(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20241111BHJP
B23Q 7/00 20060101ALI20241111BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20241111BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20241111BHJP
B23Q 15/26 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q7/00 G
B23Q7/00 M
B23Q1/01 T
B23Q1/52
B23Q15/26
(21)【出願番号】P 2024046292
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-79534(JP,A)
【文献】実開昭60-149727(JP,U)
【文献】国際公開第2019/053830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 7/00
B23Q 1/01
B23Q 1/52
B23Q 15/26
G01G 9/00
G01G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが取付けられたパレットの質量及び重心位置の推定装置であって、
ベースと、
前記ベースに取り付けられ、水平方向に延在する回転中心軸周りに前記パレットを回動可能かつ負荷を取得可能に構成された駆動部と、
前記駆動部に回動可能に取り付けられ、前記ワークを組付ける上面を有する前記パレットを保持し、前記パレットの前記上面を水平面側へ移動した水平状態と前記パレットの前記上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含むアーム回転範囲内で姿勢変更するためのアームと、
前記アームを単独で、前記アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに前記駆動部に作用する第1の基準負荷と、前記第1のアーム位置とは異なる前記アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと回動したときに前記駆動部に作用する第2の基準負荷と、前記水平状態における前記パレットのパレット中央部分と前記駆動部の前記回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、を記憶する記憶部と、
前記アームによって保持した前記パレットを前記アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに前記駆動部に作用する第1の負荷、及び、前記アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと姿勢変更したときに前記駆動部に作用する第2の負荷を取得し、少なくとも前記基準距離、前記第1の基準負荷、前記第2の基準負荷、前記第1の負荷、及び、前記第2の負荷に基づいて前記パレットの質量及び重心位置を推定する推定部と、
を備える、推定装置。
【請求項2】
ワークが取付けられたパレットの質量及び重心位置の推定方法であって、
負荷を取得可能に構成された駆動部に回動可能に取り付けられたアームによって、前記ワークを組付ける上面を有する前記パレットを保持し、前記パレットの前記上面を水平面側へ移動した水平状態と、前記パレットの前記上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含むアーム回転範囲内で姿勢変更することと、
前記アームを単独で、前記アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに、前記駆動部に作用する第1の基準負荷を取得することと、
前記アームを単独で、前記アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと回動したときに、前記駆動部に作用する第2の基準負荷を取得することと、
前記アームによって保持した前記パレットを前記アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに前記駆動部に作用する第1の負荷を取得することと、
前記アームによって保持した前記パレットを前記アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと姿勢変更したときに前記駆動部に作用する第2の負荷を取得することと、
前記水平状態における前記パレットのパレット中央部分と前記駆動部の回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、少なくとも前記第1の基準負荷、前記第2の基準負荷、前記第1の負荷、及び、前記第2の負荷に基づいて前記パレットの質量及び重心位置を推定すること、
を含む、パレットの質量及び重心位置の推定方法。
【請求項3】
工具を装着する主軸と、
前記ワークが組付けられた前記パレットを前記アームから受け取り、前記直立状態で取付け可能なテーブルと、
前記テーブルを支持するテーブル支持部、第1のアクチュエータ取付部、及び、第2のアクチュエータ取付部が一体で形成されたハウジングと、
前記第1のアクチュエータ取付部及び前記第2のアクチュエータ取付部に取り付けられ、前記第1のアクチュエータ取付部及び前記第2のアクチュエータ取付部に、前記ハウジングに対して離反又は接近する方向に力を作用し、前記ハウジングを弾性変形させるアクチュエータと、
請求項1に記載の推定装置と、
前記推定装置によって推定した前記パレットの質量及び重心位置に基づいて、前記アクチュエータが前記第1のアクチュエータ取付部及び前記第2のアクチュエータ取付部に作用する調整力を計算する計算部と、
第1のアクチュエータ取付部及び前記第2のアクチュエータ取付部に計算した前記調整力が作用するように前記アクチュエータを作動し、前記ハウジングを弾性変形させて前記テーブル支持部の位置又は姿勢を変化させることによって、前記テーブルの位置を制御するテーブル位置制御装置と、
を備える、工作機械。
【請求項4】
前記テーブルは、前記パレットを取り付けた状態で回転可能、かつ、負荷を取得可能に構成され、
前記推定部は、第1のテーブル回転位置において前記パレットを取り付けた前記テーブルに作用する第1のテーブル負荷、及び、第1のテーブル回転位置から前記テーブルを90度回転した第2のテーブル回転位置において前記パレットを取り付けた前記テーブルに作用する第2のテーブル負荷を取得し、
前記基準距離、前記第1の基準負荷、前記第2の基準負荷、前記第1の負荷、前記第2の負荷、前記第1のテーブル負荷、及び、前記第2のテーブル負荷に基づいて前記パレットの質量及び重心位置を推定する、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記推定装置は、前記推定した前記パレットの質量が、前記記憶部に記憶されたテーブル取付け可能上限質量、又は、前記アームの保持可能上限質量を超過する場合に、超過している旨を報知する報知部を備える、請求項3又は請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記推定装置は、前記推定した前記パレットの質量と前記パレットの重心位置に応じて、前記アーム及び前記工作機械の送り軸の動作の速度及び/又は加速度を制御するように構成されている、請求項3又は請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械(マシニングセンタ)のパレット交換装置(APC:Automatic Pallet Changer)によるワーク重量検出方法が開示されている。この方法によれば、パレット昇降サーボモータの負荷に基づいてワークの重量を計算し、計算した重量に合わせてパレット昇降サーボモータの加速度やサーボループゲインを最適化することができる。しかしながら、ワークの加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させるためには、ワークの重量だけではなく重心位置も検出できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、ワークの加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させるために、部品点数を増やすことなくワークが取り付けられたパレットの質量及び重心位置を精度よく推定する工作機械の推定装置及び推定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一の態様によれば、ワークが取付けられたパレットの質量及び重心位置の推定装置であって、ベースと、ベースに取り付けられ、水平方向に延在する回転中心軸周りにパレットを回動可能かつ負荷を取得可能に構成された駆動部と、駆動部に回動可能に取り付けられ、ワークを組付ける上面を有するパレットを保持し、パレットの上面を水平面側へ移動した水平状態とパレットの上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含むアーム回転範囲内で姿勢変更するためのアームと、アームを単独で、アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに駆動部に作用する第1の基準負荷と、第1のアーム位置とは異なるアーム回転範囲内の第2のアーム位置へと回動したときに駆動部に作用する第2の基準負荷と、水平状態におけるパレットのパレット中央部分と駆動部の回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、を記憶する記憶部と、アームによって保持したパレットをアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第1の負荷、及び、アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第2の負荷を取得し、少なくとも基準距離、第1の基準負荷、第2の基準負荷、第1の負荷、及び、第2の負荷に基づいてパレットの質量及び重心位置を推定する推定部と、を備える、推定装置が提供される。
【0006】
