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  • 特許-鋼帯の温度および酸化物厚さの推定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】鋼帯の温度および酸化物厚さの推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20241111BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G01J5/00 101B
C21D9/56 101Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023523037
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 IB2021059501
(87)【国際公開番号】W WO2022079680
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/059760
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル・ノック,グワナエル
(72)【発明者】
【氏名】フェルテ,モルガン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010464(JP,A)
【文献】特開2007-292498(JP,A)
【文献】特開2011-202968(JP,A)
【文献】特開2020-008484(JP,A)
【文献】特開平04-040329(JP,A)
【文献】特開平03-293504(JP,A)
【文献】特開平07-270130(JP,A)
【文献】特開平05-164619(JP,A)
【文献】米国特許第05481112(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/56 - C21D 9/66
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01B 21/00 - G01B 21/32
G01J 5/00 - G01J 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃~1100℃の温度で実行される熱処理を受ける、加熱された鋼帯の酸化物厚さおよび温度を推定するための方法であって、
1)前記加熱された鋼帯によって放射される、1μm~5μmの範囲の異なる波長での少なくとも2つの放射強度を測定するステップと、
2)前記加熱された鋼帯の温度TESTIMATEDを推定するステップであって、
-前記少なくとも2つの測定された放射強度および、
-0nm~200nmの少なくともN個の酸化物層厚さについて既知の温度を有する基準鋼帯の、異なる波長での少なくとも2つの基準放射強度および少なくとも2つの基準放射率、
に基づいて推定するステップと、
3)前記測定された放射強度および前記推定された温度TESTIMATEDのうちの少なくとも1つを使用して、前記加熱された鋼帯の放射率係数εESTIMATEDを推定するステップと、
4)前記推定された放射率εESTIMATEDを使用して、前記加熱された鋼帯の酸化物厚さOxESTIMATEDを推定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記加熱された鋼帯は連続している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ1)において、1~5μm領域の異なる波長で前記加熱された鋼帯によって放射される少なくとも10個の放射強度が測定され、ステップ2)において、前記少なくとも10個の放射強度を使用してTESTIMATEDが推定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ1)において、1~5μm領域の異なる波長で鋼帯によって放射される少なくとも20個の放射強度が測定され、ステップ2)において、前記少なくとも20個の放射強度を使用してTESTIMATEDが推定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの放射強度は、少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmの波長差で測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理が、500℃~1100℃の温度で実行され、前記ステップ1)において、測定された少なくとも2つの放射強度の波長範囲は1μm~1.7μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理は100℃~500℃の温度で実行され、前記ステップ1)において、測定された少なくとも2つの放射強度の波長範囲は3μm~5μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ1)~4)は、前記加熱された鋼帯表面の複数の点について繰り返される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
