(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】信号処理回路及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20241111BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G01R19/00 D
A61B5/00 C
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2023526099
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2020142529
(87)【国際公開番号】W WO2022141583
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 雷
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 宇翔
(72)【発明者】
【氏名】黎 美▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼ 心
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲風▼云
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111317456(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0110450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0353106(US,A1)
【文献】特表2018-532560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路、スイッチ回路、アナログ回路及び少なくとも2つの信号収集回路を含み、
前記少なくとも2つの信号収集回路
のうちの各信号収集回路は、それぞれ1つの目標信号を収集し、
前記スイッチ回路は、同一時間に前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が前記アナログ回路に伝送されるように、前記少なくとも2つの信号収集回路と前記アナログ回路との導通を制御し、
前記アナログ回路は、受信した目標信号を処理し、
前記制御回路は、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の前記目標信号をサンプリングし、前記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、前記制御回路の処理後の各前記目標信号のサンプリング周波数は、前記目標周波数の2倍以上であ
り、
前記制御回路は、サンプリング結果に基づいて、各目標信号を再現する、信号処理回路。
【請求項2】
制御回路、スイッチ回路、アナログ回路及び少なくとも2つの信号収集回路を含み、
前記少なくとも2つの信号収集回路
のうちの各信号収集回路は、
それぞれ1つの目標信号を収集し、
前記スイッチ回路は、同一時間に前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が前記アナログ回路に伝送されるように、前記少なくとも2つの信号収集回路と前記アナログ回路との導通を制御し、
前記アナログ回路は、受信した目標信号を処理し、
前記制御回路は、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の前記目標信号をサンプリングし、前記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、前記制御回路の処理後の各前記目標信号のサンプリング周波数は、前記目標周波数の2倍以上であ
り、
前記制御回路は、全ての目標信号のサンプリング周波数の和に基づいて、前記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする、信号処理回路。
【請求項3】
前記スイッチ回路は、複数の入力チャネルを含み、前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、前記スイッチ回路は、前記制御回路の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の回路。
【請求項4】
前記制御回路は、予め設定された周波数に基づいて、前記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の回路。
【請求項5】
前記制御回路は、サンプリング結果に基づいて、各目標信号の強度情報を取得する、ことを特徴とする請求項
4に記載の回路。
【請求項6】
前記制御回路による処理後の各目標信号のサンプリングは、前記制御回路が処理後の各前記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の回路。
【請求項7】
少なくとも2つの信号収集回路
のうちの各信号収集回路によりそれぞれ1つの目標信号を収集するステップと、
同一時間に前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号がアナログ回路に伝送されるように、スイッチ回路により、前記少なくとも2つの信号収集回路とアナログ回路との導通を制御するステップと、
前記アナログ回路により、その受信した目標信号を処理するステップと、
制御回路により、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の前記目標信号をサンプリングするステップと、を含み、前記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、前記制御回路の処理後の各目標信号のサンプリング周波数は、前記目標周波数の2倍以上である、信号処理方法
であって、
サンプリング結果に基づいて、前記制御回路により、各目標信号を再現するステップを含む、信号処理方法。
【請求項8】
少なくとも2つの信号収集回路
のうちの各信号収集回路により
それぞれ1つの目標信号を収集するステップと、
同一時間に前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号がアナログ回路に伝送されるように、スイッチ回路により、前記少なくとも2つの信号収集回路とアナログ回路との導通を制御するステップと、
前記アナログ回路により、その受信した目標信号を処理するステップと、
制御回路により、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の前記目標信号をサンプリングするステップと、を含み、前記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、前記制御回路の処理後の各目標信号のサンプリング周波数は、前記目標周波数の2倍以上である、信号処理方法
であって、
同一時間に前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号がアナログ回路に伝送されるように、スイッチ回路により、前記少なくとも2つの信号収集回路とアナログ回路との導通を制御するステップが、
全ての目標信号のサンプリング周波数の和に基づいて、前記制御回路により、前記スイッチ回路のスイッチをスイッチングするステップを含む、信号処理方法。
【請求項9】
前記スイッチ回路は、複数の入力チャネルを含み、前記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、前記スイッチ回路は、前記制御回路の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる、ことを特徴とする請求項
7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御回路は、予め設定された周波数に基づいて、前記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする、ことを特徴とする請求項
7または8に記載の方法。
【請求項11】
サンプリング結果に基づいて、前記制御回路により、各目標信号の強度情報を取得するステップを含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記制御回路による処理後の各目標信号のサンプリングは、前記制御回路が処理後の各前記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる、ことを特徴とする請求項
7または8に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ
プログラムであって、コンピュータ
に、請求項7~12のいずれか一項に記載の信号処理方法を実施させるように構成された、コンピュータ
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回路設計の分野に関し、特に生理信号を収集し処理する回路、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の科学的運動及び生理健康への注目が日増しに増えるにつれて、ウェアラブル生理信号監視装置に対するニーズもますます高まっている。通常、単一の生理信号監視装置は、同一時間に1つのみの信号源の生理信号を収集することができ、複数の信号源の信号を収集することができないため、その監視結果の参考意味が限られる。また、複数の信号源の信号の収集及び処理は、回路モジュールの体積が大きくなることを引き起こし、ハードウェアに対する要求が高い、高いコストを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本願は、複数の信号源の収集及び処理を保証する場合、スペースコストを省き、ハードウェア要求を低減することができる、時分割多重化の信号処理回路及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の一実施例は、信号処理回路を提供する。上記回路は、スイッチ回路、アナログ回路、制御回路及び少なくとも2つの信号収集回路を含む。上記少なくとも2つの信号収集回路は、少なくとも2つの目標信号を収集する。上記スイッチ回路は、同一時間に上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が上記アナログ回路に伝送されるように、上記少なくとも2つの信号収集回路と上記アナログ回路との導通を制御する。上記アナログ回路は、受信した目標信号を処理する。上記制御回路は、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の上記目標信号をサンプリングする。
