温を有している。気体バルブ25が閉じられている状態で加熱気体バルブ205が開かれると、加熱気体供給源からの加熱気体が、加熱気体配管204を介して上面ノズル21に供給される。これにより、吐出口21aから加熱気体が下向きに吐出される。この実施形態では、上面ノズル21、加熱気体配管204および加熱気体バルブ205によって、加熱流体供給ユニットが構成されている。
【0121】
図10は、第2の実施形態に係る基板処理装置201の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、加熱気体バルブ205をさらに開閉する。
図11は、処理ユニット202による基板処理例(第2の基板処理例)を説明するための流れ図である。図12A~12Gは、この基板処理例が実行されているときの基板Wの周辺の状態を示す模式図である。図13Aは、凝固膜形成工程(S17)において形成される凝固膜273における結晶の状態を示す模式的な平面図である。
【0122】
処理ユニット202によって基板Wに第2の基板処理例が施されるときには、チャンバ4の内部に、未処理の基板Wが搬入され(図11のステップS11)、基板Wがその表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡される。スピンチャック5に基板Wが保持された後、スピンベース18が回転開始される。スピンベース18の回転に伴って基板Wが回転し、所定の液処理速度(約10~1500rpmの範囲内で、たとえば約500rpm)まで上昇させると、その液処理速度に維持される。
【0123】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置3は、薬液工程(図11のステップS12)を実行開始する。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、薬液ノズル31からの薬液の吐出が停止され、これにより、薬液工程(S12)が終了する。
次いで、制御装置3は、基板W上の薬液をリンス液に置換して、基板Wの表面Waを洗い流すリンス工程(図11のステップS13)を実行する。リンス液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、リンス液ノズル36からのリンス液の吐出が停止され、これにより、リンス液供給工程(S13)が終了する。
【0124】
次いで、制御装置3は、置換工程(図11のステップS14)を実行する。置換工程(S14)は、基板W上のリンス液を、リンス液(水)および混合昇華剤の双方に親和性を有する溶媒(この例では、IPA等の有機溶媒)に置換する工程である。溶媒の吐出開始から予め定める期間が経過すると、置換用溶媒ノズル41からの溶媒の吐出が停止され、これにより、置換工程(S14)が終了する。
【0125】
第2の基板処理例(図11参照)の各工程S11、S12、S13およびS14は、それぞれ、第1の基板処理例(図6参照)の各工程S1、S2、S3およびS4と同等の工程であるので、各工程S11、S12、S13およびS14についての詳細な説明は省略する。
次いで、制御装置3は、混合昇華剤供給工程(混合昇華性物質供給工程。図11のステップS15)を実行する。
【0126】
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット48を制御して、混合昇華剤ノズル46を、スピンチャック5の側方の退避位置から、基板Wの表面Waの中央部に上方に移動させる。そして、制御装置3は、混合昇華剤バルブ50を開いて、図12Aに示すように、基板Wの上面(表面Wa)の中央部に向けて混合昇華剤ノズル46から混合昇華剤を吐出する。
【0127】
前述のように、混合昇華剤ノズル46に付与される混合昇華剤は、その凝固点TPFMが、大気圧下において室温未満になるように、混合昇華剤における第1の昇華性物質の濃度が定められている。そのため、混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤は、液体状を維持している。
基板Wの表面Waの中央部に着液した混合昇華剤は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの表面Waの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの表面Waに、基板Wの表面Wa全域を覆う混合昇華剤の液膜271が形成される。混合昇華剤ノズル46から吐出される混合昇華剤が液体状を維持しているので、液膜271を良好に形成できる。混合昇華剤供給工程(S15)において、基板Wの表面Waに形成される混合昇華剤の液膜271の膜厚W21の高さは、パターン100の高さT(図5参照)に対して十分に高い。
【0128】
混合昇華剤供給工程(S15)は、前記の液処理速度で基板Wを回転させながら行われていてもよい。また、混合昇華剤供給工程(S15)は、基板Wを、前記の液処理速度よりも遅い液盛り速度(基板Wの上面の混合昇華剤の液膜271に作用する遠心力が混合昇華剤と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗するような速度。たとえば約5rpm)で回転させながら、あるいは、基板Wを静止させながら行うようにしてもよい。
【0129】
なお、基板Wの表面Waに形成される液膜(薄膜272)に含まれる混合昇華剤は、混合用溶媒および第1の昇華性物質に、第2の昇華剤物質が少量に含まれている。そのため、第2の昇華剤物質が、混合昇華剤中に均一に分散されている。
混合昇華剤の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、混合昇華剤バルブ50を閉じる。これにより、基板Wの表面Waへの混合昇華剤の供給が停止される。また、制御装置3は、混合昇華剤ノズル46を退避位置に戻す。
【0130】
次いで、図12Bに示すように、混合昇華剤の液膜271の膜厚を減少させる膜厚減少工程(図11のステップS16)が実行される。
具体的には、膜厚減少工程(S16)は、基板高回転工程(スピンオフ)を含む。制御装置3は、基板Wの表面Waに混合昇華剤を供給せずに、スピンモータ16を制御してスピンベース18を所定の高回転速度(たとえば約100rpm~約2500rpmのうちの所定速度)で回転させる。これにより、基板Wが、この高回転速度で回転される。これにより、基板Wの表面Waに大きな遠心力が加わり、液膜271に含まれる混合昇華剤の一部が基板Wの表面Waから排除され、液膜271の膜厚が減少する。その結果、図12Bに示すように、基板Wの表面Waに、混合昇華剤の薄膜272が形成される。薄膜272の膜厚W22は、液膜271の膜厚W21よりも薄く、すなわち低い。薄膜272の膜厚W22は、数百ナノメートル~数マイクロメートルのオーダーである。薄膜272の膜厚W22は、表面Waに形成されている各パターン100(図5参照)の上端よりも上方に位置する。薄膜272の膜厚W22は、基板Wの回転速度を調整することによって調整される。
【0131】
凝固前の液膜(薄膜272)の膜厚が厚ければ厚いほど、後述する凝固膜形成工程(S17)によって形成される凝固膜273に残留する内部応力(歪み)が大きくなる。凝固膜形成工程(S17)の開始直前における液膜(薄膜272)の膜厚を薄くすることで、凝固膜形成工程(S17)によって形成される凝固膜273に残留する内部応力を、できるだけ小さくできる。
【0132】
また、凝固膜273の膜厚が薄ければ薄いほど、後述する昇華工程(S18)後において基板Wの表面Waに残存する第2の昇華性物質の残渣が少ない。凝固膜形成工程(S17)の開始前における凝固膜273の膜厚を薄くすることで、凝固膜273の膜厚を薄く調整できる。これにより、昇華工程(S18)後における第2の昇華性物質の残渣の発生を抑制できる。
