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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ワイピング方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/01 401
B41J2/165 401
B41J2/165 303
B41J2/165 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023510750
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022009963
(87)【国際公開番号】W WO2022209624
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021056601
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】来海 公哉
(72)【発明者】
【氏名】堤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上井 竜己
(72)【発明者】
【氏名】今西 亮太
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139088(JP,A)
【文献】特開2004-209107(JP,A)
【文献】特開2018-47635(JP,A)
【文献】特開2004-188369(JP,A)
【文献】特開2009-45795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257122(US,A1)
【文献】特開2001-260371(JP,A)
【文献】特開平10-286970(JP,A)
【文献】特開平6-126969(JP,A)
【文献】特開2009-226717(JP,A)
【文献】特開2004-268363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイピング部材と、前記ワイピング部材を支持する支持部材とを有するワイパーによって、液体吐出ヘッドにおけるノズルが開口している吐出面をワイピングするワイピングステップを有しており、
前記ワイピング部材は、
第1面及び該第1面の反対側に位置する第2面を有している弾性部材と、
前記第1面及び前記第2面にわたって前記弾性部材に重なっており、保液性を有している保液部材と、を有しており、
前記ワイピングステップは、前記第1面が面する側が前記吐出面に当接し、前記第2面が面する側が前記支持部材に当接して前記ワイピング部材が厚み方向に挟まれるように撓ませるステップを含んでおり、
前記ワイピング部材は、前記支持部材に設けられた、前記吐出面に平行な第3面と、前記吐出面との間に挟まれており、
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記支持部材は、
前記第2面が面している側から前記被保持部に対して当接している保持面と、
前記保持面に対して前記先端の側に次の順番でつながった凸曲面および前記第3面を有しており、
前記凸曲面は、撓み変形していない状態の前記ワイピング部材に対して前記先端の側に位置するほど前記第2面が面する側へ離れるように湾曲している
ワイピング方法。
【請求項2】
ワイピング部材と、前記ワイピング部材を支持する支持部材とを有するワイパーによって、液体吐出ヘッドにおけるノズルが開口している吐出面をワイピングするワイピングステップを有しており、
前記ワイピング部材は、
第1面及び該第1面の反対側に位置する第2面を有している弾性部材と、
前記第1面及び前記第2面にわたって前記弾性部材に重なっており、保液性を有している保液部材と、を有しており、
前記ワイピングステップは、前記第1面が面する側が前記吐出面に当接し、前記第2面が面する側が前記支持部材に当接して前記ワイピング部材が厚み方向に挟まれるように撓ませるステップを含んでおり、
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記保液部材は、
前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している第1部分と、
前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している第2部分と、を有しており、
前記ワイピングステップは、
前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる当接ステップと、
前記本体部が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる第1ステップを含んでおり、
前記第1ステップでは、前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で前記第2部分を前記第2面に向かって押圧しつつ、前記ワイピング部材を前記第1方向へ移動させる
イピング方法。
【請求項3】
ワイピング部材と、前記ワイピング部材を支持する支持部材とを有するワイパーによって、液体吐出ヘッドにおけるノズルが開口している吐出面をワイピングするワイピングステップを有しており、
前記ワイピング部材は、
第1面及び該第1面の反対側に位置する第2面を有している弾性部材と、
前記第1面及び前記第2面にわたって前記弾性部材に重なっており、保液性を有している保液部材と、を有しており、
前記ワイピングステップは、前記第1面が面する側が前記吐出面に当接し、前記第2面が面する側が前記支持部材に当接して前記ワイピング部材が厚み方向に挟まれるように撓ませるステップを含んでおり、
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記保液部材は、
前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している第1部分と、
前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している第2部分と、を有しており、
前記ワイピングステップは、
前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる当接ステップと、
前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる第1ステップと、
前記第2部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第2面が面している第2方向へ前記ワイピング部材を移動させる第2ステップと、を含んでいる
イピング方法。
【請求項4】
前記ワイピング部材は、前記支持部材に設けられた、前記吐出面に平行な第3面と、前記吐出面との間に挟まれている
請求項2または3に記載のワイピング方法。
【請求項5】
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記支持部材は、
前記第2面が面している側から前記被保持部に対して当接している保持面と、
前記保持面に対して前記先端の側に次の順番でつながった凸曲面および前記第3面を有しており、
前記凸曲面は、撓み変形していない状態の前記ワイピング部材に対して前記先端の側に位置するほど前記第2面が面する側へ離れるように湾曲している
請求項に記載のワイピング方法。
【請求項6】
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記保液部材は、
前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している第1部分と、
前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している第2部分と、を有しており、
前記ワイピングステップは、
前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる当接ステップと、
前記本体部が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる第1ステップを含んでおり、
前記第1ステップでは、前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で前記第2部分を前記第2面に向かって押圧しつつ、前記ワイピング部材を前記第1方向へ移動させる
請求項1、3のいずれか1項に記載のワイピング方法。
【請求項7】
前記第1ステップでは、前記第2部分は、前記吐出面に近い領域ほど遅いタイミングで前記第2面に向かって押圧される
請求項2または6に記載のワイピング方法。
【請求項8】
前記ワイピング部材は、
前記第1面に沿う方向の両側の端部である先端及び後端と、
前記先端を含む本体部と、
前記本体部よりも前記後端の側に位置している被保持部と、を有しており、
前記保液部材は、
前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している第1部分と、
前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している第2部分と、を有しており、
前記ワイピングステップは、
前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる当接ステップと、
前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる第1ステップと、
前記第2部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第2面が面している第2方向へ前記ワイピング部材を移動させる第2ステップと、を含んでいる
請求項1、2、4のいずれか1項に記載のワイピング方法。
【請求項9】
撓んだ前記ワイピング部材は、
前記第1方向に移動する際に、前記第1面が面する側が前記吐出面に当接するように前記吐出面と前記支持部材との間で厚み方向に挟まれており、
前記第2方向に移動する際に、前記第2面が面する側が前記吐出面に当たるように吐出面と支持部材との間で厚み方向に挟まれている
請求項3または8に記載のワイピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴(例えばインク滴)を記録媒体(例えば紙)に向かって吐出する液体吐出ヘッド(例えばインクジェットヘッド)が知られている。このような液体吐出ヘッドは、例えば、液滴を吐出する複数のノズルが開口している吐出面を有している。この吐出面に対してワイピング部材を摺動させてワイピングを行う技術も知れられている(例えば下記特許文献1)。ワイピングによって、例えば、吐出面に堆積している固着インクが除去される。固着インクは、例えば、吐出後のインク滴の一部がミスト状になって舞い上がり、ミスト状のインクが吐出面に付着して固化することによって生じる。固着インクが除去されることによって、例えば、複数のノズルそれぞれの一部又は全部が固着インクによって塞がれる蓋然性が低減される。ひいては、液体吐出ヘッドの吐出特性が安定する。
【0003】
特許文献1は、弾性部材(特許文献1ではへら状ワイパと呼称)と、吸水部材(特許文献1では擦り部材と呼称)と、を有しているワイピング部材(特許文献1ではクリーナーと呼称)を開示している。擦り部材は、へら状ワイパの複数の面のうちの1つのみに対して、接着剤によって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-338552号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係るワイピング部材は、弾性部材と、保液部材と、を有している。前記弾性部材は、互いに異なる方向に面する第1面及び第2面を有している。前記保液部材は、前記第1面及び前記第2面にわたって前記弾性部材に重なっており、保液性を有している。
【0006】
本開示の一態様に係るワイパーは、上記ワイピング部材と、前記ワイピング部材を支持する支持部材と、を有している。前記ワイピング部材は、先端と、後端と、本体部と、被保持部と、を有している。前記先端及び前記後端は、前記第1面に沿う方向の両側の端部である。前記本体部は、前記先端を含む。前記被保持部は、前記本体部よりも前記後端の側に位置している。前記支持部材は、保持面と、凸曲面と、を有している。前記保持面は、前記本体部の前記第2面が面する側への撓み変形を許容するように、前記第2面が面している側から前記被保持部に対して当接している。前記凸曲面は、前記保持面に対して前記先端の側につながっており、撓み変形していない状態の前記ワイピング部材に対して前記先端の側に位置するほど前記第2面が面する側へ離れるように湾曲している。
【0007】
本開示の一態様に係るワイパーは、上記ワイピング部材と、第1支持部材と、第2支持部材と、を有している。前記第1支持部材は、前記第1面が面する側から前記ワイピング部材に当接している。前記第2支持部材は、前記第2面が面する側から前記ワイピング部材に当接している。
【0008】
本開示の一態様に係るワイピング方法は、上記ワイピング部材によって、液体吐出ヘッドにおけるノズルが開口している吐出面をワイピングするワイピングステップを有している。前記ワイピング部材は、先端と、後端と、本体部と、被保持部と、を有している。前記先端及び前記後端は、前記第1面に沿う方向の両側の端部である。前記本体部は、前記先端を含む。前記被保持部は、前記本体部よりも前記後端の側に位置している。前記保液部材は、第1部分と、第2部分と、を有している。前記第1部分は、前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している。前記第2部分は、前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している。前記ワイピングステップは、当接ステップと、第1ステップとを含んでいる。当接ステップでは、前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる。前記第1ステップでは、前記本体部が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる。このとき、前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で前記第2部分を前記第2面に向かって押圧しつつ、前記ワイピング部材を前記第1方向へ移動させる。
