(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 36/45 20060101AFI20241111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241111BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20241111BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241111BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241111BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20241111BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
A61K36/45
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K36/185
A61Q19/02
A61K8/9789
A23L33/105
A61K131:00
A61K133:00
(21)【出願番号】P 2023193950
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100219988
【氏名又は名称】中島 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】内山 太郎
【審査官】星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531816(JP,A)
【文献】特開2006-282598(JP,A)
【文献】特開2013-165695(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134837(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/005514(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/173010(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/058339(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0032857(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105233161(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109329727(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106616137(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104435078(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104523490(CN,A)
【文献】ルイボス美巡茶, ID:3724997,Mintel GNPD [online],2016年1月,[検索日:2024年6月17日],<URL:http://www.gnpd.com>
【文献】Ice Tea Berry Power, ID:930970,Mintel GNPD [online],2008年6月,[検索日:2024年6月17日],<URL:http://www.gnpd.com>
【文献】All Kill Ob-X Lemon Balm Diet Supplement, ID:6531151,Mintel GNPD [online],2019年5月,[検索日:2024年6月17日],<URL:http://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴンベリー
の果実またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末を含んでなる、メラニンの産生を抑制するための組成物であって、ハイビスカス
の花またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末と組み合わせて使用するための
組成物であり、かつリンゴンベリーの果実、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCA、ハイビスカスの花、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、組成物。
【請求項2】
ハイビスカス
の花またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末を含んでなる、メラニンの産生を抑制するための組成物であって、リンゴンベリー
の果実またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末と組み合わせて使用するための
組成物であり、かつリンゴンベリーの果実、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCA、ハイビスカスの花、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、組成物。
【請求項3】
リンゴンベリー
の果実またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末およびハイビスカス
の花またはその抽出物またはそれらの乾燥粉末を含んでなる、メラニンの産生を抑制するための
組成物であって、リンゴンベリーの果実、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCA、ハイビスカスの花、その抽出物、およびそれらの乾燥粉末の乾燥重量の合計をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、組成物。
【請求項4】
肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための
