(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】車両の制御プロセスを実施するための方法、該方法を実施するために構成された手段を含有するコントロールユニットまたはコントロールユニット複合体、該コントロールユニットまたは該コントロールユニット複合体を有する車両の制御システム、該制御システムを有する車両、および該方法を実施するように設計されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
(51)【国際特許分類】
B60T 8/174 20060101AFI20241111BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20241111BHJP
B60W 40/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B60T8/174 B
B60T8/174 E
B60T8/174 D
B60T8/00 Z
B60W40/00
(21)【出願番号】P 2023524572
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021075803
(87)【国際公開番号】W WO2022096187
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】102020213857.5
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マゲット,ファビオラ
(72)【発明者】
【氏名】エルター,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ハーバル,シュテフェン
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173816(JP,A)
【文献】特開2016-68935(JP,A)
【文献】特開2020-93584(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057528(WO,A1)
【文献】特開2020-173716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60T 7/12- 8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御プロセスを
コントロールユニットまたはコントロールユニット複合体に含有される手段によって実施するための方法において、車両の最新の状態値および/または周辺値から少なくとも2つの異なるスタビリティインジケータ(ISi)を算出し、この際に、前記異なるスタビリティインジケータ(ISi)のために異なる値を援用し、前記異なるスタビリティインジケータ(ISi)から、予設定された演算式に従ってクリティカリティインジケータ(IK)を算出し、車両の少なくとも2つの異なる制御器(Ri)または車両の制御器(Ri)の少なくとも2つの異なる部分制御器の前記クリティカリティインジケータ(IK)を、制御器パラメータを決定するために使用
し、
単数または複数の制御器(Ri)または部分制御器を、前記クリティカリティインジケータ(IK)が作動閾値を上回るときにだけ作動させ、
異なる制御器(Ri)または部分制御器に、異なる作動閾値を割り当てることを特徴とする、車両の制御プロセスを実施するための方法。
【請求項2】
車両の制御プロセスをコントロールユニットまたはコントロールユニット複合体に含有される手段によって実施するための方法において、車両の最新の状態値および/または周辺値から少なくとも2つの異なるスタビリティインジケータ(ISi)を算出し、この際に、前記異なるスタビリティインジケータ(ISi)のために異なる値を援用し、前記異なるスタビリティインジケータ(ISi)から、予設定された演算式に従ってクリティカリティインジケータ(IK)を算出し、車両の少なくとも2つの異なる制御器(Ri)または車両の制御器(Ri)の少なくとも2つの異なる部分制御器の前記クリティカリティインジケータ(IK)を、制御器パラメータを決定するために使用し、
前記スタビリティインジケータ(ISi)が、周辺値として運転者入力を含んでいることを特徴とする、車両の制御プロセスを実施するための方法。
【請求項3】