【0133】
混合昇華剤の吐出停止から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、膜厚減少工程(S16)を終了させる。次いで、制御装置3は、凝固膜形成工程(図11のステップS17)を開始実行する。凝固膜形成工程(S17)は、図12Cに示すように、混合昇華剤の薄膜272を凝固させて、第1の昇華性物質を主として含む凝固膜273を、基板Wの表面Waに形成する工程である。この第2の基板処理例では、凝固膜形成工程(S17)は、基板Wの表面Waに不活性ガスを供給する気体供給工程と、基板Wを所定の回転速度で回転させる基板回転工程とを含む。気体供給工程と、基板回転工程とが、互いに並行して実行される。制御装置3は、遮断板回転ユニット26を制御して、凝固膜形成工程(S17)において、遮断板20を基板Wの回転と同方向に同等の速度で回転させる。
【0134】
制御装置3は、凝固膜形成工程(S17)の開始に先立って遮断部材昇降ユニット27を制御し、図12Cに示すように、遮断部材10を下降させ遮断位置に配置する。
気体供給工程において、制御装置3が気体バルブ25を開く。それにより、図12Cに示すように、除湿された不活性ガスが上面ノズル21の吐出口21aから吐出される。上面ノズル21の吐出口21aから吐出された不活性ガスは、薄膜272の中央部に吹き付けられる。また、吐出口21aから遮断空間30に供給された不活性ガスは、遮断空間30を基板Wの外周部に向けて移動し、その過程で、薄膜272の表面と接触(衝突)する。このような不活性ガスの供給により、薄膜272と、不活性ガスとの単位時間当たりの衝突回数が増大する。これにより、混合昇華剤に含まれる分子の気化(蒸発)が促進される。
【0135】
また、基板回転工程において、基板Wが所定の凝固回転速度で回転されることによって、薄膜272と、基板Wの表面Wa周辺の雰囲気に含まれる気体との単位時間当たりの衝突回数が多い。これにより、混合昇華剤に含まれる昇華性物質の分子の気化(蒸発)が促進される。
前述のように混合用溶媒は、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質よりも、蒸気圧が高い。そのため、気体供給工程および基板回転工程において、混合昇華剤を気化(蒸発)させようとすると、蒸気圧が最も高い混合用溶媒(たとえばIPA)が優先して気化(蒸発)する。また、 また、第2の昇華性物質の蒸気圧が第1の昇華性物質よりも低いため、凝固膜形成工程(S17)において、第2の昇華性物質が第1の昇華性物質に優先して蒸発することを防止できる。その結果、凝固膜形成工程(S17)において形成される混合昇華剤の凝固膜273が、第2の昇華性物質を確実に含むようになる。
【0136】
混合用溶媒の気化(蒸発)に伴って、混合昇華剤が凝固し、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質を含む凝固膜273が形成される。このような混合昇華剤の凝固メカニズムとして、以下の3つが挙げられる。
1つ目のメカニズムとして、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の析出が挙げられる。混合用溶媒の気化(蒸発)によって、混合昇華剤における第1の昇華性物質の濃度が上昇する。第1の昇華性物質の濃度が飽和濃度に達した以降は、第1の昇華性物質の結晶が析出する。また、同様に、混合用溶媒の気化(蒸発)によって、混合昇華剤における第2の昇華性物質の濃度が上昇する。第2の昇華性物質の濃度が飽和濃度に達した以降は、第2の昇華性物質の結晶が析出する。
【0137】
2つ目のメカニズムとして、混合昇華剤の凝固点TPFMの上昇が挙げられる。混合用溶媒の気化(蒸発)によって、混合昇華剤における第1の昇華性物質の濃度が上昇し、混合昇華剤の凝固点TPFMが上昇する。凝固点TPFMが室温を上回ると、混合昇華剤に含まれる第1の昇華性物質が凝固を開始する。
3つ目のプロセスとして、混合用溶媒の気化(蒸発)によって奪われる気化熱により、基板Wの表面Waが冷却される。これにより、混合昇華剤が温度低下する結果、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の析出が促進される。また、混合昇華剤の薄膜272に含まれる混合昇華剤の温度が混合昇華剤の凝固点TPFMを下回ると、混合昇華剤が凝固を開始する。
【0138】
不活性ガスの吐出開始から予め定める期間が経過すると、図12Dに示すように、混合昇華剤の薄膜272に含まれる昇華性物質の全てが凝固し、基板Wの表面Waに、表面Waの全域を覆う凝固膜273が形成される。
凝固膜形成工程(S17)において、第1の昇華性物質の結晶核を中心として第1の昇華性物質の結晶Cr1が成長し、成長した結晶(すなわち、第1の昇華性物質の結晶)同士が結合することにより、図13Aに示すように、凝固膜273が形成される。また、第1の昇華性物質の結晶成長の過程で、混合昇華剤に分散されている第2の昇華性物質の分子が、第1の昇華性物質の結晶Cr1の結晶界面CFに集結する。そして、凝固膜273において、混合昇華剤に添加されている第2の昇華性物質が、結晶界面CFの近傍で析出する。第2の昇華性物質の結晶Cr2によって、第1の昇華性物質の結晶Cr1の結晶界面CFに作用する応力(界面応力)が緩和される。したがって、凝固膜273において、第1の昇華性物質の結晶Cr1の界面応力を低減できる。
【0139】
凝固膜273の形成後は、凝固膜273に含まれる固体状の昇華性物質が、固体から液体状態を経ずに気体に変化する。これにより、昇華工程(図11のステップS18)が実現される。前述のように、第2の昇華性物質の蒸気圧が第1の昇華性物質よりも低い。そのため、昇華工程(S18)において第1の昇華性物質が優先的に昇華する。したがって、昇華工程(S18)においては、凝固膜273に含まれる固体状の第1の昇華性物質が主として昇華する。
【0140】
凝固膜273に含まれる昇華性物質(主として第1の昇華性物質)の昇華を促進させるために、図12Eに示すように、制御装置3が、昇華工程(S18)に並行して、基板Wを高速で回転させる基板高回転工程(スピンオフ)と、基板Wの表面Waに気体を供給する気体供給工程とを実行する。
基板高回転工程(スピンオフ)は、基板Wを所定の高回転速度(たとえば300~1200rpmのうちの所定速度)で回転させる工程である。この基板高回転速度は、凝固膜形成工程(S17)における基板Wの回転速度である凝固回転速度と同程度であってもよいが、凝固回転速度よりも速いことが望ましい。また、制御装置3は、遮断板回転ユニット26を制御して、遮断板20を基板Wの回転と同方向に同等の速度で回転させる。基板Wの高速回転に伴って、凝固膜273と、その周囲の雰囲気との接触速度を増大させることができる。これにより、凝固膜273に含まれる昇華性物質の昇華を促進できる。
【0141】
また、昇華工程(S18)に並行して実行される気体供給工程は、凝固膜形成工程(S17)に含まれる気体供給工程と同等の工程である。すなわち、上面ノズル21の吐出口21aからの不活性ガスの吐出が、昇華工程(S18)においても継続して実行される。このような気体の供給により、凝固膜273に含まれる昇華性物質の昇華が促進される。これにより、凝固膜273に含まれる第1の昇華性物質が全て気化(昇華)される。混合昇華剤に主として含まれる第1の昇華性物質を、液体状態を経ずに気化させることにより基板Wの表面Waを乾燥するので、パターン100の倒壊を効果的に抑制または防止しながら、基板Wの表面Waを乾燥させることができる。また、第1の昇華性物質の昇華が基板Wの表面Waの全域において完了すると、制御装置3は、気体バルブ25を閉じる。じれにより、昇華工程(S18)が終了する。
