(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】情報管理装置、情報管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241111BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20241111BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G06Q50/10
G01W1/00 Z
G01W1/10 T
(21)【出願番号】P 2024080688
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2023041975の分割
【原出願日】2023-03-16
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2023003540
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】和田 将一
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓久
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197343(JP,A)
【文献】特開2019-109730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G01W 1/00
G01W 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて、該当する前記気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象現象グループに分類する分類制御部と、を有し、
前記データ管理部は、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力することを特徴とする情報管理装置。
【請求項2】
前記保険金支払い履歴は、保険金支払いに関する損害が発生した場所、損害が発生した日時、損害の発生に関連する気象現象を含み、
前記分類制御部は、
前記保険金支払い履歴情報に基づいて、前記抽出部によって抽出された前記気象関連投稿情報を、損害リスクの高い気象現象グループに分類する第1処理、
前記損害リスクの高い気象現象グループに分類された前記気象関連投稿情報を学習データとして所定の記憶領域に記憶する第2処理、
前記学習データを用いて、前記抽出部によって抽出される前記気象関連投稿情報を前記損害リスクの高い気象グループに分類するための分類モデルを生成する第3処理、
生成された前記分類モデルを用いて、前記抽出部によって抽出された前記気象関連投稿情報が前記損害リスクの高い気象現象グループに属するか否かを判定する分類判定処理を行う第4処理、及び、
前記分類判定処理の結果を、前記データ管理部から出力される前記観測データに対応する気象現象と関連付ける第5処理、
を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報管理装置。
【請求項3】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて、該当する前記気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象現象グループに分類する分類制御部と、を有し、
前記データ管理部は、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力することを特徴とする情報管理システム。
【請求項4】
コンピュータによって実行されるプログラムであって、前記コンピュータに、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する第1機能と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力する第2機能と、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて、該当する前記気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象現象グループに分類する第3機能と、を実現させ、
前記第3機能は、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
情報管理方法であって、コンピュータが、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する第1ステップと、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力する第2ステップと、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて、該当する前記気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象現象グループに分類する第3ステップと、を実行し、
前記第3ステップは、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力することを特徴とする情報管理方法。
【請求項6】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて
、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を、損害リスクの高い気象現象グループに仕分けする分類制御部と、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する判定基準制御部と、を有し、
前記判定基準制御部は、同じ気象現象であっても、損害リスクの高い気象現象グループの前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、損害リスクの高い気象現象グループではない前記気象関連投稿情報から把握される気象現象とで、前記判定基準の変更幅を相違させるように制御
し、
損害リスクの高い気象現象グループの前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて変更する前記判定基準の変更幅は、損害リスクの高い気象現象グループではない前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて前記判定基準を変更する場合よりも大きくなるように制御されることを特徴とする気象管理システム。
【請求項7】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて
、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を、損害リスクの高い気象現象グループに仕分けする分類制御部と、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
前記解析結果に基づいて、アラート情報を出力するアラート制御部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する判定基準制御部と、を有し、
前記アラート制御部は、同じ気象現象であっても、損害リスクの高い気象現象グループの前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、損害リスクの高い気象現象グループではない前記気象関連投稿情報から把握される気象現象とで、異なる前記アラート情報を出力するように制御することを特徴とする気象管理システム。
【請求項8】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
前記気象関連投稿情報を損害リスクに応じて分類する分類制御部と、を有し、
前記データ管理部は、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力することを特徴とする情報管理装置。
【請求項9】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を、損害リスクに応じて仕分けする分類制御部と、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する判定基準制御部と、を有し、
前記判定基準制御部は、同じ気象現象であっても、損害リスクに応じて前記判定基準の変更幅を相違させるように制御
し、
損害リスクの高い前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて変更する前記判定基準の変更幅は、損害リスクの高い前記気象関連投稿情報以外の前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて前記判定基準を変更する場合よりも大きくなるように制御されることを特徴とする気象管理システム。
【請求項10】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を、損害リスクに応じて仕分けする分類制御部と、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
前記解析結果に基づいて、アラート情報を出力するアラート制御部と、
気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する判定基準制御部と、を有し、
前記アラート制御部は、前記気象関連投稿情報から把握される気象現象が同じであっても、損害リスクに応じて異なる前記アラート情報を出力するように制御することを特徴とする気象管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気象レーダーで観測された観測データに基づく観測結果と実際の気象現象とを照合し、気象レーダーの観測データに対応する気象現象の真値(正解レベル)を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
気象レーダーは、電波(マイクロ波)を発射し、所定範囲内に存在する雨や雪を観測する。発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測することができる。
【0003】
近年では、二重偏波気象ドップラーレーダーが導入され、水平方向に振動する電波(水平偏波)と垂直方向に振動する電波(垂直偏波)を用いることで、雲の中の降水粒子の種別判別や降水の強さをより正確に推定することを可能にしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Park, H. -S and A. V. Ryzhkov, D. S. Zrnic and K. -E Kim 2009: The Hydrometeor Classification Algorithm for the Polarimetric WSR-88D:Description and Application to an MCS. Wea. Forecasting., 24, 730-748
