(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整するための後調整装置および方法ならびに車両用の電気機械式の補助力ステアリング
(51)【国際特許分類】
F16H 55/24 20060101AFI20241111BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241111BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20241111BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F16H55/24
B62D5/04
F16H1/16 Z
F16F15/04 N
(21)【出願番号】P 2023567184
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022060743
(87)【国際公開番号】W WO2022233604
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】102021111600.7
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン オセルカ
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-37094(JP,A)
【文献】実開昭58-85570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/24
B62D 5/04
F16H 1/16
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(300)用の電気機械式の補助力ステアリング(305)のためのウォーム伝動装置(115)のウォームホイール(110)に対してウォーム(105)を自動的に後調整するための後調整装置(100)であって、該後調整装置(100)は、
ガイドロッド(125)にばね力(F1)を加えて前記ガイドロッド(125)を半径方向で前記ウォーム(105)に向かって押圧するように形成されている、ばね(120)と、
前記ばね力(F1)を押圧部材(130)に伝達するための前記ガイドロッド(125)と、
前記ばね力(F1)により生ぜしめられる後調整力を前記ウォーム(105)に加えるべく前記ウォーム(105)のウォーム区分(135)に接触する、前記ガイドロッド(125)に結合された前記押圧部材(130)と、
前記ウォーム(105)から離れて前記ガイドロッド(125)が戻ることを阻止するように構成されているクランプ装置(133)と
の特徴を有している、後調整装置(100)。
【請求項2】
前記押圧部材(130)の、前記ウォーム区分(135)に接触する接触面が、湾曲して形成されている、請求項1記載の後調整装置(100)。
【請求項3】
前記押圧部材(130)は、該押圧部材(130)を前記ガイドロッド(125)に連結するための弾性的なエレメント(170)を有している、請求項1または2記載の後調整装置(100)。
【請求項4】
前記クランプ装置(133)は、前記ウォーム伝動装置(115)の運転中に前記ウォーム(105)と前記ウォームホイール(110)との間のかみ合いに基づいて生じる分離力(Fs)に起因する、前記押圧部材(130)および/または前記ウォーム(105)の逸脱を阻止するように構成されている、請求項1
または2記載の後調整装置(100)。
【請求項5】
貫通開口(180)を備えたハウジング部(177)を有し、前記貫通開口(180)を通って前記ガイドロッド(125)がガイドされている、請求項1
または2記載の後調整装置(100)。
【請求項6】
前記貫通開口(180)の開口部(182)が、円錐形に成形されており、前記クランプ装置(133)の少なくとも1つの楔(185)が、前記開口部(182)内に配置されており、前記クランプ装置(133)の別のばね(187)が、前記楔(185)と前記押圧部材(130)との間に挟み込まれている、請求項5記載の後調整装置(100)。
【請求項7】
前記楔(185)を形成する円錐形の2つのハーフシェルを有する、請求項6記載の後調整装置(100)。
【請求項8】
前記楔(185)は、孔(190)を有しており、該孔(190)を通じて前記ガイドロッド(125)がガイドされている、請求項
6記載の後調整装置(100)。
【請求項9】
軸受長孔(200)を備えた軸受装置(195)を有し、前記軸受長孔(200)内に前記ウォーム区分(135)が収容されている、請求項1
または2記載の後調整装置(100)。
【請求項10】
