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特許7585545地山固結剤、及びそれを用いた地山の固結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】地山固結剤、及びそれを用いた地山の固結方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/30 20060101AFI20241111BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C09K17/30 P
E02D3/12 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024109762
(22)【出願日】2024-07-08
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2024046147
(32)【優先日】2024-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】山田 亨
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-102615(JP,A)
【文献】特開2015-117304(JP,A)
【文献】特開2019-1838(JP,A)
【文献】特開2021-66774(JP,A)
【文献】特開2024-65665(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0132310(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分と、
イソシアネートを含む(B)成分と、を備え、
前記ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、
前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)であり、
前記エーテル系ポリオール(a1)に対する前記ポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)が0.2~3.0であり、
前記ポリオール(a)中の前記エーテル系ポリオール(a1)と前記ポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上であり、
前記(A)成分中の前記アミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である、
地山固結剤。
【請求項2】
前記触媒(c)が第三級アミン触媒を含む、請求項1に記載の地山固結剤。
【請求項3】
前記難燃剤(d)がリン酸エステル系難燃剤を含む、請求項1に記載の地山固結剤。
【請求項4】
岩盤又は地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、
前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、及び、
前記ボルトの開口部より、請求項1~3のいずれか1項に記載の地山固結剤を、岩盤又は地盤に注入し、固結させる工程
を含む、地山の固結方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山固結剤、及びそれを用いた地山の固結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不安定岩盤や地盤の安定強化には無機系ないし有機系グラウトの注入が行われている。このような地山固結剤として、ポリオールとイソシアネートを主成分とするウレタン系地山固結剤は、固結速度が速く、短時間に地山を固結して強度発現できる点で有用である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリオール及びアミン化合物を含んでなる(A)成分と、イソシアネートを含んでなる(B)成分とからなり、実質的に水を含まない薬液組成物が開示されている。該薬液組成物において、ポリオールとしてはポリエーテルポリオールとヒマシ油系ポリエステルポリオールが用いられ、アミン化合物としては一級又は二級アミノ基を有するアミン化合物が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5851481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウレタン系地山固結剤においては、流水下で岩盤や地盤に注入したときに、環境中への流出成分に非イオン界面活性剤が検出されることが問題になっている。そのため、非イオン界面活性剤の検出量を低減しながら、地山固結剤としての性能が良いものが求められる。
【0006】
本発明の実施形態は、以上に点に鑑み、非イオン界面活性剤の検出量が少なく、かつ地山固結剤としての性能に優れる地山固結剤及びそれを用いた地山の固結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分と、
イソシアネートを含む(B)成分と、を備え、
前記ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、
前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)であり、
前記エーテル系ポリオール(a1)に対する前記ポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)が0.2~3.0であり、
前記ポリオール(a)中の前記エーテル系ポリオール(a1)と前記ポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上であり、
前記(A)成分中の前記アミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である、地山固結剤。