【文献】影澤秀明(他5名)著,タイトル「Twitterを用いたセンシングシステムの提案と考察」,発行年:平成26年(2014年)7月2日,URL:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=104972&item_no=1&page_id=13&block_id=8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気象レーダーで観測された観測データに基づく観測結果と実際の気象現象とを照合し、気象レーダーの観測データに対応する気象現象の真値(正解レベル)を提供する情報管理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の情報管理装置は、投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された複数の投稿情報から取得される気象関連投稿情報の中から、気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、気象関連の損害に関する保険金支払い履歴に基づいて、該当する前記気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象現象グループに分類する分類制御部と、を有する。前記データ管理部は、同じ気象現象でも損害リスクの違いが区別されるように、前記観測データに対応する気象現象を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の情報管理装置の機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の観測データに対応する気象現象として、投稿情報から把握される気象現象を紐付けた真値情報の生成処理を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の各種評価情報を用いて投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する処理を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の情報管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図5】第2実施形態の気象管理装置の機能ブロック及びネットワーク構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態の判定基準変更処理を説明するための図である。
【
図7】第2実施形態の気象管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図8】第3実施形態の情報管理装置の機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。
【
図9】第3実施形態の保険金支払い履歴に基づいて気象関連投稿情報を分類する第1機能と、分類モデルを用いて気象関連投稿情報を分類する第2機能とを説明するための図である。
【
図10】第3実施形態の分類制御部によって実行される第1機能の処理フローを示す図である。
【
図11】第3実施形態の情報管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図12】第3実施形態における情報管理装置と連携した気象管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図13】第4実施形態の気象管理装置の機能ブロック及びネットワーク構成を示す図である。
【
図14】第4実施形態の気象管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図15】第4実施形態の気象管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図16】第4実施形態の気象管理装置によって実行される処理フローを示す図である。
【
図17】第4実施形態の気象管理システムの機能ブロック及びネットワーク構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0009】
上述のように、二重偏波気象ドップラーレーダーなどの気象レーダーによって、雲の中の降水粒子の種別判別や降水の強さをより正確に推定することを可能にしている。一方で、気象レーダーで観測された観測データに基づく解析結果は、あくまでも「推定」であり、実際に現地で生じていた気象現象と相違することもある。降水粒子は、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリに分類され、例えば、観測データに基づいて「この観測エリアでは湿った雪が降った」と推定した観測エリアにおいて、実際には「あられが降った」という気象現象が生じていたこともある。
【0010】
そこで、気象庁は、気象レーダーの観測データに加え、気象庁・国土交通省・地方自治体が保有する全国の雨量計などの観測機器のデータを組み合わせて、実際に現地又はその付近で観測された気象現象を用いて、観測データに基づく推定結果の精度向上に努めている。
【0011】
しかしながら、雨量計や積雪計などのセンサ機器では、雨量や積雪が多かった、少なかったことは把握できるものの、霧雨だったのか、湿った雪だったのか乾いた雪だったのか、それともあられが降ったのか、ひょうが降ったのかなどを、把握することができない。この点、ディスドロメーター(降水粒径・速度分布測定装置)で霧雨、雨、ひょう、雪などを観測できるものの、ディスドロメーターは、研究目的で使用されることがほとんどであり、気象庁の全国各地のアメダス観測所には配備はされていない。特に、ひょう(雹)やあられ(霰)は、発生頻度が低く、地上で観測できることは稀であり、ディスドロメーターの配備促進は現実的ではない。
【0012】
このように、アメダス観測所の観測機器では観測できない、又は観測し難い気象現象は、気象レーダーの観測データに基づく解析にフィードバックすることが難しく、気象レーダーの観測データに基づく解析精度を向上させることが難しかった。
【0013】
また、ひょうやあられなどの気象現象以外にも、竜巻やつむじ風などの突風の気象現象も発生頻度が低く、地上で観測できることは稀である。気象レーダーの観測データに基づいて積乱雲の発生を観測し、竜巻など発生の可能性は推定できるものの、発生頻度の低さに加え、発生範囲が局所的で狭かったりし、観測機器での観測が難しい。
【0014】
そこで、気象レーダーで観測された観測データに基づく観測結果と実際の気象現象とを照合する新たな技術を構築し、気象レーダーの観測データに対応する気象現象の真値(正解レベル)を提供する。具体的には、投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報を用いる。
【0015】
また、気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類して解析する気象管理装置において、投稿情報に基づく気象現象の真値(正解レベル)に基づいて判定基準を変更し、例えば、判定基準を下げることで、所定の気象現象の発生の見逃しを抑制する。
【0016】
(第1実施形態)
図1から
図4は、第1実施形態を説明するための図である。
図1は、本実施形態の情報管理装置100の機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。
【0017】
情報管理装置100は、気象管理装置200から気象レーダーの観測データに関する情報が提供され、ウェブサーバ300から投稿者が投稿した投稿情報が提供される。情報管理装置100は、気象レーダーで観測された観測データに対応する気象現象として、投稿者から投稿された気象関連投稿情報から把握される気象現象を、真値(正解ラベル)として抽出・生成する機能を提供する。つまり、観測データ及び観測データに対応する正解ラベルのデータセットを生成する装置として機能する。
【0018】
気象レーダーは、例えば、電波(マイクロ波)を発射し、雨や雪を観測する。発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測する。また、上述のように、二重偏波気象ドップラーレーダーが導入され、水平方向と垂直方向に振動する電波(水平偏波,垂直偏波)を用いることで、雲の中の降水粒子の種別判別や降水の強さを推定する。
【0019】
二重偏波気象ドップラーレーダーでは、振幅の比によって降水粒子の形を推定することができる。降水粒子は、粒が大きいほど、より空気抵抗をうけて扁平になる。これを水平偏波と垂直偏波により観測し、その反射波の振幅比から降水粒子の形を推定する。また、位相差で雨の強さを推定することができる。電波には雨粒などの水の中を進むとき、何もない大気中と比べて速度が少し遅くなる性質がある。強い雨ほど水平偏波の速度が遅くなる性質を利用して、水平偏波と垂直偏波により観測し、その反射波の位相の差から、雨の強さを推定する。
【0020】
振幅の比による降水粒子推定では、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリが予め用意される。例えば、振幅の比が所定値以上である場合、降水粒子がひょうであると判定(カテゴライズ)する。振幅の比を判定基準として設定し、観測データに基づいて、観測エリアにおける気象現象を推定する。なお、ひょうは、積乱雲から降る直径5mm以上の氷粒であり、直径5mm未満の氷粒はあられと定義される。
【0021】
ウェブサーバ300は、投稿者端末Tから投稿される投稿情報を受け付け、受け付けた投稿情報をウェブ上で公開するウェブサイトを提供する。投稿者は、ウェブサーバ300に登録したユーザであり、不特定多数の投稿者が含まれる。一例として、Twitter(登録商標)やFacebook(登録商標)などのSNS(Social Networking Service)への投稿情報を利用することができる。この場合、ウェブサーバ300には、気象関連投稿情報以外の投稿情報も蓄積される。
【0022】
他の例としては、気象関連専門の投稿情報を受け付けるウェブサイトへの投稿情報を利用することができる。例えば、投稿者が気象リポーターや観測員となり、日々の気象情報を投稿する。この場合、ウェブサーバ300には、気象関連投稿情報のみが蓄積される。
【0023】
情報管理装置100は、1つ又は複数のウェブサイト300と接続して、気象関連の投稿情報を取得する。なお、投稿者端末Tは、スマートフォンなどの多機能携帯電話機やタブレット型コンピュータなどのモバイル端末であり、IP(Internet protocol)網又は
移動通信回線網(Mobile communication network)を通じたデータ通信機能、演算機能(CPU等)及び記憶装置(メモリ、補助記憶装置等)を備えている。
【0024】
また、投稿者端末Tは、ブラウザなどの表示制御アプリケーションを備えると共に、静止画像又は/及び動画像を撮影する撮影装置、タッチパネル方式の表示入力装置、GPS装置を備えることができる。後述するように、投稿者端末Tから投稿される投稿情報は、投稿内容と共に、GPS装置で取得される位置情報及び時刻情報が含まれる。
【0025】
気象予測装置400は、気象予測モデル、例えば、気象庁のメソモデルや、メソ気象モデルWRFなどを用いた気象予測機能と提供し、予測エリア及び予測時刻における気象現象(雪、雨、あられ、ひょうなど)の予測結果を提供する。気象予測装置400(気象予測モデル)は、公知技術であり、詳細な説明は省略する。
【0026】
図1に示すように、情報管理装置100は、IP網又は専用回線を通じて気象管理情報200,ウェブサイト300及び気象予測装置400と接続する。通信装置110は、各装置との間のデータ通信制御を行う。情報管理装置100は、制御装置120及び記憶装置130を備える。制御装置120は、情報取得部121、抽出部122、データ管理部123を含んで構成される。
【0027】
図2は、本実施形態の観測データに対応する気象現象として、投稿情報から把握される気象現象を紐付けた真値情報の生成処理を説明するための図である。
【0028】
ウェブサーバ300に投稿される投稿情報は、投稿記事又は/及び投稿画像、位置情報、時刻情報、投稿者情報を含む。投稿記事は、投稿文であり、投稿画像は、投稿者端末Tが備える撮影装置で撮影された画像、又は投稿者端末Tとは別の撮影装置で撮影された画像である。位置情報は、投稿者(投稿者端末T)の現在位置であり、現在位置に対応する住所情報が含まれるようにしてもよい。投稿時刻は、ウェブサーバ300が投稿情報を受け付けた日時情報である。投稿者情報は、ウェブサーバ300に登録したユーザID等のユーザ識別子である。
【0029】
投稿者は、投稿者端末Tを通じて、ウェブサーバ300が提供する投稿用画面から投稿記事や投稿画像を入力し、投稿情報をウェブサーバ300に送信する。ウェブサーバ300は、投稿者端末Tから送信される投稿情報を受け付け、ウェブサーバ300が提供する投稿ウェブサイトに投稿情報を掲載し、公開する。
