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特許7585451三次元除去加工システム、加工プログラムの生成装置、三次元造形物の製造方法、および、プログラム
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  • 特許-三次元除去加工システム、加工プログラムの生成装置、三次元造形物の製造方法、および、プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】三次元除去加工システム、加工プログラムの生成装置、三次元造形物の製造方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20241111BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241111BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20241111BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/082
B23K26/08 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023220854
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】梶 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 達朗
(72)【発明者】
【氏名】新家 一朗
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/130962(WO,A1)
【文献】特開2013-252529(JP,A)
【文献】特開2013-252528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ照射を利用した三次元除去加工システムであって、
レーザ走査ヘッドと、
被加工物を支持するステージと、
制御部と
を備え、
前記レーザ走査ヘッドおよび前記ステージは、互いに相対移動可能とされており、
前記制御部は、加工プログラムに基づき、前記被加工物に対する前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射、および、前記レーザ走査ヘッドと前記ステージとの間の相対移動を制御し、ここで、前記加工プログラムは、それぞれが所定のサイズを有する複数の照射領域に対するレーザビームの照射順序に関する指示を含んでおり、前記複数の照射領域は、標的形状の三次元モデルを厚さ方向に分割することにより得られる複数のレイヤーのそれぞれを、分割ラインが互いにオフセットされるようにして分割することにより定義される領域であり、
前記レーザ走査ヘッドは、前記照射領域を単位として前記被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去する、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記制御部は、前記複数のレイヤーのうち前記厚さ方向において連続する一部のレイヤーに対する除去加工において、前記レーザ走査ヘッドから前記ステージまでの距離と、前記レーザビームのビームウエストの位置とを変更しないように前記レーザ走査ヘッドおよび前記ステージを制御する、システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
前記制御部は、前記ステージに対する前記レーザ走査ヘッドの相対的な移動の軌跡の距離、または、前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射によって前記被加工物から前記標的形状を得るまでの加工時間が最小となる照射順序で、前記照射領域を単位とする除去加工を前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
前記制御部は、前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域に対して選択的にレーザ走査を前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
前記制御部は、前記照射領域のラベルを所定の条件に基づき並び替えることにより前記照射順序を決定し、前記照射領域を単位とする除去加工を前記照射順序で前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
前記レーザ走査ヘッドに光学的に結合されたレーザ光源をさらに備え、
前記レーザ走査ヘッドは、スキャン光学系およびfθレンズを有する、システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
前記レーザ走査ヘッドは、フェムト秒レーザで前記被加工物を照射する、システム。
【請求項8】
所定サイズの照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去するレーザ走査ヘッドと、前記被加工物を保持するステージとを有し、前記レーザ走査ヘッドと前記ステージとが互いに相対移動可能とされた三次元除去加工システムに向けられた加工プログラムの生成装置であって、
1または複数のプロセッサを備え、
前記1または複数のプロセッサは、
標的形状の三次元モデルを入力として前記三次元モデルを厚さ方向に分割することにより複数のレイヤーを得て、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを所定サイズに分割することにより複数の照射領域を生成する工程(a)と、
前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(b)と、
前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替えて前記三次元除去加工システムに対する加工指示として出力する工程(c)と
を実行する、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の生成装置であって、
前記工程(c)は、前記ステージに対する前記レーザ走査ヘッドの相対的な移動の軌跡の距離、または、前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射によって前記被加工物から前記標的形状を得るまでの加工時間が最小となるように、前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を並び替える工程(d)を含む、装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の生成装置であって、
前記工程(c)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(e)をさらに実行し、
前記工程(b)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出する、装置。
【請求項11】
三次元造形物の製造方法であって、
標的形状の三次元モデルを厚さ方向に複数のレイヤーに分割し、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを分割してそれぞれが所定サイズを有する複数の照射領域を設定する工程(A)と、
前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(B)と、
前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替え、前記照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査して前記照射順序で前記被加工物の一部を除去することにより、前記標的形状を得る工程(C)と