【0005】
いくつかの実施例において、上記スイッチ回路は、複数の入力チャネルを含み、上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、上記スイッチ回路は、上記制御回路の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる。
【0006】
いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、上記制御回路の処理後の各上記目標信号のサンプリング周波数は、上記目標周波数の2倍以上である。
【0007】
いくつかの実施例において、上記制御回路は、サンプリング結果に基づいて、各目標信号を再構成する。
【0008】
いくつかの実施例において、上記制御回路は、全ての目標信号のサンプリング周波数の和に基づいて、上記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする。
【0009】
いくつかの実施例において、上記制御回路は、予め設定された周波数に基づいて、上記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする。
【0010】
いくつかの実施例において、上記制御回路は、サンプリング結果に基づいて、各目標信号の強度情報を取得する。
【0011】
いくつかの実施例において、上記アナログ回路は、差動増幅器を含み、上記スイッチ回路は、デュアル出力のスイッチチップである。
【0012】
いくつかの実施例において、上記アナログ回路は、フィルタ回路をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施例において、上記制御回路による処理後の各目標信号のサンプリングは、上記制御回路が処理後の各上記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる。
【0014】
本願の一実施例は、信号処理方法を提供する。上記方法は、少なくとも2つの信号収集回路により少なくとも2つの目標信号を収集するステップと、同一時間に上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が上記アナログ回路に伝送されるように、スイッチ回路により、上記少なくとも2つの信号収集回路とアナログ回路との導通を制御するステップと、上記アナログ回路により、その受信した目標信号を処理するステップと、制御回路により、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の上記目標信号をサンプリングするステップと、を含む。
【0015】
いくつかの実施例において、上記スイッチ回路は、複数の入力チャネルを含み、上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、上記スイッチ回路は、上記制御回路の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる。
【0016】
いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの目標信号のうちの各信号は、目標周波数を含み、上記制御回路の処理後の各目標信号のサンプリング周波数は、上記目標周波数の2倍以上である。
【0017】
いくつかの実施例において、上記方法は、サンプリング結果に基づいて、上記制御回路により、各目標信号を再構成するステップを含む。
【0018】
いくつかの実施例において、上記方法は、全ての目標信号のサンプリング周波数の和に基づいて、上記制御回路により、上記スイッチ回路のスイッチをスイッチングするステップを含む。
【0019】
いくつかの実施例において、上記制御回路は、予め設定された周波数に基づいて、上記スイッチ回路のスイッチをスイッチングする。
【0020】
いくつかの実施例において、上記方法は、サンプリング結果に基づいて、上記制御回路により、各目標信号の強度情報を取得するステップを含む。
【0021】
いくつかの実施例において、上記アナログ回路は、差動増幅器を含み、上記スイッチ回路は、デュアル出力のスイッチチップであり、上記方法は、上記差動増幅器により、受信した上記目標信号に対して増幅処理を行うステップを含む。
【0022】
いくつかの実施例において、上記アナログ回路は、フィルタ回路をさらに含み、上記方法は、上記フィルタ回路により、受信した上記目標信号に対してフィルタ処理を行うステップを含む。
【0023】
いくつかの実施例において、上記制御回路による処理後の各目標信号のサンプリングは、上記制御回路が処理後の各上記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる。
【0024】
本願の一実施例は、プロセッサを含む信号処理装置を提供し、上記プロセッサは、上記信号処理方法を実行する。
【0025】
本願の一実施例は、コンピュータ命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータが、記憶媒体におけるコンピュータ命令を読み取ると、上記信号処理方法を実行する。
【0026】
例示的な実施例により本願をさらに説明し、これらの例示的な実施例を図面により詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではなく、これらの実施例では、同じ番号は同じ構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本願のいくつかの実施例に係る信号処理回路の概略図である。
【
図2】本願のいくつかの実施例に係る信号処理回路の概略図である。
【
図3】本願のいくつかの実施例に係る信号処理方法の例示的なフローチャートである。
【
図4A】本願のいくつかの実施例に係るベースラインドリフト問題の例示的な画像である。
【
図4B】本願のいくつかの実施例に係るベースラインドリフト問題の例示的な画像である。
【
図5A】本願のいくつかの実施例に係る基準電位をプログラム制御する例示的な回路図である。
【
図5B】本願のいくつかの実施例に係る基準電位をプログラム制御する例示的な回路図である。
【
図5C】本願のいくつかの実施例に係る基準電位をプログラム制御する例示的な回路図である。
【
図6A】本願のいくつかの実施例に係るチャネルクロストーク問題の例示的な画像である。
【
図6B】本願のいくつかの実施例に係るチャネルクロストーク問題の例示的な画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本願の例又は実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似するシナリオに適用することができる。文脈から明らかではない限り又は明記しない限り、図面において同じ符号は同じ構造又は操作を表す。
【0029】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」及び/又は「モジュール」は、レベルの異なる様々なアセンブリ、素子、部材、部分又は組立体を区別する方法であることを理解されたい。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0030】
本願及び特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を意味するものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又はデバイスは、他のステップ又は要素も含む可能性がある。
【0031】
本願では、フローチャートを用いて本願の実施例に係るシステムが実行する操作を説明する。先行及び後続の操作が必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことを理解されたい。その代わりに、各ステップを逆の順序で、又は同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらのプロセスに追加してもよく、これらのプロセスから1つ以上の操作を除去してもよい。
【0032】
本願の実施例に記載の信号処理回路及び方法は、複数の信号源を収集する必要がある信号監視装置、特に生理信号の監視装置、例えば、スマートウェアラブルデバイスに適用することができる。いくつかの実施例において、上記スマートウェアラブルデバイス(例えば、服装、リストバンド、スノッチなど)は、人体の各部位(例えば、下腿、上腿、腰、背中、胸部、肩部、頸部など)に設置されてもよく、ユーザが異なる状態にある時に身体の各部位の生理信号を収集し、後続きにさらに収集した信号を処理することができる。いくつかの実施例において、上記生理信号は、検出可能な、身体状態を体現可能な信号であってもよく、例えば、呼吸信号、心電信号(ECG)、筋電信号、血圧信号、温度信号などの様々な信号を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記生理信号の周波数範囲は、0.05Hz~2kHzであってもよく、上記心電信号の周波数範囲は、0.05Hz~100Hzであってもよく、上記筋電信号の範囲は、5Hz~2kHzであってもよい。