【0030】
なお、情報管理装置100が投稿情報を取得、すなわち、投稿情報を収集する一例として、投稿情報を受け付けて公開するウェブサーバ300から取得する態様について説明したが、これに限るものではない。例えば、検索サーバ(検索サイト)を経由して、投稿情報を取得してもよい。検索サイトでは、複数の異なる投稿ウェブサイト(複数の異なるウェブサイト300)から、キーワードなどの検索キーに関連する投稿情報を収集することができる。そこで、情報管理装置100は、ウェブサイト300から又はウェブサイト300の投稿情報を収集可能な検索サイトから、当該ウェブサーバ300に投稿された投稿情報を取得することができる。
【0031】
情報取得部121は、
図2に示すように、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいて、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、気象関連投稿情報を取得する。気象関連投稿情報は、1つ又は複数取得することができる。例えば、キーワード「ひょう」を含む投稿情報を気象関連情報として取得したり、「ひょう」が映っている基準画像を用い、当該基準画像に類似する投稿画像を有する投稿情報を気象関連投稿情報として取得したりすることができる。「ひょう」を一例に説明したが、「あられ」に関連する気象関連投稿情報を同様に収集することができる。なお、「ひょう」に関連する投稿画像を有する投稿情報を抽出する処理として、画像認識AIモデルを利用することもできる。例えば、予め「ひょう」が映っている画像群を学習データとして入力し、学習処理を行って「ひょう画像認識」AIモデルを生成することができる。そして、生成したAIモデルを使用し、投稿画像の「ひょう」に対する類似度を算出し、類似度が所定値以上の投稿画像を有する投稿情報が、気象関連情報として取得されるように構成することができる。
【0032】
次に、抽出部122は、気象レーダーの観測データとのマッチング処理を行う。つまり、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する。
【0033】
例えば、気象レーダーの観測データの解析結果、すなわち、振幅の比による降水粒子推定において、ひょうと判定された観測エリア及び観測時刻と、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻とをマッチングする。抽出部122は、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻が、観測エリア及び観測時刻と十分に近い所定の範囲内に属するか否かを判定し、十分に近い所定の範囲内にある「ひょう」に関連する気象関連投稿情報を抽出する。
【0034】
データ管理部123は、観測データにマッチングした気象関連投稿情報を、観測データに対応する気象現象として紐付ける。言い換えれば、抽出部122によって抽出された気象関連投稿情報から把握される気象現象を、観測データに対応する気象現象として出力する。
【0035】
データ管理部123は、観測データに対応する気象現象の真値(正解ラベル)として、気象関連投稿情報から把握される気象現象を出力すると共に、観測データと気象現象の真値(正解ラベル)とを含むデータセットを生成するデータ生成部として機能することができる。このデータセットは、教師あり学習データとして気象管理装置200にフィードバックすることができ、上述した気象レーダーの観測データの解析処理や解析アルゴリズム、解析処理に用いられる判定基準(閾値)等のチューニングに使用することができる。なお、気象現象の真値(正解ラベル)は、対応する観測データとの紐付けが出来ていれば、観測データ自体をデータセットとして保持する必要はない。例えば、気象管理装置200にフィードバックする際、情報管理装置100(データ管理部123)は、観測エリア及び観測時刻と、出力した気象現象の真値(正解ラベル)とを含むデータセットを生成し、提供することができる。
【0036】
上記例では、観測データによる降水粒子推定において、ひょうと判定された観測データと、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報とをマッチングする態様について説明したが、例えば、あられと判定された観測エリア及び観測時刻と、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻とをマッチングし、あられと判定された観測エリア及び観測時刻の観測データに対し、気象現象の真値(正解ラベル)として「ひょう」が紐付けられることもある。また、逆も同様である。
【0037】
このように本実施形態の情報管理装置100は、観測データの解析結果から推定される気象現象の答え合わせをウェブ上で収集可能な投稿情報を用いて行い、気象関連投稿情報から把握される気象現象を、観測データに対応する気象現象の真値(正解ラベル)として生成する。
【0038】
特に、ひょうやあられといった発生頻度が低く、地上で観測できることは稀な気象現象に対し、観測データの解析結果の答え合わせを行うことができ、気象レーダーの観測データに基づく解析精度を向上させることができる。
【0039】
図3は、本実施形態の各種評価情報を用いて投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する処理を説明するための図である。
【0040】
情報収集部121は、複数の投稿情報から気象関連投稿情報を抽出するが、投稿情報の確からしさを評価し、評価が一定基準以上の気象関連投稿情報を抽出するようにすることができる。情報収集部121は、第1処理部から第4処理部を備えることができる。
【0041】
図3に示すように、情報収集部121の第1処理部121Aは、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいて、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、候補投稿情報を抽出する(第1処理)。
【0042】
情報収集部121の第2処理部121Bは、所定の評価基準に基づいて、候補投稿情報の投稿者に対する投稿者評価値を生成する(第2処理)。投稿者評価値とは、投稿者の過去の投稿数、他の投稿者から評価された数、過去の投稿情報が真値(正解ラベル)として採用された実績数などを評価パラメータ(評価基準)として算出することができる。投稿者の過去の投稿数及び他の投稿者から評価された数は、ウェブサーバ300で管理される投稿履歴等から取得することができる。過去の投稿情報が真値(正解ラベル)として採用された実績数は、情報管理装置100において、真値(正解ラベル)として採用された気象関連投稿情報の投稿者を蓄積することができる。過去の投稿情報が真値(正解ラベル)として採用された実績数は、投稿者評価情報132として記憶装置130に記憶される。
【0043】
情報収集部121の第3処理部121Cは、第1処理部121Aで抽出された候補投稿情報に類似する他の投稿者の投稿情報の数を、当該候補投稿情報の投稿確度と算出する。具体的には、候補投稿情報の位置情報及び時刻情報に近い所定の範囲内の位置情報及び時刻情報を含み、かつ気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性を有する他の投稿者の投稿情報(類似投稿情報)を、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から抽出する。第3処理部121Cは、抽出された類似投稿情報に基づいて、候補投稿情報に対する投稿確度評価値を生成する(第3処理)。
【0044】
情報収集部121の第4処理部121Dは、気象予測装置400によって生成された予測情報を用いて、第1処理部121Aで抽出された候補投稿情報の情報確度を評価する。具体的には、第4処理部121Dは、候補投稿情報の位置情報及び時刻情報に対応する、所定の気象予測モデルによって生成された予測情報に基づいて、候補投稿情報に対する気象事象評価値を生成する(第4処理)。候補投稿情報の位置情報及び時刻情報における気象現象が、予測情報の気象情報と同様であれば、気象現象評価値は高く算出され、候補投稿情報の位置情報及び時刻情報における気象現象が、予測情報の気象情報と異なれば、気象現象評価値は低く算出される。
【0045】
そして、情報収集部121は、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値に基づいて、評価が所定値以上である候補投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する。例えば、所定値以上の各評価値を有する候補投稿情報を気象関連投稿情報として抽出したり、各評価値の合計が所定値以上の候補投稿情報を気象関連投稿情報として抽出したりすることができる。また、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値に対し、重み値を適用し、例えば、投稿者評価値及び投稿確度評価値の重み値を高く設定し、気象事象評価値の重み値を低く設定して、評価値の合計値を算出するように構成してもよい。この場合、重み値は任意に設定できる。
【0046】
投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値の各評価値は、それぞれ単独で、または任意の組み合わせで構成することができる。情報収集部121は、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値の少なくとも1つ、またはこれらの任意の組み合わせで候補投稿情報を評価し、気象関連投稿情報を抽出するように構成することができる。
【0047】
なお、上述の評価値を用いた気象関連投稿情報の抽出処理は、投稿情報の特性に応じて、適用しない構成であってもよい。例えば、気象情報の投稿を専門に受け付ける気象情報投稿ウェブサーバ300(ウェブサイト)から収集した気象関連投稿情報である場合、投稿者の信頼度、投稿情報としての情報確度が予め保証されている投稿情報として取り扱い、情報管理装置100側で、各評価値に基づく選別を行わない構成とすることもできる。言い換えれば、投稿情報を受け付けるウェブサーバ300側で、投稿者の信頼度及び情報確度を保証した投稿情報を選別してウェブ上で公開している場合、第1処理部121Aで抽出された候補投稿情報を、気象関連投稿情報としてそのまま抽出することができる。
【0048】
図4は、本実施形態の情報管理装置100によって実行される処理フローを示す図である。
【0049】
ウェブサーバ300には、投稿者から投稿者端末Tを通じて投稿情報が蓄積される。このとき、気象関連以外の投稿情報も含まれる。
【0050】
情報管理装置100は、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいて、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、候補投稿情報を抽出する(S101)。例えば、「ひょう」、「あられ」といったキーワードや、「ひょう」や「あられ」のサンプル画像を抽出キーとして、ウェブサーバ300に蓄積された投稿情報を検索する。なお、抽出キーは、情報管理装置100の運営側で任意に設定される。
【0051】
なお、候補投稿情報は、気象に関連するキーワード及びサンプル画像のいずれか1つに該当する投稿情報、気象に関連するキーワード及びサンプル画像の双方に該当する投稿情報である。
【0052】
次に、情報管理装置100は、抽出した候補投稿情報に対し、
図3で説明した評価値算出処理を行う(S102)。情報管理装置100は、算出された投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値に基づいて、評価が所定値以上である1つまたは複数の候補投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する(S103)。例えば、評価値に基づく評価結果が一番高い候補投稿情報を、気象関連投稿情報として抽出することができる。
【0053】
