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特許7585458冷却水を活用したバッテリーセルの熱拡散防止構造を備えるバッテリーモジュール及びそれを含むバッテリーパック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】冷却水を活用したバッテリーセルの熱拡散防止構造を備えるバッテリーモジュール及びそれを含むバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20241111BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241111BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20241111BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241111BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241111BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241111BHJP
   H01M 50/383 20210101ALI20241111BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/204 401H
H01M10/6567
H01M10/613
H01M10/647
H01M50/211
H01M50/204 401F
H01M50/383
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023509436
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 KR2022003717
(87)【国際公開番号】W WO2022203278
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037564
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン-ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ギュ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ミン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ボム・チョ
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0005943(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342201(US,A1)
【文献】特開2010-040420(JP,A)
【文献】特開2010-062130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/30-392
H01M 10/6567
H01M 10/613
H01M 10/647
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルと、
複数の前記バッテリーセルを収容するモジュールケースと、
を含むバッテリーモジュールであって、
前記モジュールケースは、複数の前記バッテリーセルの上部に位置決めされる上板部と、複数の前記バッテリーセルの下部に位置決めされる下板部とを含み、前記上板部及び前記下板部それぞれが、冷却水が流れる流路を有しており、
前記上板部及び前記下板部は、複数の前記バッテリーセルと接触した第1プレートにおいて加熱された場合に溶融するメルティングスポットを備え、
前記上板部は、前記第1プレートと対向する第2プレートに、ガスを外部に放出可能なガス抜き口と、前記ガス抜き口を密封するように構成されていると共に熱溶融可能な材料から形成された第1封口キャップと、を備えることを特徴とするバッテリーモジュール。
【請求項2】
前記ガス抜き口が、メッシュ構造で設けられたことを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項3】
前記ガス抜き口が、前記流路に沿った前記第2プレートの領域に亘って形成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリーモジュール。
【請求項4】