【0009】
本開示の一態様に係るワイピング方法は、上記ワイピング部材によって液体吐出ヘッドのノズルが開口している吐出面をワイピングするワイピングステップを有している。前記ワイピング部材は、先端と、後端と、本体部と、被保持部と、を有している。前記先端及び前記後端は、前記第1面に沿う方向の両側の端部である。前記本体部は、前記先端を含む。前記被保持部は、前記本体部よりも前記後端の側に位置している。前記保液部材は、第1部分と、第2部分と、を有している。前記第1部分は、前記本体部に位置するとともに前記第1面に位置している。前記第2部分は、前記本体部に位置するとともに前記第2面に位置している。前記ワイピングステップは、当接ステップと、第1ステップと、第2ステップと、を含んでいる。当接ステップでは、前記本体部の撓み変形を許容するように前記被保持部を保持した状態で、前記本体部を前記吐出面に当接させる。前記第1ステップでは、前記第1部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第1面が面している第1方向へ前記ワイピング部材を移動させる。前記第2ステップでは、前記第2部分が前記吐出面に当接している状態で、前記吐出面に沿う方向であって、前記被保持部において前記第2面が面している第2方向へ前記ワイピング部材を移動させる。
【0010】
本開示の一態様に係る液体吐出装置は、上記ワイピング部材と、移動装置と、を有している。前記移動装置は、前記ワイピング部材が液体吐出ヘッドにおけるノズルが開口している吐出面をワイピングするように前記ワイピング部材と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッド及びワイピング部材を模式的に示す斜視図。
図2A図1のワイピング部材における保液部材の弾性部材に対する取付態様の一例を示す側面図又は断面図。
図2B図2Aの続きを示す図。
図3A】変形例に係る取付態様を示す図。
図3B】他の変形例に係る取付態様を示す図。
図3C】更に他の変形例に係る取付態様を示す図。
図4A】変形例に係るワイピング部材を示す側面図又は断面図。
図4B】他の変形例に係るワイピング部材を示す側面図又は断面図。
図5図1のワイピング部材及び当該ワイピング部材を保持する保持部を示す側面図又は断面図。
図6A】ワイピングが行われているときの図5のワイピング部材及び保持部を示す側面図又は断面図。
図6B】ワイピングが行われているときの図5のワイピング部材及び保持部を示す他の側面図又は他の断面図。
図7A】変形例に係るワイピング部材及び保持部を示す側面図又は断面図。
図7B】他の変形例に係るワイピング部材及び保持部を示す側面図又は断面図。
図8A図5の保持部が有する2つの支持部材の固定態様の例を示す断面図。
図8B図5の保持部が有する2つの支持部材の固定態様の他の例を示す断面図。
図9A図5の保持部が有する支持部材がワイピング部材に接する状態の例を示す側面図又は断面図。
図9B図9Aの続きを示す図。
図10A図5の保持部が有する支持部材がワイピング部材に接する状態の他の例を示す側面図又は断面図。
図10B図10Aの時期とは異なる時期における図10Aに相当する図。
図11A】ワイピングの動作手順の一例を示す模式的な側面図又は断面図。
図11B図11Aの続きを示す図。
図11C図11Bの続きを示す図。
図11D図11Cの続きを示す図。
図12A】ワイピングの動作手順の他の例を示す模式的な側面図又は断面図。
図12B図12Aの続きを示す図。
図12C図12Bの続きを示す図。
図12D図12Cの続きを示す図。
図13A図1のワイピング部材への洗浄液の供給態様の例を示す模式図。
図13B図1のワイピング部材への洗浄液の供給態様の他の例を示す模式図。
図13C図1のワイピング部材への洗浄液の供給態様の更に他の例を示す模式図。
図14A図1のワイピング部材を有するプリンタの例を示す模式図。
図14B図14Aとは異なる状態で図14Aのプリンタを示す模式図。
図15A図1のワイピング部材を有するプリンタの他の例を示す模式図。
図15B図15Aとは異なる状態で図15Aのプリンタを示す模式図。
図16図1のワイピング部材を有するプリンタの更に他の例の側面図。
図17図16のプリンタの平面図。
図18図16のプリンタに利用されるワイパーの構成の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。また、細部は省略されることがある。
【0013】
実施形態の説明では、図示の例とは異なる種々の態様についても言及したり、複数の変形例を図示したりする。ただし、便宜上、特に断りなく、図示された実施形態(変形例を除く)を前提とした表現をすることがある。一の部材についての種々の態様と、他の部材についての種々の態様とは適宜に組み合わされてよい。ただし、便宜上、他の部材についての説明において、特に断りなく、一の部材について、図示された実施形態を例に取ることがある。変形例等の説明では、基本的に先に説明された例との相違点について述べる。特に言及がない事項については、先に説明された例と同様とされたり、類推されたりしてよい。
【0014】
図1は、実施形態に係る液体吐出ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」ということがある。)及びワイピング部材3を模式的に示す斜視図である。
【0015】
図1には、直交座標系D1-D2-D3を付している。ヘッド1及びワイピング部材3は、鉛直方向に対して任意の向きで利用されてよい。以下の説明では、便宜上、+D3側が鉛直上方であると仮定した表現をすることがある。
【0016】
ヘッド1は、液滴を吐出する装置である。ワイピング部材3は、ヘッド1をワイピングする部材である。図1は、ワイピングが行われている状態を示している。ヘッド1の通常の使用状態においては、図1とは異なり、ヘッド1とワイピング部材3とは互いに離れて配置されている。以下では、まず、ヘッド1について説明し、次に、ワイピング部材3について説明する。ヘッド1の説明においては、図1とは異なり、ワイピング部材3がヘッド1から離れた位置にあることを前提とした表現をすることがある。
【0017】
<液体吐出ヘッド>
ヘッド1は、-D3側へ液滴を吐出する装置である。液滴は、例えば、インク滴である。この場合、例えば、吐出されたインク滴は、ヘッド1に対して-D3側に配置された不図示の対象物(例えば紙などの記録媒体)に付着する。これにより、対象物に対する印刷が行われる。ヘッド1は、例えば、不図示のインクジェットプリンタに含まれている。
【0018】
上記のような動作を行うヘッド1の構成は、種々の構成とされてよく、また、公知の構成と同様とされて構わない。以下の説明では、ヘッド1の詳細については適宜に省略されることがある。また、以下の説明では、便宜上、ヘッド1が、記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタに含まれるものであることを前提とした表現をすることがある。
【0019】
ヘッド1は、-D3側に面している吐出面1aを有している。吐出面1aは、液滴を吐出する1以上(図示の例では複数)のノズル5を有している。なお、吐出面1aの語は、ヘッド1の-D3側の面の全体を指すと捉えられてもよいし、-D3側の面のうちの複数のノズル5が配置されている領域のみを指すと捉えられてもよい。
【0020】
吐出面1aは、例えば、平面状である。ただし、ヘッド1の用途によっては吐出面1aは曲面状等とされてもよい。吐出面1aの平面形状は任意である。図示の例では、吐出面1aは、D1方向に長い形状とされている。より詳細には、吐出面1aは、D1方向を長手方向とする概略長方形とされている。吐出面1aの寸法は任意である。例えば、D1方向の長さは、1cm以上1m以下とされてよいし、この範囲外とされても構わない。また、例えば、D2方向の長さ(吐出面1aの幅)は、1mm以上20cm以下とされてよいし、この範囲外とされても構わない。吐出面1aの材料は任意であり、例えば、金属又は樹脂とされてよい。また、上記金属又は樹脂を覆う撥水膜が設けられていてもよい。
【0021】
各ノズルの形状及び寸法は任意である。また、複数のノズル5の数及び配置も任意である。例えば、複数のノズル5は、1つ以上(図示の例では複数(2つ))の列を成すように配列されている。列が延びる方向(各列内のノズル5の並び方向)は、例えば、D1方向(別の観点では吐出面1aの長手方向)に沿っている。列が延びる方向は、D1方向に対して、平行であってもよいし(図示の例)、傾斜していてもよい。
【0022】
複数のノズル5によって列が構成されていることによって、列に交差する方向(例えばD2方向)にヘッド1と記録媒体とを相対移動させつつ、ヘッド1からインク滴を吐出することによって、列が延びる方向に幅を有する帯状の画像が形成される。また、ヘッド1と記録媒体との相対移動の方向(例えばD2方向)に見て、複数の列同士でノズル5の位置が互いに重ならないようにノズル5が配置されていることによって、各列内のノズル5のピッチよりも狭いピッチで記録媒体上にドットを形成することができる。
【0023】
ヘッド1は、例えば、圧電式のものであってもよいし、サーマル式のものであってもよい。圧電式のヘッドでは、圧電体によって液体に圧力が付与されることによってノズル5から液滴が吐出される。サーマル式のヘッドでは、発熱体の熱によって液体に気泡が形成され、気泡の形成に伴う圧力によってノズル5から液滴が吐出される。
【0024】
ヘッド1は、例えば、いわゆるラインプリンタに利用されるものであってもよいし、シリアルプリンタに利用されるものであってもよい。
【0025】
ラインプリンタに利用されるヘッド1は、D1方向において、概略、記録媒体の長さ(幅)全体に亘る長さを有している。そして、ヘッド1は、記録媒体に対してD2方向に相対移動しつつ、インク滴を吐出する。これにより、例えば、記録媒体の概ね全体に亘って画像が形成される。複数のヘッド1が配列されることによって、ラインプリンタのヘッドとして機能するユニットが構成されてもよい。この態様については、後に一例を挙げる。
【0026】
シリアルプリンタに利用されるヘッド1は、記録媒体に対してD2方向に相対移動しつつインク滴を吐出することによって帯状の画像を形成する動作と、記録媒体に対してD1方向に相対移動する動作とを繰り返す。これにより、複数の帯状の画像が連なって形成される。ひいては、記録媒体の概ね全体に亘って画像が形成される。
【0027】
(ヘッドが吐出する液体)
ヘッド1が吐出する液体は、例えば、インクとされてよい。インクは、例えば、着色剤と、溶剤とを含んでいる。着色剤は、例えば、顔料又は染料とされてよい。溶剤は、例えば、水又は有機溶剤とされてよい。技術分野によっては、インクと塗料との区別がなされることがあるが、実施形態の説明では両者は区別されない。
【0028】
また、ヘッド1が吐出する液体は、インク以外のものであってもよい。例えば、液体は、着色剤を含まないコーティング剤であってもよい。また、液体は、回路基板に印刷されて導電層を構成するものであってもよい。また、液体は、液状の化学薬剤、又は化学薬剤を含んだ液体であってもよい。
【0029】
<ワイピング部材>
ワイピング部材3は、吐出面1aをワイピングする部材である。背景技術の欄で述べたように、吐出面1aがワイピングされることによって、例えば、固着インクが除去されて、ヘッド1の吐出特性が安定する。また、ヘッド1が吐出する液体がインクでない場合においても、例えば、当該液体が固着したもの、及び/又は液体とは別個の塵が除去されて、ヘッド1の吐出特性が安定する。
【0030】
ワイピング部材3は、弾性部材7と、弾性部材7の表面に位置している保液部材9(吸液部材)とを有している。ワイピング部材3が弾性部材7を有することによって、例えば、ワイピング部材3(別の観点では保液部材9)の表面を吐出面1aに対して隙間無く当接させたり、及び/又は接触圧を適度な大きさにしたりすることが容易化される。ひいては、例えば、ワイピングによる洗浄の効果が向上する。ワイピング部材3が保液部材9を有することによって、例えば、保液部材9に洗浄液を保持させることが可能になり、ひいては、ワイピングによる洗浄の効果が向上する。
【0031】
ワイピング部材3は、弾性部材7及び保液部材9によって構成されている点を除いて、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様とされても構わない。例えば、ワイピング部材3の全体としての形状及び寸法等は、公知の構成と同様とされても構わない。以下では、まず、ワイピング部材3の全体の構成について説明し、その後、弾性部材7及び保液部材9について説明する。
【0032】
(ワイピング部材の全体構成)
ワイピングに際しての吐出面1aに対するワイピング部材3の接触態様及び移動態様は適宜なものとされてよい。図示の例では、ワイピング部材3は、D2方向において、吐出面1a(既述のように複数のノズル5の配置領域のみのことであってよい。)の長さ全体に亘って接触している。そして、矢印で示しているように、ワイピング部材3は、吐出面1aに対してD1方向において相対移動する。これにより、吐出面1aの概ね全体がワイピングされる。
【0033】
ワイピング部材3は、吐出面1aに対して+D1側へ相対移動してワイピングを行ってもよいし(図示の例)、-D1側へ相対移動してワイピングを行ってもよいし、これらの双方を行ってもよい。なお、以下の説明では、特に断りなく、いずれか一方への相対移動を例に取ることがある。この場合において、他方への相対移動は、一方への相対移動と同様に行われて構わない。また、以下の説明では、-D1側への移動の図と、+D1側への移動の図とを同じ状態を示す図として説明することがある。
【0034】
図示の例とは異なり、ワイピング部材3は、吐出面1aに対してD1方向以外の方向に相対移動してワイピングを行ってもよい。このような方向としては、D2方向を挙げることができ、また、D1方向に傾斜した方向を挙げることができる。また、ワイピング部材3は、吐出面1aに対して直線的に相対移動するのではなく、車のワイパーのように円弧状(より上位概念でいえば曲線状)に相対移動してもよい。ワイピング部材3は、吐出面1aに対する相対移動の方向を種々の方向に変化させてもよい。
【0035】
