(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】歯の粉末ジェットクリーニング用のコーティングされた粉末
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20241111BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241111BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/73
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2023509653
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021072313
(87)【国際公開番号】W WO2022034109
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500000485
【氏名又は名称】フェルトン ホールディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ferton Holding SA
【住所又は居所原語表記】rue Saint Maurice 34 CH-2800 Delemont,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドネ、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ガッティ、シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】アントン、オリバー マルティン
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0015006(US,A1)
【文献】独国実用新案第20009665(DE,U1)
【文献】特表2003-528127(JP,A)
【文献】特表2002-538191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末であって、前記粉末は、前記粉末の総重量に対して、90重量%以上の第1の材料の粒子と、前記粉末の総重量に対して、0.1-10重量%の第2の材料と、を含み、前記第2の材料は、前記第1の材料の前記粒子の表面上をコーティングし、前記第1の材料の水に対する溶解度は、1g/L以上であ
り、
前記第1の材料は、グリシンと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択され、前記第2の材料は、アミノ酸と、アルジトールと、糖と、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される、粉末。
【請求項2】
前記粉末は、前記粉末の総重量に対して、93重量%以上の前記第1の材料と、0.2-7重量%の前記第2の材料と、を含む、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記第2の材料は、前記第1の材料の前記粒子の表面の80%以上を覆う、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記第2の材料の水に対する溶解度は、1g/L以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記粉末の前記粒子は、5-75μmの平均粒子サイズ(d
50)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記第1の材料は、アルジトールで
ある、請求項
1に記載の粉末。
【請求項7】
前記第2の材料は、アスパラギンと、アルギニンと、アラニンと、エリスリトールと、タガトースと、トレハロースと、ラムノースと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される、請求項
1に記載の粉末。
【請求項8】
前記第2の材料は、アスパラギンと、アルギニンと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
前記粉末の最大粒子サイズ(d
100)は、150μm以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記粉末は、0.5~2重量%の非晶質二酸化ケイ素をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
歯面のクリーニングの方法であって、請求項1~
10のいずれか一項に記載の粉末が、粉末ジェットデバイスを用いて歯面上に気体キャリア媒体、液体キャリア媒体、又はその両方と共に噴霧される、方法。
【請求項12】
粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける粉末の使用であって、請求項1~
10のいずれか一項に記載の前記粉末が用いられる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末に関する。本発明は、さらに、粉末ジェットデバイスにおける該粉末の使用と、該粉末を用いることによって歯をクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
