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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241111BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J3/38 180
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023577628
(86)(22)【出願日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2023025391
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】益永 博史
(72)【発明者】
【氏名】沼本 重夫
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-095009(JP,A)
【文献】特開2016-127734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-7/12
H02J7/34-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統および負荷の間に接続され、前記電力系統の健全時には前記電力系統から供給される第1の交流電力を前記負荷に供給し、前記電力系統の停電時には第2の交流電力を前記負荷に供給する電源装置であって、
前記第1の交流電力の一部分を直流電力に変換して蓄電装置に蓄える充電動作と、前記蓄電装置の直流電力を前記第2の交流電力に変換する放電動作とを選択的に実行するように構成された第1の電力変換器と、
前記電力系統における電力需給を調整するサーバと通信接続される制御装置とを備え、
前記電力系統の停電時、前記制御装置は、
前記第2の交流電力を前記負荷に供給するように、前記第1の電力変換器における前記放電動作を制御し、
前記蓄電装置には、前記電力系統の停電が発生してから予め定められた補償時間が経過するまでに前記蓄電装置から前記負荷に前記第2の交流電力を供給するために必要なSOC以上であるSOC基準値と、前記SOC基準値よりも大きい待機用SOCとが設定されており、
前記電力系統の健全時、前記制御装置は、
前記蓄電装置が満充電状態になるように前記第1の電力変換器における前記充電動作を制御し、
前記電力系統における需要量を調整するためのデマンドレスポンスの予告信号を前記サーバから受信した場合には、
前記第1の交流電力および前記第2の交流電力の合計電力を前記負荷に供給するように前記第1の電力変換器における前記放電動作を制御し、
前記蓄電装置のSOCが前記待機用SOCまで低下したことに応じて、前記放電動作を停止させ、
前記サーバから受信したデマンドレスポンス指令に応じて、前記第1の電力変換器における前記放電動作または前記充電動作を制御する、電源装置。
【請求項2】
前記予告信号を受信した後に、前記電力系統における需要量を減少させる下げデマンドレスポンス指令を前記サーバから受信した場合には、前記制御装置は、
前記第1の交流電力および前記第2の交流電力の合計電力を前記負荷に供給するように前記第1の電力変換器における前記放電動作を制御し、
前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値まで低下したことに応じて、前記放電動作を停止させる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記下げデマンドレスポンス指令を前記サーバから受信した場合、前記制御装置は、
前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値まで低下したことに応じて、デマンドレスポンス不可信号を前記サーバに送信する、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記予告信号を受信した後に、前記電力系統における需要量を増加させる上げデマンドレスポンス指令を前記サーバから受信した場合には、前記制御装置は、
前記第1の電力変換器における前記充電動作を制御し、
前記蓄電装置のSOCが、前記満充電状態よりも小さいSOC上限値に達したことに応じて、前記充電動作を停止させる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記上げデマンドレスポンス指令を前記サーバから受信した場合、前記制御装置は、
前記蓄電装置のSOCが前記SOC上限値に達したことに応じて、デマンドレスポンス不可信号を前記サーバに送信する、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCに応じて、前記蓄電装置の前記充電動作を、定電流充電から定電圧充電に切り替えるように構成され、
前記SOC上限値は、前記定電流充電から前記定電圧充電に切り替えられるときのSOCに基づいて設定される、請求項4に記載の電源装置。
【請求項7】
前記電源装置は、第1の端子が前記電力系統に接続され、第2の端子が前記負荷に接続されるスイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記電力系統の健全時に前記スイッチをオンし、前記電力系統の停電時に前記スイッチをオフするように構成され、
前記第1の電力変換器は、前記第2の端子および前記蓄電装置の間に接続される、請求項1から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記電源装置は、
前記電力系統の健全時には、前記第1の交流電力を直流電力に変換して直流ラインに供給し、前記電力系統の停電時には、その運転が停止される第2の電力変換器と、
前記直流ラインから受ける直流電力を第3の交流電力に変換して前記負荷に供給する第3の電力変換器とをさらに備え、
前記第1の電力変換器は、前記直流ラインおよび前記蓄電装置の間に接続される、請求項1から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記蓄電装置は、リチウムイオン電池である、請求項1から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平8-289470公報(特許文献1)には、商用電源から負荷に電力を供給する電源装置が開示されている。この電源装置は、商用電源の停電時に蓄電装置に蓄えられた電力を負荷に供給する無停電電源装置と、負荷の電力使用量(デマンド)を監視するデマンド監視装置と、デマンド制御装置とを備えている。デマンド制御装置は、負荷の電力使用量が契約電力を超過することが予測される場合には、無停電電源装置の余剰電力を算出し、算出された余剰電力を負荷に供給するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-289470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電力系統における電力の需要と供給とのバランスを調整するために、需要家における電力使用量を制御するデマンドレスポンス(DR:Demand Response)が提案されている。ある局面では、電力会社は、アグリゲータと連携することにより、DR指令によって各需要家に所定の要請を行うことにより、電力の需給バランスを調整することができる。DR指令には、電力の需要量の増加を要請する上げDR指令と、電力の需要量の抑制を要請する下げDR指令とがある。
