(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20241111BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241111BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20241111BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241111BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241111BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20241111BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W16/28
H02J50/20
H02J50/40
H02J50/80
H04W88/08
(21)【出願番号】P 2023543735
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2022026905
(87)【国際公開番号】W WO2023026698
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021136725
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 弘一
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-515525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0313469(US,A1)
【文献】特開2013-207365(JP,A)
【文献】特表2017-507508(JP,A)
【文献】中国実用新案第213938347(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体無線装置と無線通信を行うと共に、
光ケーブルを介して集約装置に接続する固定無線機を有する無線通信システムであって、
前記移動体無線装置へのワイヤレス給電を行うワイヤレス給電装置
と、前記ワイヤレス給電装置に電力を供給する給電装置とを備え、
前記固定無線機は
、前記ワイヤレス給電装置に接続し、
前記移動体無線装置からの受信電力の電力値に基づいて当該受信電力の検出の有無を判定し、前記移動体無線装置の受信電力を検出
したと判定した場合には前記ワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を行い、前記移動体無線装置からの受信電力を検出しないと判定した場合には前記ワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を停止することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
固定無線機は、アンテナの指向性に応じてワイヤレス給電装置における給電放射の指向性を制御することを特徴とする請求項1記載の無線送信システム。
【請求項3】
固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の電力値と設定された電力閾値とを比較し、前記電力閾値を基準にして前記受信電力の電力値の大小により
当該受信電力の検出の有無を判定し、ワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電の実施又は停止を制御することを特徴とする請求項
1記載の無線通信システム。
【請求項4】
固定無線機は、集約装置が接続する上位装置から受信した電力閾値が設定されることを特徴とする請求項
3記載の無線通信システム。
【請求項5】
固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の値を演算して上位装置に送信し、前記受信電力の値に基づいて前記上位装置が判定した電力閾値を前記上位装置から受信して設定することを特徴とする請求項
4記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記給電装置は、前記ワイヤレス給電装置に電力を供給するものの、前記固定無線機には電力を供給しないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に効率的にワイヤレス給電を行うことができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