前記上板部及び前記下板部は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に流路を具備するヒートシンクを構成していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーモジュール。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、アルミニウムから作られている前記第1プレート及び前記第2プレートを含んでいること、またはアルミニウムから作られている前記第1プレートとスチールから作られている前記第2プレートとの異種材料接合によって形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のバッテリーモジュール。
【請求項6】
前記メルティングスポットは、前記上板部に設けられる第1メルティングスポット及び前記下板部に設けられる第2メルティングスポットを含み、
前記第1メルティングスポット及び前記第2メルティングスポットが、少なくとも一つの前記バッテリーセルが前記第1メルティングスポットと前記第2メルティングスポットとの間に挿置された状態で、上下対称の位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項7】
前記メルティングスポットは、前記第1プレートの厚さ方向に形成された貫通口と、前記貫通口を密封するように構成されていると共に熱溶融可能な材料から形成された第2封口キャップと、を含んでおり、
前記貫通口と前記第2封口キャップとが、前記流路に沿って所定の間隔毎に設けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリーモジュール。
【請求項8】
前記第2封口キャップは、
前記貫通口に配置される本体と、
前記第1プレートの上面及び下面を囲むように前記本体の上端及び下端から各々水平へ延びている上部フランジ及び下部フランジと、
を含むことを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーモジュール。
【請求項9】
前記上部フランジ及び前記下部フランジは、互いに対向する方向へ突出した一つ以上の突起を備え、
前記第1プレートは、前記突起と係合する形状の溝部を備えることを特徴とする、請求項8に記載のバッテリーモジュール。
【請求項10】
前記突起は、三角形状、台形状、四角形状、及び半円形状のいずれか一つの断面形状を有することを特徴とする、請求項9に記載のバッテリーモジュール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のバッテリーモジュールを一つ以上含む、バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーモジュールに関し、発火したバッテリーセルに冷却水を注入し、高温のガスを外部へ排出可能な経路を設けてバッテリーセルの連鎖発火を早期に遮断し、火炎の外部流出が防止可能な熱拡散防止構造を適用したバッテリーモジュールに関する。
【0002】
本出願は、2021年3月23日出願の韓国特許出願第10-2021-0037564号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減少できるという一次的な長所だけでなく、エネルギー使用に伴う副産物が全く生じないという点で、環境にやさしく、エネルギー効率が向上できることから、新しいエネルギー源として注目を集めている。
【0004】
これにつれ、多様なデバイスへの二次電池の適用が増加しつつある。例えば、多機能小型製品であるワイヤレスモバイルデバイス(wireless mobile device)またはウェアラブルデバイス(wearable device)のエネルギー源として広範囲に使用されているだけではなく、既存のガソリン車両及びディーゼル車両の代案として提示される電気自動車とハイブリッド電気自動車などのエネルギー源や電力貯蔵装置(ESS)としても用いられている。
【0005】
最近、よく使用しているリチウム二次電池は、一つ当たりの作動電圧が約2.5V~4.5V内外である。したがって、大容量及び高出力が要求される電気自動車や電力貯蔵装置の場合、複数のリチウム二次電池を直列及び/または並列に接続したバッテリーモジュールと、前記バッテリーモジュールを直列及び/または並列に接続したバッテリーパックを構成し、これをエネルギー源として使用する。
【0006】
このように、二次電池が大容量及び高出力のエネルギー源として使用されるにつれ、前記バッテリーモジュール/パックの安全性の確保が重要な課題になっている。
【0007】
最近のバッテリーモジュールは、エネルギーの密度向上のために可能な限り多くの二次電池を集約的に収納するように設計されていることから、二次電池のいずれか一つに異常が生じて発火する場合、その周辺の他の二次電池にまで連鎖発火する熱暴走現象が起こりやすい。このため、冷却システムと消火システムがバッテリーモジュールとバッテリーパックの構成時に含まれる。