【0008】
[2] 前記触媒(c)が第三級アミン触媒を含む、[1]に記載の地山固結剤。
[3] 前記難燃剤(d)がリン酸エステル系難燃剤を含む、[1]又は[2]に記載の地山固結剤。
[4] 岩盤又は地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、及び、前記ボルトの開口部より、[1]~[3]のいずれか1項に記載の地山固結剤を、岩盤又は地盤に注入し、固結させる工程、を含む、地山の固結方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係る地山固結剤であると、非イオン界面活性剤の検出量が少なく、かつ地山固結剤としての性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る地山固結剤は、ポリオール(a)、アミン化合物(b)、触媒(c)、及び難燃剤(d)を含む(A)成分と、イソシアネートを含む(B)成分と、を備える。該地山固結剤は、通常は、(A)成分をA液とし、(B)成分をB液とする、二液硬化型の地山固結剤である。(A)成分と(B)成分の他に、任意成分としての第三の成分を備えてもよい。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は活性水素化合物を含む成分である。活性水素化合物とは、分子内に1又は複数の活性水素基を有する化合物(但し、水は除く。)である。活性水素基とは、イソシアネート基と反応する水素原子を含む基であり、例えば、水酸基、第一級アミノ基(-NH)、第二級アミノ基(-NHR)が挙げられる。
【0012】
(ポリオール(a))
(A)成分は、活性水素化合物としてポリオール(a)を含む。ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、該ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上がエーテル系ポリオール(a1)である。
【0013】
ここで、エーテル系ポリオールとは、分子内にエーテル結合(-O-)を含むポリオールをいい、複数のエーテル結合を有するポリエーテルポリオールには限定されず、1つのエーテル結合を有するポリオールも含まれる。但し、ポリエステルポリオールは、仮に分子内にエーテル結合を有するものであっても、エーテル系ポリオールには含まれないものとする。ここで、ポリエステルポリオールとは、分子内に複数のエステル結合(-COO-)を有するポリオールをいう。
【0014】
本実施形態によれば、上記ポリエステルポリオール(a2)と併用するエーテル系ポリオールを実質的に特定のエーテル系ポリオール(a1)のみで構成することにより、止水性や地山改良性といった地山固結剤の性能を発揮しながら、流水下での環境中への流出成分における非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。
【0015】
詳細には、エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が1.5以上であることにより、硬化後の強度を高めて地山固結剤の性能を高めることができる。エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が2.5以下であることにより、非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。また、エーテル系ポリオール(a1)の水酸基価が400mgKOH以上であることにより、硬化後の強度を高めて地山固結剤の性能を高めることができ、また非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。
【0016】
エーテル系ポリオール(a1)の官能基数は、1.7~2.3であることが好ましく、より好ましくは1.8~2.2である。より好ましくは1.9~2.1であり、更に好ましくは2.0である。ここで、官能基数とは、ポリオールの1分子あたりの水酸基の数(モル比に応じた加重平均値)である。
【0017】
エーテル系ポリオール(a1)の水酸基価は、420~1100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは450~1000mgKOH/gであり、より好ましくは500~900mgKOH/gである。本明細書において、水酸基価は、JIS K1557-1:2007のA法に準拠して測定される。
【0018】
エーテル系ポリオール(a1)としては、脂肪族エーテル系ポリオールでもよく、芳香族エーテル系ポリオールでもよい。脂肪族エーテル系ポリオールは、分子内に芳香環を持たないエーテル系ポリオールをいう。芳香族エーテル系ポリオールは、分子内に芳香環を持つエーテル系ポリオールをいう。
【0019】
脂肪族エーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミンなどの脂肪族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる脂肪族ポリエーテルポリオールが挙げられる。脂肪族エーテル系ポリオールとしては、また、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0020】
芳香族エーテル系ポリオールとしては、例えば、アニリン、ベンゼンジオール、ビスフェノール化合物などの芳香族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる芳香族ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0021】