さらに、図示の例とは異なり、ワイピング部材3は、吐出面1aを平面視したときに、吐出面1aに対する相対移動に直交する方向(図示の例ではD2方向)において吐出面1aに亘る長さを有していなくてもよい。この場合、ワイピング部材3は、吐出面1aに対して、上記直交する方向の位置を変えながら往復移動することによって、吐出面1aの全体をワイピングしてよい。又は、1つのヘッド1に対して2以上のワイピング部材3が用いられてもよい。上記とは逆に、複数のヘッド1が配列されている場合において、ワイピング部材3は、複数のヘッド1に亘る大きさを有することによって、複数の吐出面1aを同時にワイピングしてもよい。
【0036】
ワイピング部材3は、弾性部材7を有していることなどによって、全体として弾性を有している。図1では、ワイピング部材3は、ヘッド1に押し付けられることによって弾性変形した状態となっている。ワイピング部材3が弾性変形していない状態の形状については、後述する図2B等を参照されたい。なお、以下の説明において、ワイピング部材3(その構成要素)の形状及び寸法等について、断りなく、弾性変形していない状態を仮定した表現をすることがある。例えば、D3方向の長さ等というとき、弾性変形していない状態を前提としていることがある。
【0037】
ワイピング部材3の形状は、適宜な形状とされてよい。図示の例では、ワイピング部材3の形状は、概略、一定の厚さの平板状(ブレード状)とされている。平板状のワイピング部材の平面形状は、矩形状とされている。換言すれば、ワイピング部材3の形状は、薄型の直方体状とされている。ワイピング部材3は、矩形の1辺(先端3aということがある。)の側の部分を吐出面1aに向けて吐出面1aに押し付けられる。そして、先端3aとは反対側の1辺(後端3bということがある。)の側の部分が保持されて、D1方向において動かされる。これにより、ワイピングが行われる。ワイピング部材3の図示の例以外の形状については後に例を示す。
【0038】
矩形の平板状のワイピング部材3において、矩形は、正方形であってもよいし、正方形を除く長方形であってもよい。後者の場合において、先端3a及び後端3bとなる1対の対辺は、長辺であってもよいし、短辺であってもよい。また、各辺の長さ及び厚さの相対的な大きさ及び絶対的な大きさは任意である。ただし、板の概念に照らして、厚さは、4つの辺のいずれの長さよりも小さい。例えば、短辺の長さ及び/又は長辺の長さは、厚さの5倍以上又は10倍以上とされてよい。各寸法は、これまでの説明から理解されるように、吐出面1aの具体的な広さ等に応じて種々設定されてよい。例えば、短辺の長さ及び/又は長辺の長さは、1mm以上1m以下とされてもよいし、この範囲外とされても構わない。
【0039】
(弾性部材)
弾性部材7の形状及び寸法は、例えば、保液部材9が設けられている分だけ、ワイピング部材3の形状及び寸法(既述)を小さくしたものである。図示の例では、保液部材9の厚さは比較的薄くされていることから、ワイピング部材3の形状及び寸法についての既述の説明は、矛盾等が生じない限り、弾性部材7の形状及び寸法に援用されても構わない。また、保液部材9の厚さが比較的厚い場合においても、ワイピング部材3の形状及び寸法についての既述の説明は、弾性部材7の形状及び寸法に援用されてよい。この場合は、ワイピング部材3の形状及び寸法は、保液部材9が設けられている分だけ、既述の形状及び大きさからずれていてよい。
【0040】
図示の例では、弾性部材7の形状は、弾性変形が生じていない状態において、概略、矩形の平板状である。換言すれば、弾性部材7は、互いに反対側に面している2つの主面7aと、2つの主面7aの外縁同士をつなぐ4つの側面7bとを有している。「主面」の語は、板形状の最も広い面(表面及び裏面)を指す。2つの主面7aは、換言すれば、互いに反対側に面する2つの面であり、また、互いに他方の面の背面である。2つの主面7a及び4つの側面7bは、換言すれば、互いに異なる方向に面している面である。
【0041】
弾性部材7の材料は、例えば、エラストマーである。エラストマーは、熱硬化性エラストマー(いわゆるゴム)又は熱可塑性エラストマー(狭義のエラストマー)であってよい。熱硬化性エラストマーは、例えば、加硫ゴム(狭義のゴム)又は熱硬化性樹脂系エラストマーであってよい。弾性部材7の硬度は適宜に設定されてよい。例えば、日本産業規格(JIS)のK6253において規定されているタイプAのデュロメータによって計測される硬度は、30以上80以下、又は60以上80以下とされてよい。
【0042】
(保液部材)
保液部材9は、弾性部材7が有している複数の面(図示の例では2つの主面7a及び4つの側面7b)のうちの2つ以上の面にわたって弾性部材7に重なっている。これにより、例えば、保液可能な面積を増加させたり、吐出面1aに押し付けられる面以外の面に洗浄液を保持させたりできる。その結果、例えば、洗浄液の量の増加、及び/又は吐出面1aへの洗浄液の供給態様の多様化を図ることができる。
【0043】
保液部材9が配置される2以上の面は、適宜に選択されてよい。別の観点では、保液部材9を平面状に展開したと仮定したときの平面形状における形状及び寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、保液部材9は、2つの主面7aと、先端3aの側の側面7bとの3面にわたって設けられている。また、保液部材9は、上記の3面の各面において、例えば、全面に重なっている。換言すれば、保液部材9は、それぞれ矩形状の3つの領域をつなぎ合わせた形状である。
【0044】
図示の例とは異なり、保液部材9は、各面の一部にのみ重なっていてもよい。例えば、保液部材9は、弾性部材7の幅(D2方向)よりも狭い幅を有していてもよい。逆に、保液部材9は、幅(D2方向)が弾性部材7の幅よりも広く、各面から-D2側及び/又は+D2側へ縁部がはみ出していてもよい。また、例えば、保液部材9は、主面7aのうち先端3aの側の領域においてのみ弾性部材7に重なって、主面7aの後端3bの側の領域を露出させていてもよい。また、例えば、保液部材9は、上記の3面に加えて、後端3bの側の側面7b及び/又は残りの2つの側面7bに重なっていてもよい。また、例えば、保液部材9は、1つの主面7aと1つの側面7b(例えば先端3aの側の側面7b)とに重なったり、2つの主面7aと、先端3aの側の側面7b以外の側面7bとに重なったりしてもよい。
【0045】
保液部材9の厚さは適宜に設定されてよい。なお、保液部材9は、その素材によっては、ワイピング時の圧縮及び/又は液体の吸収等によって厚さが大きく変化し得る。実施形態の説明において、保液部材9の厚さは、特に断りが無い限り、力が付与されておらず、かつ乾燥した状態の厚さを指すものとする。
【0046】
図示の例では、保液部材9の厚さは、その全体に亘って一定とされている。ただし、保液部材9は、位置によって厚さが異なっていてもよい。また、図示の例では、保液部材9の厚さは、弾性部材7の厚さよりも薄くされている。この場合において、保液部材9の厚さは、例えば、弾性部材7の厚さの1/20以上1/3以下とされてよい。ただし、図示の例とは異なり、保液部材9の厚さは、弾性部材7の厚さと同等以上とされても構わない。保液部材9の厚さの範囲の例として比較的狭い範囲を挙げると、0.1mm以上1mm以下を挙げることができる。
【0047】
保液部材9の厚さは、例えば、保液部材9が保持する洗浄液の量、及びワイピング部材3の吐出面1aに対する接触圧に影響を及ぼす。ひいては、保液部材9の厚さは、ワイピングによる洗浄の効果に影響を及ぼす。従って、保液部材9の厚さは、ワイピングに関する種々の条件に応じて適宜に設定(換言すれば変更)されてよい。厚さの設定において考慮する条件は、例えば、ヘッド1が吐出する液体の種類(例えばインクの成分)、ワイピングが実行される時期(後述。別の観点では頻度。)、洗浄液の種類(成分)、及び保液部材9の素材の少なくとも1つとされてよい。
【0048】
保液部材9の材料(素材)は、保液可能な種々のものとされてよい。例えば、保液部材9の素材は、可撓性(フレキシビリティ)を有するものであってもよいし、弾性を有するものであってもよい。実施形態の説明において、可撓性の語は、復元力(弾性力)を殆ど発揮せずに曲げられることが可能な性質を指し、弾性を含まないものとする。可撓性の素材としては、例えば、布を挙げることができる。可撓性又は弾性を有する他の素材としては、例えば、多孔質体を挙げることができる。
【0049】
布は、織布であってもよいし、不織布であってもよい。確認的に記載すると、織布は、例えば、繊維又は繊維からなる糸を織って(例えば縦横に組み合わせて)作製される。織布の語は、編み物等を含む広い概念を指すものとする。不織布は、熱的処理、機械的処理及び/又は化学的処理などによって繊維を接着又は絡み合わせて作製される。織布及び不織布において、繊維は、天然繊維であってもよいし、化学繊維(換言すれば人造繊維)であってもよい。天然繊維としては、例えば、コットンを挙げることができる。化学繊維としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル及びポリウレタンを挙げることができる。
【0050】
多孔質体としては、例えば、スポンジを挙げることができる。スポンジは、天然スポンジであってもよいし、人造スポンジであってもよい。天然スポンジとしては、海綿動物を利用したものを挙げることができる。人造スポンジとしては、ポリウレタン等の合成樹脂を発砲成形して得られるものを挙げることができる。また、人造スポンジは、加硫ゴムによって構成されたものであってもよい。
【0051】
保液部材9の素材の保液性(保水性)の程度は適宜に設定されてよい。例えば、素材が保持できる水の質量を素材の質量で割った比率に100を乗じた値を保水率(%)と呼称するものとする。この保水率は、例えば、JISのL1907において規定されている吸水率の測定方法、又はJISのL1913において規定されている保水率の測定方法によって測定されてよい。このとき、保水率は、10%以上1000%以下、又は150%以上400%以下とされてよく、また、これらの範囲外とされても構わない。また、例えば、JISのL1907においては、水が所定時間内に所定の大きさの試料に吸水されて上昇した長さによって吸水速度(mm)を測定するバイレック法が規定されている。このバイレック法によって測定された保液部材9の素材の吸水速度は、例えば、1mm以上200mm以下、又は5mm以上100mm以下とされてよく、また、これらの範囲外とされても構わない。
【0052】
保液部材9の素材の保液性及び保液部材9の厚さに依存する保液可能な量も適宜に設定されてよい。既述のように保液部材9の厚さは、種々の事情に応じて広い範囲内の任意の大きさとされてよく、保液可能な量も広い範囲内の任意の大きさとされてよい。比較的狭い範囲の例を示すと、保液部材9が保持可能な水の量は、100g/m以上1000g/m以下とされてよい。
【0053】
(保液部材の取付態様)
図2A及び図2Bは、保液部材9の弾性部材7に対する取付け態様の一例を示す側面図又は断面図である。
【0054】
図2Aは、取付け前の状態を示している。図2Bは、取付け後の状態を示している。図2Bでは、取付け前の保液部材9も想像線(2点鎖線)で示されている。
【0055】
保液部材9は、例えば、可撓性を有する素材(例えば布)によって構成されている。すなわち、保液部材9は、復元力によって実現される特定の立体形状を有していない。そして、保液部材9は、弾性部材7の表面に重ねられ、弾性部材7の形状を反映した形状とされる。この状態で、保液部材9は、弾性部材7に対して固定される。保液部材9は、弾性部材7に固定されているとき、張力を生じていてもよいし、張力を生じていなくてもよい。張力を生じている場合の大きさも任意であるし、張力を生じていない場合の弛みも任意である。
【0056】
上記の説明とは異なり、保液部材9は、弾性を有する素材(例えば弾性を有するスポンジ)によって構成されていてもよい。この場合、例えば、保液部材9は、復元力が生じていない状態において、弾性部材7に取り付けられているときの形状よりも展開された形状(例えば平板状)を有している。そして、弾性部材7の表面形状に沿うように曲げられて弾性部材7の表面に重ねられる。この状態で、保液部材9は、弾性部材7に対して固定される。張力の有無については、可撓性の場合と同様に任意である。
【0057】
図示の例では、保液部材9は、弾性部材7に巻き付けられていると捉えることができる。保液部材9が弾性部材7に巻き付けられていると表現されるとき、保液部材9は、上記のように、可撓性を有するものであってもよいし、復元力が生じていないときに展開された形状となる弾性を有するものであってもよい。また、保液部材9が弾性部材7に巻き付けられていると表現されるとき、例えば、保液部材9は、少なくとも、互いに反対側に面する2つの面(及びその間の面)に亘っている。図示の例では、保液部材9は、2つの主面7a(その一部又は全部)及び1つの側面7b(その一部又は全部)に亘っている。巻き付けられていると表現されるときの張力の有無については任意である。
【0058】
保液部材9が弾性部材7から脱落等しないようにするための固定の態様は適宜なものとされてよい。例えば、固定は、保液部材9の弾性部材7に対する着脱が可能なものであってもよいし、不可能なものであってもよい。また、保液部材9は、弾性部材7に重なっている部分の全体が弾性部材7に対して固定されていてもよいし、弾性部材7に重なっている部分の一部のみが弾性部材7に固定されていてもよい。後者の例としては、例えば、保液部材9のうち後端3bの側の部分のみが弾性部材7に固定されている態様を挙げることができる。この態様において、保液部材9は、弾性部材7の先端3aの側の部分に対して張力を発揮しつつ当接して弾性部材7に対する変位が規制されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0059】
着脱可能な固定態様としては、例えば、保液部材9を弾性部材7に押し付けるようにワイピング部材3の後端3bの側の部分を保持する部材(後述)を用いる態様が挙げられる。また、特に図示しないが、保液部材9を弾性部材7に押し付けるようにワイピング部材3の所定部位に着脱可能に取り付けられる着脱部材を用いる態様が挙げられる。着脱部材としては、例えば、締結部材(ねじ及び/又はナット)、締結部材を利用するもの、係合を利用するもの、及び弾性部材7又は着脱部材の復元力を利用して弾性部材7を締め付けるものを挙げることができる。
【0060】
着脱が不可能な固定態様としては、例えば、保液部材9と弾性部材7との間に接着剤を介在させる態様が挙げられる。また、例えば、保液部材9及び/又は弾性部材7が溶解されて接合される態様が挙げられる。このような着脱不可能な固定態様は、保液部材9のうち全部を弾性部材7に固定する態様、及び保液部材9のうち一部を弾性部材7に固定する態様のいずれに利用されてもよい。
【0061】