無線通信に対する3GPP(登録商標)(3rd Generation Partnership Project)、3GPP(登録商標) LTE(Long Term Evolution)無線規格に対応して、RRH(Remote Radio Head)、ROF(Radio Over Fiber)、DAS(Distributed Antenna System:分散型アンテナシステム)等のシステムに代表される光伝送装置がある。
【0003】
光伝送装置は、SlavePort光変換部、並びにMasterPort光変換部を備え、光トランシーバを搭載して、親局(親機)と子局(子機)との間でデータ通信を行う機能を有する。そして、これらの光伝送装置には、高速シリアル通信規格である、SERDES(SERializer/DESerializer)、CPRI(Common Public Radio Interface)などの技術を用いたものがある。
【0004】
光伝送装置は、例えば、移動機と無線通信を行う複数の子機(アンテナ装置)が、光ケーブルによって親機に接続されたアンテナ張出し無線通信システムに用いられる。
アンテナ装置は指向性アンテナを備えた無線機であり、DAS装置又はROF装置を用いたものがある。
【0005】
アンテナ張出し無線システムは、基地局からの電波を、光ケーブルを介して複数の子機に分配することにより、通信可能エリアを拡張するものであり、ビル内、トンネル、地下等の電波の届きにくい閉環境において広く利用されている。
【0006】
[ワイヤレス給電]
また、近年、ケーブルを介さずに電力を伝送して、スマートフォン、電気自動車等に給電するワイヤレス給電の技術がある。
ワイヤレス給電の方式としては、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式等がある。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2014-150388号公報「無線通信装置、制御方法及び制御プログラム」(特許文献1)、特開2008-148520号公報「携帯機器」(特許文献2)がある。
【0008】
特許文献1には、指向性アンテナのビーム角度を自律的に調整する無線通信システムにおいて、高速にビーム角度を調整可能な指向性制御方法が示されている。
また、特許文献2には、種別の異なる携帯機器に対して1台の非接触充電装置で充電可能とする携帯機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-150388号公報
【文献】特開2008-148520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のアンテナ張出し無線システムでは、ワイヤレス給電を提供する構成はなく、不便であるという問題点があった。
【0011】
尚、特許文献1及び特許文献2には、アンテナ張出し無線システムにおいて、ワイヤレス給電を効率的に行う構成は記載されていない。
【0012】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、アンテナ張出し無線システムにおいてワイヤレス給電を効率的に行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の移動体無線装置と無線通信を行うと共に、光ケーブルを介して集約装置に接続する固定無線機を有する無線通信システムであって、移動体無線装置へのワイヤレス給電を行うワイヤレス給電装置と、ワイヤレス給電装置に電力を供給する給電装置とを備え、固定無線機は、ワイヤレス給電装置に接続し、移動体無線装置からの受信電力の電力値に基づいて当該受信電力の検出の有無を判定し、移動体無線装置の受信電力を検出したと判定した場合にはワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を行い、移動体無線装置からの受信電力を検出しないと判定した場合にはワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を停止することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、固定無線機は、アンテナの指向性に応じてワイヤレス給電装置における給電放射の指向性を制御することを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の電力値と設定された電力閾値とを比較し、前記電力閾値を基準にして前記受信電力の電力値の大小により当該受信電力の検出の有無を判定し、ワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電の実施又は停止を制御することを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、固定無線機は、集約装置が接続する上位装置から受信した電力閾値が設定されることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の値を演算して上位装置に送信し、受信電力の値に基づいて上位装置が判定した電力閾値を上位装置から受信して設定することを特徴としている。
