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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】伝動ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/06 20060101AFI20241111BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241111BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241111BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241111BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F16G1/06
C08K3/36
C08L23/26
C08L23/16
C08F8/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023138916
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2019059622の分割
【原出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2023160863
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 莉恵
(72)【発明者】
【氏名】松田 尚
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070895(JP,A)
【文献】特開2017-106617(JP,A)
【文献】特開2003-192855(JP,A)
【文献】特開2008-056715(JP,A)
【文献】特開2002-364630(JP,A)
【文献】特開2005-248108(JP,A)
【文献】特開2004-307576(JP,A)
【文献】特開2017-206604(JP,A)
【文献】特開2004-231933(JP,A)
【文献】特開平01-108239(JP,A)
【文献】特開平01-108248(JP,A)
【文献】特開平08-311350(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021096(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198538(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/065299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/06
C08K 3/36
C08L 23/26
C08L 23/16
C08F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ゴム組成物でプーリ接触面が形成された伝動ベルトであって、
前記架橋ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーのカルボン酸変性物を主体とするゴム成分と、湿式シリカと、を含有し、
前記湿式シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上80質量部以下であり、
前記架橋ゴム組成物の歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)の歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃))が0.8以上3.5以下である伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーが、エチレン・プロピレン共重合体を含む伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーが、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体を含む伝動ベルト。
【請求項4】
請求項3に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体における非共役ジエン成分がエチリデンノボルネンであり、且つその非共役ジエン含量が1.9質量%以上7.4質量%以下である伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーのエチレン含量が40質量%以上70質量%以下である伝動ベルト。
【請求項6】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーのα-オレフィン含量が30質量%以上60質量%以下である伝動ベルト。
【請求項7】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーにおけるエチレン含量のα-オレフィン含量に対する比が0.60以上2.4以下である伝動ベルト。
【請求項8】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記カルボン酸変性物が、無水マレイン酸変性物を含む伝動ベルト。
【請求項9】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記ゴム成分が、架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋している伝動ベルト。
【請求項10】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記湿式シリカが、沈降法シリカを含む伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品に用いられる架橋ゴム組成物として、カルボン酸変性されたエチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分とするものが知られている。例えば、特許文献1には、エチレン含量が10~60モル%であり且つカルボン酸で変性されたエチレン・プロピレン共重合体をゴム成分とする架橋ゴム組成物が開示されている。特許文献2には、エチレン含量が40~99モル%であり且つ不飽和カルボン酸で変性されたエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体をゴム成分とする架橋ゴム組成物が開示されている。特許文献3には、エチレン:プロピレンのモル比=30:70である無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体をゴム成分とする架橋ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5049422号公報
【文献】国際公開第2009/123228号