ポリオール(a)は、上記エーテル系ポリオール(a1)以外のエーテル系ポリオールを含んでもよいが、含む場合であってもその量は少量であることが好ましい。詳細には、本実施形態において、ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上がエーテル系ポリオール(a1)である。すなわち、ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオール100質量%におけるエーテル系ポリオール(a1)の含有量は90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。すなわち、エーテル系ポリオールは、エーテル系ポリオール(a1)のみからなるものでもよい。これにより、流水下での非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。
【0022】
ポリオール(a)は、上記エーテル系ポリオール(a1)とともに、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)を含む。このように水酸基価が比較的小さいポリエステルポリオールを併用することにより、非イオン界面活性剤の検出量を低減しつつ、地山固結剤の性能を高めることができる。
【0023】
詳細には、ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価が100mgKOH/g以上であることにより、硬化後の強度を高めて止水性及び地山改良性を向上することができる。ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価が400mgKOH/g以下であることにより、硬化後に脆くなるのを抑制して地山改良性を向上することができる。ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価は、130~350mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは150~300mgKOH/gであり、さらに好ましくは150~250mgKOH/gである。一実施形態において、ポリエステルポリオールの水酸基価は100~250mgKOH/gでもよく、100~161mgKOH/gでもよい。
【0024】
ポリエステルポリオール(a2)の官能基数は、特に限定されず、例えば1.5~4.0であることが好ましく、より好ましくは1.8~3.0であり、更に好ましくは1.9~3.0である。
【0025】
ポリエステルポリオール(a2)としては、例えば、二価アルコールなどの多価アルコールと二塩基酸とを反応させて得られるものが挙げられ、脂肪族ポリエステルポリオールでもよく、芳香族ポリエステルポリオールでもよい。脂肪族ポリエステルポリオールは、分子内に芳香環を持たないポリエステルポリオールをいう。芳香族ポリエステルポリオールは、分子内に芳香環を持つポリエステルポリオールをいう。
【0026】
脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族二塩基酸とを反応させて得られる脂肪族ポリオール、並びに、ヒマシ油系ポリエステルポリオール(即ち、ヒマシ油系脂肪族ポリエステルポリオール)が挙げられる。該脂肪族ポリオールを構成する脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。脂肪族二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0027】
ヒマシ油系脂肪族ポリエステルポリオールは、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸、ヒマシ油に水素付加した水添ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸に水素付加した水添ヒマシ油脂肪酸を用いて製造されたポリオールである。ヒマシ油系脂肪族ポリエステルポリオールの具体例としては、ヒマシ油、ヒマシ油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ヒマシ油、水添ヒマシ油とその他の天然油脂とのエステル交換物、水添ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、水添ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物などが挙げられる。
【0028】
芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジオールと芳香族二塩基酸とを反応させて得られる芳香族ポリオール、並びに、ヒマシ油系芳香族ポリエステルポリオールが挙げられる。該芳香族ポリオールを構成するジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。ヒマシ油系芳香族ポリエステルポリオールは、芳香族骨格を含有したヒマシ油変性ポリオールである。
【0029】
ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価は、脂肪族ポリエステルポリオールの場合、400mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは100~350mgKOH/g以下である。すなわち、ポリエステルポリオール(a2)は、水酸基価が100~400mgKOH/g(より好ましくは100~350mgKOH/g)の脂肪族ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価は、芳香族ポリエステルポリオールの場合、250mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは100~230mgKOH/g以下である。すなわち、ポリエステルポリオール(a2)は、水酸基価が100~250mgKOH/g(より好ましくは100~230mgKOH/g)の芳香族ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールに比べて、分子構造が剛直であることから、水酸基価がより小さいものを用いることにより、硬化後に脆くなるのを抑制しやすく、地山改良性の向上効果を高めることができる。
