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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】アンテナ用セラミック導波管フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/208 20060101AFI20241111BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01P1/208 Z
H01P1/205 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023525016
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2021015167
(87)【国際公開番号】W WO2022092792
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141822
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0143606
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナム シン パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ ホン キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョク パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ホ シン
(72)【発明者】
【氏名】ホーン キム
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-145302(JP,A)
【文献】特開2008-098727(JP,A)
【文献】特開平03-212003(JP,A)
【文献】特開2004-289352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/208
H01P 1/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の誘電率を有する誘電体で備えられ、インナー隔壁によって一部が区画される複数の共振ブロックを含むハウジングと、
前記ハウジングに備えられた複数の共振ブロックにそれぞれ備えられる複数の共振器ポストによってそれぞれ単一共振器として機能する複数の共振器と、
前記複数の共振器のいずれか1つに信号を入力するように入力ポートが連結される入力ポートホールと、前記複数の共振器のいずれか1つから信号が出力されるように出力ポートが連結される出力ポートホールと、を含み、
前記複数の共振器ポストのうち、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールのいずれか1つと最も隣接して配置された共振器ポストを飛ばした共振器ポストに向かって延びた切り欠き構造バーが前記ハウジングに一体に加工形成された、アンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項2】
前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面に形成され、
前記切り欠き構造バーは、水平方向に延長形成された、請求項1に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項3】
前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面に形成され、
前記切り欠き構造バーは、水平方向に延長形成されかつ、前記共振器ポストの底面と平行に水平延長形成された、請求項1に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項4】
前記切り欠き構造バーは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面で溝形状に切開加工形成されかつ、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールの深さより小さく加工形成された、請求項2または3に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項5】
前記切り欠き構造バーの先端部から前記入力ポートホールまたは出力ポートホールの深さよりも深く切り欠き区分溝がさらに加工形成された、請求項4に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項6】
前記切り欠き構造バーが形成された前記入力ポートホールまたは出力ポートホールに対応する共振ブロックに相当する前記ハウジングの一面に形成された共振器ポスト(以下、「対応ポスト」と称する)と、前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)との間は、前記インナー隔壁と共に、前記ハウジングの側壁に形成されたアウター隔壁によって区画される、請求項1に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項7】
前記入力ポートホールまたは出力ポートホールに対応する共振ブロックに相当する前記ハウジングの一面に形成された共振器ポスト(以下、「対応ポスト」と称する)の深さによって全体周波数の高低が補完される、請求項5に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項8】