【0005】
需要家は、アグリゲータからのDR指令に従って蓄電装置の充電および放電を行うことで、電力系統の需給調整に貢献することができる。しかしながら、一方で、DRの実行によって蓄電装置のSOC(State Of Charge)が変動するため、DRの実行中または実行後において電力系統の停電が発生した場合に、停電補償のために必要な電力が蓄電装置に蓄えられていないという状況が起こり得る。この場合、電源装置の本来の停電補償機能が損なわれてしまうため、安定した交流電力を負荷に供給することができなくなることが懸念される。
【0006】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統の停電時における負荷への給電を確保しつつ、電力系統の需給調整に貢献することができる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電源装置は、電力系統および負荷の間に接続される。電源装置は、電力系統の健全時には電力系統から供給される第1の交流電力を負荷に供給し、電力系統の停電時には第2の交流電力を負荷に供給する。電源装置は、第1の電力変換器と、制御装置とを備える。第1の電力変換器は、第1の交流電力の一部分を直流電力に変換して蓄電装置に蓄える充電動作と、蓄電装置の直流電力を第2の交流電力に変換する放電動作とを選択的に実行するように構成される。制御装置は、電力系統における電力需給を調整するサーバと通信接続される。電力系統の停電時、制御装置は、第2の交流電力を負荷に供給するように、第1の電力変換器における放電動作を制御する。蓄電装置には、電力系統の停電が発生してから予め定められた補償時間が経過するまでに蓄電装置から負荷に前記第2の交流電力を供給するために必要なSOC以上であるSOC基準値と、SOC基準値よりも大きい待機用SOCとが設定されている。電力系統の健全時、制御装置は、蓄電装置が満充電状態になるように第1の電力変換器における充電動作を制御する。電力系統における需要量を調整するためのデマンドレスポンスの予告信号をサーバから受信した場合には、制御装置は、第1の交流電力および第2の交流電力の合計電力を負荷に供給するように第1の電力変換器における放電動作を制御する。制御装置は、蓄電装置のSOCが待機用SOCまで低下したことに応じて、放電動作を停止させる。制御装置は、サーバから受信したデマンドレスポンス指令に応じて、第1の電力変換器における放電動作または充電動作を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電力系統の停電時における負荷への給電を確保しつつ、電力系統の需給調整に貢献することができる電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。
図2】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】電力系統の健全時におけるMPCの動作を説明する図である。
図4】電力系統の停電時におけるMPCの動作を説明する図である。
図5】下げDR指令を受信した場合のMPCの動作を説明する図である。
図6】下げDRを実行するときの蓄電装置の充放電制御を説明する図である。
図7】上げDR指令を受信した場合のMPCの動作を説明する図である。
図8】上げDRを実行するときの蓄電装置の充放電制御を説明する図である。
図9】本実施の形態における蓄電装置の充放電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図10】本実施の形態における蓄電装置の充放電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図11】本実施の形態の変形例に係る電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
<電源装置の構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。図1では、電源装置の一態様として、瞬低補償装置(MPC:Multiple Power Compensator)について説明する。
【0012】
図1に示すように、MPC110は、電力系統200から電力供給を受ける需要家100内に設置されている。需要家100内には、負荷120、蓄電装置130、および通信装置140がさらに設置されている。
【0013】
MPC110は、電力系統200および負荷120の間に接続され、電力系統200から供給される交流電圧が比較的短時間(例えば、1秒未満)低下またはゼロとなる現象(瞬時電圧低下または瞬時停電)が発生した場合に、安定した交流電力を無瞬断で負荷120に供給するための装置である。
【0014】
なお、電力系統200から供給される交流電圧が比較的長時間(例えば1秒以上)ゼロとなる現象(停電)が発生した場合に、負荷120に交流電力を供給する装置は、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)と呼ばれる。本明細書では、MPCおよびUPSを総称して「電源装置」と呼ぶ。また、本明細書では、電力系統200の瞬時電圧低下、瞬時停電および停電を「停電」と総称する。
【0015】
MPC110は、入力端子T1、出力端子T2、直流端子T3、VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)1,5,6,21、高速スイッチ(HSS:High Speed Switch)2、電力変換器7、変圧器20、操作部22、および制御装置23を備える。
【0016】
入力端子T1は、電力系統200から供給される商用周波数の交流電圧VIを受ける。交流電圧VIの瞬時値は、制御装置23によって検出される。制御装置23は、交流電圧VIが下限値よりも低下した場合に、交流電圧VIの停電が発生したと判別する。
【0017】
出力端子T2は、負荷120に接続される。負荷120は、出力端子T2から供給される交流電圧VOによって駆動される。交流電圧VOの瞬時値は、制御装置23によって検出される。
【0018】
直流端子T3は、蓄電装置130に接続される。蓄電装置130は、直流電力を蓄える。蓄電装置130は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池である。ただし、リチウムイオン電池の代わりに鉛蓄電池を使用してもよい。また、二次電池の代わりに電気二重層キャパシタを使用してもよい。直流端子T3の直流電圧VBは、制御装置23によって検出される。直流電圧VBは、蓄電装置130の端子間電圧(以下、「バッテリ電圧」とも称する)に相当する。