【0030】
ポリオール(a)において、エーテル系ポリオール(a1)に対するポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)は0.2~3.0である。該質量比(a2)/(a1)が0.2以上であることにより、硬化後に脆くなるのを抑制して地山改良性を向上することができる。該質量比(a2)/(a1)が3.0以下であることにより、硬化後の強度を高めて地山改良性を向上することができる。該質量比(a2)/(a1)は0.3~2.5であることが好ましく、より好ましくは0.4~2.0であり、更に好ましくは0.5~1.6である。
【0031】
ポリオール(a)には、エーテル系ポリオール(a1)及びポリエステルポリオール(a2)以外のポリオールが含まれてもよく、含まれなくてもよい。詳細には、ポリオール(a)中のエーテル系ポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)の合計量は50質量%以上であることが好ましい。すなわち、エーテル系ポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)との含有量の合計は、ポリオール(a)100質量%に対し、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0032】
エーテル系ポリオール(a1)及びポリエステルポリオール(a2)以外のポリオールとしては、特に限定されず、(a1)以外のエーテル系ポリオール、(a2)以外のポリエステルポリオール、エーテル結合もエステル結合も含まないポリオールなどが挙げられる。エーテル結合もエステル結合も含まないポリオールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどのアルカンジオール、グリセリンなどのアルカントリオールが挙げられる。これらはいずれか1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0033】
ポリオール(a)中のエーテル系ポリオール(a1)の含有量は、特に限定されず、例えば、20~80質量%でもよく、25~75質量%でもよく、30~70質量%でもよい。ポリオール(a)中のポリエステルポリオール(a2)の含有量は、特に限定されず、例えば、10~75質量%でもよく、20~65質量%でもよく、25~60質量%でもよい。ポリオール(a)中のアルカンジオール及び/又はアルカントリオールの含有量は、特に限定されず、例えば、0~50質量%でもよく、0~30質量%でもよく、0~10質量%でもよく、一実施形態において5質量%以上含んでもよい。
【0034】
(A)成分中のエーテル系ポリオール(a1)の含有量(すなわち、(A)成分100質量%に対する(a1)の含有量)は特に限定されず、10~60質量%でもよく、15~55質量%でもよく、20~50質量%でもよい。(A)成分中のポリエステルポリオール(a2)の含有量は特に限定されず、5~50質量%でもよく、10~45質量%でもよく、15~40質量%でもよい。
【0035】
(アミン化合物(b))
(A)成分は、活性水素化合物として第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)を含む。すなわち、アミン化合物(b)は第一級アミノ基を有してもよく、第二級アミノ基を有してもよく、第一級アミノ基と第二級アミノ基の双方を有してもよい。アミン化合物(b)は改質剤として作用するものであり、アミン化合物(b)を含むことにより、反応性を高めて止水性を向上することができ、また非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。なお、アミン化合物(b)は、仮に分子内に複数の水酸基を有するものであっても、ポリオール(a)には含まれないものとする。
【0036】
アミン化合物(b)としては、例えば、脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、芳香族モノアミン、ヘテロ環式モノアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族トリアミン、脂環式トリアミン、芳香族トリアミン、ヒドラジン等が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン(以下、「ジアミン(b1)」という。)を用いることが好ましく、より好ましくは脂肪族第一級ジアミン及び/又は芳香族第一級ジアミン(以下、「第一級ジアミン(b2)」という。)を用いることである。
【0037】
脂肪族モノアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、N-メチルドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン等のアルキルモノアミン; モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールモノアミンが挙げられる。
【0038】
脂環式モノアミンとしては、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0039】
芳香族モノアミンとしては、例えば、N-メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルアミン、p-メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0040】
ヘテロ環式モノアミンとしては、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0041】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。ここで、ポリエーテルジアミンとは、水、エチレングリコール又はプロピレングリコール等にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレングリコール類の水酸基を第一級アミノ基に変換して得られる化合物であり、ポリオキシアルキレンジアミンとも称される。