【0142】
また、昇華工程(S18)において第1の昇華性物質が優先的に昇華するため、昇華工程(S18)の終了後において、第2の昇華性物質の残渣280が基板Wの表面Waに残るおそれがある。第2の昇華性物質の残渣280を基板Wの表面Waから除去するため、昇華工程(S18)の後に加熱工程(図11のステップS19)が実行される。加熱工程(図11のステップS19)は、基板Wの表面Waを加熱する工程である。
【0143】
加熱工程(S19)において、制御装置3は、冷却流体バルブ56を閉じながら加熱流体バルブ57を開く。それにより、図12Fに示すように、回転状態の基板Wの裏面Wbの中央部に向けて、下面ノズル11から加熱流体が吐出される。基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給により基板Wの表面Waが加熱される。加熱流体は、たとえば、温水等の加熱液であるが、高温のN等の加熱気体であってもよい。
【0144】
また、加熱工程(S19)において、制御装置3は、気体バルブ25を閉じながら加熱気体バルブ205を開く。これにより、吐出口21aから加熱気体が吐出され、遮断空間30に加熱気体が供給される。遮断空間30への加熱気体の供給によって遮断空間30が加熱される。
基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給、および遮断空間30への加熱気体の供給によって基板Wの表面Waが温められ、これにより、基板Wの表面Waに残留している第2の昇華性物質の残渣206の昇華が促進される。その結果、乾燥後の基板Wの表面Waにおいて、図12Gに示すように、基板Wの表面Waから第2の昇華性物質の残渣206が除去されている。
【0145】
これにより、乾燥後の基板Wの表面Waにおける、第2の昇華性物質の残渣206の発生を抑制または防止できる。
また、加熱工程(S19)において、遮断空間30に供給される気体(加熱気体)によって、昇華気体(昇華した第1の昇華性物質。以下、「第1の昇華気体」という場合がある)が遮断空間30から押し出される。そのため、遮断空間30における第1の昇華気体の分圧を下げることができる。そのため、加熱工程(S19)において、第2の昇華性物質の昇華を妨げない。
【0146】
その後、基板Wの表面Waの全域から第2の昇華性物質の残渣206が除去された後の所定のタイミングで、制御装置3は、スピンモータ16を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。また、制御装置3は、加熱流体バルブ57および加熱気体バルブ205を閉じる。また、制御装置3は、遮断部材昇降ユニット27を制御して、遮断部材10を退避位置まで上昇させる。
【0147】
その後、基板搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット2外へと搬出する(図11のS20:基板W搬出)。搬出された基板Wは、基板搬送ロボットCRからインデクサロボットIRへと渡され、インデクサロボットIRによって、基板収容器Cに収納される。処理済みの基板Wは、第1の昇華性物質や第2の昇華性物質が表面Waに付着していない。したがって、このような昇華性物質(第1の昇華性物質や第2の昇華性物質)によって、基板収容器Cに収容されている他の基板が汚染されることを効果的に抑制または防止できる。
【0148】
以上によりこの実施形態によれば、第1の昇華性物質と、第2の昇華性物質と、溶媒とが互いに混ざり合った混合昇華剤が、基板Wの表面Waに供給される。そして、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質を含む、混合昇華剤の凝固膜273が形成される。混合昇華剤の凝固膜273が第1の昇華性物質(たとえば樟脳)だけでなく第2の昇華性物質(たとえばナフタレン)も含む。また、混合昇華剤が、第2の昇華性物質を、第1の昇華性物質より極めて少ない割合で含有するので、凝固膜273の主体は、第1の昇華性物質である。第2の昇華性物質は、第1の昇華性物質の結晶の界面応力を低減するように作用する。これにより、凝固膜273からパターン100(図5参照)への局所的な力の付与を抑制または防止できる。
【0149】
また、第2の昇華性物質の蒸気圧が第1の昇華性物質よりも低いため、凝固膜273の形成時に、第2の昇華性物質が第1の昇華性物質に優先して蒸発することを抑制または防止できる。その結果、混合昇華剤の凝固膜273が、第2の昇華性物質を確実に含むようになる。
以上により、凝固膜273からパターン100(図5参照)への局所的な力の付与を抑制または防止でき、これにより、パターン100の倒壊を抑制または防止できる。
【0150】
また、昇華工程(S18)の後に基板Wの表面Waが加熱される(加熱工程(S19))。第2の昇華性物質の蒸気圧が第1の昇華性物質よりも低いため、昇華工程(S18)において第1の昇華性物質が優先的に昇華する。その結果、第2の昇華性物質の残渣が基板Wの表面Waに残るおそれがある。
この実施形態では、昇華工程(S18)の後に加熱工程(S19)を実行する。具体的には、基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給、および遮断空間30への加熱気体の供給によって基板Wの表面Waが温められる。これにより、基板Wの表面Waに残留している第2の昇華性物質の残渣206の昇華が促進される。この加熱工程(S19)により、処理後における基板Wの表面Waから第2の昇華性物質の残渣206の発生を抑制または防止できる。
【0151】
また、加熱工程(S19)において、遮断空間30に供給される気体(加熱気体)によって、昇華気体(昇華した第1の昇華性物質)が遮断空間30から押し出される。そのため、遮断空間30における第1の昇華気体の分圧を下げることができる。そのため、加熱工程(S19)において、第2の昇華性物質の昇華を妨げない。
図13Bは、処理ユニット202による他の基板処理例(第3の基板処理例)を説明するための流れ図である。
【0152】
第3の基板処理例が、第2の基板処理例と相違する点は、混合昇華剤配管49に付与される混合昇華剤の種類である。第3の基板処理例では、混合昇華剤が第1の昇華性物質および混合用溶媒のみを含み、混合昇華剤が第2の昇華性物質を含まない。この場合、混合用溶媒として、第1の昇華性物質の蒸気圧とは差異が小さい蒸気圧を有する溶媒を採用する場合がある。このような第1の昇華性物質と混合用溶媒との組合せとして、樟脳とPGMEAとの組み合わせや、樟脳とPGEEとの組み合わせを例示できる。
【0153】
処理ユニット202によって基板Wに第3の基板処理例が施されるときには、チャンバ4の内部に、未処理の基板Wが搬入され(図13BのステップS21)、基板Wがその表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡される。スピンチャック5に基板Wが保持された後、スピンベース18が回転開始される。スピンベース18の回転に伴って基板Wが回転し、所定の液処理速度(約10~1500rpmの範囲内で、たとえば約500rpm)まで上昇させると、その液処理速度に維持される。
【0154】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置3は、薬液工程(図13BのステップS22)を実行開始する。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、薬液ノズル31からの薬液の吐出が停止され、これにより、薬液工程(S22)が終了する。