【文献】特開2010-202784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐摩耗性が優れる架橋ゴム組成物を用いた伝動ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、架橋ゴム組成物でプーリ接触面が形成された伝動ベルトであって、前記架橋ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーのカルボン酸変性物を主体とするゴム成分と、湿式シリカとを含有し、前記湿式シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上80質量部以下であり、前記架橋ゴム組成物の歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)の歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃))が0.8以上3.5以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エチレン-α-オレフィンエラストマーのカルボン酸変性物を主体とするゴム成分とシリカとを含有することにより、優れた耐摩耗性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1~3及び比較例1~3のDIN摩耗試験の摩耗体積を示すグラフである。
図2A】実施例1~4及び比較例1~4の25℃での100%伸び時における引張応力M100を示すグラフである。
図2B】実施例1~4及び比較例1~4の25℃での引張強さTBを示すグラフである。
図3A】実施例1~4及び比較例1~4の歪量10%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)を示すグラフである。
図3B】実施例1~4及び比較例1~4の歪量10%及び100℃での損失係数tanδ(10%,100℃)を示すグラフである。
図4】実施例1~4及び比較例1~4の歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)の歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃)を示すグラフである。
図5】実施例1~4及び比較例1~4の硬さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(以下「ベースエラストマー」という。)のカルボン酸変性物(以下「エラストマーA」という。)を主体とするゴム成分と、シリカとを含有する。実施形態に係る架橋ゴム組成物によれば、優れた耐摩耗性を得ることができる。これは、ゴム成分の主体がベースエラストマーのカルボン酸変性物のエラストマーAであることにより、シリカの高い分散性が得られ、シリカにより均質に補強されるためであると推測される。
【0010】
ここで、ゴム成分は、エラストマーAを主体として含むので、その含有量が50質量%よりも多い。ゴム成分におけるエラストマーAの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、エラストマーA以外のエチレン-α-オレフィンエラストマーを含んでいてもよく、また、その他のクロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)等を含んでいてもよい。
【0011】
カルボン酸変性前のベースエラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(以下「EPM」という。)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(以下「EPDM」という。)、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等が挙げられる。ベースエラストマーは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐摩耗性を得る観点から、EPR及びEPDMのうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、EPDMを含むことが更に好ましい。
【0012】
ベースエラストマーにおけるエチレン含量は、優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは40質量%以上70質量%以下、より好ましくは50質量%以上60質量%以下、更に好ましくは52質量%以上57質量%以下である。ベースエラストマーにおけるα-オレフィン含量は、優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは30質量%以上60質量%以下、より好ましくは35質量%以上55質量%以下である。ベースエラストマーにおけるエチレン含量のα-オレフィン含量に対する比(エチレン含量/α-オレフィン含量)は、優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは0.60以上2.4以下、より好ましくは1.0以上1.5以下である。
【0013】
ベースエラストマーがEPDMを含む場合、その非共役ジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。非共役ジエン成分は、優れた耐摩耗性を得る観点から、これらのうちのエチリデンノボルネン(ENB)が好ましい。この場合、ベースエラストマーの非共役ジエン含量は、優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは1.9質量%以上7.4質量%以下、より好ましくは4.5質量%以上5.5質量%以下である。
【0014】
エラストマーAのカルボン酸変性物としては、例えば、無水マレイン酸変性物、マレイン酸変性物、無水イタコン酸変性物、イタコン酸変性物、フマル酸変性物、メタクリル酸変性物、アクリル酸変性物等が挙げられる。エラストマーAのカルボン酸変性物は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐摩耗性を得る観点から、無水マレイン酸変性物を含むことがより好ましい。
【0015】
エラストマーAは、ベースエラストマー、カルボン酸、及び反応開始剤を、ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉型混練機に投入し、反応開始剤が分解する所定の温度下で所定時間混練してベースエラストマーにカルボン酸をグラフト反応させることにより得ることができる。また、エラストマーAは、紫外線照射等の変性手段によっても得ることができる。
【0016】
ゴム成分は、分子間が架橋しているが、架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋していてもよく、また、架橋剤として硫黄が用いられて架橋していてもよく、さらに、それらが併用されて架橋していてもよい。また、ゴム成分は、電子線等が用いられて架橋していてもよい。ゴム成分は、優れた耐摩耗性を得る観点から、これらのうち架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋していることが好ましい。この場合、架橋前の未架橋ゴム組成物における有機過酸化物の配合量は、優れた耐摩耗性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上4.0質量部以下である。