前記対応ポストの深さが前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)の深さを基準として相対的に深くなると、前記対応ポストと前記隣接ポストの深さ差だけ前記全体周波数が下がるように補完される、請求項7に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項9】
前記対応ポストの深さが前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)の深さを基準として相対的に浅くなると、前記対応ポストと前記隣接ポストの深さ差だけ前記全体周波数が上がるように補完される、請求項7に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項10】
前記切り欠き区分溝の存否によって、周波数フィルタリングに際し、パスバンドの左側または右側に実現される切り欠きの種類が異なる、請求項5に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項11】
前記切り欠き構造バーと、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、金属材質がめっき被膜された被膜部を形成する、請求項1に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項12】
前記切り欠き構造バーは、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールと前記ハウジングの外面にめっき被膜された被膜部との電気的なショートを防止するために、未めっき部によって区画される、請求項1に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【請求項13】
前記切り欠き構造バーおよび前記切り欠き区分溝の先端は、少なくとも前記複数の共振器ポストのうち前記最も隣接して配置された共振器ポスト(以下、「第1共振器ポスト」と称する)が備えられた共振ブロック(以下、「第1共振ブロック」と称する)と、前記第1共振器ポストを飛ばした共振器ポスト(以下、「第2共振器ポスト」と称する)が備えられた共振ブロック(以下、「第2共振ブロック」と称する)とを相互区画する隔壁よりも遠く前記第2共振器ポスト側に延びた、請求項5に記載のアンテナ用セラミック導波管フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ用セラミック導波管フィルタ(CERAMIC WAVEGUIDE FILTER FOR ANTENNA)に関し、より詳しくは、入力ポートおよび出力ポートが連結される入力ポートホールまたは出力ポートホールと隣接する共振器との間にクロスカップリングが実現可能に備えられたアンテナ用セラミック導波管フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、無線通信サービスの種類が多くなるに伴い、周波数環境が複雑になっている。無線通信のための周波数は限られているので、無線通信チャネルをできるだけ隣接して周波数資源を有効に活用する必要性がある。
【0003】
しかし、多様な無線通信サービスが提供される環境で信号干渉が発生するので、アンテナは隣接した周波数資源間の信号干渉を最小化するためには、特定の帯域に対する帯域フィルタを含む。
【0004】
一般的に、帯域フィルタの減衰特性改善のために伝送零点(transmission zero、以下、「切り欠き(notch)」という)の適用が必須であり、これは隣接しない共振素子の間にクロスカップリング(cross coupling)を適用して実現する。
【0005】
RFフィルタのうち、セラミック導波管フィルタは、周りが導体膜で覆われた誘電体ブロックに切り欠き調整のための共振器を含む。共振器は、電磁波に共振特性を付与して特定の周波数を制限するように設計される。
【0006】
この時、偶数個の共振器をわたってクロスカップリングさせると、パスバンドの左右対称の切り欠きが発生し、奇数個の共振器をわたってクロスカップリングさせると、カップリングの種類によって左側または右側に1個の切り欠きが発生することが一般的である。
【0007】
このような通信用フィルタの切り欠きの実現は、通信システムの性能によって非常に多様に実現する必要性があるが、通信システムの特性に適したフィルタを実現するには性能が制限的である。
【0008】
それによって、アンテナにおいて、特定のパスバンドの左右に切り欠きが実現できるように、フィルタを通信システムによって異なって設定する必要がある。
【0009】
しかし、従来技術によるアンテナ用セラミック導波管フィルタは、共振器と共振器との間のカップリングによる左右切り欠き実現のための構造だけが開示されていて、その設計が非常に複雑である一方、フィルタの内部にクロスカップリングを実現するために追加される構造物の挿入が難しくて、効果的なカップリング設計が難しい問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、入力ポートおよび出力ポートが連結される入力ポートホールおよび出力ポートホールのいずれか1つにクロスカップリング可能な構造を適用することにより、特定のパスバンドの特性を強化したアンテナ用セラミック導波管フィルタを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、フィルタの内部にクロスカップリングの実現のための追加的な構造物の挿入がなくても、設計者が所望するカップリング設計が可能なアンテナ用セラミック導波管フィルタを提供することを他の目的とする。
【0012】