【0008】
現在、当業界で消火システムとして、二次電池が発火した場合、これをガスセンサーで感知してバッテリーパックやバッテリーモジュールの内部に水を投入する注水方式が開発されているが、注水バルブがオープンされた時点から最初に発火した二次電池に水が接触するまで所定の時間差があり、二次電池の連鎖発火を初期に鎮圧するのにやや不十分な点がある。
【0009】
一方、発火した二次電池で発生する高温のガスは、他の二次電池へ熱を速く伝播する起爆剤として作用する。ところが、空冷式バッテリーモジュールに比べて水冷式バッテリーモジュールは、通常密閉構造となっているため、高温のガスが外部へ円滑に排出されず、二次電池の熱拡散がさらに速く起こるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために創案されたものであって、発火したバッテリーセルに冷却水が迅速に注入可能であるだけでなく、ベントガスを円滑に外部へ排出可能なバッテリーモジュールを提供することを目的とする。
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述の課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、下記する発明の説明から当業者にとって明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、複数のバッテリーセルと、複数の前記バッテリーセルを収容するモジュールケースと、を含み、前記モジュールケースは、複数の前記バッテリーセルの上部に位置決めされる上板部と、複数の前記バッテリーセルの下部に位置決めされる下板部とを含み、前記上板部及び前記下板部それぞれが、冷却水が流れる流路を有しており、前記上板部及び前記下板部は、前記複数のバッテリーセルと接触した第1プレートにおいて加熱された場合に、溶融するメルティングスポットを備え、前記上板部は、前記第1プレートと対向する第2プレートに、ガスを外部に放出可能なガス抜き口と、前記ガス抜き口を密封するように構成されていると共に熱溶融可能な材料から形成された第1封口キャップと、を備えるバッテリーモジュールが提供され得る。
【0013】
前記ガス抜き口は、メッシュ構造で設けられ得る。
【0014】
前記ガス抜き口は、前記第2プレートにおいて前記流路に沿った領域に亘って形成され得る。
【0015】
前記上板部及び前記下板部は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に流路が形成されているヒートシンクからなり得る。
【0016】
前記ヒートシンクは、アルミニウム(Al)から作られている前記第1プレート及び前記第2プレートを含んでいること、またはアルミニウム(Al)から作られている前記第1プレートと、スチール(steel)から作られている前記第2プレートとの異種材料接合によって形成され得る。
【0017】
前記メルティングスポットは、前記上板部に設けられる第1メルティングスポット及び前記下板部に設けられる第2メルティングスポットを含み、少なくとも一つの前記バッテリーセルが前記第1メルティングスポットと前記第2メルティングスポットとの間に挿置された状態で、上下対称の位置に設けられ得る。
【0018】
前記メルティングスポットは、前記第1プレートの厚さ方向に形成された貫通口と、前記貫通口を密封するように構成されていると共に、熱溶融可能な材料から形成された第2封口キャップと、を含んでおり、前記貫通口と前記第2封口キャップとが、前記流路に沿って所定の間隔毎に設けられ得る。
【0019】
前記第2封口キャップは、前記貫通口に配置される本体と、前記第1プレートの上面及び下面を囲むように前記本体の上端及び下端から各々水平へ延びている上部フランジ及び下部フランジと、を含み得る。
【0020】
前記上部フランジ及び前記下部フランジは、互いに対向する方向へ突出した一つ以上の突起を備え、前記第1プレートは、前記突起と係合する形状の溝部を備え得る。
【0021】
前記突起は、三角形状、台形状、四角形状、及び半円形状のいずれか一つの断面形状を有するように設けられ得る。
【0022】
本発明の他の様態によれば、前述したバッテリーモジュールを一つ以上含むバッテリーパックが提供され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一面によれば、いずれかのバッテリーセルが発火する場合、当該バッテリーセルと隣接する封口キャップが溶けて冷却水が当該バッテリーセルにすぐ投入される。これによって、バッテリーモジュール内の熱拡散が迅速かつ効果的に遮断される。
【0024】