前記ウォーム(105)および/または前記ウォームホイール(110)を備え、前記ウォーム(105)は、自動調心軸受(150)内に揺動可能に支持されている、請求項1
または2記載の後調整装置(100)。
【請求項11】
モータ(165)、ステアリングロッド機構(310)および前記モータ(165)と前記ステアリングロッド機構(310)とを連結する、請求項1
または2記載の後調整装置(100)を備える、電気機械式の補助力ステアリング(305)。
【請求項12】
車両(300)用の電気機械式の補助力ステアリング(305)のためのウォーム伝動装置(115)のウォームホイール(110)に対してウォーム(105)を自動的に後調整する方法(400)であって、該方法(400)は、
ばね(120)のばね力(F1)をガイドロッド(125)に加えるステップ(405)であって、これにより該ガイドロッド(125)を半径方向で前記ウォーム(105)に向かって押圧する、ステップと、
前記ばね力(F1)を前記ガイドロッド(125)から、該ガイドロッド(125)に結合された押圧部材(130)に伝達するステップ(410)と、
前記ばね力(F1)により生ぜしめられる後調整力を前記ウォーム(105)に加えるために前記ウォーム(105)のウォーム区分(135)に前記押圧部材(130)を接触させるステップ(415)と、
前記ウォームから離れて前記ガイドロッド(125)が戻ることを阻止するステップ(420)と
を有する、方法(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本アプローチは、車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整するための後調整装置と、電気機械式の補助力ステアリングと、ウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを後調整する方法とに関する。
【0002】
独国特許出願公開第102012103857号明細書には、ウォームまたはスクリューピニオンをウォームホイールまたはスクリューギアに対して押し付ける装置が記載されている。ウォームは、軸方向でウォームホイールに押し付けられる。
【0003】
このような背景から、本アプローチの課題は、車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整するための改良された後調整装置、電気機械式の改良された補助力ステアリングおよびウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを後調整するための改善された方法を提供することである。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載の特徴を備えた後調整装置、電気機械式の補助力ステアリングおよび方法によって解決される。
【0005】
本アプローチにより達成可能な利点は、少ない構成部材を使用しながら安定的に機能し、これによってウォーム伝動装置のかみ合い対が遊びなしに保持される、ウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整する可能性が提供されることである。
【0006】
車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整するための後調整装置は、ばね、ガイドロッドおよび押圧部材を有している。ばねは、ガイドロッドにばね力を加えるように形成されており、これによりガイドロッドを半径方向でウォームに向かって押圧することができる。ガイドロッドは、ばね力を押圧部材に伝達するために形成されている。ガイドロッドに結合された押圧部材は、ウォームのウォーム区分に接触するように形成されており、これによりばね力により生ぜしめられる後調整力をウォームに加えることができる。さらに、この後調整装置は、クランプ装置を有しており、このクランプ装置は、ウォームから離れてガイドロッドが戻ることを阻止するように構成されている。これにより、ガイドロッドは、単に1つの方向、すなわちウォームに向かってのみ運動させられてもよく、例えばこれによって摩耗を補償することができる。
【0007】