本発明の課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のように構成される本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタは、所定の誘電率を有する誘電体で備えられ、インナー隔壁によって一部が区画される複数の共振ブロックを含むハウジングと、前記ハウジングに備えられた複数の共振ブロックにそれぞれ備えられる複数の共振器ポストによってそれぞれ単一共振器として機能する複数の共振器と、前記複数の共振器のいずれか1つに信号を入力するように入力ポートが連結される入力ポートホールと、前記複数の共振器のいずれか1つから信号が出力されるように出力ポートが連結される出力ポートホールとを含み、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールのいずれか1つは、前記複数の共振器ポストのうち隣接して配置された共振器ポストを飛ばした共振器ポストに向かって延びた切り欠き構造バーが前記ハウジングに一体に加工形成される。
【0014】
ここで、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面に形成され、前記切り欠き構造バーは、水平方向に延長形成される。
【0015】
また、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面に形成され、前記切り欠き構造バーは、水平方向に延長形成されかつ、前記共振器ポストの底面と平行に水平延長形成される。
【0016】
また、前記切り欠き構造バーは、前記複数の共振器ポストが形成された前記ハウジングの一面と反対の他面で溝形状に切開加工形成されかつ、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールの深さより小さく加工形成される。
【0017】
また、前記切り欠き構造バーの先端部から前記入力ポートホールまたは出力ポートホールの深さよりも深く切り欠き区分溝がさらに加工形成される。
【0018】
また、前記切り欠き構造バーが形成された前記入力ポートホールまたは出力ポートホールに対応する共振ブロックに相当する前記ハウジングの一面に形成された共振器ポスト(以下、「対応ポスト」と称する)と、前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)との間は、前記インナー隔壁と共に、前記ハウジングの側壁に形成されたアウター隔壁によって区画される。
【0019】
また、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールに対応する共振ブロックに相当する前記ハウジングの一面に形成された共振器ポスト(以下、「対応ポスト」と称する)の深さによって全体周波数の高低が補完される。
【0020】
また、前記対応ポストの深さが前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)の深さを基準として相対的に深くなると、前記対応ポストと前記隣接ポストの深さ差だけ前記全体周波数が下がるように補完される。
【0021】
また、前記対応ポストの深さが前記対応ポストと隣接する共振器ポスト(以下、「隣接ポスト」と称する)の深さを基準として相対的に浅くなると、前記対応ポストと前記隣接ポストの深さ差だけ前記全体周波数が上がるように補完される。
【0022】
また、前記切り欠き区分溝の存否によって、周波数フィルタリングに際し、パスバンドの左側または右側に実現される切り欠きの種類が異なる。
【0023】
また、切り欠き構造バーと、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールは、金属材質がめっき被膜された被膜部を形成することができる。
【0024】
また、前記切り欠き構造バーは、前記入力ポートホールまたは出力ポートホールと前記ハウジングの外面にめっき被膜された被膜部との電気的なショートを防止するために、未めっき部によって区画される。
【0025】
また、前記切り欠き構造バーおよび前記切り欠き区分溝の先端は、少なくとも前記複数の共振器ポストのうち隣接して配置された共振器ポスト(以下、「第1共振器ポスト」と称する)が備えられた共振ブロック(以下、「第1共振ブロック」と称する)と、前記第1共振器ポストを飛ばした共振器ポスト(以下、「第2共振器ポスト」と称する)が備えられた共振ブロック(以下、「第2共振ブロック」と称する)とを相互区画する隔壁よりも遠く前記第2共振器ポスト側に延びることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタによれば、入力ポートホールまたは出力ポートホールのいずれか1つから延びる切り欠き構造バーおよび切り欠き区分溝を介してクロスカップリングを実現できるので、ハウジング内部の共振設計が容易という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタを示す斜視図である。
図2図1の構成のうち、切り欠き構造バーまたは切り欠き区分溝が形成されたハウジングの他面方向を示す多様な実施例の投影斜視図である。
図3】本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの上面部および下面部の投影斜視図である。
図4図3のハウジングの一面および他面を示す投影平面図である。
図5図3の構成のうち、切り欠き構造バーを示す断面図である。
図6図5の斜視図である。
図7】本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの周波数特性を示すグラフおよびその回路構成図である。
図8】本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの上面部および下面部の投影斜視図である。
図9図8のハウジングの一面および他面を示す投影平面図である。
