(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】熱交換器および熱交換器を備えた電力変換装置、熱交換機用インナーフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20241111BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241111BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241111BHJP
【FI】
F28F1/40 K
F28D1/053 A
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2023536313
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027394
(87)【国際公開番号】W WO2023002628
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕二朗
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-272845(JP,A)
【文献】中国実用新案第209687594(CN,U)
【文献】特開2006-064345(JP,A)
【文献】実開昭55-150293(JP,U)
【文献】実公昭52-052284(JP,Y2)
【文献】特開2019-097237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 21/00
B21D 53/02 - 53/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平通路内に熱伝達性を有するインナーフィンを配置した熱交換器であって、
前記インナーフィンは、天面部と側面部とによって形成される凸形状を有し、かつ前記凸形状の内側に中空を有する複数のフィン部で形成され、
複数の前記フィン部同士は、連結部を介して一続きに形成されて並ぶ方向を第1の方向、複数の前記フィン部同士の間にスリットが形成されて並ぶ方向を第2の方向、と定義した場合、前記第2の方向において所定の間隔を空けて配置され、
前記インナーフィンは、前記第1の方向及び前記第2の方向が前記扁平通路内に流れる冷媒の流れに対してそれぞれ鋭角になるように配置され
、
複数の前記フィン部において、前記中空に入る最大の円の直径を第1の直径、隣り合う前記フィン部のそれぞれの前記側面部同士の間をつなぐ連結部に入る最大の円の直径を第2の直径、と定義すると、前記第2の直径は、前記第1の直径と同じかそれ以上の大きさであり、
前記扁平通路内において、前記扁平通路下部と前記インナーフィンとの間には、複数の溝部を有したフィンプレートを備え、
前記溝部には、複数の凸部が形成され、
向かい合う複数の前記凸部同士の間の幅は、前記第1の直径よりも小さい
熱交換器。
【請求項2】
請求項
1に記載の熱交換器を備えた
電力変換装置。
【請求項3】
熱交換器の扁平通路内に配置されて熱伝達性を有するインナーフィンの製造方法であって、
熱伝導性の板材の辺に沿って所定の間隔で長方形状の抜き加工を行う第1工程と、
前記板材の長手方向に対して曲げ加工を行い複数のフィン部を形成する第2工程と、
前記扁平通路内に収まるように前記板材を前記辺に対して斜め方向に切り取る第3工程と、
前記第3工程の切り取りで生じた不完全な複数の前記フィン部を除去する第4工程と、を含む
熱交換機用インナーフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器および熱交換器を備えた電力変換装置、熱交換機用インナーフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の背景技術として、熱交換性能を低下させることなく通路の圧力損失を低減するために、下記の特許文献1では、冷却水の流れと平行に平面部分を配置したフィン形状を備える熱交換器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を踏まえて、さらにフィンの性能の向上を実現するため、本発明では、放熱性能を向上させた熱交換器および熱交換器を備えた電力変換装置、熱交換機用インナーフィンの製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