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、給電装置は、ワイヤレス給電装置に電力を供給するものの、固定無線機には電力を供給しないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の移動体無線装置と無線通信を行うと共に、光ケーブルを介して集約装置に接続する固定無線機を有する無線通信システムであって、移動体無線装置へのワイヤレス給電を行うワイヤレス給電装置と、ワイヤレス給電装置に電力を供給する給電装置とを備え、固定無線機は、ワイヤレス給電装置に接続し、移動体無線装置からの受信電力の電力値に基づいて当該受信電力の検出の有無を判定し、移動体無線装置の受信電力を検出したと判定した場合にはワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を行い、移動体無線装置からの受信電力を検出しないと判定した場合にはワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電を停止する無線通信システムとしているので、移動機の動きに応じてワイヤレス給電のオン/オフや給電放射の指向性を制御して、効率的なワイヤレス給電を実現することができ、無駄な給電動作を行うことなく、消費電力を抑えることができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、固定無線機は、アンテナの指向性に応じてワイヤレス給電装置における給電放射の指向性を制御する上記無線通信システムとしているので、固定無線機が設置された場所の形状に応じて、給電放射の角度やビーム幅を調整して、効率的なワイヤレス給電を実現できる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の電力値と設定された電力閾値とを比較し、前記電力閾値を基準にして前記受信電力の電力値の大小により当該受信電力の検出の有無を判定し、ワイヤレス給電装置でのワイヤレス給電の実施又は停止を制御する上記無線通信システムとしているので、簡易な処理でワイヤレス給電の実施/停止を制御することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、固定無線機は、集約装置が接続する上位装置から受信した電力閾値が設定される上記無線通信システムとしているので、上位装置から各固定無線機における閾値を随時変更でき、システム全体で効率的なワイヤレス給電を実現できる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、固定無線機は、移動体無線装置からの受信電力の値を演算して上位装置に送信し、受信電力の値に基づいて上位装置が判定した電力閾値を上位装置から受信して設定する上記無線通信システムとしているので、移動機の数やシステム内の分布に応じて、個々の固定無線機での閾値を随時変更でき、実際の移動機の動きに合わせてワイヤレス給電を動的に制御して、システム全体における効率を一層向上させることができる効果がある。
また、本発明によれば、給電装置は、ワイヤレス給電装置に電力を供給するものの、固定無線機には電力を供給しない上記無線通信システムとしているので、ワイヤレス給電装置のオン/オフに伴う電力変動が固定無線機の動作に影響を与えるのを防ぐことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本無線通信システムの概略構成(1)を示す説明図である。
【
図2】本無線通信システムの概略構成(2)を示す説明図である。
【
図4】第1の子機3aにおける給電装置制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】第2の子機3bの動作を示すフローチャートである。
【
図8】第3の子機3cの動作を示すフローチャートである。
【
図9】ワイヤレス給電部を子機給電装置に内蔵した構成を示す説明図である。
【