前記スタビリティインジケータ(ISi)が、車両の左右方向ダイナミックな状態値および前後方向ダイナミックな状態値を含んでいることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記クリティカリティインジケータ(IK)を決定するための演算式で、前記異なるスタビリティインジケータ(ISi)の重み付けを実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記演算式に、ファジー論理または人工知能を用いることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記クリティカリティインジケータ(IK)を制限するために、少なくとも1つのスタビリティインジケータ(ISi)を援用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記クリティカリティインジケータ(IK)を決定するための演算式で、異なるスタビリティインジケータ(ISi)を前記クリティカリティインジケータ(IK)の異なる値域に割り当てることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法を実施するために構成された手段を含有する複数のコントロールユニットを有する、コントロールユニットまたはコントロールユニット複合体。
【請求項9】
車両の制御システムにおいて、少なくとも2つの異なる制御器または部分制御器、および請求項8記載のコントロールユニットまたはコントロールユニット複合体を有する、車両の制御システム。
【請求項10】
車両において、請求項9記載の制御システムを有する車両。
【請求項11】
コンピュータプログラム製品において、該コンピュータプログラム製品が請求項8記載のコントロールユニットまたはコントロールユニット複合体で実行されると、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法ステップを実施するように設計されたプログラムコードを有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御プロセスを実施するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステム、ステアリングシステム、駆動システムおよび走行機構の制御器を有する車両の多様な制御システムは公知である。例として、トラクションスリップ制御装置(ASR)およびエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)が挙げられ、このASRおよびESPを介して、車両の前後方向ダイナミックスおよび左右方向ダイナミックスに影響を及ぼすことができる。車両の様々な制御器は、それぞれ車両に依存してパラメータ化されなければならない。制御器の制御閾は、最新の走行状態に場合によってはダイナミックに適合され得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明による方法は、より効果的な形式で車両の制御プロセスを実施することができる。制御プロセスは、車両の少なくとも2つの異なる制御器および/または車両の制御器(Ri)の少なくとも2つの異なる部分制御器を用いた、車両の最新の状態値および/または周辺値に基づいて実施される制御に相当する。このような制御器は、好適な形式で車両のドライビングダイナミックス、特に車両の前後方向ダイナミックスおよび/または左右方向ダイナミックスに影響を及ぼすことができる制御器である。制御器として、例えばESP制御器、トラクションスリップ制御装置ASR等が挙げられる。
【0004】
1つの共通の制御器で実現されている部分制御器として、1つの制御器の異なる制御器機能若しくは制御器課題が挙げられる。例えば、第1の部分制御器は、開制御回路を有するフィードフォワード制御機能を含んでいてよく、同じ制御器の第2の、場合によっては別の部分制御器は、閉制御回路を有するフィードバック制御若しくは制御器自動制御を含んでいてよい。第1の部分制御器は、例えば予防的に作業し、制御器自動制御なしに車両の走行特性を変えることができ、これに対して、同じ制御器の第2の、場合によっては別の部分制御器は、制御器自動制御によって走行特性に安定的に作用する。モデルに基づく制御において、部分制御器は、フードフォワード制御を介して設定されるモデルに及ぼす影響も含んでいる。
【0005】
本発明による方法を用いて、車両の最新の状態値および/または周辺値から少なくとも2つの異なるスタビリティインジケータが算出される。それぞれスカラー値またはベクトル値として構成された各スタビリティインジケータのために、車両の様々な状態値若しくは周辺値が援用される。様々なインジケータのために部分的に同じ状態値および周辺値が使用されれば、場合によっては好適であるが、様々なスタビリティインジケータにおいて少なくとも1つの周辺値若しくは状態値は異なっていなければならない。
【0006】
様々なスタビリティインジケータから、所定の演算式に従って、同様にスカラー値または場合によってはベクトル値として構成されたクリティカリティインジケータが算出される。クリティカリティインジケータは、車両の少なくとも2つの異なる制御器または部分制御器で制御器パラメータを決定および確定するために用いられる。
【0007】