本発明の一の態様によれば、ワークが取付けられたパレットの質量及び重心位置の推定方法であって、負荷を取得可能に構成された駆動部に回動可能に取り付けられたアームによって、ワークを組付ける上面を有するパレットを保持し、パレットの上面を水平面側へ移動した水平状態と、パレットの上面を鉛直面側へ移動した直立状態との間を含むアーム回転範囲内で姿勢変更することと、アームを単独で、アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに、駆動部に作用する第1の基準負荷を取得することと、アームを単独で、アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと回動したときに、駆動部に作用する第2の基準負荷を取得することと、アームによって保持したパレットをアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第1の負荷を取得することと、アームによって保持したパレットをアーム回転範囲内の第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第2の負荷を取得することと、水平状態におけるパレットのパレット中央部分と駆動部の回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、少なくとも第1の基準負荷、第2の基準負荷、第1の負荷、及び、第2の負荷に基づいてパレットの質量及び重心位置を推定すること、を含む、パレットの質量及び重心位置の推定方法が提供される。
【0007】
本発明の一の態様によれば、工具を装着する主軸と、ワークが組付けられたパレットをアームから受け取り、直立状態で取付け可能なテーブルと、テーブルを支持するテーブル支持部、第1のアクチュエータ取付部、及び、第2のアクチュエータ取付部が一体で形成されたハウジングと、第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に取り付けられ、第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に、ハウジングに対して離反又は接近する方向に力を作用し、ハウジングを弾性変形させるアクチュエータと、本発明の一の態様に係る推定装置と、推定装置によって推定したパレットの質量及び重心位置に基づいて、アクチュエータが第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に作用する調整力を計算する計算部と、第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に計算した調整力が作用するようにアクチュエータを作動し、ハウジングを弾性変形させてテーブル支持部の位置又は姿勢を変化させることによって、テーブルの位置を制御するテーブル位置制御装置と、を備える、工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一の態様に係る推定装置は、アームを単独で、第1のアーム位置へと回動したときに駆動部に作用する第1の基準負荷と、第2のアーム位置へと回動したときに駆動部に作用する第2の基準負荷と、水平状態におけるパレットのパレット中央部分と駆動部の回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、を記憶する記憶部を備える。また、推定装置は、アームによって保持したパレットをアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第1の負荷及び第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第2の負荷を取得し、少なくとも基準距離、第1の基準負荷、第2の基準負荷、第1の負荷、及び、第2の負荷に基づいてパレットの質量及び重心位置を推定する推定部を備える。このため、駆動部及びアームを用いてパレットの質量及び重心位置を推定することができ、部品点数を増やすことなくワークが取り付けられたパレットの質量及び重心位置を精度よく推定することができる。これによって、ワークの取付け位置の確認及び調整を容易にし、また工作機械の作動を制御して、ワークの加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させることができる。
【0009】
本発明の一の態様に係る推定方法によると、アームを単独で、アーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに、駆動部に作用する第1の基準負荷を取得し、第2のアーム位置へと回動したときに、駆動部に作用する第2の基準負荷を取得することができる。また、アームによって保持したパレットをアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第1の負荷を取得し、第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部に作用する第2の負荷を取得することができる。さらに、水平状態におけるパレットのパレット中央部分と駆動部の回転中心軸との水平方向距離となる基準距離と、少なくとも第1の基準負荷、第2の基準負荷、第1の負荷、及び、第2の負荷に基づいてパレットの質量及び重心位置を推定することができる。このため、駆動部及びアームを用いてパレットの質量及び重心位置を推定することができ、部品点数を増やすことなくワークが取り付けられたパレットの質量及び重心位置を精度よく推定することができる。これによって、ワークの取付け位置の確認及び調整を容易にし、また工作機械の作動を制御して、ワークの加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の一の態様に係る工作機械によると、本発明の一の態様に係る推定装置を備えるため、駆動部及びアームを用いてパレットの質量及び重心位置を推定することができ、部品点数を増やすことなくワークが取り付けられたパレットの質量及び重心位置を精度よく推定することができる。さらに、工作機械は、アクチュエータと、推定装置によって推定したパレットの質量及び重心位置に基づいて、アクチュエータが第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に作用する調整力を計算する計算部とを備える。また、工作機械は、第1のアクチュエータ取付部及び第2のアクチュエータ取付部に、計算された調整力が作用するようにアクチュエータを作動し、ハウジングを弾性変形させてテーブル支持部の位置又は姿勢を変化させることによって、テーブルの位置を制御するテーブル位置制御装置を備える。これによって、ワークの取付け位置の確認及び調整をさらに容易にし、また工作機械の作動を制御して、ワークの加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る推定装置を備える工作機械の平面図を示す。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る推定装置の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、パレット係合位置においてピンに係合したフィンガをアームの長手方向から見た図を示す。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る工作機械のブロック図を示す。
【
図5】
図5(a)は、第1の負荷を取得する際のアームの側面図を示し、
図5(b)は、第1の基準負荷を取得する際のアームの側面図を示す。
【
図6】
図6(a)は、第2の負荷を取得する際のアームの側面図を示し、
図6(b)は、第2の基準負荷を取得する際のアームの側面図を示す。
【
図7A】
図7Aは、アームが水平面に対してθ1度だけ傾斜した位置において負荷を取得する際のアームの側面図を示す。
【
図7B】
図7Bは、アームが水平面に対してθ2度だけ傾斜した位置において負荷を取得する際のアームの側面図を示す。
【
図8a-8b】
図8aは、重心位置とパレット中央とが一致しない場合の第1の負荷を取得する際のアームの側面図を示し、
図8bは、第2の負荷を取得する際のアームの側面図を示す。
【
図8c-8d】
図8cは、第1のテーブル負荷を取得する際のテーブルの正面図を示し、
図8bは、第2のテーブル負荷を取得する際のテーブルの正面図を示す。
【
図9】
図9は、テーブルの位置制御のフローチャートを示す。
【
図10】
図10は、工作機械の外側から搬入したパレットの側面図を示す。
【
図11】
図11は、係合位置まで回動してパレットに対して位置決めしたアームの側面図を示す。
【
図12】
図12は、パレット係合位置へと作動したフィンガをピンに係合させたパレットの側面図を示す。
【
図13】
図13は、直立状態へ姿勢変更したパレットの側面図を示す。
【
図14】
図14は、APCアームに保持されたパレットの側面図を示す。
【
図15】
図15は、直立状態においてフィンガがパレット係合解除位置へと作動したパレットの側面図を示す。
【
図16】
図16は、待機位置まで回動したアームの側面図を示す。
【
図17】
図17は、APCアームによって入れ替えた第2のパレットの側面図を示す。
【
図18】
図18は、入れ替えたパレットを取り付けるC軸ロータリテーブルの側面図を示す。
【
図19】
図19は、パレットをC軸ロータリテーブルへ引き渡すAPCアームの側面図を示す。
【
図20】
図20は、自重によって傾斜するパレット及びワークの側面図を示す。
【
図21】
図21は、たおれ補正をするためにアクチュエータが作動するC軸ロータリテーブルの側面図を示す。
【
図22】
図22は、加工を行うために主軸側へ向けて回動したC軸ロータリテーブルの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る推定装置を備えた工作機械について説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0013】
図1に、本実施形態に係る推定装置としてのパレット姿勢変更装置42を備える工作機械10の概略的な平面図を示す。工作機械10は、加工によって生じる切りくずの飛散等を防止するためのスプラッシュガード16に覆われている。また、スプラッシュガード16内部は、鉛直方向に平行な旋回軸R2周り(
図2参照)に回転可能(旋回可能)に配置された旋回扉46によって、加工室12と段取り室14とに仕切られている。さらに、スプラッシュガード16には、作業者WK(