専門家による歯科予防は、粉末ジェットクリーニング又はエアーポリッシングを含むメンテナンス治療であり、患者が日々のホームケアだけで除去することが可能でない歯垢及び歯石を除去することを意図したものである。そうした粉末ジェットクリーニングは、全ての歯面と、歯面間、インプラント間、ブラケット間、及び器具間の間隙と、に到達してクリーニングすることを可能とするので、特に効果的である。
【0003】
粉末ジェットクリーニングの処理では、粉末は気体キャリア媒体(通常、空気)とともに歯面上に噴霧される。そしてそれによって、歯の効率的なクリーニングが可能になる。これに加えて、又は気体キャリア媒体に代えて、液体キャリア媒体(例えば、水)が、用いられ得る。粉末ジェットクリーニングは、粉末ジェットデバイスを用いて行われ、そして、反復移動も異なる段階も必要としないので、特に効果的である。更に、粉末ジェットクリーニングは、他のクリーニング方法よりも速く、また、正確に習得するのに必要な訓練が比較的少ない。該クリーニングは、粉末が十分に軟らかく、粒子が十分に小さい場合、エナメル象牙質及び柔組織の損傷無しで行われる。
【0004】
特許文献1は、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、あるいは炭酸カルシウム又はグリシンのベース粉末と、歯の再石灰化を助長する追加の活性成分(抗菌性の構成要素又は成分等)と、を含む歯科用クリーニング粉末を開示する。
【0005】
特許文献2は、約10-100μmの平均粒子サイズの、優しいが効率的な歯のクリーニング用の粒子を開示する。小さい粒子サイズは、歯肉縁下の歯面のクリーニングに好ましく、大きい粒子サイズは、歯肉縁上の歯面のクリーニングに好ましい。より大きい粒子サイズは、通常では、歯肉縁下の歯面又は歯肉のような柔組織にぶつかる時に不快感や苦痛を生じる。
【0006】
歯科クリーニングにおいて用いられる粉末の重要な特徴は、粉末の硬度及び研磨性である。硬すぎで研磨性の高すぎる粉末は、エナメル質及び歯科修復用コンポジットを損傷し得る。それゆえに、重炭酸ナトリウム等の軟らかい材料が、しばしば、粉末ジェットデバイスに用いられる。しかしながら、係る材料を用いても、患者らはしばしば不快感を有し、象牙質及び歯肉等の柔組織の損傷のリスクがある。そのため、係る技術は、エナメル質に対してまた一般的には歯肉縁上に対してのみ用いられている。クリーニング粉末の更に重要な特徴は、クリーニング効率である。粉末のより低い研磨性は、より低いクリーニング効率をしばしば伴う。それゆえに、研磨性とクリーニング効率との間のバランスが所望され、最適なのは、可能であれば、研磨性が低くありながらも、それでもなおクリーニング効率が高い又は十分なことである。
【0007】
粉末ジェットデバイスにおいて用いられる効率的なクリーニング粉末は、特許文献3に説明されるように、アルジトールに基づき、特にマンニトール及び/又はエリスリトールに基づく。
【0008】
歯肉縁下の治療用の粉末は、グリシンに基づく。そうしたグリシン粉末は、研磨性がより低く、ゆえに、歯肉及び露出した象牙質等、柔組織に対して用いられるときでさえ、患者らにとってより安全で、より快適である。しかしながら、より研磨性の高い重炭酸ナトリウム粉末と比較して、通常では、クリーニング効率の大きな減少が経験される。そのため、同じクリーニング結果のためには、より多くの時間及びより多くの量の粉末が必要とされる。
【0009】
歯のクリーニング用の別の粉末は、エリスリトールに基づく。エリスリトールは、グリシンよりも硬いが、重炭酸ナトリウムよりも軟らかい材料である。エリスリトール粉末は、粉末ジェットクリーニングにおいて、グリシンよりもより効率的である。ゆえに、治療を行うためには、より少ない時間及びより少ない量の粉末しか必要ない。しかしながら、研磨性は、また、わずかに高められる。
【0010】
上記に鑑み、研磨性が低く、それでもなおクリーニング効率が高い歯科用クリーニング粉末の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国実用新案第20009665号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3253359号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2228175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえに、本発明の目的は、従来の粉末の不都合を克服する、歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末、特に、既知の粉末よりも、研磨性がより低く、それでもなおクリーニング効率が良い、歯のクリーニング粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