また、本発明の他面によれば、上板部の冷却水が発火したバッテリーセルへ供給された後、上板部の流路がガス排出通路として使用可能である。高温のガスは、上板部の流路に沿って流れ、上板部のガス抜き口から外部へ排出される。
【0025】
また、前記ガス抜き口はメッシュ構造となっていることで、高温のガスと共に飛散する火炎は外部へ流出されず遮断される。
【0026】
また、本発明は、モジュールケースの上板部及び下板部がヒートシンクを構成している。前記ヒートシンクは、平常時には冷却作用をし、非常時には消火作用をする役割を果たす。即ち、冷却システムと消火システムが同じ部品によって統合的に行われるといえる。したがって、バッテリーモジュールのエネルギー密度の向上、部品数の減少、費用節減などの効果を奏する。
【0027】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は、本明細書及び添付図面から本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者により明らかに理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施例によるバッテリーモジュールの概略的な斜視図である。
図2図1のモジュールケースの上板部の概略的な斜視図である。
図3図2の上板部の底面を示した図である。
図4図2のA-A’による断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】本発明の一実施例によるバッテリーモジュールの冷却構造を説明するための模式図である。
図7】本発明の一実施例によるバッテリーモジュールにおいて、特定のバッテリーセルが発火したとき、消火状況を説明するための模式図である。
図8】本発明の一実施例によるバッテリーモジュールにおいて、特定のバッテリーセルのガス排出状況を説明するための模式図である。
図9図2のモジュールケースの上板部の変形例を示した図である。
図10図5の第2封口キャップの変形例を示した図である。
図11図5の第2封口キャップの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0030】
本発明の一実施例によるバッテリーモジュール10は、複数のバッテリーセル100からなるセル積層体と、前記セル積層体を収容するモジュールケース200と、を含む。
【0031】
前記バッテリーセル100としては、パウチ型バッテリーセル100が採用され得る。パウチ型バッテリーセル100は、電極組立体と電解液をパウチタイプの外装材で密封収納したほぼ板状のバッテリーセル100であって、本発明の出願時点における公知であるので、詳しい説明は省略する。
【0032】
前記パウチ型バッテリーセル100を各々上下方向(±Z)へ立て、広い面が互いに対面するように左右方向(±Y)へ積層してセル積層体を形成する。前記パウチ型バッテリーセル100の間には、スウェリング吸収または熱伝達の目的で緩衝パッドまたは薄板状の冷却フィンなどがさらに配置され得る。
【0033】
バッテリーセル100は、反復的な充放電過程で電極組立体の膨張と収縮、充放電の副産物から生成されたガスによって膨脹することがある。この際、バッテリーセル100の膨張力を吸収し、モジュールケース200の変形を最小化するために、バッテリーセル100同士の間に中空構造の隔壁300(図6参照)がさらに加えられ得る。
【0034】
詳しくは後述するが、本実施例のバッテリーモジュール10は、このようなパウチ型バッテリーセル100の上端エッジと下端エッジを各々熱伝導性接着剤でモジュールハウジングに固定し、冷却水W1が間接に接触するようにしてバッテリーセル100を冷却するように構成され得る。
【0035】
一方、本実施例は、バッテリーセル100がパウチ型であるが、パウチ型の代わりに円筒型や角形のバッテリーセル100が適用され得る。
【0036】
モジュールケース200は、前記セル積層体を収容し、外部の衝撃や振動から保護するために、機械的剛性が高い材質で設けられ、ほぼ六面体のボックス状で設けられ得る。例えば、本実施例のモジュールケース200は、図1に示したように、セル積層体の上部に位置決めされる上板部210と、セル積層体の下部に位置決めされる下板部220と、セル積層体の周りを囲む壁体フレーム230と、を含む6六面体のボックス状に形成され得る。概略的に図示したが、前記壁体フレームは、セル積層体の前面部及び後面部をカバーする前/後面カバープレートとセル積層体の側面部をカバーする一対のサイドプレートからなる4枚のプレートを結合したものであり得る。
【0037】
特に、本発明のモジュールケース200は、平常時にはバッテリーセル100を効果的に冷却し、非常時にはバッテリーセル100の発火を迅速に鎮圧するために、上板部210及び下板部220がヒートシンクを構成している。ここで、ヒートシンクとは、内部に冷却水W1が流れる流路を備えて熱を吸収するのに使用される冷却部品を意味する。