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、
前記工程(C)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(D)をさらに含み、
前記工程(B)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出する、方法。
【請求項13】
所定サイズの照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去する三次元除去加工システム用加工プログラムの生成装置に向けられたプログラムであって、
前記プログラムは、コンピュータに、
標的形状の三次元モデルを入力として前記三次元モデルを厚さ方向に分割することにより複数のレイヤーを得て、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを所定サイズに分割することにより複数の照射領域を生成する工程(a)と、
前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(b)と、
前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替えて前記三次元除去加工システムに対する加工指示として出力する工程(c)と
を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記工程(c)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(d)をさらに実行させ、前記工程(b)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元除去加工システム、加工プログラムの生成装置および三次元造形物の製造方法に関する。本発明は、三次元除去加工システム用加工プログラムの生成装置に向けられたプログラムにも関している。
【背景技術】
【0002】
エンドミルのような機械工具の使用に代えてレーザビームの照射を適用した三次元除去加工が知られている。例えば下記の特許文献1は、レーザ光照射機構と、被加工物を保持するためのステージとを有するレーザ加工装置を開示している。特許文献1のレーザ加工装置では、被加工物の加工対象領域を複数の領域に分割し、分割された領域毎にレーザビームの走査を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-016735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工対象領域を複数の領域に分割してこれら複数の領域毎にレーザビームの走査を実行する手法では、各領域の中央付近と周縁部との間で加工品質に無視できない差を生じることがある。すなわち、走査が不連続となることに起因して、隣り合う領域の境界部において加工品質の相対的な低下が見られることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]パルスレーザ照射を利用した三次元除去加工システムであって、レーザ走査ヘッドと、被加工物を支持するステージと、制御部とを備え、前記レーザ走査ヘッドおよび前記ステージは、互いに相対移動可能とされており、前記制御部は、加工プログラムに基づき、前記被加工物に対する前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射、および、前記レーザ走査ヘッドと前記ステージとの間の相対移動を制御し、ここで、前記加工プログラムは、それぞれが所定のサイズを有する複数の照射領域に対するレーザビームの照射順序に関する指示を含んでおり、前記複数の照射領域は、標的形状の三次元モデルを厚さ方向に分割することにより得られる複数のレイヤーのそれぞれを、分割ラインが互いにオフセットされるようにして分割することにより定義される領域であり、前記レーザ走査ヘッドは、前記照射領域を単位として前記被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去する、システム。
[2][1]に記載のシステムであって、前記制御部は、前記複数のレイヤーのうち前記厚さ方向において連続する一部のレイヤーに対する除去加工において、前記レーザ走査ヘッドから前記ステージまでの距離と、前記レーザビームのビームウエストの位置とを変更しないように前記レーザ走査ヘッドおよび前記ステージを制御する、システム。
[3][1]または[2]に記載のシステムであって、前記制御部は、前記ステージに対する前記レーザ走査ヘッドの相対的な移動の軌跡の距離、または、前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射によって前記被加工物から前記標的形状を得るまでの加工時間が最小となる照射順序で、前記照射領域を単位とする除去加工を前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
[4][1]から[3]のいずれか1項に記載のシステムであって、前記制御部は、前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域に対して選択的にレーザ走査を前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
[5][1]から[4]のいずれか1項に記載のシステムであって、前記制御部は、前記照射領域のラベルを所定の条件に基づき並び替えることにより前記照射順序を決定し、前記照射領域を単位とする除去加工を前記照射順序で前記レーザ走査ヘッドに実行させる、システム。
[6][1]から[5]のいずれか1項に記載のシステムであって、前記レーザ走査ヘッドに光学的に結合されたレーザ光源をさらに備え、前記レーザ走査ヘッドは、スキャン光学系およびfθレンズを有する、システム。
[7][1]から[6]のいずれか1項に記載のシステムであって、前記レーザ走査ヘッドは、フェムト秒レーザで前記被加工物を照射する、システム。
[8]所定サイズの照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去するレーザ走査ヘッドと、前記被加工物を保持するステージとを有し、前記レーザ走査ヘッドと前記ステージとが互いに相対移動可能とされた三次元除去加工システムに向けられた加工プログラムの生成装置であって、1または複数のプロセッサを備え、前記1または複数のプロセッサは、標的形状の三次元モデルを入力として前記三次元モデルを厚さ方向に分割することにより複数のレイヤーを得て、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを所定サイズに分割することにより複数の照射領域を生成する工程(a)と、前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(b)と、前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替えて前記三次元除去加工システムに対する加工指示として出力する工程(c)とを実行する、装置。
[9][8]に記載の生成装置であって、前記工程(c)は、前記ステージに対する前記レーザ走査ヘッドの相対的な移動の軌跡の距離、または、前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射によって前記被加工物から前記標的形状を得るまでの加工時間が最小となるように、前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を並び替える工程(d)を含む、装置。