この方法は、クリティカリティインジケータの1つの値だけによって、車両の様々な制御器または部分制御器がパラメータ化され得る、という利点を有しており、この場合、スタビリティインジケータを介して車両の最新の状態値および最新の周辺値に関する最新の走行状況が考慮される。クリティカリティインジケータの各値に、様々な制御器または部分制御器で所定の制御器パラメータセットが割り当てられている。したがって、最新の周辺状況および走行状況に基づいて、関与したすべての制御器若しくは部分制御器を連続的に最新の値でパラメータ化することができる。
【0008】
クリティカリティインジケータを介して、例えば制御器または部分制御器の許容された介入強さが連続的に適合され得る。これによって、スポーツ走行特性を高めるための敏捷介入を、これがクリティカリティインジケータの上昇に基づいて許容されている場合、可能にすることができる。このことは、運転者による制御器介入の容認も改善する。何故ならば、クリティカリティインジケータの上昇は、最新の走行状況における運転者の主観的な感覚に関係しているからである。
【0009】
好適な実施例によれば、スタビリティインジケータは、左右方向ダイナミックな状態値および前後方向ダイナミックな状態値を含んでいる。この場合、状態値は、車両の前後方向および左右方向における位置平面、速度平面および/または加速度平面を考慮している。考慮された状態値は、例えば前後方向速度、単数または複数の車両ホイールにおけるホイールスリップ、車両左右方向加速度、対角線角度、舵角等である。さらに、アクセルペダル位置および/またはブレーキペダル位置も考慮され得る。周辺値として、特に道路摩擦係数が考慮される。さらに、スタビリティインジケータに表れるエネルギ観察が可能であり、このエネルギ観察において、最大可能なエネルギポテンシャルと比較した、並進運動エネルギから回転エネルギへの変換が設定される。運転者特性、例えば前記アクセルペダル位置およびブレーキペダル位置に加えてステアリングホイール位置またはその他の運転者特有の値、例えば運転者の活動状態も周辺値として考慮され、これは、運転者の操作から導き出されるか、または車内の観察センサシステムを介して算出され得る。
【0010】
別の好適な実施例によれば、クリティカリティインジケータを決定するための演算式で、異なるスタビリティインジケータの重み付けが実施される。この方法は、個別のスタビリティインジケータがクリティカリティインジケータに様々な大きさの影響を与えることを可能にする。
【0011】
特に前記異なるスタビリティインジケータの重み付けを実施するための演算式は、ファジー論理を有しているかまたは人工知能に基づいて構成されていてよい。
【0012】
別の好適な実施例によれば、クリティカリティインジケータを制限するために少なくとも1つのスタビリティインジケータが援用され得る。これは例えば、ヨーレートインジケータを、ヨーレートに完全にまたは決定的に依存するスタビリティインジケータとして決定することを可能にする。このヨーレート/スタビリティインジケータは、前もって別のスタビリティインジケータから算出されたクリティカリティインジケータを制限するために援用されてよい。
【0013】
さらに、クリティカリティインジケータの部分値域にだけ関連する単数または複数のスタビリティインジケータを、クリティカリティインジケータを相応に制限するために援用することが可能である。これは、例えば運転者特性に依存するスタビリティインジケータ、ホイールスリップスタビリティインジケータ、ヨー加速度に該当するスタビリティインジケータおよび/または前後方向速度に該当するスタビリティインジケータに関する。これらのスタビリティインジケータ、および場合によっては選択的または追加的なスタビリティインジケータは、一方ではクリティカリティインジケータの部分値域を明確に決定し、他方では、クリティカリティインジケータの上方または下方の制限を生ぜしめる。
【0014】
クリティカリティインジケータの所定の値域に対するスタビリティインジケータの割り当ては、例えばクリティカリティインジケータの0%乃至50%の間の部分域だけ、またはクリティカリティインジケータの50%乃至100%の間の部分域だけに該当する。スタビリティインジケータは、相応に縮尺される。これから得られたインジケータから、別の演算式に従って、例えばファジー論理または人工知能を介して求めようとするクリティカリティインジケータが算出され得る。
【0015】
別の好適な実施例によれば、単数または複数の制御器または部分制御器、場合によってはすべての制御器または部分制御器が、クリティカリティインジケータが作動閾値を上回るときにだけ作動せしめられるようになっている。クリティカリティインジケータの比較的低い値では、車両は実際に、単数または複数またはすべての制御器または部分制御器の介入を必要としない、問題のない状況にある。場合によっては、存在する制御器または部分制御器の部分量だけを作動停止させ、残りの制御器または部分制御器を作動させるようにすれば好適である。作動閾値は、明確に予設定されるかまたはダイナミックに適合させられる。さらに、異なる制御器または部分制御器のために様々な高さの作動閾値を設定することができる。これは、相応に部分的にまたはすべてが明確に予設定されるかまたはダイナミックに適合され得る。