【0033】
図1は、本願のいくつかの実施例に係る信号処理回路100の概略図である。
【0034】
図1に示すように、信号処理回路100は、マルチパスの生理信号の収集及び処理を実現することができる。具体的には、信号処理回路100は、異なる信号源にそれぞれ対応して配置される信号収集回路及びアナログ回路を含む。例えば、信号収集回路111は、ユーザの身体に接触する1つ以上の電極を含んでもよく、電極によりユーザの身体の表面の筋電信号を収集することができる。信号収集回路111により収集された筋電信号は、アナログ回路131に伝達されて適切な処理(例えば、ノイズ低減、増幅など)が行われ、処理後の筋電信号は、制御回路(MCU)140に伝達されて信号分析が行われる。この場合に、制御回路140は、複数の信号源に対応するアナログデジタル変換チャネル(すなわち、ADCチャネル)を有する必要がある。いくつかの実施例において、アナログ回路は、差動増幅器、多段増幅回路、フィルタ回路などの素子を含む可能性がある。各素子のコストが安価ではないため、信号処理回路100に複数のアナログ回路を設置すると、回路は、構造が複雑すぎ、体積が大きくなり、高いコストがかかり、また、アナログ回路のチャネルが多すぎ、体積が大きくて、回路レイアウトが制限されるため、チャネルクロストークなどの問題を引き起こす。制御回路140に対して、そのピンに対する要求が高いが、実際に制御チップのADCチャネル数は、非常に限られる。例えば、型番がSTM32L476の制御チップを例とすると、そのADCチャネルは、16個のみが利用可能である。
【0035】
図2は、本願のいくつかの実施例に係る信号処理回路200の概略図である。
【0036】
図2に示す信号処理回路200は、マルチパスの生理信号の収集及び処理を実現することができる。信号処理回路100に比べて、信号処理回路200は、時分割多重化の方法を用いることにより、複数の信号源の収集及び処理を保証する場合、スペースコストを省き、ハードウェア要求を低減するという目的を達成することができる。具体的には、信号処理回路200は、少なくとも2つの信号収集回路(例えば、信号収集回路211、212、213及び214)、スイッチ回路220、アナログ回路230及び制御回路240を含む。スイッチ回路220は、複数の信号収集回路とアナログ回路230との間に設置され、各信号収集回路とアナログ回路230との導通状態を制御することができる。例えば、ある時点で、スイッチ回路220は、1つの信号収集回路とアナログ回路230とを導通させることができる。一定の時間範囲で、スイッチ回路220は、周期的に各信号収集回路とアナログ回路230とを繰り返して導通させることができる。スイッチ回路220がある信号収集回路とアナログ回路230とを導通させる場合、該信号回路により収集された信号(例えば、筋電信号)は、アナログ回路230に伝達されて処理(例えば、ノイズ低減、増幅など)が行われ、処理後の信号は、制御回路240に伝達されて信号分析が行われる。理解できるように、複数の信号収集回路とアナログ回路230との間にスイッチ回路220を設置することにより、同一のアナログ回路が異なる時点で、異なる信号収集回路の信号をそれぞれ処理することを実現することができ、このようにして、複数のアナログ回路を使用する複雑性及びコストを効果的に低減することができるとともに、後続きのアナログ回路と制御回路との間の信号伝達のチャネル数を減少させる。なお、
図2に示すスイッチ回路220及びアナログ回路230は、説明の目的のためのものに過ぎず、実際の使用において、複数の信号収集回路と制御回路240との間に複数のスイッチ回路又はアナログ回路が用いられてもよく、これらのスイッチ回路又はアナログ回路は、依然として上述した過程に類似する過程を実現することができる。
【0037】
いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの信号収集回路は、少なくとも2つの目標信号を収集する。上記目標信号は、ユーザの身体状態を体現可能な生理信号、例えば、呼吸信号、心電信号(ECG)、筋電信号、血圧信号、温度信号などのうちの1種以上であってもよい。単に例として、異なる信号収集回路は、それぞれ、ユーザの身体に接触する1つ以上の電極を含んでもよく、電極によりユーザの身体の表面の筋電信号を収集することができる。異なる信号収集回路は、ユーザの身体の異なる位置に配置されてもよく、同種又は異種のユーザの生理信号を収集する。例えば、それぞれユーザの上腿の異なる側に配置された信号収集回路は、いずれも上腿の筋電信号を収集することができる。また例えば、ユーザの前腕に配置された信号収集回路は、前腕の筋電信号を収集することができ、ユーザの心臓の部位に配置された信号収集回路は、ユーザの心電信号を収集することができる。なお、一定のシナリオでは、信号処理回路200又はそれに類似する回路は、上記同種又は異種の生理信号を収集して処理することができ、本願は、これを限定しない。いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの信号収集回路は、2つの信号収集回路のみを含んでもよく、3つの信号収集回路、4つの信号収集回路又はそれ以上の信号収集回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記生理信号の周波数範囲は、0.05Hz~2kHzであってもよく、上記心電信号の周波数範囲は、0.05Hz~100Hzであってもよく、上記筋電信号の範囲は、5Hz~2kHzであってもよい。
【0038】
制御回路240は、アナログ回路230により処理された信号をサンプリングする。いくつかの実施例において、制御回路240のサンプリング周波数は、信号収集回路の数、スイッチ回路の制御ポリシー及び目標周波数に関連する。例えば、制御回路240の各信号のサンプリング周波数は、その目標周波数の2倍以上である。単に例として、筋電信号に対して、その対応する目標周波数が1000Hz以内であると仮定すると、制御回路は、2000Hzのサンプリング周波数を用いて該筋電信号をサンプリングすることができる。信号処理回路全体に対して、筋電信号を収集する信号収集回路が4つあると仮定すると、制御回路240は、8000Hzの総サンプリング周波数を提供してこそ、各筋電信号のサンプリングレートが2000Hzに達することを保証することができる。また例えば、本願の他の箇所に言及されるように、制御回路240は、完全再構成型ポリシー及び強度特徴付けポリシーを用いてスイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。完全再構成型ポリシーでは、上記サンプリング周波数は、信号収集回路の数、単一チャネルの立ち上がりエッジ時間及び立ち下がりエッジ時間などに関連し、単一チャネルの立ち上がりエッジ時間及び立ち下がりエッジ時間は、アナログ回路の増幅倍率及び回路素子のスルーレートに関連する。
【0039】
いくつかの実施例において、上記スイッチ回路220は、同一時間に上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が上記アナログ回路230に伝送されるように、上記少なくとも2つの信号収集回路と上記アナログ回路230との導通を制御する。上記スイッチ回路220は、入力端が上記少なくとも2つの信号収集回路に接続され、出力端が上記アナログ回路230に接続される。いくつかの実施例において、上記スイッチ回路220は、複数の入力チャネルを含み、上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、上記スイッチ回路220は、上記制御回路240の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる。
【0040】
いくつかの実施例において、スイッチ回路220は、マルチチャネル及びデュアル出力を有するスイッチチップ、例えば、型番がTMUX1209のスイッチチップを選択してもよい。単に例として、上記スイッチ回路220は、3つの制御ピンにより、4チャネルの時分割多重化を実現することができ、1つのピンENは、イネーブル作用と標識され、他の2つのピンA1及びA0は、選択チャネルと標識される。上記スイッチ回路220の4つの入力チャネルは、それぞれ、目標信号を収集するように信号収集回路に接続され、上記スイッチ回路220の出力ポートは、アナログ回路230に接続される。いくつかの実施例において、制御ピン(EN、A1、A0)の数値により、スイッチチップによる選択導通を制御してもよい。例えば、(1,0,0)を入力する場合、チャネルAを選択導通させることを示し、(1,0,1)を入力する場合、チャネルBを選択導通させることを示し、(1,1,0)を入力する場合、チャネルCを選択導通させることを示し、(1,1,1)を入力する場合、チャネルDを選択導通させることを示す。単に例として、制御回路240がスイッチ回路220のチャネルAを選択導通させた後、チャネルAに対応する目標信号は、アナログ回路230に連通し、かつ最終的に制御回路240によってサンプリングされる。今回のサンプリングが成功した後、制御回路240は、新たな制御命令を与え、例えば、チャネルBを選択導通させる命令(1,0,1)を与えると、チャネルBの目標信号は、アナログ回路230に接続され、かつ最終的に制御回路240によってサンプリングされ、その他はこれによって類推する。つまり、制御回路240は、複数の信号収集回路の間に繰り返してスイッチングするようにスイッチ回路220を制御することにより、時分割多重化の作用を達成することができ、すなわち、1つのアナログ回路230により複数の信号源を時分割処理することにより、スペースコストを省き、ハードウェア要求を低減することができる。
【0041】
異なる場合に、制御回路240は、異なるポリシーに基づいて、スイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。
【0042】