係る目的は、本発明に従って、粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末であって、前記粉末は、前記粉末の総重量に対して、90重量%以上の第1の材料の粒子と、前記粉末の総重量に対して、0.1-10重量%の第2の材料と、を含み、前記第2の材料は、前記第1の材料の前記粒子の表面上をコーティングし、前記第1の材料の水に対する溶解度は、1g/L(1リットル当たりのグラム)以上である、粉末によって達成される。
【0014】
該目的は、歯面のクリーニングの方法であって、前記粉末は、粉末ジェットデバイスで歯面上に気体キャリア媒体、液体キャリア媒体、又はその両方と共に噴霧される、方法によってさらに達成される。該目的は、粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける、そうした粉末又は粉末混合物の使用によって、さらに達成される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、従属項、及び下記の説明に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】10%のエリスリトールでコーティングされたエリスリトールと、1%のアスパラギンでコーティングされたエリスリトールと、0.5%のコラーゲンでコーティングされたエリスリトールと、比較した、エリスリトールのクリーニング効率[mm
2/g]。
【
図2】10%のエリスリトールでコーティングされたエリスリトール粉末と、1%のアスパラギンでコーティングされたエリスリトールと、0.5%のコラーゲンでコーティングされたエリスリトールと、比較した、エリスリトール粉末の研磨性[μm/g]。
【
図3】コーティング無しのエリスリトール粉末に対する、アルギニンと、シクロデキストリンと、アルギニン+シクロデキストリンと、アスパラギンと、コラーゲンと、ビタミンCと、エリスリトールと、アラニンと、ローダミンと、の相異なるコーティングでコーティングされたエリスリトール粉末の研磨性。エリスリトールと、アルギニンと、アラニンと、シクロデキストリンと、アルギニン+シクロデキストリンと、アスパラギンでコーティングされたエリスリトールは、エリスリトールそれ自体と比較して、そしてエリスリトール+コラーゲンと、エリスリトール+ビタミンCと、エリスリトール+ローダミンと、比較して、研磨性が低減する。この低減された研磨性のものは、例えば、コラーゲンでコーティングされたエリスリトールと、ビタミンCでコーティングされたエリスリトールと、ローダミンでコーティングされたエリスリトールと、に対して、有利である。
【
図4】コーティング無しのグリシン粉末に対する、シクロデキストリンでコーティングされたグリシンの研磨性。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の材料の粒子上をコーティングする比較的少量の第2の材料によって、第1の材料の粒子のみを含む粉末と比較して、より低い研磨性と同時に良いクリーニング効率を有する粉末を提供することが、驚くべきことに見出された。係る説明に束縛されることなく、係る結果は、コーティングで粒子の衝撃を緩衝することによって得られていると仮定される。このコーティングは、粒子が歯面にぶつかるときに壊れて、それによってエネルギーを吸収して、緩衝効果を生じる。これによって、研磨性が減少する一方、依然として高いクリーニング効率は、コーティングの破壊後にも依然として存在する第1の材料の粒子によるものである。係る効果は、第1の材料の1g/L以上の、水に対する良い溶解度と結びつけられる。この溶解度によって、不注意に吸入された粒子は、肺に存在する水膜に溶解されるので、粉末の適合性が改善される。
【0018】
本発明における「コーティングされた(coated)」又は「コーティング(coating)」は、第2の材料が第1の材料の粒子の表面上の層又はフィルムを形成することを意味する。第2の材料は、第1の材料の粒子の表面の一部又は表面全体を覆ってよい。コーティングの厚さは、粒子間で変化してよい。その厚さは、好ましくは、0.01-10μmであり、さらに好ましくは、0.02-8μmであり、最も好ましくは、0.03-5μmである。
【0019】
本発明において、粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末は、粉末ジェットデバイスを用いた粉末噴霧による歯面のクリーニングにおける使用のための粉末を意味する。
【0020】
歯面のクリーニングとは、本発明の意味の範囲内では、歯面からの歯垢及び/又は歯石の部分的な除去又は完全な除去のことである。そのクリーニングは、上記に説明したように、粉末噴霧による歯のクリーニング用の従来の粉末ジェットデバイスで行われる。
【0021】
本発明における粉末の最大粒子サイズ(d100)は、効率的な歯のクリーニングを達成するために、好ましくは、200μm以下であり、さらに好ましくは、150μm以下であり、さらに一層好ましくは、120μm以下であり、最も好ましくは、100μm以下である。平均粒子サイズ(d50)は、好ましくは、5~75μmであり、特に、10~70μmである。粒子サイズは、提供される歯科クリーニングの適用領域に適合されてよい。例えば、より小さい平均粒子サイズの粒子は、歯肉縁下の歯面のクリーニングに好ましく、特に約5~40μmであり、更に好ましくは10~30μmである。歯肉縁上の歯面のクリーニングに関しては、より大きい平均粒子サイズが好ましく、特に約20~75μmが好ましく、より好ましくは、30~70μmが好ましい。