【0017】
シリカとしては、例えば、沈降法シリカやゲル法シリカなどの湿式シリカ;焼成法シリカやアーク法シリカなどの乾式シリカ等の合成シリカが挙げられる。シリカは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐摩耗性を得る観点から、沈降法シリカを含むことがより好ましい。ISO9277に基づいて測定されるシリカのBET比表面積は、例えば150m/g以上200m/g以下である。シリカの一次粒子径は、例えば10nm以上50nm以下であり、シリカの凝集体の二次粒子径は、例えば1μm以上40μm以下である。実施形態に係る架橋ゴム組成物におけるシリカの含有量は、優れた耐摩耗性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上80質量部以下、より好ましくは20質量部以上60質量部以下、更に好ましくは30質量部以上50質量部以下である。
【0018】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、その他に、ゴム配合剤として、加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、可塑剤、老化防止剤等を含有していてもよい。
【0019】
実施形態に係る架橋ゴム組成物のJISK6264-2に基づくDIN摩耗試験により測定される摩耗量は、好ましくは300mm以下、より好ましくは200mm以下である。
【0020】
実施形態に係る架橋ゴム組成物の25℃での100%伸び時における引張応力M100は、好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上である。実施形態に係る架橋ゴム組成物の25℃での引張強さTBは、好ましくは3.00MPa以上、より好ましくは10.0以上である。これらの25℃での100%伸び時における引張応力M100及び引張強さTBは、JIS K6251:2010に基づいて測定されるものである。
【0021】
実施形態に係る架橋ゴム組成物の歪量10%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)は、好ましくは1.0MPa以上5.0MPa以下、より好ましくは2.0MPa以上4.0MPa以下である。実施形態に係る架橋ゴム組成物の歪量10%及び100℃での損失係数tanδ(10%,100℃)は、好ましくは0.030以上0.16以下、より好ましくは0.070以上0.13以下である。実施形態に係る架橋ゴム組成物の歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)の歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃))は、充填材の分散性を評価するための貯蔵弾性係数G’の歪み依存性、すなわち、いわゆるペイン効果の指標であって、1.0に近い程充填材の分散性が優れるということになるが、好ましくは0.8以上3.5以下、より好ましくは0.8以上2.0以下である。これらの貯蔵弾性係数G’及び損失係数tanδは、JIS K6394:2007に基づいて測定されるものである。
【0022】
実施形態に係る架橋ゴム組成物のJIS K6253-3:2012に基づいて、タイプAデュロメータにより測定される硬さは、好ましくは50以上90以下、より好ましくは53以上85以下である。
【0023】
以上の実施形態に係る架橋ゴム組成物は、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練機を用い、ゴム成分及びシリカ、並びにその他のゴム配合剤を混練して未架橋ゴム組成物を調製し、その未架橋ゴム組成物を所定温度及び所定圧力で架橋させることにより得ることができる。
【0024】
また、実施形態に係る架橋ゴム組成物は、優れた耐摩耗性を有することから、ゴム製品の摺動部分を形成するのに好適であり、具体的には、例えば伝動ベルトのプーリ接触面を形成するのに適している。
【実施例
【0025】
(架橋ゴム組成物)
以下の実施例1~4及び比較例1~4のシート状の架橋ゴム組成物を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0026】
<実施例1>
密閉型混練機に、EPDM(Nordel IP 4640 Dow Chemical社製 エチレン含量:55質量%、プロピレン含量:40質量%、非共役ジエン含量(ENB含量):4.9質量%、エチレン含量/プロピレン含量=1.4、エチレン含量/非共役ジエン含量(ENB含量)=11)とともに、このEPDM100質量部に対して、1質量部の無水マレイン酸及び0.1質量部の反応開始剤の有機過酸化物(パークミルD 日本油脂社製、ジクミルパーオキサイド)を投入し、それらを170℃の温度下で10分間混練して無水マレイン酸変性EPDMを調製した。次いで、この無水マレイン酸変性EPDMをゴム成分とし、これに、ゴム成分100質量部に対して、5質量部の充填材としての沈降法シリカ(ウルトラジルVN3 エボニック社製)、0.5質量部の加工助剤のステアリン酸(ステアリン酸S50 新日本理化社製)、5質量部の加硫促進助剤の酸化亜鉛(酸化亜鉛3種 白水化学社製)、及び3.2質量部の架橋剤の有機過酸化物(パークミルD 日本油脂社製、ジクミルパーオキサイド)を配合して混練することにより未架橋ゴム組成物を調製した。そして、この未架橋ゴム組成物から所定形状の試験用の架橋ゴム組成物を得た。得られた試験用の架橋ゴム組成物を実施例1とした。
【0027】
<実施例2>
沈降法シリカの配合量を、ゴム成分100質量部に対して40質量部としたことを除いて実施例1と同様にして得た試験用の架橋ゴム組成物を実施例2とした。
【0028】
<実施例3>
沈降法シリカの配合量を、ゴム成分100質量部に対して70質量部としたことを除いて実施例1と同様にして得た試験用の架橋ゴム組成物を実施例3とした。
【0029】
<実施例4>
EPDMに代えて、EPM(EP11 JSR社製 エチレン含量:52質量%、プロピレン含量:48質量%、エチレン含量/プロピレン含量=1.1)を無水マレイン酸変性して用いたことを除いて実施例1と同様にして得た試験用の架橋ゴム組成物を実施例4とした。
【0030】
<比較例1~4>
無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMに代えて、酸変性していないEPDM又はEPMを用いたことを除いて、実施例1~4と同様にして得た試験用の架橋ゴム組成物をそれぞれ比較例1~4とした。
【0031】
【表1】
【0032】
(試験方法)
<耐摩耗性>
実施例1~4及び比較例1~4のそれぞれについて、JIS K6264-2:2005に基づいてDIN摩耗試験を行って摩耗体積を測定した。
【0033】