図4参照)が外部から加工室12及び段取り室14内部へアクセスできるように、オペレータ扉12a及び段取り室扉14aがそれぞれ取り付けられている。
【0014】
加工室12内には、被加工物としてのワークW1、W2(
図10及び
図17参照)を加工するための主軸26、テーブルとしてのC軸ロータリテーブル36などの機器が配置されている。工作機械10を設置する工場等の床面に配置されるベッド18の上面には、左右方向、すなわちX軸方向に沿って延在する一対のX軸直動ガイド30が配置され、X軸直動ガイド30上には、これに沿って往復動可能なコラム22が立設配置されている。また、工作機械10は、コラム22の前面に、鉛直方向(Y軸方向、
図1の紙面に対して垂直方向)に沿って延在する一対のY軸直動ガイド(図示省略)を備え、Y軸直動ガイドには、これに沿って往復動可能なサドル24が配置されている。サドル24の前方側には、水平方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された主軸26が配置されている。さらに、主軸26の前方側(段取り室14側)には、ワークW1、W2を加工するための工具28が脱着可能に取り付けられている。工作機械10は、主軸26と電気的に接続され、加工を制御するためのNC装置(図示省略)を備えており、工具28を用いたワークW1、W2の加工を制御可能に構成されている。
【0015】
工作機械10の主軸26の前方側には、ベッド18の上面に前後方向、すなわちZ軸方向に沿って延在する一対のZ軸直動ガイド38を備え、Z軸直動ガイド38上には、これに沿って往復動可能なZ軸テーブル32が配置されている。また、Z軸テーブル32上には、鉛直方向に平行な回転軸周り(B軸周り)に回転可能に構成されたB軸ロータリテーブル34が配置されている。さらに、B軸ロータリテーブル34上には、取り付けられるパレット76(第1のパレット)の上面76a(
図2参照)が鉛直面側にある直立状態となるように構成されたテーブルとしてのC軸ロータリテーブル36が配置されている。C軸ロータリテーブル36は、また、取り付けたワークW1、W2及びパレット76を水平方向に沿った中心軸周り(C軸周り)に回転可能に構成されている。このように、Z軸テーブル32、B軸ロータリテーブル34及びC軸ロータリテーブル36によって、ワークW1、W2と工具28との位置合わせをすることができる。さらに、工作機械10は、コラム22をX軸直動ガイド30に沿って駆動させるためのX軸送り装置、サドル24をY軸直動ガイドに沿って駆動させるためのY軸送り装置、及び、Z軸テーブル32をZ軸直動ガイド38に沿って駆動させるためのZ軸送り装置(いずれも図示省略)を備える。
【0016】
図4及び
図18に示すように、C軸ロータリテーブル36は、テーブル36d、テーブル36dの回転軸を支持するテーブル支持部36c、C軸ロータリテーブル36の背面側に配置された第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bが一体で形成されたハウジング36eを備える。C軸ロータリテーブル36のテーブル36dの回転中心軸CC(
図8c参照)は水平方向に沿って延在し、第1のアクチュエータ取付部36aは、C軸ロータリテーブル36の下方側で水平方向に沿って延在し、第2のアクチュエータ取付部36bは、C軸ロータリテーブル36の上方側で水平方向に沿って延在する。第1のアクチュエータ取付部36aと回転中心軸CCとの鉛直方向の間隔と第2のアクチュエータ取付部36bと回転中心軸CCとの鉛直方向の間隔は同一になるように構成されている。また、C軸ロータリテーブル36の背面側には、回転中心軸CCと直交するように鉛直方向に沿って延在するアクチュエータ35が、第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bを介して取り付けられている。アクチュエータ35は、ここでは引き込み型の油圧シリンダであり、第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに、ハウジング36eに対して離反又は接近する方向に力を作用し、ハウジング36eを弾性変形させるように構成されている。また、テーブル36dは、内蔵するサーボモータ36fによって回転可能に構成されており、サーボモータ36fは、回転位置を検出するように構成されたエンコーダ36gを有し、サーボモータ36fに電力を供給すると共にエンコーダ36gから回転位置を検出するように構成されたサーボアンプ36hに電気的に接続されている。なお、ここでは、アクチュエータ35は一体で形成されているものとして説明するが、これに限らず、例えば、アクチュエータは、第1のアクチュエータ取付部側と第2のアクチュエータ取付部側に分割した複数のユニットで形成されてもよい。テーブル支持部36cは、軸受などで構成することができる。
【0017】
図1に示すように、段取り室14内には、加工前のワークW1をパレット76に取付け(組付け)、加工後のワークW2を取り外すといった段取りを行うための段取りステーション40が配置されている。段取りステーション40は、パレット76に取付けられたワークW1、W2の姿勢を変更するためのパレット姿勢変更装置42を備える。また、段取りステーション40は、パレット76並びにパレット76に取付けられたワークW1、W2及び/又は治具の何れかに、油、エア、切削液を含む媒体を供給する媒体供給部80を備える。媒体供給部80は、パレット76の下面76b(
図2参照)に取り付けられたカプラ(図示省略)を介して媒体を供給するように構成されている。
【0018】
加工室12と段取り室14とを仕切る旋回扉46は、スプラッシュガード16の側壁間を鉛直方向に沿って延在し、スプラッシュガード16の側壁の下方側に配置された旋回扉保持部48に載置されている。具体的には、旋回扉46及び旋回扉保持部48の双方に形成された嵌め合い部分(図示省略)が嵌め合わされた状態で載置されている。また、旋回扉46は、機械正面から見て左右方向、すなわち、X軸方向を幅方向とする。旋回扉46の下方側には、旋回扉46とは別個に、又は、旋回扉46と連動して、鉛直方向(Y軸方向)に平行な旋回軸R1周りに旋回可能に構成されたパレット交換装置44が配置されている。パレット交換装置44は、段取り室14と加工室12との間で加工前のワークW1及び加工後のワークW2を受渡しするために、鉛直方向(Y軸方向)に平行な旋回軸R1周りに旋回可能(回転可能)に配置された旋回アームとしてのAPCアーム50と、APCアーム50を旋回させるための旋回駆動部としてのAPCアーム駆動機構56とを備える。また、APCアーム50は、APCアーム駆動機構56によって、鉛直方向(
図2のY1方向)に沿って上下動可能に構成されている。APCアーム駆動機構56は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータ(図示省略)を有しており、アクチュエータによってAPCアーム50を旋回させ、上下動させる。また、アクチュエータは、工作機械10に配置された制御装置100(
図4参照)によって制御可能に構成されている。なお、旋回扉保持部48は、スプラッシュガード16の側壁の下方側に配置されているとして説明したが、これに限らず、旋回扉保持部は、ベッド、又は、床面に直接設置されてもよい。また、旋回扉保持部は、APCアームが下降し、旋回扉と係合していないときに、APCアームに代えて旋回扉の回転方向及び重力方向の動きを規制できればよいため、嵌め合い部分以外の態様によって旋回扉を保持してもよい。
【0019】
APCアーム50は、ワークW1、W2の受け渡しをしないときは、格納位置として、その長手方向を旋回扉46の幅方向、すなわち、X軸方向に沿うように位置付けられて格納される。また、旋回扉46の下方側には、その下方側(鉛直方向下側)へ向かうにつれて、段取りステーション40及び加工室12の側(Z軸方向前方側及び後方側)へ向けて延在する傾斜面を有する切りくずカバー52が形成されている。切りくずカバー52は、旋回扉46と係合したAPCアーム50を上方側から覆うように形成されており、加工室12における加工によって生じた切りくず等がAPCアーム50に付着することを防止又は抑制することができる。
【0020】
図2に示すように、APCアーム50は、その長手方向の両端部に、パレット76を保持するための第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84を備える。第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、APCアーム50の幅方向両端部に柱状部材を有し、APCアーム50の長手方向から見て凹形状である。パレット76のAPCアーム50と対向する側面となる当接側面76dには、保持部材76fが取り付けられており、保持部材76fは、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分に嵌め込むことができる寸法の板状に形成されている。このため、パレット76が直立状態にあるときには、保持部材76fが第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分に嵌め込まれると共に、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接する。これによって、APCアーム50は、パレット76を支持し、直立状態のパレット76及びこれに組付けられた治具96及びワークW1、W2(
図10及び
図17参照)を保持することができる。
【0021】
なお、ここでは、APCアーム50の第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、保持部材76fを凹形状部分に嵌め込み、両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接することによってパレット76を支持するものとして説明するが、これに限らない。例えば、APCアームの保持部は、パレットの上面及び下面を挟み込むような機構で構成されてもよい。
【0022】
また、
