(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ワイヤブリッジの設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 15/12 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
E01D15/12
(21)【出願番号】P 2024062365
(22)【出願日】2024-04-08
【審査請求日】2024-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】西垣 登
(72)【発明者】
【氏名】明周 聡
(72)【発明者】
【氏名】貝瀬 正紀
(72)【発明者】
【氏名】越野 慎也
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-095792(JP,A)
【文献】特開2000-186310(JP,A)
【文献】特開平02-132207(JP,A)
【文献】特開2013-002152(JP,A)
【文献】特開平04-169611(JP,A)
【文献】特開2003-055906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 15/12
E01D 21/00
E01C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のメインロープを所定間隔で張り設け、前記2本のメインロープの上に、上面視長方形の覆工板を、前記覆工板の長尺方向が幅員方向となるように橋長方向に並設し、隣り合う前記覆工板を連結板によって互いに連結するワイヤブリッジの設置方法であって、
前記覆工板における下面の前記長尺方向の両側に、それぞれ、短尺方向に延在するガイド金具を予め固定しておくとともに、上面の前記長尺方向の両側に、前記短尺方向に所定間隔で、前記連結板をボルト接合するための固定ボルトを予め立設させておき、
一の岸側の固定作業床の上で前記覆工板の前記ガイド金具が前記メインロープの上に乗るように前記覆工板を前記2本のメインロープの上に載置する第1工程と、
直前に載置した前記覆工板と次に載置した前記覆工板との間に前記連結板を掛け渡し、この2つの前記覆工板を、前記固定ボルトを用いて前記連結板とボルト接合して、互いに連結する第2工程と、
をこの順に繰り返し実行するとともに、
前記第2工程と前記第1工程との間に、適宜に、連結された前記覆工板を前記2本のメインロープの上で対岸側へ移動させる工程を実行する、
ことを特徴とするワイヤブリッジの設置方法。
【請求項2】
前記固定ボルトは前記覆工板の下面から突出しており、前記固定ボルトを利用して前記ガイド金具がボルト接合により取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤブリッジの設置方法。
【請求項3】
前記連結板に、手摺り親パイプを差し込んで取り付ける支柱を予め立設させておき、
前記第2工程で2つの前記覆工板を前記連結板によって互いに連結した後に、前記支柱に前記手摺り親パイプを差し込んで取り付ける、ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤブリッジの設置方法。
【請求項4】
前記第2工程で、橋長方向で隣り合う2つの前記手摺り用親パイプの間に幅木及び手摺りをボルト接合により取り付ける、ことを特徴とする請求項3に記載のワイヤブリッジの設置方法。
【請求項5】
前記連結板には、前記メインロープを吊り上げ固定するフックボルトを取り付けるための切欠きが前記連結板の掛渡し方向の中間部に形成され、前記切欠きは、前記フックボルトが前記掛渡し方向と直交する方向に移動可能となるように構成され、
