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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】セラミド含有ニオソームを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241112BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/68
A61K8/81
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/37
A61K8/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020159814
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053156
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒真
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209494(JP,A)
【文献】特開2007-246538(JP,A)
【文献】特表2018-514568(JP,A)
【文献】特開昭59-016534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)~()を含むニオソームを含有してなる皮膚外用組成物。
(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有し、平均分子量が1,000~1,000,000である共重合体であり、含有量が(B)1質量部に対して0.1~10.0質量部
(B)セラミド2又は3を含むセラミド
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸ソルビタンを含み、かつ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1としたとき、脂肪酸ソルビタンを質量比0.4~16で含む非イオン界面活性剤であり、含有量が(B)1質量部に対して0.5~20.0質量部
(D)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールを含み、
ペンチレングリコールを含まずにジプロピレングリコールを含有する場合は、(B)1質量部に対してジプロピレングリコールを20質量部以上、
ジプロピレングリコールを含まずにペンチレングリコールを含有する場合は、(B)1質量部に対してペンチレングリコールを15質量部以上、
(E)水
(F)pH調整剤
【請求項2】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、脂肪酸ソルビタンがセスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンから選ばれる1以上である請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
皮膚外用組成物の形態が化粧水である請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体とセラミド類を二重膜に複合化してなるニオソーム。
【請求項5】
ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体が、ランダム共重合体である請求項に記載のニオソーム。
【請求項6】
ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体の、メトキシジエチレングリコール(MDEGMA)部およびラウロキシテトラエチレングリコール(LTEGMA)部がポリメタクリル酸のカルボキシル基全体を100%とした場合に各々、50~70%、2~10%である請求項に記載のニオソーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド含有ニオソームを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド (ceramide) は、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物であり、細胞膜に多く存在している。セラミドは、皮膚の角層細胞間脂質が形成するラメラ構造の主成分であり、皮膚バリア機能の重要な役割を果たしている。このため、皮膚バリア機能を向上するため、しばしば化粧料に配合される。しかしながら、セラミドは、高い結晶性を有しているため、そのままでは化粧料に安定配合することが困難であった。とりわけ化粧水のように油をほとんど含まない化粧料への配合は困難であった。
【0003】
セラミドを化粧水に安定配合するためには、セラミドをミセルやベシクル、すなわち界面活性剤やリン脂質などが形成する小胞構造体とセラミドを複合化する必要がある。ところが、ミセルやベシクル構造の一成分としてセラミドを安定に複合化した場合、皮膚に塗布した際にも、その構造が維持されるため、セラミドを皮膚角層内部へ供給できず、期待したセラミドの有益な機能が損なわれることがあった。
【0004】
一方、ベシクルの中でも、非イオン性の界面活性剤が形成するリポソームに類似した2重膜からなる小胞体構造が近年注目されている。この小胞体は、「ニオソーム(Niosome)」と呼称されている。ニオソームは、主として非イオン界面活性剤からなる二分子膜の閉鎖小胞体(ベシクル)であり、リン脂質からなるリポソームと同様、薬物送達システム(DDS)や化粧料などに利用されている。
特許文献1及び2には、セラミドを前記2重膜の構成成分として複合体化して含有するニオソーム及びこのニオソームを含有する化粧料が記載されている。
【0005】