情報管理装置100は、気象管理装置200から観測データを取得する。情報管理装置100は、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する(S104)。そして、情報管理装置100は、抽出された気象関連投稿情報から把握される気象現象を、観測データに対応する気象現象の真値(正解ラベル)として出力する(S105)。出力された投稿情報に基づく気象現象の真値(正解ラベル)は、記憶装置130に記憶される(S106)。
【0054】
上述のように、情報管理装置100は、観測データと気象現象の真値(正解ラベル)とを含むデータセットを生成するデータ生成部として機能することもできる。情報管理装置100は、タイミングで当該データセットを気象管理装置200や気象予測装置400に提供することができ、気象管理装置200の解析処理や気象予測装置400の予測処理の精度向上に役立てることができる。
【0055】
なお、上述の情報管理装置100の処理ステップにおいて、ステップS104を中心としたマッチング処理は、2つの態様を含む。
【0056】
1つ目は、ステップS103において抽出された気象関連投稿情報の位置情報及び時刻情報に基づいて、情報管理装置100(制御装置120)が、該当する観測エリア及び観測時刻を含む観測データを、気象管理装置200から取得し、ステップS104において、両者をマッチングするように構成することができる。
【0057】
2つ目は、気象管理装置200において、解析結果として「ひょう」、「あられ」などの特定の気象現象を観測した観測データを予め取得し、ステップS101からステップS103の気象関連投稿情報を抽出する処理において、観測データの観測エリア及び観測時刻に該当する気象関連投稿情報を抽出するように構成することができる。
【0058】
どちらも処理も、ウェブサーバ300から収集された気象関連投稿情報と、観測データとを、位置情報及び時刻情報とでマッチングし、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出することで、観測データに対応する気象現象の真値(正解ラベル)として出力する。
【0059】
(第2実施形態)
図5から
図7は、第2実施形態を説明するための図である。本実施形態は、気象管理装置200が観測データを解析処理し、解析結果に基づくアラート出力を行う気象管理機能を提供する。このとき、上記第1実施形態の情報管理装置100によって生成された観測データに対する気象現象の真値(正解ラベル)が、リアルタイムにフィードバックされる。本実施形態の気象管理装置200は、上記第1実施形態の情報管理装置100と連携して気象管理システムを構成している。
【0060】
図5は、本実施形態の気象管理装置200の機能ブロック及びネットワーク構成を示す図である。気象管理装置200は、通信装置210,制御装置220、記憶装置230を備え、制御装置220は、解析部221、判定基準制御部222、アラート制御部223、真値情報取得部224を含む。
【0061】
解析部221は、気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、当該分類に基づく解析結果を出力する。上述のように、解析部221は、振幅の比による降水粒子推定処理(解析処理)を行うことができ、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリ(分類)が予め用意される。解析部221は、振幅の比を判定基準として設定し、観測データに基づいて、観測エリアにおける気象現象を推定する。
【0062】
アラート制御部223は、解析部221の解析結果に基づいて、アラート情報を出力する。例えば、複数のユーザが登録する情報配信システムやウェブサイトで情報を公開するウェブサーバに、アラート情報を出力したり、気象管理装置200に登録されたユーザ(ユーザ端末)に、アラート情報を提供することができる。
【0063】
そして、本実施形態では、判定基準制御部222を備え、上記第1実施形態の情報管理装置100から出力された、観測データに対応する気象関連投稿情報から把握される気象現象(真値)に基づいて、判定基準を変更する。
【0064】
図6は、本実施形態の判定基準変更処理を説明するための図である。
【0065】
気象管理装置200は、気象レーダーの観測データAを用いて降水粒子推定処理を行う。観測データAは、観測時刻が2023年1月5日の15:31、観測エリアがA市である。解析部221は、判定基準に基づいて、観測データAの解析結果として粒子径「3mm」を出力する。解析部221は、粒子径「3mm」及び解析結果に対応する気象現象「あられ」を出力する。アラート制御部223は、例えば、「A市は、あられが降っている可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報を生成し、出力する。
【0066】
この観測データAは、気象管理装置200の解析処理と並行して情報管理装置100にもリアルタイムに提供され、観測エリア及び観測時刻に対する、気象関連投稿情報に基づく気象現象の真値(正解ラベル)の生成処理が行われる。そして、真値(正解ラベル)は、観測データAと紐付けられ、情報管理装置100から気象管理装置200に提供される。真値情報取得部224は、情報管理装置100への観測データAの提供処理及び情報管理装置100から真値(正解ラベル)の取得処理を行う。
【0067】
判定基準制御部222は、観測データAの真値(正解ラベル)を受信すると、解析結果と真値(正解ラベル)の照合処理を行う。照合処理の結果、解析結果の気象現象が、観測データAの真値(正解ラベル)と相違すると判別された場合、判定基準制御部222は、判定基準を一時的に変更する。
図6の例では、解析結果が「あられ」であり、真値(正解ラベル)が「ひょう」であり、両者は相違する。判定基準制御部222は、観測データAに基づく気象現象が真値(正解ラベル)として、判定基準を変更する。
【0068】
例えば、降水粒子推定処理の判定基準は、振幅の比が所定値X以上所定値Y未満の場合は「あられ」、振幅の比が所定値Y以上の場合は「ひょう」と判定し、気象現象の解析結果として、「あられ」や「ひょう」などを出力する。判定基準制御部222は、
図6の例において、観測データAの振幅の比が所定値X以上所定値Y未満であったので「あられ」を解析結果として出力していたが、実際には「ひょう」が降っていたので、「あられ」と「ひょう」の境界閾値である所定値Yを、所定値Y1に変更する。所定値Y1は、所定値Yよりも小さい値であり、観測データで「ひょう」と判定される領域を広げる閾値変更を行う。
【0069】
このように「あられ」と判定される領域を一時的に狭くし、「ひょう」と判定される領域を広げる閾値変更を、判定基準に対して行う。そして、観測データA以降に観測された観測データBの解析処理に、変更された判定基準を適用する。
【0070】
観測データBは、観測時刻が2023年1月5日の15:42、観測エリアがB市(A市の隣)である。このとき、観測データBは、観測データAと同様の観測データであり、変更前の判定基準を用いた解析結果は「あられ」と判定されるが、観測データAの真値(正解ラベル)によって変更後の判定基準では、解析部221が、観測データBの解析結果として気象現象「ひょう」を出力する。アラート制御部223は、例えば、「B市は、ひょうが降っている可能性があります。ご注意ください」、あるいは「B市は、まもなくひょうが降る可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報を生成し、出力する。気象レーダーは上空の降水粒子を観測することができるため、地上に落ちる数分から数十分前にアラート情報を出力できる可能性がある。
【0071】
ここで、判定基準の変更は、観測エリア別に適用することができる。例えば、観測データAの観測エリアと遠い距離の観測エリアの観測データCには、判定基準を変更せずに解析処理を行うことができる。一方、観測データAの観測エリアと近く、かつ観測データAの観測時刻から所定時間以内に観測された観測データBの解析処理に、変更後の判定基準を適用するように構成することができる。
【0072】
したがって、判定基準は、情報管理装置100によって提供される真値に対応する観測データの観測エリア及び観測時刻別に変更することができる。そして、判定基準の変更値は、有効エリア及び有効期限が設定される。すなわち、変更値を適用する観測エリアとして、真値(正解ラベル)に対応する観測データAの観測エリアから所定範囲内のエリアが設定され、有効期限として観測データAの観測時刻から所定時間(例えば、30分)が設定される。有効期限が過ぎると、当該変更値は初期化され、その後は、変更前の判定基準値(デフォルト値)を用いて解析処理が行われる。
【0073】
図7は、本実施形態の気象管理装置200によって実行される処理フローを示す図である。
【0074】
気象レーダーは、所定の間隔で時系列に連続して観測を行い、観測データを出力する。気象管理装置200は、気象レーダーの観測データAが入力されると、観測データAの解析処理を行う(S201)。このとき、気象管理装置200は、情報管理装置100に解析対象の観測データAを提供する。
【0075】
気象管理装置200は、上述の降水粒子推定処理を行う。例えば、所定の判定基準に基づいて分類し、当該分類に基づく解析結果を出力する。解析結果は、記憶装置230に格納される(S202)。気象管理装置200は、解析結果に基づいて、アラート情報を出力する(S203)。
【0076】
気象管理装置200は、情報管理装置100から、観測データAに対する気象現象の真値情報を受信する。気象管理装置200は、情報管理装置100からの真値情報の受信に伴い、判定基準変更処理を開始する(S204)。気象管理装置200は、観測データAの解析結果と、受信した真値(正解ラベル)情報とを比較し、同じ気象現象であると判定された場合は、判定基準の変更処理を行わない(S205のNO)。一方、異なる気象現象であると判定された場合は(S205のYES)、観測データAに対応する気象関連投稿情報から把握される真値(正解ラベル)に基づいて、判定基準を変更する(S206)。
【0077】
気象管理装置200は、ステップS206で変更された判定基準値を用いて、後続の気象レーダーの観測データの解析処理を繰り返し行う(S208のNOからS201)。
【0078】
このとき、上述のように、判定基準制御部222は、観測データAに対応する気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて判定基準を変更するとき、当該観測データAの観測エリア及び観測時刻に基づいて、変更後の判定基準を適用する有効エリア及び有効時間を設定する(S207)。そして、解析部221は、ステップS201において、後続の観測データBの観測エリア及び観測時刻が、設定された有効エリア及び有効時間に対応する有効範囲内であるか否かを判定し、有効範囲内であると判定された場合、後続の観測データBの解析処理に、変更後の判定基準を適用する。
【0079】
本実施形態は、気象管理装置200における観測データの解析処理において、リアルタイムに情報管理装置100が提供する真値(正解ラベル)を適用し、その後の観測データの解析処理に反映する。つまり、観測データの解析結果と気象関連投稿情報に基づく真値(正解ラベル)とが互いに異なる場合、真値(正解ラベル)に基づいて判定基準を変更することで、その後の観測データの解析結果をより正確に行うことができる。
【0080】
特に、ひょうは、自然災害として被害が大きい。観測データの解析結果がひょうではなくあられが降っていると判定しても、実際に(投稿情報では)ひょうが降っている場合がある。そこで、その後の観測データの解析処理において、あられと判定された同様の観測データであっても、ひょうが降っていると厳しめに判定する。つまり、ひょうと判定される頻度を多くし、ひょうと判定されない見逃しを低減させる。このように構成することで、自然災害として被害が大きい気象現象のアラートを出しやすくすることができ、防災への注意喚起を適切に行うことができる。
【0081】