扁平通路内に熱伝達性を有するインナーフィンを配置した熱交換器および前記熱交換器を備えた電力変換装置は、前記インナーフィンは、天面部と側面部とによって形成される凸形状を有し、かつ前記凸形状の内側に中空を有する複数のフィン部で形成され、複数の前記フィン部同士は、連結部を介して一続きに形成されて並ぶ方向を第1の方向、複数の前記フィン部同士の間にスリットが形成されて並ぶ方向を第2の方向、と定義した場合、前記第2の方向において所定の間隔を空けて配置され、前記インナーフィンは、前記第1の方向及び前記第2の方向が前記扁平通路内に流れる冷媒の流れに対してそれぞれ鋭角になるように配置されている。
また、熱交換器の扁平通路内に配置されて熱伝達性を有する熱交換機用インナーフィンの製造方法は、熱伝導性の板材の辺に沿って所定の間隔で長方形状の抜き加工を行う第1工程と、前記板材の長手方向に対して曲げ加工を行い複数のフィン部を形成する第2工程と、前記扁平通路内に収まるように前記板材を前記辺に対して斜め方向に切り取る第3工程と、前記第3工程の切り取りで生じた不完全な複数の前記フィン部を除去する第4工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
放熱性能を向上させた熱交換器および熱交換器を備えた電力変換装置、熱交換機用インナーフィンの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】本発明の熱交換器を備えるパワーモジュール分解図
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る、冷却水路の構造図
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る、冷却水路における冷却水の流れ模式図
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る、冷却水路の構造図
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0009】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0010】
(第1の実施形態および全体構成)
図1は、電力変換装置全体のブロック図である。
【0011】
電力変換装置1は、直流電源(バッテリ)2からの直流を交流に変換し、モータ6に出力するための装置である。電力変換装置1は、コンデンサ3、制御装置4、上アーム300U、下アーム300Lを有している。コンデンサ3は直流電源2から出力される直流電力を平滑化させている。制御装置4は、スイッチング素子である上アーム300U、下アーム300Lのスイッチング動作を制御している。
【0012】
【0013】
パワーモジュールの機能を有するモールド体300は、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lを備えている。パワー半導体素子321U、321LはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。パワー半導体素子322U、322Lはダイオードである。パワー半導体素子321U、321L、322U、322LはFET(Field effect transistor)などで代替して適用可能である。
【0014】
モールド体300は、上アーム300Uと下アーム300Lで構成される。上アーム300Uは、IGBT321Uとダイオード322Uで構成される。下アーム300Lは、IGBT321Lとダイオード322Lで構成される。上アーム300Uは、直流正極端子311と信号端子314を持つ。下アーム300Lは、直流負極端子312と信号端子315を持つ。
【0015】
直流正極端子311および直流負極端子312はコンデンサ3などと接続され、モールド体300外部からの電力を供給している。信号端子314、315は、制御装置4を備える制御基板に接続され、パワー半導体素子のスイッチング動作を制御している。モールド体300は、交流端子313を備える。交流端子313は、上アーム300Uと下アーム300Lを電気的に接続し、モールド体300外部に交流の電流を出力している。
【0016】
【0017】
モールド体300は、封止樹脂330で封止されている。直流正極端子311は、封止樹脂330から露出している。直流負極端子312は、封止樹脂330から露出している。交流端子313は、封止樹脂330から露出している。信号端子314、315は封止樹脂330から露出している。モールド体300は、熱伝導部材350を持つ。
【0018】
【0019】