【0019】
なお、MPC110は、電力系統200から三相交流電圧を受け、負荷120に三相交流電圧を供給するものであるが、図面および説明の簡単化のため、図1では一相分の回路のみが示されている。
【0020】
VCB1、高速スイッチ2、およびVCB5は、入力端子T1と出力端子T2との間に直列接続される。VCB1,5は、MPC110の通常運転時にオンされ、例えば高速スイッチ2のメンテナンス時またはバイパス給電時にオフされる。
【0021】
高速スイッチ2は、直列接続された半導体スイッチおよび機械スイッチを含む。半導体スイッチおよび機械スイッチは、制御装置23によって制御され、交流電圧VIが正常である場合(電力系統200の健全時)にオンされ、交流電圧VIが正常でない場合(電力系統200の停電時)にオフされる。
【0022】
半導体スイッチは、機械スイッチと比べて、動作速度が速く、耐圧が低いという特性を有する。機械スイッチは、半導体スイッチと比べて、動作速度が遅く、耐圧が高いという特性を有する。半導体スイッチおよび機械スイッチを直列接続することにより、瞬低発生時に瞬時にオフし、高い耐圧を有する高速スイッチ2を構成している。
【0023】
VCB6は、入力端子T1と出力端子T2との間に接続される。VCB6は、MPC110の通常運転時にオフされ、例えばバイパス給電時にオンされる。VCB6がオンされると、電力系統200からVCB6を介して負荷120に交流電圧VIが供給され、負荷120が運転される。
【0024】
電力変換器7は、双方向コンバータ8、電流検出器10、リアクトル11、およびコンデンサ12を含む。双方向コンバータ8の直流端子8aは直流端子T3に接続され、その交流端子8bはリアクトル11を介して変圧器20の一次巻線20aに接続される。変圧器20の二次巻線20bは、VCB21を介して、高速スイッチ2およびVCB5間のノードN1に接続されている。変圧器20の一次巻線20aに現れる交流電圧VACの瞬時値は、制御装置23によって検出される。電力変換器7は「第1の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0025】
双方向コンバータ8は、複数の半導体スイッチング素子および複数のダイオードを含む周知のものであり、制御装置23により、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御される。双方向コンバータ8に含まれる各半導体スイッチング素子を所定の周波数でオンおよびオフさせることにより、交流電力を直流電力に変換したり、逆に、直流電力を交流電力に変換することが可能となる。
【0026】
ある局面では、電力系統200の健全時、双方向コンバータ8は、電力系統200からVCB1、高速スイッチ2、VCB21、変圧器20、およびリアクトル11を介して供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置130に蓄える。電力系統200の停電時には、双方向コンバータ8は、蓄電装置130の直流電力を交流電力に変換して交流端子8bに出力する。この交流電力は、リアクトル11、変圧器20、およびVCB21,5を介して負荷120に供給される。このように双方向コンバータ8は、蓄電装置130に直流電力を蓄える充電動作と、蓄電装置130の直流電力を負荷120に供給する放電動作とを選択的に実行可能に構成されている。
【0027】
電流検出器10は、リアクトル11に流れる電流ILを検出し、その検出値を示す信号ILfを制御装置23に与える。
【0028】
リアクトル11およびコンデンサ12は、交流フィルタを構成する。この交流フィルタは、低域通過フィルタであり、商用周波数の電流を通過させ、双方向コンバータ8で発生するスイッチング周波数の電流を遮断する。換言すると、交流フィルタは、双方向コンバータ8の出力電圧を正弦波状の交流電圧VACに変換する。
【0029】
変圧器20は、ノードN1と電力変換器7との間で交流電力を授受する。VCB21は、MPC110の通常運転時にオンされ、例えば高速スイッチ2または電力変換器7のメンテナンス時にオフされる。
【0030】
操作部22は、複数のボタン、複数のスイッチおよびディスプレイなどを含む。MPC110の使用者は、操作部22を操作することにより、MPC110の起動、停止、自動運転および手動運転などを指示したり、種々の条件設定などを行うことが可能となっている。操作部22は、使用者の指示などを示す信号を制御装置23に与える。
【0031】
制御装置23は、操作部22からの信号、交流電圧VI,VO,VAC、直流電圧VB、電流検出器10の出力信号ILf等に基づいて、MPC110全体を制御する。
【0032】
ある局面では、電力系統200の健全時には、制御装置23は、交流電圧VAC、直流電圧VB、および電流検出器10の出力信号ILfに基づいて、直流端子T3の直流電圧(バッテリ電圧)VBが参照直流電圧VBrになるように双方向コンバータ8を制御する。電力系統200の停電時には、制御装置23は、出力端子T2の交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ8を制御する。
【0033】
図2は、制御装置23のハードウェア構成例を示す図である。代表的には、制御装置23は、所定のプログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0034】
例えば、図2に示されるように、制御装置23は、CPU(Central Processing Unit)230と、メモリ232と、入出力(I/O)回路234とを含んで構成される。CPU230、メモリ232およびI/O回路234は、バス236を経由して、相互にデータの授受が可能である。メモリ232の一部領域にはプログラムが予め格納されており、CPU230が当該プログラムを実行することで、各種機能を実現することができる。
【0035】
あるいは、図2の例とは異なり、制御装置23の少なくとも一部については、FPGA(Field Programmable Gate Array)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成することができる。また、制御装置23の少なくとも一部について、アナログ回路によって構成することも可能である。
【0036】
図1に戻って、制御装置23は、通信装置140に通信可能に接続されている。通信装置140は、図示しない通信ネットワークを経由してアグリゲータサーバ210と通信可能なデバイスであり、アグリゲータサーバ210との間で各種情報を遣り取りする。
【0037】
アグリゲータサーバ210は、アグリゲータが管理および運用するサーバである。アグリゲータとは、多くの需要家が有するエネルギーリソースを束ね、需要家と電力会社との間に立って、電力の需要と供給とのバランスの調整、および各需要家のエネルギーリソースの最大限の活用に取り組む事業者である。
【0038】