次いで、制御装置3は、基板W上の薬液をリンス液に置換して、基板Wの表面Waを洗い流すリンス工程(図13BのステップS23)を実行する。リンス液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、リンス液ノズル36からのリンス液の吐出が停止され、これにより、リンス液供給工程(S23)が終了する。
【0155】
次いで、制御装置3は、置換工程(図13BのステップS24)を実行する。置換工程(S24)は、基板W上のリンス液を、リンス液(水)および混合昇華剤の双方に親和性を有する溶媒(この例では、IPA等の有機溶媒)に置換する工程である。溶媒の吐出開始から予め定める期間が経過すると、置換用溶媒ノズル41からの溶媒の吐出が停止され、これにより、置換工程(S24)が終了する。
【0156】
次いで、制御装置3は、混合昇華剤供給工程(図13BのステップS25)を実行する。混合昇華剤供給工程(S24)は、基板Wの上面(表面Wa)の中央部に向けて混合昇華剤ノズル46から混合昇華剤を吐出する工程である。これにより、基板Wの表面Waに、基板Wの表面Wa全域を覆う混合昇華剤の液膜が形成される。
次いで、制御装置3は、混合昇華剤の液膜の膜厚を減少させる膜厚減少工程(図13BのステップS26)を実行する。
【0157】
次いで、制御装置3は、第1の昇華性物質を含む凝固膜を、基板Wの表面Waに形成する凝固膜形成工程(図13BのステップS27)を実行する。
第3の基板処理例(図13B参照)の各工程S21、S22、S23、S24、S25、S26およびS27は、それぞれ、第2の基板処理例(図11参照)の各工程S11、S12、S13、S14、S15、S16およびS16と同等の工程であるので、各工程S21、S22、S23、S24、S25、S26およびS27についての詳細な説明は省略する。
【0158】
混合用溶媒の蒸気圧と第1の昇華性物質の蒸気圧との差異が小さいので、凝固膜形成工程(S27)において形成される凝固膜が第1の昇華性物質だけでなく、混合用溶媒を含むことがある。
凝固膜の形成後は、凝固膜に含まれる固体状の第1の昇華性物質が、昇華する。これにより、昇華工程(図13BのステップS28)が実現される。昇華工程(S28)は、図11の昇華工程S18と同等の工程である。
【0159】
前述のように、凝固膜が第1の昇華性物質だけでなく混合用溶媒を含む場合には、昇華工程(S28)において、第1の昇華性物質だけでなく、混合用溶媒も気化するおそれがある。混合用溶媒を含む気体および混合用溶媒を基板Wの表面Waから完全に排除するため、昇華工程(S28)の後に、溶媒除去工程(図13BのステップS29)が実行される。溶媒除去工程(S29)は、基板Wの表面Waを加熱する加熱工程を含む。溶媒除去工程(S29)の加熱工程は、図11の加熱工程S28(図12Fも併せて参照)と同等の工程である。
【0160】
具体的には、溶媒除去工程(S29)の加熱工程において、制御装置3は、冷却流体バルブ56を閉じながら加熱流体バルブ57を開く。それにより、回転状態の基板Wの裏面Wbの中央部に、下面ノズル11から加熱流体が吐出される。基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給により基板Wの表面Waが加熱される。加熱流体は、たとえば、温水等の加熱液であるが、高温のN等の加熱気体であってもよい。
【0161】
また、溶媒除去工程(S29)の加熱工程において、制御装置3は、気体バルブ25を閉じながら加熱気体バルブ205を開く。これにより、吐出口21aから加熱気体が吐出され、遮断空間30に加熱気体が供給される。遮断空間30への加熱気体の供給によって遮断空間30が加熱される。
基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給、および遮断空間30への加熱気体の供給によって基板Wの表面Waが温められ、これにより、基板Wの表面Waに残留している混合用溶媒が蒸発(気化)されて、基板Wの表面Waから除去される。
【0162】
次いで、処理済みの基板Wが処理ユニット2外へと搬出される(図13BのS30:基板W搬出)。この基板Wの搬出は、第2の基板処理例(図11参照)のステップS20と同等の工程である。
仮に、昇華工程(S28)後の基板Wをそのまま基板収容器Cに戻すと、基板Wの表面Waに、混合用溶媒に起因するパーティクルが発生するだけでなく、収容されている他の基板を混合用溶媒によって汚染するおそれがある。
【0163】
この第3の基板処理例によれば、昇華工程(S28)に次いで実行される加熱工程(S39)によって、基板Wの表面Waから混合用溶媒を除去する。これによって、乾燥後の基板Wの表面Waにおけるパーティクルの発生を抑制または防止でき、かつ、収容されている他の基板を混合用溶媒によって汚染するおそれがない。
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0164】
たとえば、第1の実施形態において、混合昇華剤供給ユニット9から供給混合昇華剤において、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合比(含有割合比)を、重量比でたとえば1:5として説明した。しかしながら、混合後の混合昇華剤の凝固点TFMが室温未満になる範囲(図3の好適範囲PR)であれば、第1の昇華性物質と第2の昇華性物質との混合比を、他の比率にしてもよい。液膜の薄膜化の観点からは、第2の昇華性物質の含有割合が第1の昇華性物質の含有割合より多いことが望ましいが、第1の昇華性物質の含有割合が第2の昇華性物質の含有割合より多くてもよい。
【0165】
また、第1の実施形態において、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の組み合わせとして、シクロヘキサノールと、ターシャリーブタノールとの組み合わせを例に挙げて説明した。しかしながら、昇華性物質は、シクロヘキサノールと、ターシャリーブタノール、環状構造を有するフッ素系溶媒、シクロヘキサノール、シクロヘキサン、シクロオクタン、1,3,5-Trioxane、しょうのう、ナフタレン、ヨウ素等の昇華性物質の中から選ばれる2つの昇華性物質のうち、蒸気圧の低い方を第1の昇華性物質とし、蒸気圧の高い方を第2の昇華性物質とできる。
【0166】
また、第1の実施形態における第1の基板処理例、ならびに第2の実施形態の第2および第3の基板処理例において、膜厚減少工程(S6、S16、S26)を、固化膜形成工程(S7)や凝固膜形成工程(S17、S27)に先立って実行させるものとして説明したが、膜厚減少工程(S6、S16、S26)を、固化膜形成工程(S7)や凝固膜形成工程(S17、S27)に並行に(つまり、同時に)行うようにしてもよい。この場合、固化膜73の形成や凝固膜273の形成に要する時間を短縮化できる。
【0167】
また、第1の実施形態における第1の基板処理例ならびに第2の実施形態の第2および第3の基板処理例において、固化膜形成工程(S7)や凝固膜形成工程(S17、S27)の後に、膜厚減少工程(S6、S16、S26)を実行させてもよい。この場合、固体状態になる第1の昇華性物質(および第2の昇華性物質)を溶解する溶媒を固化膜73(凝固膜273)上に供給し、固化膜(凝固膜)の一部を溶解することによって薄膜化すればよい。もしくは、固化膜73(凝固膜273)の上方から固化膜73(凝固膜273)の一部をブレードなどにより掻き取るような物理的除去によって薄膜化してもよい。
【0168】