[10][8]または[9]に記載の生成装置であって、前記工程(c)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(e)をさらに実行し、前記工程(b)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出する、装置。
[11]三次元造形物の製造方法であって、標的形状の三次元モデルを厚さ方向に複数のレイヤーに分割し、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを分割してそれぞれが所定サイズを有する複数の照射領域を設定する工程(A)と、前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(B)と、前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替え、前記照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査して前記照射順序で前記被加工物の一部を除去することにより、前記標的形状を得る工程(C)とを含む、方法。
[12][11]に記載の製造方法であって、前記工程(C)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(D)をさらに含み、前記工程(B)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出する、方法。
[13]所定サイズの照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査することにより前記被加工物の一部を除去する三次元除去加工システム用加工プログラムの生成装置に向けられたプログラムであって、前記プログラムは、コンピュータに、標的形状の三次元モデルを入力として前記三次元モデルを厚さ方向に分割することにより複数のレイヤーを得て、さらに、分割ラインが互いにオフセットされるようにして各レイヤーを所定サイズに分割することにより複数の照射領域を生成する工程(a)と、前記複数の照射領域のうち前記標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程(b)と、前記セットに含まれる前記照射領域の照射順序を所定の条件に基づき並び替えて前記三次元除去加工システムに対する加工指示として出力する工程(c)とを実行させるためのプログラム。
[14][13]に記載のプログラムであって、前記コンピュータに、前記工程(c)の前に、前記複数のレイヤーを、それぞれが、前記厚さ方向においてビームウエストを中心としてビーム直径が等しい範囲である有効部に含まれる1つまたは複数のレイヤーを有するレイヤー群に区分する工程(d)をさらに実行させ、前記工程(b)では、同じレイヤー群に含まれる照射領域のセットを抽出させる、プログラム。
[15][13]または[14]に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の少なくともいずれかの実施形態によれば、被加工物の大型化に伴って生じ得る加工品質の低下を回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のある実施形態による三次元除去加工システムの例示的な外観斜視図である。
図2】加工ユニット10の外装が外された状態の加工システム1を模式的に示す斜視図である。
図3】加工ユニット10の光学系の概略を説明するための模式的な図である。
図4】スキャン光学系122の他の例を示す模式図である。
図5】加工システム1における制御系統の一例を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の他のある実施形態による加工プログラム生成の例を示すフローチャートである。
図7】標的形状の三次元モデルのある高さにおけるスライスと、レーザ走査ヘッド12が一度に走査可能な領域との関係を説明するための模式図である。
図8】加工レイヤーの、複数の照射領域への分割の一例を示す模式図である。
図9】第1レイヤーにおける分割を第2レイヤーにおける分割に重ねて模式的に示す図である。
図10】照射領域のそれぞれを表現するラベルを所定の条件の下で並べ替えた後のリストの例を示す図である。
図11図10に示すリストに対応する数値制御プログラムの例を示す図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態による、三次元造形物の例示的な製造方法を説明するためのフローチャートである。
図13】ビームウエストを中心とする所定の範囲内に複数の加工レイヤーの照射領域が位置する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に示す実施形態中に示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0009】
図1は、本発明のある実施形態による三次元除去加工システムの例示的な外観を示す。図1に示す加工システム1は、パルスレーザ照射を利用した三次元除去加工システムであって、概略的には、加工ユニット10と、制御ユニット20とを有する。後述するように、加工ユニット10は、レーザ走査ヘッドおよびステージを有しており、制御ユニット20は、加工プログラムに基づき、これらレーザ走査ヘッドおよびステージの動作を制御する。
【0010】
<1.加工ユニット10の構成例>
図2は、加工ユニット10の外装が外された状態の加工システム1を示す。図2中、説明の便宜のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す3つの矢印が描かれている。ここでは、図中のZ軸は、鉛直方向に平行である。図2に続く他の図面中にも、これらX軸、Y軸およびZ軸を示す矢印を図示することがある。
【0011】
加工ユニット10は、フレーム11と、レーザ走査ヘッド12と、ステージ14と、光学定盤15とを有する。フレーム11は、レーザ走査ヘッド12、ステージ14および光学定盤15を支持する構造体である。レーザ走査ヘッド12およびステージ14の少なくとも一方は、例えばステッピングモータおよびボールねじの組み合わせにより、制御ユニット20からの指示に基づきフレーム11に対してZ方向に上下動可能とされる。ここでは、レーザ走査ヘッド12が、フレーム11に対してZ方向に移動自在にフレーム11に支持されている。
【0012】
他方、加工ユニット10のステージ14は、リニアモータを含む駆動機構などにより、レーザ走査ヘッド12に対して図のXY面内で移動可能な態様でフレーム11に支持される。ステージ14を移動させるための駆動機構は、リニアモータに代えて、ステッピングモータおよびボールねじの組などにより構成されていてもよい。
【0013】
ステージ14は、除去加工に際して被加工物(例えば金属のバルク)の置かれる上面14aを有する。ステージ14の上面14aは、図のXY面に平行である。実際の除去加工時、被加工物は、上面14a上のジグなどによりステージ14に固定され、ステージ14の移動に従い、Z方向に垂直な面内で平行移動させられる。
【0014】
図3は、加工ユニット10の光学系の概略を模式的に示す。加工ユニット10の光学系は、上述のレーザ走査ヘッド12と、レーザ走査ヘッド12に光学的に結合されたレーザ光源16とを含む。図3に例示する構成において、レーザ走査ヘッド12は、スキャン光学系122およびfθレンズ124を含んでいる。
【0015】
レーザ光源16は、例えば、フレーム11の上部に支持された光学定盤15(図2参照)に固定されることにより加工ユニット10中に配置される。レーザ光源16から出射されたレーザ光は、ミラー18a、18bなどによって反射されることによりレーザ走査ヘッド12のスキャン光学系122に導かれる。レーザ光源16とスキャン光学系122との間には、コリメータ、ビームエキスパンダなどの他の光学素子が介在され得る。
【0016】