ウォームは、例えば自動調心軸受内に揺動可能に支持されていてもよい。ばねは、コイルばねであってもよい。ばねは、ばね力をガイドロッドに加えるために、ハウジングエレメントとガイドロッドに設けられたピンとの間に緊締された状態で挟み込まれていてもよい。ガイドロッドは、ロッド形、例えば円筒形に成形されていてもよい。ピンは、円筒形のガイドロッドの延在軸線に対して垂直にガイドロッドから延びていてもよい。ばねは、ガイドロッドの、押圧部材とは反対側の端部区分の周囲に巻き付けられて配置されていて、かつ一方のばね端部でピンに支持されていて、かつ反対側に位置するばね端部に向かってハウジングエレメントに支持されていてもよい。ウォームは、波形に成形されていてもよく、かつ/またはウォームホイールとのかみ合いのためにウォームねじ山を備えたねじ山区分を有していてもよい。押圧部材に接触するために形成されているウォーム区分は、円筒形に成形されていてもよく、かつ/またはウォームの端部区分を形成してもよい。ガイドロッドとウォームとは、互いに垂直に延びるように位置調整されていてもよく、これにより、ウォームの後調整時に後調整力が半径方向でウォーム区分に加えられる。クランプ装置は、有利には、後調整力とは反対方向へのガイドロッドの戻りが阻止されることによって、押圧部材における摩耗を後調整するために役立つことができる。したがって、摩耗を介して生じる後調整距離は、相対的に増加することなしに繰り返しセットし直される。ロッド機構に設けられたクランプ装置によって戻りが阻止されるからである。本明細書において紹介された後調整装置は、有利には、ばね力を用いながら、ウォームホイールに対するウォームの自動的な半径方向の後調整を簡単に可能にする。
【0008】
押圧部材の、ウォーム区分に接触するための接触面が、湾曲して形成されていてもよい。したがって、押圧部材は、ウォーム区分の円筒形の面を安定的に、例えば20%の逸脱の誤差範囲内で160°だけ包囲してもよい。
【0009】
さらに、或る実施形態によれば、押圧部材が、押圧部材をガイドロッドに連結するための弾性的なエレメントを有していると有利である。弾性的なエレメントは、エラストマインサートとして形成されていてもよく、このエラストマインサートのショア硬度は、可変に調節されていてもよい。このような弾性的なエレメントは、かみ合い対の非円形性を弾性的に受け止めることができ、ひいてはウォーム伝動装置の運転中のガタつきおよび引っかかりを阻止することができる。或る実施形態によれば、接触面の1つの区分が、このような弾性的なエレメントを有していてもよい。
【0010】
或る実施形態では、クランプ装置が、ウォーム伝動装置の運転中にウォームとウォームホイールとの間のかみ合いに基づいて生じる分離力に起因する、押圧部材および/またはウォームの逸脱を阻止するように構成されていてもよい。このようなクランプ装置は、ばね力を増幅することができ、これにより、ウォーム伝動装置のかみ合い対は、運転中に分離力にもかかわらず確実にまとめられている。
【0011】
この後調整装置は、貫通開口を備えたハウジング部をさらに有していてもよく、貫通開口を通ってガイドロッドがガイドされている。ハウジング部は、定置のハウジング部として形成されていてもよく、かつ/またはハウジングエレメントに固定的に結合されていてもよい。貫通開口内でガイドロッドを安定化することができるので、これにより例えばガイドロッドの側方の傾倒は阻止される。
【0012】
或る実施形態によれば、貫通開口の開口部が、円錐形に成形されていてもよく、クランプ装置の少なくとも1つの楔が、開口部内に配置されていてもよく、クランプ装置の別のばねが、楔と押圧部材との間に挟み込まれていてもよい。これにより、クランプ装置の実際の実現が行われてもよい。或る実施形態によれば、開口部は、楔を形状結合式に収容するために傾斜面を有していてもよい。開口部は、押圧部材に面した領域において、押圧部材とは反対側の領域におけるよりも大きな直径を有していてもよい。別のばねは、この別のばねが楔を貫通開口内でセンタリングすることにより、楔の位置を固定するために働くことができる。別のばねは、ばねよりも小さなばね力、ばね長さおよび/または小さなばね直径を有していてもよい。これにより、楔原理に関連してばね機構を介したウォームの後調整が可能であり、これによって、摩耗を介して生じる後調整距離が、相対的に増大することなしに繰り返しセットし直される。ロッド機構における楔作用によって戻りが阻止されるからである。したがって、ウォームの弾性の補償距離は、比較的長期の使用および比較的大きな摩耗後においても一定のままである。
【0013】
新品状態では、エラストマまたは別の構造を介した0.5mmの弾性的な距離が許容されると仮定され、この距離は、ウォームホイールにおける摩耗により1mmに拡大し、したがって伝動装置において1mmの遊びが存在することになるだろう。ばね力によってロッド機構をセットし直し、ロッド機構における楔を介して戻りを阻止することによって、距離は再びセットし直され、伝動装置は、改めて弾性範囲において0.5mmだけ逸脱する可能性を有している。ばね力を介してロッド機構をセットし直し、楔を介して戻りを阻止することによって、距離が再びセットし直され、伝動装置は、改めて0.5mmだけ逸脱する可能性を有している。
【0014】