前記第1工程で、前記2つの前記覆工板の間に所定の隙間を形成した状態で前記2つの前記覆工板を前記連結板によって互いに連結した後に、前記隙間に前記フックボルトを挿入し前記メインロープを吊り上げて仮止めする、ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤブリッジの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤブリッジの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、H形鋼からなる主桁の下面フランジ下面に敷桁、横桁を配置し、この敷桁、横桁の端部と主桁端部とを連結するように斜材を配置した人道橋が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術においては、主桁にH型鋼を使用しているため、主桁を両護岸に架設する作業が大がかりのものとなっていた。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みなされたもので、簡単に設置可能なワイヤブリッジの設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、
2本のメインロープを所定間隔で張り設け、前記2本のメインロープの上に、上面視長方形の覆工板を、前記覆工板の長尺方向が幅員方向となるように橋長方向に並設し、隣り合う前記覆工板を連結板によって互いに連結するワイヤブリッジの設置方法であって、
前記覆工板における下面の前記長尺方向の両側に、それぞれ、短尺方向に延在するガイド金具を予め固定しておくとともに、上面の前記長尺方向の両側に、前記短尺方向に所定間隔で、前記連結板をボルト接合するための固定ボルトを予め立設させておき、
一の岸側の固定作業床の上で前記覆工板の前記ガイド金具が前記メインロープの上に乗るように前記覆工板を前記2本のメインロープの上に載置する第1工程と、
直前に載置した前記覆工板と次に載置した前記覆工板との間に前記連結板を掛け渡し、この2つの前記覆工板を、前記固定ボルトを用いて前記連結板とボルト接合して、互いに連結する第2工程と、
をこの順に繰り返し実行するとともに、
前記第2工程と前記第1工程との間に、適宜に、連結された前記覆工板を前記2本のメインロープの上で対岸側へ移動させる工程を実行する、
ことを特徴とするワイヤブリッジの設置方法である。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、前記固定ボルトは前記覆工板の下面から突出しており、前記固定ボルトを利用して前記ガイド金具がボルト接合により取り付けられている、ことを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第2の手段であって、前記連結板に、手摺り親パイプを差し込んで取り付ける支柱を予め立設させておき、
前記第2工程で2つの前記覆工板を前記連結板によって互いに連結した後に、前記支柱に前記手摺り親パイプを差し込んで取り付ける、ことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第3の手段であって、前記第2工程で、橋長方向で隣り合う2つの前記手摺り用親パイプの間に幅木及び手摺りをボルト接合により取り付ける、ことを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第4の手段であって、
前記連結板には、前記メインロープを吊り上げ固定するフックボルトを取り付けるための切欠きが前記連結板の掛渡し方向の中間部に形成され、前記切欠きは、前記フックボルトが前記掛渡し方向と直交する方向に移動可能となるように構成され、
前記第1工程で、前記2つの前記覆工板の間に所定の隙間を形成した状態で前記2つの前記覆工板を前記連結板によって互いに連結した後に、前記隙間に前記フックボルトを挿入し前記メインロープを吊り上げて仮止めする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2本のワイヤロープに上に覆工板を載置する工程と、連結板を介して覆工板同士を連結する工程と、覆工板を移動させる工程とを実行することを介して、簡単に、ワイヤブリッジを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るワイヤブリッジの概念図である。
【
図2】ワイヤブリッジの一部を拡大して示した側面図である。
【
図4】覆工板のボルトの取付構造を示した断面図である。
【
図5】覆工板へのリップ溝形鋼の取付構造を示した斜視図である。
【
図6】リップ溝形鋼と固定板との取付構造を示した図である。
【
図8】覆工板同士を連結する連結板の斜視図である。
【
図9】連結板で連結された状態の覆工板を示す斜視図である。
【