図1に示すように、APCアーム50と旋回扉46とは係合機構54によって係合することができる。係合機構54は、APCアーム50側の係合部としての係合ピン54a及び旋回扉46側の被係合部としてのガイド穴46aを含んで構成されている。係合ピン54aは、APCアーム50の上面側に、上方側へ向けて延在して形成されている。このため、係合ピン54aは、APCアーム50の上下動に伴って上下動するように構成されている。また、ガイド穴46aは、旋回扉46の底部において、挿し込まれた係合ピン54aと係合可能に形成されている。ここでは、係合ピン54aはAPCアーム50の旋回軸RA2を中心とし180°等配で2つ配置され、ガイド穴46aは係合ピン54aと対応するようにAPCアーム50の旋回軸RA2を中心として90°等配に4箇所形成されている。なお、係合ピン54a及びガイド穴46aは最低1対を配置すればよい。係合機構54は、係合ピン54aとガイド穴46aとが係合、又は、係合解除できるように構成されており、これによって、APCアーム50と旋回扉46とを係合することができる。このため、APCアーム50と旋回扉46とが係合している場合には、APCアーム50と旋回扉46とを一体で旋回させることができる。また、APCアーム50と旋回扉46との係合が解除されている場合には、APCアーム50にパレット76、94の受け渡しをさせるため、あるいは、受け渡しをしていないAPCアーム50を格納位置に格納するために、APCアーム50を単独で旋回させることができる。なお、ここでは、APCアーム50が、係合ピン54aを有し、旋回扉46の底部にはガイド穴46aが形成されているものとして説明するが、これに限らず、例えば、旋回扉は、底部から延在する係合ピンを有してもよく、APCアームにガイド穴が形成されてもよい。また、係合ピン54aとガイド穴46aとの組み合わせだけでなく、APCアーム及び旋回扉の双方に配置された爪部等を互いに係合/係合解除するように構成されてもよい。さらに、係合ピンは、棒状又は柱状のものに限らず、例えば、係合機構に配置された駆動機構を用いて上下動可能に構成されてもよい。
【0023】
パレット交換装置44は、具体的には、以下のように作動する。工作機械10において、パレット76の受け渡しを開始すると、係合機構54は旋回扉46とAPCアーム50との係合を解除し、APCアーム駆動機構56はAPCアーム50を下降させる。このとき、旋回扉46は、係合機構54の係合ピン54aとガイド穴46aとの係合が解除されることによってAPCアーム50との係合が解除され、旋回扉保持部48に嵌め合わされ、載置される。APCアーム50が下降すると、APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を90度(又は270度)旋回させる。このため、APCアーム50の第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84は、回転軌跡TR1(
図1参照)に沿ってC軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42の側へ移動し、APCアーム50の長手方向がZ軸方向に沿った状態となる。
【0024】
第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84がC軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42の側へ移動すると、APCアーム駆動機構56はAPCアーム50を上昇させる。APCアーム50が上昇することによって、係合機構54の係合ピン54aはガイド穴46aに挿入され、係合する。これによって、旋回扉46とAPCアーム50とが係合し、旋回扉46は、旋回扉保持部48に代えてAPCアーム50に積載される。
【0025】
APCアーム50が旋回扉46を積載すると、APCアーム駆動機構56は、旋回扉46及びAPCアーム50を上昇させる。これによって、第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84の凹形状部分にパレット76の保持部材76fを嵌め込み、パレット76の当接側面76dに両端部の柱状部材を当接させることによって、パレット76を保持することができる。ここで、C軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42からAPCアーム50へとパレット76が受け渡される。C軸ロータリテーブル36及びパレット姿勢変更装置42はAPCアーム50にパレット76を受け渡したら、旋回するAPCアーム50や旋回扉46と干渉しない待機位置に退避する。これに続いて、APCアーム50は、これらを一体で180度旋回させる。これによって、APCアーム50が保持するパレット76を加工室12側と段取り室14側とで入れ替えることができる。パレット76が入れ替えられると、C軸ロータリテーブル36及び/又はパレット姿勢変更装置42のアーム64は、待機位置からパレット受渡位置へと移動し、入れ替えられたパレット76、94を保持する。さらに、APCアーム駆動機構56は、旋回扉46とパレット76を保持した状態のAPCアーム50とを下降し、APCアーム50だけに積載されていた旋回扉46は、旋回扉保持部48に嵌め合わされた状態で載置される。また、係合機構54の係合ピン54aは、ガイド穴46aから引き抜かれ、係合が解除される。APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を下降させた上で90度旋回して第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84を旋回扉46の下方側へ移動する。
【0026】
第1のパレット保持部82及び第2のパレット保持部84が旋回扉46の下方側へ移動すると、APCアーム駆動機構56は、APCアーム50を上昇させ、旋回扉46は旋回扉保持部48に代えてAPCアーム50に積載される。さらに、係合機構54の係合ピン54aはガイド穴46aに挿入され、これらは係合する。これによって、APCアーム50は旋回扉46の下方側の格納位置に格納される。
【0027】
図2に示すように、段取りステーション40には、段取りした加工前のワークW1及び加工後のワークW2(
図10及び
図17参照)が組付けられたパレット76をAPCアーム50との間で受渡しするためのパレット姿勢変更装置42が配置されている。パレット76は、ワークW1、W2及び治具96(
図10参照)を組付ける上面76aと、下面76bとを有する板状に形成されている。また、パレット76は、上面76a及び下面76bに接し、パレット76のX軸方向外側に位置する2つの係合側面76eと、2つの係合側面76eの間に位置し、パレット76のZ軸方向後方側に位置し、APCアーム50と対向する当接側面76dと、パレット76のZ軸方向前方側に位置し、段取り室扉14aと対向する前方側面76cを有する。さらに、2つの係合側面76eは、パレット76と一体で形成され、その外側、すなわち、X軸方向外側へ向けて延伸するピン78を有する。ここでは、各係合側面76eには、係合側面76eの面方向に沿って延伸する円柱状のピン78が2つずつ形成されている。2つのピン78は、間隔をあけて、係合側面76eの長手方向(Z軸方向)の両端側に1つずつ形成されている。なお、ピンは、各係合側面に1つずつ形成されてもよく、また、角柱形状や三角柱形状等、円柱形状以外の形状に形成されてもよい。
【0028】
段取り室14の段取りステーション40にパレット76を配置し、これにワークW1及び治具96を組み付ける作業者WKは、パレット76の上面76aを水平面側へ向けた水平状態で、パレット76を媒体供給部80の上に配置する。段取りステーション40とパレット76が直立状態で取り付けられるC軸ロータリテーブル36との間でパレット76を受け渡しするために、パレット姿勢変更装置42は、パレット76を保持し、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するように構成されている。具体的には、パレット姿勢変更装置42は、旋回扉46及びAPCアーム50のZ軸方向前方側にX軸方向に沿って配置されたベース60と、ベース60に取り付けられ、X軸方向(水平方向)に沿って延在する回転軸を回転中心軸RA1周り(R1方向)に回動可能に構成された駆動部62と、駆動部62に回転可能に取り付けられ、2つの係合側面76eに対向したときに、これらと平行になるように延在し、パレット76を保持することのできる一対のアーム64とを備える。
図10に示すように、ベース60は、APCアーム50の旋回中心位置に配置されたAPCアーム駆動機構56の外周部からZ軸方向前方側(段取り室扉14a側)へ向けて延在する。このため、ベース60を平面視でAPCアーム50の回転軌跡TR1の内側に配置することができ、ワークW1、W2が組付けられたパレット76を端部に保持してAPCアーム50が旋回する際に、切りくずがベース60に直接落下することを抑制することができる。
【0029】
駆動部62は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータ62a(
図4参照)を備えており、これらによって回転軸を回転させる。サーボモータ62aは、回転位置を検出するように構成されたエンコーダ62bを有し、サーボモータ62aに電力を供給すると共にエンコーダ62bから回転位置を取得するように構成されたサーボアンプ62cに電気的に接続されている。また、サーボモータ62aは、工作機械10に配置された制御装置100(
図4参照)によって制御可能に構成されている。さらに、パレット姿勢変更装置42は、後述するように、直立状態と水平状態との間だけではなく、直立状態における直立位置から水平状態における係合位置を越えた退避位置までアーム64を回動させ、位置決め可能(静止可能)に構成されている。また、パレット姿勢変更装置42は、直立位置と係合位置との間の待機位置といった中間位置においても位置決め可能(静止可能)に構成されている。
【0030】
なお、以下の説明では、パレット76は平面視で正方形状に形成されており、互いに平行な2つの係合側面76eが、互いに平行な一対のアーム64によって保持されるものとして説明するが、これに限らない。例えば、パレットは、角部が面取りされている場合やパレットが平面視で八角形状又は丸形状といった正方形状以外の形状も含みうる。さらに、パレットが正方形状以外の形状であるために2つの係合側面が互いに平行でない場合であっても、一対のアームは、例えば、2つの係合側面と平行になるように平面視でV字状に延在するといった互いに平行ではない場合も含みうる。また、パレットが丸形状の場合には、アーム形状を湾曲させ、パレットの外形に沿うように設計してもよい。
【0031】