【0042】
脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,5-又は2,6-ジアミノメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン、ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0043】
芳香族ジアミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン(例えば、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン)等が挙げられる。
【0044】
脂肪族トリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ポリエーテルトリアミン等が挙げられる。ここで、ポリエーテルトリアミンとは、グリセリン又はトリメチロールプロパン等にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレントリオール類の水酸基を第一級アミノ基に変換して得られる化合物であり、ポリオキシアルキレントリアミンとも称される。
【0045】
脂環式トリアミンとしては、例えば、1,3,5-トリス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族トリアミンとしては、例えば、1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0046】
これらのアミン化合物(b)は、いずれか1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0047】
(A)成分中のアミン化合物(b)(好ましくはジアミン(b1)、より好ましくは第一級ジアミン(b2))の含有量(すなわち、(A)成分100質量%に対する(b)の含有量)は1~10質量%である。アミン化合物(b)の含有量が1質量%以上であることにより、止水性を向上し、非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。アミン化合物(b)の含有量が10質量%以下であることにより、施工時にミキサーボルト等にかかる負荷を低減することができる。(A)成分中のアミン化合物(b)(好ましくはジアミン(b1)、より好ましくは第一級ジアミン(b2))の含有量は、好ましくは2.0~9.0質量%であり、より好ましくは3.0~8.5質量%であり、更に好ましくは4.0~8.0質量%である。
【0048】
(触媒(c))
(A)成分にはポリオール(a)とイソシアネートとの反応を促進するための触媒(c)が配合される。触媒(c)としては、例えば、第三級アミン触媒、脂肪酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。これらの中でも第三級アミン触媒を用いることが好ましい。
【0049】
第三級アミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス-(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’’-トリス(ジアルキルアミノアルキル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルアミノプロピルイミダゾール、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン、N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0050】
脂肪酸アルカリ金属塩としては、例えば、三量化触媒として酢酸又はオクチル酸のアルカリ金属塩が挙げられる。ここで、脂肪酸アルカリ金属塩を構成する脂肪酸の炭素数としては1~10でもよい。脂肪酸アルカリ金属塩の具体例としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムが挙げられ、いずか一方又は両者を併用してもよい。
【0051】
第四級アンモニウム塩としては、例えば、三量化触媒として市販されているものを用いることができ、カオライザーNo.410、カオライザーNo.420(花王株式会社製)、TOYOCAT-TR20、TOYOCAT-TRX(東ソー株式会社製)などが挙げられる。
【0052】
触媒(c)(好ましくは第三級アミン触媒)の量は、特に限定されないが、(A)成分100質量%に対して、0.05~5質量%が好ましく、より好ましくは0.1~3質量%である。
【0053】
(難燃剤(d))
(A)成分には難燃剤(d)が配合される。これにより硬化物に難燃性を付与することができる。難燃剤(d)としては、特に限定されず、添加型又は反応型のいずれのものを用いてもよい。好ましくは、添加型の難燃剤を用いることである。
【0054】
添加型の難燃剤の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤、塩素化パラフィン、ペンタブロモエチルベンゼン、デカブロモジフェニルエーテルなどの含ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
反応型の難燃剤の具体例としては、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA、O,O-ジエチルN,N-ジヒドロキシエチルアミノメチルホスホテート、各種含リンポリオール等の水酸基又はアミノ基等を有する含ハロゲン含リン化合物等を挙げることができる。
【0056】
これらのなかでも難燃剤(d)としては、リン酸エステル系難燃剤を用いることが好ましい。
【0057】