図10】第4の子機3dの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、複数の移動機と無線通信を行うと共に、集約装置となる親機に接続する子機を備え、当該子機が、移動機へのワイヤレス給電を行うワイヤレス給電装置に接続し、移動機の受信電力を検出して、ワイヤレス給電装置における給電を制御するものであり、移動機の動きに応じて自律的にワイヤレス給電のオン/オフや給電放射の指向性を制御して、効率的なワイヤレス給電を実現することができるものである。
【0027】
[本無線通信システムの概略構成:
図1,
図2]
本無線通信システムの概略構成について
図1,
図2を用いて説明する。
図1は、本無線通信システムの概略構成(1)を示す説明図であり、
図2は、本無線通信システムの概略構成(2)を示す説明図である。
図1,2に示すように、本無線通信システムは、上位装置1と、親機2と、複数の子機3と、給電装置5と、ワイヤレス給電装置6と、光ケーブル10とを備えている。尚、複数の子機3は、複数の移動機4と無線接続する。
ここで、子機は請求項に記載した固定無線機に相当し、親機は集約装置に相当している。
【0028】
上位装置1は、サーバ等の装置であり、親機2を介して複数の子機3の管理、制御を行う。
親機2は、光ケーブル10を介して複数の子機3に接続しており、光ケーブル10を介して受信し、復調したデータを無線信号に変換して基地局等に送信する。
また、親機2は、基地局等からの無線信号を受信して光信号に変換して子機3に送信する。
更に、親機2は、アンテナ張出し無線システムの集約装置となっており、複数の子機3と上位装置1との間の通信を仲介し、子機3からの情報を集約して上位装置1に送信し、上位装置1からのデータを各子機3に送信する。
【0029】
子機3は、親機2に光ケーブル10によって接続され、アンテナを介して移動機4と無線通信を行う。また、子機3は、後述するワイヤレス給電装置6に接続して、ワイヤレス給電のオン(起動、実施)/オフ(停止)や、給電放射の指向性を制御する。子機3の動作については、後述する。
【0030】
子機3のアンテナは、後述するように、指向性を備えており、適切なビームエリアを形成するようになっている。
図1の例では、複数の子機3が天井や壁に設置されており、設置場所の広さや奥行きといった形状に応じて、アンテナビームの向きや広がりが設定されている様子を示している。
上位装置1と親機2とは有線又は無線で接続し、親機2と子機3とは光ケーブル10で接続されている。
【0031】
更に、本無線通信システムの特徴として、各子機3に接続するワイヤレス給電装置6が設けられている。
ワイヤレス給電装置6は、ワイヤレス給電用アンテナを備え、移動機4に対してワイヤレスで給電を行うものである。ワイヤレス給電の方法は、例えば電波受信方式としている。
また、ワイヤレス給電装置6に電力を供給する給電装置5を備えている。尚、
図1,2では、子機3に電力を供給する給電装置及び給電線は省略している。
【0032】
図2に示すように、各子機3の無線通信サービスエリア内に移動機4がいる場合に、移動機4と子機3とが無線通信を行う。
図2では、移動機4からの電波が子機3に受信される様子を示している。
本無線通信システムの特徴として、子機3は、受信信号の電力を算出して、移動機4の存在の有無を確認し、移動機4が存在すると判断した場合に、ワイヤレス給電装置6を起動する。
また、子機3は、受信電力が低いと判断した場合にはワイヤレス給電装置6の動作を停止する。
【0033】
本無線通信システムの子機3としては、ワイヤレス給電装置6の制御に用いる閾値の設定方法や、給電放射の制御によって第1の子機3a、第2の子機3b、第3の子機3c、第4の子機3dがあり、以下、順に説明する。
尚、第1~第4の子機(3a,3b,3c,3d)を区別しない場合には、子機3と記載することもある。
【0034】
[第1の子機:
図3]
第1の子機3aの構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1の子機の構成を示す説明図である。
図3では、ワイヤレス給電装置6に対する制御に関連する部分のみを示している。
図3に示すように、第1の子機3aは、無線処理本体部31と、アンテナ32とを備え、無線処理本体部31には、無線処理部33と、電力演算部34と、判定部35と、給電装置制御部36とが設けられている。
【0035】
また、第1の子機3aは、ワイヤレス給電装置6と接続されている。但し、上述したように、第1の子機3aとワイヤレス給電装置6に対する電源はそれぞれ独立している。
ワイヤレス給電装置6のワイヤレス給電用アンテナ61は、内蔵されている。
【0036】