図2に示すように、アーム64は、駆動部62の回転軸に連結されるアーム基端部66と、係合側面76eに対向できるように、アーム基端部66のX軸方向外側部分から直線状に延在するアーム係合部68とを有する。アーム64のベース60側となるアーム基端部66のX軸方向内側には、アーム64によってパレット76を保持したときに、当接側面76dと対向する位置に受け部74が形成されている。受け部74は、水平状態で工作機械10の側方(X軸方向外側)から見たときに、L字状又は逆L字状に形成されており、アーム64に対して垂直方向に延在する平面状の第1のパレット受け面74aと、アーム64の長手方向に沿って延在する平面状の第2のパレット受け面74bとを有し、第1のパレット受け面74aに当接側面76dを、第2のパレット受け面74bに下面76bを当接できるように寸法決めされている。なお、第1のパレット受け面及び第2のパレット受け面は、厳密に寸法決めされる必要はなく、パレットに当接してパレットの自重を確実に受け止める程度に形成されていればよい。このため、第1のパレット受け面及び第2のパレット受け面は平面に限らず、例えば、曲面形状や多角錐形状に形成されてもよく、これによって、パレットを点接触又は線接触の状態で支持してもよい。
【0032】
各アーム64は、アーム係合部68の長手方向の両端部、すなわち、Z軸方向の両端部に、アーム係合部68の長手方向に沿ってスライド可能に構成された2つのスライド部70を備える。また、2つのスライド部70には、パレット76と係合するためのフィンガ72がそれぞれ取り付けられている。2つのフィンガ72の間隔は、2つのピン78の間隔に対応するように構成されている。2つのスライド部70にはアーム係合部68内に配置されたロッドが一体で接続され、ロッドは油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータに接続される(何れも図示省略)。このため、アクチュエータによるロッドの作動に応じて、スライド部70及びフィンガ72をパレット係合位置とパレット係合解除位置との間で同一方向に連動させることができる。ここでは、パレット係合位置がパレット係合解除位置よりもアーム基端部66側となるように構成されている。また、スライド部70及びフィンガ72を作動するアクチュエータは、工作機械10に配置された制御装置100(
図4参照)によって制御可能に構成されている。
図3に示すように、フィンガ72は、パレット76を保持するためにアーム係合部68をパレット76の側方へ移動したときに係合側面76eと対向する中央部72cと、中央部72cの上方側(上面76a側)に形成された上面側規制部72aと、中央部72cの下方側(下面76b側)に形成された下面側規制部72bとを有する。このため、中央部72c、上面側規制部72a及び下面側規制部72bによって溝部72dが形成されている。溝部72dは、フィンガ72をアーム64の長手方向から見たときに、パレット76側へ向けた凹状に形成されている。溝部72dは、その深さ方向が、ピン78の延伸方向と一致するように形成されている。このため、アーム係合部68をパレット76の係合側面76eの側方へ移動し、フィンガ72とピン78とがX軸方向に沿って対向していない位置(パレット係合解除位置)からフィンガ72とピン78とがX軸方向に沿って対向する位置(パレット係合位置)へ移動する(XF1方向に沿ってスライドする)ことによって、パレット76にフィンガ72を係合させることができる。これによって、アーム64は、パレット76を安定して保持することができる。また、凹形状の溝部72dは、フィンガ72の外側に対して開放された形状であるため、フィンガ72とピン78との間に加工により生じる切りくずを挟み込むことを防止又は抑制することができる。
【0033】
なお、ここでは、フィンガ72は、アーム64の長手方向から見たときにパレット76側へ向けた凹状に形成されているとして説明するが、これに限らず、ピンに係合できる形状であればよく、例えば、フィンガは、アームの長手方向から見たときにピンの側へ向けた開放したV字状等の他の形状で形成されてもよい。
【0034】
さらに、アーム係合部68の係合側面76eと対向する幅方向内側、すなわち、X軸方向内側には、係合側面76e側へ向けて延在するアーム凸部86(
図10参照)が形成されている。また、係合側面76eには、パレット76の内側へ凹むように形成されたパレット溝88が形成されており、アーム凸部86を挿し込むことができるように構成されている。これによって、アーム64は、フィンガ72とアーム凸部86の両方を用いてパレット76を保持することができるため、パレット76を安定して保持することができる。
【0035】
なお、ここでは、アーム係合部68のフィンガ72は、アーム係合部68の長手方向、すなわち、Z軸方向(
図3中のXF1方向)に沿ってパレット係合解除位置とパレット係合位置との間をスライド可能に構成されているとして説明するが、これに限らず、フィンガをX軸方向、すなわち、パレットと対向する方向(
図3中のXF2方向)にスライドして、パレットを保持するように構成されてもよい。このように構成した場合は、フィンガはアームの長手方向には変位しないため、長手方向についてはアームを省スペースにすることができ、アームをコンパクトに構成することができる。
【0036】
図4には工作機械10のブロック図を示す。工作機械10は、加工制御を行うためのNC装置102を有する制御装置100を備える。NC装置102は、駆動部62のためのサーボアンプ62cと電気的に接続されており、サーボアンプ62cにアーム64の回転位置の指令を送信すると共に、サーボアンプ62cを介してサーボモータ62aに発生した電流値又はトルク及びエンコーダ62bが検出したアーム64の回転位置を取得するように構成されている。このため、工作機械10は、サーボモータ62aに発生した電流値からパレット76を保持するアーム64に作用する荷重(負荷)をサーボモータ62aに発生するトルクとして取得(算出)することができる。なお、ここでは、駆動部62は、2本のアーム64からの負荷を一元的に取得するように構成されているものとして説明するが、これに限らず、例えば、2本のアームに各々対応する第1の駆動部及び第2の駆動部を配置し、これらで取得した負荷(トルク)を合算する等して負荷を取得してもよい。
【0037】
NC装置102は、また、C軸ロータリテーブル36のためのサーボアンプ36hと電気的に接続されており、サーボアンプ36hにテーブル36dの回転位置の指令を送信すると共に、サーボアンプ36hを介してサーボモータ36fに発生した電流値又はトルク及びエンコーダ36gが検出したテーブル36dの回転位置を取得するように構成されている。このため、工作機械10は、サーボモータ36fに発生した電流値からパレット76を保持するテーブル36dに作用する荷重(負荷)をサーボモータ36fに発生するトルクとして取得(算出)することができる。
【0038】
制御装置100は、さらに、記憶部104、推定部106及び計算部108を有する。記憶部104は、NC装置102が取得した駆動部62の負荷及びC軸ロータリテーブル36の負荷を記憶するように構成されている。また、記憶部104は、後述するように、アーム64を単独で、つまりアーム64自身の負荷を除いては無負荷の状態で、水平状態と直立状態の間を含むアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと回動したときに駆動部62に作用する第1の基準負荷TB1(
図5b参照)と、第1のアーム位置とは異なるアーム回転範囲内の第2のアーム位置へと回動したときに駆動部62に作用する第2の基準負荷TB2(
図6b参照)を予め記憶するように構成されている。また、水平状態におけるパレット76のパレット中央部分と駆動部62の回転中心軸RA1との水平方向距離となる基準距離Lを予め記憶するように構成されている。
【0039】
推定部106は、アーム64によって保持したパレット76をアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部62に作用する第1の負荷T1(
図5a参照)、及び、アーム回転範囲内の第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部62に作用する第2の負荷T2(
図6a参照)を取得し、基準距離L、第1の基準負荷TB1及び第1の負荷T1からワークW1を取り付けたパレット76の質量Mを推定するように構成されている。また、推定したパレット76の質量、第2の基準負荷TB2及び第2の負荷T2からワークW1を取り付けたパレット76の重心GW1の位置Hを推定するように構成されている。
【0040】
図5a及び
図5bを通じてパレット76の質量Mの推定方法について説明する。はじめに、
図5aに示すように、パレット76が水平状態、すなわちアーム64が係合位置にあるときのパレット中央部分(ここでは、重心GW1の位置にも相当)と駆動部62の回転中心軸RA1との水平方向距離となる基準距離Lを予め計測又は設計情報から予め取得し、記憶部104に記憶する。さらに、
図5bに示すように、アーム64が単独で、すなわち、アーム64自身の負荷を除いては無負荷の状態で、第1のアーム位置としての係合位置にあるときの第1の基準負荷TB1を取得し、記憶部104に記憶する。具体的には、予め定められた電流値とトルクの換算式を用いて、サーボモータ62aに発生した電流値から駆動部62に作用するトルクである第1の基準負荷TB1を取得する。つぎに、
図5aに示すように、パレット76を保持したアーム64が係合位置にあるときのサーボモータ62aの電流値を取得し、駆動部62に作用するトルクである第1の負荷T1を第1の基準負荷TB1と同じ方法で取得する。基準距離L、第1の基準負荷TB1、第1の負荷T1及び質量Mの関係式は以下のように表すことができる。
T1-TB1=MgL (1)
ここで、gは重力加速度を表す。
したがって、(1)式を
M=(T1-TB1)/gL (2)
と変形することによって、質量Mを推定(算定)することができる。
【0041】
つぎに、
図6a及び
図6bを通じてパレット76の重心GW1の位置、ここでは、重心位置距離Hの推定方法について説明する。重心位置距離Hは、パレット76を保持したアーム64が直立位置にあるときの重心GW1と駆動部62の回転中心軸RA1との間の水平方向距離と定義する。はじめに、