さらに、或る実施形態によれば、後調整装置が、楔を形成する円錐形の2つのハーフシェルを有していると有利である。つまりハーフシェルが、ガイドロッドを互いに反対の側に位置する2つの側からクランプすることができる。ハーフシェルの、ガイドロッドに作用するクランプ力は、ウォーム分離力に比例していてもよく、したがって自己倍力式であってもよい。
【0015】
2つのハーフシェルは、同一構造であり、かつ/または互いに向かい合って位置して円錐形、例えば漏斗形の開口部内に配置されていてもよい。
【0016】
楔はさらに孔を有していてもよく、この孔を通じてガイドロッドがガイドされている。孔は、ハーフシェル間に配置されていてもよく、かつ/または孔の直径は、ガイドロッドの直径よりも僅かに小さくてもよい。したがってクランプ力をガイドロッドに加えることができる。
【0017】
後調整装置は、ウォーム区分が収容されている軸受長孔を備えた軸受装置をさらに有していてもよい。軸受長孔は、ばね力/後調整力の作用方向に対応して配向されていてもよい。このような長孔は、ウォームの半径方向のガイドを保証し、例えばウォームホイールの方向における自由度のみを許容する。
【0018】
或る実施形態によれば、後調整装置は、ウォームおよび/またはウォームホイールも有していてもよく、ウォームは自動調心軸受内に揺動可能に支持されている。したがってウォーム伝動装置と自動的な後調整装置とから成る包括的な全体システムが提供されている。
【0019】
モータおよびステアリングロッド機構を備えた電気機械式の補助力ステアリングは、モータとステアリングロッド機構とを連結する後調整装置を有していて、この後調整装置は、上述したバリエーションのうちの1つに形成されている。このような電気機械式の補助力ステアリングは、補助力ステアリングのウォーム伝動装置のウォームの自動的な後調整を可能にする。したがって、ステアリングロッド機構を遊びなしに運動させることができる。
【0020】
車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整する方法は、加えるステップ、伝達するステップ、接触させるステップ、および阻止するステップを有している。加えるステップでは、ばねのばね力をガイドロッドに加え、これにより、ガイドロッドを半径方向でウォームに向かって押圧することができる。伝達するステップでは、ばね力が、ガイドロッドから、このガイドロッドに結合された押圧部材に伝達される。接触させるステップでは、押圧部材がウォームのウォーム区分に接触させられ、これにより、ばね力により生ぜしめられる後調整力がウォームに加えられる。阻止するステップでは、ウォームから離れてガイドロッドが戻ることを阻止する。
【0021】
この方法は、例えば上述した後調整装置を使用しながら実施可能であってもよい。
【0022】
以下で、本明細書において提示されているアプローチの実施例を図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】1つの実施例による、車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整するための後調整装置を示す概略図である。
【
図2】1つの実施例による後調整装置の軸受装置を示す概略図である。
【
図3】1つの実施例による後調整装置を備えた電気機械式の補助力ステアリングを備えた車両を示す概略図である。
【
図4】1つの実施例による車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対するウォームの自動的な後調整方法を示すフローチャートである。
【0024】
本アプローチの有利な実施例の以下の説明では、互いに異なる複数の図面に図示され、同様に作用するエレメントのために、同一または同様の参照符号が使用され、これらのエレメントの繰り返しの説明は省略される。
【0025】
図1は、1つの実施例による車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置115のウォームホイール110に対してウォーム105を自動的に後調整するための後調整装置100の概略図を示している。
【0026】
この後調整装置100は、ばね120と、ガイドロッド125と、押圧部材130と、クランプ装置133とを有している。ばね120は、ガイドロッド125にばね力F1を加えるように形成されている。これにより、ガイドロッド125を半径方向にウォーム105に向かって押圧することができる。ガイドロッド125は、ばね力F1を押圧部材130に伝達するように形成されている。ガイドロッド125に結合された押圧部材130は、ウォーム105のウォーム区分135に接触するために形成されており、これによりばね力F1により生ぜしめられる後調整力をウォーム105に加えることができる。クランプ装置133は、ウォーム105から離れてガイドロッド125が戻ることを阻止するように構成されている。