、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物
。
【請求項5】
経口用組成物である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、メラニンとは、チロシンから生合成されるフェノール類の酵素的および非酵素的酸化、脱炭酸、カップリング反応によって生合成された褐色ないし黒色の色素を指し、体表をはじめ動植物中に広く分布し、過剰の光を吸収する役割を果たしていると考えられている。
【0003】
一方、シミやそばかす等の皮膚の色素沈着は、メラニン細胞から産生されたメラニンが沈着することにより生じる。すなわち、メラニンが過剰に産生されると、シミやそばかすなどの色素沈着を誘発する。このような皮膚の色素沈着を予防又は改善して皮膚の美白を実現する方策として、メラニンの産生を抑制することが有効であると考えられている。
【0004】
これまでに、メラニン産生抑制作用を有する成分として、各種天然由来の成分、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸等が報告されており、その一部のものについては、化粧料、食品、医薬品等の各種製品に配合され実用化されている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、渦鞭毛藻抽出物を含有する、メラニン産生抑制剤が開示されている。
【0006】
このように、メラニン産生抑制作用を有する成分として様々なものが見出されているが、その効果は必ずしも十分ではなく、メラニン産生抑制効果の優れた成分や製品の開発が現在でも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせにより、メラニンの産生が効果的に抑制されることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0009】
よって、本発明は、メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせを提供する。
【0010】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)リンゴンベリーを含んでなる、メラニンの産生を抑制するための組成物であって、ハイビスカスと組み合わせて使用するための、組成物。
(2)ハイビスカスを含んでなる、メラニンの産生を抑制するための組成物であって、リンゴンベリーと組み合わせて使用するための、組成物。
(3)リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる、メラニンの産生を抑制するための組成物。
(4)リンゴンベリーを含んでなる、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための組成物であって、ハイビスカスと組み合わせて使用するための、組成物。
(5)ハイビスカスを含んでなる、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための組成物であって、リンゴンベリーと組み合わせて使用するための、組成物。
(6)リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための組成物。
(7)リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)経口用組成物である、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)メラニンの産生の抑制を目的とする薬剤の製造のための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの使用。
(10)肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上を目的とする薬剤の製造のための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの使用。
(11)リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、(9)または(10)に記載の使用。
(12)リンゴンベリーまたはハイビスカスが経口用組成物の形態である、(9)~(11)のいずれかに記載の使用。
(13)リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの、メラニンの産生を抑制するための使用。
(14)リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための使用
(15)リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、(13)または(14)に記載の使用。
(16)リンゴンベリーまたはハイビスカスが経口用組成物の形態である、(13)~(15)のいずれかに記載の使用。
(17)メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせ。
(18)肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせ。
(19)リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように使用するための、(17)または(18)に記載の組み合わせ。
(20)リンゴンベリーまたはハイビスカスが経口用組成物の形態である、(17)~(19)のいずれかに記載の組み合わせ。
(21)被験体において、メラニンの産生を抑制するための方法であって、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの有効量を投与することを含む、方法。
(22)被験体における、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための方法であって、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせの有効量を投与することを含む、方法。
(23)リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2になるように投与するための、(21)または(22)に記載の方法。