電力会社は、アグリゲータと連携することにより、デマンドレスポンス(以下、「DR」とも称する)によって、電力の需給バランスを調整することができる。DRは、デマンドレスポンス指令(以下、「DR指令」とも称する)によって各需要家に所定の要請を行うことにより、電力の需給バランスを調整する手法である。DR指令には、電力の需要量の増加を要請するDR指令(以下、「上げDR指令」とも称する)と、電力の需要量の抑制を要請するDR指令(以下、「下げDR指令」とも称する)とがある。
【0039】
例えば、夏の猛暑日や冬の寒い日に電力の需要が急激に高まり、需給がひっ迫する場合には、電力会社は、アグリゲータに電力の需要量を下げるように要請する。この要請を受けてアグリゲータは、管轄する需要家に対し、下げDR指令を出力する。各需要家の協力により抑制された電力はアグリゲータにとりまとめられ、電力会社へ提供される。
【0040】
太陽光発電および風力発電などの再生可能エネルギーの発電量が増加したことにより電力の供給量が需要量を上回る場合には、電力会社は、アグリゲータに電力の需要量を増やすように要請する。この要請を受けてアグリゲータは、管轄する需要家に対し、上げDR指令を出力する。
【0041】
このような要請に応じてDRに協力することにより、各需要家は、報酬を得ることができる。アグリゲータは、電力会社から報酬を受け取り、各需要家へ支払う仲介をする。
【0042】
アグリゲータサーバ210は、制御装置212と、記憶装置214と、通信装置216とを含んで構成される。制御装置212は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行うとともに通信装置216を制御するように構成される。記憶装置214は、各種情報を記憶可能に構成される。通信装置216は、各種通信I/Fを含む。制御装置212は、通信装置216を通じて外部と通信するように構成される。
【0043】
本実施の形態では、制御装置23は、電力系統200の健全時において、通信装置140を経由してアグリゲータサーバ210からDR指令(上げDR指令または下げDR指令)を受信した場合には、受信したDR指令に応じて双方向コンバータ8を制御するように構成される。
【0044】
具体的には、アグリゲータサーバ210から下げDR指令を受信した場合には、制御装置23は、電力系統200から供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向コンバータ8を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向コンバータ8を制御する。このように負荷120に供給する交流電力の一部を蓄電装置130の直流電力が負担することにより、電力系統200から需要家100に供給される交流電力を減らすことができる。これにより、需要家100は、電力会社が要請する電力の需要量の抑制に貢献することができ、貢献量に応じた報酬を得ることができる。
【0045】
また、アグリゲータサーバ210から上げDR指令を受信した場合には、制御装置23は、蓄電装置130に直流電力を蓄える充電動作を実行するように双方向コンバータ8を制御する。これにより負荷120に供給する交流電力と蓄電装置130に蓄えられる電力との合計電力が電力系統200から供給されることにより、電力系統200から需要家100に供給される交流電力を増やすことができる。その結果、需要家100は、電力会社が要請する電力の需要量の増加に貢献することができ、貢献量に応じた報酬を得ることができる。
【0046】
しかしながら、アグリゲータサーバ210からのDR指令に従って蓄電装置130の充電および放電が行われることにより、蓄電装置130のSOC(State Of Charge)が変動する。そのため、DRの実行中または実行後において電力系統200の停電が発生した場合に、停電補償のために必要な電力が蓄電装置130に蓄えられていないという状況が起こり得る。この場合、MPC110の本来の停電補償機能が損なわれてしまうため、安定した交流電力を負荷120に供給することができなくなることが懸念される。
【0047】
このような事態を回避するため、本実施の形態に係るMPC110は、負荷120に対する停電補償を確保しつつ、電力会社が要請する電力系統200の需給調整に貢献することができるように、蓄電装置130の充放電制御を実行する。
【0048】
<MPCの動作>
次に、図1に示したMPC110の動作について説明する。
【0049】
図3および図4は、MPC110の通常運転時の動作を説明する図である。通常運転時には、VCB1,5はオンされ、VCB6(図示せず)はオフされている。図3には、電力系統200の健全時におけるMPC110から負荷120に供給される電力の流れが矢印で示されている。電力系統200の健全時には、HSS2がオンされ、電力系統200からVCB1、HSS2およびVCB5を介して負荷120に交流電力が供給され、負荷120が運転される。
【0050】
また、電力系統200からVCB1、HDD2およびVCB21を介して電力変換器7に交流電力が供給され、その交流電力が双方向コンバータ8によって直流電力に変換されて蓄電装置130に蓄えられる。
【0051】
制御装置23は、直流端子T3の直流電圧(バッテリ電圧)VBが参照直流電圧VBrになるように双方向コンバータ8を制御する。参照直流電圧VBrは、蓄電装置130のOCV-SOCカーブにおいて蓄電装置130が満充電状態(SOC=100%)となるときのOCVに基づいて設定される。
【0052】
図3では、負荷120の消費電力が100%であり、電力系統200から100%の電力が供給される場合が示されている。蓄電装置130が既に十分に充電されており、蓄電装置130に流れる電流は十分に小さいものとする。
【0053】
図4には、電力系統200の停電時におけるMPC110から負荷120に供給される電力の流れが矢印で示されている。電力系統200の停電時には、HSS2がオフされ、電力系統200と負荷120とが切り離される。
【0054】
制御装置23は、出力端子T2の交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ8を制御する。これにより蓄電装置130から電力変換器7に100%の電力が供給され、電力変換器7から負荷120に100%の電力が供給される。したがって、負荷120の運転が継続される。
【0055】
図5は、アグリゲータサーバ210から下げDR指令を受信した場合のMPC110の動作を説明する図である。図5には、MPC110から負荷120に供給される電力の流れが矢印で示されている。
【0056】
図5では、負荷120の消費電力が100%である場合において、下げDRの実行によって電力系統200から負荷120に80%の電力が供給されている。制御装置23は、出力端子T2の交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ8を制御する。これにより蓄電装置130から電力変換器7を介して負荷120に20%の電力が供給される。すなわち、電力系統200から供給される80%の電力と、蓄電装置130から供給される20%の電力とが合計されることにより、100%の電力が負荷120に供給される。