また、判定基準の変更の契機となった観測データの観測エリア及び観測時刻を基準に、判定基準の変更値を適用するエリア及び時間範囲を設定する。ひょうは、上述のように観測される頻度が低い特殊な気象現象であり、長時間、広範囲に及ぶ気象現象ではない。そこで、判定基準の変更の契機となった観測データの観測エリアから、例えば半径50km以内の範囲であり、2時間以内の観測データに対し、判定基準の変更値を適用し、自然災害として被害が大きい気象現象のアラートを出しやすくする。このように構成することで、ひょうが降っているアラートを出力するエリアを適切に限定しつつ、ひょうが降っているアラートを出力するエリアをむやみに広げずに、当該アラートによる混乱等を抑制することができる。
【0082】
(第3実施形態)
図8から
図12は、第3実施形態を説明するための図である。本実施形態は、上記第1実施形態に対し、保険金支払い履歴に基づいた気象関連投稿情報の分類機能を備える。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、各図において同符号を付して説明を省略する。
【0083】
図8は、本実施形態の情報管理装置100の機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。情報管理装置100の制御装置120は、分類制御部124をさらに備え、記憶装置130には、分類関連情報134が記憶されている。
【0084】
図9は、本実施形態の保険金支払い履歴に基づいて気象関連投稿情報を分類する第1機能と、分類モデルを用いて気象関連投稿情報を分類する第2機能とを説明するための図である。第1機能は、過去の気象関連投稿情報から学習データを生成し、生成された学習データを用いて分類モデルを生成する機能である。第2機能は、生成された分類モデルを用いて、新たに抽出部122によって抽出される気象関連投稿情報に対して分類判定処理を行い、分類判定処理の結果を、データ管理部123から出力される観測データに対応する気象現象、すなわち、真値(正解ラベル)と関連付ける機能である。
【0085】
保険金支払い履歴は、保険会社が提供する保険商品において、ひょう、あられ、竜巻やつむじ風などの気象現象によって発生した損害に対して実際に保険金を支払った履歴である。保険商品は、火災保険、水災保険、雹災保険や車両保険などの自然災害をカバーする個人向け保険商品や、事業者向けの自然災害をカバーする保険商品などが含まれる。
【0086】
保険金を支払った履歴は、加入者からの請求に基づき、保険会社が損害状況を把握して保険金が支払われた実績であり、支払い項目、被害場所、被害日時、支払い対象などの情報がふくまれる。
【0087】
支払い項目は、損害の発生に関する気象現象であり、例えば、「ひょう被害」が支払い項目として含まれる。被害場所は、ひょうが降って支払い対象が損害を受けた場所(損害が発生した位置情報)であり、例えば、〇〇県〇〇市〇〇町といった住所情報である。支払い対象は、損害を被った資産であり、保険対象である。例えば、車両保険であれば、車両となり、火災保険では家屋となる。この保険金支払い履歴情報は、保険会社から提供される。保険金支払い履歴情報は、ネットワークを通じて保険会社(保険会社側のサーバや端末)から取得したり、物理的なリスト情報として取得して運営管理者が情報管理装置100に入力したりすることができる。保険金支払い履歴情報は、分類関連情報134として記憶装置130に記憶される。
【0088】
そして、本実施形態では、保険金支払い履歴情報を用いて、気象関連投稿情報を損害リスクが高い気象現象グループ(保険金支払い実績のある気象現象グループ)とそれ以外のグループ(保険金支払い実績のない気象現象グループ)に分類する。すなわち、複数の気象関連投稿情報において、保険金支払い履歴があった損害場所及び日時に該当する気象関連投稿情報を抽出し、損害リスクが高い気象現象であることを示す情報を関連付ける。これにより、同じ気象現象であっても保険金支払い履歴(実績)に基づく損害リスクの高い気象現象を区分けできる。例えば、気象現象「ひょう」に属する気象関連投稿情報は、気象現象「ひょう(損害リスク高)」に属する気象関連投稿情報と、それ以外の気象関連投稿情報とに分類することができる。
【0089】
したがって、分類制御部124は、保険金支払い履歴があった損害場所及び日時に該当する気象関連投稿情報に、分類情報「損害リスク高」を関連付ける(ラベリングする)。そして、データ管理部123は、真値(正解ラベル)を生成する際に、当該真値(正解ラベル)を生成するために使用した気象関連投稿情報に関連付く分類情報が含まれるように制御することができる。例えば、記憶装置130に記憶される観測データ別の気象事象の真値情報133は、観測時刻、観測エリア、気象関連投稿情報に基づく気象現象に加え、分類情報「損害リスク高」が含まれるように構成することができる。
【0090】
ひょうは、上述のように、直径5mm以上の氷粒であるが、直径が10mmでも同じひょうである。しかしながら、直径が大きくなればなるほど被害は大きくなり、また直径が小さければ損害は小さくなる可能性がある。そこで、ひょうという気象現象が同じでも、当該気象現象がもたらす被害(損害)は異なるため、本実施形態では、気象現象「ひょう」によって実被害があった証跡として、保険金支払い履歴情報(損害実績)を使用している。
【0091】
そして、過去の保険金支払い履歴に該当する気象関連投稿情報(真値(正解ラベル)を生成するために使用された気象関連投稿情報)は、学習データとして蓄積される。学習データは、分類関連情報134として記憶部130に記憶される。
【0092】
例えば、過去の保険金支払い履歴に該当する気象関連投稿情報の画像や投稿文を、学習データとして蓄積することができる。画像は、実被害があったひょう画像の学習データとして使用され、投稿文は、実被害があったひょうに関するテキスト(キーワード等)の学習データとして利用される。例えば、「直径30mmはあった」、「ゴルフボールくらいの大きさ」、「車のボンネットが凹んだ」、「車庫の屋根を突き破った」など、ひょう自体に関連するキーワードやひょうによって発生した被害(損害)に関するキーワードを含む投稿文が学習データとして利用される。
【0093】
蓄積された学習データは、新たに抽出された気象関連投稿情報が、損害リスクが高い気象現象に該当するか否かを判別する分類モデルの生成処理(学習処理)に使用される。分類モデルは、新たに抽出された気象関連投稿情報の画像又は/及び投稿文から、画像の類似性やキーワード等に基づく投稿文の類似性などを算出し、所定値以上の類似性を有する気象関連投稿情報を、「損害リスクの高い気象現象グループに分類する。
【0094】
図10は、分類制御部124によって実行される第1機能の処理フローを示す図である。分類制御部124は、以下の処理を遂行する。
【0095】
1)保険金支払いに関する損害が発生した場所、損害が発生した日時、損害の発生に関連する気象現象を含む保険金支払い履歴情報に基づいて、抽出部122によって抽出された過去の気象関連投稿情報を、損害リスクの高い気象現象グループに分類する第1処理(S1001,S1002)、
2)損害リスクの高い気象現象グループに分類された気象関連投稿情報を学習データとして所定の記憶領域に記憶する第2処理(S1003)、
3)学習データを用いて、今後抽出部122によって抽出される気象関連投稿情報を損害リスクの高い気象グループに分類するための分類モデルを生成する第3処理(S1004)。
【0096】
図11は、情報管理装置100によって実行される処理フローを示す図であり、上記第1実施形態の
図4の処理フローに対応している。
図11において、ステップS104A及びS104Bが追加され、これらのステップが分類制御部124による第2機能に相当する。
【0097】
ステップS104で抽出された気象関連投稿情報に対し、分類制御部124は以下の処理を遂行する。
4)生成された分類モデルを用いて、抽出部122によって抽出された気象関連投稿情報が損害リスクの高い気象現象グループに属するか否かを判定する分類判定処理を行う第4処理(S104A)、
5)分類判定処理の結果を、データ管理部123から出力される観測データに対応する気象現象(真値(正解ラベル))と関連付ける第5処理(S104B)。
【0098】
そして、データ管理部123から出力される真値(正解ラベル)には、分類モデルによる分類判定結果(損害リスクが高い気象現象であることを示す識別情報)が付加される。つまり、データ管理部123から出力される真値(正解ラベル)が、損害リスクが高い気象現象グループであるか否かの情報を有するように構成される(S105)。
【0099】
次に、本実施形態の「損害リスクが高い気象現象」であることを示す識別情報を含む真値(正解ラベル)を、上記第2実施形態に適用したケースについて説明する。
【0100】
まず、上記第2実施形態は、
図6に示すように、情報管理装置100が提供する真値(正解ラベル)を用いて判定基準を変更することができる。ここで、本実施形態の情報管理装置100によって提供される「損害リスクが高い気象現象」であることを示す識別情報を含む真値(正解ラベル)でも、「損害リスクが高い気象現象」であるか否かに関係なく、気象管理装置200は、判定基準を変更することができる。
【0101】
一方、気象管理装置200は、「損害リスクが高い気象現象」に属する真値(正解ラベル)と「損害リスクが高い気象現象」に属さない真値(正解ラベル)とで、判定基準の変更幅を相違させるように制御することもできる。例えば、「損害リスクが高い気象現象」に属する真値(正解ラベル)に基づいて判定基準を変更する場合(S206)、変更値P1に変更し、「損害リスクが高い気象現象」に属さない真値(正解ラベル)に基づいて、判定基準を変更する場合、変更値P1よりも小さい変更値P2(P1>P2)に変更することができる。
【0102】
また、気象管理装置200のアラート制御部223は、
図12に示すように、情報管理装置100から提供される真値(正解ラベル)が、「損害リスクが高い気象現象」に属するか否かを判別し(S2004)、「損害リスクが高い気象現象」に属すると判定された場合(S2004のYES)、アラート制御部223は、アラート出力において、過去に実被害が報告された気象現象であることを示すアラート情報(例えば、警告アラート)を出力するように制御することができる(S2005)。一方、「損害リスクが高い気象現象」に属さないと判定された場合(S2004のNO)、アラート制御部223は、アラート出力において、通常のアラート情報を出力するように制御することができる(S2006)。
【0103】
したがって、同じアラート出力処理でも、過去に実被害があった損害リスクが高いアラートを出力して、例えば、実際に振っているひょう、又はこれから降る可能性があるひょうに対し、屋内への避難等をより強く推奨したりすることができる。
【0104】
また、「損害リスクが高い気象現象」に属する場合と属しない場合とで、アラート情報の出力先が異なるように制御することができる。上述のように、第2実施形態において、複数のユーザが登録する情報配信システムやウェブサイトで情報を公開するウェブサーバに、アラート情報を出力することができる。この場合、アラート制御部223は、例えば、「損害リスクが高い気象現象」に属する場合は、緊急性ありと判断し、情報配信システムに登録されたユーザの端末に直接アラート情報を提供する。「損害リスクが高い気象現象」に属しない場合は、情報配信システムやウェブサーバにアラート情報を出力し、情報配信システムやウェブサーバを介して各ユーザの端末がアラート情報を受け取るように構成することができる。なお、「損害リスクが高い気象現象」に属する場合であっても出力先を変更せずに、「損害リスクが高い気象現象」に属するアラート情報が情報配信システムやウェブサーバに提供され、当該情報配信システムやウェブサーバから各ユーザの端末に提供される構成であってもよい。
【0105】
このように本実施形態の情報管理装置100は、過去の保険金支払い履歴に基づいて、真値(正解ラベル)を生成するために用いられる気象関連投稿情報を、損害リスクの高い気象現象グループと、それ以外のグループとに分類する。つまり、複数の気象関連投稿情報(真値(正解ラベル))が、過去の保険金支払い履歴に基づく危険度で分類される。例えば、同じ気象現象「ひょう」の真値(正解ラベル)であっても、危険度の違いを区別することができる。これにより、気象レーダーの観測データに基づく解析に、危険度別のフィードバックデータを提供することができ、解析精度をさらに向上させることができる。