また、第1の実施形態における第1の基板処理例の固化膜形成工程(S7)において基板Wの表面Waを加熱する加熱ユニットは、加熱流体を基板Wの裏面Wbに供給する構成に限られない。図14に示すような、基板Wの裏面Wbの下方に対向配置されるホットプレート251を、加熱ユニットとして用いることもできる。ホットプレート251は、下面ノズル11の代わりに設けられている。ホットプレート251には、内蔵ヒータ252が内蔵されている。内蔵ヒータ252は、ジュール熱を発生させるヒータであり、たとえば、通電により発熱する電熱線である。ホットプレート251は、スピンベース18の上方で、かつ、挟持部材19に保持される基板Wの下方に配置される。ホットプレート251は、基板Wの裏面Wbの全域に対向する上面251aを有している。スピンチャック5が回転しても、ホットプレート251は回転しない。ホットプレート251の温度は、制御装置3によって変更される。ホットプレート251の上面251aの温度は、面内で均一である。制御装置3がホットプレート251の上面251aの温度を上昇させることにより、ホットプレート251からの輻射熱によって基板Wの表面Waの全域が均一に加熱される。
【0169】
この場合、固化膜形成工程(図6のステップS7)において、基板Wの裏面Wbに加熱流体を供給するのではなく、図14に示すように、制御装置3が、ホットプレート251の温度を室温よりも高い温度に上昇させることにより、基板Wの表面Waを加熱するようにしてもよい。また、冷却流体をホットプレート251によって室温よりも高い温度に上昇させてから基板Wに供給してもよい。さらに、加熱流体を、ホットプレート251によってさらに高い温度に上昇させてから基板Wに供給してもよい。これにより、基板Wの表面Wa上の混合昇華剤に含まれる第2の昇華性物質を良好に蒸発させることができる。
【0170】
また、基板Wの表面Waを加熱する加熱ユニットの別の態様として、図15に示すように、遮断部材10の内部にヒータを内蔵する構成を挙げることができる。
図15に示すように、内蔵ヒータ301は、遮断部材10の遮断板20の内部に配置されている。内蔵ヒータ301は、遮断部材10とともに昇降する。基板Wは、内蔵ヒータ301の下方に配置される。内蔵ヒータ301は、たとえば、通電により発熱する電熱線である。内蔵ヒータ301の温度は、制御装置3によって変更される。基板対向面20aの温度は、面内で均一である。制御装置3が基板対向面20aの温度を上昇させることにより、遮断板20からの輻射熱によって基板Wの表面Waの全域が均一に加熱される。
【0171】
固化膜形成工程(図6のステップS7)において、制御装置3が、図15に示すように、内蔵ヒータ301の温度(基板対向面20aの温度)を室温よりも高い温度に上昇させることにより、基板Wの表面Waを加熱するようにしてもよい。これにより、基板Wの表面Wa上の混合昇華剤に含まれる第2の昇華性物質を良好に蒸発させることができる。
また、第1の基板処理例の固化膜形成工程(S7)において、基板回転工程と、加熱工程と、気体吹き付け工程とが実行されるとして説明した。固化膜形成工程(S7)では、基板回転工程、加熱工程および気体吹き付け工程に、次に述べる減圧工程を加えた4つの工程のうち少なくとも一つの工程が実行されれば足りる。
【0172】
減圧工程は、次のように行われる。排気装置99(図2参照)はその排気力(吸引力)を調整可能に設けられている。排気装置99には、排気力調整ユニット(減圧ユニット)401が設けられている。排気力調整ユニット401は、たとえばレギュレータや開度調整バルブである。排気力調整ユニット401によって排気装置99の排気力を調整することにより、チャンバ4の内部の圧力が変更される。つまり、チャンバ4の内部の圧力が、制御装置3によって変更される。
【0173】
そして、固化膜形成工程(S7)において、制御装置3が、チャンバ4の内部を減圧することにより、基板Wの表面Wa上の混合昇華剤に含まれる第2の昇華性物質を良好に蒸発させることができる。
また、チャンバ4内に排気力調整ユニット(減圧ユニット)401と連通する配管が設けられていればよく、必ずしも排気装置99に設ける必要はない。
【0174】
また、基板回転工程、加熱工程、気体吹き付け工程および減圧工程の少なくとも一つに併せて、あるいはこれらの工程に代えて、自然乾燥や、基板Wの表面Wa上の混合昇華剤への超音波振動の付与により、基板Wの表面Wa上の混合昇華剤に含まれる第2の昇華性物質を蒸発させるようにしてもよい。
また、第2および第3の基板処理例の凝固膜形成工程(S17、S27)が、基板Wの表面Waを加熱する加熱工程をさらに備えていてもよい。この加熱工程は、前記気体供給工程、および/または前記基板回転工程に並行して基板Wを加熱する。この加熱工程は、第1の基板処理例の固化膜形成工程(S7)と同等の工程である。すなわち、この加熱工程は、基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給(図7Cおよび7D参照)、遮断板20からの輻射熱による基板Wの表面Waの加熱、ホットプレート251からの輻射熱による基板Wの裏面Wbの加熱の少なくとも一つを含む。
【0175】
また、第2および第3の基板処理例の凝固膜形成工程(S17、S27)として、基板回転工程、気体供給工程および加熱工程に、前述の減圧工程を加えた4つの工程のうち少なくとも一つの工程が実行されればよい。
また、第2の基板処理例の加熱工程(S19)および第3の基板処理例の溶媒除去工程(S29)の加熱工程において基板Wの表面Waを加熱する加熱ユニットは、加熱流体を基板Wの裏面Wbに供給する構成に限られない。図15の場合と同様に、遮断部材10の(遮断板20の)内部に内蔵ヒータ301を内蔵する構成であってもよい。
【0176】
第2の基板処理例の加熱工程(S19)および第3の基板処理例の溶媒除去工程(S29)の加熱工程において、図16に示すように、制御装置3は、内蔵ヒータ301を発熱させる。そして、内蔵ヒータ301は、基板対向面20aを介して輻射熱により遮断空間30を加熱し、当該遮断空間30を、第1の昇華性物質を加熱分解できる温度(加熱分解可能温度。第1の昇華性物質が樟脳である場合、約500℃)まで昇温させる(空間加熱工程)。
【0177】
第2の基板処理例の昇華工程(S18)の終了後には、遮断空間30に第1の昇華性物質から昇華する気体(以下、単に「第1の昇華気体」という場合がある)が充満しており、第1の昇華気体の分圧が高くなる。加熱工程(S19)において第1の昇華気体の分圧が高いと、第2の昇華性物質の昇華を妨げるおそれがある。
図16の例では、内蔵ヒータ301からの輻射熱を用いた遮断空間30の加熱によって、第1の昇華気体を加熱分解する。第1の昇華気体の加熱分解により、遮断空間30における第1の昇華気体の分圧を下げることができる。そのため、加熱工程(S19)において、第2の昇華性物質の昇華を妨げないばかりか、基板Wの表面Waにおける第2の昇華性物質の昇華を促進できる。
【0178】
また、基板対向面20aが高温に加熱されるので、基板対向面20aに吸着していた昇華性物質(第1の昇華性物質)を、基板対向面20aから効果的に離脱させることができる。なお、昇華性物質の離脱のためには、基板対向面20aの温度が約200℃以上であればよい。離脱した昇華性物質(第1の昇華性物質)は、チャンバ4内の気流(ダウンフロー)によって、遮断空間30外へと案内される。
【0179】
また、第2の実施形態についての説明では、図16の例において、内蔵ヒータ301による基板Wの加熱を、昇華工程(S18、S28)後の加熱工程(S19、S29)において実行するとして説明した。しかし、内蔵ヒータ301による基板Wの加熱を、加熱工程(S19、S29)だけでなく、昇華工程(S18、S28)に並行して実行してもよい(第2の加熱工程)。すなわち、昇華工程(S18、S28)に並行して、基板Wを高速で回転させる基板高回転工程(スピンオフ。図12E参照)と、基板Wの表面Waに気体を供給する気体供給工程(図12E参照)と、内蔵ヒータ301によって基板Wの表面Waを輻射熱により加熱する第2の加熱工程と、を少なくとも実行するようにしてもよい。
【0180】