図10】アップリフト金具の働きを説明するための図である。
【
図12】手摺り親パイプに取り付けられるクランプ及び幅木用取付板を示した上面図である。
【
図13】手摺り親パイプに取り付けられるクランプ及び手摺り用取付板を示した上面図である。
【
図14】手摺り親パイプに取り付けられた手摺り用の取付板を示した正面図である。
【
図20】耐風索取付金具の取付構造を示した断面図である。
【
図21】耐風索取付金具を設置した覆工板の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、ワイヤブリッジ100の概念図、
図2は、ワイヤブリッジ100の一部を拡大して示した正面図である。この
図1、
図2その他の図面を参照して、ワイヤブリッジ100の設置方法を簡単に説明すれば、以下の通りである。
【0015】
先ず、平行する2本のメインロープ1、1を橋台2、2の固定部間に張り渡す。
【0016】
次に、一方の橋台2(固定作業床の一例)を足場にして、2本のメインロープ1、1上に1つ目の覆工板10(
図3)を載置する。その際、覆工板10の下面の2つのリップ溝形鋼11の溝内に各メインロープ1が収まるようにする。
【0017】
この1つ目の覆工板10を2本のメインロープ1、1の上に載置したら、当該覆工板10を2本のメインロープ1、1上で滑らせ対岸の橋台2に向けて押し出す。なお、この場合、対岸に設けたウインチその他の手段によりロープを介して当該覆工板10を引いてもよい。なお、覆工板10の2本のワイヤロープ1、1上での移動は、この段階で行ってもよいし、幾つか覆工板10を連結した後に行ってもよい。
【0018】
次に、2つ目の覆工板10の端をメインロープ1、1の上に載置する。この際、両覆工板10、10の間に所定の隙間が形成されるようにするとともに、両覆工板10、10の上面が略面一となるようにする。
【0019】
この状態で、両覆工板10、10の間に連結板20(
図9)を掛け渡し、両覆工板10、10の各上面から突出しているボルト12を用いて連結板20と両覆工板10、10とをねじ接合する。これにより、連結板20を介して両覆工板10、10が連結される(
図10)。
【0020】
また、連結板20に予め設けておいたフックボルト21のねじ山に予め螺合されているナット22を軽く締め付けてメインロープ1を両覆工板10、10に対して持ち上げ、メインロープ1から覆工板10が浮き上がらないように仮止めしておく(
図10)。
【0021】
次に、連結板20に予め立設させておいた支柱23に手摺り親パイプ30(
図11)を嵌合させて取り付ける。
【0022】
手摺り親パイプ30には、取付板33、34、34が取り付けられ、2つの取付板34にはそれぞれ手摺り50a、50bの一端が取り付けられている(
図11)。
【0023】
その後、連結した覆工板10、10を2本のメインロープ1、1上で滑らせ対岸の橋台2側に押し出す。なお、この場合、対岸に設けたウインチによりロープを介して当該覆工板10、10を引いてもよい。なお、覆工板10の2本のワイヤロープ1、1上での移動は、この段階で行ってもよいし、幾つか覆工板10を連結した後に行ってもよい。
【0024】
次に、3つ目の覆工板10の端をメインロープ1の上に載置する。そして、上記と同様にして、連結板20による2つ目の覆工板10と3つ目の覆工板10との連結作業、フックボルト21によるメインロープ1の仮止め作業、及び、支柱23への手摺り親パイプ30の取付作業を行う。その後、当該手摺り親パイプ30の取付板33と先の手摺り親パイプ30の取付板33との間に幅木40(
図13)を掛け渡して取り付けるとともに、当該手摺り親パイプ30の取付板34に、一端が先の手摺り親パイプ30の2つの取付板34に取り付けられている手摺り50a、50bの他端を取り付ける。
【0025】
これらの作業が終了したら、連結された3つの覆工板10、10、10を2本のメインロープ1、1上で滑らせ対岸の橋台2側に押し出す。なお、この場合、対岸に設けたウインチその他の手段によりロープを介して当該3つの覆工板10、10、10を引いてもよい。その後は、最先の覆工板10が対岸の橋台2の所定位置に設置されるまで、覆工板10の載置作業、覆工板10同士の連結作業、フックボルト21によるメインロープ1の仮止め作業、支柱23への手摺り親パイプ30の取付作業、及び、幅木40や手摺り50a、50bの取付作業を繰り返す。