図10図8の構成のうち、切り欠き構造バーを示す断面図である。
図11図10の斜視図である。
図12】本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの周波数特性を示すグラフおよびその回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施例は本発明の開示が完全となるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタを示す斜視図であり、図2は、図1の構成のうち、切り欠き構造バーまたは切り欠き区分溝が形成されたハウジングの他面方向を示す多様な実施例の投影斜視図である。
【0030】
通信用アンテナは、特定のパスバンドの信号をフィルタリングするためのフィルタを含む。フィルタは、特性によってキャビティフィルタ、導波管フィルタなどが用いられるが、本発明の実施例では、アンテナに備えられる導波管フィルタのうち、セラミック材質の誘電体を用いたセラミック導波管フィルタ100を中心に説明する。
【0031】
図1に示すように、本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100は、複数の共振ブロック(図面符号不表記)を含む。
【0032】
一般的に、セラミック導波管フィルタ100は、少なくとも4個以上の共振ブロックを含み、仮に、1つのフィルタを構成するハウジング110内には4個~20個の共振ブロックが備えられてもよい。本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100は、図1に示すように、6個の共振ブロックで構成され、各共振ブロック内に共振器ポスト121~126が1つずつ備えられることを例として説明する。
【0033】
本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100は、セラミック材質の誘電体で備えられた1つのハウジング110に6個の共振ブロックが形成され、各共振ブロックは、その一部が後述するインナー隔壁131またはアウター隔壁132によって区分される。
【0034】
各共振ブロックの内部は誘電体で満たされ、誘電体材料としては、セラミックまたは空気が使用できるが、他の誘電体材料も使用可能である。本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100では、前記誘電体材料をセラミック材質に限定して説明する。
【0035】
これと共に、1つ(すなわち、単一)のハウジング110の外部面は、金属材質でめっき被膜された被膜部が全体的に形成される。すなわち、セラミック導波管フィルタ100は、全体外面が被膜部によってハウジング110の内外部への電気的な信号伝達は、後述する入力ポートホール141または出力ポートホール142を除けば完全に遮断され、入力ポートホール141と出力ポートホール142を経由する信号は、ハウジング110の内部で被膜部によって外部との信号が遮断された状態でフィルタリングが行われる。
【0036】
複数の共振ブロックは、それぞれ1つの共振器として動作し、6個の共振ブロックにより6個の共振器で構成されたセラミック導波管フィルタ100を形成することができる。
【0037】
一方、各共振ブロックには共振器ポスト121~126が1つずつ備えられる。共振器ポスト121~126は、共振ブロックを形成するセラミック材質の誘電率と異なる誘電体が挟まれた形態で備えられることも可能である。一般的に、空気は所定の誘電率を有する誘電体の一種であるので、空気も共振器ポスト121~126を構成する素材になってもよいし、共振器ポスト121~126が空気の誘電率を有すると前提した時、各共振ブロックの一部が除去された空き空間の形態として各共振器ポスト121~126が形成される。
【0038】
以下、説明の便宜のために、各共振器ポスト121~126は、空気の誘電率を有する誘電体が挿入される中空形態で備えられると前提して説明する。後述するインナー隔壁131およびアウター隔壁132の場合も同じく解釈されなければならない。
【0039】
万一、各共振器ポスト121~126が空気の場合には、ハウジング110に空き空間の形態で切開または削除された形態で備えられることを意味し、各共振器ポスト121~126が所定の誘電率を有する誘電体で備えられた場合には、ハウジング110の内部に各共振器ポスト121~126の形状が挿入された形態で備えられることを意味する。
【0040】
共振器ポスト121~126は、各共振ブロックを構成するハウジング110の一面(上面)または他面(下面)に備えられる。ここで、共振器ポスト121~126がハウジング110の一面と他面に備えられるという正確な意味は、各共振器ポスト121~126の外側面がハウジング110の外側面(一面または他面)とマッチングされるようにハウジング110の内部に備えられるものと定義することができる。
【0041】
一方、第1共振器ポスト121が第1共振ブロックの一面(上面)に設けられる場合、他の共振器ポスト122~126も、各共振ブロックの一面(上面)に設けられる。すなわち、すべての共振器ポスト121~126の外側面がハウジング110の一面(上面)にマッチングされるように備えられる。
【0042】
各共振器ポスト121~126が所定の誘電率を有する空気からなる場合、ハウジング110の一面(上面)または他面(下面)に設けられるという意味は、それぞれの開口方向がハウジング110の一面(上面)または他面(下面)に向けて開口して形成されることを意味する。
【0043】
第1共振ブロック~第6共振ブロックは、第1共振器ポスト~第6共振器ポスト121~126と結合して、それぞれ独立した共振器として作動する。それによって、1つのハウジング110には第1共振器~第6共振器の6個が形成される。
【0044】