【0057】
図6は、下げDRを実行するときの蓄電装置130の充放電制御を説明する図である。図6には、充放電制御によって蓄電装置130のSOCが変化する様子が模式的に示されている。
【0058】
図6に示すように、蓄電装置130のSOCには、蓄電装置130の充電および放電を制御するための目安となる判定値SOCmin,SOCbackup,SOCwait,SOCmaxが設定されている。SOC=0%は蓄電装置130の空状態に対応し、SOC=100%は蓄電装置130の満充電状態に対応する。
【0059】
SOCには、過放電を防止するために蓄電装置130の放電を禁止する禁止領域が設定されている。SOCminは、この禁止領域に基づいて設定される。SOC<SOCminになると、蓄電装置130の放電が禁止される。
【0060】
SOCには、さらに、DRの実行中に蓄電装置130の充電を禁止する禁止領域が設定されている。リチウムイオン電池などの二次電池を充電するときには、一般的に、SOCに応じて、定電流充電から定電圧充電に切り替えられる。具体的には、充電初期には、充電電流を一定に保つ定電流充電が行われる。そして、定電流充電の実行中にSOCが所定値に達したことに応じて、定電流充電から、バッテリ電圧を一定に保つ定電圧充電に切り替えられる。
【0061】
定電圧充電の実行中は、定電流充電に比べて充電電流が小さくなるため、充電電力が制限される。そのため、後述する上げDRの実行中に、蓄電装置130が定電流充電から定電圧充電に切り替わることによって、アグリゲータから要請される電力調整量(上げDR量)に応じた電力を蓄電装置130が受け入れることができなく可能性がある。電力調整の安定化のために、上げDRの実行中にSOC>SOCmaxになると、制御装置23は、蓄電装置130の充電を停止することとする。SOCmaxは「SOC上限値」の一実施例に対応する。SOCmaxは、例えば、蓄電装置130が定電流充電から定電圧充電に切り替えられるときのSOCに基づいて設定することができる。
【0062】
SOCbackupは、MPC110が有する、電力系統200の停電時のバックアップ電源としての機能(停電補償機能)を担保するためのSOCである。SOCbackupは、停電補償用蓄電量以上になるように設定される。停電補償用蓄電量とは、電力系統200の停電が発生したときに、予め定められた補償時間に亘って蓄電装置130から負荷120に対して電力を供給し続けるために必要な蓄電量である。したがって、停電補償機能を担保するためには、電力系統200の健全時においてSOCをSOCbackup以上に保つ必要がある。SOCbackupは「SOC基準値」の一実施例に対応する。
【0063】
SOCbackupは、SOCminより大きく、SOCmaxよりも小さくなるように設定されている。SOCbackup<SOCmaxとしたことにより、図5に示したように、下げDRの実行時において、停電補償用蓄電量を確保しつつ、負荷120に供給する電力の一部分を蓄電装置130が負担することができる。また、後述する上げDRの実行時には、停電補償用蓄電量を確保しつつ、電力系統200から供給される電力の一部分を蓄電装置130に蓄えることができる。
【0064】
SOCwaitは、SOCbackupよりも大きく、SOCmaxよりも小さくなるように設定されている。SOCwaitは、DRの実行に備えて、蓄電装置130を充電動作および放電動作の何れにも対応可能な状態としておくための「待機用SOC」に対応する。
【0065】
図6には、蓄電装置130のSOCと、直流端子T3の直流電圧(バッテリ電圧)VBとの関係が示されている。バッテリ電圧VBは、蓄電装置130のOCV-SOCカーブに基づいている。電圧VB1は、OCV-SOCカーブにおいて、SOCがSOCminになるときのOCVに対応する。電圧VB2は、OCV-SOCカーブにおいて、SOCがSOCbackupになるときのOCVに対応する。電圧VB3は、OCV-SOCカーブにおいて、SOCがSOCwaitになるときのOCVに対応する。電圧VB4は、OCV-SOCカーブにおいて、SOCがSOCmaxになるときのOCVに対応する。電圧VB5は、OCV-SOCカーブにおいて、SOC=100%になるときのOCVに対応する。
【0066】
通常運転時、制御装置23は、バッテリ電圧VBの目標電圧である参照直流電圧VBrをVB5に設定し、バッテリ電圧VBが参照直流電圧VBr(=VB5)になるように双方向コンバータ8を制御する。これにより蓄電装置130のSOCは100%(満充電状態)に保たれる。ただし、アグリゲータからの要請に応じて上げDRを開始するときに蓄電装置130のSOCが満充電状態である場合には、電力系統200から供給される電力の一部分を蓄電装置130が受け入れることができなくなる。
【0067】
そこで、制御装置23は、DRの実行に先立って、DRの開始を予告するDR予告信号をアグリゲータサーバ210から受信すると、電力系統200から供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向コンバータ8を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向コンバータ8を制御する。
【0068】
双方向コンバータ8によって蓄電装置130の放電動作が実行されることにより、蓄電装置130のSOCが低下する。SOCがSOCwaitまで低下すると、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。なお、アグリゲータサーバ210がDR予告信号を送信するタイミングは、DRの開始タイミングから予め定められた時間遡ったタイミングとすることができる。
【0069】
このようにDR予告信号を受けた場合には、DRの実行に先立って蓄電装置130のSOCをSOCwaitに低下させておくことにより、DRが上げDRである場合において、電力系統200から供給される電力の一部分を蓄電装置130が受け入れることが可能となる。また、SOCwaitはSOCbackupよりも大きいため、停電補償用蓄電量を確保することができる。
【0070】
図6では、DR予告信号を受信した後に下げDR指令を受信すると、制御装置23は、アグリゲータから要請される電力調整量(下げDR量)に応じて、電力系統200から供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向コンバータ8を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向コンバータ8を制御する。双方向コンバータ8によって蓄電装置130の放電動作が実行されることにより、蓄電装置130のSOCが低下する。
【0071】
蓄電装置130のSOCがSOCbackup以下に低下すると、制御装置23は、これ以上下げDRを実行できないことを示すために、DR不可信号をアグリゲータサーバ210に送信する。そして、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。