弾性部材7の形状は、例えば、保液部材9の取り付け前後で同様である。ただし、保液部材9の取り付けに伴う力によって、若干の弾性変形が生じていてもよい。例えば、ワイピングの作用に殆ど影響を及ぼさない弾性変形が生じていてもよい。弾性変形を生じる力としては、例えば、弾性部材7に巻き付けられた保液部材9の張力、弾性部材7を保持する部材若しくは弾性部材7に着脱される部材が保液部材9を弾性部材7に押し付ける力、又は接着剤の硬化収縮に伴う力が挙げられる。なお、ワイピング部材3の形状及び弾性部材7の形状の説明において、このような若干の弾性変形は無視するものとする。上記の説明又は図示の例とは異なり、弾性部材7は、ワイピングに影響を及ぼす弾性変形を生じていてもよい。例えば、弾性部材7は、ワイピング部材3が吐出面1aに押し付けられていない状態において、保液部材9の張力によって、+D1側又は-D1側へ撓んでいてもよい。
【0062】
(保液部材の取付態様の変形例)
以下、保液部材9の弾性部材7に対する取付態様の変形例をいくつか示す。
【0063】
図3Aは、変形例に係る取付態様を示す側面図又は断面図である。
【0064】
当該変形例に係る取付態様は、実施形態(図2A及び図2B)と同様に、保液部材9が弾性部材7に巻き付けられる取付態様である。ただし、実施形態では、保液部材9が弾性部材7を1周していなかったのに対して、当該変形例では、保液部材9は、1周以上、弾性部材7に巻き付けられている。図示の例では、更に、保液部材9は、ワイピングに供される面の少なくとも1つにおいて、保液部材9が2重以上になるように巻かれている。より詳細には、保液部材9は、2つの主面7a及び先端3aの側の側面7bの3面において、2重以上(図示の例では2重)になっている。なお、2重になっている部分において、保液部材9の部分同士は、接着剤等によって固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
【0065】
図3Bは、他の変形例に係る取付態様を示す側面図又は断面図である。
【0066】
当該変形例に係る取付態様では、保液部材9の素材として、弾性を有するもの(例えばスポンジ)が想定されている。そして、保液部材9は、弾性変形を生じていない状態における形状が、弾性部材7に取り付けられた後の形状と概ね同様とされている。そして、保液部材9は、弾性部材7に被せられて弾性部材7に取り付けられる。すなわち、図3Bの変形例は、これまでの変形例とは異なり、保液部材9は弾性部材7に対して巻き付けられない。
【0067】
保液部材9の内面は、例えば、弾性部材7の外面(そのうちの保液部材9が重なる領域。以下、本段落において同様。)と同一の形状及び寸法とされてよい。そして、保液部材9は、弾性部材7に取り付けられた後に全く弾性変形を生じなくてよい。上記とは異なり、保液部材9の内面は、一部又は全部において、弾性部材7の外面よりも小さくされてよい。そして、保液部材9は、弾性部材7に取り付けられた後に内側への復元力を生じて弾性部材7を締め付けてよい。逆に、保液部材9の内面は、一部又は全部において、弾性部材7の外面よりも大きくされてもよい。
【0068】
図3Cは、更に他の変形例に係る取付態様を示す斜視図である。
【0069】
当該変形例に係る取付態様では、保液部材9の素材として、可撓性を有するもの(例えば布)が想定されている。ただし、保液部材9は、一部同士が着脱不可能に固定されることによって、袋状又は袋に類する形状にされている。そして、保液部材9は、弾性部材7に対して、巻き付けられるのではなく、被せられる。保液部材9の一部同士を着脱不可能に固定する手段としては、縫合及び接着を挙げることができる。
【0070】
なお、上記の説明とは異なり、図3Cの保液部材9の一部同士の固定は、着脱可能なものとされてもよい。このような固定の手段としては、例えば、面ファスナー、ボタン及びホックを挙げることができる。この場合は、保液部材9を巻き付けてから、保液部材9の一部同士を固定することができるから、保液部材9は、弾性部材7に巻き付けられていると捉えられてよい。
【0071】
特に図示しないが、保液部材9は、D2方向に沿う軸回りに弾性部材7に巻き付けられるのではなく、他の方向に沿う軸回りに弾性部材7に巻き付けられてもよい。例えば、保液部材9は、D3方向に沿う軸回りに弾性部材7に巻き付けられ、2つの主面7aを覆いつつ、+D3側(先端3aの側)の側面7bを露出させてもよい。また、保液部材9は、+D3側から弾性部材7に被せられるのではなく、他の5つの方向のいずれかから弾性部材7に被せられてもよい。この場合において、+D3側の側面7bは、保液部材9によって覆われてもよいし、露出されてもよい。
【0072】
なお、上述した種々の変形例に係る取付態様において、保液部材9が弾性部材7から脱落等しないようにするための固定の態様は、実施形態におけるものと同様とされてよい。
【0073】
(弾性部材の形状の変形例)
以下、弾性部材7(ワイピング部材3)の形状の変形例をいくつか示す。
【0074】
図4Aは、変形例に係るワイピング部材3Aを示す側面図又は断面図である。
【0075】
ワイピング部材3Aの弾性部材7Aは、実施形態に係る弾性部材7と同様に、全体として板状であり、また、互いに反対側に面する2つの主面7aを有している。ただし、弾性部材7Aは、先端3aの側ほど薄くなるように形成されており、先端3aの側の側面7bを有していない。保液部材9は、例えば、弾性部材7Aの+D3側の端部を覆うように2つの主面7aにわたって弾性部材7Aに重なっている。
【0076】
このような態様は、各主面7aが傾斜面7cを含み、2つの主面7aが互いにつながっている(交差している)と捉えられてよい。このように捉えた場合、保液部材9は、互いに異なる方向(より詳細には互いに反対方向)に面する2つの面に亘って弾性部材7に重なっているといえる。上記とは異なり、各主面7aに対して先端3aの側に(主面7aとは別の)傾斜面7cが繋がっており、2つの傾斜面7c同士が互いにつながっていると捉えられてもよい。このように捉えた場合も、保液部材9は、互いに異なる方向(より詳細には互いに反対方向)に面する2つの面(2つの傾斜面7c又は2つの主面7a)に亘って弾性部材7に重なっているといえる。
【0077】
傾斜面7cと主面7aとを別個の面として捉えた場合において、特に図示しないが、保液部材9は、2つの傾斜面7cに重なり、主面7aに重なっていなくてもよい。また、例えば、弾性部材7Aが主面7aを有さず、傾斜面7cと-D3側の側面7bとがつながっていてもよい。すなわち、側面視において弾性部材7Aは概略三角形状とされてもよい。そして、保液部材9は、2つの傾斜面7cに重なっていてよい。これらの場合であっても、保液部材9は、互いに異なる方向(より詳細には互いに反対方向)に面する2つの面(2つの傾斜面7c)に亘って弾性部材7に重なっているといえる。
【0078】
上記の説明から理解されるように、互いに反対側に面する2つの面は、互いに平行である必要は無い。例えば、互いに平行でない2つの面(2つの面自体、又は2つの面を外方へ延長した仮想面)がなす角度が90°未満、80°未満、60°未満又は30°未満の場合、この2つの面は、互いに反対側に面していると捉えられてよい。なお、特に図示しないが、図示の例とは異なり、2つの傾斜面7cがなす角度は、両者が互いに反対側に面しているとはいえない角度(例えば90°以上)であってもよい。
【0079】
弾性部材7Aの形状から理解されるように、弾性部材は、部位によって厚さが異なっていてもよい。例えば、特に図示しないが、弾性部材は、吐出面1aに対する当接が想定されている部分と、吐出面1aに対する当接が想定されていない部分とで厚さが異なっていてもよい。この場合において、いずれが他方よりも薄くてもよい。また、弾性部材は、後述する支持部材によって保持されて撓み変形が規制されている部分と、保持されずに撓み変形が許容されている部分とで厚さが異なっていてもよい。この場合において、いずれが他方よりも薄くてもよい。厚さが異なる部位同士の境界においては、段差が生じないように徐々に厚さが変化していてもよいし、段差が生じていてもよい。
【0080】
図4Bは、他の変形例に係るワイピング部材3Bを示す側面図又は断面図である。
【0081】
この図の弾性部材7Bによって示すように、弾性部材は、板状でなくてもよい。図示の例では、弾性部材7Bは、D2方向に見て概ね正方形とされている。また、この図に示すように、保液部材9が2以上の面にわたって弾性部材に重なるとき、2以上の面は、互いに反対側に面している2つの面を含んでいなくてもよい。図示の例では、保液部材9は、弾性部材7Bの+D3側(先端3aの側)の面、及び弾性部材7Bの-D1側の面のみに重なっている。別の観点では、保液部材9は、D2方向に見て、D3方向に平行な軸に対して非対称である。
【0082】
ワイピング部材3Bのように保液部材9等に関して非対称性を有するワイピング部材は、-D1側への移動によるワイピングと、+D1側への移動によるワイピングとで、保液部材9が奏する具体的な作用が異なる。非対称なワイピング部材は、-D1側への移動によるワイピングのみに利用されてもよいし、+D1側への移動によるワイピングのみに利用されてもよいし、これらの双方のワイピングに利用されてもよい。
【0083】
特に図示しないが、弾性部材の形状は、これまでに例示した以外にも種々可能である。例えば、弾性部材の+D3側の端部は、D2方向に見て弧状(より上位概念でいえば外側に膨らむ曲線状)とされてもよい。このような場合は、曲線状の面と、他の面(例えば平面状の主面7a)とを互いに異なる方向に面する2つの面として捉えてよい。また、曲線(弧)の中心角が比較的大きい場合においては、曲線状の面は、2以上の面を含んでいると捉えられてよい。例えば、曲線状の面のいずれかの位置に接する仮想平面と、曲線状の面の他の位置に接する仮想平面とを考える。そして、仮想平面同士が互いに平行であるとき、又は仮想平面同士がなす角度が、上述した互いに反対側に面している2つの面がなす角度の範囲(90°未満、80°未満、60°未満又は30°未満)にあるとき、曲線状の面は、互いに反対側に面する2つの面を含んでいると捉えられてよい。また、弾性部材は、D2方向に見て、湾曲している部分(曲線状に曲がっている部分)及び/又は屈曲している部分(角部を構成しつつ曲がっている部分)を有する、板状であってもよい。
【0084】
<ワイピング部材を保持する保持部>
ワイピング部材3を保持する保持部の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様の構成とされても構わない。以下では、新規な構成の例を示す。なお、特に言及が無い事項については、公知の種々の構成と同様とされて構わない。また、ワイピング部材3と保持部とを含む構成をワイパーということがある。
【0085】
図5図6A及び図6Bは、ワイピング部材3及び保持部10(ワイパー4)を示す側面図又は断面図である。
【0086】
図5は、ワイピングが行われていない状態(ワイピング部材3が弾性変形していない状態)を示している。図6Aは、ワイピング部材3が-D1側へ移動してワイピングが行われている状態の一例を示している。図6Bは、ワイピング部材3が+D1側へ移動してワイピングが行われている状態の一例を示している。これらの図に示された形状は、例えば、少なくともワイピング部材3のD2方向における長さの概ね全体に亘って成り立っている。ただし、一部に図示の形状と異なる部分が存在しても構わない。
【0087】
保持部10は、2つの支持部材11を有している。図示の例では、2つの支持部材11は、互いに同一の形状である。2つの支持部材11は、ワイピング部材3をD2方向において挟んでいる。これにより、ワイピング部材3は保持部10に保持されている。特に図示しないが、保持部10は、支持部材11以外にワイピング部材3を支持する部材を有していてもよい。このような部材としては、例えば、+D2側又は-D2側からワイピング部材3に当接する部材、-D3側からワイピング部材3に当接する部材、及びワイピング部材3を貫通する部材を例示できる。これらの部材は、支持部材11と一体的に構成されていても構わない。支持部材11がワイピング部材3をD1方向において圧縮する圧力は適宜に設定されてよい。なお、2つの支持部材11は、ワイピング部材3を圧縮していなくてもよい。この場合は、上記の支持部材11以外の部材によってワイピング部材3の脱落等が防止されてよい。
【0088】
2つの支持部材11は、より詳細には、ワイピング部材3のうち、後端3bの側の一部を挟んでいる。そして、ワイピング部材3のうち、先端3aの側の一部は、2つの支持部材11よりも+D3側へ突出しており、先端3aを自由端とする撓み変形(例えばD1方向における撓み変形)が可能となっている。別の観点では、ワイピング部材3は、先端3aを含む本体部3cと、本体部3cよりも後端3bの側に位置している被保持部3dとを有している。+D1側の支持部材11は、+D1側の主面7aが面している側から被保持部3dに対して当接している保持面11aを有している。保持面11aは、本体部3cの、+D1側の主面7aが面する側への撓み変形を許容している。-D1側の支持部材11についてもD1の正負を除いて同様である。
【0089】
保持面11aの形状は任意である。図示の例では、保持面11aは平面状である。ただし、保持面11aは、曲面状であってもよいし、凹凸を有していてもよい。凹凸は、被保持部3dの+D1側及び/又は-D1側の平面状の表面に食い込んで、被保持部3dが保持面11aに対して滑る蓋然性を低減することに寄与し得る。また、被保持部3dが+D1側及び/又は-D1側の面に係合用の凸部及び/又は凹部を有している態様において、当該凸部及び/又は凹部に係合する凹部及び/又は凸部が保持面11aに設けられてよい。
【0090】
保持面11aの各種の寸法は任意である。例えば、D3方向(換言すれば、主面7aに沿う、先端3aから後端3bへの方向)において保持面11aがワイピング部材3に当接する長さは適宜に設定されてよい。別の観点では、本体部3cのD3方向の長さ及び被保持部3dのD3方向の長さは、いずれか一方が他方よりも長くてもよいし、同等でもよい。図示の例では、本体部3cのD3方向の長さが被保持部3dのD3方向の長さよりも長い。また、図示の例では、保持面11aは、ワイピング部材3の後端3bよりも-D3側に広がっている。図示の例とは異なり、保持面11aは、-D3側の縁部が後端3bに一致してもよいし、後端3bまで広がらずに、後端3bを突出させていてもよい。D2方向において、保持面11a(後述する他の面も同様とする。)の長さは、ワイピング部材3の長さに対して、長くてもよいし、同等でもよいし、短くてもよい。
【0091】