難燃剤(d)(好ましくはリン酸エステル系難燃剤)の量は、特に限定されず、例えば、(A)成分100質量%に対して、5~50質量%でもよく、10~45質量%でもよく、15~40質量%でもよい。
【0058】
(その他の成分)
(A)成分には、上記した各成分の他に、必要に応じて、発泡剤、シリコーン系整泡剤、希釈剤、顔料、無機充填剤、架橋剤、カップリング剤等の公知の添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0059】
発泡剤としては、水が例示される。水は(B)成分のイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することから発泡剤として作用する。添加する場合、水の量は、特に限定されないが、(A)成分100質量%に対して、0.2~5.0質量%でもよく、0.3~3.0質量%でもよく、0.5~2.0質量%でもよい。一実施形態において、(A)成分は、水を実質的に含まないことが好ましい。水を実質的に含まないとは、(A)成分100質量%に対し、水の量が1.0質量%以下であることをいい、好ましくは水の量が0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0060】
シリコーン系整泡剤としては、例えば、硬質発泡ウレタン樹脂に通常用いられるポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマーがあげられる。
【0061】
希釈剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸エステル、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペートなどのアジピン酸エステル、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテートなどのトリメリット酸エステルが挙げられる。
【0062】
[(B)成分]
(B)成分はイソシアネートを含む。
【0063】
(イソシアネート)
イソシアネートとしては、分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物(ポリイソシアネート)を用いることができ、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0064】
イソシアネートの具体例としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びその異性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリレンジイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチレンキシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートの単独又は混合物; これらポリイソシアネートのカルボジイミド変性体や、触媒を加えて2量体又は3量体としたもの: これらポリイソシアネートを、上記のポリオール(a)と反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの単独又は混合物等が挙げられる。これらイソシアネートは、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
これらの中でも、イソシアネートとしては、硬化性等の観点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、より好ましくは、ポリメリックMDIである。一実施形態において、イソシアネートは、その60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%が芳香族ポリイソシアネート(より好ましくはポリメリックMDI)であることが好ましい。
【0066】
(その他の成分)
(B)成分は、上記イソシアネートのみで構成されてもよい。(B)成分には、その他の成分として、必要に応じて、(A)成分の項で説明した従来公知の添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0067】
[(A)成分と(B)成分の混合]
(A)成分と(B)成分は、使用時混合することにより、硬化物を形成する。(A)成分と(B)成分の混合比は、特に限定しないが、(B)成分中のイソシアネート基(NCO)と(A)成分中の活性水素化合物の活性水素基との反応当量比、すなわち、NCO/活性水素基が、1/5~5/1の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは1/2~3/1であり、さらに好ましくは2/3~2/1であり、1/1~5/3でもよい。該反応当量比が上記範囲内であることにより、適度な強度の硬化物を適度な硬化時間で得ることができる。
【0068】
[地山の固結方法]
本実施形態に係る地山固結剤は、例えばトンネル掘削の際に破砕帯を有する岩盤や不安定軟弱地盤等を安定化・強化するために用いられ、(A)成分と(B)成分を混合し岩盤又は地盤に注入することで地山を固結することができる。
【0069】
この注入固結する方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用しうる。例えば、岩盤又は地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、及び、ボルトの開口部より上記地山固結剤を岩盤又は地盤に注入し、固結させる工程を含むことが好ましい。
【0070】
その一例を挙げれば、例えば(A)成分及び(B)成分の注入量、圧力及び配合比などをコントロールできるポンプを用い、(A)成分と(B)成分を別々のタンクに入れる。浸透しにくい砂質土のトンネル切羽や天盤部に、予め固定されたスタティックミキサー及び逆止弁などを内装した有孔のロックボルトや注入ロッドを挿入する。この中に上記タンク内の(A)成分と(B)成分を注入圧0.05~5MPaで注入し、スタティックミキサーを通して均一に混合された(A)成分と(B)成分を地山に浸透、硬化させる。これにより、地山を固結安定化することができる。