特許文献3には、温度、pH応答性を有する共重合体、およびリポソーム複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-246538号公報
【文献】特表2010-513221号公報
【文献】特開2015-209494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特定の温度、pH条件で崩壊してセラミドを放出する機能を持つニオソームを含有する皮膚外用組成物及びニオソームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は次の構成からなる。
1.次の(A)~(E)を含むニオソームを含有してなる皮膚外用組成物。
(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体
(B)セラミド類
(C)非イオン界面活性剤
(D)多価アルコール
(E)水
2.(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体の平均分子量が1,000~1,000,000である、1に記載の皮膚外用組成物。
3.(C)非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸ソルビタンの両方を含むものである1又は2に記載の皮膚外用組成物。
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、脂肪酸ソルビタンがセスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンから選ばれる1以上である3に記載の皮膚外用組成物。
5.(D)多価アルコールが、ジプロピレングリコールまたはペンチレングリコールのいずれか又は両方である1~4のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
6.皮膚外用組成物の形態が化粧水である1~5のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
7.ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体とセラミド類を二重膜に複合化して含むニオソーム。
8.ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体が、ランダム共重合体である7に記載のニオソーム。
9.ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体の、メトキシジエチレングリコール(MDEGMA)部およびラウロキシテトラエチレングリコール(LTEGMA)部がポリメタクリル酸のカルボキシル基全体を100%とした場合に各々、50~70%、2~10%である7又は8に記載のニオソーム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用組成物に含有されるニオソームは、通常の状態では、安定な2重膜ベシクルとして挙動する。このため、これを含有する外用組成物中では、ニオソームの2重膜中にセラミドが安定に保持され、セラミドの結晶が析出しない。しかし、皮膚の温度とpH条件で安定なニオソームが崩壊すると、このニオソームを構成している成分であるセラミドが放出される。
皮膚の温度とpHで崩壊したニオソームから放出されたセラミドは、皮膚角層中で放出されると、角層のラメラ構造に組み込まれて、ラメラ構造の形成を促進するため、皮膚のバリア機能をより強化する。このため、本発明のニオソームを含有する組成物は、従来の技術では困難であった、セラミドによる皮膚バリア機能の強化を達成することが可能となる。
本発明のニオソームは、セラミド類とポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体を含んでいる。このニオソームは、皮膚の温度とpHで崩壊する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】共重合体の合成反応工程を示す模式図である。
図2】本発明のニオソームの構造を示す模式図及びニオソームの崩壊原理を示す模式図である。
図3】試験例3で行った組成物中に含有されている粒子の粒径測定結果を示すグラフである。
図4】試験例3の、安定なニオソームの顕微鏡観察図である。図中の〇部分を拡大した画像を四角枠中重ねて示している。
図5】試験例4の、崩壊したニオソームの顕微鏡観察図である。
図6】試験例5で行った、pH5の条件での実施例1と比較例1の組成物のニオソームからのセラミド放出温度試験の結果を示すグラフである。
図7】試験例6の、ヒト角層ラメラ形成試験の試験結果を示すグラフである。
図8】試験例7で実施した保湿試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚外用組成物は、(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体、(B)セラミド類、(C)非イオン性界面活性剤、(D)多価アルコール、(E)水を含有するニオソームを含有する組成物である。
各含有成分について説明する。
(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体
本願明細書では、(A)ポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体を単に「共重合体」と簡略して記載する。
共重合体は、ポリメタクリル酸のカルボキシル基がメトキシジエチレングリコール(MDEGMA)およびラウロキシテトラエチレングリコール(LTEGMA)によってエステル化された構造を有している。
【0012】
共重合体は、次の化学式1で示す繰り返し構造を有している。
【化1】
なおl、m、nはそれぞれの残基の結合数である
(化学式1)
【0013】