(24)リンゴンベリーまたはハイビスカスが経口用組成物の形態である、(21)~(23)のいずれかに記載の方法。
【0011】
本発明によれば、メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせが提供される。本発明の組み合わせを用いることにより、効果的にメラニンの産生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、リンゴンベリーおよび/またはハイビスカスの、メラニンの産生抑制効果を評価したグラフである。
【
図2】
図2は、リンゴンベリーおよび/またはハイビスカスの、肌の色の黒さの抑制効果を評価したグラフである。
【
図3】
図3は、リンゴンベリーおよび/またはハイビスカスの、肌の血色の改善効果を評価したグラフである。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明の一つの態様によれば、ハイビスカス、またはハイビスカスを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、リンゴンベリーを含んでなるメラニン産生抑制剤が提供される。このようなリンゴンベリーを含んでなるメラニン産生抑制剤は、メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーを含んでなる組成物であってもよい。
【0014】
本発明の別の一つの態様によれば、リンゴンベリー、またはリンゴンベリーを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、ハイビスカスを含んでなるメラニン産生抑制剤が提供される。このようなハイビスカスを含んでなるメラニン産生抑制剤は、メラニンの産生を抑制するための、ハイビスカスを含んでなる組成物であってもよい。
【0015】
本発明の別の一つの態様によれば、リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなるメラニン産生抑制剤が提供される。このようなリンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなるメラニン産生抑制剤は、メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる組成物であってもよい。
【0016】
本発明において、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせが適用される対象としては、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類等の哺乳動物等が挙げられる。本発明におけるリンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせが適用される対象として、好ましくはヒトである。
【0017】
一般に、メラニンの産生は、メラノサイト中のメラノソームにある銅イオン依存性のチロシナーゼによりチロシンが酸化され、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)が生成され、さらにDOPA-オキシダーゼによってドーパキノンとなり、その後はメラノサイトで非酵素的にドーパクロム、インドールキノンへと重合されることにより行われる。このように産生されるメラニンを、ユーメラニン(真性メラニン)といい、黒褐色である。この真性メラニンの他に、ドーパキノンとシステインからジヒドロベンゾチアジンを経て生合成される橙赤色のフェオメラニン(亜メラニン)、トリコクロム等もメラニンとして知られている。
【0018】
一般的に、皮膚にユーメラニンが形成及び沈着すると、黒色の色素沈着、くすみの増大、透明度の低下などが発生し、美容が損なわれること等が報告されており、また、フェオメラニンには、酸化ストレスの亢進、生体内抗酸化物質の活性低下などの細胞障害性がみられること等が報告されている。本発明の組成物が産生を抑制するメラニンは特に限定されず、したがって、本発明の組成物はこれらの状態を改善し得る。
【0019】
本発明における改善は、健常者の状態と同等でない対象の状態が、健常者と同等の状態に戻るもしくは近づくこと、健常者の状態と同等である対象の状態が、維持もしくは健常者と同等の状態よりも良好になることを含む。
【0020】
本発明の別の一つの態様によれば、ハイビスカス、またはハイビスカスを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、リンゴンベリーを含んでなる、肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤が提供される。このようなリンゴンベリーを含んでなる肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤は、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための、リンゴンベリーを含んでなる組成物であってもよい。このような肌の色の黒さの抑制および/または肌の血色の改善は、メラニンの産生抑制により達成されてもよく、メラニンの産生抑制によらずに達成されてもよいが、好ましくはメラニンの産生抑制により達成される。
【0021】
本発明の別の一つの態様によれば、リンゴンベリー、またはリンゴンベリーを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、ハイビスカスを含んでなる、肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤が提供される。このようなハイビスカスを含んでなる肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤は、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上のための、ハイビスカスを含んでなる組成物であってもよい。このような肌の色の黒さの抑制および/または肌の血色の改善は、メラニンの産生抑制により達成されてもよく、メラニンの産生抑制によらずに達成されてもよいが、好ましくはメラニンの産生抑制により達成される。
【0022】