レーザ光源16としては、被加工物を構成する材料の研削閾値を超えるフルエンスを実現できるパルスレーザの光源であれば、YAGレーザ、ファイバーレーザ、ガスレーザなどを特に制限なく適用し得る。レーザ走査ヘッド12から被加工物に向けて照射されるレーザの典型的なパルス幅(半値全幅)は、500ナノ秒以下のオーダである。被加工物に向けて照射されるレーザのパルス幅は、1~500ナノ秒の範囲であってもよく、1~100ナノ秒の範囲であってもよい。あるいは、数ナノ秒のオーダであってもよい。
【0017】
レーザ光源16は、フェムト秒レーザ発振器であってもよい。すなわち、加工システム1は、フェムト秒レーザで被加工物を照射するレーザ走査ヘッドを含む三次元除去加工システムであり得る。フェムト秒レーザの適用により、加工時の熱に起因する、被加工物の劣化を回避し得る。
【0018】
図3に例示する構成において、レーザ走査ヘッド12は、スキャン光学系122としてのガルバノメータを含んでいる。よく知られているように、ガルバノメータは、それぞれがアクチュエータに接続された2つのガルバノミラーを含む。図3に示す例では、スキャン光学系122は、第1軸周りに回転可能とされた第1ガルバノミラー22aと、第1軸と平行ではない第2軸周りに回転可能とされた第2ガルバノミラー22bとを含んでいる。レーザ光源16からレーザ走査ヘッド12に導入された光は、第1ガルバノミラー22aおよび第2ガルバノミラー22bによって順に反射された後にfθレンズ124に向かって進行する。
【0019】
図4は、スキャン光学系122の他の例を示す。図4に例示するように、ガルバノメータに代えて、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)22cによりスキャン光学系122を構成してもよい。あるいは、スキャン光学系122は、ポリゴンミラーおよびモータの組などにより実現されてもよい。レーザビームの二次元の走査が可能であれば、いずれの構成もスキャン光学系122に採用可能である。
【0020】
レーザ走査ヘッド12は、スキャン光学系122に加えてフラットフィールドレンズを含む。図3および図4に示す例では、レーザ走査ヘッド12は、fθレンズ124を含んでいる。fθレンズ124は、テレセントリックfθレンズであってもよいし、非テレセントリックfθレンズであってもよい。ここでは、fθレンズ124としてテレセントリックfθレンズを用いており、レーザビームの走査においてfθレンズ124を通過した光は、レンズの光軸に平行に進行する。図3および図4に示す例において、テレセントリックfθレンズの光軸は、Z軸に平行とされている。すなわち、ここでは、スキャン光学系122およびfθレンズ124を順に通過した光は、ステージ14の上面14aに垂直に入射する。テレセントリックfθレンズを採用することにより、レーザスポットの形状が楕円に近づくことを回避できるという利点が得られる。
【0021】
このように、レーザ走査ヘッド12は、図のXY面に平行な面内でレーザビームを二次元走査可能に構成される。制御ユニット20からの指令に基づきレーザパルスのオンオフを切り替えながら、ステージ14に支持された被加工物の表面をレーザ走査ヘッド12からのレーザビームで走査することにより、被加工物の一部を除去して所期の形状(以下、「標的形状」と呼ぶことがある)を得ることができる。
【0022】
ただし、フレーム11に対してレーザ走査ヘッド12およびステージ14の配置が固定された状態でレーザビームを二次元走査できる範囲は、レーザ走査ヘッド12の光学系の構成による制限を受ける。例えば、fθレンズ124としてテレセントリックfθレンズを用いた場合、二次元走査できる範囲は、fθレンズ124を通過したビームをフラットフィールド上で等速走査可能な範囲、例えば、直径が120mmの円形領域に制限される。したがって、標的形状のサイズがより大きい場合には、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の相対的な配置を固定してのレーザビームの二次元走査と、レーザ走査ヘッド12またはステージ14の移動とを繰り返す必要がある。
【0023】
ここでは、フレーム11に対してレーザ走査ヘッド12がXY面内で固定とされ、ステージ14がレーザ走査ヘッド12に対してXY面内で移動可能とされている。しかしながら、この例に限定されず、レーザ走査ヘッド12およびステージ14は、Z軸に垂直な平面内で互いに相対移動可能とされていればよい。例えば、フレーム11に対してステージ14がXY面内で固定とされ、レーザ走査ヘッド12がステージ14に対してXY面内で移動可能とされてもよい。あるいは、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の両方がフレーム11に対して独立してXY面内で移動可能に構成されてもかまわない。
【0024】
<2.制御系統の例>
上述したように、制御ユニット20は、加工ユニット10のレーザ走査ヘッド12およびステージ14の動作を制御する。本発明の典型的な実施形態において、加工システム1は、コンピュータ支援製造(CAM)が適用された自動加工を実行する。CAMの適用においては、まず、CADなどの利用により、最終的な標的形状に関する三次元モデルを表現するデータ(以下、便宜的に「CADモデル」と呼ぶ)が準備される。制御ユニット20は、CADモデルに基づいて生成される加工プログラムに従い、加工ユニット10の各部の動作を制御する。加工プログラムの生成の詳細については、後述する。
【0025】
図5は、加工システム1における制御系統の一例を示す。本発明の典型的な実施形態において、加工システム1の制御ユニット20は、CPUなどの1以上のプロセッサと、RAMをはじめとした1以上のメモリとを有する。図5に例示する構成において、制御ユニット20は、例えばCPUにより構成されるコントローラ23を含む。図5に示す例では、制御ユニット20は、さらに、第1インターフェース21と、第2インターフェース22と、Z軸ドライバ24と、X軸ドライバ26と、Y軸ドライバ28とを含んでいる。
【0026】
コントローラ23は、第1インターフェース21を介して加工プログラムを受け取り、加工プログラムに基づき、加工ユニット10の各部を動作させるための制御信号を生成する。ここで、第1インターフェース21は、CAMソフトウェアのインストールされたコンピュータなどの外部機器との接続を実現する外部インターフェースである。第1インターフェース21は、外部機器またはインターネットとの有線接続のためのコネクタ、ジャックまたはソケットなどの形態を採り得る。第1インターフェース21は、外部機器またはインターネットとの無線接続のためのデバイスであってもよい。
【0027】
図5に示すように、この例では、制御ユニット20は、レーザ走査ヘッド12の移動を制御するZ軸ドライバ24と、ステージ14の移動を制御するX軸ドライバ26およびY軸ドライバ28とを含んでいる。Z軸ドライバ24は、コントローラ23からの制御信号に基づき、レーザ走査ヘッド12のZ方向における上下動を制御する。X軸ドライバ26およびY軸ドライバ28は、コントローラ23からの制御信号に基づいてステージ14の水平動を制御する。
【0028】
加工ユニット10に注目する。ここでは、加工ユニット10は、ガルバノコントローラ18を有している。図5に示すように、スキャン光学系122が例えばガルバノメータを含む場合、ガルバノコントローラ18は、第1ガルバノミラー22aに接続されたアクチュエータおよび第2ガルバノミラー22bに接続されたアクチュエータを駆動させる(図3参照)。ここでは、ガルバノコントローラ18は、レーザ光源16の動作を制御するためのレーザドライバの機能も有する。
【0029】
上述の加工プログラムは、レーザ走査ヘッド12の上下動およびステージ14の水平動に関する指示のみならず、スキャン光学系122による二次元走査に関する指示をも含んでいる。ガルバノコントローラ18は、加工プログラムの一部または全部をコントローラ23からダウンロードし、加工プログラムに従い、第1ガルバノミラー22a、第2ガルバノミラー22bおよびレーザ光源16の動作を制御する。この意味で、ガルバノコントローラ18およびコントローラ23の全体は、加工システム1の制御部40を構成するといってよい。