炉内で実行される加熱された鋼帯を熱処理する方法であって、請求項1~8に記載の方法が実行され、前記TESTIMATEDが炉温度を制御するために使用される、方法。
【請求項10】
前記炉が、加熱部および均熱部を備え、請求項1~8に記載の方法が、前記加熱部で実行され、前記TESTIMATEDが、前記加熱ステップ中に前記炉温度を制御するために使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
鋼帯の熱処理方法であって、加熱ステップおよび均熱ステップを備え、前記加熱された鋼帯の幅に沿って調整可能な出力を有するバーナを備える炉内で実行され、請求項1~8に記載の方法が、前記加熱ステップ中に実行され、前記推定酸化物厚さOxESTIMATEDが、前記加熱された鋼帯に沿って前記バーナの出力を調節し、前記加熱された鋼帯の幅に沿って酸化物厚さを均一化するために使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の温度および酸化物層厚さを推定することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯は、その特性を高めるために複数の熱処理を受ける。これらの処理のほとんどにおいて、鋼帯は、所定の温度を超えて加熱され、その後、多かれ少なかれ急速に冷却される。
【0003】
最も一般的な熱処理のうちの1つは、鋼帯の延性を高め、その硬度を低下させることを可能にする焼鈍である。このプロセスでは、帯材は加熱され、その再結晶温度を超えて維持され、次いで冷却される。焼鈍中、帯材表面は、徐々に酸化され、酸化物の層が一般にその表面上に形成される。しかしながら、複数の要因(焼鈍条件:例えば、温度、露点、雰囲気、および鋼種など)に応じて、酸化物層厚さは、0nm~200nmまで変動する。一般に、酸化物層は、本質的に熱力学的条件に起因してFeOから構成される。
【0004】
帯材温度および酸化物層厚さを制御することは、帯材の良好な品質を確保し、プロセスを制御し、後続のプロセスステップを適合させるために重要である。焼鈍炉では、この制御は、通常、温度を測定するために帯材放射を使用する高温計によって行われる。
【0005】
しかし、酸化物層厚さの変動は、高温計によって行われる温度測定に影響を与える。実際、酸化物層が厚いほど放射率が大きくなり、したがって高温計による検出信号の強度が大きくなることが認められる。しかしながら、鋼温度の上昇はまた、より大きな検出信号をもたらす。したがって、高温計は、酸化物層の厚さは言うまでもなく、その存在を確実に検出することができない。検出信号の強度が増加すると、それが温度の上昇によるものか、酸化物層厚さによるものか、またはその両方によるものかを決定することができない。
【0006】
このため、高温計による測定温度は、酸化物層厚さの変動による放射率の変動を考慮していないため、信頼性が低い。したがって、測定層の放射率に応じた係数が、高温計によって与えられる温度に適用される。焼鈍中の鋼帯の温度および放射率を推定するための複数の方法が開発されている。
【0007】
特許第09033464号明細書は、スケール厚さをオンラインで測定する方法を開示している。それは、
-赤外放射光を焼鈍炉で検出するステップと、
-放射率がスケール厚さとは無関係であると仮定される12μm~20μmの波長L1における第1の放射輝度温度S1を決定するステップと、
-放射率がスケール厚さに依存する、2.5μm~4μmの波長L2における第2の放射輝度温度S2を決定するステップと、
-L1およびS1における放射率に基づいて、鋼板温度を決定するステップと、
-決定された鋼板温度および放射輝度温度S2に基づいて、L2における放射率e2を計算するステップと、
-放射率e2に基づいて、酸化物厚さを決定するステップと、
を備える6ステップのプロセスを主張している。
【0008】
この尺度の信頼性は制限されている。なぜならば、放射率が12μm~20μm領域でほぼ一定であっても、そのパーセンテージの変動は無視できず、50℃を超える温度測定誤差をもたらす可能性があるためである。さらに、この波長領域における放射率は、温度信頼性を低下させる工業的条件における寄生流によって特に影響を受ける。
【0009】
特許第11324839号明細書は、鋼板上に形成された酸化膜の厚さを精密に測定する方法を開示している。この方法は、2つのステップ:
-鋼温度が鋼の均熱温度に等しいと仮定し、
-2.5μm~10μmの複数の波長で鋼板の表面からの放射輝度を測定するステップと、
-放射輝度、酸化膜厚さ、および放射率の間の関係に基づいて、酸化膜厚さを決定するステップと、
を備える。
【0010】