図示の例では、保持面11aは、保液部材9に当接している。別の観点では、保液部材9は、D3方向(換言すれば、主面7aに沿う、先端3aから後端3bへの方向)において、本体部3c及び被保持部3dに亘って設けられている。図示の例とは異なり、保液部材9は、D3方向において、本体部3c(その全部又は一部)のみに位置していてもよいし、本体部3cの全部及び被保持部3dの一部に位置していてもよい。すなわち、保持面11aは、弾性部材7に当接していてもよいし、弾性部材7及び保液部材9の双方に当接していてもよい。
【0092】
支持部材11において、保持面11aよりも+D3側の面の形状及び寸法は任意である。図示の例では、支持部材11は、保持面11aにつながっている凸曲面11bと、凸曲面11bにつながっている先端面11cとを有している。これらの面は、例えば、本体部3cを押圧することに寄与してよい。この押圧によって、例えば、保液部材9のうち本体部3cに位置する部分に浸透している洗浄液を押し出したり、本体部3cを吐出面1aに押し付けたりすることができる。もちろん、凸曲面11b及び/又は先端面11cは、本体部3cの押圧に供されなくてもよい。
【0093】
凸曲面11bは、保持面11aに対して先端3aの側につながっている。凸曲面11bは、その名称のとおり、凸状の曲面である。換言すれば、+D1側の支持部材11の凸曲面11bは、撓み変形していない状態のワイピング部材3に対して、先端3aの側(+D3側)に位置するほど、+D1側(+D1側の主面7aが面している側)へ離れるように湾曲している。-D1側の支持部材11の凸曲面11bについても、D1の正負が逆であることを除いて同様である。
【0094】
凸曲面11bのD1-D3断面における具体的な形状は任意である。例えば、凸曲面11bは、図示の例のように、その全長に亘って一定の曲率であってもよいし(すなわち円弧であってもよいし)、図示の例とは異なり、曲率が位置に応じて変化してもよい。凸曲面11bは、保持面11a及び/又は先端面11cと角部を構成しないように、これらの面に対して滑らかにつながっていてもよいし(図示の例)、角部を構成していてもよい。換言すれば、凸曲面11bの-D3側の端部は、法線がD1方向に平行であってもなくてもよいし、凸曲面11bの+D3側の端部は、法線がD3方向に平行であってもなくてもよい。
【0095】
凸曲面11bのD1-D3断面における寸法は適宜に設定されてよい。例えば、凸曲面11bの曲率の大きさは任意である。曲率半径が比較的大きい(曲率が比較的小さい)場合の例を挙げると、曲率半径は、ワイピング部材3の本体部3cの長さの1/10以上、1/5以上又は1/3以上とされてよい。凸曲面11bのその表面に沿う長さは、ワイピング部材3の本体部3cの長さよりも短い。ただし、前者を後者の同等以下とすることも可能である。
【0096】
先端面11cのD1-D3断面における具体的な形状及び寸法は任意である。例えば、図示の例では、先端面11cは、吐出面1aに平行な平面状である。ただし、先端面11cは、全体として凸状又は凹状であったり、凹凸を有していたり、吐出面1aに対して傾斜していてもよい。また、先端面11cの長さは、凸曲面11bの長さに対して、短くてもよいし、同等でもよいし、長くてもよい。先端面11cの凸曲面11bとは反対側の縁部は、図6A及び図6Bのようにワイピング部材3の全体が支持部材11に密着したときに、ワイピング部材3の先端3aよりも凸曲面11bとは反対側に位置してもよいし(図示の例)、先端3aに一致してもよいし、先端3aよりも凸曲面11bの側に位置してもよい。
【0097】
(保持部の変形例)
図7A及び図7Bは、変形例に係る保持部10A(別の観点ではワイパー4A)の構成を示す側面図又は断面図である。
【0098】
図7Aは、ワイピングが行われていない状態(ワイピング部材3が弾性変形していない状態)を示している。図7Bは、ワイピング部材3が+D1側へ移動してワイピングが行われている状態の一例を示している。
【0099】
保持部10Aは、既述の支持部材11と、支持部材11とは形状が異なる変形例に係る支持部材11Aとを有している。そして、ワイピング部材3は、支持部材11と支持部材11Aとによって挟まれている。別の観点では、保持部10Aは、D2方向に見て、ワイピング部材3に対して非対称の形状である。この変形例では、例えば、ワイピング部材3の+D1側への移動によるワイピングのみが行われ、-D1側への移動によるワイピングは想定されていない。特に図示しないが、支持部材11及び支持部材11AのD1方向における位置関係が逆であってよいこと、この場合において、-D1側への移動によるワイピングが行われてよいことはもちろんである。
【0100】
支持部材11Aは、例えば、ワイピングのときにワイピング部材3の本体部3cを押圧する機能を有さなくてもよい形状とされている。具体的には、支持部材11Aは、保持面11aと、保持面11aに交差する先端面11dとを有している。すなわち、支持部材11Aは、凸曲面11bを有していない。また、先端面11dの位置は、支持部材11の先端面11cよりも-D3側に位置している。
【0101】
支持部材11の保持面11aについての説明は、支持部材11Aの保持面11aに援用されてよい。支持部材11Aの-D1側に面する面(保持面11aを含む面)の上縁は、図示の例とは異なり、ワイピング部材3の被保持部3dよりも上方に位置していてもよい。この場合であっても、支持部材11の凸曲面11bが、弾性変形していない状態のワイピング部材3から離れる方向に湾曲していることから、被保持部3dが実質的に保持される面積は変わらない。
【0102】
先端面11dは、ワイピング部材3に当接することが想定されていないから、任意の形状及び寸法とされてよい。図示の例では、先端面11dは、吐出面1aに平行な平面状である。
【0103】
支持部材の形状及び寸法は、以上に説明したもの以外にも種々可能である。特に図示しないが、例えば、実施形態のように、先端面11cがワイピング部材3を押圧することが想定されている態様において、凸曲面11bが設けられずに、保持面11aと先端面11cとが交差してもよい。凸曲面11bに代えて、保持面11aと先端面11c(又は先端面11d)との角部を面取りする平面状の傾斜面が設けられてもよい。保持面11aと先端面11c(又は先端面11d)とをつなぐ面は、D2方向に見て、凸曲面と傾斜面とを有していたり、互いに角度が異なる2以上の傾斜面を有していたりしてもよい。
【0104】
また、例えば、-D1側への移動によるワイピングと、+D1側への移動によるワイピングとの双方が想定されている態様において、-D1側の支持部材と+D1側の支持部材とで形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。例えば、-D1側の支持部材11と、+D1側の支持部材11とで、凸曲面11bの曲率及び/又は長さが異なっていてもよい。変形例に係る保持部10Aは、+D1側への移動によるワイピングに利用されるものとして説明したが、+D1側への移動によるワイピングに加えて、又は代えて、-D1側への移動によるワイピングに利用されても構わない。
【0105】
以上の保持部(及び支持部材)の説明においては、既述の種々のワイピング部材のうち、図1に示したワイピング部材3を例に取って説明した。ただし、種々のワイピング部材のうち任意のワイピング部材と、上述した支持部とが組み合わされてよい。例えば、D2方向に見たときの対称性に関して、ワイピング部材と保持部との組み合わせは、対称-対称(例えば図5)であってもよいし、対称-非対称であってもよい(例えば図7A)。また、対称性に関する組み合わせは、非対称-対称であってもよい。例えば、図4Bのワイピング部材3Bと、図5の保持部10とが組み合わされてもよい。また、対称性に関する組み合わせは、非対称-非対称であってもよい。例えば、図4Bのワイピング部材3Bと、図7Aの保持部10Aとが組み合わされてもよい。
【0106】
(2つの支持部材の固定)
2つの支持部材11は、ワイピング部材3を挟んで保持する(換言すればワイピング部材3を締め付ける)ように互いに固定されてよい。その固定の態様は、種々のものとされてよい。以下では、いくつかの例を示す。
【0107】
図8Aは、2つの支持部材11の固定態様の一例を示す断面図である。
【0108】
この例では、ボルト13が2つの支持部材11に対してD1方向において挿通され、当該ボルト13にナット15が螺合されている。これにより、2つの支持部材11は、D1方向においてワイピング部材3を締め付けるように互いに固定される。ボルト13及びナット15の組み合わせの数及び具体的な位置は任意である。図示の例では、D2方向において、支持部材11の長さは、ワイピング部材3の長さよりも長い。そして、ワイピング部材3に対して-D2側(図の手前側)に位置するボルト13及びナット15が図示されている。ワイピング部材3に対して+D2側にもボルト13及びナット15が設けられてよい。
【0109】
特に図示しないが、図示の例とは異なり、ボルト13は、ワイピング部材3を貫通してワイピング部材3の位置決めに直接に寄与してもよい。ボルト13は、ワイピング部材3よりも下方に位置してもよい。ナット15が設けられずに、一方の支持部材11にボルト13が螺合する雌ねじが設けられてもよい。点線で示すように、一方の支持部材11(図示の例では-D1側の支持部材11)は、他方の支持部材11が載置される載置部17を有していてもよい。また、2つの支持部材11は、-D3側において互いにつながっていてもよい。この場合、ボルト13の締結によって、2つの支持部材11の-D3側の部分が弾性変形して2つの支持部材11がワイピング部材3を締め付けてよい。一方の支持部材11は、他方の支持部材11を+D2側及び/又は-D2側から位置決めする壁部を有していてもよい。
【0110】
図8Bは、2つの支持部材11の固定態様の他の例を示す断面図である。
【0111】
この例では、ボルト13及びナット15は、直接に2つの支持部材11を固定するのではなく、2つの固定部材19A及び19Bを介して2つの支持部材11を固定している。具体的には、2つの固定部材19A及び19Bは、2つの支持部材11に対してD1方向の両側に配置されている。そして、ボルト13が固定部材19A及び19Bに対してD1方向において挿通され、ボルト13にナット15が螺合されている。これにより、2つの支持部材11は、D1方向においてワイピング部材3を締め付けるように互いに固定される。
【0112】
固定部材19A及び19Bの形状は任意である。図示の例では、固定部材19Aは、2つの支持部材11及び固定部材19Bが載置される載置部(符号省略)を有している。特に図示しないが、固定部材19Aは、2つの支持部材11及び固定部材19Bを+D2側及び/又は-D2側から位置決めする壁部を有していてもよい。ボルト13及びナット15の組み合わせの数及び具体的な位置は任意である。図示の例では、ワイピング部材3及び支持部材11に対して-D2側(図の手前側)に位置するボルト13及びナット15が図示されている。ワイピング部材3に対して+D2側にもボルト13及びナット15が設けられてよい。
【0113】
特に図示しないが、図示の例とは異なり、ボルト13は、支持部材11及び/又はワイピング部材3を貫通してもよい。ボルト13は、ワイピング部材3よりも下方に位置してもよい。ナット15が設けられずに、固定部材19Bにボルト13が螺合する雌ねじが設けられてもよい。固定部材19Bが設けられずにナット15が支持部材11に当接してもよい。
【0114】
<ワイピングの動作>
ワイピング部材3を用いたワイピングの動作は種々の態様とされてよく、例えば、公知の動作と同様の動作とされてもよい。以下では、新規な動作を含む種々の動作を例示する。
【0115】
(ワイピングの接触状態)
図6A図6B及び図7Bに示されているように、ワイピングを行うとき(別の観点ではワイピング部材3をD2方向へ移動させるとき)、ワイピング部材3は、その主面(既述のように板形状の最も広い面)を吐出面1aに当接(より詳細には面接触)させてよい。より詳細には、例えば、ワイピング部材3の本体部3cの少なくとも一部は、吐出面1aと支持部材11(より詳細には先端面11c)とによって挟まれてよい(例えば、圧縮されてよい。)。ただし、図示の例とは異なり、本体部3cが吐出面1aと先端面11cとに挟まれない状態で、本体部3cの主面が吐出面1aに面接触してもよい。
【0116】
上記のように面接触しているという場合において、D2方向に見て、本体部3cの主面が吐出面1a(又は先端面11c)に当接するD1方向における長さは任意である。例えば、この長さは、ワイピング部材3の厚さ又は弾性部材7の厚さに対して、1/2以上、1倍以上又は2倍以上とされてよい。弾性部材7の主面7aが吐出面1aに平行になる長さ(D1方向)が上記の範囲を満たしてもよい。また、ワイピング部材3が吐出面1aと支持部材11とによって受ける圧縮力も任意である。
【0117】
保液部材9のうち、本体部3cに位置しているとともに弾性部材7の主面7aに位置する部分を保液本体9aというものとする。図6A図6B及び図7Bの例では、2つの保液本体9aのうち、一方の保液本体9aは、吐出面1aに面接触している。吐出面1aに面接触している保液本体9aは、弾性部材7によって吐出面1aに向かって押圧されている。また、他方の保液本体9aは、支持部材11(より詳細には凸曲面11b及び先端面11c)によって弾性部材7に向かって押圧されている。このような押圧は、保液本体9aに保持されている洗浄液を絞り出すことに寄与してよい。
【0118】
図9A及び図9Bは、ワイピング部材3の他の状態の例を示す側面図又は断面図である。
【0119】
図9A及び図9Bでは、支持部材11の凸曲面11b及びその周辺が拡大して示されている。また、-D1側の支持部材11の図示は省略されている。便宜上、ワイピング部材3は、図5等よりも短く描かれており、先端面11c(ここでは不図示)に重なる部分を有していない。なお、ワイピング部材3は、実際に、図示のように、先端面11cに重なる部分を有さない構成とされても構わない。
【0120】
図9A及び図9Bの例では、D2方向に見て、凸曲面11bのうち、保持面11aの側(-D3側)の一部のみがワイピング部材3(より詳細には保液本体9a)に接している(別の観点では押圧している。)。別の観点では、凸曲面11bが保液本体9aを押圧している面積が小さい順は、図9A図9B及び図6Aとなっている。これらの図において、ワイピング部材3等の構成が同一であると仮定した場合、支持部材11の吐出面1aに対する距離(D3方向)が長い順は、図9A図9B及び図6Aとなっている。別の観点では、ワイピング部材3を吐出面1aに向かって押し付ける力が小さい順は、図9A図9B及び図6Aとなっている。