例えば、後続きのサンプリングデータが各目標信号の情報を完全に保持することができる(すなわち、制御回路240がサンプリングデータに基づいて各目標信号を再構成することができる)ように、制御回路240は、完全再構成型ポリシーを用いてスイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。完全再構成型ポリシーでは、制御回路240は、その提供する総サンプリング周波数に基づいて、スイッチ回路220の入力チャネルをスイッチングすることができる。例えば、スイッチ回路220が入力チャネルをスイッチングする周波数は、制御回路240が提供するサンプリング周波数に等しくてもよい。この場合に、スイッチ回路220は、入力チャネルをスイッチングするたびに、すなわち、1つの信号収集回路を導通させるたびに、制御回路240は、該信号収集回路により収集された目標信号を1回サンプリングする。また、制御回路240の各目標信号のサンプリング周波数が目標周波数の2倍以上であるため、完全再構成型ポリシーにより、各目標信号に対して各周期内にいずれも少なくとも2つのサンプリング点を有することを保証することができる。完全再構成型ポリシーに関するより多くの内容について、
図3の詳細な説明を参照することができる。
【0043】
また例えば、制御回路240がスイッチチャネルを迅速にスイッチングする過程において有効なサンプリングデータを取得できない可能性があることを考慮すると(以下に言及されるスイッチチャネルのスイッチングにより、制御回路240が受信した信号に一定の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが存在するため)、制御回路240は、強度特徴付け型ポリシーを用いてスイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。強度特徴付け型ポリシーでは、制御回路240は、予め設定された周波数に基づいて、スイッチ回路220の入力チャネルをスイッチングすることができる。上記予め設定された周波数は、ユーザがある動作を行う周期に関連することができる。例えば、ユーザが筋力トレーニングを行う時に筋肉が生成する筋電信号を分析するために、上記予め設定周波数を、ユーザが特定の動作(例えば、ベンチプレス)を行う周波数の一定の倍率にすることにより、ユーザが該特定の動作を行う1つの周期内にスイッチ回路220は、各信号収集回路を複数回導通させることができるため、制御回路240は、それぞれ各目標信号を複数回サンプリングすることができる。強度特徴付け型ポリシーでは、制御回路240は、サンプリング結果に基づいて各目標信号の強度情報を取得することができる。強度特徴付け型ポリシーに関するより多くの内容について、
図3の詳細な説明を参照することができる。
【0044】
上記アナログ回路230は、受信した目標信号を処理する。いくつかの実施例において、信号収集回路により直接収集された元の目標信号は、振幅が非常に小さく、かつ大量のノイズがあるため、アナログ回路230を用いて該元の目標信号に対してフィルタ、差動増幅、増幅、負帰還によるノイズ除去などの処理を行う必要がある。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対してコモンモード信号の抑制及び増幅処理を行う差動増幅器を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対して増幅処理を行う多段増幅回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号におけるコモンモード信号を抽出し、反転増幅した後に信号源に帰還し、主に信号源における電源周波数を抑制できる右脚駆動回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、差動増幅器、多段増幅器、フィルタ回路及び右脚駆動回路を同時に含んでもよく、そのうちの1種又は複数種のみを含んでもよい。
【0045】
上述のように、上記制御回路240は、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の上記目標信号をサンプリングすることができる。いくつかの実施例において、上記制御回路240は、複数のADCチャネルを含み、各ADCチャネルは、いずれも、受信した、アナログ回路230により処理された目標信号をデジタル信号に変換して読み取り処理することができる。いくつかの実施例において、上記制御回路240は、読み取られたデジタル信号を表示することにより、生理信号の状況を直感的に体現するように、表示装置にさらに接続されてもよい。いくつかの実施例において、上記サンプリングに基づいて、制御回路240は、目標信号に対して読み取り、記憶、処理分析などを行うことができ、好ましくは、上記制御回路240は、サンプリングされたデータに基づいて対応する命令をさらに送信することができる。
【0046】
いくつかの実施例において、上記制御回路240による処理後の各目標信号のサンプリングは、上記制御回路240が処理後の各上記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる。つまり、スイッチ回路220がチャネルをスイッチングして導通させた後、制御回路240は、新たに導通された目標信号を直ちにサンプリングせず、或いは、制御回路240が新たに導通された目標信号をサンプリングしても、直ちにサンプリング結果を目標信号の構成部分としない。時分割多重化方式を用いて複数の信号源の目標信号を収集する場合、スイッチチャネルのスイッチングは、制御回路240により受信された信号に一定の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが存在することを引き起こす。立ち上がりエッジは、入力端信号の変化により出力端信号が立ち上がって安定状態に達するまでに要する時間での信号に対応する。立ち下がりエッジは、入力端信号の変化により出力端信号が立ち下がって安定状態に達するまでに要する時間での信号に対応する。上記立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、スイッチ回路の応答安定速度、回路におけるチップの電圧変動、回路におけるコンデンサなどのデバイスの充放電などを含む複数の要因の共同影響を受ける。したがって、制御回路240により読み取られた目標信号が真で有効であることを保証するために、目標信号のサンプリングは、信号が安定した後に行われ、すなわち、スイッチ回路220がチャネルをスイッチングして導通させた後、制御回路240は、立ち上がりエッジ時間内に信号をサンプリングしない。十分な時間を待たずにサンプリングを開始すれば、制御回路240により最終的に読み取られた数値は、中間の遷移値である。理解できるように、立ち上がりエッジ時間が一定であれば、待ち時間が不十分であっても、最終的に得られた遷移値は、真の値に対する比率が一致するため、後続きの処理及び分析に用いることができる。しかしながら、立ち上がりエッジ時間が電圧変化の大きさに関連する場合、安定しない場合に値を読み取ると、制御回路240により毎回読み取られた値は、真の値との比率が固定されないため、後続きの処理に用いることができない。また、理解できるように、遷移値と安定値との関係が明らかであるか、又は遷移値と安定値との誤差を受けることができることを考慮すれば、待ち時間が不十分であっても、後続きの処理及び分析に用いることができる。以上より、目標信号の強度及び回路のゲインを考慮すべきである。これにより、最大の立ち上がりエッジ時間を取得して、制御回路240の待ち時間の基準とする。具体的には、最大の立ち上がりエッジ時間以上の基準時間を設定することができ、上記制御回路240による各目標信号のサンプリングは、上記制御回路240が上記目標信号の受信を開始して基準時間が経過した後に行われ、或いは、制御回路240による目標信号のサンプリングは、スイッチ回路が毎回チャネルをスイッチングし導通させて基準時間が経過した後に行われる。
【0047】
図3は、本願のいくつかの実施例に係る信号処理方法の例示的なフローチャートである。いくつかの実施例において、フロー300は、信号処理回路200により実行されてもよい。
【0048】
ステップ310では、少なくとも2つの信号収集回路により少なくとも2つの目標信号を収集する。いくつかの実施例において、ステップ310は、信号処理回路200のうちの少なくとも2つの信号収集回路(例えば、信号収集回路211、212、213及び214)により実行されてもよい。
【0049】
いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの信号収集回路は、少なくとも2つの目標信号を収集する。上記目標信号は、ユーザの身体状態を体現可能な生理信号、例えば、呼吸信号、心電信号(ECG)、筋電信号、血圧信号、温度信号などのうちの1種以上であってもよい。単に例として、異なる信号収集回路は、それぞれ、ユーザの身体に接触する1つ以上の電極を含んでもよく、電極によりユーザの身体の表面の筋電信号を収集することができる。異なる信号収集回路は、ユーザの身体の異なる位置に配置されてもよく、同種又は異種のユーザの生理信号を収集する。例えば、それぞれユーザの上腿の異なる側に配置された信号収集回路は、いずれも上腿の筋電信号を収集することができる。また例えば、ユーザの前腕に配置された信号収集回路は、前腕の筋電信号を収集することができ、ユーザの心臓の部位に配置された信号収集回路は、ユーザの心電信号を収集することができる。なお、一定のシナリオでは、信号処理回路200又はそれに類似する回路は、上記同種又は異種の生理信号を収集して処理することができ、本願は、これを限定しない。いくつかの実施例において、上記少なくとも2つの信号収集回路は、2つの信号収集回路のみを含んでもよく、3つの信号収集回路、4つの信号収集回路又はそれ以上の信号収集回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記生理信号の周波数範囲は、0.05Hz~2kHzであってもよく、上記心電信号の周波数範囲は、0.05Hz~100Hzであってもよく、上記筋電信号の周波数範囲は、5Hz~2kHzであってもよい。