【0027】
本実施例によれば、ばね120は、ガイドロッド125にばね力F1を加えるために、ハウジングエレメント140とガイドロッド125に設けられたピン145との間に緊締された状態で挟み込まれている。ピン145に対して代えて、ばね120のための別の適切なストッパエレメントを使用することもできる。ばね120は、本実施例によれば、コイルばねである。
【0028】
ウォーム105は、本実施例によれば揺動可能に自動調心軸受150内に支持されている。ウォーム105は、本実施例によれば波状に成形されており、かつ/またはウォームホイール110とのかみ合いために、ウォームねじ山155を備えるねじ山区分を有している。押圧部材130に接触するために形成されたウォーム区分135は、本実施例によれば円筒形にかつ/またはウォーム105の端部区分として成形されている。ウォーム105の、この端部区分とは反対側に位置する端部区分は、本実施例によればモータ軸160の形態でモータ165に連結されている。
【0029】
モータ165の作動時に、ウォーム105は、その延在軸線を中心として回転させられ、ウォームホイール110を、ウォームねじ山155とウォームホイール110とのかみ合いに基づいて回転させる。後調整装置100は、有利には、このかみ合いを遊びなしに保持するために働く。
【0030】
ガイドロッド125は、本実施例によればロッド形に、ここでは円筒形に成形されている。本実施例によれば、ピン145は、円筒形のガイドロッド125の延在軸線に対して垂直に、少なくとも2つの側でガイドロッド125から離れる方向に延びている。ばね120は、本実施例によれば、ガイドロッド125の、押圧部材130とは反対側の端部区分の周囲に巻き付けられて配置されていて、一方のばね端部ではピン145に支持されており、反対側に位置するばね端部ではハウジングエレメント140に支持されている。ガイドロッド125とウォーム105とは、本実施例によれば互いに垂直に延びるように配向されているので、ウォーム105の後調整時に、後調整力は半径方向でウォーム105の、ウォームホイール110とは反対の側からウォーム区分135に加えられる。
【0031】
本実施例によれば、押圧部材130の接触面は、ウォーム区分135に接触するために湾曲して形成されている。つまり、押圧部材130は、本実施例によればウォーム区分135の円筒形の面を部分的に包囲しており、例えば20%の逸脱の誤差範囲内で、160°だけ包囲している。1つの実施例によれば、押圧部材の接触面の曲げは、凹状に形成されており、ウォーム区分135の外表面の形状に適合させられている。
【0032】
押圧部材130は、1つの実施例によれば、押圧部材130をガイドロッド125に連結するための弾性的なエレメント170をさらに含んでいる。弾性的なエレメント170は、本実施例によればエラストマインサートとして形成されている。1つの実施例によれば、弾性的なエレメント170のショア硬度は、例えば適切な材料選択によって、可変に調節することができる。1つの実施例によれば、弾性的なエレメント170は、押圧部材130の、ガイドロッド125に向かい合って位置するように配置された切欠きまたは貫通開口内に配置されている。1つの実施例によれば、接触面の1つの区分が、弾性的なエレメント170によって形成されている。加えてまたは代えて、1つの実施例によれば、ガイドロッド125の自由端と押圧部材130との間の結合面が、弾性的なエレメント170によって形成されている。
【0033】
本実施例によれば、クランプ装置133は、ウォーム伝動装置115の運転中にウォーム105とウォームホイール110との間のかみ合いに基づいて生じる分離力Fsに起因する、押圧部材130および/またはウォーム105の逸脱を阻止するように構成されている。
【0034】
後調整装置100は、本実施例によれば、貫通開口180を備えたハウジング部177をさらに有しており、貫通開口を通ってガイドロッド125がガイドされている。ハウジング部177は、本実施例によれば、固定されたハウジング部として形成されており、かつ/またはハウジングエレメント140に固定的に結合されている。モータ165および/またはハウジング部177および/またはハウジングエレメント140は、1つの実施例によれば、車両の車体に堅固に取り付けられている。
【0035】