【0030】
最終的な標的形状を得るための加工プログラムは、以下に説明するように、加工システム1とは別個の外部装置30(例えばパーソナルコンピュータ)により準備され得る。図5に例示する構成において、外部装置30は、演算回路321およびメモリ322を有する演算部32を含む。メモリ322の典型例は、磁気ディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどの不揮発性記憶装置である。ここでは、メモリ322にCAMソフトウェアがインストールされており、演算部32は、CAM装置として機能することができる。
【0031】
演算部32の演算回路321は、例えばCPUのようなプロセッサから構成され、CADモデルのファイルのインポートを受けて、加工ユニット10の各部を駆動させるための指示が記述された機械読み取り可能な加工プログラムを生成して出力する。上述したように、この加工プログラムには、ガルバノミラー22a、22bの動作に関する指示、および、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の動作に関する指示が含まれ得る。本実施形態の外部装置30(あるいはその演算部32)は、加工プログラムの生成装置であるといえる。
【0032】
外部装置30において生成された加工プログラムは、第1インターフェース21を介して制御ユニット20に渡される。加工プログラムは、有線および無線のいずれの方式により送信されてもよい。制御ユニット20のコントローラ23は、演算部32からの出力である加工プログラムを受け取ると、加工プログラムに従い、標的形状を得るための加工を加工ユニット10に実行させる。より詳細には、コントローラ23は、レーザ走査ヘッド12とステージ14との間の相対移動を制御してこれらを所定の相対配置とした後、照射の対象となる領域に対する二次元走査に関する指示をガルバノコントローラ18に送る。ガルバノコントローラ18は、加工指示に基づき、ガルバノミラー22a、22bおよびレーザ光源16を動作させ、被加工物のうち二次元走査の対象とされた領域の不要な部分をレーザ照射によって除去する。このような、コントローラ23の制御による、被加工物に対するレーザ走査ヘッド12からのレーザビームの照射と、レーザ走査ヘッド12とステージ14との間の相対移動との繰り返しにより、被加工物から不要な部分を除去して完成品の形状を得ることができる。加工ユニット10に対する制御ユニット20からの駆動信号および/または制御信号の送信は、加工プログラムのやり取りと同様に、有線および無線のいずれの方式により実行されてもよい。
【0033】
図5に例示するように、制御ユニット20は、第2インターフェース22をさらに有していてもよい。第2インターフェース22は、加工システム1のオペレータからの指令を受け付ける。第2インターフェース22の例は、タッチパネル、キーボードもしくはボタン、または、これらの2以上の組み合わせである。制御ユニット20は、第2インターフェース22としてタッチパネルを含むことにより、加工プログラムを走らせた時の加工ユニット10の動作のシミュレーションを第2インターフェース22に表示させるようにしてもよい。また、制御ユニット20は、オペレータがタッチパネルを介して指示を入力することにより加工プログラムを修正できるように構成されてもよい。
【0034】
付加的に、加工ユニット10は、ステージ14上の被加工物を撮影するカメラなどを有していてもよい。制御ユニット20のコントローラ23は、図5において不図示のカメラによって得られた映像を表示させるようにカメラおよび第2インターフェース22を制御してもよい。加工システム1にこのようなカメラを設けることにより、ステージ14上の被加工物を加工中に観察可能になるので有益である。
【0035】
<3.加工プログラムの生成>
次に、加工プログラムの生成の例を説明する。よく知られているように、CAMを適用した一般の機械加工においては、加工プログラムの生成は、概略、2つの段階に分けられる。第1の段階は、ツールパス(tool path)の決定であり、第2の段階は、決定されたツールパスに対応する数値制御プログラムの生成(ポストプロセスと呼ばれる)である。
【0036】
本発明の実施形態では、標的形状として、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の配置を固定した状態でレーザ走査ヘッド12が走査可能な範囲を越えるサイズを有する形状を想定する。すなわち、ステージ14の上面14aを基準としたときのある高さにおける標的形状の断面積は、レーザ走査ヘッド12が一度に走査可能な領域の面積よりも大きい。そこで、本発明の典型的な実施形態においては、以下に詳しく説明するように、まず、標的形状の三次元モデルを厚さ方向(高さ方向といってもよい)に分割することにより得られる複数のレイヤーを規定し、さらに、各レイヤーを、それぞれが所定のサイズを有する複数の照射領域に分割する。そして、加工レイヤー毎に複数の照射領域を設定した後、照射領域を単位とした加工を実行する。
【0037】
以下に詳しく説明するように、本発明の実施形態では、加工レイヤー毎の照射領域を規定する分割ラインが、複数の加工レイヤーの間で互いに少しずつオフセットされるようにして、各加工レイヤーに対して複数の照射領域への分割を実行する。例えば以下に説明する例では、三次元モデルの厚さ方向において互いに隣り合う2つの加工レイヤーの間で、一方の加工レイヤーの照射領域の一部が、他方の加工レイヤーの照射領域のうちの対応する1つに平面視において重なりを有するようにしている。言い換えれば、ある加工レイヤーにおける複数の照射領域の境界(分割ラインといってもよい)は、その加工レイヤーの1つ上または1つ下の加工レイヤーにおける複数の照射領域の境界とは一致していない。このように、複数の加工レイヤーの間で複数の照射領域の境界が重なることを意図的に回避することにより、被加工物の表面のうち照射領域の境界に対応する位置に"スジ"のような構造が残ってしまうことを防止し得る。すなわち、標的形状が単一の照射領域の範囲を越える大きさであっても、品質の低下を回避した加工を実現し得る。
【0038】
本発明の典型的な実施形態による加工プログラムは、複数の照射領域をどのような順序によってレーザビームで走査するかに関する指示(以下、単に「照射順序に関する指示」のようにいうことがある)を含む。この「照射順序」の決定は、CNC工作機械におけるツールパスの決定に相当するといえる。以下の説明から明らかとなるように、照射順序を適切に設定することにより、加工品質の低下を回避しながらも加工時間の短縮を図ることが可能になる。
【0039】
図6は、本発明の他のある実施形態による加工プログラム生成の例を示すフローチャートである。図6に示すように、外部装置30の演算部32は、例えば、複数の加工レイヤーを分割することにより複数の照射領域を生成する工程S1と、標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程S2と、抽出された照射領域を並び替えて加工指示として出力する工程S3とを実行する。
【0040】
(3-1.複数の照射領域を生成する工程S1)
演算部32の演算回路321は、CADモデルのファイルを受け取ると、加工不可能な形状が標的形状に含まれないかどうか、幾何学的形状面からのチェックを実行する。幾何学的形状に関するエラーを発見しない場合、演算回路321は、CADモデルを厚さ方向に分割することにより、CADモデルから標的形状のスライスデータを生成する。演算回路321は、さらに、それぞれが標的形状のスライスを含む複数の加工レイヤーを生成し、加工レイヤーのそれぞれを複数の照射領域にメッシュ分割する。
【0041】