無線処理本体部31は、移動機4との無線通信、親機2との有線通信、更に本無線通信システムの特徴部分であるワイヤレス給電装置6の制御に伴う各種処理を行う部分である。
アンテナ部32は、指向性アンテナであり、移動機4との無線送受信を行う。
無線処理部33は、無線送受信に伴う信号処理、A/D変換、D/A変換、変復調、アップコンバート、ダウンコンバートを行う。
電力演算部34は、無線処理部33からの復調信号を入力して、演算により電力値を算出する。この電力値は、アンテナ32で受信した移動機4からの無線信号の受信電力値である。
【0037】
判定部35は、内部に設定されている閾値と電力演算部34で算出された電力値とを比較して、電力値が閾値より大きいか否かを判定し、判定結果に基づいて、ワイヤレス給電装置6の動作のオン/オフを指定(指示)する情報を出力する。尚、第1の子機3aでは、閾値は予め判定部35に設定され、内部の記憶部に記憶されているものとする。
【0038】
給電装置制御部36は、判定部35からの指示に従って、ワイヤレス給電装置6のアンテナ61からの給電放射のオン/オフを制御する。
子機3においてワイヤレス給電装置6の動作のオン/オフを制御する処理を、給電装置制御処理と称するものとする。
【0039】
これにより、第1の子機3aでは、当該子機3aの近傍に移動機4がいて電力値が大きい場合(移動機4からの受信電力を検出した場合)に、ワイヤレス給電装置6の動作をオンとして、給電サービスを実施することができ、近傍に移動機4がおらず、電力値が小さい場合(移動機4からの受信電力を検出しない場合)にはワイヤレス給電装置6の動作を停止させて、無駄な電力を消費させず、効率の良いワイヤレス給電を実現することができるものである。
【0040】
特に、本無線通信システムでは、子機3が自律的にワイヤレス給電装置6の制御を行うので、親機2や上位装置1の処理負荷が増大せず、システム全体として効率の良いワイヤレス給電を実現できるものである。
【0041】
また、子機3への給電装置と、ワイヤレス給電装置6への給電装置とを異なるものとしているので、ワイヤレス給電装置6のオン/オフに伴う電力変動が子機3の動作に影響を与えるのを防ぐことができるものである。
【0042】
[給電装置制御処理:
図4]
次に、第1の子機3aにおける給電装置制御処理について
図4を用いて説明する。
図4は、第1の子機3aにおける給電装置制御処理を示すフローチャートである。
給電装置制御処理は、第1の子機3aだけでなく、第2~第4の子機にも共通する処理であるが、ここでは第1の子機3aを例として説明する。
【0043】
図4に示すように、第1の子機3aの判定部35は、まず、電力値と比較するための閾値を取得する(S11)。第1の子機3aの場合には、判定部35の内部に記憶されている閾値を読み出す。
また、後述するように、第2の子機3b、第3の子機3cの場合には上位装置1や親機2から指定された閾値を取得する。
第4の子機3dでは、閾値は内部に記憶されていてもよいし、上位装置1や親機2から指定された値を取得してもよい。
【0044】
そして、第1の子機3aの無線処理部33が、アンテナ32で受信した信号を復調し(S12)、判定部35が、復調された信号に基づいて、受信信号の電力値を算出して閾値と比較し、電力値が閾値より大きいか否かを判定する(S13)。
【0045】
判定部35は、判定結果に基づいて、給電装置制御部36に対して、ワイヤレス給電装置6の起動オン/オフを指示する情報を出力する(S14)。上述したように、電力値が閾値より大きい場合には、ワイヤレス給電装置6の給電動作を起動(又は継続)させ、電力値が閾値より小さい場合にはワイヤレス給電装置6の給電動作を停止させるよう、指示を出力する。
【0046】
給電装置制御部36は判定部35からの指示に従って、ワイヤレス給電装置6を制御する。
このようにして、本無線通信システムの第1の子機3aにおける給電装置制御処理が行われるものである。
【0047】
[第2の子機:
図5]
次に、第2の子機3bの構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、第2の子機3bの構成を示す説明図である。
図5において、第1の子機3aと同様の部分については同一の符号を付しており、説明は省略する。
【0048】
図5に示すように、第2の子機3bは、
図4に示した第1の子機3aの構成に、更に上位の親機2に接続する有線インタフェース部38を備えたものである。
有線インタフェース部38は、親機2に接続する光ケーブル10に接続して、親機2からの信号を受信するインタフェースであり、光信号を電気信号に変換して出力する。
【0049】