共重合体は、公知の方法で合成して調製できる。例えば特許文献3に開示の方法に基づけば、所望する平均分子量及びエステル化率を有する共重合体を容易に合成することができる。この共重合体は、中性付近のpH及び常温の条件では親水性のランダムコイル構造をとり、pH5付近の酸性pH及び皮膚表面の32℃の条件では疎水性のグロビュール構造をとる性質がある。
【0014】
共重合体のメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールのエステル化比率は、元のポリメタクリル酸に含まれるカルボキシル基の総量を100%とした場合に、メトキシジエチレングリコール(MDEGMA)とラウロキシテトラエチレングリコール(LTEGMA)の共重合体あたりの結合率が、それぞれ50~70%、2~10%であることが好ましく、より好ましくはそれぞれ55~60%、2~5%である。
本発明において(A)共重合体は、本発明のニオソーム含有組成物中に全量あたり、0.01~10.0質量%、好ましくは0.1~5.0質量%、特に好ましくは0.3~1質量%含有される。
さらにまた、本発明のニオソームを含有する組成物中には、(A)共重合体を(B)セラミド類1質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.5~5.0質量部含有する。
また共重合体の数平均分子量については特に制限されないが、1,000~1,000,000が好ましく、15,000~40,000がより好ましく、20,000~30,000が特に好ましい。
【0015】
(B)セラミド類
本発明で用いるセラミド類とは、セラミド、セラミド誘導体、セラミド類似物質である。
セラミドは、人の皮膚(角層)に存在する細胞間脂質の約50%を占めるアミド誘導体である。セラミドとしてはN-アシルスフィンゴシン(セラミド)、N-アシルジヒドロスフィンゴシン(ジヒドロセラミド)、N-アシルフィトスフィンゴシン(フィトセラミド)等が挙げられる。なお前記のスフィンゴシンの化学名は(2S,3R,4E)-2-アミノ-4-オクタデセン-1,3-ジオール、ジヒドロスフィンゴシンの化学名は(2S,3R)-2-アミノオクタデカン-1,3-ジオール、フィトスフィンゴシンの化学名は(2S,3S,4R)-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオールである。
本発明のニオソームを含有する組成物に含有されるセラミド類としては、皮膚外用剤中でも通常化粧品に使用されるものが好ましく、難溶性のセラミドといわれるものがより好ましい。このようなセラミド類としては、セラミド1~6を例示できる。セラミド類は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。セラミド2又はセラミド3が特に好ましい。
セラミド2の化学名は(2S,3R)-2-オクタデカノイルアミノオクタデカン-1,3-ジオールであり、市販品としては(高砂香料工業株式会社製 Ceramide TIC-001)を用いることができる。 本発明に用いるセラミド3の化学名は2-オクタデカノイルアミノ-1,3,4-オクタデカントリオールであり、市販品としては(DOOSAN社製 DS-CeramideY3S)を用いることができる。
本発明においてのセラミド類は、本発明のニオソームを含有する組成物中に全量あたり、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.05~1.0質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%含有される。
【0016】
(C)非イオン性界面活性剤
本発明の組成物において用いる非界面活性剤としては、通常化粧料や外用剤に用いられるものであれば使用可能である。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ラウレス-4、ラウレス-7、ラウレス-9、ラウレス-21、ラウレス-23、セテス-10、セテス-20、ステアレス-2、ステアレス-20、ステアレス-21、セテアレス-25、べへネス-20、べへネス-30、オレス-2、オレス-10)、ポリオキシエチレンステリルエーテル(PEG-5フィトステロール、PEG-10フィトステロール、PEG-30フィトステロール)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-25、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-45、ステアリン酸PEG-55、ステアリン酸PEG-75、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸PEG-150、ジステアリン酸PEG-150)、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル(ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル、イソステアリン酸PEG-60グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-40、テトラオレイン酸ソルベス-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80)、グリコール脂肪酸エステル(ステアリン酸PG、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル)、脂肪酸ソルビタンエステル(ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン)、ショ糖脂肪酸エステル(ラウリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ヤシ脂肪酸スクロース)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ラウリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6)、脂肪酸アルカノールアミド(コカミドDEA、コカミドMEA、ラウラミドDEA)、アルキルグリコシド((カプリリル/カプリル)グルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、セテアリルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド)を例示できる。