【0050】
ステップ320では、同一時間に上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの一部のみの信号収集回路により収集された目標信号が上記アナログ回路に伝送されるように、スイッチ回路により、上記少なくとも2つの信号収集回路とアナログ回路との導通を制御する。いくつかの実施例において、ステップ320は、信号処理回路200におけるスイッチ回路220により実行されてもよい。
【0051】
いくつかの実施例において、スイッチ回路220は、入力端が上記少なくとも2つの信号収集回路に接続され、出力端が上記アナログ回路230に接続される。いくつかの実施例において、上記スイッチ回路220は、複数の入力チャネルを含み、上記少なくとも2つの信号収集回路のうちの各信号収集回路は、1つの入力チャネルに単独で接続され、同一時間に、上記スイッチ回路220は、上記制御回路240の制御信号に基づいて1つの入力チャネルを選択して導通させる。
【0052】
いくつかの実施例において、スイッチ回路は、制御回路の制御命令に基づいて、信号収集回路とアナログ回路の導通を実行してもよい。以上に説明した4チャネルの時分割多重化を例として、制御回路240がスイッチ回路220のチャネルAを選択導通させた後、チャネルAに対応する目標信号は、アナログ回路230に連通し、かつ最終的に制御回路240によってサンプリングされる。今回のサンプリングが成功した後、制御回路240は、新たな制御命令を与え、例えば、チャネルBを選択導通させる命令を与えると、チャネルBの目標信号は、アナログ回路230に接続され、かつ最終的に制御回路によってサンプリングされ、その他はこれによって類推する。つまり、制御回路240は、複数の信号収集回路の間に繰り返してスイッチングするようにスイッチ回路220を制御することにより、時分割多重化の作用を達成することができ、すなわち、1つのアナログ回路230により複数の信号源を時分割処理することにより、スペースコストを省き、ハードウェア要求を低減することができる。
【0053】
ステップ330では、上記アナログ回路により、その受信した目標信号を処理する。いくつかの実施例において、ステップ320は、信号処理回路200におけるアナログ回路230により実行されてもよい。
【0054】
いくつかの実施例において、信号収集回路により直接収集された元の目標信号は、振幅が非常に小さく、かつ大量のノイズがあるため、アナログ回路230を用いて該元の目標信号に対してフィルタ、差動増幅、増幅、負帰還によるノイズ除去などの処理を行う必要がある。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対してコモンモード信号の抑制及び増幅処理を行う差動増幅器を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対して増幅処理を行う多段増幅回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、受信した目標信号におけるコモンモード信号を抽出し、反転増幅した後に信号源に帰還し、主に信号源における電源周波数を抑制できる右脚駆動回路を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記アナログ回路230は、差動増幅器、多段増幅器、フィルタ回路及び右脚駆動回路を同時に含んでもよく、そのうちの1種又は複数種のみを含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施例において、ベースラインドリフトが存在する可能性がある状況を考慮し、アナログ回路の目標信号のゲインを低下させ(すなわち、アナログ回路における増幅倍率を低下させ)、及び/又は高精度ADCチャネルを有する制御チップを選択し、及び/又は抵抗による基準電位の調整を選択することにより、ベースラインドリフトの問題を解決し、及び/又はアナログ回路230にハイパスフィルタ回路を追加する方法を選択してベースラインドリフトを取り除くことができる。ベースラインドリフトの問題をどのようにして解決するかに関するより多くの内容について、
図4A~
図4B及び
図5A~
図5Cの詳細な説明を参照することができる。
【0056】
ステップ340では、制御回路により、アナログ回路により処理された目標信号を受信し、処理後の上記目標信号をサンプリングする。いくつかの実施例において、ステップ320は、信号処理回路200における制御回路240により実行されてもよい。
【0057】
いくつかの実施例において、上記制御回路240は、複数のADCチャネルを含み、各ADCチャネルは、いずれも、受信した、アナログ回路230により処理された目標信号をデジタル信号に変換して読み取り処理することができる。いくつかの実施例において、上記制御回路240は、読み取られたデジタル信号を表示することにより、生理信号の状況を直感的に体現するように、表示装置にさらに接続されてもよい。いくつかの実施例において、上記サンプリングに基づいて、制御回路240は、目標信号に対して読み取り、記憶、処理分析などを行うことができ、好ましくは、上記制御回路240は、サンプリングされたデータに基づいて対応する命令をさらに送信することができる。
【0058】
いくつかの実施例において、上記制御回路240による処理後の各目標信号のサンプリングは、上記制御回路240が処理後の各上記目標信号の受信を開始して一定の時間が経過した後に行われる。つまり、スイッチ回路220がチャネルをスイッチングして導通させた後、制御回路240は、新たに導通された目標信号を直ちにサンプリングせず、或いは、制御回路240が新たに導通された目標信号をサンプリングしても、直ちにサンプリング結果を目標信号の構成部分としない。
【0059】
いくつかの実施例において、制御回路240のサンプリング周波数は、信号収集回路の数、目標信号のタイプ及び目標周波数に関連する。例えば、制御回路240の各信号のサンプリング周波数は、その目標周波数の2倍以上である。単に例として、筋電信号に対して、その対応する目標周波数が1000Hz以内であると仮定すると、制御回路は、2000Hzのサンプリング周波数を用いて該筋電信号をサンプリングすることができる。信号処理回路全体に対して、筋電信号を収集する収集回路が4つあると仮定すると、制御回路240は、8000Hzの総サンプリング周波数を提供してこそ、各筋電信号のサンプリングレートが2000Hzに達することを保証することができる。
【0060】
異なる場合に、制御回路240は、異なるポリシーに基づいて、スイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。
【0061】
いくつかの実施例において、後続きのサンプリングデータが各目標信号の情報を完全に保持することができる(すなわち、制御回路240がサンプリングデータに基づいて各目標信号を再構成することができる)ように、制御回路240は、完全再構成型ポリシーを用いてスイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。完全再構成型ポリシーでは、制御回路240は、その提供する総サンプリング周波数に基づいて、スイッチ回路220の入力チャネルをスイッチングすることができる。例えば、スイッチ回路220が入力チャネルをスイッチングする周波数は、制御回路240が提供するサンプリング周波数に等しくてもよい。この場合に、スイッチ回路220は、入力チャネルをスイッチングするたびに、すなわち、1つの信号収集回路を導通させるたびに、制御回路240は、該信号収集回路により収集された目標信号を1回サンプリングする。また、制御回路240の各目標信号のサンプリング周波数が目標周波数の2倍以上であるため、完全再構成型ポリシーにより、各目標信号に対して各周期内にいずれも少なくとも2つのサンプリング点を有することを保証することができる。
【0062】
引き続き、筋電信号を収集する上記4つの信号収集回路を例として、各筋電信号の目標周波数がいずれも1kHz以内であると仮定すると、制御回路は、各筋電信号に2kHzのサンプリング周波数を提供する。制御回路に対して、合計で8kHzのサンプリング周波数を提供する。スイッチ回路は、同様に8kHzの周波数で4つの信号収集回路の間にスイッチングし、125マイクロ秒ごとに1回スイッチングし、スイッチ回路の隣接する2回のスイッチングの間に、制御回路は、受信した筋電信号を1回サンプリングする。
【0063】
さらに、完全再構成型ポリシーでは、制御回路は、取得したサンプリングデータに基づいて、対応するマルチパスの目標信号を完全に再現することができる。例えば、制御回路は、各目標信号を再構成し、各目標信号の周波数、位相、強度(振幅)などの情報をさらに分析することができる。好ましくは、制御回路は、取得したサンプリングデータ又は再構成した目標信号を有線又は無線の方式で外部処理回路に送信して分析することができる。
【0064】
いくつかの実施例において、スイッチ回路220が入力チャネルをスイッチングする周波数は、さらに制御回路240が提供するサンプリング周波数の半分又は他の分数に等しくてもよい。この場合に、スイッチ回路220は、入力チャネルをスイッチングするたびに、すなわち、1つの信号収集回路を導通させるたびに、制御回路240は、該信号収集回路により収集された目標信号を2回サンプリングすることができる。引き続き、筋電信号を収集する上記4つの信号収集回路を例として、各筋電信号の目標周波数がいずれも1kHz以内であると仮定すると、制御回路は、各筋電信号に2kHzのサンプリング周波数を提供する。制御回路に対して、合計で8kHzのサンプリング周波数を提供する。スイッチ回路は、4kHzの周波数のみで4つの信号収集回路の間にスイッチングし、250マイクロ秒ごとに1回スイッチングし、スイッチ回路の隣接する2回のスイッチングの間に、制御回路は、受信した筋電信号を2回サンプリングする。このような方式で収集された目標信号は、スイッチ回路が隣接する2回のスイッチングの間に1回のみのサンプリングを行う場合に対して、各信号のサンプリング時点が均一ではないため、サンプリングデータに基づいて再構成された各目標信号に一定の偏差が存在する可能性がある。