図7は、標的形状の三次元モデルのある高さにおけるスライスと、レーザ走査ヘッド12が一度に走査可能な領域との関係を模式的に示す。標的形状の三次元モデルは、Z方向において相異なる高さの複数の平面で標的形状を切断したスライスデータの集合として表現され得る。図7に示す例において、標的形状のある高さにおけるスライスSk(説明の便宜のためにハッチングを付している)は、400mm四方の正方形の領域内に収まっている。図7に示す正方形の領域のように、標的形状を切断したときの断面を内部に包含する矩形領域を本明細書では便宜的に「加工レイヤー」と呼ぶ。
【0042】
本発明の実施形態では、レーザ走査ヘッド12が一度に走査可能な領域は、加工レイヤーの全体よりも小さい。フレーム11に対してレーザ走査ヘッド12およびステージ14の配置を固定した状態でレーザ走査ヘッド12により走査可能な範囲は、例えば、直径が120mmの円形領域(図7中、点線の円Cで模式的に示す)に制限される。したがって、標的形状のサイズがより大きい場合には、レーザ走査ヘッド12および/またはステージ14を移動させてレーザビームの二次元走査を繰り返す必要がある。
【0043】
図7に破線の矩形で模式的に示すように、ここでは、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の配置を固定した状態でレーザ走査ヘッド12により走査可能な最大範囲よりも小さな矩形領域R(例えば80mm四方の正方形の領域)を想定する。そして、レーザ走査ヘッド12およびステージ14の配置を固定した状態でのレーザビームの二次元走査の範囲をこの矩形領域Rに制限する。本明細書では、このような矩形領域を「照射領域」と呼ぶ。各加工レイヤーを所定のサイズの複数の照射領域でメッシュ分割することにより、各加工レイヤーの全体を複数の照射領域で被覆することができる。言い換えれば、照射領域を単位とした二次元走査を加工レイヤー内で繰り返すことにより、加工レイヤー全体の走査を達成できる。
【0044】
図8は、加工レイヤーの、複数の照射領域への分割の一例を示す。矩形領域Rとして例えば80mm四方の正方形の領域を採用した場合、図8に破線で模式的に示すように、400mm四方のサイズの加工レイヤーをそれぞれが80mm四方のサイズを有する合計25の照射領域R1~R25に分割できる。そして、照射領域中の代表点を指定することにより、これら照射領域をそれぞれ特定することができる。矩形領域の例えば頂点のうち左下の1つを代表点とすれば、代表点の座標値により、図8に示す照射領域R1およびR2の位置をそれぞれ(0,0)および(80000,0)のように指定できる。言い換えれば、代表点の座標値を各照射領域のラベルとして利用可能である。
【0045】
このように、例えば代表点の座標値により、各照射領域をラベリングできる。したがって、座標のような複数の数値のセットにより、加工レイヤー毎に得られる複数の照射領域のすべてを表現可能である。複数の数値のセットは、例えば、(注目している加工レイヤーにおける照射領域の通し番号,加工レイヤーの通し番号,代表点のX座標,代表点のY座標)の形であり得る。ここで、加工レイヤーの通し番号は、スライスデータのうちの何層目であるかを示すラベルである。図8に示すスライスSkが例えばk層目(kは自然数とする)の加工レイヤーに属する場合、照射領域R1およびR2をそれぞれ(1,k,0,0)および(2,k,80000,0)のように表現できる。
【0046】
本発明の実施形態において、厚さ方向への分割により得られる複数の加工レイヤーは、互いに隣り合う第1レイヤーおよび第2レイヤーを含む。ここで、第2レイヤーは、厚さ方向において第1レイヤーの1つ上または1つ下に位置するレイヤーである。
【0047】
図9は、第1レイヤーにおける分割を第2レイヤーにおける分割に重ねて示している。図9に示す例において、第2レイヤーL2は、標的形状の厚さ方向(ここではZ方向に一致)において例えばk番目のレイヤーである。図8を参照しながら説明した例と同様に、第2レイヤーL2は、それぞれが所定のサイズを有する25の照射領域R1~R25を含んでいる。他方、例えばk+1番目のレイヤーである第1レイヤーL1も、照射領域R1~R25のそれぞれと同じサイズの照射領域Q1~Q25を含んでいる。ただし、図9に模式的に示すように、第1レイヤーL1の照射領域Q1~Q25のうち例えば照射領域Q2に注目すると、この照射領域Q2は、第2レイヤーL2において照射領域Q2に対応する照射領域R2の一部と平面視において重なりを有している。言い換えると、照射領域Q2を規定する矩形状の外形の一部は、平面視において照射領域R2に重なっている。
【0048】
第2レイヤーL2の照射領域R2を表現するラベルが例えば(2,k,80000,0)であるとすると、第1レイヤーL1の照射領域Q2を表現するラベルは、例えば(2,k+1,81000,1000)であり得る。つまり、この例では、第1レイヤーL1の照射領域Q2は、第2レイヤーL2の照射領域R2に対してX方向に1mm、Y方向に1mm、オフセットされている。この例に限られず、レイヤー間のオフセット量は、適宜に設定されてよく、X方向とY方向との間でオフセット量が一致している必要もない。
【0049】
厚さ方向に隣り合うレイヤー間のオフセットとしては、例えば、加工レイヤー1000層におけるオフセットの総量が((照射領域の一辺の長さL)/(加工レイヤーの総数N))となるような大きさを採用し得る。一般的なテレセントリックfθレンズの直径は、例えばフェムト秒レーザのスポット径10~30μmのおおよそ1000倍程度であり、照射領域が矩形であるとしたときの矩形の一辺の長さも、レーザのスポット径の1000倍程度である。したがって、加工レイヤーのおおよそ1000層を単位としてオフセット量を算出するのが合理的である。加工レイヤーの総数Nを1000で割って整数に丸めたときの値をZとすると、加工レイヤー間のオフセット量Tとして、T=L/(N/(Z+1))から算出される大きさを採用できる。このような大きさのオフセットを採用すると、照射領域の境界の分布を一様にできるので有益である。
【0050】
図9から理解されるように、この例では、第1レイヤーL1の全体は、第2レイヤーL2の全体に対してXY面内でオフセットしている。図9では、説明の便宜のために、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2との間のオフセットを誇張して図示している。なお、複数の加工レイヤーの間で加工レイヤーの外形が一致していることは、本発明において必須ではない。また、加工レイヤー中に含まれる照射領域の数が複数の加工レイヤーの間で一致していることも必須ではない。
【0051】
(3-2.標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する工程S2)
図8から理解されるように、ある1つの加工レイヤーに注目したとき、複数の照射領域には、標的形状のスライス(ここではスライスSk)をその少なくとも一部に有するものと、標的形状のスライスを有しないものとが含まれる。被加工物の加工において、標的形状のスライスを有しない照射領域に対してレーザビームによる走査を実行する意義は無いといえる。そこで、照射領域を指定する数値のセットに、標的形状のスライスを有するか否かに関する情報を含めておくことが有益である。例えば、標的形状のスライスを有する照射領域に対してはフラグをセットするようにしておいてもよい。この場合、例えば、図8に示す照射領域R1、R2およびR3をそれぞれ(1,k,0,0,0)、(2,k,80000,0,0)および(3,k,160000,0,1)のように表現できる。照射領域を指定する5つ数値のセットのうちの最後の1つが上述のフラグに相当する。照射領域R3に付与されたラベルのように、フラグが"1"にセットされていることは、照射領域がその一部に標的形状のスライスを含んでいることを表す。
【0052】