この場合、制御装置3は、内蔵ヒータ301を発熱させて、基板対向面20aを介して遮断空間30を加熱し、当該遮断空間30を、第1の昇華性物質を加熱分解できる温度(たとえば約500℃)まで昇温させる。
この場合、加熱工程(S19、S29)を省略して、昇華工程(S18、S28)に並行した加熱(第2の加熱工程)のみが行われてもよい。
【0181】
第2および第3の基板処理例の昇華工程(S18、S28)中には、遮断空間30に第1の昇華気体が充満しており、第1の昇華気体の分圧が高くなる。昇華工程(S18、S28)において第1の昇華気体の分圧が高いと、第1の昇華性物質の昇華を妨げるおそれがある。
しかしながら、内蔵ヒータ301による遮断空間30の加熱によって、第1の昇華気体を加熱分解する。第1の昇華気体の加熱分解により、遮断空間30における第1の昇華気体の分圧を下げることができる。そのため、昇華工程(S18、S28)において、第1の昇華性物質の昇華を妨げないばかりか、基板Wの表面Waにおける第1の昇華性物質の昇華を促進できる。
【0182】
また、図16では、加熱工程(S19、S29)においておよび/または昇華工程(S18、S28)に並行して、遮断板20からの輻射熱によって基板Wの表面Waを加熱する例について説明したが、図14のように、ホットプレート251からの輻射熱によって基板Wを加熱するようにしてもよい。
また、第2および第3の基板処理例の加熱工程(S19、S29)は、基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給、遮断空間30への加熱気体の供給、遮断板20からの輻射熱による基板Wの表面Waの加熱、およびホットプレート251からの輻射熱による基板Wの加熱の少なくとも1つを含んでいれば足りる。
【0183】
また、基板Wの裏面Wbへの加熱流体の供給の場合、およびホットプレート251からの輻射熱による基板Wの加熱の場合には、加熱工程(S19、S29)において、基板Wの表面Waに、上面ノズル21から気体を吐出してもよい。この場合、上面ノズル21から遮断空間30に供給される気体によって、第1の昇華性物質を遮断空間30から良好に排出でき、これにより、遮断空間30における昇華気体の分圧を下げることができる。
【0184】
また、第1の基板処理例の除去工程(S8)に並行して、基板Wの表面Waを冷却する冷却ユニットは、前述の実施形態のような、冷却流体を基板Wの裏面Wbに供給する構成に限られない。図17に示すような、基板Wの裏面Wbの下方に対向配置されるクーリングプレート501を、冷却ユニットとして用いることもできる。クーリングプレート501は、下面ノズル11の代わりに設けられている。クーリングプレート501は、スピンベース18の上方で、かつ、挟持部材19に保持される基板Wの下方に配置される。クーリングプレート501は、基板Wの裏面Wbの全域に対向する上面501aを有している。スピンチャック5が回転しても、クーリングプレート501は回転しない。クーリングプレート501の温度は、制御装置3によって変更される。クーリングプレート501の上面501aの温度は、面内で均一である。制御装置3がクーリングプレート501の温度を低下させることにより、基板Wの表面Waの全域が均一に冷却される。また、クーリングプレート501を、冷却流体や加熱流体を冷却させる用途に使用してもよい。
【0185】
また、第1の基板処理例の除去工程(S8)に並行して、混合昇華剤の昇華を促進するために、基板高回転工程と、気体吹き付け工程とが実行されるとして説明したが、これら基板高回転工程および気体吹き付け工程のうち一方または両方を省略するようにしてもよい。除去工程(S8)において基板高回転工程を行わない場合には、除去工程(S8)の後に、基板Wの裏面Wbを振り切り乾燥させるため、基板Wを振り切り回転速度で回転させるようにしてもよい。一方、除去工程(S8)に並行して基板高回転工程を行う場合には、除去工程(S8)の後の基板Wの裏面Wbが乾燥しているため、除去工程(S8)の後に振り切り乾燥は不要である。
【0186】
また、除去工程(S8)に並行して基板Wの表面Waを冷却しない場合には、混合昇華剤の昇華を促進するため、除去工程(S8)に並行して、基板Wの表面Waを加熱する加熱工程を実行するようにしてもよい。
また、第2の基板処理例において、昇華工程(S18)の終了後において、第1の昇華性物質だけでなく第2の昇華性物質が、基板Wの表面Waの全域から昇華除去されている場合には、加熱工程(S19)を省略してもよい。
【0187】
また、第1~第3の基板処理例において、固化膜形成工程(S7)や凝固膜形成工程(S17、S27)に並行して基板Wを冷却するようにしてもよい。このような基板Wの冷却として、除去工程(S8)と並行して実行される基板冷却工程と同様の手法が作用されていてもよい。具体的には、このような手法として、基板Wの裏面Wbに冷却流体を供給する手法や、クーリングプレート501(図17参照)を基板Wの裏面Wbに近接配置する手法等を例示できる。
【0188】
また、第1~第3の基板処理例において、リンス液供給工程(図6のS3、図11のS13、図13BのS23)と混合昇華剤供給工程(図6のS5、図11のS15、図13BのS25)との間に置換工程(図6のS4、図11のS14、図13BのS24)を実行している。しかしながら、混合昇華剤がリンス液(すなわち、水)に対して混和性を有している場合には、置換工程(S4、S14、S24)を省略してもよい。この場合には、処理ユニット2の置換用溶媒供給ユニット8の構成を廃止してもよい。
【0189】
また、第1の基板処理例の固化膜形成工程(S7)および除去工程(S8)ならびに、第2の基板処理例の凝固膜形成工程(S17)および昇華工程(S18)において、遮断板20が、基板Wの裏面Wbに供給された流体(とくに液体)が、基板Wの表面Waに回り込むのを防止するために機能している。しかしながら、基板Wの裏面Wbに加熱流体や冷却流体を供給しない場合には、遮断板20を省略することも可能である。
【0190】
また、第1の実施形態において、混合昇華剤供給ユニット9から供給される混合昇華剤に、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質に加え、混合用溶媒(溶媒)が添加されていてもよい。
この混合用溶媒は、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の双方(少なくとも一方)に対して可溶性を有している。さらに、この混合用溶媒は、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の双方よりも高い蒸気圧を有している。混合用溶媒の具体例は、たとえばIPA(isopropyl alcohol)に代表される有機溶媒である。このような有機溶媒として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノールを例示できる。このような混合用溶媒(有機溶媒)は、水よりも低い表面張力を有している。
【0191】
この場合には、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の少なくとも一方が混合用溶媒に溶け込む。より具体的には、第1の昇華性物質に含まれる有機異物、および第2の昇華性物質に含まれる有機異物の少なくとも一方が、混合用溶媒に溶け込む。混合用溶媒が有する表面張力が、第1の昇華性物質および第2の昇華性物質が有する表面張力よりも低い場合には、基板Wの表面Waに存在する混合昇華剤の表面張力を低くできる。それにより、基板Wの表面Waに形成される混合昇華剤の液膜(薄膜72)の膜厚をより一層低く抑えることが可能である。これにより、固化膜形成工程(S7)の開始直前における液膜(薄膜72)の膜厚をさらに薄くすることが可能である。固化膜形成工程(S7)の開始直前における液膜(薄膜72)の膜厚をさらに薄くすることで、固化膜73の膜厚をさらに薄く調整できる。これにより、除去工程(S8)後における残渣の発生を抑制できる。