【0026】
そして、最後に、連結板20のナット22の再締付本締めを行うとともに、フックボルト21のねじ山に螺合されているナット22(
図9)を強く締め付けてメインロープ1を両覆工板10、10に対して吊り上げ、メインロープ1から覆工板10が浮き上がらないように本止めする。
【0027】
なお、耐風索取付金具60(
図18)の取付けは、当該覆工板10の載置或いは連結の際に行っておくことが好ましく、耐風索71の取付けは、全作業の最後に行う(
図21)。
【0028】
《橋梁部品》
(メインロープ1)
メインロープ1は、硬鋼線あるいはピアノ線を材料にしたワイヤで撚られたワイヤロープとなっている。
(覆工板10)
図3は、覆工板10の斜視図である。
【0029】
覆工板10としては、特に限定はされないが、軽量覆工板が用いられ、大人2人で持ち運びできる程度(例えば50~60kg程度)の重量となっている。
【0030】
この覆工板10は、平行する上板13及び下板14と、その間に配置される複数の第一補強材(図示せず)及び複数の第二補強材15によって構成されている。上板13、下板14、第一補強材、第二補強材15は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を材料として構成されている。そのため、覆工板10は、耐候性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、電波透過性、断熱性、防食性を有する。また、着色も自由で、軽量(比重も軽い)かつ強度にも優れる。さらに、丸鋸などの工具を使用すれば、現場での加工も容易であり、現場でのサイズ調整も可能となる。
【0031】
上板13及び下板14は長方形の平板状であり、覆工板10の上面及び下面を形成する。
【0032】
上板13及び下板14の寸法は、実施形態においては長さ2000mm、幅700mmとされ、これが覆工板10の平面的寸法となる。また、覆工板10の厚さ寸法は110mmとされている。
【0033】
なお、寸法設定は適宜変更可能である。特に、複数の第一補強材の使用本数が増えれば、覆工板10の幅寸法は変更される場合がある。
【0034】
第一補強材は柱状の部材であり、対向する二面(上面及び下面)が上板13及び下板14のそれぞれに接着剤と小型リベットとの併用で接合されている。この第一補強材としては、角筒体(角パイプ)やH型などの構造型材が適用できる。
【0035】
第一補強材は、上板13及び下板14の長さ方向と平行に、複数本、所定間隔又は等間隔に配置されている。第一補強材の間隔については必ずしも等間隔でなくてよい。
【0036】
第二補強材15は、覆工板10の長さ方向側端部に設けられている。
【0037】
第二補強材15は、断面コ字状のチャンネル材であり、覆工板10の幅方向に亘って設けられている。
【0038】
第二補強材15は、ウェブの裏面が上板13と下板14との間で複数の第一補強材と接する配置となっている。
【0039】
なお、第二補強材15は、上板13及び下板14に対しては接着剤と小型リベットとの併用で接合されている。
【0040】
また、第二補強材15は、覆工板10の幅方向側端部に設けられてもよい。
【0041】
また、実施形態における第二補強材5はとしては、上記のようにチャンネル材が用いられているが、角筒体やH型などの構造型材でもよい。
【0042】
覆工板10の上板13には、上板13の長さ方向両端部に、上板13の幅方向に沿って所定間隔で同形の3個の孔16a、16b、16cが形成されている。覆工板10の長さ方向両端部の3個の孔16a、16b、16c間の距離は、特に限定はされないが、軽トラックが通行できる程度、例えば1500mm程度となっている。また、下板14にも、上記3個の孔16a、16b、16cに対応して、3個の孔(図示せず)が形成されている。
【0043】
孔16a、16c及びそれに対応する下板14の2個の孔からは、寸切りのボルト12が上下に突出している。
【0044】
この場合のボルト12の固定は、
図4に示すように、ボルト12を2個のナット17a、17bで下板14と後述の固定板18aとを共締めすることにより行われている。この際、覆工板10の内部にナット付きのボルト12を孔16a、16cから挿入させる必要から、孔16a、16cの径は、対応する下板の2個の孔の径よりも大きく、ボルト12は孔16a、16cに遊嵌されることになる。このようにボルト12を孔16a、16cに遊嵌した結果、ボルト12は振れやすくなる。そこで、実施形態では、ボルト12を2個のナット17で下板14に固定したのち、孔16a、16cの箇所に収まるようにボルト12に振れ止めナット17cを螺合させている。