上述した第1の子機3aは、受信電力の電力値を判定する閾値が予め内部に記憶されていたが、第2の子機3bでは、上位装置1から親機2を介して受信した値を取得して閾値として用いる。
【0050】
つまり、第2の子機3bでは、有線インタフェース部38が、親機2からの光信号を受信して電気信号に変換し、閾値の情報を取り出して電力演算部34を介して判定部35に出力する。
判定部35は、入力された閾値を内部に記憶しておき、新たな閾値が入力された場合には、記憶されている閾値を新しい閾値で更新する。
【0051】
[第2の子機3bの動作(閾値設定処理):
図6]
次に、第2の子機3bの動作について
図6を用いて説明する。
図6は、第2の子機3bの動作を示すフローチャートである。尚、
図6に示した第2の子機3bの処理を閾値設定処理と称するものとする。
図6に示すように、第2の子機3bは、上位装置1又は親機2から閾値が設定されると(S21)、有線インタフェース部38によりこれを受信して復調する(S22)。
そして、
図4に示した給電装置制御処理に移行して(S23)、処理S22で復調した閾値を用いて電力値と比較判定を行い、ワイヤレス給電装置6の動作をオンまたはオフさせる。
このようにして、第2の子機3bの動作が行われるものである。
【0052】
これにより、第2の子機3bでは、予め子機3に設定されている閾値を、上位装置1によって任意に変更可能であり、例えば、エリアに応じて給電を行うワイヤレス給電装置6の台数を制限して、省電力を図ることが可能となるものである。
具体的には、特定のワイヤレス給電装置6の閾値を極端に大きい値とすることで、当該ワイレス給電装置6の給電動作はオフとなり、台数制限が可能となる。
【0053】
[第3の子機:
図7]
次に、第3の子機3cの構成について、
図7を用いて説明する。
図7は、第3の子機3bの構成を示す説明図である。
図7において、第1の子機3a、第2の子機3bと同様の部分については同一の符号を付しており、説明は省略する。
第3の子機3cでは、受信信号の電力値を算出すると、当該電力値を光ケーブル10を介して親機2に送信し、上位装置1において、他の子局3の電力値も含めて総合的に判断して適切な閾値を決定し、当該閾値が第3の子機3c宛に送信されると、これを受信して閾値として用いるものである。
【0054】
そのため、第3の子機3cでは、
図7に示すように、第2の子機3bの構成に加えて、算出した電力値を送信するための変換を行う変調部39と、光ケーブル10を介して電力値を含む光信号を送信する有線インタフェース部37とを新たに備えている。
【0055】
そして、第3の子機3cでは、無線処理部33で受信信号を復調し、電力演算部34で電力値を算出すると、変調部39で当該電力値を光伝送に適した伝送用コードに変換して、有線インタフェース部37から光ケーブル10を介して親機2に送信し、更に上位装置1に当該電力値が送信される。
【0056】
上位装置1では、複数の子機3からの電力値を受信して集約し、システム全体の消費電力等を考慮して、電力値の送信元である第3の子機3cの適切な閾値を決定し、閾値を第3の子機3cに送信する。
上位装置1は、例えば、複数の子局3からの電力値の総量が給電装置5の電源供給の上限値に近づいている場合には、閾値を高めに設定して給電動作を制限し、逆に電源供給量に余裕があると判断した場合には閾値を低めに設定する。
つまり、上位装置1は、子機3cからの電力値の大小に応じて、各子機3cでの閾値を適宜変更して、全体の電源供給量を調整している。
【0057】
このように、第3の子機3cを用いることで、上位装置1において複数の子局3cの受信電力の値を取得して、様々な観点から総合的に判断して、各子機3cの閾値を設定するようにしているので、人の動きに合わせてワイヤレス給電の微調整を行うことができるものである。
【0058】
例えば、上位装置1が、蓄積した電力値のデータに基づいて、エリアごとにワイヤレス給電動作を行う時間帯を設定するよう各子機3の閾値を決定することも可能である。
また、ショッピングモール等のエリア区分けがしばしば変更になる空間においても、変更後の配置での電力値に基づいて、閾値を随時変更して、効率的な運用を可能とするものである。
【0059】
[第3の子機3cの動作:
図8]
次に、第3の子機3cの動作について
図8を用いて説明する。
図8は、第3の子機3cの動作を示すフローチャートである。
第3の子機3cでは、無線信号を受信すると、無線処理部33が復調を行い(S31)、電力演算部34が電力値を算出し(S32)、当該電力値を変調部39で変調して、有線インタフェース部37で光信号に変換して光ケーブル10を介して親機2へ送出する(S33)。
【0060】
親機2は、複数の子機3からの電力値を集約して、例えば定期的に上位装置1に送信し、上位装置1では、総合的な判断により各子機3の閾値を決定する。