【0192】
また、混合用溶媒が添加されることにより、混合昇華剤の粘度を調整することもできる。
また、第1の実施形態において混合昇華剤が混合用溶媒を含む場合、および第2の実施形態において、混合昇華剤供給源において第1の昇華性物質、第2の昇華性物質および混合用溶媒を事前に混合することにより、混合昇華剤が調整されている。そして、混合昇華剤供給源において調整された混合昇華剤が、混合昇華剤配管49に供給される。しかしながら、混合昇華剤配管49において、第1の昇華性物質、第2の昇華性物質および混合用溶媒が混合されていてもよい。具体的には、第1の昇華性物質と混合用溶媒との混合液を供給する第1の供給配管と、第2の昇華性物質を供給する第2の供給配管とが、混合昇華剤配管49の上流側に接続されている。この場合、第1の供給配管からの混合液(第1の昇華性物質と混合用溶媒との混合液)と、第2の供給配管からの第2の昇華性物質とが、混合昇華剤配管49を流れる過程において混合される。
【0193】
また、第1および第2の実施形態において、混合用溶媒が添加された混合昇華剤における第1の昇華性物質および第2の昇華性物質の少なくとも一方が、粉末等の固形から生成されていてもよい。この場合、混合昇華剤供給ユニット9は、粉末である第1の昇華性物質を貯留する貯留タンクや、粉末である第2の昇華性物質を貯留する貯留タンクを設けていてもよい。また、粉末である第1および/または第2の昇華性物質を溶剤で溶かすためのタンクをさらに設けていてもよい。この溶媒の供給源が、置換用溶媒供給ユニット8と同一の供給源であってもよい。
【0194】
また、混合昇華剤供給ユニット9から供給される混合昇華剤の凝固点TFMが室温未満ではなく室温以上であってもよい。この場合には、混合昇華剤供給ユニット9の内部で、混合昇華剤を液体状に維持するための装置(温調装置)等が必要になる。しかしながら、混合昇華剤の凝固点TFMが凝固点降下によって第1の昇華性物質の凝固点TF1よりも低く下がっているので、混合昇華剤を液体状に維持しておくための熱量の低減を図ることができる。
【0195】
また、図18に示すように、固化膜73を液体状態を経ずに気体に変化させる除去工程(S8)が、昇華工程ではなく、基板Wにプラズマを照射するプラズマ照射工程であってもよい。すなわち、除去工程では、酸素ラジカル等による分解や、化学反応により液体を経ずに気体に変化させてもよい。さらに、プラズマ照射工程などの除去工程が、別の処理ユニットで行われてもよい。
【0196】
図18は、ウェット処理ユニット2Wから固化膜73を液体状態を経ずに気体に変化させるドライ処理ユニット2Dへの基板Wの搬送について説明するための模式図である。図18において、前述の第1の実施形態の構成(図1図10に示された構成)と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
処理ユニット2は、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニット2Wに加えて、基板Wに処理液を供給せずに基板Wを処理するドライ処理ユニット2Dを含む。図18は、ドライ処理ユニット2Dが、チャンバ(第2のチャンバ)4D内に処理ガスを案内する処理ガス配管601と、チャンバ4D内の処理ガスをプラズマに変化させるプラズマ発生装置602とを含む例を示している。プラズマ発生装置602は、基板Wの上方に配置される上電極603と、基板Wの下方に配置される下電極604とを含む。
【0197】
図6に示す基板Wの搬入(図6のステップS1)から除去工程(図4のステップS10)までの工程は、ウェット処理ユニット2Wのチャンバ(第1のチャンバ)4内で行われる。その後、図18に示すように、基板Wは、基板搬送ロボット(基板搬送ユニット)CRによって、ウェット処理ユニット2Wのチャンバ4から搬出され、ドライ処理ユニット2Dのチャンバ4Dに搬入される。基板Wの表面Waに残った固化膜73は、チャンバ4D内のプラズマに起因する化学反応および物理反応により液体を経ずに気体に変化する。これにより、基板Wから固化膜73が除去される。図18の例では、固化膜73の形成と固化膜73の除去とをそれぞれチャンバ4およびチャンバ4Dで行うので、チャンバ4およびチャンバ4D内の構造を簡素化でき、チャンバ4およびチャンバ4Dを小型化できる。
【0198】
また、図19に示すように、処理ユニット2とは別の溶媒除去ユニット2Rにおいて、溶媒除去工程(S29)の加熱工程を実行してもよい。さらに、溶媒除去ユニット2Rにおいて、溶媒除去工程(S29)として減圧工程を実行してもよい。
溶媒除去ユニット2Rは、チャンバ701と、加熱減圧ユニット702とを含む。チャンバ701は、箱状の隔壁703を有している。
【0199】
加熱減圧ユニット702は、基板Wを水平に支持しながら加熱するホットプレート704と、ホットプレート704に支持されている基板Wの上方に配置されるフード705と、ホットプレート704に対してフード705を昇降させる昇降ユニット706とを含む。フード705は、たとえば円板状の板状部705aと、板状部705aの周囲から垂下する垂下部705bとを含む。昇降ユニット(図示しない)によってフード705を最も下方位置に下げた状態(図19に破線で示す状態)では、垂下部705bの下端の全周がホットプレート704と当接する。この状態において、フード705の内側の空間707が、フード705の外側の空間と遮断され、密閉の空間になる。
【0200】
加熱減圧ユニット702は、空間707を減圧する減圧ユニット708をさらに含む。減圧ユニットは、たとえば板状部705aの下面に接続され、空間707に連通する連通配管708aと、空間707の内部の雰囲気を吸引して、空間707を減圧する吸引ユニット708bとを含む。吸引ユニット708bは、ポンプや真空発生等を含む。
ホットプレート704は、ジュール熱を発生するヒータ704aと、基板Wを水平に支持すると共に、ヒータ704aの熱を基板Wに伝達する支持部材704bとを含む。ヒータ704aおよび支持部材704bは、基板Wの下方に配置される。
【0201】
図13Bに示す基板Wの搬入(図13BのステップS21)から昇華工程(図13BのステップS28)までの工程は、処理ユニット2のチャンバ4内で行われる。その後、図19に示すように、基板Wは、基板搬送ロボットCRによって、処理ユニット2のチャンバ4から搬出され、溶媒除去ユニット2Rのチャンバ701に搬入される。搬入された基板Wは、ホットプレート704の上面上に配置される。昇華工程(S28)後に基板Wの表面Waに残った混合用溶媒を含む気体および混合用溶媒は、チャンバ701内における加熱および減圧により蒸発して気化する。これにより、混合用溶媒を含む気体および混合用溶媒を、基板Wの表面Waから完全に排除できる。図19の例では、凝固膜273の形成と混合用溶剤の除去とを、それぞれチャンバ4およびチャンバ701で行うので、チャンバ4およびチャンバ701内の構造を簡素化でき、チャンバ4およびチャンバ701を小型化できる。
【0202】
また、前述の第1および第2の実施形態において、基板処理装置1、201が半導体ウエハからなる基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置が、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理する装置であってもよい。
【0203】
<第2の実施形態の実施例>
<実施例組成物1の調製例>