<引張特性>
実施例1~4及び比較例1~4のそれぞれについて、JIS K6251:2010に基づいて、25℃での100%伸び時における引張応力M100及び引張強さTBを測定した。
【0034】
<動的粘弾性>
実施例1~4及び比較例1~4のそれぞれについて、JIS K6394:2007に基づいて、歪量10%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)及び損失係数tanδ(10%,100℃)を測定した。
【0035】
また、歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)並びに歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)を測定し、前者の後者に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃)を算出した。
【0036】
<硬さ>
実施例1~4及び比較例1~4のそれぞれについて、JIS K6253-3:2012に基づいて、タイプAデュロメータにより硬さを測定した。
【0037】
(試験結果)
表2は、試験結果を示す。図1は、実施例1~4及び比較例1~4のDIN摩耗試験の摩耗体積を示す。図2Aは、実施例1~4及び比較例1~4の25℃での100%伸び時における引張応力M100を示す。図2Bは、実施例1~4及び比較例1~4の25℃での引張強さTBを示す。図3Aは、実施例1~4及び比較例1~4の歪量10%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)を示す。図3Bは、実施例1~4及び比較例1~4の歪量10%及び100℃での損失係数tanδ(10%,100℃)を示す。図4は、実施例1~4及び比較例1~4の歪量1%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(1%,100℃)の歪量30%及び100℃での貯蔵弾性係数G’(30%,100℃)に対する比(G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃)を示す。図5は、実施例1~4及び比較例1~4の硬さを示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2及び図1によれば、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1~4は、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分としたそれぞれ対応する比較例1~4よりも、摩耗体積が少なく、したがって、耐摩耗性が優れることが分かる。
【0040】
表2及び図2Aによれば、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1~4は、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分としたそれぞれ対応する比較例1~4よりも、引張応力M100が高いことが分かる。また、EPDMをゴム成分とした実施例1~3と比較例1~3とを比較すると、沈降法シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して40質量部以上であると、EPDMの無水マレイン酸変性の有無による引張応力M100の差が非常に大きいことが分かる。
【0041】
表2及び図2Bによれば、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1~4は、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分としたそれぞれ対応する比較例1~4よりも、引張強さTBが高いことが分かる。
【0042】
表2及び図3Aによれば、沈降法シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して40質量部以下である実施例1、2、及び4と、それぞれ対応する比較例1、2、及び4とを比較すると、EPDM又はEPMの無水マレイン酸変性の有無による貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)の差がほとんど認められないことが分かる。また、沈降法シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して70質量部である実施例3と比較例3とを比較すると、無水マレイン酸変性したEPDMをゴム成分とした実施例3は、無水マレイン酸変性していないEPDMをゴム成分とした比較例3よりも、貯蔵弾性係数G’(10%,100℃)が低いことが分かる。
【0043】
表2及び図3Bによれば、沈降法シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して40質量部以下である実施例1、2、及び4と、それぞれ対応する比較例1、2、及び4とを比較すると、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1、2、及び4は、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分とした比較例1、2、及び4よりも、損失係数tanδ(10%,100℃)が低く、したがって、動的使用による発熱が小さいことが分かる。また、沈降法シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して70質量部である実施例3と比較例3とを比較すると、無水マレイン酸変性したEPDMをゴム成分とした実施例3は、無水マレイン酸変性していないEPDMをゴム成分とした比較例3よりも、損失係数tanδ(10%,100℃)が高いことが分かる。これらのことから、動的使用による発熱を抑制する観点からは、沈降法シリカの含有量は、酸変性したゴム成分100質量部に対して70質量部よりも少ないことが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
表2及び図4によれば、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1~4は、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分としたそれぞれ対応する比較例1~4よりも、G’(1%,100℃)/G’(30%,100℃)が1.0に近く、したがって、充填材である沈降法シリカの分散性が優れることが分かる。
【0045】
表2及び図5によれば、無水マレイン酸変性したEPDM又はEPMをゴム成分とした実施例1~4と、無水マレイン酸変性していないEPDM又はEPMをゴム成分としたそれぞれ対応する比較例1~4とを比較すると、硬さの差がほとんど認められないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、伝動ベルトの技術分野について有用である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5