図6bに示すように、アーム64が単独で、すなわち、パレット76を保持することなく、第2のアーム位置としての直立位置にあるときに、サーボモータ62aに発生した電流値から駆動部62に作用するトルクである第2の基準負荷TB2を取得し、記憶部104に記憶する。具体的には、予め定められた電流値とトルクの換算式を用いて、サーボモータ62aに発生した電流値から駆動部62に作用するトルクである第2の基準負荷TB2を取得する。つぎに、
図6aに示すように、パレット76を保持したアーム64が直立位置にあるときのサーボモータ62aの電流値を取得し、駆動部62に作用するトルクである第2の負荷T2を第2の基準負荷TB2と同じ方法で取得する。パレット76が直立状態にあるときの重心GW1と駆動部62の回転中心軸RA1との水平方向距離となる重心位置距離Hと上記の様に求めた第2の基準負荷TB2及び第2の負荷T2及び質量Mの関係式は以下のように表すことができる。
T2-TB2=MgH (3)
ここで、gは重力加速度を表す。
したがって、(3)式を
H=(T2-TB2)/Mg (4)
と変形することによって、重心位置距離Hを推定(算定)することができる。
【0042】
パレット76の質量M及び重心位置距離Hは、アーム64が係合位置や直立位置以外の位置にある場合でも推定することができる。例えば、
図7Aに示すように、アーム64を水平面に対してθ1度だけ傾斜した場合の駆動部62に作用するトルクを第1の基準負荷TB1及び第1の負荷T1とし、そして、
図7Bに示すように、アーム64を水平面に対してθ2度だけ傾斜した場合の駆動部62に作用するトルクを第2の基準負荷TB2及び第2の負荷T2とした場合、これらの負荷、基準負荷、質量M及び重心位置距離Hとの関係は次式で表される。
T1-TB1=(L×cosθ1-H×sinθ1)Mg (5)
又は、
T2-TB2=(L×cosθ2-H×sinθ2)Mg (6)
ここでgは重力加速度を表す。
このため、(1)式と(6)式、(3)式と(5)式、又は(5)式と(6)式を連立させることによって、質量M及び重心位置距離Hを推定(算定)することができる。さらに、3か所以上のアーム位置で、それぞれ負荷と基準負荷を取得し、単回帰分析して質量M及び重心位置距離Hをさらに精度よく推定することもできる。
【0043】
制御装置100による質量M及び重心位置距離Hの推定は、負荷を取得した後であれば任意のタイミングで行えるように構成されている。例えば、APCアーム50によるパレット76の交換動作中にこれと平行して質量M及び重心位置距離Hを推定し、パレット76交換後にアクチュエータ35を作動することができる。これによって、推定時間分だけ作業サイクル時間を短縮することができる。
【0044】
上記の質量M及び重心位置距離Hの推定は、重心GW1の位置がパレット中央部にあるとの仮定の上に立つ。ワーク及び治具を含むパレット76の重心GW1は、原則パレット中央部付近に位置するように各種設計が行われているので、一定の精度で質量M及び重心位置距離Hを推定できるといえる。しかしながら、言い換えれば、ワークW1及び治具96は一品一様の設計であり、重心GW1は正確にはパレット中央には位置しないため、上述の仮定では、質量M及び重心位置距離Hを正しく推定できない場合がある。このような場合、重心GW1が基準距離Lの方向においてパレット中央部から遠ざかるほど、質量M及び重心位置距離Hを推定する精度は、低下する。そこで、
図8c及び
図8dに示すような、テーブル36dに取り付けられたパレット76の重心GW1の位置が、水平方向軸(C軸)周りに回転するC軸ロータリテーブル36の回転中心軸CCとX軸方向及び/又はY軸方向にずれている(図中のu及び/又はv)場合に、制御装置100の推定部106は、これらのずれ(u及びv)を推定するように構成されている。
【0045】
具体的な推定方法について、
図8aから
図8dを用いて説明する。はじめに、
図8a及び
図8bに示すように、制御装置100の推定部106は、パレット76を保持したアーム64が係合位置にあるときの第1の負荷T1を、パレット76を保持したアーム64が直立位置にあるときの第2の負荷T2を取得する。また、
図5(b)、
図6(b)に示すように、アーム64が単独で、すなわち、パレット76を保持することなく、係合位置にあるときの第1の基準負荷TB1を、パレット76を保持することなく、係合位置にあるときの第2の基準負荷TB2を取得し、あらかじめ記憶部104に記憶しておく。次に、
図8cに示すように、制御装置100の推定部106は、パレット76が引き渡されたC軸ロータリテーブル36が第1のテーブル回転位置にあるときにC軸ロータリテーブル36のサーボモータ36fに発生する電流値から、第1のテーブル回転位置においてテーブル36dに作用する第1のテーブル負荷T3(トルク)を取得する。具体的には、予め定められた電流値とトルクの換算式を用いて、サーボモータ36fに発生した電流値からテーブル36dに作用する第1のテーブル負荷T3を取得する。さらに、
図8dに示すように、制御装置100の推定部106は、第1のテーブル回転位置から90度回転した第2のテーブル回転位置へとテーブル36dを回転し、C軸ロータリテーブル36のサーボモータ36fに発生する電流値から、第2のテーブル回転位置においてテーブル36dに作用する第2のテーブル負荷T4(トルク)を取得する。具体的には、予め定められた電流値とトルクの換算式を用いて、サーボモータ36fに発生した電流値からテーブル36dに作用するトルクである第2のテーブル負荷T4を取得する。このように取得した各種情報は、以下の関係式で表される。
T1-TB1=Mg(L+v) (7)
T2-TB2=MgH (8)
T3=Mgu (9)
T4=Mgv (10)
ここで、gは重力加速度を表す。
(7)式から(10)式を連立させることによって、質量M、重心位置距離H及び重心GW1のC軸ロータリテーブル36の回転中心軸CCからのずれ(u及びv)は、
M=(T1-TB1―T4)/gL (11)
H=(T2-TB2)/Mg (12)
u=T3/Mg (13)
v=T4/Mg (14)
のように推定(算定)することができる。このように、推定部106は、重心GW1のC軸ロータリテーブル36の回転中心軸CCからのずれ(u及びv)を推定することができるため、テーブル36dを回転する際の最高回転速度や加速度をずれ(u及びv)を考慮して設定することができる。なお、C軸ロータリテーブル36はパレット76を保持していないときは無負荷であるため、基本的には第1のテーブル負荷T3及び第2のテーブル負荷T4に対応する基準負荷を取得しておく必要はないが、必要に応じてこれらの基準負荷を取得してもよい。また、ここでは、トルクを取得すると説明しているが、これに限らず、サーボアンプ62c及びサーボアンプ36hから電流値を取得して制御装置100でトルクに換算してもよいし、又は電流値から直接質量及び重心位置を推定してもよい。
【0046】
図4に示すように、制御装置100は、推定部106が推定したパレット76の質量M及び重心位置距離Hに基づいて、アクチュエータ35から第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに作用する調整力を計算する計算部108を備える。ここでいう調整力とは、取り付けたパレット76の重量によって下方側へ傾斜した(倒れた)テーブル36dを持ち上げ、下方側へ傾斜したテーブル36dの回転中心軸CCを水平方向軸と一致するように補正(たおれ補正)するために、アクチュエータ35を作動させる力であり、本実施形態では、アクチュエータ35を作動するための油圧である。質量M及び重心位置距離Hと油圧との関係、又は質量M及び重心位置距離Hから推定するたおれ量と油圧との関係は、実験等によって計測し、整理されており、関係式又は数値テーブルの形態で記憶部104に記憶されている。制御装置100は、計算した調整力が作用するようにアクチュエータ35を作動し、第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bを介してハウジング36eを弾性変形させてテーブル支持部36cの位置又は姿勢を変化させることによって、テーブル36dの位置を制御するテーブル位置制御装置110を備える。テーブル位置制御装置110は、工作機械10が有する油圧源(流体圧源)112を作動して、アクチュエータ35に油圧を供給する。これによって、アクチュエータ35に調整力を生じさせることができる。テーブル位置制御装置110は、C軸ロータリテーブル36のテーブル36dの変位や傾斜による影響も考慮してアクチュエータ35の調整力を修正するように構成されている。具体的には、変位や傾斜によって変化したテーブル36dの位置に応じてアクチュエータ35へ供給する油圧を制御する。このため、テーブル36dの回転中心軸CCの位置(傾き)が変わることによる重心GW1の位置の変化に対応して、テーブル36dの回転中心軸CCと水平方向軸とが常に一致するように、つまりワークW1が加工されるべき位置に位置決めされるように、緻密に調整力を作用させることができる。
【0047】
また、テーブル位置制御装置110は、NC装置102においてNCプログラム及びワークW1のモデル情報から取得したワークW1の加工工程の進捗に応じて、アクチュエータ35の調整力を変更するように構成されている。さらに、テーブル位置制御装置110は、C軸ロータリテーブル36に配置された位置センサ等を用いて計測したテーブル36dの位置情報(変位情報及び傾き情報)に応じてアクチュエータ35に生じさせる調整力を変化することができるように構成されている。
【0048】
制御装置100は、推定したパレット76の質量Mが、記憶部104に予め記憶されたテーブル36dに取付け可能な質量の上限(テーブル取付け可能上限質量)、アーム64が保持できる質量の上限(アーム保持可能上限質量)、又は、旋回アームとしてのAPCアーム50が保持できる質量の上限(APCアーム保持可能上限質量)を超過する場合に、超過している旨を報知する報知部100(図示省略)を有する。このため、例えば、パレット76の姿勢変更後、アーム64が保持するパレット76をC軸ロータリテーブル36に取り付けられるパレット94と交換する前にパレット76の質量Mを推定し、テーブル取付け可能上限質量又はAPCアーム保持可能上限質量を超過する場合は、パレットの交換を中止した上で、作業者WKに警報(音、光等の知覚できる表示やパソコン、携帯端末等への通知等)を報知することができる。第1の負荷T1を取得した直後に質量を推定し、アーム保持可能上限質量を超過している場合は、パレット姿勢変更を行うことなく、警報を報知することもできる。これによって、C軸ロータリテーブル36、アーム64、APCアーム50の故障を未然に防止することができ、工作機械10の稼働効率を向上させることができる。