半導体素子321U、321L、322U、322Lは、第1接合材345を介して、その主面が第1放熱板341に接合されている。また、半導体素子321U、321L、322U、322Lは、第2接合材346を介して、その主面と反対側の面が第2放熱板342に接合されている。
【0020】
なお、第1接合材345や第2接合材346は、はんだや焼結材等である。第1放熱板341や第2放熱板342は、銅やアルミなどの金属もしくは、銅配線をもつ絶縁基板などである。
【0021】
封止樹脂330は、半導体素子321U、321L、322U、322Lと、第1放熱板341と第2放熱板342と第1接合材345と第2接合材346を封止している。第1放熱板341は、第1放熱面343を持つ。第1放熱面343は、第1放熱板341において、第1接合材345と接合している面と反対面に位置する。第1放熱面343は、封止樹脂330から露出している。
【0022】
第2放熱板342は、第2放熱面344を持つ。第2放熱面344は、第2放熱板342において、第2接合材346と接合している面と反対面に位置する。第2放熱面344は、封止樹脂330から露出している。2つの熱伝導部材350は、第1放熱面342と第2放熱面344にそれぞれ密着している。
【0023】
熱伝導部材350は、絶縁性能を持った樹脂またはセラミックである。熱伝導部材350は、セラミックである場合にはモールド体300と後述の第1水路110および第2水路210とグリスなどを介して密着する。熱伝導部材350は、モールド体300の内部に絶縁基板もしくは樹脂絶縁部材を持つ場合、グリスである。
【0024】
モールド体300は、半導体素子321U、321L、322U、322Lに電流がそれぞれ流れることで発熱する発熱体である。モールド体300は、熱伝導部材350、後述の第1水路110および第2水路210を介して、それぞれの水路内の冷媒に熱を逃がして冷却される。
【0025】
図5は、本発明の熱交換器を備えるパワーモジュール分解図である。
【0026】
モールド体300は、熱交換器である第1水路110と第2水路210に挟みこまれるように配置される。第1水路110は、第1水路接続部111を持つ。第2水路210は、第2水路接続部211を持つ。第1水路接続部111は、第2水路接続部211と水路を形成するように接続される。第1水路接続部111と第2水路接続部211との接続部分は、シール材400でシールされる。
【0027】
【0028】
第1水路110は、第1水路ベース120、第1フィン130、第1水路カバー150と第1パイプ160および水路接続フランジ170で構成される。水路接続フランジ170は、水路取付面173を持つ。水路取付面173は、外部から冷却水を供給するケースなどに接続される。
【0029】
水路接続フランジ170は、水路取り付け穴172を持つ。水路取り付け穴172は、外部から冷却水を供給するケースなどに固定するねじ穴である。なお、ねじ締結以外でケースに固定する場合、水路取り付け穴172は不要である。水路接続フランジ170は、水路開口171を持つ。水路開口171は、冷却水の入口または出口である。
【0030】
第1水路カバー150は、第1水路カバー開口151を長手方向の両端に2つ持つ。第1水路カバー開口151は、水路開口171にそれぞれ接続され、冷却水が流れる。第1水路ベース120は、第1水路ベース開口121を長手方向の両端に2つ持つ。
【0031】
第1パイプ160は、第1水路110の両端に2個配置される。第1パイプ160は、第1パイプ開口161を持つ。第1パイプ160は、第1水路ベース開口121に接続され、水路を形成する。第1パイプ160は、シール材収容部162を持つ。シール材収容部162は、シール材400を収容する領域である。
【0032】
第1水路ベース120は、第1水路ベース放熱面122を持つ。第1水路ベース放熱面122は、モールド体300と密着してモールド体300の冷却に貢献している。熱伝達性を有するインナーフィンである第1フィン130は、第1水路ベース放熱面122と反対側の第1水路ベース120と接合される。
【0033】
第1フィン130は、第1水路カバー150と接合する。第1水路カバー150は、水路接続フランジ170と接合する。この接合部は、ろう付けまたはレーザ溶接によって接合されている。
【0034】
【0035】
第2水路210は、第2水路ベース220、第2フィン230、第2水路カバー250および第2パイプ260で構成される。第2水路ベース220は、第2水路ベース開口221を長手方向の両端に2つ持つ。
【0036】