【0106】
さらに、本実施形態の情報管理装置100は、過去の保険金支払い履歴に基づいて「損害リスクが高い気象現象」グループに分類された気象関連投稿情報を学習データとして蓄積し、当該学習データを用いて「損害リスクが高い気象現象」を判定する分類モデルを生成する。これにより、上記第2実施形態に適用した場合、気象管理装置200は、真値(正解ラベル)に付加された「損害リスクが高い気象現象」の分類判定結果に応じて異なるアラート出力を提供することができると共に、判定基準の変更値を危険度に応じて異なるように制御することができる。これにより、気象管理装置200は、リアルタイムに、防災への注意喚起を適切に行うことができる。
【0107】
例えば、危険度が高い大きなひょうが降ると、自動車のボンネットに傷がついたり、農作物に被害で出る可能性があるが、これを直前であっても事前に知ることができれば、自動車を屋根の下に移動したり、農作物にシートをかけたりといった行動により被害を低減できる可能性がある。また、ひょう以外の気象現象においても同様であり、突風の発生を事前に知ることができれば、鉄道の運行を休止したり、高速道路を通行止めしたり、高所作業を中止することにすることにより、被害を未然に防ぐことができる可能性がある。通常のアラート出力でも、被害を未然に防ぐ行動を促す有効な手立てではあるが、過去に実被害があった危険度の高いアラート出力として、被害を未然に防ぐ行動を強く推奨する手段として役立てることができる。
【0108】
なお、被害を未然に防ぐ行動喚起は、保険契約の観点において、以下のメリットもある。すなわち、被害を保険によってカバーする保険商品を提供する保険会社は、アラート情報を保険契約者に通知し、被害低減のための行動を取ってもらうことにより、保険契約者は被害を未然に防ぐことができ、保険会社は保険金の支払いを低減することができ、双方にとってメリットがある。
【0109】
以上、第1~第3実施形態について説明したが、情報管理装置100は、ひょう、あられ以外の気象現象、例えば、竜巻やつむじ風などの気象現象の真値(正解ラベル)を提供することができる。この場合、気象関連投稿情報は、ひょう、あられ、竜巻又はつむじ風に関連する投稿情報であり、情報収集部121は、キーワード又は/及び類似画像として竜巻、つむじ風が含まれる気象関連投稿情報をウェブサーバ300から取得することができる。そして、抽出部122は、気象レーダーで観測された竜巻又はつむじ風の観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する。データ管理部123は、抽出された気象関連投稿情報から把握される竜巻又はつむじ風の気象現象を、観測データに対応する気象現象として出力することができる。
【0110】
竜巻やつむじ風を観測する手法は、気象ドップラーレーダー観測がある。降水の位置や強さの他に、風に流される降水粒子から反射される電波のドップラー効果を用いて、気象レーダーに近づく風の成分と遠ざかる風の成分を測定することができる。これをドップラー速度と呼ぶ。この近づく速度が所定値以上でかつ遠ざかる速度が所定値以上の場合、風の渦(竜巻をもたらす発達した積乱雲の中の回転;メソサイクロン)が発生していると判定することができる。例えば、ドップラー速度が所定値以上である場合、竜巻が発生していると判定することができる。
【0111】
このように気象管理装置200は、気象ドップラーレーダーからドップラー速度の観測データを取得し、竜巻やつむじ風の発生可否の解析処理を行うことができる。そして、気象管理装置200は、情報管理装置100にドップラー速度の観測データを提供することができる。
【0112】
また、第1実施形態における気象予測装置400は、竜巻やつむじ風に関し、EHI(Energy-HelicityIndex)の気象予測モデル(予測アルゴリズム)を使用することができる。この場合、情報収集部121は、第4処理部121Dとして、候補投稿情報の位置情報及び時刻情報に対応する、竜巻又はつむじ風の気象予測モデルによって生成された予測情報に基づいて、候補投稿情報に対する気象事象評価値を生成することができる。そして、情報収集部121は、気象事象評価値を考慮して候補投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する(竜巻又はつむじ風の発生予測の評価値が所定値以上である候補投稿情報から気象関連投稿情報を抽出する)ことができる。竜巻やつむじ風に関する気象予測モデルは、EHI以外にも公知の手法を適用することができる。
【0113】
そして、上記第2実施形態の気象管理装置200は、竜巻やつむじ風を対象として、アラート情報の出力及び判定基準の変更の各処理を行うことができる。判定基準の変更処理では、情報管理装置100が提供する真値(正解ラベル)に基づいて、竜巻の発生を判定するためのドップラー速度の閾値を変更することができる。また、上記第3実施形態の分類制御部124の機能も、竜巻やつむじ風、突風を対象に構成することもできる。この場合、保険金支払い履歴情報は、損害の発生に関する気象現象として竜巻やつむじ風、突風が含まれる。
【0114】
なお、上記第1、第2及び第3実施形態の各装置100,200は、ひょう、あられ、竜巻やつむじ風のいずれか1つを対象にした装置構成であってもよく、ひょう、あられ、竜巻やつむじ風のすべて、または任意の組み合わせの装置構成であってもよい。
【0115】
(第4実施形態)
図13から
図17は、第4実施形態を説明するための図である。本実施形態は、上記第2実施形態の気象管理装置200の解析機能(気象検知機能)を、上記第1実施形態の情報管理装置100から提供される気象関連投稿情報(真値情報)を用いて向上させる仕組みを備える。上記2実施形態等と同様の構成については、各図において同符号を付して説明を省略する。
【0116】
図13は、本実施形態の気象管理装置200Aの機能ブロック及びネットワーク構成を示す図である。基本的に
図5と同様の構成であるが、解析部221は、気象検知モデル221aを備える気象検知部221Aとして構成されている。気象検知モデル221aは、判定基準に基づいて、観測データにおける上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理を行い、種別判別処理の結果に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する気象検知処理を行う。
【0117】
すなわち、気象検知モデル221a(解析部221)は、気象レーダーで観測された振幅の比による降水粒子の種別判別処理(種別推定処理)を行い、振幅の比の大きさに応じて、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といった降水粒子の各種別に分類する。このとき、降水粒子の種別それぞれには判定基準が設定され、気象検知モデル221aは、気象レーダーで観測された振幅の比が、どの種別の判定基準に属するかを判定し、上空の雲の中に存在する1つ又は複数の降水粒子の種別を判別する。そして、気象検知モデル221aは、上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理の結果に基づいて、地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する。
【0118】
気象検知部221Aから出力される情報は、気象検知モデル221aによって判別された地表に降り注ぐ降水粒子の種別(例えば、ひょう)と、観測データの観測エリア及び観測時刻に基づく場所及び時刻とを含むように構成することができる。場所は、地図情報に基づいて、観測エリアの緯度、経度から該当する地域(例えば、〇〇県〇〇市〇〇町)を出力するように構成することもできる。
【0119】
また、場所及び時刻と共に、検知された気象現象の信頼度を表す情報を出力するように構成することもできる。信頼度については後述する。
【0120】
判定基準制御部222は、気象検知モデル221aの学習部222Aとして構成されている。学習部222Aは、気象検知モデル221aを生成すると共に、気象関連投稿情報から把握される気象現象を学習データ(正解ラベル)として用い、観測データに基づく上空の降水粒子の種別に対して実際に地表に降り注いだ降水粒子の種別を学習し、判定基準を変更する学習処理(チューニング処理)を行う。
【0121】
また、本実施形態の気象管理装置200Aは、降水粒子の複数の種別に対して優先度を設定するための設定部221Bを備えるように構成することができる。上空の雲の中には、複数の異なる種別の降水粒子が存在し、例えば、観測データから、上空の雲の中は、ひょうの領域、あられの領域、雪の領域、雨の領域の分布状況を把握することができる。つまり、上空の雲の中は、3次元(緯度、経度、高度)で複数の異なる種別の降水粒子が存在する。
【0122】
一方で、実際に地表に降り注ぐ降水粒子の種別は、2次元(緯度、経度)で捉える必要がある。本実施形態では、設定部221Bが、降水粒子の各種別に対して優先度を設定できるように制御する。そして、気象検知モデル221aは、観測データの観測エリア内に存在する上空の各降水粒子の種別を判別し、地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する際、設定された優先度が高い順に、地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する。例えば、ひょう>あられ>雪>雨の順に優先度が高く設定されていたとする。気象検知モデル221aは、「ひょう」と「あられ」の2つの降水粒子が検知された場合、優先度が高い「ひょう」を、地表に降り注ぐ降水粒子の種別として出力することができる。
【0123】
なお、設定部221Bによる優先度を用いた出力制御の態様について説明したが、これに限るものではない。例えば、自然災害として被害が大きい「ひょう」のみを出力するように制御してもよい。つまり、気象検知モデル221aは、特定の気象現象が検知された場合に、地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力するように構成してもよい。また、優先度の設定変更は、任意のタイミングで行うことができる。例えば、気象検知処理中に、ひょうよりも雪の優先度を高くし、途中から降水粒子として「雪」が優先的に出力されるように切り替えてもよい。
【0124】
このように本実施形態の気象管理装置200Aは、通信装置210,制御装置220、記憶装置230を備え、制御装置220は、気象検知モデル221aを備える気象検知部221A(解析部221に相当)、設定部221B、学習部222A(判定基準制御部222に相当)、アラート制御部223、真値情報取得部224を含んで構成される。
【0125】
次に、気象検知モデル221a及び学習部222Aについて説明する。
図14は、気象管理装置200Aによって実行される処理フローを示す図である。
図14は、第2実施形態の
図7と対応しており、本実施形態に処理に合わせたフローチャートになっている。ステップS201a~S207aは、
図7のステップS201~207に相当する。
【0126】
気象検知モデル221aは、気象レーダーで観測された観測データが順次入力され、観測データを入力として現在の気象現象(地表に降り注ぐ降水粒子の種別)を判別して出力する機能部である(S201a)。気象検知部221Aは、出力された気象検知結果を記憶装置230に格納し(S202a)、アラート制御部223が、アラート出力処理を行う(203a)。なお、
図14の例では、設定部221Bによる優先度の設定処理が事前に行われている(S202A)。
【0127】
学習部222Aは、学習データを用いて学習処理を行い、気象検知モデル221aを生成する(S201A)。学習データは、気象関連投稿情報を正解レベルとする観測データであり、過去の気象レーダーによる観測データと、当該観測データに対応する気象関連投稿情報をセットにした情報である。
図13の例では、観測データ231と真値情報233に相当し、記憶装置230に記憶されている。
【0128】