本発明の別の一つの態様によれば、リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる、肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤が提供される。このようなリンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる肌の色の黒さの抑制剤および/または肌の血色の改善剤は、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善からなる群から選択される1種以上ための、リンゴンベリーおよびハイビスカスを含んでなる組成物であってもよい。このような肌の色の黒さの抑制および/または肌の血色の改善は、メラニンの産生抑制により達成されてもよく、メラニンの産生抑制によらずに達成されてもよいが、好ましくはメラニンの産生抑制により達成される。
【0023】
本発明の組成物におけるリンゴンベリーおよびハイビスカスの使用量は、用途に応じて適宜決定できるが、好ましくは、リンゴンベリーの乾燥重量をCA、ハイビスカスの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.25~2であり、より好ましくは、CA/CBが0.4~1.3である。
【0024】
本発明における「リンゴンベリー」は、ツツジ科スノキ属の植物である、Vaccinium vitis-idaea(中国名称:越桔)を意味し、コケモモとも呼ばれるものである。一般的に、リンゴンベリーは北欧の北極圏やカナダに数多く自生し、ビタミンCやクエン酸を豊富に含むことが知られている。果実は、生食されるとともに、ジュース、ジャムなどの加工食品に常用されている。本発明においては、一般的なリンゴンベリーを使用することができる。
【0025】
本発明においては、リンゴンベリーの部位として、例えば、果実(未熟果実、完熟果実、乾燥果実)、葉、塊根、花、種子等を用いることができ、好ましくは果実が用いられる。
【0026】
本発明において、リンゴンベリーは生のままでも乾燥したものでも使用することができる。本発明の一つの態様によれば「リンゴンベリー」は、リンゴンベリーの全体またはその一部を使用して製造したリンゴンベリー抽出物である。
【0027】
本発明における「ハイビスカス」は、アオイ科フヨウ属の植物である、Hibiscus sabdariffaまたはHibiscus rosa-sinensis(中国名称:洛神花)を意味し、それぞれローゼル、ブッソウゲとも呼ばれるものである。一般的に、ハイビスカスはアフリカを原産とする植物で、さわやかな酸味があることから、フランス料理やイタリア料理のソースとしても使われており、また、ハーブとしても用いられている。本発明においては、一般的なハイビスカスを使用することができるが、好ましくはローゼルが用いられる。
【0028】
本発明においては、ハイビスカスの部位として、例えば、花、がく、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮等を用いることができ、好ましくはがくおよび/または花が用いられる。
【0029】
本発明において、ハイビスカスは生のものでも、乾燥したものでも、または溶媒により抽出したものでも使用することができる。本発明の一つの態様によれば「ハイビスカス」は、ハイビスカスの全体またはその一部を使用して製造したハイビスカス抽出物である。
【0030】
本発明におけるリンゴンベリー抽出物またはハイビスカス抽出物の製造方法は、特に制限されず、当該技術分野において通常使用される方法に応じて製造することができ、例えば、原料となるリンゴンベリーまたはハイビスカスを抽出することにより行ってもよい。前記抽出方法としては、限定されるわけではないが、例えば、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法、溶媒抽出法等が挙げられる。これらは単独で実行、または2種以上の方法を併用して行ってもよい。また、高純度の抽出物を得るために抽出物を同様の方法で1回以上ずつさらに抽出してもよい。
【0031】
本発明におけるリンゴンベリー抽出物またはハイビスカス抽出物の製造のために使用される溶媒の種類は特に制限されず、本発明の目的効果を有するエキスが得られるものであれば、当該技術分野において公知となっている任意の溶媒を使用してもよい。そのような溶媒の例としては、限定されるわけではないが、例えば、水、ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、ブタノール、アセトン、プロパノール、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等が挙げられ、これらは2つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
リンゴンベリー(乾燥させたもの、抽出物等を含む)またはハイビスカス(乾燥させたもの、抽出物等を含む)が市販されている場合、本発明の目的効果を有するものが得られるのであれば、それを使用してもよい。
【0033】
本発明の組成物は、限定されるわけではないが、医薬組成物、化粧用組成物、食品組成物のいずれであってもよい。本発明における組成物として、好ましくは食品組成物である。
【0034】
本発明の組成物は、経口用組成物、局所用組成物のいずれであってもよい。本発明におけるリンゴンベリーおよびハイビスカスは、好ましくは、経口摂取により消化管より吸収されて、その有効成分が体内で作用する。したがって、本発明の1つの好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、経口用組成物である。
【0035】
本発明の組成物を経口用組成物とする場合、経口用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、特に限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、防腐剤、ビタミン、アミノ酸、栄養剤、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤等の風味剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、pH調節剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤等が挙げられる。