【0072】
下げDRの実行後に電力系統200の停電が発生した場合には、図4に示したように、双方向コンバータ8が蓄電装置130の放電動作を実行することにより、蓄電装置130から電力変換器7を介して負荷120に電力が供給される。このとき蓄電装置130には停電補償用蓄電量が蓄えられているため、負荷120を補償時間に亘って駆動することができる。
【0073】
図7は、アグリゲータサーバ210から上げDR指令を受信した場合のMPC110の動作を説明する図である。図7には、MPC110から負荷120に供給される電力の流れが矢印で示されている。
【0074】
図7では、負荷120の消費電力が100%である場合において、上げDRの実行によって電力系統200から120%の電力が供給されている。制御装置23は、参照直流電圧VBrをVB4に設定し、バッテリ電圧VBが参照直流電圧VBr(=VB4)になるように双方向コンバータ8を制御する。これにより電力系統200から供給される120%の電力のうちの100%の電力が負荷120に供給され、残りの20%の電力が電力変換器7を介して蓄電装置130に供給される。
【0075】
図8は、上げDRを実行するときの蓄電装置130の充放電制御を説明する図である。図8には、充放電制御によって蓄電装置130のSOCが変化する様子が模式的に示されている。
【0076】
アグリゲータサーバ210からDR予告信号を受信する前は、制御装置23は、バッテリ電圧VBの目標電圧である参照直流電圧VBrをVB5に設定し、バッテリ電圧VBが参照直流電圧VBr(=VB5)になるように双方向コンバータ8を制御する。これにより蓄電装置130のSOCは100%に保たれる。
【0077】
DR予告信号を受信すると、制御装置23は、電力系統200から供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向コンバータ8を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向コンバータ8を制御する。双方向コンバータ8によって蓄電装置130の放電動作が実行されることにより、蓄電装置130のSOCが低下する。蓄電装置130のSOCがSOCwaitまで低下すると、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。
【0078】
DR予告信号を受信した後に上げDR指令を受信すると、制御装置23は、アグリゲータから要請される上げDR量に応じて、電力系統200から供給される交流電力の一部分が蓄電装置130に供給されるように、双方向コンバータ8を制御する。双方向コンバータ8によって蓄電装置130の充電動作が実行されることにより、蓄電装置130のSOCが増加する。
【0079】
蓄電装置130のSOCがSOCmaxに達すると、制御装置23は、これ以上上げDRを実行できないことを示すために、DR不可信号をアグリゲータサーバ210に送信する。そして、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の充電を停止する。
【0080】
図9および図10は、本実施の形態における蓄電装置130の充放電制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、例えば予め定められた条件成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。図中、アグリゲータサーバ210により実行される処理を左側に示し、MPC110(制御装置23)により実行される処理を右側に示す。各ステップは、アグリゲータサーバ210または制御装置23によるソフトウェア処理により実現されるが、アグリゲータサーバ210または制御装置23内に配置されたハードウェアにより実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0081】
S01において、アグリゲータサーバ210は、電力会社から電力系統200の需給調整が要請されたときに、電力調整の内容を取得する。電力調整の内容には、DRの種類(上げDR、下げDR)、DR量(電力調整量)、およびDR期間(DR開始時刻およびDR終了時刻)が含まれている。
【0082】
S02において、アグリゲータサーバ210は、各需要家に要請するDRの種類、DR量およびDR期間を設定する。S02の処理後、アグリゲータサーバ210は、DR期間の開始を待つ。
【0083】
S03において、アグリゲータサーバ210は、DRの予告タイミングになったか否かを判定する。DRの予告タイミングは、DR開始時刻から所定時間遡ったタイミングである。
【0084】
DRの予告タイミングになると(S03のYES判定時)、S04において、アグリゲータサーバ210は、DR予告信号を需要家100へ送信する。DR予告信号は、DRの開始を予告する信号である。DR予告信号を送信した後に、下げDR期間の開始時刻になると(S05のYES判定時)、S06において、アグリゲータサーバ210は、下げDR指令を需要家100へ送信する。
【0085】
MPC110において、制御装置23は、アグリゲータサーバ210からDR予告信号を受信すると(S21のYES判定時)、S22において、蓄電装置130に蓄えられた電力を負荷120に供給する放電動作を実行するように、双方向コンバータ8を制御する。
【0086】
放電中、S23において、制御装置23は、蓄電装置130のSOCがSOCwait以下に低下したか否かを判定する。SOCがSOCwait以下に低下したときには(S23のYES判定時)、S24において、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。
【0087】
制御装置23は、DR予告信号を受信した後、アグリゲータサーバ210から下げDR指令を受信すると(S25のYES判定時)、S26において、下げDR指令に従って蓄電装置130に蓄えられた電力を負荷120に供給する放電動作を実行するように、双方向コンバータ8を制御する(図5参照)。
【0088】
下げDRの実行中、S27において、制御装置23は、下げDR期間の終了時刻になったか否かを判定する。下げDR期間の終了時刻になっていない場合(S27のNO判定時)、S28において、制御装置23は、蓄電装置130のSOCがSOCbackup以下に低下したか否かを判定する。SOCがSOCbackupを上回る場合(S28のNO判定時)、処理はS27に戻る。一方、SOCがSOCbackup以下に低下したときには(S28のYES判定時)、S29に進み、制御装置23は、アグリゲータサーバ210へDR不可信号を送信する。
【0089】
S29にてDR不可信号を送信した場合、または、下げDR期間の終了時刻になった場合(S27のYES判定時)には、S30において、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。
【0090】