一端の第2水路ベース開口221は、第2フィン230の一端に冷却水を流す。他端の第2水路ベース開口221は、第2フィン230の他端から冷却水を流す。
【0037】
第2パイプ260は、第2水路210の両端に2個配置される。第2パイプ260は、第2パイプ開口261を持つ。第2パイプ260は、第2水路ベース開口221に接続されることで、水路を形成する。
【0038】
第2水路ベース220は、第2水路ベース放熱面222を持つ。第2フィンカバー放熱面221は、モールド体300と密着してモールド体300を冷却する。第2水路ベース220は、モールド体300を冷却する第2水路ベース放熱面222を持つ。第2フィン230は、第2水路ベース放熱面222と反対側の面の第2水路ベース220と接合される。
【0039】
第2フィン230は、第2水路ベース放熱面222を介して、モールド体300を冷却する。第2フィン230は、第2水路カバー250と接合する。この接合は、第1水路110と同様で、ろう付けまたはレーザ溶接で接合される。
【0040】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る、冷却水路の構造図である。
【0041】
図8(a)は、
図5の第2水路210からカバー250を取り除いたものである。
図8(b)は、B断面(第2水路カバー250と第2フィン230の接合面を切断する位置)を平面から見た図である。
図8(c)は、
図8(a)のC部分の拡大図である。
【0042】
なお、第1水路110および第1フィン130も同様であるため、第2水路210および第2フィン230の説明のみとして、第1水路110および第1フィン130の構成の説明は割愛する。
【0043】
第2水路210は、フィン流路280を形成している。フィン流路280は、冷却水200が第2フィン230に通るように形成されている。第2フィン230は、複数のフィン部239とフィン連結部238を持つ。フィン部239は、2つのフィン側面部232とフィン天面部233で中空の凸形状231を形成している。中空の凸形状231は、その中空部分に冷却水200が流れる構造である。
【0044】
フィン部239は、冷却水200が流れる方向(流路280の長手方向)に対して斜めに配置され、その延長上に間隔234を設けて同じ傾斜で次のフィン部239が形成されている。斜めに配置されたフィン部239間にはスリット234aが設けられている。
【0045】
フィン天面部233は、第2水路カバー250と接合される。フィン部239は、連結部238を介して一続きに形成されて並ぶ第1の方向235に沿って複数形成されている。また、フィン部239は、第1の方向235と異なる方向であって、複数のフィン部239同士の間にスリット234aが形成されて並ぶ第2の方向236に沿って、繰り返し並んでフィン列を形成している。なお、第1の方向235と第2の方向236との間は直角で定義されている。
【0046】
このフィン列において、フィン部239同士の間に前述したように所定のフィン間隔234が設けられ、この所定の間隔234部分にスリット234aが形成されている。これは、後述で説明するフィン製造工程で板金に抜き加工を行った部分である。
【0047】
複数のフィン部239同士は、フィン連結部238で接続されている。フィン連結部238を設けることで、フィン230を一枚の板から加工形成でき、生産性を向上させることができる。なお、フィン230の製造方法については
図12で後述する。フィン側面部232は、第2の方向236と平行な一直線上に形成される。このようにすることで、板金プレスなどを用いて機械加工でフィン230を製作する場合、直線状に加工するだけで形成できるため金型が簡素化でき、生産性が向上する。
【0048】
第1の方向235および第2の方向236は、いずれも冷却水流れ方向200に対して鋭角をなす。つまり、フィン230が冷却水200の流れに対して傾斜している構造になっている。このようにすることで、フィン230の壁面部分近傍の流速を上げることで放熱性能を上げることができる。
【0049】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る、冷却水路における冷却水の流れ模式図である。
【0050】
冷却水200の矢印の大きさは流速を表し、速さが大きいほど矢印の長さが長くなるように図示されている。第2の方向236と冷却水流れ方向がなす角θが、0°より大きく90°より小さくする(鋭角)にするように、冷却水の流れ200に対してフィン230は傾斜して配置され、フィン間隔234に流れた冷却水200がフィン側面部232にあたるようにしている。このようにすることで、フィン側面部232近傍の流速が上がり、高い冷却性能が得られる。冷却水200が流れる方向に対してフィン側面部232が平行である(角θが0°)従来技術と比較する検証結果では、本発明の構成では、熱伝達解析すると熱伝達率の相対値が従来技術よりも60%向上していることがわかった。