それぞれの共振ブロックの間にはインナー隔壁131またはアウター隔壁132が形成され、各隔壁131、132の大きさ(幅、長さ)と位置に応じて各共振ブロックの大きさおよび共振特性が可変できる。
【0045】
本発明によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100において、隔壁(wall)として、図1および図2に示すように、インナー隔壁131とアウター隔壁132とを含むことができる。
【0046】
インナー隔壁131は、仮に、ハウジング110の外観が長手方向に長く形成された長方形の断面を有する六面体形状に形成されたと前提した場合、長手方向の一側端の中間部分から長手方向の他側端の中間部分(すなわち、長手方向の他側端部の中間部分)に近接するように切開形成され、少なくとも2箇所で幅方向に直交するように所定長さ延びて「+」字形状を有するように形成される。
【0047】
アウター隔壁132は、特に、後述する切り欠き構造バー141aが形成される第1共振器ポスト121および第2共振器ポスト122が備えられる共振ブロックを相互区画するように、ハウジング110の一側端部から内側に所定深さ切開形成される。
【0048】
ここで、後述する切り欠き構造バー141aが形成された入力ポートホール141または出力ポートホール142に対応する共振ブロックに形成された共振器ポスト(仮に、第1共振器ポスト121であって、以下、「対応ポスト」と称する)と、対応ポスト121と隣接する共振器ポスト(仮に、第2共振器ポスト122であって、以下、「隣接ポスト」と称する)との間は、上述のように、インナー隔壁131によって一部が区画されると共に、ハウジング110の側壁に形成されたアウター隔壁132によって区画される。
【0049】
より詳しくは、仮に、共振ブロックが計6個備えられると前提した場合、インナー隔壁131は、各共振ブロックを物理的に区画するのに全部関与する構造物であるのに対し、アウター隔壁132は、後述するC-カップリングまたはL-カップリングの実現のために、クロスカップリングさせる共振ブロックの間を区画することのみに関与する構造物であってもよい。
【0050】
図3は、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの上面部および下面部の投影斜視図であり、図4は、図3のハウジングの一面および他面を示す投影平面図であり、図5は、図3の構成のうち、切り欠き構造バーを示す断面図であり、図6は、図5の斜視図であり、図7は、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの周波数特性を示すグラフおよびその回路構成図である。
【0051】
本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aは、図3図7に示すように、所定の誘電率を有する誘電体で備えられ、インナー隔壁131によって一部が区画される複数の共振ブロックを含むハウジング110aと、ハウジング110aに備えられた複数の共振ブロックにそれぞれ備えられる複数の共振器ポスト121~126によってそれぞれ単一共振器として機能する複数の共振器と、複数の共振器のいずれか1つに信号を入力するように入力ポート(不図示)が連結される入力ポートホール141と、複数の共振器のいずれか1つから信号が出力されるように出力ポート(不図示)が連結される出力ポートホール142とを含むことができる。
【0052】
ここで、入力ポートホール141または出力ポートホール142のいずれか1つは、複数の共振器ポスト121~126のうち最も隣接して配置された共振器ポスト(仮に、121で指示された第1共振器ポスト(対応ポスト))を飛ばした共振器ポスト(仮に、122で指示された第2共振器ポスト(隣接ポスト))に向かって延びた切り欠き構造バー141aがハウジング110aに一体に加工形成される。本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aは、切り欠き構造バー141aが入力ポートホール141から延長形成されたことに限定して説明する。
【0053】
切り欠き構造バー141aは、入力ポートホール141から延長形成されて、信号の入力段階の時点で、図7に示すように、第1共振器ポスト121を飛ばした第2共振器ポスト122との間で信号カップリング(C-カップリングまたはL-カップリング)を実現することができる。
【0054】
ここで、入力ポートホール141または出力ポートホール142は、複数の共振器ポスト121~126が形成された一面と反対の面に相当するハウジング110aの他面に形成され、切り欠き構造バー141aは、水平方向に延長形成される。
【0055】
より詳しくは、切り欠き構造バー141aは、図3に示すように、水平方向に延長形成されかつ、共振器ポスト(すなわち、第2共振器ポスト(隣接ポスト)、122)の底面と平行に水平延長形成される。
【0056】
ここで、切り欠き構造バー141aは、複数の共振器ポスト121~126が形成されたハウジング110aの一面と反対の面で溝形状に切開加工形成されかつ、入力ポートホール141または出力ポートホール142の深さより小さく切開加工形成される。
【0057】
これと共に、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aは、図3図6に示すように、切り欠き構造バー141aの先端部から入力ポートホール141または出力ポートホール142の深さよりも深く切り欠き区分溝141bがさらに加工形成される。
【0058】
切り欠き区分溝141bは、第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)の底面(すなわち、底面)に切り欠き構造バー141aの先端よりも近接するように形成されたものであって、切り欠き区分溝141bが備えられた場合、入力ポートホール141と第2共振器ポスト122との間にはC-カップリング(coupling)が実現され、図7に示すように、パスバンドの左側端にC-切り欠き(notch)が形成される。