【0036】
本発明における経口用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【0037】
本発明の組成物を局所用組成物とする場合、局所用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸等が挙げられる。
【0038】
本発明における局所用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【実施例】
【0039】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、質量%で示す。
【0040】
皮膚モデルに適用する薬剤
薬剤として以下の表1に記載のものを用いた。
【表1】
【0041】
皮膚モデルの培養
6ウェルプレートにステンレスワッシャーを設置して、各ウェルに37℃に温めた培地(EPI-100NMM、クラボウ株式会社製)を5mLずつ加えた後、その上に、購入したメラニン細胞含有三次元皮膚モデル(MEL-300、クラボウ株式会社製)が入った培養カップを設置し、定法に従って37℃、5%CO2インキュベーターで1時間以上培養した。培養後、培地中でリンゴンベリー抽出物が乾燥重量で16.7μg/mLとなるように、または培地中でハイビスカス抽出物が乾燥重量で30μg/mLとなるように、または培地中でリンゴンベリー抽出物が乾燥重量で8.3μg/mLおよびハイビスカス抽出物が乾燥重量で15μg/mLとなるように、各ウェルに薬剤を添加し、再びインキュベートした。対照としては薬剤未添加の培地を用いた。
【0042】
培地の交換は2日おきに行い、各薬剤または対照は、培地交換の都度、培地交換前の濃度(薬剤添加時点での濃度)になるように添加した。培養は培養開始後14日間行った。
【0043】
薬剤が皮膚モデルにおけるメラニン産生に与える影響の評価
皮膚モデル中のメラニンの量の測定は以下の手順により行った。皮膚モデルが入った培養カップをPBSを用いて3回洗浄した。洗浄後の皮膚モデルを培養カップより切り出し、それぞれの皮膚モデルを、1MのNaOHが200μLずつ添加してある1.5mLチューブに、皮膚モデルがNaOHに浸かるように入れ、60℃で一晩静置した。その後、皮膚モデルが完全に溶けている(溶け残りがない)ことを確認した後、各サンプル溶液を100μLずつ96ウェルプレートの各ウェルに移して、各サンプル溶液の405nmの吸光度を測定し、測定結果をもとにメラニンの産生量を評価した。
【0044】
統計処理は、多重比較検定としてチューキー・クレーマー(Tukey-Kramer)法を採用し、比較する群に対して有意な改善を示すか否かを判断することにより行った。p<0.05の場合を*とした。また0.05≦p<0.1においては有意傾向があると判断し、
を表記した。
【0045】
測定結果を
図1に示す。リンゴンベリーを単独で適用した群およびハイビスカスを単独で適用した群はそれぞれ、対照群に対して有意にメラニン産生を抑制することが確認された。また、リンゴンベリーおよびハイビスカスを組み合わせて適用した群は、対照群、リンゴンベリーを単独で適用した群、およびハイビスカスを単独で適用した群のいずれに対しても有意にメラニン産生を抑制することが示された。
【0046】
リンゴンベリーおよびハイビスカスのヒトの肌の色に対する効果の評価
パネラーによる連用テストを行い、以下に示す試験により本発明の効果を確認した。連用テストは、4種類の試験試料(錠剤)を用意し、A~D群に分かれて実施した。パネラーの数は、A群15名(プラセボ群)、B群15名(リンゴンベリー抽出物50mg(乾燥重量)/日)、C群15名(ハイビスカス抽出物72mg(乾燥重量)/日)、D群15名(リンゴンベリー抽出物25mg(乾燥重量)+ハイビスカス抽出物36mg(乾燥重量)/日)である。パネラーは、以下の表2に記載の一つ以上の条件を満たすものを除外した、35~50歳の健常日本人女性である。
【表2】
【0047】
各パネラーは試験試料(錠剤)を1日1錠、28日間毎日、就寝前に水またはぬるま湯と共に経口摂取により服用した。錠剤には、リンゴンベリーとしては表2に記載のリンゴンベリー抽出物を用い、ハイビスカスとしては表2に記載のハイビスカス抽出物を用いた。
【0048】
アンケート評価
(試験方法)
連用テスト開始前と連用テスト開始1日後、3日後、7日後、14日後、21日後、28日後において、ヒトの肌の色に関する項目についてアンケート調査を実施した。
【0049】
アンケートは、評価尺度として汎用されているVAS(視覚的アナログ尺度(visual analogue scale)の略称)により評価した。すなわち、それぞれの調査日に、被験者に10cmの横一直線に引いた直線を記載した用紙を配布し、直線の左端を「一番悪い状態」、右端を「一番良い状態」として、実感できる程度を直線上の位置として記入(被験者が線分上の一箇所に印を付す)してもらい、試験開始の位置を基準として右側(又は左側)に移動した距離を尺度値として評価した。「肌の色の黒さ」の結果を
図2に、「肌の血色」の結果を
図3にそれぞれ示す。
図2および3において、PはA群(プラセボ)の評価結果を、LはB群(リンゴンベリー)の評価結果を、HはC群(ハイビスカス)の評価結果を、L+HはD群(リンゴンベリー+ハイビスカス)の評価結果をそれぞれ示す。
【0050】
図2および3の結果より、D群(リンゴンベリー+ハイビスカス)はA群(プラセボ)、B群(リンゴンベリー)およびC群(ハイビスカス)のいずれと比較しても、肌の色の黒さの抑制効果、および肌の血色の改善効果を有することが示された。また、D群(リンゴンベリー+ハイビスカス)のこのような効果は、B群(リンゴンベリー)の効果およびC群(ハイビスカス)の効果を単純に合計したものよりも高く、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせは、肌の色の黒さの抑制、および肌の血色の改善に関して相乗効果を有することが示された。
【要約】
【課題】メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせを提供する。
【解決手段】メラニンの産生を抑制するための、リンゴンベリーおよびハイビスカスの組み合わせ。
【選択図】なし