この手段の信頼性は、工業的に目標とする均熱温度が炉内の異なる均熱温度であり得るために制限される。さらに、放射輝度測定中に均熱温度と鋼のうちの1つとの間に温度差が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第09033464号明細書
【文献】特許第11324839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、鋼帯の酸化物層厚さの測定の信頼性および精度を高めるために、その温度を正確かつ確実に決定することを可能にする方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することによって達成される。本方法はまた、請求項2~8のいずれかの特徴を備えることもできる。請求項9~11は、請求項1~8で行った手段を使用する熱処理方法に関する。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態および試行を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術において既知であり、本発明においてクレームされる測定方法のプロセスフロー図である。
図2】本発明の実施形態のステップを示す図である。
図3】様々な酸化物層厚さを有する鋼帯の波長の関数における相対輝度を表すプロットである。
図4】一方が従来技術によるものであり、他方が本発明の方法によるものである2つの温度測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、100℃~1100℃の温度で実行される熱処理を受ける、加熱された鋼帯の酸化物厚さおよび温度を推定するための方法であって、
1)前記加熱された鋼帯によって放射される、1μm~5μmの範囲の異なる波長で少なくとも2つの放射強度を測定するステップと、
2)前記加熱された鋼帯の温度TESTIMATEDを推定するステップであって、
-前記少なくとも2つの測定された放射強度および、
-決定された酸化物層厚さを有する基準鋼帯によって放射される、少なくとも基準波長に対する基準放射強度、
に基づいて推定するステップと、
3)前記測定された放射強度および推定された温度TESTIMATEDのうちの少なくとも1つを使用して、前記加熱された鋼帯の放射率係数εESTIMATEDを推定するステップと、
4)前記推定された放射率εESTIMATEDを使用して、前記加熱された鋼帯の酸化物厚さOxESTIMATEDを推定するステップと、
を備える方法に関する。
【0018】
100℃~1100℃の温度で実行される熱処理は、加熱ステップおよび均熱ステップを備える焼鈍処理とすることができる。さらに、前記熱処理の後、鋼帯を冷却してコーティングすることができる。
【0019】
クレームされる方法のステップを図1に示す。
【0020】
プロセスの第1のステップでは、1μm~5μm領域の異なる波長で、加熱された鋼帯によって放射される少なくとも2つの放射の強度が、任意の適切な測定手段によって測定される。例えば、波長2μmにおける第1の放射強度を測定し、波長4μmにおける第2の放射強度を測定する。測定手段は、2つの分光計またはハイパースペクトルカメラとすることができる。この第1のステップは、図1において、前記適切な測定手段によって生成され得る波長の関数として放射強度を表すプロットによって表される。
【0021】
測定強度の波長は、好ましくは5μm以下である。なぜならば、5μm~8μmの範囲が空気の吸収領域にあり、また、波長が大きいほど、以下の式から推測することができるように温度差の推定誤差が大きくなるためである。
【0022】
【数1】
【0023】
記録手段によって検出される各波長の放射強度は、主に2つの要因、すなわち、加熱された鋼帯の放射輝度および放射率に依存する。以下の用語において、λは波長を指し、Tは鋼帯の温度を指し、OxTHは酸化物層の厚さを指す。
【0024】
鋼帯放射輝度である放射輝度(λ、T)は、プランクの法則によって説明されるように、鋼帯温度および測定波長のみに依存する。
【0025】
鋼グレードの鋼帯放射率である放射率(λ、OxTH)は、酸化物層厚さおよび波長に依存する。したがって、記録された強度は、式(1)によって定義することができる:
【0026】
【数2】
【0027】
第2のステップでは、目標は、0nm~200nmの少なくともN個の酸化物層厚さについて既知の温度を有する基準鋼帯によって放射される、異なる波長での前記測定された少なくとも2つの放射強度および少なくとも2つの基準放射強度を使用して、加熱された鋼帯の温度を精密に推定することである。Saud N酸化物層厚さは、OxTHnとして示される。
【0028】
Nは整数である。好ましくは、Nは10より大きい。さらにより好ましくは、Nは25より大きい。好ましくは、各基準酸化物層厚さ間の段差は、5nmである。
【0029】
これを達成するための1つの方法を以下に提示する。式(1)の項は、式(2)につながる基準鋼帯の放射強度で割ることができる。
【0030】
【数3】
【0031】
式(2)から、式(3)を容易に推測することができる。
【0032】
【数4】
【0033】
【0034】
【数5】