【0121】
図6A図9A及び図9Bは、互いに異なるワイピングの動作態様を示す図として捉えられてもよいし、1つの動作態様において生じる互いに異なる状態と捉えられてもよい。前者の場合、例えば、ワイピング部材3が、図6A図9A又は図9Bの状態のまま-D1側へ移動する。後者の場合、例えば、ワイピング部材3は、-D1側へ移動しつつ、図6A図9A及び図9Bのうちの2つ以上の状態を順に遷移する。例えば、ワイピング部材3の状態は、図9A図9B及び図6Aの順で変化してよい。
【0122】
ワイピング部材3の状態が図9A図9B及び図6Aの順で変化する場合における保液部材9内の洗浄液の流れの一例を以下に挙げる。図9Aでは、保液本体9aのうち、矢印a1が描かれている部分が凸曲面11bによって押圧され、これにより、当該部分に保持されている洗浄液が先端3aの側へ絞り出される。次に、図9Bに示すように、矢印a2が描かれている部分が凸曲面11bによって押圧され、これにより、当該部分に保持されている洗浄液が先端3aの側へ絞り出される。なお、このとき、図9Aの矢印a1の部分は、先に押圧されているから、矢印a2の部分から絞り出された洗浄液が後端3bの側へ向かう蓋然性は低くなっている。このような作用によって、保液本体9aに保持されている洗浄液が後端3bの側から順に先端3aの側へ絞り出される。その結果、例えば、D1方向における長い移動距離に亘って洗浄液を絞り出すことができる。
【0123】
図10A及び図10Bは、ワイピング部材3の更に他の状態の例を示す側面図又は断面図である。
【0124】
図10Aは、図6Aの一部拡大図に相当する。図10Bは、図10Aとは異なる状態を示す、図10Aに相当する図である。これらの図では、-D1側の支持部材11の図示は省略されている。
【0125】
図6A図9A及び図9Bを参照して、互いに異なるワイピングの動作態様、又は1つの動作態様において、ワイピング部材3を吐出面1aに向かって押し付ける力(別の観点では支持部材11の吐出面1aに対する距離)が互いに異なる複数の状態が実現されてよいことを述べた。押し付ける力が互いに異なる状態は、図10A及び図10Bに示すように、ワイピング部材3が吐出面1aと支持部材11とに挟まれている状態で実現されてもよい。
【0126】
より具体的には、図10Bの状態は、図10Aの状態に比較して、押し付ける力が大きくされている。この2つの状態が1つのワイピングの動作態様において生じる場合、例えば、図10A及び図10Bの順でこれらの状態が生じてよい。この場合例えば、図10Aの状態で保液本体9aに残っていた洗浄液が、図10Bの状態になったときに絞り出されることになる。その結果、例えば、D1方向における長い移動距離に亘って洗浄液を絞り出せる。
【0127】
(ワイピングの動作手順)
上述したワイピング部材3の接触状態は、適宜な時期に実現されてよい。以下にいくつかの例を示す。
【0128】
図11A図11Dは、ワイピングの動作手順の一例を示す模式的な側面図又は断面図である。
【0129】
ワイピングは、図11A図11B図11C及び図11Dの順で進行する。この例では、ワイピング部材3が吐出面1aと支持部材11の先端面11cとの間で挟まれた状態(図6A)でワイピングが行われることが想定されている。具体的には、以下のとおりである。
【0130】
図11Aでは、ワイピングが行われる前の状態が示されている。ワイピング部材3は、吐出面1aよりも+D1側に位置している。ワイピング部材3の先端3aは、吐出面1aよりも+D3側に位置している。
【0131】
図11Bでは、支持部材11が-D1側へ移動される。これにより、ワイピング部材3のうち先端3aの側の部分が吐出面1aに当接する。また、ワイピング部材3の本体部3cは、+D1側(換言すれば進行方向とは反対側)に撓む。
【0132】
図11Cでは、支持部材11が+D3側へ移動される。これにより、図6A等を参照して説明した状態が実現される。すなわち、ワイピング部材3の本体部3cは、吐出面1aと支持部材11の先端面11cとの間で挟まれる。
【0133】
図11Dでは、支持部材11は、図11Cの位置から-D1側へ移動される。これにより、ワイピングが行われる。このときの吐出面1aと支持部材11との距離(ワイピング部材3を吐出面1aに押し付ける力)は、例えば、一定である。
【0134】
なお、図11Aに点線で示すように、吐出面1aの+D1側には、吐出面1aにつながる傾斜面21aを有する補助部材21が設けられてもよい。この場合において、支持部材11の-D1側への移動開始前において、ワイピング部材3は、傾斜面21aに当接していてもよいし、傾斜面21aから離れていてもよい。なお、補助部材21は、ヘッド1の一部であってもよいし、ヘッド1とは別個の部材であってもよい。
【0135】
図11Aとは異なり、ワイピング前において、吐出面1aよりも-D3側にワイピング部材3を位置させてもよい。そして、支持部材11を+D3側へ移動させつつ-D1側へ移動させてよい。又は、支持部材11を+D3側へ移動させてワイピング部材3を吐出面1aに当接させた後、支持部材11を-D1側へ移動させてもよい。このような動作によっても、図11Bの状態を実現できる。
【0136】
図11Bから図11Cへの移行に際しては、図9A及び図9Bを参照して説明した動作が実現されてよい。例えば、+D1側の凸曲面11bは、+D1側の保液本体9aを-D3側から徐々に押圧してよい。図11Bから図11Cへの移行に際しては、ワイピング部材3の+D3側への移動に伴って、ワイピング部材3を-D1側へ移動させてもよい。この場合、例えば、上記の凸曲面11bが-D3側から徐々に保液本体9aを押圧する動作が実現されやすい。
【0137】
図11Cから図11Dへ移行してワイピングが行われるときのワイピング部材3のD1方向における移動速度は適宜に設定されてよい。例えば、当該速度は、一定であってもよいし、変化してもよい。
【0138】
図12A図12Dは、ワイピングの動作手順の他の例を示す模式的な側面図又は断面図である。
【0139】
ワイピングは、図12A図12B図12C及び図12Dの順で進行する。この例では、ワイピングが行われている間において、ワイピング部材3を吐出面1aに押し付ける力が変化する。具体的には、以下のとおりである。
【0140】
図12Aでは、図11Bと同様の状態とされている。この状態に至るまでの過程も、図11Bの例と同様とされてよい。
【0141】
図12Bでは、支持部材11は、図12Aの位置から-D1側へ移動される。この際、支持部材11は、+D3側へも移動される。これにより、図9Aの状態から図9Bの状態へ移行する動作が実現される。
【0142】
図12Cでは、支持部材11は、図12Bの位置から更に-D1側へ移動される。この際、支持部材11は、更に+D3側へも移動される。これにより、図9Bの状態から図6Aの状態へ移行する動作が実現される。
【0143】
図12Dでは、支持部材11は、図12Cの位置から更に-D1側へ移動される。この際、支持部材11は、更に+D3側へも移動される。これにより、図10Aの状態から図10Bの状態へ移行する動作が実現される。
【0144】
図示の例とは異なり、支持部材11は、図12DにおけるD1方向の位置に到達したときに、図12CにおけるD3方向の位置に到達してもよい。また、支持部材11は、図11A図11Cの後に、-D1側への移動に伴って+D3側へも移動して、図11Cの位置から図12Dの位置へ到達してもよい。
【0145】
ワイピングは、適宜な時期に行われてよい。例えば、ワイピングは、プリンタが有する不図示の操作部に対して所定の操作が行われたときに行われてよい。また、ワイピングは、プリンタが有する制御装置がワイピングを行うべき時期が到来したと判定したときに行われてもよい。当該時期は、例えば、プリンタの稼働時、稼働後の印刷開始時、及び/又は印刷が所定の時間長さに亘って行われたときとされてよい。吐出面1aの状態(例えば汚れ)の情報に基づいて、ワイピングを行うか否かを制御装置が判定してもよい。吐出面1aの情報は、例えば、吐出面1aを撮像するイメージャ、又は印刷された画像(画質が低下していればワイピングの必要性があると判定できる。)をスキャンするスキャナによって得られてよい。
【0146】
(ワイピングの動作のその他の変形例)
これまでの説明では、D2方向に見たときに、支持部材11の保持面11aがD3方向に平行になる(吐出面1aに直交する)状態を前提とした。特に図示しないが、保持面11aは、D3方向に対して傾斜していてもよい。例えば、支持部材11が-D1側へ移動してワイピングを行うときにおいては、保持面11aは、+D3側ほど+D1側へ位置するように傾斜していてもよい。
【0147】
また、これまでの説明では、D3方向に見たときに、支持部材11の保持面11aがD2方向(吐出面1aの長手方向)に平行になる状態を前提とした。特に図示しないが、保持面11aは、D2方向に対して傾斜していてもよい。
【0148】
<洗浄液の供給>
既述のように、ワイピングにおいては、洗浄液が供給されてよい。その具体的な態様は、種々の態様とされてよく、例えば、公知の態様と同様の態様とされても構わない。以下に、いくつかの例を挙げる。
【0149】
(洗浄液の供給態様)
図13Aは、洗浄液の供給態様の一例を示す模式図である。
【0150】
この例では、シャワー23によってワイピング部材3に洗浄液が供給される。具体的には、例えば、ワイピング部材3等を含むワイピング装置は、シャワー23に加えて、洗浄液を貯留しているタンク25と、タンク25の洗浄液をシャワー23に送出するポンプ27とを有している。これらの具体的な構成は適宜なものとされてよい。
【0151】
シャワー23によってワイピング部材3へ洗浄液を供給可能な相対位置への両者の相対移動は、シャワー23及び/又はワイピング部材3(支持部材11)の移動によって実現される。洗浄液の供給のためのワイピング部材3の移動は、ワイピングのために支持部材11(ここでは不図示)を吐出面1aに対して移動させるワイパー駆動機構29が担ってもよいし、後述する、ワイピング装置全体を移動させる駆動機構が担ってもよいし、両者が担ってもよい。
【0152】
図13Bは、洗浄液の供給態様の他の例を示す模式図である。
【0153】
この例では、ワイピング部材3がタンク25に貯留されている洗浄液に浸されることによってワイピング部材3に洗浄液が供給される。タンク25の具体的な構成は適宜なものとされてよい。ワイピング部材3を洗浄液につけるためのワイピング部材3及びタンク25の相対移動は、ワイピング部材3(支持部材11)及び/又はタンク25の移動によって実現される。洗浄液の供給のためのワイピング部材3の移動は、ワイピングのために支持部材11(ここでは不図示)を吐出面1aに対して移動させるワイパー駆動機構29が担ってもよいし、後述する、ワイピング装置全体を移動させる駆動機構が担ってもよいし、両者が担ってもよい。
【0154】
図13Cは、洗浄液の供給態様の更に他の例を示す模式図である。
【0155】
この例では、吐出面1aに洗浄液が供給される。吐出面1aへの洗浄液の供給態様は種々の態様とされてよい。図示の例では、ヘッド1又はヘッド1の一部とみなせる部材(例えば図11Aの補助部材21)に設けられた流路31を介して洗浄液が供給されている。当該流路31は、吐出面1a又は吐出面1aにつながる面(例えば補助部材21の傾斜面21a)に開口している。そして、ワイピング部材3は、ワイパー駆動機構29によって支持部材11が駆動されてワイピングを開始するときに、吐出面1aに供給された洗浄液を保持する。
【0156】
(洗浄液)
洗浄液(成分)は、種々の態様とされてよく、例えば、公知の態様と同様の態様とされても構わない。洗浄液としては、例えば、ヘッド1が吐出する液体の溶剤と同じ、又は類似したものを挙げることができる。すなわち、洗浄液としては、着色剤が含まれていない点を除いて、ヘッド1が吐出する液体と同一又は類似したものが利用されてよい。例えば、洗浄液は、水又は有機溶剤とされてよい。洗浄液は、ヘッド1が吐出する液体が含む、又は含まない成分として、界面活性剤、防腐剤、防カビ剤等を含んでよい。
【0157】
なお、ワイピングは、洗浄液の供給無しに行われても構わない。例えば、印刷後に洗浄液無しでワイピングが行われてよい。この場合、例えば、印刷の際に吐出面1aに付着していたインクがワイピング部材3によって拭き取られる。また、いわゆるキャッピングによる洗浄の後に洗浄液無しでワイピングが行われてもよい。
【0158】
キャッピングによる洗浄は、例えば、次のように行なわれる。まず、吐出面1aを覆うように不図示のキャップを被せる(これをキャッピングという)ことで、吐出面1aとキャップとで、略密閉された空間が作られる。そのような状態で、ヘッド1による液体の吐出を繰り返すことで、ノズル5に詰まっていた、標準状態よりも粘度が高くなっていた液体及び/又は異物等を取り除く。その後、キャップを取り外してワイピングが行われてよい。
【0159】
ワイピング部材3は、適宜に洗浄されてよい。上述した洗浄液の供給は、ワイピング部材3の洗浄を兼ねていてもよい。図13A図13Cに例示した洗浄液の供給態様は、2つ以上が組み合わされてもよい。組み合わされた2以上の供給態様のうち1つは主としてワイピング部材3の洗浄に寄与し、他の1つは主として洗浄液の供給に寄与してよい。組み合わされた2以上の供給態様において用いられる洗浄液の種類(成分)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0160】
<プリンタ>
(プリンタの概要)
ヘッド1の説明においても触れたように、ワイピング部材3は、種々の態様のプリンタに利用されてよい。以下では、プリンタの構成の例をいくつか示す。ここでは、ヘッド1とワイピング部材3との相対移動に特に着目し、プリンタの通常の印刷に係る構成及び動作については基本的に説明を省略する。
【0161】
図14A及び図14Bは、ワイピング部材3を有するプリンタ33Aを示す模式図である。図14Aは、印刷が行われている状態を示している。図14Bは、ワイピングが行われている状態を示している。
【0162】
プリンタ33Aは、ヘッド1と、不図示の記録媒体(例えば紙)を搬送する搬送部35とを有している。ここでは、プリンタ33Aとして、D2方向(ヘッド1の長手方向に直交する方向)に搬送される記録媒体に対して印刷を行うラインプリンタが想定されている。そして、搬送部35として、記録媒体が載置されるベルト35aと、当該ベルトを搬送するローラ35bとを有するものが模式的に示されている。
【0163】