【0049】
図9には、たおれ補正のフローチャートを示す。また、
図10から
図22には、たおれ補正のフローに対応するパレット76の段取りを示す。これらの説明を通じて、本実施形態に係る工作機械10の制御装置100及び推定方法の作用効果を以下に説明する。なお、
図10から
図22に示すパレット姿勢変更装置42及びC軸ロータリテーブル36の側面図は、これらの装置の作用効果を説明するための概略的な図である。このため、図面の見易さの観点から、実際の側面視ではアーム64によって隠れるために直接見えない部分(フィンガ72、受け部74、アーム凸部86等)やC軸ロータリテーブル36の内部の構成(テーブル支持部36c、テーブル36d等)も実線で描画している点に注意されたい。
【0050】
制御装置100は、ステップS10(
図9参照)へ移行し、たおれ補正を開始する。たおれ補正を開始すると、ステップS20(
図9参照)へ移行し、パレット姿勢変更装置42にパレットを搬入する。
図10には、治具96及び加工前のワークW1が組付けられたパレット76が工作機械10の外側から搬入された状態を示す。ここでは、パレット姿勢変更装置42の直下においてベッド18の上面に配置されたレール90に下面76bを載せたパレット76(
図10の点線部分)が、工作機械10の外側から段取り室扉14aを通じて段取りステーション40側、すなわち、パレット姿勢変更装置42側へと水平状態で搬入される。なお、パレット76の搬入方法は、レール90に限らず、工作機械の上部に設置された搬送装置で水平状態パレットが鉛直方向に沿って搬入されてもよく、フォークを有する搬送車のフォークを用いて搬入されてもよい。搬入されたパレット76は、レール90の端部に形成されたストッパ92に当たることで、スライドを停止し、水平状態の段取り位置に位置決めされる。このとき、アーム64は、水平状態における係合位置よりも下方側となる退避位置へ位置付けされており(旋回されており)、フィンガ72はパレット係合解除位置に位置付けされている。パレット姿勢変更装置42は、退避位置において、アーム64及びアーム64の構成要素であるフィンガ72、受け部74、アーム凸部86が、パレット76の搬入に干渉しないよう構成されている。一方、図示しない加工室12側のC軸ロータリテーブル36(
図2参照)には、加工が完了した(加工後の)ワークW2及び治具96が組付けられたパレットとしての第2のパレット94が保持されている。
【0051】
パレット姿勢変更装置42にパレットが搬入されると、ステップS30(
図9参照)へ移行し、パレット姿勢変更装置42のアーム64を作動し、水平状態のパレット76を保持する。
図11には、駆動部62によってアーム64とパレット76の係合側面76eとが対向する係合位置までアーム64を回動し、パレット76に対して位置決めする状態を示す。この状態において、アーム凸部86及び受け部74の第2のパレット受け面74bは、パレット76に接触しないように構成されてもよく、パレット76に接触するように構成されてもよい。パレット76に接触しない場合は、パレット76はレール90上に保持されている。パレット76に接触する場合は、アーム凸部86はパレット溝88の内壁の上面側と接触し、第2のパレット受け面74bはパレット76の下面76bと接触する。このため、パレット76はレール90から離れ、アーム64によって保持されることとなる。この場合、アーム凸部86はパレット溝88に挿入されているため、パレット76に不測の外力が作用した場合であっても、パレット76が工作機械10の外側へ不意に移動することを規制することができる。
【0052】
図12には、フィンガ72をパレット係合解除位置からパレット係合位置へ作動して(図中矢印)、フィンガ72とピン78とを係合させた状態を示す。ここでは、フィンガ72及びピン78は、ピン78が抜け落ちない程度においてフィンガ72とピン78との間に隙間(遊び)が生じるように寸法決めされている。アーム64がパレット76を保持すると、ステップS40(
図9参照)へ移行し、サーボモータ62aのエンコーダ62bは、アーム64の回転位置が係合位置(質量M及び重心位置距離Hの推定における第1のアーム位置)にあることを検出する。また、駆動部62のサーボモータ62aにはパレット76の質量M及び重心位置距離Hに応じた電流が生じる。制御装置100(NC装置102)は、このときの電流値に基づくトルク(第1の負荷T1)をサーボアンプ62cから取得し、記憶部104に記憶する。
【0053】
制御装置100が第1の負荷T1を取得すると、ステップS50(
図9参照)へ移行し、パレット姿勢変更装置42のアーム64を作動し、パレット76を直立状態まで回動する。
図13には、駆動部62が、アーム64を直立位置まで回動し、パレット76を直立状態へ姿勢変更した状態を示す。姿勢変更中は、フィンガ72とピン78とが係合するため、パレット76単体での回転方向(R1方向)への移動を規制することができる。さらに、第2のパレット受け面74bがパレット76の下面76bと当接し、かつ、第1のパレット受け面74aがパレット76の当接側面76dと当接するため、パレット76の自重を支え、重力方向に移動することを規制することができる。これによって、アーム64は、パレット76を安定して保持しつつ、水平状態から直立状態へと姿勢変更することができる。パレット76を直立状態まで回動すると、ステップS60(
図9参照)へ移行し、サーボモータ62aのエンコーダ62bは、アーム64の回転位置が、直立位置(質量M及び重心位置距離Hの推定における第2のアーム位置)にあることを検出する。また、駆動部62のサーボモータ62aにはパレット76の質量M及び重心位置距離Hに応じた電流が生じる。制御装置100(NC装置102)は、このときの電流値に基づくトルク(第2の負荷T2)を取得し、記憶部104に記憶する。
【0054】
制御装置100が第2の負荷T2を取得すると、ステップS70(
図9参照)へ移行し、制御装置100はAPCアーム50を作動してパレット76,94を交換する。
図14は、パレット交換装置44のAPCアーム50を上昇させ、第1のパレット保持部82によってパレット76を保持した状態を示す。具体的には、APCアーム50を上昇させることによって、保持部材76fが第1のパレット保持部82の凹形状部分に嵌め込まれると共に、第1のパレット保持部82の両端部の柱状部材の上面がパレット76の当接側面76dと当接する。これによって、APCアーム50は、パレット76を保持することができる。このとき、フィンガ72は、ピン78のパレット76単体での回転方向(R1方向)への移動を規制しているに過ぎないため、APCアーム50は、アーム64に干渉することなくパレット76を持ち上げることができる。
【0055】
図15は、APCアーム50がパレット76を保持した上で、フィンガ72をパレット係合位置からパレット係合解除位置へと作動した状態を示す。図中に矢印で示すように、フィンガ72をパレット係合位置からパレット係合解除位置へと作動させることによって、APCアーム50だけがパレット76を保持する。このとき、図示しない加工室12側の第2のパレット94もC軸ロータリテーブル36から取り外される。これによって、段取り室14側のパレット76及び加工室12側の第2のパレット94(
図17参照)の両方がAPCアーム50だけで保持されている。
【0056】
図16は、フィンガ72をパレット係合解除位置へと作動したアーム64を駆動部62によって待機位置まで回動した状態を示す。パレット姿勢変更装置42は、アーム64を直立位置(直立状態)と係合位置(水平状態)との間の待機位置へと位置決めする(回動する)ことができる。これによって、段取り室14側のパレット76と加工室12側の第2のパレット94とを入れ替えるために、APCアーム50及び旋回扉46を旋回したときに、APCアーム50及び旋回扉46と、パレット姿勢変更装置42や工作機械10内の他の部材との干渉が発生することを防止することができる。また、アーム64を係合位置まで戻すことなく、待機位置に位置決めできるため、アーム64を回動する時間を最低限に短縮することができ、ひいては、パレット76の姿勢変更及び交換に必要な時間を短縮することができる。
【0057】
図17は、APCアーム50の旋回によって、段取り室14側のパレット76(
図16参照)と加工室12側の第2のパレット94とを入れ替えた(交換した)状態を示す。パレット76及び第2のパレット94を保持したAPCアーム50を180度旋回することによって、加工前のワークW1が組付けられたパレット76を加工室12側へと移動してC軸ロータリテーブル36に受渡し、加工後のワークW2が組付けられた第2のパレット94を段取り室14側へ移動することができる。
【0058】
パレット76,94の交換と並行して又は交換後に、推定部106は、ステップS80(
図9参照)へ移行し、上述した(1)式及び(2)式を用いて、記憶部104に記憶した基準距離L、第1の基準負荷TB1及び第1の負荷T1から質量Mを推定する。つぎに、推定部106は、ステップS90(
図9参照)へ移行し、上述した(3)式及び(4)式を用いて、記憶部104に記憶した第2の基準負荷TB2及び第2の負荷T2から重心位置距離Hを推定する。このとき、第1の基準負荷TB1及び第2の基準負荷TB2は、予め実験等によって求められ、記憶部104に記憶されている。さらに、ステップS100(
図9参照)へ移行し、制御装置100の計算部108は、たおれ補正を行うために、推定部106が推定したパレット76の質量M及び重心位置距離Hに基づいてアクチュエータ35から第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに作用する調整力を計算する。
【0059】
図18は、入れ替えたパレット76を取り付けるC軸ロータリテーブル36を示す。APCアーム50は、180度旋回してパレット76を加工室12側へと入れ替え、入れ替えられたパレット76は、C軸ロータリテーブル36に位置決めされ、取り付けられる。C軸ロータリテーブル36は、APCアーム50が旋回している間は、APCアーム50及びこれが保持するパレット76と干渉しない待機位置(
図18での点線で示す位置)において旋回の完了まで待機する。C軸ロータリテーブル36は、旋回の完了後、APCアーム50及びパレット76側へ向けてZ軸方向に沿って移動し、パレット76の下面76b及びC軸ロータリテーブル36の取付面の取付け機構(図示省略)によって、パレット76を保持し、取付ける。
【0060】