本発明においては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と脂肪酸ソルビタンの併用が好ましい。
【0017】
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
本発明において用いるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が好ましくは60~100であり、より好ましくは80~100であり、特に好ましくは100である。
ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60より小さいと経時安定性が不十分となる場合がある。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は必要に応じて1種または2種を組み合わせて用いることができる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、市販品(日本サーファクタント工業株式会社製POE(100)硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO-100)、日本エマルジョン株式会社製POE(100)硬化ヒマシ油(EMALEX HC-100)、日本サーファクタント工業株式会社製POE(80)硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO-80)等)を好ましく用いることができる。
【0018】
・脂肪酸ソルビタン
本発明における脂肪酸ソルビタンは、ソルビタン脂肪酸エステルとも呼ばれる。ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールに炭素数8~22の脂肪酸がエステル結合したものを用いることができる。本発明に適したものは、セスキイソステアリン酸ソルビタンまたはセスキオレイン酸ソルビタンまたはオレイン酸ソルビタンであり、好ましくはセスキイソステアリン酸ソルビタンまたはセスキオレイン酸ソルビタンであり、より好ましくはセスキオレイン酸ソルビタンである。セスキイソステアリン酸ソルビタンの市販品としては、NIKKOL SI-15RV(日光ケミカルズ株式会社)やコスモール 182V(日清オイリオグループ株式会社)、セスキオレイン酸ソルビタンの市販品としては、レオドール AO-15V(花王株式会社)やコスモール 82(日清オイリオグループ株式会社)を例示できる。オレイン酸ソルビタンの市販品としてはレオドール AО-10V(花王株式会社)を例示できる。
また、前記の脂肪酸ソルビタンは、必要に応じて1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明組成物に、(C)成分の非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と脂肪酸ソルビタンを含有する場合、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と脂肪酸ソルビタンの比率は、脂肪酸ソルビタン1質量部に対してポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が2質量部以下になるように含有する。より好ましくは脂肪酸ソルビタン1質量部に対してポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、0.5質量部以下であり、特に好ましくは0.3質量部以下になるように含有する。
また、本発明のニオソームを含有する組成物中に(C)成分の非イオン性界面活性剤を、(B)セラミド類1質量部に対して、好ましくは0.5~20.0質量部、より好ましくは1~10.0質量部、特に好ましくは(C)2.0~6.0質量部含有する。
【0020】
(D)多価アルコール
本発明のニオソームを含有する組成物は、(D)多価アルコールを含有する。多価アルコールとしては、ジプロピレングリコールまたはペンチレングリコール、あるいはこの両方を含有することが好ましい。多価アルコールの含有量は、ジプロピレングリコールを含有する場合は、セラミド類1質量部に対して20質量部以上とする。ペンチレングリコールを含有する場合は、セラミド類1質量部に対して15質量部以上で含有することが好ましい。両方の多価アルコールを含有する場合は、ジプロピレングリコールとペンチレングリコールの含有量比を求め、これを基準としてセラミド類の含有量が、基準を満たしていることを確認する。ジプロピレングリコール又はペンチレングリコールの含有量が、セラミドに対して上記の量を下回る場合、セラミドの結晶化などが発生する恐れがある。
【0021】
(E)水
本発明のニオソームを含有する組成物は、必須成分として水を含有する。水はニオソームを形成する上で重要な成分である。本発明のニオソームを含有する組成物を100質量%としたとき、上記の成分及び(F)の任意成分の合計量の残余量を水の含有量とする。
水の含有量は、ニオソームを含有する組成物中に、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。本発明のニオソームを含有する組成物中に含まれる水の含有量は、(F)任意成分の含有量で調整可能である。
【0022】
(F)任意成分