【0051】
なお、第2の方向236と冷却水流れ方向がなす角θは15°から75°の間に収めることが冷却性能の向上の上で好ましい。検証では、冷却水の流れに対してフィン230の角度が60°になるように設置する方法が最も性能が高いことが分かった。また、図ではフィン230を左に傾けて配置するような構成で説明しているが、右に傾けて配置する構成でもよい。
【0052】
【0053】
中空の凸形状231は、冷却水内に含まれている可能性があるゴミ(コンタミ)が詰まらないように内部が空洞になっており、その内部に入る最大の円の直径231aを定義する。同様に、第1の方向235に連結部238を介して隣り合うフィン部239同士の間に入る最大の円の直径238bを定義する。このとき、直径238bは、直径231aと同等かそれ以上の大きさである。また、
図10に図示されていないが、フィン間隔234も直径231aと同等かそれ以上の大きさである。このようにすることで、フィン間隔234上、あるいはフィン連結部238上でもゴミ詰まりが防止できる。
【0054】
なお、直径231a、直径238b、フィン間隔234、を略同一大きさに統一して、フィン個数をできるだけ多く放熱面を増加させることで冷却性能をさらに向上させることも可能である。また、第2水路ベース220の厚さ方向(紙面上下方向)とフィン側面部232とがなす角φは、板金プレス成型性を考えると0°以上が好ましい。
【0055】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る、冷却水路の構造図である。
【0056】
流路210において、フィン230と流路ベース220との間にフィンプレート270(拡大
図D参照)を設置する。フィンプレート270は溝部270aを有し、溝部270aの側面には互いに対向する凸部271が形成されている。この溝部270aは、フィン230の中空231部分に合わせて凸部271が形成されている(
図11(b)参照)構造で、これにより中空231部分の底部に凸部271が重なる構造になっている。凸部271同士の間の幅270bは、直径231aよりも小さくなっている。
【0057】
このような構成により、冷却水200の局所的に乱流流速を上げて冷却性能を上げることができるため、放熱性能を向上させられる。また、フィンプレート270を備えることにより、放熱表面積を増やすことができる。さらに、コンタミ詰まりなどの問題も解消できる。なお、本構成によれば、フィンプレート270を備えない構成に比べて熱伝達率が17%向上したという検証結果がでた。
【0058】
図12は、本発明のフィン製造工程を説明する図である。
【0059】
第2フィン230の製造方法として、生産性を考慮すると板金プレスが好ましい。第2フィン230の製造工程は、抜き工程(a)、曲げ工程(b)、外形トリム工程1(c)、外形トリム工程2(d)に分かれる。なお、外形トリム工程1と外形トリム工程2は、同時に実施されてもよい。
【0060】
まず抜き工程において、第2フィン230は1枚の板材の辺に沿って所定の間隔で長方形状の抜き加工することで、板上にフィン間隔234とフィン連結部238が形成される。
【0061】
次に曲げ工程において、板材の長手方向に対してフィン部239を曲げ加工することによって中空の凸形状231が形成される(
図12(a)(b)のフィン平面視点230aを参照)。なお曲げ加工は、それぞれのフィン列ごとに実施しても良いし、一括で実施してもよい。
【0062】
次に外形トリム工程において、扁平通路内に収まるように板材に対して斜め方向に切り取る加工、言い換えればフィン外形241が第2の方向236と冷却水流れ方向200がなす角θになるように、抜き加工する。この時フィン部239には、フィン側面部232がフィン連結部238と連結していない不完全フィン部240が形成される。
【0063】
最後に外形トリム工程2において、前工程で生じた不完全フィン部240を抜き加工により除去する。不完全フィン部240は、部品の輸送中に取り扱いで容易に変形して、不良品になる可能性が高いため、除去することで取り扱いが容易になり、生産性が向上する。外形トリム工程2後、フィン外形241にフィン位置決め部237が形成され、流路内に収められる形状になる。
【0064】