【0065】
なお、上記完全再構成型ポリシーでは、制御回路が時分割多重化方式を用いて処理できるチャネル数は、目標信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの時間の影響を受ける。単に例として、目標信号の周波数が500Hzであれば、制御回路は、単一チャネルに1kHzよりも大きいサンプリング周波数を提供する必要があり、このとき、4チャネルの時分割多重化を実現するにはスイッチのスイッチング速度を4kHzにする必要があり、スイッチ回路の単一チャネルでの滞留時間が250マイクロ秒のみであり、8チャネルの時分割多重化を実現するにはスイッチのスイッチング速度を8kHzにする必要があり、スイッチ回路の単一チャネルでの滞留時間が125マイクロ秒のみである。立ち上がりエッジ時間と立ち下がりエッジ時間の影響を考慮すると、スイッチ回路の各チャネルでの滞留時間は、小さすぎてはいけない。例えば、立ち上がりエッジ時間と立ち下がりエッジ時間がいずれも50マイクロ秒であれば、この場合に、最大16チャネルの時分割多重化を実現することができる。したがって、通常、立ち上がりエッジ時間、立ち下がりエッジ時間、チャネル数及び目標信号の周波数範囲などを総合的に考慮することにより、適切なチャネル数及び対応するチャネルスイッチング時間を選択する。
【0066】
別のいくつかの実施例において、制御回路240がスイッチチャネルを迅速にスイッチングする過程において有効なサンプリングデータを取得できない可能性がある(すなわち、上記信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジによりスイッチ回路の単一チャネルでの滞留時間が長すぎ、制御回路が目標信号の周期内に有効なデータ点を少なくとも2回収集できない)ことを考慮し、制御回路240は、強度特徴付け型ポリシーを用いてスイッチ回路220のスイッチングを制御することができる。強度特徴付け型ポリシーでは、制御回路240は、予め設定された周波数に基づいて、スイッチ回路220の入力チャネルをスイッチングすることができる。上記予め設定された周波数は、ユーザがある動作を行う周期に関連することができる。例えば、ユーザが筋力トレーニングを行う時に筋肉が生成する筋電信号を分析するために、上記予め設定周波数を、ユーザが特定の動作(例えば、ベンチプレス)を行う周波数の一定の倍率にすることにより、ユーザが該特定の動作を行う1つの周期内にスイッチ回路220は、各信号収集回路を複数回導通させることができるため、制御回路240は、それぞれ各目標信号を複数回サンプリングすることができる。
【0067】
引き続き、筋電信号を収集する4つの信号収集回路を例とし、ユーザが1秒に1回の速度で、ある動作を行うと仮定すると、1つの動作で制御回路が各目標信号を10回サンプリングすることを保証すれば、スイッチ回路のスイッチング速度は、毎秒に40回であり、1つの信号収集回路にスイッチングするたびに、制御回路は、まず、信号が安定することを待ち、次に、該信号の25ms時間が終了するまで連続的にサンプリングする。この場合に、上記スイッチ回路のスイッチング速度は、制御回路の総サンプリング周波数と関係がない。制御回路は、高い総サンプリング周波数を用いて、目標信号における高周波信号を収集する効果を達成することができる。
【0068】
さらに、強度特徴付けポリシーでは、制御回路は、取得したサンプリングデータに基づいて、目標信号の強度情報を取得することができる。例えば、強度特徴付けポリシーでは、制御回路は、一定の時間内に単一の信号収集回路により生成された目標信号を連続的にサンプリングする。制御回路は、これらの連続的にサンプリングしたデータに基づいて、この時間帯内に該信号収集回路により収集された目標信号の強度を計算し、例えば、これらの連続的にサンプリングしたデータの平均値などを計算することができる。当然のことながら、制御回路は、該信号収集回路に対応する全てのサンプリングデータに基づいて、目標信号の強度を計算することができる。また、さらに、制御回路は、同一の信号収集回路の、非連続的な複数の時間帯にそれぞれ対応する目標信号の強度を計算した場合、これらの信号の強度及びそれらの対応する時間に基づいて、目標信号の強度と時間の変化関係を生成することにより、該目標信号の特定の周波数情報を抽出することができる。
【0069】
いくつかの実施例において、上記強度特徴付け型ポリシーでは、強度情報を収集するとともに、一部の周波数情報を収集することができる。該ポリシーでは、全ての時間帯の信号を完全に収集せず、一部の信号情報を失うため、一部の周波数情報を損失する。単に例として、40Hzの総周波数でスイッチ回路をスイッチングするように制御し、信号収集回路が4つある場合に、各入力チャネルの収集時間の長さは、25msであり、このとき、信号周波数が40Hzよりも小さい低周波信号の収集は、一定の損失がある。しかしながら、各回路の収集された信号(すなわち、チャネルを1回スイッチングした後に複数回サンプリングされた信号)を代表値とし(例えば、25msに収集された信号毎の平均値を抽出する)、単一チャネルの1s時間内に10個の代表値があれば、完全再構成型ポリシーの処理方式を利用して、5Hz周波数以下の信号を再構成することができる。
【0070】
いくつかの実施例において、強度特徴付けポリシーでは、時分割多重化の能力は、ユーザの動作の周波数及びユーザの動作の監視精度に対する要求に関連し、単一チャネルは、収集持続時間が長いため、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジから受ける影響が低い。いくつかの実施例において、このようなポリシーでは、目標信号の周波数が低すぎると時分割多重化の回路数が制限されるため、目標信号の周波数にも関連する。目標信号の周波数及び強度情報を抽出する必要があるため、低周波信号、例えば周波数が40Hz以下の信号を収集しにくく、この場合に、時分割多重化の回路数を低減し、すなわち、信号収集回路の数を低減することができる。
【0071】
いくつかの実施例において、制御回路240は、実際の状況に応じて具体的なスイッチ制御ポリシーを調整することができる。例えば、制御回路240は、完全再構成型ポリシーと強度特徴付け型ポリシーとの間でスイッチングすることができる。完全再構成型ポリシーと強度特徴付け型ポリシーとの間の選択又はスイッチングは、回路の遅延時間(例えば、立ち上がりエッジ時間及び立ち下がりエッジ時間)及び回路の信号雑音比に対するニーズに基づいて判定することができる。例えば、回路の遅延時間が長く、目標信号の周波数、信号収集回路の数及びアナログ回路の増幅倍率を変更することができない場合、制御回路240は、強度特徴付け型ポリシーを選択することができる。また例えば、アナログ回路に適切なフィルタ回路を増設して信号雑音比を向上させる場合、フィルタ回路により遅延時間が長くなることを考慮し、制御回路240は、強度特徴付け型ポリシーを選択することができる。逆に、回路の遅延時間が短いか又は信号雑音比に対するニーズが高くない場合、制御回路240は、完全再構成型ポリシーを選択することができる。いくつかの実施例において、制御回路240は、環境要因又はユーザ指示に基づいてスイッチ制御ポリシーを調整することができる。例えば、異なるスイッチ制御ポリシーが異なる電力量消費速度に対応すると仮定すると、制御回路240は、電源(例えば、電池)の電力量状況に基づいてスイッチ制御ポリシーを調整することができ、電源の電力量が低い場合、電力量消費速度が低いスイッチ制御ポリシーを選択する。また例えば、制御回路240は、ユーザの様々なニーズを満たすように、ユーザの入力命令に基づいてスイッチ制御ポリシーを調整することができる。
【0072】
なお、上記フロー300に関する説明は、例示的かつ説明的なものに過ぎず、本願の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本願の指導下で、フロー300に対して様々な修正及び変更を行うことができる。しかしながら、これらの修正及び変更は、依然として本願の範囲内にある。
【0073】
図4A~
図4Bは、本願のいくつかの実施例に係るベースラインドリフト問題の例示的な画像である。
【0074】
いくつかの実施例において、人体表面の角質層電位などの要因により、制御回路240がサンプリングした信号は、ベースラインドリフトの状況が存在する可能性がある。ベースラインドリフトの問題に対して、いくつかの実施例において、アナログ回路230の目標信号のゲインを低下させ、及び/又は高精度ADCチャネルを有する制御チップを選択し、及び/又は抵抗による基準電位の調整を選択することにより、ベースラインドリフトの問題を解決し、及び/又はアナログ回路230にハイパスフィルタ回路を追加する方法を選択してベースラインドリフトを取り除くことができる。
【0075】
いくつかの実施例において、ベースラインドリフトに限界値が存在するため、小さいゲインを用いてベースラインドリフトが信号処理回路の出力能力を超えないようにベースラインドリフトを制御することにより、歪みが発生しない。例えば、目標信号がアナログ回路に伝送される場合、アナログ回路は、該目標信号に対して増幅処理を行う。ベースラインドリフトの問題を解決するために、増幅後の信号に歪みが発生しないように、アナログ回路の目標信号の増幅倍率を適切に低減することができる。
【0076】
いくつかの実施例において、目標信号の増幅倍率(ゲイン)が低下すると、他の問題、例えば、アナログ回路により出力された信号のノイズに対する制御要求が高いという問題を引き起こす可能性がある。ゲインがアナログ回路により出力された信号の信号雑音比の改善に役立つことができないが、アナログ回路の後の部分にノイズが導入されると、大ゲインは、回路全体の信号雑音比を改善することができるため、小ゲインの場合、ノイズを厳密に制御することを要求する。生理信号が一般的に弱いため、このような小ゲインの場合に、十分な分解能を取得し、アナログ回路の後に多くのノイズが入ることを回避するように、高精度ADCを有する制御回路を選択する必要がある。