は、
【0035】
【数6】
に等しく、これを
【0036】
【数7】
に書き換え、式中、C(T)は、
【0037】
【数8】
に等しく、式中、Tは、加熱された鋼帯の温度であり、TREFは、基準鋼帯の温度であり、Cは、プランクの式からの定数であり、
【0038】
【数9】
に等しく、式中、hは、プランク定数であり、kは、ボルツマン定数である。
【0039】
【数10】
に等しい線形化放射率を定義することができる。0nm~200nmの少なくともN個の酸化物層厚さについて、既知の温度を有する基準鋼帯の異なる波長での前記線形化放射率と、前記少なくとも2つの基準放射率とを組み合わせることによって、線形化放射率をアフィン関数で近似することが可能である。
【0040】
例えば、前記アフィン関数は、勾配「a」およびy切片「b」を有することができ、「a」および「b」は多項式関数を使用して近似される。例えば、「a」=a×Ox +a×Ox+a3、および「b」=b×Ox +b×Ox+bである。
【0041】
同様に、線形化強度は、
【0042】
【数11】
に等しいと定義することができる。0nm~200nmの前記少なくともN個の酸化物層厚さについて、既知の温度を有する基準鋼帯によって放射される、異なる波長での前記線形化強度と、前記少なくとも2つの基準放射強度とを組み合わせることによって、線形化強度をアフィン関数で近似することが可能である。
【0043】
例えば、前記アフィン関数は、勾配「a」およびy切片「b」を有することができる。「a」および「b」は、多項式関数を使用して近似することができる。
【0044】
例えば、「a」=a×Ox +a×Ox+a3、およびb=b×Ox +b×Ox+b+C(T)である。
【0045】
式3を線形化強度および放射率と組み合わせることによって、以下の式を確立することができる。
【0046】
【数12】
【0047】
次いで、C(T)は、方程式系を解くことができることが分かる。方程式系を解くと、C(T)、すなわち加熱された鋼の温度に関連する2対の酸化物厚さの値が導かれる。当業者は、値の許容可能な領域を設定することによって、辻褄の合わない値を提示する対を容易に除外することができる。例えば、酸化物厚さ値が負であるか、または閾値(500nmなど)を超えるか、または鋼の溶融温度より高い鋼の温度は不可能であると考えることができる。
【0048】
これにより、加熱された鋼板の推定温度TESTIMATEDを見出すことができる。
【0049】
測定された放射強度および基準放射強度ならびに基準放射率の数が大きいほど、ポリノームの係数はより正確であり、したがって推定された温度の精度はより高い。
【0050】
好ましくは、基準鋼帯および加熱された鋼帯は、同様の組成を有するか、または同じ鋼グレードに属する。さらにより好ましくは、前記基準鋼帯は、加熱された鋼帯と同じ組成を有する。
【0051】
広く知られているように、プランクの法則に基づいて、物体の放射率は、その温度が分かっているときに計算することができる。したがって、第3のステップにおいて、加熱された鋼帯の放射率は、プランクの法則および推定温度TESTIMATEDを使用して推定することができる。例えば、式(5)(式中、Lはプランクの法則の輝度である)を使用して放射率を推定することができる。これは、図1に示される。推定放射率は、εESTIMATEDで示される。
【0052】
【数13】
【0053】
加熱された鋼帯の2つ以上の放射率は、少なくとも2つの測定された放射強度のうちの2つ以上を使用することによって推定することができる。
【0054】
第4のステップでは、酸化鉄厚さをアバカスを使用して推定することができ、酸化鉄厚さは、決定された波長に対する鋼帯の放射率の関数としてプロットされる。そのような曲線は、図1にプロットされており、酸化物層厚さは、決定された波長に対するFeO酸化物の放射率の関数としてプロットされる。
【0055】
2つ以上の推定放射率を使用することにより、より多くの加熱された鋼帯の酸化物厚さを推定することができる。
【0056】
本発明では、鋼帯の温度は、測定値および基準値を使用して推定される。これに対して、従来技術では、図2に示すように、予測されたプロセス温度または2つの放射輝度温度を使用して温度を推定されていた。さらに、放射率が12μm~20μmの波長のスケール厚さと無関係であるという仮定は、図3に示すように相対輝度が0nm~500nmの酸化物厚さの波長の関数としてプロットされており正しくない。
【0057】
したがって、本発明の推定温度は、加熱された鋼帯の表面状態(例えば、真の放射率)を考慮するため、より精密かつ確実に決定される。したがって、酸化物層厚さの推定を改善することも可能になる。
【0058】
好ましくは、前記加熱された鋼帯は、連続している。
【0059】
好ましくは、ステップ1)において、1~5μm領域の異なる波長で、前記加熱された鋼帯によって放出される少なくとも10個の放射強度が測定され、ステップ2)において、前記少なくとも10個の放射強度を使用してTESTIMATEDが推定される。さらにより好ましくは、ステップ1)において、1~5μm領域の異なる波長で、鋼帯によって放射される少なくとも20個の放射強度が測定される。ステップ2)において、前記少なくとも20個の放射強度を使用してTESTIMATEDが推定される。より多くの放射強度が使用されるほど、推定の信頼性が高くなる。