このようなフィン製造方法を採用することで、材料の直角方向に曲げる簡易な工程を用いて冷却水の流れに対して傾斜しているフィンを作ることが可能であり、複数のフィン部239が第2方向236に繰り返し並列し、フィン部材が連続形成される本発明の構成を実現できる。
【0065】
以上説明した本発明の第1および第2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0066】
(1)扁平通路内に熱伝達性を有するインナーフィン130,230を配置した熱交換器において、インナーフィン130,230は、天面部233と側面部232とによって形成される凸形状231を有し、かつ凸形状231の内側に中空を有する複数のフィン部239で形成され、複数のフィン部239同士は、連結部238を介して一続きに形成されて並ぶ方向を第1の方向235、複数のフィン部239同士の間にスリット234aが形成されて並ぶ方向を第2の方向236、と定義した場合、第2の方向236において所定の間隔234を空けて配置され、インナーフィン130,230は、第1の方向235及び第2の方向236が扁平通路内に流れる冷媒の流れに対してそれぞれ鋭角になるように配置されている。このようにしたことで、放熱性能を向上させた熱交換器を提供できる。
【0067】
(2)複数のフィン部239において、中空に入る最大の円の直径を第1の直径231a、隣り合うフィン部239のそれぞれの側面部232同士の間をつなぐ連結部238に入る最大の円の直径を第2の直径238b、と定義すると、第2の直径238bは、第1の直径231aと同じかそれ以上の大きさである。このようにしたことで、フィン間隔234上、あるいはフィン連結部238上でゴミ詰まりが防止できる。
【0068】
(3)扁平通路内において、扁平通路下部220とインナーフィン130,230との間に、複数の溝部270aを有したフィンプレート270を備える。このようにしたことで、冷却水200の局所的に乱流流速を上げて冷却性能を上げることができるため、放熱性能を向上させられる。また、放熱表面積を増やすことができる。さらに、コンタミ(ゴミ)詰まりを防止できる。
【0069】
(4)フィンプレート270の溝部270aには、複数の凸部271が形成され、向かい合う複数の凸部271同士の間の幅270bは、第1の直径231aよりも小さい。このようにしたことで、冷却水200の局所的に乱流流速を上げて冷却性能を上げることができる。
【0070】
(5)電力変換装置1は、本発明の熱交換器を備えている。そのため、電力変換装置1を実装する車両等に本発明を適用できる。
【0071】
(6)熱交換器の扁平通路内に配置されて熱伝達性を有する熱交換機用インナーフィン130,230の製造方法は、熱伝導性の板材の辺に沿って所定の間隔で長方形状の抜き加工を行う第1工程と、板材の長手方向に対して曲げ加工を行い複数のフィン部239を形成する第2工程と、扁平通路内に収まるように板材を辺に対して斜め方向に切り取る第3工程と、第3工程の切り取りで生じた不完全な複数のフィン部240を除去する第4工程と、を含む。このようにしたことで、本発明の熱交換器が実現できる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 電力変換装置
2 直流電源(バッテリ)
3 コンデンサ
4 制御装置
6 モータ
110 第1水路
111 第1水路接続部
120 第1水路ベース
121 第1水路ベース開口
122 第1水路ベース放熱面
130 第1フィン
150 第1水路カバー
151 第1水路カバー開口
160 第1パイプ
161 第1パイプ開口
162 シール材収容部
170 水路接続フランジ
171 水路開口
172 水路取り付け穴
173 水路取り付け面
200 冷却水(の流れる方向)
210 第2水路
211 第2水路接続部
220 第2水路ベース
221 第2水路ベース開口
222 第2水路ベース放熱面
230 第2フィン
230a フィン平面視点
231 中空の凸形状
231a 中空の凸形状の直径
232 フィン側面部
233 フィン天面部
234 フィン間隔
234a スリット
235 第1の方向
236 第2の方向
237 フィン位置決め部
238 フィン連結部
238b フィン連結部の直径
239 フィン部
240 不完全フィン部
241 フィン外形
250 第2水路カバー
260 第2パイプ
270 フィンプレート
270a 溝部
270b フィンプレート凸部同士の間の幅
271 フィンプレート凸部
271a フィンプレート隙間
280 フィン流路
300 モールド体
400 シール材