【0045】
ボルト12の下板14から下方に突出する部分には、
図5の下面図に示すように、固定板18aを介して、メインロープ1の横ずれ防止を目的としたガイド金具として軽量リップ溝形鋼11が固定されている。
【0046】
すなわち、
図6に示すように、軽量リップ溝形鋼11には山形鋼18bが溶接接合され、山形鋼18bには固定板18aが溶接接合されている。固定板18aは鋼材からなる。この固定板18aには、上記ボルト12が挿入されるボルト孔18dが形成されている。そして、ボルト孔18dに挿入されたボルト12に座金を介してナット17aを螺合することにより、軽量リップ溝形鋼11が覆工板10に固定される。
図7は、軽量リップ溝形鋼11が固定された覆工板10の下面図である。
【0047】
なお、この軽量リップ溝形鋼11に代えて製作加工鋼材をガイド金具としてもよい。
【0048】
以上のように構成された覆工板10を工場製作しておく。そして、現場では、覆工板10の長さ方向がワイヤブリッジ100の幅員方向となるようにして、複数枚が橋長方向に並列に並べられて使用される。
(連結板20)
図8は、連結板20の斜視図である。
【0049】
連結板20は、鋼材から構成され、上面視長方形の基体部分24と、基体部分24の中央から当該基体部分24に直交する方向に張り出す長方形の張出し部分25とを有している。すなわち、連結板20は上面視でT字状に形成されている。
【0050】
基体部分24は、隣り合う覆工板10、10に掛け渡される部分であり(
図9参照)、長尺方向両側には各1個のボルト孔24aが形成されている。
【0051】
この連結板20の2個のボルト孔24aには、隣り合う覆工板10、10のボルト12の上部が通され、ボルト12の上部にはナット22が座金を介して螺合される。これによって、橋の幅員方向の2箇所で、連結板20を介して隣り合う覆工板10、10が互いに連結される。なお、この連結状態では、隣り合う覆工板10、10の間に10mm程度の所定の隙間が形成される。
【0052】
また、基体部分24の長尺方向中央部分には、円筒状の支柱23が立設されている。この支柱23には、後述の手摺り親パイプ30が差し込まれて取り付けられる。
【0053】
張出し部分25には、メインロープ1をアップリフトするためのフックボルト21が設けられている。
【0054】
張出し部分25には、その長尺方向に長尺な長方形の切欠き25aが形成されている。この切欠き25aに、フックボルト21が取り付けられている。
【0055】
フックボルト21は、J字状に形成され、直線部側にねじ山が切られている。そして、フックボルト21は、直線部が張出し部分25の下方から切欠き25aを通され、張出し部分25の上方に突出するねじ山にはナット22が座金を介して螺合されている。このフックボルト21は切欠き25aの長尺方向に移動可能となっている。これによって、フックボルト21は、メインロープ1から退避した位置と、メインロープ1に係合可能な位置とを取ることができる。そして、連結板20を取り付ける際には、フックボルト21を待避位置としておき、フックボルト21をメインロープ1に掛ける際には、フックボルト21を待避位置から係合可能位置まで移動させ、ナット22を締め付ける。
【0056】
このフックボルト21は、隣り合う覆工板10、10の隙間に配置され、
図10に示すようにメインロープ1を吊り上げる。このフックボルト21は、メインロープ1から覆工板10が浮き上がるのを防止する働きをする。
【0057】
なお、張出し部分25の先端には被覆板25bが垂設されている。被覆板25bは、板覆工板10、10を連結した際に、張出し部分25とともに覆工板10、10の角部を被覆する働きをする。これにより、覆工板10、10の角部の露出がなくなるので、連結板20を取り付けた後の作業の安全性が確保される。
(手摺り親パイプ30)
図11は手摺り親パイプ30の正面図である。
【0058】
手摺り親パイプ30は、断面が円筒状で鋼材から構成されている。この手摺り親パイプ30は、支柱23に上方から嵌合することによって支柱23に取り付けられる。手摺り親パイプ30は、支柱23の外側に嵌合するものであってもよいし、内側に嵌合するものであってもよい。