本実施形態では、演算回路321は、各加工レイヤーの複数の照射領域に対して数値のセットなどによるラベリングを実行した後、複数の照射領域のうちから、標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出する。図8に示す、k層目の例であれば、演算部32は、照射領域R1~R25のうち、R3~R4、R7~R9、R12~R13、R17~R18およびR22~R24を抽出する。照射領域のセットの抽出は、照射領域のそれぞれを表現するラベル(例えば数値のセット)のうち上述のフラグがセットされているもの(つまり、フラグの値が"1"であるもの)を選択することにより容易に実行できる。
【0053】
同様にして、演算回路321は、k+1層目の加工レイヤーである第1レイヤーL1の照射領域Q1~Q25(図9参照)から、Q2~Q4、Q6~Q8、Q11~Q13、Q16~Q18およびQ22~Q24を抽出する。上述したように、ここでは、第1レイヤーL1は、平面視において第2レイヤーL2の照射領域R2(第2照射領域)の一部と重なりを有する照射領域Q2(第1照射領域)を含んでいる。
【0054】
なお、ここでは、簡単のために、k+1層目の第1レイヤーL1に含まれる標的形状のスライスの形状は、k層目の第2レイヤーL2に含まれる標的形状のスライスの形状と同じであると想定している。一般には、標的形状のスライスの形状は、相異なる加工レイヤーの間で異なり得る。
【0055】
(3-3.抽出された照射領域を並び替えて加工指示として出力する工程S3)
フラグのセットされている照射領域の抽出が完了すると、演算回路321は、抽出されたこれら照射領域のそれぞれを指定するラベル(例えば数値のセット)を所定の条件に基づき並べ替える。フラグのセットされている照射領域は、全ての照射領域のうち、レーザビームの走査の対象となる照射領域である。すなわち、所定の条件に基づいて並べ替えられた照射領域のリストは、加工ユニット10に対する、「照射順序」に関する指示を構成する。
【0056】
図10は、照射領域のそれぞれを表現するラベル(例えば数値のセット)を所定の条件の下で並べ替えた後のリストの例を示す。図10では、各行に(シーケンス番号,照射領域の通し番号,加工レイヤーの通し番号,代表点のX座標,代表点のY座標,フラグ)の形式のデータが記述されたリストの例を示している。なお、図10では図示が省略されているが、加工プログラムとしてのこのようなリストには、スキャン光学系122(例えばガルバノメータ)の動作に関する照射領域毎の指示も付随させられる。図10に示すようなリストが得られた後、加工のシミュレーション結果を制御ユニット20の第2インターフェース22(例えばタッチパネル)に表示させるようにしてもよい。
【0057】
図10に示すようなリストが得られると、演算回路321は、リストの内容を機械読み取り可能な数値制御プログラムに変換(上述のポストプロセスに相当)し、数値制御プログラムを加工指示として出力する。図11は、図10に示すリストに対応する数値制御プログラムの例を示す。演算部32からの出力としての数値制御プログラムは、CNC工作機械におけるG-codeに相当するといってよい。このポストプロセスは、外部装置30の演算部32で実行されてもよいし、制御ユニット20側のプロセッサ(例えばコントローラ23)で実行されてもかまわない。数値制御プログラムは、スポットサイズ、フルエンス、照射の周波数などのレーザ照射条件に関するデータをさらに含んでいてもよい。
【0058】
演算部32の例えば演算回路321によって生成された数値制御プログラムは、第1インターフェース21を介して制御ユニット20のコントローラ23に送られる。数値制御プログラムを受け取ったコントローラ23およびガルバノコントローラ18は、数値制御プログラムに基づき、加工ユニット10の各部を動作させるための制御信号を生成する。本実施形態において例えばレーザ走査ヘッド12は、ガルバノコントローラ18によって生成された駆動信号に基づき、照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査して被加工物の一部を除去する。図11に示すような数値制御プログラム、あるいは、図10に示すようなリストの内容に従って被加工物の表面を順次にレーザビームで走査していくことにより、所期の形状の完成品が得られる。
【0059】
以上の説明から理解されるとおり、本発明のさらに他の実施形態による三次元造形物の製造方法は、図12に示すように、概略的には、複数の照射領域を設定する工程T1と、照射領域を単位として被加工物の表面をレーザビームで走査することにより標的形状を得る工程T2とを含む。なお、ここで説明した例では、外部装置30の演算部32は、加工レイヤー毎に定義される複数の照射領域の全体のうち、標的形状を少なくとも一部に含む照射領域に対して選択的にレーザ走査をレーザ走査ヘッド12に実行させるような加工プログラムを生成し、加工ユニット10のガルバノコントローラ18に指令を与えている。このように、標的形状を少なくとも一部に含む照射領域に対して選択的にレーザ走査を実行させることにより、互いに隣り合う照射領域の境界部における加工品質の低下を回避しつつ、加工に係るリードタイムの短縮の効果が得られる。特に、スキャン光学系122としてガルバノメータを採用した場合、ステージ14の移動中にはレーザビームの走査の動作を止めておくような制御の下では、ガルバノメータのダウンタイム短縮の効果を期待できる。加工工程全体に要するリードタイムの短縮は、加工に要するエネルギーの節約にもつながる。
【0060】
<4.照射順序の決定>
上述したように、ここでは、フラグのセットされている照射領域のラベルを所定の条件に基づいて並べ替えた後、並べ替え後の順序に従ってレーザビームの走査を実行している。このように、加工指示を出力する工程S3は、標的形状をその一部に含むか否かに応じて抽出された照射領域のセットに含まれる照射領域に関する照射順序を並び替える工程を付加的に含み得る。ここで、"所定の条件"とは、例えば、トータルの加工時間が最小となるような条件である。"所定の条件"は、製造上のニーズに従って適宜に定められればよい。
【0061】
本発明の実施形態では、レーザ走査ヘッド12は、加工プログラムに従い、照射領域を単位とする除去加工を指定の照射順序で実行する。レーザ走査ヘッド12は、加工レイヤー毎に順次に加工を実行してもよいが、レーザビームの走査の対象となる照射領域は、図10などから理解されるように、1つの加工レイヤーの内部で飛び飛びであり得る。さらには、レーザビームの走査の順序が、複数の加工レイヤーにまたがって指定されることもあり得る。
【0062】
本発明のある実施形態では、演算部32は、加工プログラムの生成において、レーザビームの走査の対象となる照射領域を、設定された"コスト"が最小となるような順序に並び替える。照射順序の決定は、"コスト"が最小となるような条件の下での、いわゆる組み合わせ最適化問題を解くことに相当する。
【0063】
照射領域を単位としたレーザビームの走査を実行する場合、加工ユニット10は、ある1つの照射領域に対する走査が完了した後、レーザスポットが次の照射領域上に移動するようにレーザ走査ヘッド12および/またはステージ14を移動させる。したがって、ステージ14に対するレーザ走査ヘッド12の相対的な移動の軌跡の距離が、トータルの加工時間における"コスト"となり得る。例えば、演算部32は、抽出された照射領域のセットに含まれる照射領域を、ステージ14(またはレーザ走査ヘッド12)の平面内の移動距離が最小となるような順序に並び替える。あるいは、レーザ走査ヘッド12からのレーザビームの照射によって被加工物から標的形状を得るまでの加工時間自体を"コスト"に設定してもよい。
【0064】
照射順序の決定のための組み合わせ最適化問題の解は、公知の方法により求めればよい。シミュレーテッドアニーリング、量子アニーリングなどの手法を適用して照射順序を決定してもよい。制御ユニット20の制御部40は、演算部32によって生成された加工プログラムに従い、適切に定められた"コスト"が最小となる照射順序で、照射領域を単位とする除去加工をレーザ走査ヘッド12に実行させることができる。