【0038】
通常、従来技術による水冷式バッテリーモジュールの場合、ヒートシンクがそのモジュールケースと別の構成品としてそのモジュールケースの下板の下部に位置決めされる。しかし、本実施例によるバッテリーモジュール10は、ヒートシンクとモジュールケース200が一体型からなるものであって、モジュールケース200の上板部210及び下板部220がヒートシンクとなる。このようなモジュールケース200の構成によれば、従来よりも各バッテリーセル100の熱がヒートシンクまで伝達される経路が短縮され、熱伝達部品数の節減及びバッテリーモジュール10のエネルギー密度を高めることができる。
【0039】
以下、図2図8を参照して前記モジュールケース200の上板部210及び下板部220と、バッテリーセル100の冷却と消火のためのバッテリーモジュール10の構造について説明する。
【0040】
図2図4を参照すると、モジュールケース200の上板部210は、第1プレート211及び第2プレート215を備え、前記第1プレート211と前記第2プレート215との間に流路Fが形成されているヒートシンクからなり得る。モジュールケース200の下板部220は、後述するガス抜き口216の構成を除いては前記上板部210と同じ構成に形成され得る。
【0041】
前記第1プレート211は、バッテリーセル100と対面するように位置決めされる部分であって、熱伝導性が優秀なアルミニウム(Al)で設けられ、前記第2プレート215は、剛性が優秀なスチール(Steel)で設けられ得る。異種材質である前記第1プレート211と前記第2プレート215とは、例えば、ろう付け(brazing)溶接によって異種接合され得る。
【0042】
このようにアルミニウムの第1プレート211とスチール材質の第2プレート215を異種接合してヒートシンクを製作することで、高温のガス及びパーティクルによってヒートシンクの外側部に穴が開けられるなどの損傷を防止することができる。但し、本発明の権利範囲がアルミニウムとスチールで異種接合されたヒートシンクに限定されることではない。即ち、前記ヒートシンクの製作に際し、製作工程の容易性と軽量化のために前記第1プレート211及び前記第2プレート215をいずれもアルミニウム材質にするか、またはアルミニウムの他にも軽量であり、かつ剛性が優秀な他の材質を使用してもよい。
【0043】
前記流路Fは、扁平な第1プレート211の一面に図2のような凸パターンを備えた第2プレート215を接合することによって形成される密閉空間として定義され得る。前記流路Fの一側と他側には各々、インレットポートP1及びアウトレットポートP2が脱着可能に連結され得る。
【0044】
冷却水W1は、前記インレットポートP1によって流路Fに供給され、前記アウトレットポートP2から外部へ排出され得る。本実施例は、上板部210及び下板部220に共にインレットポートP1及びアウトレットポートP2が設けられているが、例えば、上板部210に冷却水W1を満たし、インレットポートP1及びアウトレットポートP2を連結しない場合もある。この場合、前記上板部210は、一定量の冷却水W1を貯蔵したウォータータンクのように使用され得る。
【0045】
前記構成によれば、バッテリーセル100で発生した熱は、二つの経路によって放熱され得る。即ち、「バッテリーセル100の上端エッジ=>上板部210のアルミニウム材質の第1プレート211=>冷却水W1」と、「バッテリーセル100の下端エッジ=>下板部220のアルミニウム材質の第1プレート211=>冷却水W1」の順にバッテリーセル100の熱が伝導され得る。したがって、本発明のバッテリーモジュール10は、充放電によって過熱したバッテリーセル100の温度を迅速に低めるのに効果的である。
【0046】
また、バッテリーセル100のいずれか一つまたは一部が発火する場合、周辺のバッテリーセル100への連鎖発火を阻止するための構成であって、本発明によるモジュールケース200の上板部210及び下板部220は、第1プレート211にメルティングスポットを備える。メルティングスポットとは、第1プレート211において熱によって溶融する部分を意味する。
【0047】
前記メルティングスポットは、上板部210に設けられる第1メルティングスポットと、下板部220に設けられる第2メルティングスポットと、を含み、前記第1メルティングスポット及び前記第2メルティングスポットは、少なくとも一つの前記バッテリーセル100を間に置いて上下対称の位置に設けられ得る。
【0048】
より具体的には、図3及び図4を参照すると、第1メルティングスポットは、第1プレート211の厚さ方向に形成された貫通口212と、熱溶融可能な材料から形成された第2封口キャップ213で構成され得る。このような貫通口212と第2封口キャップ213は、上板部210に備えられる流路Fに沿って所定の間隔毎に設けられ得る。