学習部222Aは、蓄積された過去の学習データを用いて気象検知モデル221aを生成する第1学習処理(ステップS201A)と、第1学習処理によって生成された気象検知モデル221aをチューニング(調整)する第2学習処理と、を行う。第2学習処理は、観測データを複数の降水粒子の種別に区分けするための判定基準をチューニング(調整)し、気象検知モデル221aを更新したり、後述するようにチューニングによって判定基準が異なる個別の気象検知モデル221aを生成したりする処理である。
【0129】
第2学習処理は、気象関連投稿情報(真値情報)が入力されたタイミングでリアルタイムに実行するリアルタイム処理(ステップS206a)と、気象関連投稿情報が入力されても第2学習処理を保留し、所定のタイミングで第2学習処理を実行するバッチ処理(S210a)に分けられる。そして、チューニング方法は、リアルタイム処理だけを実行する第1チューニング方法、リアルタイム処理とバッチ処理とを併用する第2チューニング方法、及びバッチ処理だけを実行する第3チューニング方法がある。
【0130】
第2チューニング方法は、気象検知モデル221aによる気象検知処理中に、気象関連投稿情報(真値情報)が入力されたタイミングで第2学習処理を行ってリアルタイムに判定基準をチューニングする(S206a)。そして、気象検知処理を行っていない任意のタイミング、例えば、メンテナンス期間中に、前回のメンテナンス後から今回のメンテナンスまでに蓄積された複数の観測データ及び気象関連投稿情報を用いて判定基準をチューニングし直し(再学習処理)、気象検知モデル221aを更新する(S210a)。
図14は、この第2チューニング方法の処理フローを示している。
【0131】
第1チューニング方法は、バッチ処理による第2学習処理を行わないものの、第2チューニング方法と同様に、気象検知処理中に第2学習処理を行ってチューニングしているので、観測データから把握される気象現象と、気象関連投稿情報から把握される気象現象とが異なる場合、気象関連投稿情報を正解ラベルとして、判定基準をリアルタイムに変更することができる。このため、後続の観測データに対し、チューニングされた判定基準で気象検知処理を行うことができる。
【0132】
一方、第3チューニング方法の場合、気象検知モデル221aがリアルタイムに更新されない。このため、観測データから把握される気象現象と、気象関連投稿情報から把握される気象現象とが異なる場合、後続の観測データに対する気象検知部221Aの出力結果(地表に降り注ぐ降水粒子の種別)には、前段の観測データに対応する気象関連投稿情報が正解ラベルとして反映されない。そこで、第3チューニング方法を適用する場合、第2学習処理が行われるまでの間の一時的な措置として、気象検知モデル221aから出力された降水粒子の種別を、前段の観測データに対応する気象関連投稿情報から把握された気象現象(正解ラベル)に置き換える置換処理を行う。
【0133】
図15は、第3チューニング方法による処理フローを示す図である。気象検知部221Aは、観測データに基づいて気象検知モデル221aから出力された降水粒子の種別と、該当の気象関連投稿情報から把握される気象現象とが異なるか否かを判別する(S205a)。気象検知部221Aは、異なる気象現象であると判別された場合(S205aのYES)、当該観測データの特徴量と気象関連投稿情報から把握される気象現象とを一時的に保持するとともに(S2010)、置換処理フラグをONにする(S2011)。なお、特徴量とは、観測データから把握される気象状態、例えば、降水粒子毎の分布範囲や降水粒子が存在する高度などの上空の雲の中の気象状態を表す情報である。なお、観測データから抽出される特徴量は、公知の手法で算出することができ、例えば、気象状態を示すパラメータのベクトルで表すことができる。
【0134】
そして、後続の観測データに対して気象検知処理が行われ、種別が判別された場合、ステップS2012において、置換処理フラグがONであるか否かを確認する。置換処理フラグがONである場合、ステップS2013に進み、後続の観測データの特徴量と、保持された前段の観測データの特徴量との間の類似性を判定する。類似性の判定は、例えば、保持された前段の観測データの特徴量(気象状態ベクトル)から後続の観測データの特徴量が一定の距離にある気象状態かを判別する。そして、後続の観測データの特徴量(気象状態ベクトル)が前段の観測データの特徴量から一定の距離にあれば、類似すると判定することができる。このベクトルの距離は、ユークリッド距離、マンハッタン距離、マハラノビス距離などの公知の手法を適用することができる。
【0135】
そして、ステップS2014において、後続の観測データが、前段の観測データとの間で類似性があると判定された場合、前段の気象関連投稿情報に基づく正解ラベルと、後続の観測データに対する気象検知処理の結果とを比較する。気象検知部221Aは、後続の観測データに対する気象検知処理の結果が、前段の気象関連投稿情報に基づく正解ラベルと異なる場合、前段の気象関連投稿情報に基づく正解ラベルを正として降水粒子の種別を出力する。一方、後続の観測データが、前段の観測データとの間で類似性がないと判定された場合、後続の観測データに対する気象検知処理の結果を出力する。
【0136】
このように構成することで、判定基準(気象検知モデル221a)がリアルタイムに変更されなくても、前段の気象関連投稿情報に基づく正解ラベルをリアルタイムに反映した気象検知処理結果を出力することができる。
【0137】
次に、上記第2実施形態で説明したように、異なる判定基準をそれぞれ保持する態様に合わせ、本実施形態でも、チューニング後の気象検知モデル221aは、チューニング前の気象検知モデル221aと個別の気象検知モデルとして生成することができる。
図16は、第2学習処理のリアルタイム処理において、判定基準が異なる複数の気象検知モデルが生成され、入力される観測データに対し、該当する気象検知モデルを選択して気象検知処理を行う処理フローを示す図である。
【0138】
図16に示すように、学習部222Aは、チューニング処理において、観測データから把握される気象現象と、気象関連投稿情報から把握される気象現象とが異なる場合(S205aのYES)、現在使用している気象検知モデル221aをベースに、気象関連投稿情報を正解ラベルとする学習処理を行い、判定基準が変更された気象検知モデル221a(第1気象検知モデルに相当)を個別に生成する(S2061a)。そして、学習部222Aは、個別に生成された気象検知モデル221aに、観測データの観測エリア及び観測時刻に基づいて有効エリア及び有効時間を設定する(S2071a)。
【0139】
そして、気象検知部221Aは、後続の観測データが入力されたとき、有効エリア及び有効時間が異なる複数の気象検知モデル221aから、後続の観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象検知モデル221aを選択し(S2001a)、選択された気象検知モデル221aを用いて当該後続の観測データに対する気象検知処理を行うように制御する(S201a)。
【0140】
なお、ステップS2001aにおいて、後続の観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象検知モデル221aがなかった場合は、気象検知モデル221Aは、ステップ201Aで生成された、又はステップS210aで再学習された気象検知モデル221a(基準モデル)を選択し、気象検知処理を行うように構成することができる。
【0141】
このように構成することで、複数の各気象検知モデルを切り替えて使用することができる。つまり、ステップ201Aで生成された、又はステップS210aで再学習された気象検知モデル221aは、長期的に使用する基準モデルとして構成することができる。第2学習処理でのリアルタイム処理で個別に生成された各気象検知モデル221aは、判定基準、有効エリア及び有効期限の少なくとも1つが異なる短期的に使用可能なモデルとして適用することができる。そして、気象検知部221Aは、観測データに応じて長期的に使用する基準モデルから短期的に使用するモデルに切り替えたり、短期的に使用する複数のモデル間で切り替えたりして、気象検知処理の処理精度を向上させることができる。なお、適用されている気象検知モデル221aの有効時間(有効期限)が過ぎると、気象検知部221Aは、基準モデルに切り替えて気象検知処理を行うように制御することができる。
【0142】
ここで、気象検知部221Aから出力される信頼度について説明する。気象検知モデル221aは、学習データとして用いられる気象関連投稿情報を用いている。そこで、第1実施形態の気象関連投稿情報に関する各評価値に基づいて、気象検知モデル221aの信頼度を算出することができる。そして、気象検知モデル221aの信頼度を、気象検知処理の結果と共に出力するように構成することができる。気象検知部221Aは、例えば、気象現象「ひょう」、エリア「〇〇県〇〇市」、信頼度「80%」を含む情報を出力する
ことができる。
【0143】
具体的には、第1実施形態で述べたように、気象関連投稿情報は、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値によって評価することができる。そこで、情報管理装置100は、真値情報と当該真値情報の基になった気象関連投稿情報の各評価値とを、気象管理装置200Aに提供する。そして、学習データとして用いられた気象関連投稿情報の各評価値の合計、又はいずれかの評価値を用いて、気象検知モデル221aの信頼度を算出することができる。複数の異なる気象関連投稿情報を用いて学習処理を行う場合は、各気象関連投稿情報の評価値の平均値や中央値など算出して気象検知モデル221aの信頼度として用いたりすることができる。信頼度の算出方法は、任意である。
【0144】
一方で、信頼度の高い気象検知モデル221aを生成することもできる。つまり、学習データとして使用する気象関連投稿情報を選別する指標として、気象関連投稿情報の評価値を用いることができる。例えば、一定時間蓄積された気象関連投稿情報を、信頼度順に並び替えて信頼度の高いものから順に学習を行う。そして、所望の結果が得られた時点で学習処理を打ち切る。例えば、サンプルテストデータとして、正解ラベルと異なる種別を出力した別の観測データを入力として気象検知処理を行い、正解ラベルと同じ気象現象の種別を出力したかを検証し、検証結果が所定値以上となったときに、学習を終了するようにしてもよい。また、一定値以上の評価値を有する学習データを用いて学習処理を行うように構成してもよい。このように構成することで、気象関連投稿情報として信頼性の低い学習データを用いた学習処理を抑制することができ、気象検知モデル221aの過学習を避けることができる。
【0145】
気象検知モデル221aの学習手法、すなわち、学習部222Aによる判定基準のチューニング方法は、下記の手段のいずれか、もしくは下記の手段を2つ以上組み合わせて行うことができる。観測データの種別判別処理を通じて気象検知モデル221aから得られた降水粒子の種別が「A」、気象関連投稿情報から把握された降水粒子の種別(気象現象)を「C」として説明する。
【0146】
(A)これまでに学習した過去の学習データの中から、入力される観測データから抽出した気象現象(気象状態)から一定の類似性の範囲内にある観測データを抽出する。そして、抽出された観測データに紐付く正解ラベルを「A」から「C」に置き換える。つまり、学習データとして、一定の類似性がある観測データの正解ラベルを気象関連投稿情報から把握された降水粒子の種別「C」に置き換える。そして、正解ラベルが「C」に置き換えらえた観測データ群を学習データとして、再学習処理を行い、気象検知モデル221aを更新する。
【0147】
なお、類似性の判定は、上述の観測データ間の特徴量を比較する類似性判定処理を適用することができる。このとき、一定の類似性の範囲内か否かを判定する閾値は、動的に変更することができる。例えば、更新された気象検知モデル221aの出力結果が、未だに降水粒子の種別「A」であった場合には、一定の類似性の範囲内か否かを判定する閾値を更新(大きく)し、学習データとして適用される分布範囲を増やし、再度学習処理を行って気象検知モデルを更新してもよい。
【0148】