本実施例によれば、貫通開口180の開口部182は円錐形に成形されており、後調整装置100は、クランプ装置133の、開口部182内に配置された少なくとも1つの楔185と、クランプ装置133の別のばね187とを有しており、この別のばね187は、楔185と押圧部材130との間に挟み込まれている。開口部182、楔185および別のばね187が、本実施例によれば、上述のクランプ装置133を実現する。このクランプ装置133は、本実施例によれば、ばね120と押圧部材130との間に配置されている。開口部182は、本実施例によれば、傾斜面を有している。開口部182は、押圧部材130に面した領域において、押圧部材130とは反対の側の領域におけるよりも大きな直径を有している。別のばね187は、本実施例によれば、ばね120よりも小さいばね力F2を有している。楔185として、1つの実施形態によれば、円錐形の2つのハーフシェルが使用される。ハーフシェルの、ガイドロッド125に作用するクランプ力は、ウォーム分離力Fsに比例し、したがって自己倍力式である。2つのハーフシェルは、本実施例によれば互いに向かい合って位置するように、円錐形の、例えば漏斗形の開口部182内に配置されている。
【0036】
楔185を形成するハーフシェルは、1つの実施例によれば孔190を有しており、この孔190を通ってガイドロッド125がガイドされている。孔190は、本実施例によればハーフシェル間に配置されている。孔190の直径は、1つの実施例によれば、ガイドロッド125の直径よりも僅かに小さい。これにより、楔182が別のばね187によって、ハウジング部177の貫通開口180の円錐形に成形された開口部182に対して押し付けられると、ガイドロッド125が孔190でクランプされる。ガイドロッド125のこのクランプは、ガイドロッド125が、例えば摩耗を補償するために、ウォーム105の方向に運動させられる間は、解除される。楔182が再び、開口部182に向かって押圧されると、ガイドロッド125は再びクランプされ、これによりガイドロッド125は逆方向に、つまりウォーム105から離れる方向に運動することができない。
【0037】
後調整装置100は、本実施例によれば、軸受長孔を備えた軸受装置195をさらに有しており、この軸受長孔内には、ウォーム区分135が収容されている。軸受装置195は、
図2においてより詳しく説明する。
【0038】
1つの実施例によれば、後調整装置100は、ウォーム105および/またはウォームホイール110も有しており、ウォーム105は、自動調心軸受150内に揺動可能に支持されている。
【0039】
本明細書において提示された後調整装置100は、ウォーム伝動装置115の自動的な後調整を可能にする。このウォーム伝動装置115は、例えば車両構造のための電気機械式の補助力ステアリングにおいて使用可能である。
【0040】
後調整装置100の目的は、ウォーム伝動装置115のかみ合い対を、耐用寿命にわたって遊びなしに保持し、摩耗を持続的に後調整することであり、これによって、かみ合い対間の弾性だけが維持されたままである。ウォーム伝動装置115のNVH(Noise,Vibration,Harshness)、「ノイズ、振動、粗さ」)要求および制御要求であるからである。
【0041】
このためには、ウォーム105が、1つの実施例によれば、モータ165を中心として揺動式に支持されており、半径方向でウォームホイール110の方向に送り可能である。反対側に位置している支持箇所では、1つの実施例によれば、
図2に示した軸受長孔が配置されており、この軸受長孔は、支持部の半径方向のガイドを保証し、かつウォームホイール110の方向における唯1つの自由度しか許容しない。
【0042】
ウォーム105には、円筒形の段部の形態のウォーム区分135が、押圧部材130のための載置箇所として配置されており、押圧部材130は、円筒面を約160°包囲し、後調整力をウォーム105に導入する。この押圧部材130は、1つの実施例によれば、エラストマインサートの形態の弾性的なエレメント170を有しており、弾性的なエレメントのショア硬度は、可変に調整することができる。エラストマインサートは、かみ合い対の非円形性を弾性的に受け止め、ひいてはガタつきおよび/または引っかかりを阻止するように形成されている。この場合、エラストマインサートは、ウォーム105の回転エラーを補償するように形成されている。
【0043】
「ヨーク」とも呼ぶことができる押圧部材130は、ガイドロッド125に結合されている。ガイドロッド125は、1つの実施例によれば、固定されたハウジングの形態のハウジング部177内にガイドされており、押圧部材130と一緒にばね120によってウォームホイール110の方向に押圧される。
【0044】
ばね120のばね力F1により、ウォーム105は、かみ合い対間の摩耗時に保証されて後調整される。かみ合いに基づいて生じる分離力Fsに起因する、押圧部材130ひいてはウォーム105の逸脱を阻止するために、本実施例によれば、クランプ装置133によるクランプ機構が実現されている。クランプ装置133は、1つの実施例によれば、上記で開口部182と呼ばれた、ハウジングに設けられた円錐形の孔と、円錐形の2つのハーフシェルとから成っており、これらのハーフシェル間に孔190が設けられており、この孔190の直径は、ガイドロッド125の直径よりも僅かに小さい。