【0071】
上記の(A)成分と(B)成分で構成される地山固結剤は、硬化性に優れることから、大量の漏水や湧水を止水することができる。そのため、本実施形態の地山固結剤は、土質の安定強化及び止水のために用いてもよい。また、該地山固結剤は、流水下における非イオン界面活性剤の検出量が低減されるので、水質への悪影響を低減することができる。
【実施例
【0072】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明についてより詳細に説明する。本発明はこれによって制限されるものではない。
【0073】
<使用原料>
[(A)成分]
(ポリオール(a))
・(a1):エーテル系ポリオール及びその比較原料:
・トリプロピレングリコール:官能基数2.0、水酸基価584mgKOH/g
・ジプロピレングリコール:官能基数2.0、水酸基価836mgKOH/g
・PA-400:芳香族ポリエーテルポリオール、第一工業製薬(株)製「ポリハードナーPA-400」、官能基数2.0、水酸基価420mgKOH/g
・ジエチレングリコール:官能基数2.0、水酸基価1057mgKOH/g
・G-480:脂肪族ポリエーテルポリオール、第一工業製薬(株)製「DKポリオールG-480」、官能基数3.0、水酸基価480mgKOH/g(比較原料)
・420:脂肪族ポリエーテルポリオール、AGC(株)製「エクセノール420」、官能基数2.0、水酸基価280mgKOH/g(比較原料)
【0074】
・(a2):ポリエステルポリオール及びその比較原料:
・RFK-556:エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製「マキシモールRFK-556」、多価カルボン酸と多価アルコールで得られる芳香族ポリエステルポリオール(官能基数2.0、水酸基価208mgKOH/g)を95質量%と、未反応分としてのジエチレングリコールを5質量%含む。
・RDK-133:エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製「マキシモールRDK-133」、多価カルボン酸と多価アルコールで得られる芳香族ポリエステルポリオール(官能基数2.0、水酸基価130mgKOH/g)を80質量%と、未反応分としてのジエチレングリコールを20質量%含む。
・RDK-142:エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製「マキシモールRDK-142」、多価カルボン酸と多価アルコールで得られる芳香族ポリエステルポリオール(官能基数2.0、水酸基価118mgKOH/g)を70質量%と、未反応分としてのジエチレングリコールを30質量%含む。
・ヒマシ油:伊藤製油(株)製「ヒマシ油D」、官能基数2.7、水酸基価161mgKOH/g
・H-81:伊藤製油(株)製「URIC H-81」、ヒマシ油系脂肪族ポリエステルポリオール、官能基数3、水酸基価340mgKOH/g
・P-1010:脂肪族ポリエステルポリオール、(株)クラレ製「クラレポリオールP-1010」、官能基数2.0、水酸基価112mgKOH/g
・P-2010:脂肪族ポリエステルポリオール、(株)クラレ製「クラレポリオールP-2010」、官能基数2.0、水酸基価56mgKOH/g(比較原料)
【0075】
・その他のポリオール:
・オクタンジオール:2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、KHネオケム(株)製「オクタンジオール」、官能基数2.0、水酸基価768mgKOH/g
【0076】
(アミン化合物(b))
・ジエチルトルエンジアミン:ロンザジャパン(株)製「DETDA80」、官能基数2.0、アミン価630mgKOH/g
・ポリエーテルジアミン:三井化学ファイン(株)製「ポリエーテルアミンD-230」、官能基数2.0、アミン価488mgKOH/g
【0077】
(触媒(c))
・第三級アミン触媒:N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、EVONIK社製「ポリキャット9」
【0078】
(難燃剤)
・TMCPP:トリス(クロロプロピル)ホスフェート、大八化学工業(株)製「TMCPP」
・TCP:トリクレジルホスフェート、大八化学工業(株)製「TCP」
【0079】
[(B)成分]
(イソシアネート)
・MR-200:ポリメリックMDI、東ソー(株)製「ミリオネートMR-200」
・MR-400:ポリメリックMDI、東ソー(株)製「ミリオネートMR-400」
【0080】
<A液及びB液の調製>
(A)成分からなる液をA液、(B)成分からなる液をB液とし、下記表1~5に記載の配合(質量部)に従い原料を適宜混合することにより、A液及びB液をそれぞれ調製した。
【0081】
表中の各成分の質量部は、上記使用原料としての配合量である。そのため、「RFK-556」、「RDK-133」及び「RDK-142」についての表中の質量部は、これら製品としての量、すなわち当該製品に含まれるポリエステルポリオールとジエチレングリコールの合計量である。一方、表中の「質量比(a2)/(a1)」は、実際にA液中に含まれるポリエステルポリオール(a2)とエーテル系ポリオール(a1)の質量比である。そのため、これら製品を用いた実施例及び比較例において、ポリエステルポリオール(a2)の量は、製品としての量からジエチレングリコールの量を差し引いた値とし、エーテル系ポリオール(a1)の量は、当該差し引いたジエチレングリコールの量を加算した値として、(a2)/(a1)の値が算出される。例えば、実施例1であれば、「RFK-556」の配合量が29.0質量部であるため、このうちの27.55質量部がポリエステルポリオール(a2)の量であり、残りの1.45質量部がジエチレングリコールの量である。そのため、エーテル系ポリオール(a1)の量はトリプロピレングリコール35.0質量部に1.45質量部を加算した36.45質量部であり、よって、(a2)/(a1)は27.55/36.45であり、小数第二位を四捨五入して0.8となる。