【0059】
ここで、切り欠き区分溝141bは、切り欠き構造バー141aの先端部の深さを相対的に異ならせる機能を行うものであって、切り欠き構造バー141aの先端部の深さが、図3図6に示すように、相対的に深く形成される場合、切り欠き区分溝141bと第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)との間の相対隔離距離が小さいことにより、上述したC-切り欠きが形成されるC-カップリングが実現できる。
【0060】
逆に、切り欠き区分溝141bが備えられない、後述する本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bのような場合、相対的に切り欠き構造バー141bの先端と第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)との間の相対隔離距離が大きくなることにより、C-切り欠きではないL-切り欠きの形成のためのL-カップリングが実現できる。
【0061】
ここで、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aは、後述する本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bと区分される特徴的要素として、切り欠き構造バー141aに切り欠き区分溝141bが追加的に形成されているか否かで決定される。
【0062】
切り欠き区分溝141bの追加形成の有無(すなわち、一実施例または他の実施例で実現されるか否か)は、入力ポートホール141から第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)までの物理的な離隔距離を異ならせることにより、誘導性(Inductance)または容量性(capacitance)の電気的特性のいずれか1つの特性を有するように長さを決定できる重要な要素になる。
【0063】
より詳しくは、切り欠き区分溝141bを含む本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aの場合、第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)に近接して位置した切り欠き区分溝141bによって物理的に第2共振器ポスト122の間でElectric-field(E-field、電界)が形成されて、パスバンドの左側に容量性カップリングによるC-切り欠きを実現することができる。
【0064】
逆に、切り欠き区分溝141bが備えられない、本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bの場合、第2共振器122から切り欠き構造バー141aの先端が相対的に離隔しているので、物理的に第2共振器ポスト122の間でMagnetic-field(H-field、磁界)が形成されて、パスバンドの右側に誘導性カップリングによるL-切り欠きを実現することができる。
【0065】
このように、本発明の実施例において、切り欠き区分溝141bの存否によって、周波数フィルタリングに際し、パスバンドの左側または右側に実現される切り欠きの種類が異なる。
【0066】
前記のようなクロスカップリングの実現を容易にするためには、少なくとも切り欠き構造バー141aまたは切り欠き区分溝141bの先端が第1共振器ポスト(対応ポスト、121)が備えられた第1共振ブロックと、第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)が備えられた第2共振ブロックとを区分するように形成されたアウター隔壁132よりも第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)側に延びる長さに形成されることが好ましい。切り欠き構造バー141aまたは切り欠き区分溝141bの先端がアウター隔壁132より第2共振器ポスト(隣接ポスト、122)からさらに離隔した場合(すなわち、第1共振器ポスト(対応ポスト、121)から延びた長さがアウター隔壁132を越えられないように延長形成された場合)には、アウター隔壁132が除去されたウィンドウを介したクロスカップリングの実現が容易でないからである。
【0067】
一方、切り欠き構造バー141aと入力ポートホール141または出力ポートホール142は、金属材質がめっき被膜された被膜部を形成することができる。ここでの被膜部は、ハウジング110aの外面全体にわたって形成された被膜部と同じ概念で理解することができる。
【0068】
すなわち、切り欠き構造バー141aおよび切り欠き区分溝141bは、共振器ポスト121~126が形成された内側面に金属材質がめっき被膜されたのと同じく、内側面全部に被膜部が形成できる。
【0069】
ここで、切り欠き構造バー141aおよび切り欠き区分溝141bは、入力ポートホール141または出力ポートホール142とハウジング110aの外面にめっき被膜された被膜部との電気的なショートを防止するために、未めっき部143によって区画される。未めっき部143は、被膜部とは異なり、めっき処理されない部位を通称する概念で理解すれば良い。
【0070】
被膜部と区分される未めっき部143によって、切り欠き構造バー141aおよび切り欠き区分溝141bと第2共振器ポスト122との間で短絡(short)および開放結合される2個の切り欠き特性を区分設計することも可能である。
【0071】