【0077】
単に例として、筋電信号の強度が0.1mVであれば、3.3Vが給電される12ビットのADCの場合に対して、分解能が0.8mVだけであるため、この筋電信号に10倍のゲインを加えても、得られた結果の歪みが深刻であるが、16ビットのADCを使用すれば、分解能が0.05mVに達することができ、10倍のゲインを加えても、良好な信号復元を行うことができる。いくつかの実施例において、60倍のゲイン、3.3Vの給電、16ビットのADCの方案を選択することができる。
【0078】
いくつかの実施例において、乾式電極で筋電信号を収集する場合、時分割多重化回路を用いて僧帽筋、大胸筋、上腕二頭筋の筋電信号を収集する効果を
図4Aに示し、図には、小ゲイン高精度の方法で収集された信号の元の形態が示され、画像中のサンプリングされた3つの信号に明らかなベースラインドリフト問題が存在することが分かる。該小ゲイン高精度の方法は、60倍のゲイン、3.3Vの給電、12ビットのADCの方案を用いる。図から分かるように、小ゲインにより、ベースラインドリフトは、信号処理回路の出力能力の範囲を超えず、飽和歪み現象が発生しない。
図4Bは、60Hz~500Hzのアルゴリズムを用いてバンドパスフィルタ処理を行った後の画像であり、図から分かるように、小ゲイン高精度の方案で、ベースラインドリフトの状況が一定の範囲に制御されるため、フィルタ処理後の画像に既にベースラインドリフトの問題が存在しない。
【0079】
いくつかの実施例において、さらに信号処理回路にハイパスフィルタ回路を追加することにより、ベースラインドリフトの問題を解決することができる。いくつかの実施例において、上記ハイパスフィルタ回路は、上記アナログ回路に追加されてもよく、飽和歪み現象の発生を回避するように、マスターゲインの前に設置されることを選択してもよい。この場合に、大ゲイン、ゼロドリフトの効果を同時に達成することができる。しかしながら、アナログ回路にハイパスフィルタ回路が追加されると、立ち上がりエッジ時間及び立ち下がりエッジ時間が長くなるなどの問題をもたらす可能性がある。したがって、パラメータを調整して適切なものを選択し、時分割多重化機能を包括するという目的を達成する必要がある。
【0080】
いくつかの実施例において、目標周波数が相対的に低い場合にハイパスフィルタ回路を追加してもよく、目標周波数が相対的に低い場合、各チャネルがサンプリングするときに滞留できる時間が相対的に長いためである。例えば、目標周波数が250Hz内の筋電信号を選択することができ、完全再構成型ポリシーでは、単一チャネルのサンプリング周波数は、500Hzのみを必要とし、4チャネルの時分割多重化のサンプリング周波数も2000Hzのみを必要とし、単一チャネルの待ち時間を500マイクロ秒に延長することができる。比較として、完全再構成型ポリシーでは、筋電信号の目標周波数が1000Hzであれば、単一チャネルのサンプリング周波数が2000Hzを必要とし、4チャネルの時分割多重化のサンプリング周波数が8000Hzを必要とし、単一チャネルの待ち時間が125マイクロ秒であり、立ち上がりエッジ時間及び立ち下がりエッジ時間が125マイクロ秒よりも大きければ(スイッチの遅延、各チップの電圧変動及び安定時間などが存在する可能性がある)、正確なサンプリング信号を取得できない可能性があり、このときにアナログ回路におけるフィルタ回路を適切に減少させて最適化することもできる。
【0081】
図5A~
図5Cは、本願のいくつかの実施例に係る基準電位をプログラム制御する例示的な回路図である。
【0082】
いくつかの実施例において、上記ベースラインドリフトの変化が緩やかである可能性があり、一定の時間内に固定ドリフトの現象を呈する可能性があり、回路の基準電位を設計することにより、ある程度でベースラインをプログラム制御してベースラインドリフトの問題を解決することができる。いくつかの実施例において、ベースラインドリフトにより信号が飽和電圧上限に近づく場合、基準電位が低下するように基準電位をプログラム制御することができ、逆に、ベースラインドリフトにより信号が飽和電圧下限に近づく場合、基準電位が上昇するように基準電位をプログラム制御することができる。上記基準電位は、回路の仮想グランドであり、回路を一定の電位に上昇させることにより、制御回路が受信した信号を読み取るように、取得された信号値がいずれも正値であることを保証する。
【0083】
図5Aに示す回路図において、抵抗R1及びR2を利用して分圧した後、増幅器により入出力を遮断して出力端の影響を回避し、最終的に、出力端からVCC2=VCC*R2/(R1+R2)の電圧値を出力することができる。図から分かるように、R1、R2の値を調整することにより、VCC2の値を変更することができる。VCC2を回路の基準電位とし、次にコンピュータによりR1、R2の値をプログラム制御すれば、基準電位をプログラム制御することができる。いくつかの実施例において、R1をスイッチによって制御される抵抗ネットワークRに置き換え、異なるスイッチの選択導通により、異なる抵抗値の抵抗の回路への接続を実現することで、Rの抵抗値の変化を実現することができる。同様に、R2を制御するか又はR1及びR2を同時に調整することができる。
【0084】
図5Bに示す回路図において、図中の増幅器の負入力は、VCC2に接続され、従来の場合に、増幅器の負入力は、グランドに選択的に接続され、すなわち、VCC2=0Vである。ベースラインをプログラム制御するために、VCC2の値を一定の値、例えば、給電電圧の半分に初期化することを選択すれば、回路全体の電位を上昇させることができ、回路の出力が常に0V以上であり、回路が正負の電圧で給電され、電池に給電する処理を増加させる必要がない。このような場合に、ADCが信号を読み取るニーズを満たすだけでなく、電池が回路に給電しやすい(電池が正電圧である)。基準電位VCC2=0Vであれば、回路が正負の電圧で給電され、電池に給電する処理を増加させる必要があり、出力端に、電圧を上昇させる処理をさらに行ってADCの読み取り要求を満たす必要がある。
【0085】
図5Cは、ベースラインをプログラム制御する概略図であり、プロセッサ、基準電圧制御回路及び増幅回路を含む。上記基準電圧制御回路は、基準電位の基準電圧を変更し、上記プロセッサは、基準電位を調整する目的を達成するように、出力結果に基づいて、基準電圧値を変更するように上記基準電圧制御回路を制御する。いくつかの実施例において、プロセッサは、増幅回路の出力をリアルタイムに監視調整し、一定の閾値を設定してもよく(例えば、2つの閾値を設定してもよく、第1の閾値を上限とし、第2の閾値を下限として、出力電圧が一定の範囲であるように出力電圧を制御する)、検出された出力電圧が一定の閾値を超える場合、プロセッサは、基準電位の基準電圧を変更するように基準電圧制御回路を制御することができる。
【0086】
単に例として、増幅回路の出力能力が0~3Vである場合に、上記第1の閾値を最大値の90%(2.7V)、上記第2の閾値を最大値の10%(0.3V)に設定することができる。プロセッサは、増幅回路の電圧出力が2.7Vを超えたことを検出すると、調整をトリガし、基準電位を一定の値だけ低下させるように上記基準電圧制御回路を制御する(例えば、上記基準電位の低下値は、検出された出力電圧値と初期基準電位との差であってもよく、また例えば、上記基準電位の低下値は、ある固定値であってもよい)。同様に、プロセッサは、増幅回路の電圧出力が0.3Vよりも小さいことを検出すると、同様に調整をトリガし、基準電位を一定の値だけ上昇させるように上記基準電圧制御回路を制御する(例えば、上記基準電位の上昇値は、検出された出力電圧値と初期基準電位との差であってもよく、また例えば、上記基準電位の上昇値は、ある固定値であってもよい)。なお、低下した後の基準電位は、0Vよりも小さくてはいけず、0Vよりも小さいと、基準電位は、最小で0Vまでしか低下できず、上昇した後の基準電位は、3Vよりも大きくてはいけず、3Vよりも大きいと、基準電位は、最大で3Vまでしか上昇できず、つまり、変更後の基準電圧値は、増幅回路の出力電圧値の範囲を超えてはいけない。なお、最終的な結果からフィルタ処理によりベースラインのプログラム制御の影響を取り除くために(例えば、ベースラインのプログラム制御の周波数が1秒に10回よりも小さく、筋電信号の周波数として20Hz以上が選択されれば、20Hzのハイパスアルゴリズムでベースラインのプログラム制御の影響をフィルタして除去することができる)、基準電位を調整する周波数は、高すぎるべきではない。いくつかの実施例において、プログラム制御調整の速度は、目標信号のベースラインドリフトの速度、プロセッサに設定された閾値、調整がトリガされた後の基準電位の調整値に関連する。
【0087】
以上より、基準電位を変更することにより、信号の基準レベルを変更することができ、同時に、基準電位をプログラム制御することにより、ある程度でベースラインをプログラム制御してベースラインドリフトの問題を解決することができる。
【0088】
いくつかの実施例において、
図5A~
図5Cに記載の基準電位をプログラム制御する方法は、正負の電源で給電し、基準電位が0Vに初期化される場合にも適用される。
【0089】
図6A~
図6Bは、本願のいくつかの実施例に係るチャネルクロストーク問題の例示的な概略図である。
【0090】
いくつかの実施例において、時分割多重化は、回路全体の立ち下がりエッジ時間の影響を受ける。立ち下がりエッジ時間は、電圧がある値から別の値に立ち下がり、安定するまでに要する時間を表す。スイッチをスイッチングする前後に、前のチャネルの電圧を十分に解放するために十分な時間を待たなければ、チャネル間のクロストークを引き起こし、スイッチング後のチャネルにスイッチング前の一部のチャネルの一部の情報が残す。
【0091】