アグリゲータサーバ210は、下げDRの実行中、S07において、制御装置23からDR不可信号を受信したか否かを判定する。DR不可信号を受信していない場合(S07のNO判定時)、S08において、アグリゲータサーバ210は、下げDR期間の終了時刻になったか否かを判定する。
【0091】
DR不可信号を受信した場合(S07のYES判定時)または下げDR期間の終了時刻になった場合(S08のYES判定時)には、アグリゲータサーバ210は、S09において、下げDRの実行を終了する。
【0092】
MPC110において、制御装置23は、図10のS37により、電力系統200の停電が発生したか否かを判定する。電力系統200から供給される交流電圧VIが下限値よりも低下した場合にS37はYES判定とされる。一方、交流電圧VIが下限値以上である場合には、S37はNO判定とされる。
【0093】
電力系統200が健全である場合(S37のNO判定時)には、S41において、制御装置23は、蓄電装置130の充電動作を行うように双方向コンバータ8を制御する(図3参照)。充電中、S42において、制御装置23は、蓄電装置130のSOCが100%以上であるか否かを判定する。SOCが100%以上である場合(S42のYES判定時)、S43において、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の充電を停止する。
【0094】
S37に戻って、電力系統200の停電が発生した場合(S37のYES判定時)には、S38において、制御装置23は、蓄電装置130の放電動作を行うように双方向コンバータ8を制御する(図4参照)。放電中、S39において、制御装置23は、蓄電装置130のSOCがSOCmin以下であるか否かを判定する。SOCがSOCmin以下である場合(S39のYES判定時)、S40において、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の放電を停止する。
【0095】
S05に戻って、下げDR期間の開始時刻になっていない場合(S05のNO判定時)、図10のS10に進み、アグリゲータサーバ210は、上げDR期間の開始時刻になったか否かを判定する。上げDR期間の開始時刻になっていない場合(S10のNO判定時)、処理はS05に戻る。
【0096】
DR予告信号を送信した後に、上げDR期間の開始時刻になると(S10のYES判定時)、S11において、アグリゲータサーバ210は、上げDR指令を需要家100へ送信する。
【0097】
MPC110において、上げDR指令をアグリゲータサーバ210から受信すると(S31のYES判定時)、S32において、制御装置23は、蓄電装置130の充電動作を実行するように双方向コンバータ8を制御する(図7参照)。
【0098】
上げDRの実行中、S33において、制御装置23は、上げDR期間の終了時刻になったか否かを判定する。上げDR期間の終了時刻になっていない場合(S33のNO判定時)、S34において、制御装置23は、蓄電装置130のSOCがSOCmax以上であるか否かを判定する。SOCがSOCmax未満である場合(S34のNO判定時)、処理はS33に戻る。SOCがSOCmax以上であるときには(S34のYES判定時)、S35において、制御装置23は、アグリゲータサーバ210へDR不可信号を送信する。
【0099】
S35にてDR不可信号を送信した場合、または、上げDR期間の終了時刻になった場合(S33のYES判定時)には、S36において、制御装置23は、双方向コンバータ8の運転を停止させることにより、蓄電装置130の充電を停止する。
【0100】
アグリゲータサーバ210は、上げDRの実行中、S12において、制御装置23からDR不可信号を受信したか否かを判定する。DR不可信号を受信していない場合(S12のNO判定時)、S13において、アグリゲータサーバ210は、上げDR期間の終了時刻になったか否かを判定する。
【0101】
DR不可信号を受信した場合(S12のYES判定時)または上げDR期間の終了時刻になった場合(S13のYES判定時)には、アグリゲータサーバ210は、S14において、上げDRの実行を終了する。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態に係る電源装置によれば、負荷120に対する停電補償を確保しつつ、電力会社が要請する電力系統200の需給調整に貢献することができる。
【0103】
なお、上述した実施の形態では、本実施の形態に係る電源装置の一態様としてMPC110について説明したが、電源装置は、MPC11に限られず、UPSであってもよい。図11は、本実施の形態の変形例に係る電源装置の構成を示す図である。図11では、電源装置の別の態様として、UPSについて説明する。
【0104】
図11に示すように、UPS150は、図1に示したMPC110とは、VCB1,5,21、HSS2および電力変換器7に代えて、コンバータ31、インバータ33および双方向チョッパ32を備える点が異なる。なお、UPS150は、電力系統200から三相交流電圧を受け、負荷120に三相交流電圧を供給するものであるが、図面および説明の簡単化のため、図11では一相分の回路のみが示されている。
【0105】
コンバータ31は、交流端子31a、正電圧端子31b、および負電圧端子31cを有する。双方向チョッパ32は、直流端子32a、正電圧端子32b、および負電圧端子32cを有する。インバータ33は、交流端子33a、正電圧端子33b、および負電圧端子33cを有する。
【0106】
コンバータ31の交流端子31aは、入力端子T1に接続される。電流検出器13は、入力端子T1と交流端子1aの間に流れる電流Iiの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置23に与える。
【0107】
双方向チョッパ32の直流端子32aは、直流端子T3に接続される。電流検出器15は、直流端子T2と直流端子2aの間に流れる直流電流IBの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号IBfを制御装置23に与える。
【0108】
インバータ33の交流端子33aは、出力端子T2に接続される。電流検出器14は、交流端子34aと出力端子T2の間に流れる電流Ioの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置23に与える。
【0109】
直流ラインL1,L2の一方端子は、それぞれコンバータ31の正電圧端子31b、および負電圧端子31cに接続される。直流ラインL1,L2の他方端子は、それぞれインバータ33の正電圧端子33b、および負電圧端子33cに接続される。また、直流ラインL1,L2は、それぞれ双方向チョッパ32の正電圧端子32aおよび負電圧端子32cにそれぞれ接続される。
【0110】
コンデンサC1は、直流ラインL1,L2間に接続され、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDを安定化および平滑化させる。直流電圧VDの瞬時値は、制御装置23によって検出される。
【0111】