例えば、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aのように、切り欠き構造バー141aおよび切り欠き区分溝141bの内側面には被膜部が形成できるが、切り欠き構造バー141aが連結される入力ポートホール141の周辺部にのみ未めっき部143を形成することができ、本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bのように、入力ポートホール141および切り欠き構造バー141aをすべて含むように未めっき部143を形成することも可能である。
【0072】
図8は、本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの上面部および下面部の投影斜視図であり、図9は、図8のハウジングの一面および他面を示す投影平面図であり、図10は、図8の構成のうち、切り欠き構造バーを示す断面図であり、図11は、図10の斜視図であり、図12は、本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの周波数特性を示すグラフおよびその回路構成図である。
【0073】
本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bは、図8図12に示すように、切り欠き構造バー141aの先端部に切り欠き区分溝141bが形成されない実施例で定義される。
【0074】
すなわち、本発明の他の実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100bは、図8図11に示すように、入力ポートホール141または出力ポートホール142のいずれか1つから水平方向に延長形成されかつ、隣接ポストである第2共振器ポスト122の底面と平行に水平延長形成され、上述した切り欠き区分溝141bが形成されないことにより、本発明の一実施例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100aに比べて切り欠き構造バー141aの先端と第2共振器ポスト122との間の相対隔離距離がさらに大きい。
【0075】
ここで、切り欠き構造バー141aの先端と第2共振器ポスト122との間のクロスカップリングが容易に実現されるように、上述のように、切り欠き構造バー141aの先端は、第1共振ブロックと第2共振ブロックとを区分するように形成された隔壁132よりも第2共振器ポスト122側に延長形成されることが好ましい。
【0076】
一方、図5および図10に示すように、本発明の一実施例(図5参照)および他の実施例(図10参照)によるアンテナ用セラミック導波管フィルタ100a、100bは、入力ポートホール141または出力ポートホール142に対応する共振ブロックに相当するハウジング110の一面に形成された共振器ポストである対応ポストの深さによって全体周波数の高低が補完される。
【0077】
特に、本発明の実施例(100a、100b)の場合、ハウジング110に切り欠き構造バー141aおよび切り欠き区分溝141bの構造物を追加形成することにより、当初設計された全体周波数が上がるか、下がるが、このように変更された周波数は、対応ポストである第1共振器ポスト121の深さ形状の調節により補完することができる。
【0078】
より詳しくは、対応ポストである第1共振器ポスト121の深さが隣接ポストである第2共振器ポスト122の深さを基準として相対的に深くなると、対応ポストである第1共振器ポスト121と隣接ポストである第2共振器ポスト122の深さ差だけ全体周波数が下がるように補完される。
【0079】
逆に、対応ポストである第1共振器ポスト121の深さが隣接ポストである第2共振器ポスト122の深さを基準として相対的に浅くなると、対応ポストである第1共振器ポスト121と隣接ポストである第2共振器ポスト122の深さ差だけ全体周波数が上がるように補完される。
【0080】
一方、切り欠き構造バー141aの先端部に切り欠き区分溝141bが形成されない場合には、図12に示すように、入力ポートホール141と第2共振器ポスト122との間のL-カップリングの実現によってパスバンド右側端にL-切り欠き(notch)が形成されることにより、周波数特性が強化できる。
【0081】
このように、本発明の例によるアンテナ用セラミック導波管フィルタの実施例(100a、100b)は、入力ポートホール141または出力ポートホール142から延長形成された切り欠き構造バー141aまたは切り欠き区分溝141bによって異なるカップリングの実現が可能であり、共振器ポスト121~126の構造設計を単純化できることはもちろん、ハウジング110の内部に追加構造物の挿入を必要としないので、製品の生産性および信頼性を大きく向上させるという利点を提供する。
【0082】
本発明の実施例を構成するすべての構成要素が1つに結合されて動作すると説明されたからといって、本発明が必ずしもこのような実施例に限定されるものではない。本発明の目的範囲内であれば、実施例によってはすべての構成要素が1つ以上で選択的に結合して動作することもできる。
【0083】
以上の説明は、本発明の技術思想を例として説明したに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、入力ポートおよび出力ポートが連結される入力ポートホールおよび出力ポートホールのいずれか1つにクロスカップリングが可能な構造を適用することにより、特定のパスバンドの特性を強化したアンテナ用セラミック導波管フィルタを提供する。
【符号の説明】
【0085】
100、100a、100b:セラミック導波管フィルタ
110a、110b:ハウジング 121~126:共振器ポスト
131:インナー隔壁 132:アウター隔壁
141:入力ポートホール 141a:切り欠き構造バー
141b:切り欠き区分溝 142:出力ポートホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12