また、プリンタ33Aは、ワイピング装置39を有している。ワイピング装置39は、例えば、ワイパー4(ワイピング部材3及び支持部材11)と、支持部材11を駆動するワイパー駆動機構29とを有している。ワイパー駆動機構29は、例えば、回転式の電動機又はリニアモータを含んで構成されてよい。また、ワイピング装置39は、飛散及び/又は落下する洗浄液を収容する容器等を有していてよい。
【0164】
図14Aに示すように、印刷時においては、ヘッド1は、搬送部35(より詳細にはベルト35a)に対向している。これにより、ヘッド1からインク滴を吐出して印刷を行うことができる。また、図14Bに示すように、ワイピング時においては、ヘッド1は、ヘッド駆動機構37によって、ワイピング装置39の位置へ搬送される。これにより、ワイピングを行うことができる。ワイピング装置39は、搬送部35に対して、いずれの方向に位置していてもよい。
【0165】
ヘッド駆動機構37は、例えば、回転式の電動機又はリニアモータを含んで構成されてよい。図示の例では、ヘッド1と記録媒体との相対移動は、搬送部35によって記録媒体が搬送されることによって実現された。ただし、ヘッド1と記録媒体との相対移動は、その全部又は一部がヘッド1の移動によって実現されてよい。この場合において、ヘッド1に対する記録媒体の相対移動を担う駆動機構が、ヘッド1をワイピング装置39の位置へ移動させるヘッド駆動機構37として兼用されてもよい。
【0166】
ヘッド駆動機構37及びワイパー駆動機構29等の各部の制御は、制御装置41によってなされてよい。制御装置41は、例えば、コンピュータによって構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)及び外部記憶装置を含んで構成されている。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、制御等を行う各種の機能部が構築される。
【0167】
図15A及び図15Bは、ワイピング部材3を有する他の例であるプリンタ33Bを示す模式図である。図15Aは、印刷が行われている状態を示している。図15Bは、ワイピングが行われている状態を示している。
【0168】
プリンタ33Aにおいては、ヘッド1が移動することによって、印刷が行われる状態とワイピングが行われる状態との切換えがなされた。一方、プリンタ33Bにおいては、搬送部35及びワイピング装置39が移動することによって、上記の切換えがなされる。具体的には、搬送部35は、搬送部駆動機構43によって、ヘッド1と対向する位置(図15A)からヘッド1から離れた位置(図15B)へ移動される。また、ワイピング装置39は、ワイピング装置駆動機構45によって、ヘッド1から離れた位置(図15A)からヘッド1に対向する位置(図15B)へ移動される。なお、搬送部35は、ヘッド1から離れたとき、ヘッド1に対していずれの方向に位置していてもよい。
【0169】
搬送部駆動機構43は、例えば、回転式の電動機又はリニアモータを含んで構成されてよい。同様に、ワイピング装置駆動機構45は、例えば、回転式の電動機又はリニアモータを含んで構成されてよい。これらの機構の動作は、制御装置41によって制御される。
【0170】
これまでの説明では、ワイピングのときのヘッド1とワイパー4との相対移動は、ワイパー駆動機構29によってワイパー4が駆動されることによって実現された。ただし、特に図示しないが、ヘッド1が移動することによって、ヘッド1とワイパー4との相対移動の少なくとも一部が実現されてもよい。この場合のヘッド1を駆動する機構として、印刷のためにヘッド1と記録媒体とを相対移動させる機構が利用されたり、図14Bに示したヘッド駆動機構37が利用されたりしてもよい。
【0171】
(プリンタの具体例)
以下では、上記よりも具体的にプリンタの構成の一例を示す。ここでは、まず、ワイピングに係る構成を除いた構成について説明する。次に、ワイパーの構成を例示する。
【0172】
図16は、プリンタ33Cの概略の側面図である。図17は、プリンタ33Cの概略の平面図である。
【0173】
これらの図では、ヘッド1に対して定義された直交座標系D1-D2-D3が付されている。後述する説明から理解されるように、プリンタ33Cは、複数のヘッド1を有している。そして、複数のヘッド1は、互いに向きが若干異なる。従って、直交座標系D1-D2-D3は、厳密性を無視して付されている。
【0174】
プリンタ33Cは、D2方向(ヘッド1の短手方向)に印刷用紙Pを搬送しつつ、移動が規制されているヘッド1によってインク滴を吐出して印刷用紙Pに印刷を行うラインプリンタとして構成されている。より具体的には、プリンタ33Cは、印刷用紙Pを給紙ローラ80Aから回収ローラ80Bへと搬送することにより、印刷用紙Pをヘッド1に対して相対的に移動させる。なお、給紙ローラ80A及び回収ローラ80B並びに後述する各種のローラは、印刷用紙Pとヘッド1とを相対移動させる移動部85を構成している。制御装置41は、画像及び/又は文字等のデータである印刷データ等に基づいて、ヘッド1を制御して、印刷用紙Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
【0175】
プリンタ33Cは、印刷用紙Pと略平行となるように、4つの平板状のヘッド搭載フレーム70(以下で単にフレームと言うことがある)を有している。各フレーム70には図示しない5個の孔が設けられており、5個のヘッド1がそれぞれの孔の部分に搭載されている。1つのフレーム70に搭載されている5つのヘッド1は、1つのヘッド群72を構成している。プリンタ33Cは、4つのヘッド群72を有しており、合計20個のヘッド1が搭載されている。
【0176】
フレーム70に搭載されたヘッド1は、吐出面1a(-D3側の面)が印刷用紙Pに面するようになっている。ヘッド1と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5~20mm程度とされる。
【0177】
20個のヘッド1は、制御装置41と直接接続されていてもよいし、印刷データを分配する分配部を介して制御装置41と接続されていてもよい。例えば、制御装置41が印刷データを1つの分配部へ送信し、1つの分配部が印刷データを20個のヘッド1に分配してもよい。また、例えば、4つのヘッド群72に対応する4つの分配部へ制御装置41が印刷データを分配し、各分配部は、対応するヘッド群72内の5つのヘッド1に印刷データを分配してもよい。
【0178】
1つのヘッド群72内において、3つのヘッド1は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば略直交する方向)に沿って並んでおり、他の2つのヘッド1は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つのヘッド1の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。別の表現をすれば、1つのヘッド群72において、ヘッド1は、千鳥状に配置されている。ヘッド1は、各ヘッド1で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向、すなわち、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
【0179】
4つのヘッド群72は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各ヘッド1には、図示しない液体供給タンクから液体(例えばインク)が供給される。1つのヘッド群72に属するヘッド1には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを印刷用紙Pに着弾させることにより、カラー画像を印刷できる。
【0180】
プリンタ33Cに搭載されているヘッド1の個数は、単色で、1つのヘッド1で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、1つでもよい。ヘッド群72に含まれるヘッド1の個数、及び/又はヘッド群72の個数は、印刷する対象及び/又は印刷条件に応じて適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷すれば、同じ性能のヘッド1を使用しても搬送速度を速くできる。これにより、時間当たりの印刷面積を大きくすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
【0181】
さらに、色のあるインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を、ヘッド1で、一様に、あるいはパターンニングして印刷してもよい。コーティング剤としては、例えば、記録媒体として液体が浸み込み難いものを用いる場合において、液体が定着し易いように、液体受容層を形成するものを使用できる。他に、コーティング剤としては、記録媒体として液体が浸み込み易いものを用いる場合において、液体のにじみが大きくなり過ぎたり、隣に着弾した別の液体とあまり混じり合わないように、液体浸透抑制層を形成するものを使用できる。コーティング剤は、ヘッド1で印刷する以外に、制御装置41が制御する塗布機76で一様に塗布してもよい。
【0182】
プリンタ33Cは、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、フレーム70に搭載されているヘッド1の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82Cの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Cを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、ヘッド1によって印刷される。
【0183】
続いて、プリンタ33Cの詳細について、印刷用紙Pが搬送される順に説明する。給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、塗布機76の下を通る。塗布機76は、印刷用紙Pに、上述のコーティング剤を塗布する。
【0184】
印刷用紙Pは、続いて、ヘッド1が搭載されたフレーム70を収納した、ヘッド室74に入る。ヘッド室74は、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっているが、概略、外部と隔離された空間である。ヘッド室74は、必要に応じて、制御装置41等によって、温度、湿度、および気圧等の制御因子が制御される。ヘッド室74では、プリンタ33Cが設置されている外部と比較して、外乱の影響を少なくできるので、上述の制御因子の変動範囲を外部よりも狭くできる。
【0185】
ヘッド室74には、5個のガイドローラ82Bが配置されており、印刷用紙Pは、ガイドローラ82Bの上を搬送される。5個のガイドローラ82Bは、側面から見て、フレーム70が配置されている方向に向けて、中央が凸になるように配置されている。これにより、5個のガイドローラ82Bの上を搬送される印刷用紙Pは、側面から見て円弧状になっており、印刷用紙Pに張力を加えることで、各ガイドローラ82B間の印刷用紙Pが平面状になるように張られる。2つのガイドローラ82Bの間には、1つのフレーム70が配置されている。フレーム70は、その下を搬送される印刷用紙Pと平行になるように、設置される角度が少しずつ変えられている。
【0186】
ヘッド室74から外に出た印刷用紙Pは、2つの搬送ローラ82Cの間を通り、乾燥機78の中を通り、2つのガイドローラ82Dの間を通り、回収ローラ80Bに回収される。印刷用紙Pの搬送速度は、例えば、100m/分とされる。各ローラは、制御装置41によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
【0187】
乾燥機78で乾燥することにより、回収ローラ80Bにおいて、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れることが起き難くなる。高速で印刷するためには、乾燥も速く行なう必要がある。乾燥を速くするため、乾燥機78では、複数の乾燥方式により順番に乾燥してもよいし、複数の乾燥方式を併用して乾燥してもよい。そのような際に用いられる乾燥方式としては、例えば、温風の吹き付け、赤外線の照射、加熱したローラへの接触などがある。赤外線を照射する場合は、印刷用紙Pへのダメージを少なくしつつ乾燥を速くできるように、特定の周波数範囲の赤外線を当ててもよい。印刷用紙Pを加熱したローラに接触させる場合は、印刷用紙Pをローラの円筒面に沿って搬送させることで、熱が伝わる時間を長くしてもよい。ローラの円筒面に沿って搬送させる範囲は、ローラの円筒面の1/4周以上がよく、さらにローラの円筒面の1/2周以上にするのがよい。UV硬化インク等を印刷する場合には、乾燥機78の代わりに、あるいは乾燥機78に追加してUV照射光源を配置してもよい。UV照射光源は、各フレーム70の間に配置してもよい。
【0188】
記録媒体は、印刷用紙P以外に、ロール状の布などでもよい。また、プリンタ33Cは、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルトを搬送して、記録媒体を搬送ベルトに置いて搬送してもよい。そのようにすれば、枚葉紙、裁断された布、木材又はタイルなどを記録媒体にできる。さらに、ヘッド1から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、ヘッド1から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤又は化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
【0189】
また、プリンタ33Cに、位置センサ、速度センサ及び/又は温度センサなどを取り付けて、制御装置41が、各センサからの情報から分かるプリンタ33C各部の状態に応じて、プリンタ33Cの各部を制御してもよい。例えば、ヘッド1の温度、ヘッド1に液体を供給する液体供給タンクの液体の温度、及び/又は液体供給タンクの液体がヘッド1に加えている圧力などが、吐出される液体の吐出特性(例えば吐出量及び/又は吐出速度)に影響を与えている場合などに、それらの情報に応じて、液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
【0190】
図18は、プリンタ33Cに利用されるワイパー4Cの構成を示す模式図である。ここでは、ヘッド1の吐出面1aも点線で示されている。
【0191】