【0022】
本発明の文脈では、d50値は、体積に関して粒子のうちの50%がd50値よりも小さく、体積に関して粒子のうちの50%がd50値よりも大きい、粒子サイズである。これは、d100値(いわゆる、最大粒子サイズ)にもあてはまる。所与のd100値に関しては、体積について100%の粒子が係る値よりも小さい。特定の最大粒子サイズを有する粉末は、適切なメッシュサイズを有するふるいを用いて粉末をふるい分けることによって調製されることが可能である。本発明におけるd値は、乾式分散ユニットを用いるレーザ回折(シロッコ(Scirocco)乾式分散ユニットを装着した、150kPaで作動する、マルバーン(Malvern)社製マスターサイザー2000(Mastersizer 2000))によって決定される。
【0023】
本発明に従った粉末、又は粉末混合物は、複数の粒子を含み、該粉末のこれらの粒子は、第2の材料でコーティングされた第1の材料の粒子を含む。従って、第1の材料の粒子は、コーティングによって、該粉末の粒子よりもややより小さい。上記の粒子サイズは、該粉末の粒子、すなわち、コーティングされた粒子を表す。
【0024】
本発明に従った粉末は、粉末の総重量に対して、90重量%以上の第1の材料の粒子と、0.1-10重量%の第2の材料と、を含む。本発明の好ましい実施形態では、粉末は、粉末の総重量に対して、90-99.9重量%の第1の材料と、粉末の総重量に対して、0.1-10重量%の第2の材料と、を含む。さらに好ましくは、本発明における粉末は、93重量%以上、好ましくは、93-99.8重量%の第1の材料と、0.2-7重量%の第2の材料と、を含む。
【0025】
本発明の意味の範囲内では、粉末の構成要素の量(重量%(wt.-%、weight-%)において与えられる)は、総計100%になる。一例として、95重量%の第1の材料を含む粉末は、合計量で5重量%の他の構成要素を含む。5重量%という量は、例えば、4重量%の第2の材料と、1重量%の追加の構成要素と、を含むことが可能である。
【0026】
説明したように、第1の材料の表面は、部分的に又は完全に第2の材料で覆われることが可能である。好ましくは、第2の材料は、第1の材料の粒子の表面の80%以上を覆い、さらに好ましくは、90%以上を覆い、最も好ましくは、第1の材料の粒子の表面の95%以上を覆う。
【0027】
第1の材料は、1g/L以上の水に対する良い溶解度を有する。溶解度は、20℃の温度で100kPaの圧力での蒸留水の場合を指す。第1の材料の水に対する溶解度は、より好ましくは、2g/L以上であり、さらに一層好ましくは、3g/L以上であり、最も好ましくは、5g/L以上である。水に対する高い又は良い溶解度の利点は、粒子が不注意に吸入された場合、水溶性物質は、肺に存在する水膜に溶解されるので、水溶性の材料は肺において問題を起こしにくいことである。
【0028】
更に、第2の材料も水に対する良い溶解度を有することが好ましい。特に、第2の材料の水に対する溶解度は、好ましくは、1g/L以上であり、さらに好ましくは、2g/L以上であり、さらに一層好ましくは、3g/L以上であり、最も好ましくは、5g/L以上である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、第1の材料は、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。これらの材料は、歯科用クリーニング粉末に適した材料として既知である。さらに好ましくは、第1の材料は、グリシンと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。さらに一層好ましくは、第1の材料は、アルジトール、又は複数のアルジトールの混合物である。
【0030】
本発明におけるアルジトールは、エリスリトールと、ソルビトールと、キシリット(キシリトール)と、マンニット(マンニトール)と、ラクチトールと、トレイット(トレイトール)と、アラビトールと、イソマルトと、から成る群から好ましくは選択される。最も好ましくは、アルジトールはエリスリトールである。それゆえに、第1の材料は、より好ましくは、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、エリスリトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。
【0031】
本発明の更に好ましい実施形態では、第2の材料は、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群からさらに選択され、さらに好ましくは、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、エリスリトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。第1の材料及び第2の材料は、同一もしくは相異なっていることが可能である。そしてそれは、第1の材料の粒子は、0.1-10重量%の同一の材料でコーティングされるという意味である。従って、第1の材料及び第2の材料は、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。アルジトールは、好ましくはエリスリトールである。