【0016】
本発明による方法を用いて、クリティカリティインジケータに基づいて、このクリティカリティインジケータを使用した異なる制御器を同時に作動させることが可能である。また、異なる制御器または部分制御器を様々な時点で作動させることも可能である。制御器または部分制御器の作動段階の開始時点および/または終了時点は、別の制御器の作動段階内にあっても作動段階外にあってもよい。
【0017】
本発明はさらに、前記方法を実施するための手段を有するコントロールユニットに関する。この手段は、少なくとも1つのメモリーユニット、少なくとも1つのコンピュータユニット、コントロールユニット内のコントロールユニットインプットおよびコントロールユニットアウトプットを含有している。さらに、コントロールユニット複合体が設けられていることが可能であり、このコントロールユニット複合体は、複数の個別のコントロールユニットを含有しており、各コントロールユニットは、前記形式で構成されている。個別のコントロールユニットは、それぞれ1つの制御器または部分制御器に割り当てられていてよい。
【0018】
最後に本発明は、車両の制御システムに関し、この制御システムは、少なくとも2つの個別の、異なる制御器または部分制御器、並びに前記コントロールユニット若しくは前記コントロールユニット複合体を有している。
【0019】
本発明はさらに、前記制御システムを備えた車両、例えば自動車または電動式の二輪車に関する。
【0020】
本発明はさらに、前記方法ステップを実施するために設計されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品に関する。このコンピュータプログラム製品は、前記コントロールユニット若しくはコントロールユニット複合体で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両の多様な状態値および周辺値から算出される、様々なスタビリティインジケータからクリティカリティインジケータを算出する原理図を有するブロック図である。
【
図2】クリティカリティインジケータの算出の詳細を示すブロック図である。
【
図3】クリティカリティインジケータに依存して可能な制御介入を示す線図である。
【
図4】クリティカリティインジケータに依存する制御器の作動を示す線図である。
【
図5】様々な制御変化を有する、
図4に相当する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
その他の利点および好適な実施例は、従属請求項、図面の説明および図面に記載されている。
【0023】
図1には、車両における様々な制御器R
1,R
2,R
3,R
4を状況に応じてパラメータ化するための様々なスタビリティインジケータI
S1,I
S2,I
S3…の関数としてのクリティカリティインジケータI
Kを算出するためのブロック図が示されている。制御器R
1,R
2,R
3,R
4は、互いに依存しない制御器および/または共通の制御器の部分制御器である。クリティカリティインジケータI
Kは、スカラー値を示し、このスカラー値は、最新の車両状況を反映し、車両の様々な制御器R
iに提供される。制御器R
iは好適には、特に車両の左右方向ダイナミックスに影響を及ぼすためのスタビリティコントローラ、例えばESP制御器であるが、車両の前後方向ダイナミックスに影響を及ぼすための単数または複数の制御器、例えばトラクションスリップ制御装置であってもよい。
【0024】
クリティカリティインジケータIKは、車両状態値の関数および/または車両の周辺値の関数として逐次更新され、様々な制御器に提供される。この方法は、クリティカリティインジケータIKを介して、車両内の様々な制御器のパラメータ化のために使用される1つの値だけを算出することを可能にする。クリティカリティインジケータIKの高さに応じて、制御器は様々な形式でパラメータ化されるか、または作動閾値を上回るか若しくは下回ると作動されるか若しくは作動停止され得る。
【0025】
クリティカリティインジケータIKの逐次的な算出は、スタビリティインジケータIS1,IS2,IS3…に依存して行われる。各スタビリティインジケータISは、多様な車両の状態値および/または周辺値に依存しており、この場合、様々なスタビリティインジケータISは、それぞれ少なくとも部分的に異なる状態値若しくは周辺値に依存している。最新のスタビリティインジケータISは、車両に設けられたセンサを介して検知されるセンサ情報に基づいて算出される。様々なスタビリティインジケータISは演算ブロック1で処理され、この演算ブロック1でクリティカリティインジケータIKが算出される。クリティカリティインジケータIKの演算は、ファジー論理または人工知能を利用して実施され得る。