ワイパー4Cは、複数(図示の例では5つ)のワイパー4と、複数のワイパー4を連結する連結部材47とを有している。ワイパー4は、図5等を参照して説明した構成を有しており、ワイピング部材3及び保持部10(図5等よりも模式的に示されている。)を有している。複数のワイパー4の数及び相対位置は、1つのヘッド群72が有しているヘッド1の数及び相対位置に対応している。従って、ワイパー4CをD1方向へ移動させることによって、1つのヘッド群72が有している全てのヘッド1をワイピングすることができる。連結部材47の形状は任意であり、例えば、板状であってもよいし(図示の例)、骨組状であってもよい。
【0192】
特に図示しないが、図示の例とは異なり、例えば、複数のヘッド群72に対応する複数のワイパー4Cが更に連結されてワイパーが構成されてもよい。又は、1つのヘッド群72の複数のヘッド1に対応するワイパー4は、互いに連結されずに、独立に駆動されてもよい。1つのワイパー4(図5等)は、1つのヘッド群72の複数のヘッド1をワイピング可能に比較的大きく構成されてもよい。複数のヘッド群72同士で吐出面1aが同一平面に位置する場合においては、1つのワイパー4は、複数のヘッド群72の吐出面1aをワイピング可能に比較的大きく構成されてもよい。1つのワイパー4は、複数のヘッド1を順次ワイピングするように複数のヘッド1に対して相対移動されてもよい。
【0193】
以上のとおり、本実施形態では、ワイピング部材3は、弾性部材7と、保液部材9とを有している。弾性部材7は、互いに異なる方向に面する第1面及び第2面(例えば2つの主面7a)を有している。保液部材9は、第1面及び第2面にわたって弾性部材7に重なっており、保液性を有している。
【0194】
従って、例えば、弾力性を有する弾性部材7によって、洗浄液を含んだ保液部材9を吐出面1aに押圧してワイピングすることができる。これにより、ワイピングによる洗浄の効果が向上する。また、保液部材9は、弾性部材7の2つの面(例えば2つの主面7a)にわたっている。これにより、例えば、図9A及び図9Bに係る既述の説明から理解されるように、吐出面1aに当接して直接的にワイピングに寄与する部分(例えば2つの保液本体9aのうち一方)とは別に、洗浄液をヘッド1に供給する部分(例えば2つの保液本体9aのうち他方)を保液部材9に設けることができる。その結果、例えば、ワイピング部材3に保持される洗浄液の量を増加させたり、吐出面1aにおける汚染物質が混じっていない洗浄液を吐出面1aに供給したりすることができる。また、例えば、1回の洗浄液の供給及び/又はワイピング部材3の洗浄に対して、2つの面のうちの一方に位置する部分(例えば2つの保液本体9aのうち一方)を吐出面1aに当接させるワイピングと、2つの面のうちの他方に位置する部分(例えば2つの保液本体9aのうち他方)を吐出面1aに当接させるワイピングとの2回のワイピングを行うことができる。その結果、ワイピングに係る動作の効率化が図られる。
【0195】
上記の第1面及び第2面(例えば2つの主面7a)は互いに反対側に面していてよい。
【0196】
この場合、例えば、上記のように1回の洗浄液の供給及び/又はワイピング部材3の洗浄に対して2回のワイピングを行う態様において、ヘッド1とワイピング部材3とを相対移動させる移動装置(例えばワイパー駆動機構29)の構成が簡素化される。具体的には、例えば、実施形態のように支持部材11の保持面11aがD1方向に直交している状態でワイピングが行われるのであれば、支持部材11の移動方向を+D1側と-D1側とで切り換えるだけでよい。
【0197】
ワイピング部材3においては、弾性部材7に保液部材9が巻き付けられていてよい。
【0198】
この場合、例えば、布などの可撓性のシートを弾性部材7に巻き付けるだけで保液部材9を有するワイピング部材3を構成することができるから、ワイピング部材3を作製することが容易である。また、例えば、保液部材9を弾性部材7に対して着脱可能にワイピング部材3を構成することができる。さらに、図2B及び図3Aとの比較から理解されるように、巻き付ける回数を変更するだけで、保液部材9の厚さを調整することができる。すなわち、ワイピングによる洗浄の効果に影響を及ぼす保液部材9の厚さの調整が容易である。また、一般に、互いに重ねられた複数枚の布の保水率は、1枚の布の保水率よりも高い。これは、布と布との間において保水がなされることからである。従って、巻き付ける回数を増加することによって、効率的に洗浄液の保液量を多くすることができる。
【0199】
実施形態に係るワイパー4は、ワイピング部材3と、ワイピング部材3を支持する支持部材11と、を有してよい。ワイピング部材3は、互いに反対側に面する第1面及び第2面(例えば2つの主面7a)に沿う方向の両側の端部である先端3a及び後端3bを有してよい。また、ワイピング部材3は、先端3aを含む本体部3cと、本体部3cよりも後端3bの側に位置している被保持部3dと、を有してよい。支持部材11は、保持面11aと、凸曲面11bとを有してよい。保持面11aは、本体部3cの第2面(例えば+D1側の主面7a)が面する側への撓み変形を許容するように、第2面が面している側(+D1側)から被保持部3dに対して当接してよい。凸曲面11bは、保持面11aに対して先端3aの側につながっており、撓み変形していない状態のワイピング部材3に対して先端3aの側に位置するほど第2面が面する側(+D1側)へ離れるように湾曲してよい。
【0200】
この場合、例えば、ワイピング部材3における応力集中が緩和される。具体的には、例えば、支持部材11において凸曲面11bが設けられずに保持面11aと先端面11cとが直交している態様、又は図7Aの支持部材11Aのみが用いられている態様(これらの当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)を考える。この態様では、ワイピング部材3は、角部の側に撓み変形したときに角部に当接する部分において応力集中を生じる。一方、凸曲面11bが設けられている態様においては、ワイピング部材3は、凸曲面11bに当接して凸曲面11bに沿って変形することから、応力の集中が緩和される。また、凸曲面11bが設けられていると、図9A及び図9Bを参照して説明したように、吐出面1aから離れた部分から順番に保液本体9aが押圧される動作が容易化される。その結果、例えば、D1方向における長い移動距離に亘って洗浄液を絞り出すことができる。
【0201】
実施形態に係るワイパー4は、ワイピング部材3と、第1支持部材及び第2支持部材(2つの支持部材11)とを有してよい。ワイピング部材3は、互いに反対側に面する第1面及び第2面(例えば2つの主面7a)を有してよい。第1支持部材(例えば-D1側の支持部材11)は、第1面(例えば-D1側の主面7a)が面する側(-D1側)からワイピング部材3に当接してよい。第2支持部材(例えば+D1側の支持部材11)と、第2面(例えば+D1側の主面7a)が面する側(+D1側)からワイピング部材3に当接してよい。
【0202】
この場合、例えば、2つの支持部材11を含む保持部10を-D1側及び+D1側のいずれに移動させたときもワイピング部材3を支持部材11によって支持することができる。すなわち、互いに反対側に面する2つの主面7aに位置する2つの保液本体9aを用いて2方向のワイピングを行うことが容易化される。
【0203】
実施形態に係るワイピング方法は、ワイピング部材3によって、ヘッド1におけるノズル5が開口している吐出面1aをワイピングするワイピングステップ(例えば図11A図11D)を有している。ワイピング部材3は、互いに反対側に面する第1面及び第2面(例えば2つの主面7a)に沿う方向の両側の端部である先端3a及び後端3bを有してよい。また、ワイピング部材3は、先端3aを含む本体部3cと、本体部3cよりも後端3bの側に位置している被保持部3dと、を有してよい。保液部材9は、第1部分(例えば-D1側の保液本体9a)と、第2部分(例えば+D1側の保液本体9a)と、を有してよい。-D1側の保液本体9aは、本体部3cに位置するとともに第1面(例えば-D1側の主面7a)に位置してよい。+D1側の保液本体9aは、本体部3cに位置するとともに第2面(例えば+D1側の主面7a)に位置してよい。ワイピングステップは、本体部3cの撓み変形を許容するように被保持部3dを保持した状態で、本体部3cを吐出面1aに当接させる当接ステップ(例えば図11A及び図11B)を含んでよい。また。ワイピングステップは、本体部3cが吐出面1aに当接している状態で、吐出面1aに沿う方向であって、被保持部3dにおいて第1面が面している第1方向(例えば-D1側。第1面に直交する方向に限定されない。)へワイピング部材3を移動させる第1ステップ(例えば図11C及び図11D)を含んでよい。第1ステップでは、-D1側の保液本体9aが吐出面1aに当接している状態で+D1側の保液本体9aを+D1側の主面7aに向かって押圧しつつ、ワイピング部材3を-D1側へ移動させてよい。
【0204】
この場合、例えば、これまでの説明から理解されるように、吐出面1aに当接している保液本体9aが保持している洗浄液だけでなく、反対側の保液本体9aが保持している洗浄液を絞り出して利用することができる。なお、これまでの説明では、吐出面1aに当接していない保液本体9aの押圧は、支持部材11の+D3側への移動に伴って支持部材11によって行われた。ただし、押圧は、適宜な駆動機構又は人力によって、支持部材11以外の部材が保液本体9aに押し付けられることによって実現されても構わない。
【0205】
上記の第1ステップ(例えば図12A図12D)では、第2部分(例えば+D1側の保液本体9a)は、吐出面1aに近い領域ほど遅いタイミングで第2面(例えば+D1側の主面7a)に向かって押圧される(例えば、図12A図12C、並びに図9A図9B及び図6A)。
【0206】
この場合、図9A及び図9Bを参照して説明したように、吐出面1aから離れた部分から順番に保液本体9aが押圧される動作が容易化される。その結果、例えば、D1方向における長い移動距離に亘って洗浄液を絞り出すことができる。なお、これまでの説明では、吐出面1aから離れた位置から順に押圧する動作は凸曲面11bによって実現された。ただし、このような押圧は、適宜な駆動機構又は人力によって、凸曲面11b以外の形状の面を保液本体9aに対して吐出面1aから離れた位置から順に押し付けることによって実現されても構わない。
【0207】
実施形態に係るワイピング方法のワイピングステップは、第1ステップ(例えば図6A)と、第2ステップ(例えば図6B)とを有していてもよい。第1ステップでは、第1部分(例えば-D1側の保液本体9a)が吐出面1aに当接している状態で、吐出面1aに沿う方向であって、被保持部3dにおいて第1面(例えば-D1側の主面7a)が面している第1方向(例えば-D1側。第1面に直交する方向に限定されない。)へワイピング部材3を移動させてよい。第2ステップでは、第2部分(例えば+D1側の保液本体9a)が吐出面1aに当接している状態で、吐出面1aに沿う方向であって、被保持部3dにおいて第2面(例えば+D1側の主面7a)が面している第2方向(例えば+D1側。第1面に直交する方向に限定されない。)へワイピング部材3を移動させてよい。
【0208】
この場合、例えば、2つの主面7aに位置している2つの保液本体9aの双方が、吐出面1aに対して当接して直接的にワイピングに寄与する部分として利用される。その結果、例えば、1回の洗浄液の供給及び/又はワイピング部材3の洗浄に対して2回のワイピングを行って、洗浄の効率化を図ることができる。
【0209】
第1ステップ(例えば図12A図12D)において、ワイピング部材3を吐出面1aに向かって押し付ける力を変化させてよい。別の観点では、支持部材11の吐出面1aに対する距離を変化させて良い。
【0210】
この場合、例えば、ワイピング(D1方向における移動)の進行に伴って、ワイピング部材3を吐出面1aに向かって押し付ける力を大きくすることによって、2つの保液本体9aの少なくとも一方に残っている洗浄液を絞りだすことができる。その結果、例えば、ワイピングの初期だけでなく、その後も洗浄液を吐出面1aに供給することができる。ひいては、ワイピングの終期まで洗浄の効果を維持することが容易化される。
【0211】
ワイピング方法は、ヘッド1が吐出する液体の種類、及びワイピングステップが実行される時期の少なくとも1つに応じて、保液部材9の厚さを設定する準備ステップ(例えば、図2A図2B及び図3参照)を更に有してよい。
【0212】
この場合、例えば、吐出面1aの汚れやすい場合に、保液部材9を厚く設定することで保持する洗浄液の量を多くし、洗浄の効果を高くすることができる。
【0213】
実施形態に係る液体吐出装置(例えば、プリンタ33A、33B及び33C)は、ワイピング部材3と、移動装置(例えばワイパー駆動機構29)とを有してよい。移動装置は、ワイピング部材3がヘッド1におけるノズル5が開口している吐出面1aをワイピングするようにワイピング部材3とヘッド1とを相対的に移動させる。
【0214】
このような液体吐出装置は、上述したワイピング部材3を有していることから、効果的に吐出面1aが洗浄される。その結果、例えば、液滴の吐出特性が安定化して、ひいては、画質が安定する。
【0215】
以上の実施形態等において、保液部材9が重なっている主面7a、側面7b、傾斜面7cのそれぞれは、第1面又は第2面の例である。2つの主面7a(及び2つの側面7b)は、互いに反対側に面している第1面及び第2面の例である。2つの支持部材11(又は11A)は第1支持部材及び第2支持部材の例である。2つの保液本体9aは第1部分及び第2部分の例である。ワイパー駆動機構29は移動装置の例である。プリンタ33A、33B及び33Cそれぞれは液体吐出装置の例である。
【0216】
なお、本開示に係る技術は、上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0217】
1つのワイピング部材は、2種以上の保液部材を有していてもよい。例えば、互いに素材が異なる保液部材が重ねられていてもよい。また、互いに異なる素材が弾性部材の表面のうちの互いに異なる領域に位置していてもよい。ワイピング部材は、弾性部材及び保液部材以外の部材を有していてもよい。例えば、ワイピング部材は、ワイピング部材の撓み変形を規制する、弾性部材よりもヤング率が高い部材を弾性部材の内部に有していてもよい。
【符号の説明】
【0218】
1…ヘッド、3…ワイピング部材、7…弾性部材、7a…主面(第1面又は第2面)、9…保液部材。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18