【0032】
第1の材料及び第2の材料は、さらに好ましくは、同一の材料から作成されないことが見出されるに至った。第2の材料は、さらに一層好ましくはタンパク質、アミノ酸、ビタミン、多糖、有機酸、ペプチドホルモン、天然化合物、アルコール、第4級アミン、ビグアニド、糖、又はそれらの混合物である。タンパク質は、好ましくは、コラーゲンであり、特に、I型コラーゲン又はII型コラーゲンである。アミノ酸は、好ましくは、アスパラギン又はアルギニンである。ビタミンは、好ましくは、ビタミンCである。多糖は、好ましくは、ヒアルロン酸又はシクロデキストリンである。有機酸は、好ましくは、アスピリンである。ペプチドホルモンは、好ましくは、IGF-1又はIGF-2である。天然化合物は、好ましくは、アロエベラエキス又はプロポリスである。アルコールは、好ましくは、メントールである。第4級アミンは、好ましくは、塩化セチルピリジニウムである。ビグアニドは、好ましくは、クロルヘキシジンである。そして、糖は、好ましくは、ラムノースである。さらに好ましくは、第2の材料は、アスパラギンと、アルギニンと、コラーゲンと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される。コラーゲンは、好ましくは、I型コラーゲン又はII型コラーゲンである。好ましいシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンである。
【0033】
第2の材料は、さらに一層好ましくは、アミノ酸と、アルジトールと、糖と、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される。アミノ酸は、好ましくは、アスパラギン、アルギニン、及び/又はアラニンであり、特に好ましくは、アスパラギン及び/又はアルギニンである。アルジトールは、好ましくは、エリスリトールである。糖は、好ましくは、ラムノース、タガトース、及び/又はトレハロースであり、さらに好ましくは、ラムノースである。シクロデキストリンは、α-,β-,γ-又はδ-シクロデキストリンであることが可能である。好ましくは、α-,β-及び/又はγ-シクロデキストリンである。さらに一層好ましくは、第2の材料は、アスパラギンと、アルギニンと、アラニンと、エリスリトールと、シクロデキストリンと、タガトースと、トレハロースと、ラムノースと、それらの混合物と、から成る群から選択される。第2の材料は、さらに一層好ましくは、アスパラギンと、アルギニンと、アラニンと、エリスリトールと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される。アスパラギンと、アルギニンと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、は、第2の材料に最も好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、第1の材料は、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、エリスリトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。そして、第2の材料は上記に説明した群から選択される。さらに好ましい実施形態では、第1の材料は、アルジトール又は複数のアルジトールの混合物であり、好ましくは、エリスリトールである。そして、第2の材料は、上記に説明した群から選択され、特に、アスパラギンと、アルギニンと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から選択される。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態では、粉末は、これに加えて、流動助剤、漂白剤、殺菌剤、鎮痛剤、及び/又は香味料を含む。それらの追加の物質の総量は、好ましくは、粉末の総重量に対して、0.2-5重量%であり、さらに好ましくは、0.5-2重量%である。
【0036】
流動助剤は、好ましくは、二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、及び/又は水酸化アルミニウムから成る群から選択される。二酸化ケイ素は、さらに、粉末の総重量に対して、特に、0.2-3重量%の量が好ましく、最も好ましくは、0.5-2重量%の量が好ましい。
【0037】
好ましい漂白剤は、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、又は過酸化亜鉛等の過酸化物であるか、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、又は過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩であるか、又は過ホウ酸塩である。
【0038】
好ましい殺菌剤は、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、ヘキセチジン、スズ(II)塩、及び亜鉛塩である。好ましい鎮痛剤は、リドカイン及びアルチカインである。
【0039】