【0059】
手摺り親パイプ30には、
図12及び
図13に示すようなクランプ31、32a、32bが取り付けられている。クランプ31は手摺り親パイプ30の下段に、クランプ32aは手摺り親パイプ30の中段に、クランプ32bは手摺り親パイプ30の上段にそれぞれねじ締結によって取り付けられる。
【0060】
クランプ31には、正方形の取付板33が回動可能に設けられている。取付板33は、中心のボルト31aを中心に回動可能となるようにクランプ31に取り付けられている。取付板33の4隅近くには各1個のボルト孔33bが形成されている。ボルト孔33bは、幅木40を取り付けるために使用される。
【0061】
次に、クランプ32a、32bについて説明する。なお、クランプ32a、32bは、取付位置が異なるだけで、取付板34を含めて同じ構造となっているため、総称としてクランプ32を用いて一緒に説明する。
【0062】
このクランプ32には、長方形の取付板34が回動可能に設けられている。取付板34は、中心のボルト32cを中心に回動可能となるようにクランプ32に取り付けられている。取付板34の長尺方向両端部には、
図14に示すように、各1個の長孔34bが形成されている。長孔34bは、手摺り50(手摺り50a、50bの総称)をボルト・ナットで取り付けるために使用される。
(幅木40)
図15は幅木40の正面図、
図16は幅木40の側面図である。
【0063】
幅木40は、広幅の溝形鋼から構成されている。幅木40は、隣り合う手摺り親パイプ30の取付板33の間に掛け渡される。掛渡しにあたっては、溝が外向きとなるようにする。
【0064】
幅木40の長尺方向両端部には、長尺方向に長尺な長孔40aが各2個形成されている。
【0065】
この幅木40の取付けは、取付板33の2個のボルト孔33b及びそれに対応した2個の長孔40aを通したボルト(図示せず)に座金を介してナット42を螺合させることによってなされる。
(手摺り50a、50b)
図17は手摺り50a、50bの正面図、
図18は手摺り50a、50bの側面図である。
【0066】
実施形態のワイヤブリッジ100の手摺り50(手摺り50a、50bの総称)としては、手摺り50a、50bが設けられる。手摺り50aは、クランプ32aの取付板34に設けられる手摺りであり、手摺り50bは、クランプ32bの取付板34に設けられる手摺りである。なお、手摺り50a、50bについては取付けの位置が異なるだけで構造が同じであるため、総称として手摺り50を用いて一緒に説明する。
【0067】
手摺り50は、狭幅の溝形鋼から構成されている。手摺り50は、隣り合う手摺り親パイプ30の取付板34の間に掛け渡される。掛渡しにあたっては、溝が外向きとなるようにする。
【0068】
手摺り50の長尺方向両端部には、長孔51が各1個形成されている。
【0069】
この手摺り50の取付けは、取付板34の長孔34b及びそれに対応した長孔51を通したボルト(図示せず)に座金を介してナット53を螺合させることによってなされる。
【0070】
(耐風索取付金具60)
図19は耐風索取付金具60の斜視図、
図20は、耐風索取付金具60の取付構造を示した断面図、
図21は、耐風索取付金具60の取付状態を示した覆工板10の上面図である。
【0071】
耐風索取付金具60は、断面がコ字状の固定部62と、固体部61から外方に張り出す張出し部63とを備える。固定部62は、覆工板10の端部を包込み可能となるようにコ字状に接合された3枚の平鋼62a、62b、62cから構成されている。互いに平行する平鋼62a、62cにはそれぞれボルト孔64a、64cが形成されている。
【0072】
また、張出し部63は、平鋼から構成され、平鋼62bの上下方向の中間部から外方に張り出している。この張出し部63には、2個のボルト孔65aが形成されている。
【0073】
この耐風索取付金具60は、橋の幅員方向の2箇所で、覆工板10の上板13の孔16b及びそれに対応する下板14の孔を通した寸切りのボルト66を利用して覆工板10に取り付けられる。
【0074】
耐風索取付金具60が取り付けられる覆工板10は、ワイヤブリッジ100の端長方向中央に配置される覆工板10である。それを見越して当該覆工板10をメインロープ1の上に載置したときに、耐風索取付金具60をボルト66とナット67によって取り付けておくことが好ましい。この取付けにあたっては、隙間座金68が覆工板10の下面と平鋼62cとの間に介装される。