コンバータ31は、制御装置23によって制御され、電力系統200の健全時には、電力系統200から入力端子T1を介して供給される交流電圧VIを直流電圧VDに変換して、直流ラインL1,L2間に出力する。電力系統200の停電時には、コンバータ31の運転は停止される。制御装置23は、電力系統200の健全時には、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDが参照電圧VDrになるようにコンバータ31を制御する。コンバータ31は「第2の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0112】
双方向チョッパ32は、制御装置23によって制御される。電力系統200の健全時には、双方向チョッパ32は、コンバータ31から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力を蓄電装置130に蓄える。電力系統200の停電時には、双方向チョッパ32は、蓄電装置130の直流電圧VBを直流電圧VDに変換して、正電圧端子32bおよび負電圧端子32c間に出力する。双方向チョッパ32は、蓄電装置130に直流電力を蓄える充電動作と、蓄電装置130の直流電力を直流ラインL1,L2間に出力する放電動作とを選択的に実行可能に構成されている。双方向チョッパ32は「第1の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0113】
制御装置23は、電力系統200の健全時には、直流電圧VBが参照直流電圧VBrになるように双方向チョッパ32を制御する。参照直流電圧VBrは、蓄電装置130のOCV-SOCカーブにおいて蓄電装置130が満充電状態(SOC=100%)となるときのOCVに基づいて設定される。電力系統200の停電時には、制御装置23は、直流電圧VDが参照電圧VDrになるように双方向チョッパ32を制御する。
【0114】
インバータ33は、制御装置23によって制御される。電力系統200の健全時には、インバータ33は、コンバータ31から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電圧VDを交流電圧VOに変換して負荷120に供給する。電力系統200の停電時には、インバータ33は、蓄電装置130から双方向チョッパ32および直流ラインL1,L2を介して供給される直流電圧VDを交流電圧VOに変換して負荷120に供給する。インバータ33の出力電圧VOは所望の値に制御可能になっている。制御装置23は、交流出力電圧VOが参照交流電圧VOrになるようにインバータ33を制御する。インバータ33は「第3の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0115】
制御装置23は、交流電圧VI、交流電流Ii、直流電圧VD,VB、直流電流IB、交流電圧VO、交流電流Io、操作部22からの信号などに基づいてUPS150全体を制御する。
【0116】
電力系統200の健全時において、アグリゲータサーバ210からDR予告信号を受信した場合には、制御装置23は、電力系統200からコンバータ31およびインバータ33を介して供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向チョッパ32およびインバータ33を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向チョッパ32を制御する。蓄電装置130のSOCがSOCwaitまで低下したときには、制御装置23は、蓄電装置130の放電を停止する。すなわち、制御装置23は、DRが開始される前に、停電補償用蓄電量を確保しつつ蓄電装置130を放電させる。これによると、DRが上げDRである場合において、DRの実行中、電力系統200から供給される電力の一部分を蓄電装置130が受け入れることが可能となる。
【0117】
DR予告信号を受信した後に下げDR指令をアグリゲータサーバ210から受信した場合には、制御装置23は、電力系統200からコンバータ31およびインバータ33を介して供給される交流電力と、蓄電装置130から双方向チョッパ32およびインバータ33を介して供給される交流電力との合計電力が負荷120に供給されるように、双方向チョッパ32を制御する。これによると、電力系統200から需要家100に供給される交流電力を減らすことができるため、需要家100は、電力会社が要請する電力の需要量の抑制に貢献することができる。ただし、蓄電装置130のSOCがSOCbackup以下に低下したときには、制御装置23は、アグリゲータサーバ210へDR不可信号を送信することにより、蓄電装置130の停電補償用蓄電量を確保する。
【0118】
DR予告信号を受信した後に上げDR指令をアグリゲータサーバ210から受信した場合には、制御装置23は、蓄電装置130に直流電力を蓄える充電動作を実行するように双方向チョッパ32を制御する。これによると、電力系統200から需要家100に供給される交流電力を増やすことができるため、需要家100は、電力会社が要請する電力の需要量の増加に貢献することができる。なお、DR予告信号に応答して、停電補償用蓄電量を確保しつつ蓄電装置130を放電させたことにより、上げDRの実行中、電力系統200から供給される電力の一部分を蓄電装置130が受け入れることが可能となる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1、5,6,21 VCB、2 高速スイッチ、7 電力変換器、8 双方向コンバータ、10,13~15 電流検出器、11 リアクトル、12,C1 コンデンサ、20 変圧器、22 操作部、23,212 制御装置、31 コンバータ、32 双方向チョッパ、33 インバータ、100 需要家、110 MPC、120 負荷、130 蓄電装置、140,216 通信装置、150 UPS、200 電力系統、210 アグリゲータサーバ、214 記憶装置、230 CPU、232 メモリ、234 I/O回路、T1 入力端子、T2 出力端子、T3 直流端子、L1,L2 直流ライン。
【要約】
第1の電力変換器(7)は、電力系統(200)からの第1の交流電力の一部分を直流電力に変換して蓄電装置(130)に蓄える充電動作と、蓄電装置(130)の直流電力を第2の交流電力に変換する放電動作とを選択的に実行する。制御装置(23)は、電力系統(200)における電力需給を調整するサーバ(210)と通信接続される。電力系統(200)の健全時、制御装置(23)は、蓄電装置(130)が満充電状態になるように充電動作を制御する。デマンドレスポンスの予告信号をサーバ(210)から受信した場合には、制御装置(23)は、第1の交流電力および第2の交流電力の合計電力を負荷に供給するように放電動作を制御し、蓄電装置(130)のSOCが待機用SOCまで低下したことに応じて、放電動作を停止させる。制御装置(23)は、サーバ(210)から受信したデマンドレスポンス指令に応じて、放電動作または充電動作を制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11