本発明に従った、粉末ジェットデバイスにおける使用のための粉末は、記載の構成要素から成ることが、さらに好ましい。一例として、好ましい粉末は、90-99.9重量%の第1の材料であって、好ましくは、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される、第1の材料と、0.1-10重量%の第2の材料であって、好ましくは、アスパラギンと、アルギニンと、コラーゲンと、シクロデキストリンと、それらの混合物と、から成る群から選択される、第2の材料と、随意で、0.2-3重量%の流動助剤であって、特に二酸化ケイ素である、流動助剤と、さらに随意で、0.2-5重量%の殺菌剤、漂白剤、及び/又は鎮痛剤と、から成る。
【0040】
本発明は、粉末噴霧による歯面のクリーニング用の粉末ジェットデバイスにおける、本発明に従った、粉末又は粉末混合物の使用に、さらに関する。粉末ジェットデバイスにおいて用いられる、該粉末又は粉末混合物は、粉末の総重量に対して、90重量%以上の第1の材料の粒子と、粉末の総重量に対して、0.1-10重量%の第2の材料と、から成る。そして、該第2の材料は、該第1の材料の該粒子の表面上をコーティングし、該第1及び第2の材料は相異なっていて、そして、該第1の材料は、グリシンと、炭酸水素ナトリウムと、タガトースと、トレハロースと、アルジトールと、それらの混合物と、から成る群から選択される。
【0041】
本明細書に説明した粉末の好ましい実施形態は、粉末又は粉末混合物の使用にも好ましい。
本発明は、さらに、歯面のクリーニングの方法であって、本発明に従った粉末は、粉末ジェットデバイスを用いて気体キャリア媒体及び/又は液体キャリア媒体(特に、空気、及び随意で、水等の流体)と共に、歯面上に噴霧される、方法に関する。
【0042】
以下の実施例は、本発明に従った好ましい実施形態を提供する。
実施例
実施例1:1重量%のアスパラギンでコーティングされたエリスリトール
実験は、円錐形状の流動層のパイロットバッチにおいて実施した。最初の粒子重量1kg、入口エアー温度60-90℃、液体供給量10ml・min-1、及び相対エアー噴霧圧力200-350kPaを、処理パラメータとして選択した。2.5%のL-アスパラギン溶液を、エリスリトール粒子上に40分間噴霧した。実験中、全ての処理パラメータ(エアー入口温度、エアー流量、液体供給量、及び噴霧圧力)は、一定に保った。実験の最後に、コーティングされた粉末を除去し、固形分が98%以上であることを確認した。粉末に添加されたアスパラギンの量は、約1%であった。結果として生じる平均粒子サイズは、20μmであった。
【0043】
実施例2:0.5重量%のII型コラーゲンでコーティングされたエリスリトール
実験は、円錐形状の流動層のパイロットバッチにおいて実施した。最初の粒子重量1kg、入口エアー温度60-90℃、液体供給量10ml・min-1、及び相対エアー噴霧圧力100-250kPaを、処理パラメータとして選択した。2%のコラーゲン溶液を、エリスリトール粒子上に20分間噴霧した。実験中、全ての処理パラメータ(エアー入口温度、エアー流量、液体供給量、及び噴霧圧力)は、一定に保った。実験の最後に、コーティングされた粉末を除去し、固形分が98%以上であることを確認した。粉末に添加されたコラーゲンの量は、約0.5%であった。結果として生じる平均粒子サイズは、15μmであった。
【0044】
実施例1及び実施例2に従った2つの粉末は、クリーニング効率及び研磨性に関して、10重量%のエリスリトールでコーティングされたエリスリトール粉末と共に、試験された。結果は、エリスリトール粉末と比較して、
図1及び
図2に示された。
【0045】
効率又はクリーニング効率は、粉末1g当たりのクリーニングされた表面である。
研磨性は、粉末ジェットデバイスを用いて、直接、表面上に45°及び2mmの飛んだ距離で、EMS社製エアフロープロフィラキシスマスター(Airflow prophylaxis master)デバイスを用いて、粉末を飛ばすことによって決定される。表面は、純アルミニウム(99.5%)から作成される。適用時間は、30秒である。プレートは、昇降機上に置かれて、2mmの距離に到達する。ノズルは、ノズル位置を十分に固定するために、樹脂モールドに固定される。重量は、試験の前後の粉末チャンバーの重さを計ることによって知られる。全ての測定は、3回以上繰り返されて、平均が研磨性とみなされる。穴の深さは、レーザ側面計によって測定した。
【0046】
本発明における粉末の平均粒子サイズは、150kPaの分散圧力で、シロッコ分散ユニットを用いた、マルバーン社製マスターサイザー2000(Malvern Instruments Ltd、マルバーン、英国)において決定した。
【0047】
実施例3:異なるコーティングのエリスリトール及びグリシン
上記の実験に従って、エリスリトール及びグリシンは、
図3及び
図4に示されたように異なるコーティングでコーティングされた。研磨性は、上記に説明されたように決定した。
【0048】
本発明は、
図1~
図4に関して、さらに下記に説明される。
本発明に従った粉末であって、第2の材料は第1の材料の粒子上をコーティングする、粉末は、コーティング無しの粉末と比較して、低減した研磨性を示し、それでもなお良いクリーニング効率を有することが証明されるに至った。効率対研磨性の比は、本発明に従った、コーティングされた粉末を、標準のエリスリトール粉末又はグリシン粉末よりも、より強力にする。