【0045】
ガイドロッド125は、1つの実施例によれば円錐形のハーフシェル間の孔190内に位置しており、これらのハーフシェルは、ウォーム105の、分離力Fsによる逸脱運動時に円錐体の角度を介してクランプされ、ひいてはウォームホイール110の方向にのみ自由に運動することができるように、ハウジング部177内に配置されている。ハーフシェルの、ガイドロッド125に作用するクランプ力は、ウォーム分離力Fsに比例し、したがって自己倍力式である。ハーフシェルの位置を固定するために、別のばね187が設けられており、この別のばね187は、円錐形のハーフシェルをハウジング部177の貫通開口180内でセンタリングする。
【0046】
ばね120のばね力F1および/またはばね120のばね長さおよび/もしくはばね直径は、1つの実施例によれば、別のばね187のばね力F2および/または別のばね187のばね長さおよび/もしくはばね直径よりも大きい。ばね120/187および/またはばね力F1/F2は、1つの実施例によれば、極めて小さい。ばね120/187および/またはばね力F1/F2は、クランプされているハーフシェルの位置のみを確保すればよいからである。
【0047】
図2は、1つの実施例による後調整装置の軸受装置195の概略図を示している。この軸受装置195は、
図1で説明した後調整装置の、
図1につき説明した軸受装置195であってもよい。
【0048】
軸受装置195は、
図1に示した図示した図面に対して、観察者に対して90°だけ回転させられて図示されているので、軸受長孔200を正面から見ることができる。軸受長孔200は、本実施例によればばね力/後調整力の作用方向205に対応して配向されている。したがって、ウォーム区分135を介したウォームの後調整は、専らウォームホイールの方向で可能にされている。
【0049】
図3は、1つの実施例による後調整装置100を備えた電気機械式の補助力ステアリング305を備えた車両300の概略図を示している。この補助力ステアリング305は、
図1につき説明した電気機械式の補助力ステアリング305および/または後調整装置100であってもよい。
【0050】
電気機械式の補助力ステアリング305は、
図1で説明したモータ165と、ステアリングロッド機構310と、モータ165とステアリングロッド機構310とを連結する後調整装置100とを有している。ステアリングロッド機構310は、本実施例によれば、車両300の車軸に対応配置された2つの車輪315を接続している。この後調整装置100により、ステアリングロッド機構310は遊びなしで可動である。
【0051】
図4は、1つの実施例による車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に後調整する方法400のフローチャートが示されている。この方法400は、先行する図面において説明された後調整装置を使用しながら実施可能な方法400であってもよい。
【0052】
当該方法400は、加えるステップ405と、伝達するステップ410と、接触させるステップ415と、阻止するステップ420とを有している。加えるステップ405では、ばねのばね力がガイドロッドに加えられ、これによりガイドロッドを半径方向でウォームに向かって押圧することができる。伝達するステップ410では、ばね力が、ガイドロッドから、このガイドロッドに結合された押圧部材に伝達される。接触させるステップ415では、押圧部材がウォームのウォーム区分に接触させられ、これにより、ばね力により生ぜしめられる後調整力がウォームに加えられる。阻止するステップ420では、ウォームから離れてガイドロッドが戻ることを阻止する。
【符号の説明】
【0053】
F1 ばねのばね力
F2 別のばねのばね力
Fs 分離力
100 後調整装置
105 ウォーム
110 ウォームホイール
115 ウォーム伝動装置
120 ばね
125 ガイドロッド
130 押圧部材
133 クランプ装置
135 ウォーム区分
140 ハウジングエレメント
145 ピン
150 自動調心軸受
155 ウォームねじ山
160 モータ軸
165 モータ
170 弾性的なエレメント
177 ハウジング部
180 貫通開口
182 開口部
185 楔
187 別のばね
190 孔
195 軸受装置
200 軸受長孔
205 作用方向
300 車両
305 電気機械式の補助力ステアリング
310 ステアリングロッド機構
315 車両ホイール
400 車両用の電気機械式の補助力ステアリングのためのウォーム伝動装置のウォームホイールに対してウォームを自動的に調節する方法
405 加えるステップ
410 伝達するステップ
415 接触させるステップ
420 阻止するステップ