【0065】
なお、ある加工レイヤーのある照射領域に対する走査に続けて、レーザ走査ヘッド12および/またはステージ14のZ方向における位置を固定したまま、その照射領域のほぼ直上またはほぼ直下に位置する照射領域を走査するような照射順序も許容され得る。
【0066】
よく知られているように、ガウシアンビームは、ビーム直径が最小値をとるビームウエスト(beam waist)を有する。除去加工においては、このビームウエストの利用が加工効率の面で有利である。これに加えて、ビームウエスト付近では、ビーム直径に大きな変化がない。したがって、Z方向においてビームウエストを中心とする所定の範囲内に位置する照射領域に対しては、レーザ走査ヘッド12および/またはステージ14のZ方向における位置を固定したままの走査を実行し得る。
【0067】
図13は、ビームウエストを中心とする所定の範囲内に複数の加工レイヤーの照射領域が位置する例を模式的に示す。ビームウエストを中心としてビーム直径に大きな変化のない範囲を「有効部Ef」と定義し、この有効部Efに含まれる照射領域に対しては、例えばレーザ走査ヘッド12のZ方向における降下を行うことなく、これら照射領域への走査を順次に実行してもよい。その場合、照射領域のラベルの並べ替えの前(例えば、フラグのセットされている照射領域の抽出後)に、複数の加工レイヤーの全体を2以上のレイヤー群に区分する工程を実行してもよい。各レイヤー群に含まれる加工レイヤーの数は、有効部Efに含まれる加工レイヤーの数である。有効部Efに含まれる加工レイヤーの数は、Z方向における有効部Efの長さを、隣り合う加工レイヤーの間隔(1層あたりの加工深さということもできる)で割ることにより求めることができる。Z方向における有効部Efの長さが例えば50μmであり、1回の走査における加工深さが例えば1μmであれば、最大50層の照射領域に対して、レーザ走査ヘッド12などの移動を省略した加工を実現し得る。なお、有効部Efの長さは、例えばガウシアンビームの場合、レイリー長程度に設定し得る。
【0068】
このように、複数の加工レイヤーのうちZ方向において連続する一部の加工レイヤーに対する除去加工において、レーザ走査ヘッド12からステージ14までの距離と、レーザビームのビームウエストの位置とを変更しないような制御も採用し得る。照射順序の決定のための組み合わせ最適化問題の設定において、加工レイヤー間を遷移するような照射領域の並べ替えは同一の有効部Efに属する照射領域の間に限る、という条件を課してもよい。例えば、照射領域のラベルの並べ替えの前に、有効部EfのZ方向の長さの単位で加工レイヤーをグルーピングし、1つまたは複数の加工レイヤーをレイヤー群に区分する工程を実行する。そして、同じレイヤー群に含まれる加工レイヤーから標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットを抽出し、抽出された照射領域のセットに含まれる照射領域に関する照射順序を並び替える工程を実行してもよい。
【0069】
このような拘束条件を考慮することにより、レーザ走査ヘッド12の上下動の回数を低減できるので有益である。最大で何層の加工レイヤーを有効部Efに含められるかは、1回の走査における加工深さに応じて適宜に決定されればよい。
【0070】
<5.その他の変形例>
以上に説明したように、本発明の実施形態では、複数の加工レイヤーの間で複数の照射領域の境界が重なることを意図的に回避している。厚さ方向に隣り合う加工レイヤーの一方を他方に対して厚さ方向に垂直な方向においてオフセットさせることにより、標的形状が単一の照射領域の範囲を越える大きさであっても、品質の低下を回避した加工を実現し得る。なお、加工レイヤーの全てにオフセットを生じさせていることは必須ではなく、加工レイヤーの全体は、照射領域の境界が厚さ方向において重なりあうような2以上の加工レイヤーのセットを含むこともあり得る。
【0071】
上述した例では、加工プログラムの生成装置としての外部装置30が、所定の条件に基づき照射領域の照射順序を決定している。しかしながら、この例に限定されず、例えば、照射領域のそれぞれを指定するラベルの並べ替えを制御ユニット20のコントローラ23に実行させてもかまわない。あるいは、標的形状を少なくとも一部に含む照射領域のセットの抽出、これら照射領域のそれぞれを指定するラベルの並べ替え、および、数値制御プログラムに変換の工程の2以上をコントローラ23に実行させてもよい。
【0072】
図5を参照しながら説明したように、加工プログラムの生成は、加工システム1とは別個の情報処理装置により実行され得る。外部装置30として、CAMソフトウェアに加えてCADツールのインストールされたパーソナルコンピュータを利用して加工プログラムを生成してもよい。このような構成においては、CADツールからCAMソフトウェアへのCADモデルの受け渡しは、そのコンピュータの内部で完結する。
【0073】
本発明に係る加工プログラムを生成するためのソフトウェアまたはアプリケーションは、電気通信回線を通じてダウンロードされて、あるいは、光学ディスクなどの、機械読み取り可能な記録媒体から読み出されて、パーソナルコンピュータなどが備える記憶装置にインストールされ得る。この場合、上述のソフトウェアまたはアプリケーションのインストールにより、例えば汎用パーソナルコンピュータを加工プログラムの生成装置とできる。
【0074】
外部装置30から出力された加工プログラムは、USBフラッシュメモリ、光学ディスクなどの記録媒体を介して加工システム1に与えられ得る。LAN、インターネットなどのネットワークを通じて加工プログラムの送受信が実行されてもよい。本発明に係る加工方法は、プロセッサなどに実行させるための指令が記載された加工プログラムを提供する形で実現されてもよい。加工プログラムの生成装置としてのパーソナルコンピュータは、有線または無線によって加工システム1に常時接続されていることを必ずしも必要としない。
【0075】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1:加工システム
10:加工ユニット
11:フレーム
12:レーザ走査ヘッド
14:ステージ
14a:ステージの上面
15:光学定盤
16:レーザ光源
18:ガルバノコントローラ
18a、18b:ミラー
20:制御ユニット
21:第1インターフェース
22:第2インターフェース
22a:第1ガルバノミラー
22b:第2ガルバノミラー
22c:デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)
23:コントローラ
24:Z軸ドライバ
26:X軸ドライバ
28:Y軸ドライバ
30:外部装置
32:演算部
40:制御部
122:スキャン光学系
124:fθレンズ
321:演算回路
322:メモリ
Ef:有効部
L1:第1レイヤー
L2:第2レイヤー
R1~R25、Q1~Q25:照射領域
R:矩形領域
Sk:標的形状のスライス
【要約】      (修正有)
【課題】被加工物の大型化に伴って生じ得る加工品質の低下を回避する。
【解決手段】パルスレーザ照射を利用した三次元除去加工システムであって、レーザ走査ヘッドと、被加工物を支持するステージと、制御部とを備え、前記レーザ走査ヘッドおよび前記ステージは、互いに相対移動可能とされており、前記制御部は、加工プログラムに基づき、前記被加工物に対する前記レーザ走査ヘッドからのレーザビームの照射、および、前記レーザ走査ヘッドと前記ステージとの間の相対移動を制御し、ここで、前記加工プログラムは、それぞれが所定のサイズを有する複数照射領域に対するレーザビームの照射順序に関する指示を含んでおり、前記複数照射領域は、標的形状の三次元モデルを厚さ方向に分割することにより得られる複数レイヤーのそれぞれを、分割ラインが互いにオフセットされるようにして分割する。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13