そして、第3の子機3cは、
図6に示した閾値設定処理に移行して(S34)、上位装置1から受信した閾値を用いてワイヤレス給電装置6の給電動作のオン/オフを制御する。
このようにして、第3の子機3cの動作が行われるものである。
【0061】
[ワイヤレス給電部を子機給電装置に内蔵した構成:
図9]
上述した例では、ワイヤレス給電装置6が、子機3の給電装置とは別に独立して設けられた構成であったが、子機3の給電装置と一体に形成する構成(内蔵タイプ)も可能である。
子機給電装置に内蔵した構成について
図9を用いて説明する。
図9は、ワイヤレス給電部を子機給電装置に内蔵した構成を示す説明図である。
尚、
図9では、子機3として、第1の子機3aの構成を示しているが、第2~第4の子機であっても構わない。
【0062】
図9に示すように、内蔵タイプでは、子機3に電源を供給する子機給電装置7の内部に、移動機4にワイヤレス給電を行うワイヤレス給電部71を備えている。
そして、上述した第1~第3の子機と同様に、子機3の判定部35が受信信号の電力値と閾値とを比較して、ワイヤレス給電のオン/オフを判定して指示を出力し、給電装置制御部36が当該指示に基づいてワイヤレス給電部71の動作のオン/オフを制御する。
【0063】
内蔵タイプでは、子機3への電源とワイヤレス給電部71への電源とを共通としているので、構成を大幅に簡易にすることができるものである。
但し、子機3への影響を抑えるために、ワイヤレス給電部71における消費電力の変動があまり激しくないことが望ましい。
【0064】
[第4の子機:
図10]
次に、第4の子機3dの構成について
図10を用いて説明する。
図10は、第4の子機3dの構成を示す説明図である。
第4の子機3dは、第1~第3の子機と同様に、受信電力の値に基づいてワイヤレス給電装置6の給電動作のオン/オフを行うものであるが、更に、指向性アンテナの指向性(ビーム角度、ビーム幅)を自律的に制御し、それに合わせてワイヤレス給電装置6における給電放射の指向性を制御するものである。
【0065】
つまり、第4の子機3dは、第1の子機3a、第2の子機3b、第3の子機3dのいずれかの構成に、アンテナ部及び給電放射の指向性を制御するための構成を加えたものとなる。
図を簡単にするために、
図10では、第1の子機3a、第2の子機3b、第3の子機3dで説明した構成は記載せず、アンテナ部32及びワイヤレス給電装置6の給電放射の指向性を制御するための構成のみを記載している。
【0066】
第4の子機3dにおける、指向性を制御するための構成について説明する。
無線処理本体部31は、無線処理部33と、補正部42と、センサ部43と、フォーミングパラメータ選択部44と、復調部41と、変調部39と、有線インタフェース部37と、有線インタフェース部38とを内蔵している。
【0067】
無線処理部33は、A/D変換、D/A変換、RF信号変換の機能を備え、有線インタフェース部37を介して親機2からの信号を入力して復調処理を行って受信し、更に変調処理を行ってアンテナ部32に出力して移動機4に送信する。
また、無線処理部33は、アンテナ部32から入力された移動機4からの信号を復調処理して受信し、更に変調処理して有線インタフェース部37から親機2に送信する。
【0068】
無線処理部33は、フォーミングパラメータ選択部44から設定されるパラメータに従い、指向性アンテナのビームを形成する。
具体的には、補正部42で、センサ部43からの検出データに基づいて、垂直方向のビーム方向・幅が補正され、上位装置1からの指示のデータに基づいて、水平方向のビーム方向・幅が補正される。尚、上位装置1からの指示のデータで垂直方向のビーム方向・幅を補正してもよい。
【0069】
つまり、補正部42で、補正値によりパラメータが修正され、修正したパラメータをフォーミングパラメータ選択部44が選択して、無線処理部33に設定して、上記のビームの方向・幅の補正が実現される。従って、補正部42は、フォーミングパターンを補正し、フォーミングパラメータ選択部44は、フォーミングパターンを選択するものである。
【0070】
センサ部43は、三軸センサ(加速度センサ)であり、子機3dの傾き、設置方向の情報を検出する。
また、センサ部43に温度センサを含め、特定のしきい値以上の温度になったか否かを検出する。この温度センサの検出結果も指向性アンテナのビーム方向制御に関係する。詳細は後述する。
【0071】
補正部42は、センサ部43からの傾き、設置方向の情報に基づいて垂直方向のビーム角度・幅の補正を行う補正値を取得する。補正部42には、レジストリ(対応テーブル)を備え、傾き、設置方向の情報に対応する補正値を出力するようになっている。つまり、補正部42で、指向性アンテナのビーム方向を形成するビームフォーミングパラメータにレジストリから得られる補正値を加算することになる。