【0082】
表中の「当量比(NCO/活性水素基)」は、(B)成分中のイソシアネート基(NCO)と(A)成分中の活性水素化合物の活性水素基との反応当量比である。
【0083】
<評価>
[硬化時間、発泡倍率]
液温を20℃としたA液およびB液をハンドミキシングにより混合し、発泡剤を含有しない場合の硬化時間(硬化が進行し、糸引きが始まる時間)または発泡剤を含有する場合の硬化時間(攪拌開始から発泡が完了するまでの時間)を測定した。硬化反応終了後、硬化物の体積を、原料たるA液およびB液の最初の体積で除することにより、発泡倍率を算出した。
【0084】
[非イオン界面活性剤検出量]
2Lポリカップに20℃の水900gを張り、ミキサーで水を撹拌し、流水状態を再現した。20℃のA液60gおよびB液60gをハンドミキシングし、混合液を流水に投入した。混合液が硬化した後、流水を採取して、水道法 別表第28 固相抽出-吸光光度法に準拠して非イオン界面活性剤検出量を測定した。
検出量が1mg/L未満の場合を「A」、1mg/L以上10mg/L未満の場合を「B」、10mg/L以上の場合を「C」と評価した。
【0085】
[止水性]
アクリル円筒(内径/外径=φ44mm/φ48mm、長さ=300mm)に砕石を詰め、円筒の片側から2L/分で水を流し模擬地山を再現した。円筒の途中に穴を開け、その穴からシリンジを用いてA液およびB液の混合液50mLを模擬地山内に注入した。注入後に止水の可否、および樹脂の充填長を確認した。
止水できかつ充填長が100mm以下の場合を「A」、止水できかつ充填長が100mm超200mm以下の場合「B」、止水できない場合を「C」と評価した。
【0086】
[地山改良性]
A液、B液、7号珪砂を50/50/30(質量比)で混合してサンドゲル(φ50mm×高さ100mm)を作製し、地山を薬液で固結した状態を再現した。サンドゲルをJIS K 7220:2006「硬質発泡プラスチック-圧縮の求め方」に準拠して圧縮した。圧縮した際にサンドゲルが破断なしかつ圧縮強度が20N/mm以上の場合を「A」、破断なしかつ10N/mm超20N/mm未満の場合を「B」、破断あり又は10N/mm以下の場合を「C」と評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
結果は表1~5に示すとおりである。比較例1は、官能基数が3.0のエーテル系ポリオールを用いており、非イオン界面活性剤の検出量が多かった。比較例2は、水酸基価が設定値よりも小さいエーテル系ポリオールを用いており、止水性及び地山改良性に劣るとともに、非イオン界面活性剤の検出量も多かった。比較例3は、水酸基価が設定値よりも小さいポリエステルポリオールを用いており、止水性及び地山改良性に劣っていた。
【0093】
比較例4は、エーテル系ポリオールを配合していない例であり、止水性及び地山改良性に劣っていた。比較例5は、ポリエステルポリオールを配合していない例であり、地山改良性に劣っていた。比較例6は、ポリエステルポリオール(a2)の代わりに、水酸基価が小さいエーテル系ポリオールを配合した例であり、比較例5に対して地山改良性は改良されたものの、非イオン界面活性剤の検出量が多くなった。
【0094】
比較例7及び8は、質量比(a2)/(a1)が設定値の範囲外であり、地山改良性に劣っていた。比較例9及び10は、エーテル系ポリオール中のエーテル系ポリオール(a1)の量が少なく、非イオン界面活性剤の検出量が多かった。比較例11は、改質剤としてのアミン化合物(b)を配合していない例であり、止水性に劣っており、非イオン界面活性剤の検出量が多かった。
【0095】
これに対し、エーテル系ポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)を用いてこれらを所定の割合で配合した実施例1~20であると、非イオン界面活性剤の検出量が少なく、かつ止水性及び地山改良性が良好であり、地山固結剤としての性能に優れていた。ここで、実施例1~4では水酸基価が異なるエーテル系ポリオール(a1)を使用しており、実施例5~9では水酸基価が異なるか、又は芳香族と脂肪族とで種類が異なるポリエステルポリオール(a2)を使用しており、実施例10~12では(a2)/(a1)の質量比を変更している。実施例13では改質剤であるアミン化合物(b)の種類を変更しており、実施例14,15ではアミン化合物(b)の配合量を変更している。実施例16では難燃剤(d)の種類を変更しており、実施例17では発泡剤として水を添加しており、実施例18ではイソシアネートの種類を変更している。実施例19,20ではエーテル系ポリオール(a1)及びポリエステルポリオール(a2)とともに他のポリオールを併用している。
【0096】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

【要約】
【課題】流水下での非イオン界面活性剤の検出量が少なく、地山固結剤としての性能に優れる。
【解決手段】地山固結剤は、ポリオール(a)、第一級/第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び難燃剤(d)を含む(A)成分と、イソシアネートを含む(B)成分と、を備える。ポリオール(a)は、官能基数1.5~2.5かつ水酸基価400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)を含む。エーテル系ポリオール中の(a1)の含有量は90質量%以上である。質量比(a2)/(a1)は0.2~3.0である。ポリオール(a)中のエーテル系ポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上である。(A)成分中のアミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である。
【選択図】なし