【0049】
第2メルティングスポットは、前記第1メルティングスポットと同様に貫通口と第2封口キャップ223で構成され、下板部220に備えられる流路Fに沿って所定の間隔毎に設けられ得る。
【0050】
図5に示したように、第2封口キャップ213は、貫通口212に配置される本体213aと、第1プレート211の上面と下面を囲むように前記本体213aの上端と下端から各々水平に延びて形成される上部フランジ213b及び下部フランジ213cと、を含み得る。
【0051】
また、前記上部フランジ213bと前記下部フランジ213cは、互いに対向する方向へ突出した一つ以上の突起213dを備え、前記第1プレート211は、前記突起213dと係合する形状の溝部を備え得る。特に、前記突起213dは、ナイフエッジ(Knife edge)形状、即ち、断面形状が三角形として設けられ得る。また、突起213dは、本実施例とは異なり、ナイフエッジ形状ではなく、台形、四角形、半円形状で設けられ得る。
【0052】
このように本実施例は、上部フランジ213b及び前記下部フランジ213cにナイフエッジ形状の突起213dを適用して第2封口キャップ213の水密性及び結合力の強化を図った。
【0053】
前記第2封口キャップ213の材料としては、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)のようなプラスチック樹脂が使用され得る。例えば、前記プラスチック材料の第2封口キャップ213と前述したアルミニウム材料の第1プレート211は、インサート射出工法によって一体に成形され得る。一方、前記第2封口キャップ213がプラスチック材料であることに本発明の権利範囲が制限されない。即ち、前記第2封口キャップ213は、例えば、熱溶融性と封止性を有するゴムなどのような他の材料に代替可能である。
【0054】
図6は、本発明の一実施例によるバッテリーモジュール10の冷却構造を説明するための模式図である。
【0055】
本実施例によるバッテリーモジュール10は、図6のように、平常時は、第1プレート211の貫通口212が前記第2封口キャップ213で密封されている。したがって、上板部210及び下板部220の冷却水W1は、貫通口212を通してバッテリーセル100側へ染み込むことなく、流路Fに沿って流れながらバッテリーセル100の熱を吸収する。
【0056】
前述したように、第1プレート211は、アルミニウム材料からなることで、バッテリーセル100の熱が冷却水W1へ速やかに伝達され得る。熱伝達率を高めるために、バッテリーセル100と隣接する第1プレート211の一面に熱伝達物質400を位置決めするか、またはバッテリーセル100のエッジと第1プレート211の一面との間の空間を熱伝導性樹脂で満たすことも可能である。
【0057】
図7は、本発明の一実施例によるバッテリーモジュール10において、特定のバッテリーセル100の発火時、消火状況を説明するための模式図である。
【0058】
バッテリーセル100のうちいずれかのバッテリーセル100の温度が非正常に高いか、発火する場合、当該バッテリーセル100で発生する熱と高温のガスまたはスパークによって、当該バッテリーセル100の上部及び下部に位置した第2封口キャップ213が、図7に示したように溶融する。これによって、前記第2封口キャップ213が消失して上板部210の冷却水W1が流路Fの開放された貫通口212から当該バッテリーセル100へすぐ投入される。
【0059】
言い換えると、発火したバッテリーセル100の上部に位置した第2封口キャップ213が融融することで当該バッテリーセル100の真上から冷却水W1が投入され得る。これによって、最初に発火したバッテリーセル100の鎮火が迅速に行われ、周辺のバッテリーセル100への熱拡散が阻止されることが可能である。
【0060】
図8は、本発明の一実施例によるバッテリーモジュール10において、特定のバッテリーセル100のガス排出状況を説明するための模式図である。
【0061】
バッテリーセル100の発火時に生成される高温のガス及び前記ガスと共に飛散する火炎も連鎖発火の要因として作用し得る。このような高温のガスと火炎から周辺のバッテリーセル100を保護するために、本実施例によるモジュールケース200は、図8のように、上板部210の第2プレート215にガス抜き口216が設けられている。
【0062】
より具体的には、図2及び図8を共に参照すると、前記ガス抜き口216は、流路Fに沿って第2プレート215の領域に亘って形成され、一つ以上が備えられ得る。
【0063】
特に、前記ガス抜き口216は、メッシュ構造で設けられ得る。本実施例のガス抜き口216は、第2プレート215の領域をメッシュ構造で加工したものである。前記ガス抜き口216の代案例として、第2プレート215に開口を形成し、前記開口にメッシュ網またはメッシュ構造のカバーを設けることが考えられる。