第1の昇華性物質としてDABCOを、第2の昇華性物質として1,4-ベンゾキノンを、それぞれ10質量%になるように、容器に収容されている、混合用溶媒としてのIPAに添加する。容器に蓋をして一晩攪拌し、溶液を得る。昇華性物質が溶解していることが目視で確認できる。溶液をポアサイズ0.1μmのフィルターでろ過することにより、実施例の混合昇華剤である組成物1を得る。
【0204】
<実施例組成物2~19の調製例、比較例組成物1~8の調製例>
表1に記載のように、第1および第2昇華性物質ならびに混合用溶媒の種類、量またはを変更した以外は、調製例1と同様にして、混合昇華剤である、実施例組成物2~19および比較例組成物1~8を得る。実施例組成物2~19の調製例、および比較例組成物1~8のそれぞれについて、攪拌後に昇華性物質が溶解していることが目視で確認できる。
【0205】
<昇華性の評価>
コータ・デベロッパRF3(SOKUDO)に300mmベアシリコンウェハを投入する。コーターカップに移動したウェハ上に各混合昇華剤を10cc滴下し、1500rpm・20秒間スピンコートする。その後コーターカップ内で静置し、120秒間を上限として目視で観察する。コーターカップ内の気温は約21~23℃である。
【0206】
各サンプルの昇華性を以下の評価基準で評価する。結果を表1および表2に記載する。
A:混合昇華剤中の固形成分による膜が形成されているが、120秒以内に膜が気化して消失することを確認する。
B:混合昇華剤中の固形成分による膜が形成されているが、120秒経過後も膜が消失しないことを確認する。
Bと評価されるサンプルウェハについて、さらにホットプレートで加熱(100℃90秒間)し目視で観察する。昇華性を以下の基準で評価する。
B1:加熱後に膜が消失することを確認する。
B2:加熱後に膜が消失せず、残ることを確認する。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
前記表1および表2中括弧内の数字は、混合昇華剤全体を基準とした昇華性物質の質量%を意味する。
以降、混合昇華剤を、昇華性がAと評価されたもの(A群)と、B(B1,B2)と評価されたもの(B群)に分け、評価を行った。
【0210】
<(A群)残膜の評価>
前記の昇華性を評価した後のサンプルを用いる。
M-2000エリプソメーター(J.A Woollam)でウェハ上の膜厚を測定する。エリプソメーター測定において、本試験由来の残膜と自然酸化膜が重なった2層モデルを立てて、残膜膜厚のみを算出する。
各サンプルの残膜を以下の評価基準で評価する。結果を表2に記載する。
A:残膜膜厚が1nm未満である。
B:残膜膜厚が1nm以上である。または、また、結晶粒により測定光が散乱し残膜膜厚が測定できない。
【0211】
<(A群)倒壊率の評価>
ピラーパターンがパターニングされた300mmシリコンウエハ(Interuniversity Microelectronics Centre(imec)より提供)を用いる。ピラー(円柱)は、頂部の直径が約31nm、底部の直径が約67nm、高さ約590nmであり、ピッチ80nmのピラーパターンがウェハ全面に形成されている。
【0212】
各混合昇華剤を、を評価するために、前記のウェハを約5cm角にカットする。カットしたウェハをMS-A150スピンコータ(ミカサ)にセットする。ウェハに各混合昇華剤を、を2cc滴下し、1,000rpm20秒でスピンコートする。即座にウェハを取り出し、クリーンルーム内の実験机の上に、約120秒間静置する。クリーンルームの気温は常温(約23℃)で制御されている。
【0213】
前記の処理の後、各ウェハを上面からSEM(SU8200、日立ハイテクノロジーズ)で観察する。ピラーパターンが倒壊している部分の面積を、観察した全面積で割ることで倒壊率を算出する。結果を表2に記載する。
A:倒壊率が5%未満である。
B:倒壊率が5%以上である。
<(A群)総合判定>
残膜と倒壊率が共にAのものを好適とする。それ以外を不適とする。結果を表3に記載する。
【0214】
【表3】
【0215】
前記表中括弧内の数字は、混合昇華剤全体を基準とした昇華性物質の質量%を意味する。
<(B群)昇華による残膜の評価>
前記の昇華性を評価した後のサンプルを用いる。測定方法、評価基準は前記の(A群)残膜の評価と同様である。結果を表3に記載する。
【0216】
<(B群)昇華による倒壊率の評価>
前記の(A群)倒壊率の評価で使用した、ピラーパターンがパターニングされた300mmシリコンウエハ(imec)を用いる。
各混合昇華剤を評価するために、前記のウェハを約5cm角にカットする。カットしたウェハをMS-A150スピンコータにセットする。ウェハに各混合昇華剤を、を2cc滴下し、1000rpm20秒でスピンコートする。即座にウェハを取り出し、ウェハをホットプレートで100℃90秒間加熱する。この処理の後の、測定方法、評価基準は前記の倒壊率の評価と同様である。結果を表4に記載する。
<(B群)総合判定>
残膜と倒壊率が共にAのものを好適とする。それ以外を不適とする。結果を表4に記載する。
【0217】
【表4】
【0218】
前記表中かっこ内の数字は、混合昇華剤を、全体を基準とした昇華性物質の質量%を意味する。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0219】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
4 :チャンバ(第1のチャンバ)
4D :チャンバ(第2のチャンバ)
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
6 :薬液供給ユニット(処理液供給ユニット)
7 :リンス液供給ユニット(処理液供給ユニット)
8 :置換用溶媒供給ユニット(処理液供給ユニット)
9 :混合昇華剤供給ユニット(混合乾燥補助物質供給ユニット)
11 :下面ノズル(加熱ユニット、冷却ユニット)
16 :スピンモータ(回転ユニット、蒸発ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)
21 :上面ノズル(気体吹き付けユニット、蒸発ユニット、気体供給ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)
24 :気体配管(気体吹き付けユニット、蒸発ユニット、気体供給ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)
25 :気体バルブ(気体吹き付けユニット、蒸発ユニット、気体供給ユニット、凝固膜形成ユニット、昇華ユニット)
30 :遮断空間
52 :冷却流体配管(冷却ユニット)
53 :加熱流体配管(加熱ユニット、蒸発ユニット)
56 :冷却流体バルブ(冷却ユニット)
57 :加熱流体バルブ(加熱ユニット、蒸発ユニット)
71 :液膜
73 :固化膜
201 :基板処理装置
202 :処理ユニット
204 :加熱気体配管(加熱ユニット)
205 :加熱気体バルブ(加熱ユニット)
251 :ホットプレート(加熱ユニット)
271 :液膜
273 :凝固膜
301 :内蔵ヒータ(加熱ユニット)
401 :排気力調整ユニット(減圧ユニット)
501 :クーリングプレート(冷却ユニット)
A1 :回転軸線
F1 :第1の昇華性物質の凝固点
F2 :第2の昇華性物質の凝固点
FM :混合昇華剤の凝固点
PF1 :第1の昇華性物質の凝固点
PFM :混合昇華剤の凝固点
W :基板
Wa :表面
Wb :裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-7C】
図7D-7F】
図8
図9
図10
図11
図12A-12C】
図12D-12F】
図12G
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19