【0060】
好ましくは、少なくとも2つの放射強度は、少なくとも0.1μm、より好ましくは少なくとも0.5μm、さらにより好ましくは少なくとも1μmの波長差を有する。明らかに、波長差が大きいほど、温度推定はより精密になる。
【0061】
好ましくは、加熱された鋼帯および基準鋼帯は、同様の組成を有する。好ましくは、加熱された鋼帯および基準鋼の組成は、各要素について、最大10%、より好ましくは最大5%、さらにより好ましくは最大2%の質量割合差を有する。例えば、最大10%の質量割合差の場合、加熱された鋼帯が5%のケイ素を含有する場合、基準鋼帯は、4.5%~5.5%のケイ素を含有する。
【0062】
好ましくは、鋼帯は、500℃~1100℃の温度に設定される。そのような温度範囲は、1μm~5μmの範囲で帯材の放射輝度を高めることを可能にし、したがって測定精度を改善させる。鋼帯温度をこの範囲に設定することは、好ましくは焼鈍プロセス中に行われる。
【0063】
さらにより好ましくは、前記熱処理は、500℃~1100℃の温度で実行され、前記ステップ1)において、測定された少なくとも2つの放射強度の波長範囲は、1μm~1.7μmである。この波長領域は、酸化層の厚さの変動が1μm~5μmの範囲の他の波長範囲と比較して放射率に強く影響するため、この温度範囲に対して有利である。第2に、この範囲は、1μm~5μmの範囲内であるため、推定放射率に対する推定温度の測定不確実性の影響が最も小さい。
【0064】
好ましくは、前記熱処理は、100℃~500℃の温度で実行され、前記ステップ1)において、測定された少なくとも2つの放射強度の波長範囲は、3μm~5μmである。そのような範囲は、放射強度の変動が、この温度範囲では1μm~3μmの範囲よりもこの領域で大きくなるため、有利である。
【0065】
好ましくは、前記ステップ1)~4)は、前記加熱された鋼帯表面の複数の点について繰り返される。さらにより好ましくは、前記ステップ1)~4)は、加熱された鋼帯幅に沿って、かつ加熱された鋼帯長さに沿って数点にわたって行われる。加熱された鋼帯表面の複数の点でステップ1)~4)を行うことにより、加熱された鋼帯の異なる場所で酸化物層厚さおよび加熱された鋼帯温度をマッピングすることが可能になる。有利には、測定は、帯材縁部の近くおよび帯材幅の中央の近くで行われる。
【0066】
好ましくは、本方法は、鋼帯表面の前記複数の点の推定酸化物厚さおよび推定温度を使用して、前記鋼帯の酸化物厚さおよび温度をマッピングするステップを備える。
【0067】
本発明はまた、炉内で実行される加熱された鋼帯の熱処理の方法であって、前述の方法が実行され、前記TESTIMATEDが炉温度を制御するために使用される、方法に関する。
【0068】
好ましくは、前記炉は、加熱部および均熱部を備え、前述の方法は、前記加熱部で実行され、前記TESTIMATEDは、前記加熱ステップ中に前記炉温度を制御するために使用される。
【0069】
加熱および均熱ステップの間、所望の特性を達成するために、加熱された鋼帯の目標温度が設定される。前述の方法のおかげで、加熱された鋼帯温度をより精密かつ確実に監視することができる。したがって、TESTIMATEDと目標温度とが一致するように、炉温度および加熱された鋼板にもたらされる熱量を変動させることができる。
【0070】
本発明はまた、加熱ステップおよび均熱ステップを備える鋼帯の熱処理方法であって、前記加熱された鋼帯の幅に沿って調整可能な出力を有するバーナを備える炉内で実行され、前述の方法は、前記加熱ステップ中に実行され、前記推定酸化物厚さOxESTIMATEDが、前記加熱された鋼帯に沿って前記バーナの出力を変動させ、前記加熱された鋼帯の幅に沿って酸化物厚さを均一化するために使用される、方法に関する。
【0071】
複数の酸化物厚さが帯材幅に沿って推定されるので、帯材幅に沿った酸化物厚さの変動を推定することができる。次いで、バーナの強度は、前記加熱された鋼帯幅に沿って酸化物厚さを均一化するために変化させることができる。
【0072】
実験結果
クレームされる方法の信頼性を評価するために比較実験を行った。この実験では、加熱された鋼帯の温度は、高温計、ウェッジ測定、および本発明による方法の3つの異なる技術によって測定されている。結果は、図4にプロットされる。
【0073】
ウェッジ測定は、温度が多かれ少なかれ一定である場合、安定した状態に対しては信頼性が高いが、鋼帯の温度が変動する場合、不安定な状態に対しては信頼性がないことが既知である。
【0074】
温度が約12分間安定している図4では、クレームされる方法による推定温度は、高温計によって測定された温度よりもウェッジ測定によって測定された温度に近いことが明らかに分かる。
【0075】
したがって、クレームされる方法は、より正確な方法を提供する。
図1
図2
図3
図4