(B)確率密度関数等を用いた気象検知処理の場合、入力される観測データを基にそれぞれの降水粒子の種別(分類)の確率を算出し、最も確率が高い種別を出力するように構成することができる。この場合、学習部222Aは、入力される観測データが、種別「C」に分類される確率を増加させたり、種別「A」に分類される確率を減少させたりすることができる。確率の増加量および減少量は、事前に設定した固定値を用いたり、増加量および減少量の値を動的に変動させてもよい。
【0149】
なお、確率を増加および減少させる際に、一律にオフセットを加減したり、確率密度関数自体を変更してもよい。確率密度関数の変更する場合、確率密度関数の平均と分散をそれぞれ変更してもよく、この変更量も事前に設定した値や動的に変動させた値でもよい。例えば、確率を増加させるには、入力された観測データから抽出した確率密度関数の入力値に近くなるように種別「C」の確率密度関数の平均値を変更する。逆に、確率を減少させるには、入力された観測データから抽出した確率密度関数の入力値に離れるように種別「A」の確率密度関数の平均値を変更する。この更新した確率に基づく結果を最終的な出力とすることができる。なお、更新した確率に基づく結果が、未だ種別「A」であった場合には、所望の結果が得られるまで同様の操作を繰り返してもよい。
【0150】
(C)上記(B)のように確率密度関数等を用い、さらに入力された観測データから抽出した気象現象の特徴量(高次元ベクトルの特徴量)毎に確率密度関数等を具備することができる。この場合、それぞれの特徴量の確率を掛け合わせて、最終的な各種別の確率を算出することができる。このとき、各特徴量の確率を一様に増加させてもよいし、確率に基づく結果に応じて、動的に増加させる確率の量を割り振るようにしてもよい。例えば、特徴量1,特徴量2,特徴量3ごとに確率密度関数を具備するように構成し、種別「B」に対し、各特徴量の確率を算出する。特徴量1から算出した確率が0.99,特徴量2から算出した確率が0.91,特徴量3から算出した確率が0.95だった場合、特徴量2の確率が低いので、特徴量2の確率を大きく増加させるようにする。確率を増減する手法は、上記(B)と同様の手法を適用することができる。
【0151】
(D)上記(B)の確率密度関数等を用いる場合において、評価値(信頼性)が高い複数の気象関連投稿情報が得られた場合には、これら複数の正解ラベルを用いて確率密度関数を更新するように構成してもよい。例えば、確率密度関数を事前分布として、信頼性のある結果から、事後分布を求めるベイズ更新手法を活用することができる。このとき、この事後分布を確率密度関数として、種別「C」の確率密度関数を更新し、この更新した確率に基づく結果を最終的な出力とすることができる。更新した確率に基づく結果が、未だに種別「A」を出力する場合は、所望の結果が得られるまで同様の操作を繰り返すことができる。
【0152】
上記説明では、気象管理装置200が、個別に構成された情報管理装置100と連携した態様を一例に説明したが、これに限るものではない。例えば、
図17に示すように、情報管理装置100の各機能部、各情報を備える気象管理装置又は気象管理システムとして構成することもできる。この場合、以下の構成を有する気象管理システムとして構成することができる。
【0153】
(1)気象管理システム(気象管理装置200A)は、投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された複数の投稿情報から気象関連投稿情報を取得し、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する情報管理部と、
観測データに基づいて上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理を行い、種別判別処理の結果に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する気象検知モデルを備えた気象検知部と、
気象関連投稿情報から把握される気象現象を学習データとして用い、前記観測データに基づく上空の降水粒子の種別に対して実際に地表に降り注いだ降水粒子の種別を学習し、気象検知モデルを生成する学習部と、を有する。
【0154】
そして、上記(1)の気象管理システムの種別判別処理は、降水粒子の種別毎に設定された判定基準に基づいて、観測データに基づく上空の気象現象を該当する種別に分類する処理として構成することができる。学習部は、観測データに対応する気象関連投稿情報から把握される気象現象を正解ラベルとして学習処理を行い、判定基準をチューニングする。さらに、上記(1)の気象管理システムは、本実施形態の気象検知モデル221aを含む気象検知部221A及び学習部222Aの各機能を備えることができる。
【0155】
また、
図15で説明した置換処理(ステップS201a~ステップS208)は、判定基準を変更せずに当該置換処理によって真値情報を反映する気象管理装置として構成することができ、以下の構成とすることができる。
【0156】
(3)気象管理装置は、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
請求項1に記載の情報管理装置から出力された、前記観測データに対応する気象関連投稿情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記解析部は、降水粒子の種別毎に設定された前記判定基準に基づいて、前記観測データにおける上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理を行い、前記種別判別処理の結果に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力し、
前記解析部は、前記観測データに対応する前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、出力された地表に降り注ぐ降水粒子の種別とを比較し、異なる気象現象であると判定された場合、異なる気象現象であると判定された前記観測データと前記気象関連投稿情報とを保持し、
前記解析部は、後続の前記観測データと保持された前記観測データの類似性を判定し、後続の前記観測データが保持された前記観測データとの間で類似性があると判定された場合、保持された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、後続の前記観測データに対して出力された地表に降り注ぐ降水粒子の種別とを比較し、後続の前記観測データから得られた気象現象が、保持された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と異なる場合、後続の前記観測データに対する気象検知結果として、保持された前記気象関連投稿情報から把握された気象現象を出力する。
【0157】
さらに、
図17の例示と同様に、情報管理装置100の各機能部、各情報を備える気象管理装置又は気象管理システムとして、以下の構成を備えるように構成することができる。
【0158】
(4)気象管理システムは、投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された複数の投稿情報から気象関連投稿情報を取得し、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する情報管理部と、
観測データに基づいて上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理を行い、種別判別処理の結果に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力する気象検知処理を行う気象検知部と、を備える。
そして、前記気象検知部は、前記観測データに対応する前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、前記気象検知処理によって出力された地表に降り注ぐ降水粒子の種別とを比較し、異なる気象現象であると判定された場合、異なる気象現象であると判定された前記観測データと前記気象関連投稿情報とを保持し、
さらに、前記気象検知部は、後続の前記観測データと保持された前記観測データの類似性を判定し、後続の前記観測データが保持された前記観測データとの間で類似性があると判定された場合、保持された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、後続の前記観測データを入力として前記気象検知処理によって出力された地表に降り注ぐ降水粒子の種別とを比較し、後続の前記観測データから得られた気象現象が、保持された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と異なる場合、後続の前記観測データに対する気象検知結果として、保持された前記気象関連投稿情報から把握された気象現象を出力する。
【0159】
このように上記(3),(4)の気象管理装置又は気象管理システムは、気象関連投稿情報に基づく真値情報を気象検知処理自体に反映する学習処理等を前提としないシステム構成の側面を有することができる。例えば、既存の気象検知処理を行うシステムが、気象関連投稿情報を管理する情報管理装置100と連携しつつ、気象検知処理で出力された降水粒子の種別を前段の観測データに対応する気象関連投稿情報から把握された気象現象(正解ラベル)に置き換える置換処理機能を備えるようにする。このように構成することで、気象検知処理自体を変更しなくても、気象検知の精度向上を図ることができる。
【0160】
なお、アラート制御部223のアラート出力処理において、気象現象として信頼性の高い気象関連投稿情報が多く得られるように構成してもよい。第2実施形態で述べたように、アラート制御部223は、「A市は、あられが降っている可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報を生成し、出力することができる。このとき、アラート情報に、「A市近傍に居る方の気象現象は、どのようなものでしょうか。ぜひ、投稿してください。」といったメッセージを挿入する。このように構成することで、情報管理装置100は、気象関連投稿情報を多く募る(収集する)ことができ、気象管理装置200Aは、多くの学習データを得ることができる。また、気象管理装置200に登録されたユーザ(ユーザ端末)に、アラート情報を提供する場合は、ユーザ端末にプッシュ通知し、多くの気象関連投稿情報を収集できるようにすることもできる。このように、アラート出力処理に連動させて投稿を促す仕組みを導入することで、信頼性(確実性)の高い気象現象に対する投稿を得ることができ、気象検知モデル221aの精度を向上させることができる。
【0161】
また、本実施形態も上記第1実施形態から第3実施形態と同様に、竜巻やつむじ風などの気象現象も検知可能な気象検知処理を行うことができる。
【0162】
以上、上述の情報管理装置100,気象管理装置200を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0163】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magneto Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0164】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0165】
100 情報管理装置
110 通信装置
120 制御装置
121 情報収集部
121A 第1処理部
121B 第2処理部
121C 第3処理部
121D 第4処理部
122 抽出部
123 データ管理部
124 分類制御部
130 記憶装置
131 投稿情報
132 投稿者評価情報
133 真値情報
134 分類関連情報
200,200A 気象管理装置
210 通信装置
220 制御装置
221 解析部
221A 気象検知部
221a 気象検知モデル
221B 設定部
222 判定基準制御部
222B 学習部
223 アラート制御部
224 真値情報取得部
230 記憶装置
231 観測データ
232 判定基準情報
233 真値情報
234 設定情報
300 ウェブサーバ(ウェブサーバ)
400 気象予測装置
T 端末(投稿者端末)