【0064】
図6及び図7に示したように、前記ガス抜き口216は、熱溶融可能な材料から形成された第1封口キャップ217によって密封され得る。これによって、正常状態のバッテリーモジュール10の場合、ガス抜き口216が遮られており、流路Fの冷却水W1がモジュールケース200の外部へ漏れない。また、モジュールケース200の外部から異物が前記ガス抜き口216へ流入する恐れがない。
【0065】
しかし、バッテリーセル100が発火する場合、図8のように冷却水W1が上板部210の流路Fから貫通口212を通してバッテリーセル100へ投入された後には、上板部210の流路Fに空間ができる。この際の上板部210の流路Fがガス排出経路として活用され得る。高温のガスと火炎は開放された貫通口212を通して上板部210の流路Fに沿って移動し、第1封口キャップ217を溶融させる。これによって、第1封口キャップ217が消失してガス抜き口216が開放されると、モジュールケース200の内外部の圧力差によって高温のガスが速い速度で前記ガス抜き口216から排出され得る。この際、火炎またはスパークは、流路Fに沿って移動する過程で温度低下で消滅するか、またはメッシュ構造のガス抜き口216によってフィルタリングされ得る。したがって、火炎またはスパークの外部流出は遮断され、ガスのみを外部へ迅速に排出できる。
【0066】
続いて、下記の図面を参照して本実施例の変形例を説明する。
【0067】
図9は、図2のモジュールケース200の上板部210の変形例を示した図であり、図10及び図11は、各々図5の第2封口キャップ213の変形例を示した図である。
【0068】
以前の図面と同じ部材番号は同じ部材を示し、同じ部材についての重複する説明は省略し、実施例との差異点を中心にして説明する。
【0069】
図9を参照すると、本変形例によるモジュールケース200の上板部210Aは、図5のガス抜き口216よりも長手方向へ長く延びた形態のガス抜き口216を備える。このようにガス抜き口216を拡大することで多量のガスをより円滑かつ迅速に排出可能である。
【0070】
次に、図10及び図11は、各々第2封口キャップ213の変形例を示した図であり、前記図10及び図11のように第2封口キャップ213と第1プレート211とのシーリング面積の最適化及び結合力の強化のために突起213dの形状、個数及び位置が多様に設けられ得る。
【0071】
上述した本発明によるバッテリーモジュール10の構成とその作用によれば、バッテリーセル100の冷却性能が優秀であるだけでなく、バッテリーセル100の発火時、当該バッテリーセル100に冷却水W1を即時に投入可能であるので、バッテリーモジュール10内の熱拡散を効果的に遮断可能である。また、バッテリーセル100の発火時に発生するガス及び火炎、スパークなどを上板部210の流路Fへガイドし、火炎、スパークなどの外部流出は遮断しながらガスのみを外部へ排出させることができる。
【0072】
一方、本発明によるバッテリーパック(図示せず)は、上述したバッテリーモジュールを一つ以上含み得る。前記バッテリーパックは、バッテリーモジュールに加え、バッテリーモジュールを収納するためのパックケース(図示せず)、バッテリーモジュールの充放電を制御するための各種装置(図示せず)、例えば、BMS(Battery Management System)、電流センサー、ヒューズなどをさらに含み得る。
【0073】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0074】
なお、本明細書において、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が使用されたが、このような用語は相対的な位置を示し、説明の便宜のためのものであるだけで、対象となる事物の位置や観測者の位置などによって変わり得ることは、当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0075】
10 バッテリーモジュール
100 バッテリーセル
200 モジュールケース
210 上板部
210A 上板部
211 第1プレート
212 貫通口
213 第2封口キャップ
213a 本体
213b 上部フランジ
213c 下部フランジ
213d 突起
215 第2プレート
216 口
217 第1封口キャップ
220 下板部
223 第2封口キャップ
230 壁体フレーム
300 隔壁
400 熱伝達物質
図1
図2
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図7
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図11