【0026】
図2には、スタビリティインジケータI
SからクリティカリティインジケータI
Kを算出するためのブロック図の詳細が示されている。演算ブロック1は、様々な部分ステップに分けられている。スタビリティインジケータI
Sは、例えばスタビリティインジケータI
S1として、最大可能なエネルギポテンシャルと比較した、並進運動エネルギから回転エネルギへの変換に関するエネルギ観察に依存して算出される。別のスタビリティインジケータI
S2は最新の傾斜角度の関数として算出され、その他の複数のスタビリティインジケータは、車両の左右方向加速度、運転者特性、ホイールスリップ、前後方向速度その他に依存していてよい。すべてのスタビリティインジケータI
Sは、最新のセンサ情報に基づいて逐次算出され、最新のクリティカリティインジケータI
Kを算出するために演算ブロック1に提供される。
【0027】
様々なスタビリティインジケータISは、演算ブロック1内で様々な形式で処理することができる。例えば演算ブロック1内でスタビリティインジケータの一部が、まずクリティカリティインジケータの0%乃至100%の間のすべての値域に縮尺され、次いでさらに処理され、これに対してスタビリティインジケータのその他の部分は、例えば0%乃至50%の間のクリティカリティインジケータの部分値域にだけ縮尺され、次いでさらに処理されることが可能である。さらに、様々な別の最新値を考慮することができ、例えばクリティカリティインジケータを制限するために別のスタビリティインジケータ、例えばヨーレート・スタビリティインジケータを援用することができる。ステアリングシステム、アクセルペダルおよびブレーキペダルの最新の位置も、それぞれ別のスタビリティインジケータとして考慮されてよい。ファジー論理および人工知能を用いて、かつ限定的なスタビリティインジケータを考慮して、求めようとするクリティカリティインジケータIKが算出され、このクリティカリティインジケータIKが、スケール値として様々な制御器R1,R2,R3…に提供される。
【0028】
図3には、車両の様々な制御器Rまたは部分制御器の作動がクリティカリティインジケータI
Kの関数として示されている線図が示されている。クリティカリティインジケータは0%乃至100%の間に縮尺されている。例えば10%の作動閾値を下回ると制御器Rは作動停止される。10%乃至100%の間の値域内のクリティカリティインジケータI
Kの値域において作動閾値が上回ると、制御器Rの作動が考慮され、この際、クリティカリティインジケータI
Kの上昇につれて、より強い制御器介入が必要とされる。例えば
図3の右上のブロックRに示されているように、より強い制御器介入は、場合によっては、まずより高い作動閾値において実施されてもよい。例えば様々な制御器ブロックRが、アンダステアリングまたはオーバステアリングの際に制御器介入を示すと、相応にクリティカリティインジケータI
Kの比較的小さい値では弱い制御器介入しか実施しない。これに対してクリティカリティインジケータI
Kの、より高い値ではより強い制御器介入が行われる。
【0029】
図4には、互いに上下に位置する3つの線図が示されており、この場合、上の線図がクリティカリティインジケータI
Kの一例としての変化を示しており、真ん中の線図が乗算機Mの値を示し、一番下の線図が、乗算機なしおよび乗算機ありの制御器介入の変化を示す。クリティカリティインジケータI
Kはまず、例えば10%である作動閾値を下回っていて、この場合、乗算機Mのこの閾値の下が値0である。クリティカリティインジケータI
Kが閾値を上回ると直ちに、乗算機Mは値1に設定される。乗算機Mが値1になると直ちに、制御器Rの制御器介入が開始する。これは、最も下の線図で制御器介入の実線で示されている。これに対して、乗算機Mの、0に等しい値域内において、可能な制御器介入は破線で示されている。
【0030】
図5には、
図4に示された線図と同様に、上の線図にクリティカリティインジケータI
Kの変化が示されていて、真ん中の線図に乗算機Mの変化が示されていて、最も下の線図に制御器Rの制御器介入の変化が示されている。しかしながら、制御器介入の開始段階若しくは終了段階を切換えるために、乗算機Mは、クリティカリティインジケータI
Kが作動閾値を上回ると直ちに、値1に設定されるのではなく、クリティカリティインジケータI
Kの曲線変化に概ね追従し、最大で値1に上昇する。それに応じて、制御器Rの制御器介入は、少しだけ遅らされた変化を有している。
【符号の説明】
【0031】
1 演算ブロック
R 制御器ブロック
Ri,R1,R2,R3,R4 制御器
ISi,IS1,IS2,IS3,IS4,IS5,IS6,IS7 スタビリティインジケータ
IK クリティカリティインジケータ