【0075】
また、耐風索取付金具60を隣り合う2つの覆工板10、10に取り付ける場合、例えば、張出し部63、63の間に軽量山形鋼69を掛け渡し、各張出し部63の2個のボルト孔65aのうちの1個のボルト72を通し、各張出し部63と軽量山形鋼69とをボルト接合する。
【0076】
そして、このようにして覆工板10に取り付けられた耐風索取付金具60には、他方のボルト孔65aを利用してシャックル70が取り付けられ、シャックル70には耐風索71が取り付けられる。
(実施形態の効果)
以上のようなワイヤブリッジ100の設置方法によれば、次のような効果を得ることができる。
【0077】
第1に、使用部材の軽量化により手作業での組立が可能であり、現場の状況に迅速に対応できる。
【0078】
第2に、現場での組立、設置作業は全て覆工板10の上面から行えるので、安全に行うことができる。
【0079】
第3に、安全設備(手摺り親パイプ30、幅木40、手摺り50)も覆工板10の敷設と併行して簡単に組立することができる。
【0080】
第4に、覆工板10の上面に砂を接着しておけば、雨天時の作業も安全に行うことができる。また、通行人の安全を確保できる。
【0081】
第5に、覆工板10を人手で載置し、メインロープ1上を滑らせるだけでよいので、大掛かりな作業が不要となる。
【0082】
第6に、前方に小型ウインチ等を設置して逐次引出し移動することができる連結部材の構成であり、環境条件によっては両側から引き出すこともできるため設置作業の効率化が図れる。また、在来方式では片方又は両方向から手作業で組み立てることが多いが、小型ウインチ等を用いれば、作業効率化に加えて、安全作業の向上をも図ることができる
第7に、本実施形態のワイヤブリッジ100は、応急的な通行設備として構築でき、歩行者、軽トラック、オートバイ又は自転車等が安全に通行できる設備として特に有用である。
【0083】
〈変形例〉
以上、本発明の実施形態について説明したが、大スパンの場合には、横揺れ対策として、ワイヤロープを4本配置し、橋の幅員方向に2枚連結〈全幅員を例えば4m〉して設置することも可能であり、固定連結金具等は同じ形状部材を使用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 メインロープ
2 橋台
3 覆工板
5 第二補強材
10 覆工板
10、10 両覆工板
10、10 覆工板
11 リップ溝形鋼
12 ボルト
13 上板
14 下板
15 第二補強材
16a、16b、16c 孔
17 ナット
18a 固定板
18b 山形鋼
18d ボルト孔
19 ナット
20 連結板
21 アップリフト金具
22 ナット
23 支柱
24a ボルト孔
30 手摺り親パイプ
31、32a、32b クランプ
31a ボルト
32c ボルト
33、34 取付板
33b ボルト孔
34 取付板
34b 長孔
40 幅木
40a 長孔
42 ナット
50a、50b 手摺り
51 長孔
53 ナット
60 金具
60) 金具
61 固体部
62 固定部
62a、62b、62c 平鋼
63 張出し部
64a、64c ボルト孔
65a ボルト孔
66 ボルト
67 ナット
68 隙間座金
70 O型ボルト
71 耐風索
100 ワイヤブリッジ
【要約】
【課題】簡単に設置可能なワイヤブリッジの設置方法を提供すること。
【解決手段】 2本のメインロープを所定間隔で張り設け、前記2本のメインロープの上に、上面視長方形の覆工板を、覆工板の長尺方向が幅員方向となるように敷設するワイヤブリッジの設置方法であって、覆工板の下面の長尺方向の両側に、短尺方向に延在するガイド金具を固定し、覆工板の上面の長尺方向の両側に、覆工板の短尺方向に所定間隔で固定ボルトを予め立設させておき、覆工板のガイド金具がメインロープの上に乗るように覆工板を前記2本のメインロープの上に載置する第1工程と、前記2本のメインロープの上に直前に載置した覆工板と、次に敷設した覆工板との間に前記連結板を掛け渡し、この2つの覆工板を、固定ボルトを用いて連結板とボルト接合して互いに連結する第2工程と、覆工板の移動を適宜に伴いながらを繰り返して実行する、ことを特徴とする。
【選択図】
図2