図19は、パレット76をC軸ロータリテーブル36へ引き渡すAPCアーム50の側面図を示す。C軸ロータリテーブル36にパレット76が取り付けられると、APCアーム50が下降し、C軸ロータリテーブル36に引き渡したパレット76から離脱する。APCアーム50による保持が解除されるため、パレット76は、C軸ロータリテーブル36のテーブル36dの取付面だけで保持されている状態となる。パレット76、治具96及びワークW1は、テーブル36dの取付面に直立状態で取り付けられ、水平方向に突き出している。このため、テーブル36dには、パレット76、治具96及びワークW1の重量によって生じるモーメントが作用し、この結果、テーブル36dは、鉛直方向下向きに傾斜し、テーブル36dの回転軸(C軸)は水平方向軸に対して鉛直方向下向きに傾斜し、いわゆる、たおれが発生し、加工精度が低下する。たおれが生じたままワークW1の加工を行うと、例えば、治具96の基準面に取り付けられたワークW1の基準面に対するワークW1の上面76aの平行度の要求を満たせなくなる。
【0061】
図20は、自重によってテーブル36dが傾斜する(倒れる)パレット76及びワークW1の側面図を示す。パレット76をC軸ロータリテーブル36へ引き渡すと、ステップS110(
図9参照)へ移行し、制御装置100は、たおれ補正を行うためにテーブル位置制御装置110を作動して、計算部108が計算した調整力(油圧)でアクチュエータ35を作動させるための油圧源112を制御する。
【0062】
図21は、たおれ補正を行うためにアクチュエータ35が作動するC軸ロータリテーブル36の側面図を示す。テーブル位置制御装置110がアクチュエータ35を作動させるために油圧源112を制御すると、ステップS120(
図9参照)へ移行し、アクチュエータ35が作動し、C軸ロータリテーブル36のハウジング36eを弾性変形させる。具体的には、アクチュエータ35は、油圧供給されることによって作動し、第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに調整力を作用する。このため、ハウジング36eに対して離反又は接近する方向に力を作用し、ハウジング36eを背面側(アクチュエータ35側)へ傾倒する(起き上がる)ように弾性変形させる。これによって、治具96、ワークW1及びパレット76と共に下方側へ傾いていたテーブル36dの回転中心軸CCが水平方向軸に沿うように補正され、テーブル36dが、本来あるべき位置に位置決めされる。テーブル36dが位置決めされると、ステップS130(
図9参照)へ移行し、たおれ補正を終了する。
【0063】
図22は、加工を行うために主軸26側へ向けてB軸ロータリテーブル34によって回動したC軸ロータリテーブル36の側面図を示す。B軸ロータリテーブル34によって回動し、主軸26と対向するように位置決めされたパレット76に取り付けられたワークW1は、主軸26とC軸ロータリテーブル36及びB軸ロータリテーブル34とが相対移動し、主軸26に取付けられた工具28によって加工される。加工が完了すると、再度パレット76の交換が行われる。
【0064】
本実施形態に係る工作機械10の制御装置100によると、制御装置100は、アーム64を単独で、第1のアーム位置へと回動したときに駆動部62に作用する第1の基準負荷TB1と、第2のアーム位置へと回動したときに駆動部62に作用する第2の基準負荷TB2と、水平状態におけるパレット76のパレット中央部分と駆動部62の回転中心軸RA1との水平方向距離となる基準距離Lと、を記憶する記憶部104を備える。また、制御装置100は、アーム64によって保持したパレット76をアーム回転範囲内の第1のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部62に作用する第1の負荷T1及び第2のアーム位置へと姿勢変更したときに駆動部62に作用する第2の負荷T2を取得し、少なくとも基準距離L、第1の基準負荷TB1、第2の基準負荷TB2、第1の負荷T1、及び、第2の負荷T2に基づいてパレット76の質量M及び重心GW1の位置(重心位置距離H)を推定する推定部106を備える。このため、駆動部62及びアーム64を用いて部品点数を増やすことなくパレット76の質量M及び重心位置距離Hを推定することができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る工作機械10によると、工作機械10は、アクチュエータ35と、制御装置100によって推定したパレット76の質量M及び重心位置距離Hに基づいて、アクチュエータ35が第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに作用する調整力を計算する計算部108とを備える。また、工作機械10は、第1のアクチュエータ取付部36a及び第2のアクチュエータ取付部36bに、計算された調整力が作用するようにアクチュエータ35を作動し、ハウジング36eを弾性変形させてテーブル支持部36cの位置又は姿勢を変化させることによって、テーブル36dの位置を制御するテーブル位置制御装置110を備える。これによって、テーブル36dのたおれ補正を行うことができ、ワークW1の加工精度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る工作機械10によると、制御装置100の推定部106は、パレット76が引き渡されたC軸ロータリテーブル36が第1のテーブル回転位置にあるときにテーブル36dに作用する第1のテーブル負荷T3を取得することができる。さらに、制御装置100の推定部106は、第1のテーブル回転位置から90度回転した第2のテーブル回転位置へとテーブル36dを回転し、テーブル36dに作用する第2のテーブル負荷T4を取得することができる。このため、重心GW1のC軸ロータリテーブル36の回転中心軸CCからのずれを推定することができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る工作機械10によると、制御装置100は、推定したパレット76の質量Mが、記憶部104に記憶されたテーブル取付け可能上限質量、保持可能上限質量、又はAPCアーム保持可能上限質量を超過する場合に、超過している旨を報知する報知部100を有する。このため、パレット76の姿勢変更後、アーム64が保持するパレット76をC軸ロータリテーブル36に取り付けられるパレット94と交換する前にパレット76の質量Mを推定し、テーブル取付け可能上限質量又はAPCアーム保持可能上限質量を超過する場合は、パレットの交換を中止した上で、作業者WKに報知することができる。第1の負荷T1を取得した直後に質量を推定し、アーム保持可能上限質量を超過している場合は、パレット姿勢変更を行うことなく警報を報知することもできる。これによって、C軸ロータリテーブル36、アーム64、APCアーム50の故障を未然に防止することができ、工作機械10の稼働効率を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る工作機械10によると、制御装置100は、推定したパレット76の質量Mと重心位置距離Hに応じて、アーム64、APCアーム50、及び工作機械10の送り軸の動作の速度及び/又は加速度を制御するように構成されている。このため、質量MがAPCアーム保持可能上限質量の一定割合より大きい場合は、パレット交換装置44のAPCアーム50の旋回速度や上昇速度を小さく設定することができる。また、重心GW1の位置が、C軸の負荷が相対的に小さくなるように位置しているときには、C軸、B軸及びZ軸の加速度/回転加速度を大きく設定することができ、逆に重心GW1の位置がC軸の負荷が相対的に大きくなるよう位置しているときには、C軸、B軸及びZ軸の加速度/回転加速度を小さく設定することができるため、ワークW1の加工精度及び工作機械の稼働効率を向上させることができる。
【0069】
以上の説明のとおり、本実施形態に係る工作機械10の制御装置100及び推定方法によれば、ワークW1の加工精度及び稼働効率を向上させるために、部品点数を増やすことなくワークW1が取り付けられたパレット76の質量M及び重心位置距離Hを精度よく推定することができる。さらに、推定したパレット76の質量M及び重心位置距離Hを工作機械10の様々な場面で活用して、ワークW1の加工精度及び工作機械10の稼働効率を向上させることができる。
【0070】
以上、工作機械10の制御装置100及び質量Mと重心位置距離Hの推定方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。上記のほか、当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0071】
10 工作機械
26 主軸
28 工具
35 アクチュエータ
36 C軸ロータリテーブル(テーブル)
36a 第1のアクチュエータ取付部
36b 第2のアクチュエータ取付部
36c テーブル支持部
36d テーブル
36e ハウジング
36f サーボモータ
36g エンコーダ
36h サーボアンプ
38 Z軸直動ガイド
40 段取りステーション
42 パレット姿勢変更装置(推定装置)
44 パレット交換装置
60 ベース
62 駆動部
64 アーム
76 パレット
76a 上面
96 治具
100 制御装置
104 記憶部
106 推定部
108 計算部
110 テーブル位置制御装置
H 重心位置距離
L 基準距離
M 質量
RA1 駆動部の回転中心軸
TB1 第1の基準負荷
TB2 第2の基準負荷
T1 第1の負荷
T2 第2の負荷
T3 第1のテーブル負荷
T4 第2のテーブル負荷
W1 ワーク
W2 ワーク
【要約】
【課題】ワークの加工精度及び稼働効率を向上させるために、部品点数を増やすことなくワークが取り付けられたパレットの質量及び重心位置を精度よく推定する工作機械の推定装置及び推定方法を提供する。
【解決手段】制御装置100は、回転中心軸周りにパレット76を回動可能な駆動部62に取り付けられ、パレット76を保持して水平状態と直立状態との間を含むアーム回転範囲内で姿勢変更するアーム64と、アーム64単独でアーム回転範囲内の第1及び第2のアーム位置へと回動したときの第1及び第2の基準負荷と、水平状態におけるパレット中央部分と回転中心軸との水平方向距離となる基準距離Lとを記憶する記憶部104と、パレット76を第1及び第2のアーム位置へと姿勢変更したときの第1及び第2の負荷を取得し、少なくともこれらの負荷及び基準距離に基づいてパレット76の質量及び重心位置を推定する推定部106を備える。
【選択図】
図4