いくつかの実施例において、時分割多重化回路の信号処理方法を用いて、チャネルが安定した後にサンプリングすると、ある程度で各入力チャネル間のクロストークを低減することができる。マルチチャネルが同時に信号を伝送する場合に、各入力チャネルは、同時に信号を有し、各チャネルの信号が大きく、各チャネルの入力線が互いに重なり、かつ絶縁性が十分でないと、各チャネルの間のクロストークが発生する。しかしながら、時分割多重化の方案では、同一の時刻に1つのチャネルのみを導通させ、他のチャネルがオフ状態にあり、電流がなく、上記マルチチャネル回路のクロストーク問題を効果的に回避することができる。
【0092】
いくつかの実施例において、
図6A及び
図6Bに示すように、図中の破線は、処理後の入力回路の元の信号を表し、実線は、元の信号が本願の回路を通過した後に形成した遅延信号を表す。図中に、横座標は、時間を表し、縦座標は、電圧値を表す。破線の縦座標は、実際の意味での電圧値ではなく、単に実線の時間基準とする。いくつかの実施例において、ファンクションジェネレータを信号源として矩形波を作り、ファンクションジェネレータの2つの出力端に対して、同じモードを選択し(このようにして、両者の位相が一致することを保証する)、ファンクションジェネレータの1つの信号は、回路の入力端に接続され、回路の出力は、オシロスコープに接続され、オシロスコープは、回路の出力端のデータを読み取って上図(実線)に描き、ファンクションジェネレータのもう1つの信号は、オシロスコープに直接接続され、データを読み取り、該データは、回路の入力信号の位相を表すことができ、該データを、処理(その強度値の変化により、実線と比較することができ、直感的に観察しやすくなる)した後に、上図(破線)に描く。上記処理は、1つの閾値点(信号がジャンプする前後の値の平均値)を選択し、この閾値よりも大きい点及びこの閾値よりも小さい点にそれぞれ値を付与することであり、例えば、上記閾値よりも小さい点にa値、上記閾値よりも大きい点にb値を付与することができる。以上より、図から分かるように、実際に、ジャンプ電圧値は、遅延に影響を与える重要な要因である。
【0093】
本願の実施例がもたらす有益な効果は、(1)~(5)を含むが、これらに限定されない:(1)時分割多重化の方法を用いることにより、複数の信号源の収集及び処理を保証する場合、スペースコストを省き、ハードウェア要求を低減するという目的を達成することができ、(2)複数の入力チャネルが同時に信号を有する場合、各入力チャネルの間のクロストークを低減することができ、(3)完全再構成型ポリシーは、取得されたサンプリングデータに基づいて、対応するマルチパスの目標信号を完全に再現することができ、(4)強度特徴付け型ポリシーでは、取得されたサンプリングデータに基づいて、目標信号の強度情報及び一部の周波数情報を取得することができ、(5)小ゲイン、高精度ADC、ベースラインのプログラム制御、及びハイパスフィルタ回路の追加の方法により、出現する可能性のあるベースラインドリフトの問題を解決する。
【0094】
上記で基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記発明の開示は、単なる例として提示されているものに過ぎず、本願を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本願に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本願によって示唆されることが意図されているため、本願の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【0095】
さらに、本願の実施例を説明するために、本願において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本願の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本願の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造、又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
【0096】
また、当業者には理解されるように、本願の各態様は、任意の新規かつ有用なプロセス、機械、製品又は物質の組み合わせ、又はそれらへの任意の新規かつ有用な改善を含む、いくつかの特許可能なクラス又はコンテキストで、例示及び説明され得る。よって、本願の各態様は、完全にハードウェアによって実行されてもよく、完全にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実行されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実行されてもよい。以上のハードウェア又はソフトウェアは、いずれも「データブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「アセンブリ」又は「システム」と呼ばれてもよい。また、本願の各態様は、コンピュータ可読プログラムコードを含む1つ以上のコンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0097】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータプログラムコードを搬送するための、ベースバンド上で伝播されるか又は搬送波の一部として伝播される伝播データ信号を含んでもよい。該伝播信号は、電磁気信号、光信号又は適切な組み合わせ形態などの様々な形態を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶媒体以外の任意のコンピュータ可読媒体であってもよく、該媒体は、命令実行システム、装置又はデバイスに接続されることにより、使用されるプログラムの通信、伝播又は伝送を実現することができる。コンピュータ記憶媒体上のプログラムコードは、無線、ケーブル、光ファイバケーブル、RF若しくは類似の媒体、又は上記媒体の任意の組み合わせを含む任意の適切な媒体を介して伝播することができる。
【0098】
また、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本願に記載の処理要素又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本願の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単に説明の目的のためであり、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、逆に、本願の実施例の趣旨及び範囲内にあるすべての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることを理解されたい。例えば、上述したシステムアセンブリは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存のサーバ又はモバイルデバイスに説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
【0099】
同様に、本願の実施例の前述の説明では、本願の開示を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈すべきではない。実際に、実施例の特徴は、上記開示された単一の実施例のすべての特徴よりも少ない場合がある。
【0100】
いくつかの実施例において、成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例において修飾語「約」、「ほぼ」又は「概ね」によって修飾されるものであることを理解されたい。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「概ね」は、上記数字が±20%の変動が許容されることを示す。よって、いくつかの実施例において、明細書及び特許請求の範囲において使用されている数値パラメータは、いずれも個別の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例において、数値パラメータについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用するべきである。本願のいくつかの実施例において、その範囲を決定するための数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体的な実施例では、このような数値は、可能な限り正確に設定される。
【0101】
本願において参照されているすべての特許、特許出願、公開特許公報、及び、論文、書籍、仕様書、刊行物、文書などの他の資料は、本願の内容と一致しないか又は矛盾する出願経過文書、及び(現在又は後に本願に関連する)本願の請求項の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る文書を除いて、その全体が参照により本願に組み込まれる。なお、本願の添付資料における説明、定義、及び/又は用語の使用が本願に記載の内容と一致しないか又は矛盾する場合、本願における説明、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
【0102】
最後に、本願に記載の実施例は、単に本願の実施例の原理を説明するものであることを理解されたい。他の変形例も本願の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本願の実施例の代替構成は、本願の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本願の実施例は、本願において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0103】
100、200 信号処理回路
111、112、113、114、211、212、213、214 信号収集回路
131、132、133、134、230 アナログ回路
140、240 制御回路
220 スイッチ回路