【0072】
ここで、傾きは、子機3dの傾き具合(傾き状態)を示す数値であり、設置方向は、天井、壁又は床等の設置位置から得られるアンテナが向けられた方向を示すものである。
つまり、補正部42は、ビームフォーミングパラメータに補正値を加算し、フォーミングパラメータ選択部44に加算されたフォーミングパラメータを出力する。
【0073】
また、補正部42は、センサ部43の温度センサが特定のしきい値以上の温度になったことを検出すると、指向性アンテナのビーム方向の制御を行わず、無指向性とする。
これは、例えば、天井近辺で熱がこもって特定のしきい値以上の温度になると、熱を消費する指向性制御を停止して、熱が上がらないようにするための措置である。
【0074】
フォーミングパラメータ選択部44は、無線で行うビーム形成(ビームフォーミング)のためのパラメータを選択して無線処理部33に設定する。
復調部41は、上位装置1からの設定パラメータを有線インタフェース部38から入力して復調し、補正部42に出力する。
変調部39は、設定パラメータを変調して上位装置1向けの伝送用コードに変換して有線インタフェース部37に出力する。
【0075】
また、第4の子機3dに接続されるワイヤレス給電装置6は、入力されたフォーミングパラメータに基づいて、ワイヤレス給電用アンテナ61から放射される給電用ビームのビーム方向やビーム幅を可変するものである。
【0076】
[第4の子機3dの動作]
第4の子機3dの動作について説明する。
第4の子機3dは、起動時に、センサ部43を起動すると、センサ部43がセンサ値を取得して補正部42に出力し、補正部42が補正値を計算し、レジストリ値を加算してフォーミングパラメータを求める。
そして、フォーミングパラメータ選択部44が、補正部42からの補正値が加算されたフォーミングパラメータを入力し、そのフォーミングパラメータを決定(選択)し、無線処理部33及びワイヤレス給電装置6にパラメータを設定する。
【0077】
また、第4の子機3dでは、上位装置1からビームフォーミングの設定パラメータを送信してフォーミングパラメータを補正することも可能であり、有線インタフェース部38で受信した上位装置1の設定パラメータを復調部41が復調し、復調した設定パラメータで補正部42のレジストリ値を更新する。
【0078】
そして、無線処理部33は、設定されたフォーミングパラメータに従ってアンテナ部32のビームを形成し、ワイヤレス給電装置6は、設定されたフォーミングパラメータに従って、ワイヤレス給電用アンテナ61の給電用のビームを形成する。
【0079】
これにより、第4の子機3dでは、設置場所(天井、壁、床等)に応じて適切なワイヤレス給電用のビームを形成することができ、一層効率的にワイヤレス給電を行うことができるものである。
【0080】
尚、本無線通信システムでは、移動機4からの無線信号を復調して電力値を算出し、閾値と比較していたが、応用例として、子機3における受信電界強度に基づいてワイヤレス給電装置6の制御を行うようにしてもよい。
【0081】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、複数の移動機4と無線通信を行うと共に、集約装置となる親機2に接続する子機3を備え、当該子機3が、移動機4へのワイヤレス給電を行うワイヤレス給電装置6に接続し、移動機4の受信電力を検出して、ワイヤレス給電装置6における給電を制御するものであり、移動機4の動きに応じて自律的にワイヤレス給電のオン/オフや給電放射の指向性を制御して、効率的なワイヤレス給電を実現することができる効果がある。
【0082】
この出願は、2021年8月24日に出願された日本出願特願2021-136725を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、アンテナ張出し無線システムにおいて、効率的にワイヤレス給電を行うことができる無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0084】
1…上位装置、 2…親機、 3…子機、 4…移動機、 5…給電装置、 6…ワイヤレス給電装置、 7…子機給電装置、 31…無線処理本体部、 32…アンテナ部、 33…無線処理部、 34…電力演算部、 35…判定部、 36…給電装置制御部、 37,38…有線インタフェース部、 39…変調部、 41…復調部、 42…補正部、 43…センサ、 44…フォーミングパラメータ選択部、 61…ワイヤレス給電用アンテナ、 71…ワイヤレス給電部