本発明のニオソームを含有する組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、皮膚外用剤や化粧料に含有される各種成分を含有することができる。本発明のニオソームを含有する組成物には、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、有機粉体、水溶性高分子、塩類、pH調整剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、薬効成分、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0023】
有機粉体としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のポリマービーズやポリシリコーン1クロスポリマーなどのシリコーン樹脂粉体、ポリウレタン粉体等を配合することができる。
【0024】
水溶性高分子としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等を例示できる。
【0025】
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等を例示できる。
【0026】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム等を例示できる。
【0027】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン等を例示できる。
【0028】
金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を例示できる。
【0029】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB6類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD6、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL-α-トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を例示できる。例えば、エタノール等の水溶性有機溶剤、キレート剤、美白剤、エモリエント剤、保湿剤、酸化防止剤、色剤、防腐剤、香料(精油含む)、各種の油性成分、各種の水性成分などを挙げることができる。
【0030】
本発明のニオソームを含有する組成物を調製するには、例えば、(E)水に成分に対して(A)成分の共重合体を溶解し、水酸化カリウム等のpH調整剤によりpHを10に調整し、次いでこれを85℃程度に加熱昇温し、撹拌しながら、(B)、(C)、(D)成分を85℃程度で均一に加熱溶解したものを滴下し、氷浴を用いて30℃まで冷却し、その後pH調整剤としてクエン酸を用いてpH6.5に調整する。なお、各成分を混合する際の加熱温度は、80℃以下にならないようにする。また、酸化や変性を防止するために加熱温度は、90℃以下であることが好ましい。
かくして加熱撹拌することによって、セラミド類をニオソーム構造中に含有するニオソームが分散した、本発明のニオソームを含有する組成物を得ることができる。この組成物は常温または低温において、含有するニオソームや、ニオソーム構成成分の分離や、組成物の粘度変化がなく、極めて安定である。
本発明のニオソームを含有する組成物の具体的な形態は、化粧水、乳液、クリームなどの液状の剤型が適する。
【0031】
上記の工程で生成されるニオソームは、非イオン性界面活性剤の2重膜からなる小胞(ベシクル)に、セラミドと、さらにポリメタクリル酸のカルボキシル基の一部がメトキシジエチレングリコールおよびラウロキシテトラエチレングリコールによりエステル化された構造を有する共重合体(共重合体)が複合化されている。この共重合体は、常温でpH6.5の条件では、親水性のランダムコイルとしてニオソームの表面につきだしている(図2の模式図に本発明のニオソームの断面図を示す)。そしてこのニオソームが皮膚に接すると、図2の下段に記載するように、親水性コイルが、皮膚の温度とpHによって疎水性球状高分子(以下「グロビュール」)となる。その結果、疎水性相互作用によってニオソームが崩壊し(図2下段参照)、ニオソームを構成しているセラミドが放出されて、このセラミドが皮膚角層に直接分散してゆく。
【0032】
すなわち、本発明組成物中に含まれるニオソームは、皮膚に塗布又は外用することで、皮膚の温度とpHによって、共重合体の立体構造が親水性ランダムコイルから疎水性グロビュールに変化し、ニオソームが徐々に崩壊して、セラミド類を放出する。放出されたセラミド類は皮膚角層中に分散し、角層のラメラ構造を強化する。
【0033】
ニオソームの2重膜が破壊される原理のより具体的な説明は以下のとおりである。
ニオソーム複合体の水分散液において、共重合体が親水性を維持できる条件下では、共重合体は、ニオソームに担持された状態で水中に安定して存在する。この水分散液の温度、および/またはpHの変化に伴って共重合体が疎水性になると、水中で共重合体は凝集し疎水性グロビュールとなる。ニオソーム複合体において、共重合体はニオソームに担持されているため、共重合体のこの立体構造変化は、ニオソームの2重膜の表面近傍で起こる。疎水性である共重合体の凝集物であるグロビュールは非イオン性界面活性剤2重膜の親油性部分に入り込み、2重膜が破壊される。
【0034】
本発明のニオソームは、少なくとも(A)共重合体(B)セラミド類(C)非イオン性界面活性剤を複合化して形成される2重膜のベシクル構造を持ち、ベシクル内に(D)多価アルコール及び(E)水を含む。
共重合体とセラミド類を非イオン性界面活性剤の2重膜に複合化して含むニオソーム中には、(A)共重合体、(B)セラミド類、(C)非イオン性界面活性剤の含有比率が、(A)共重合体量の質量を1としたとき、(B)セラミド類を好ましくは0.01~3、より好ましくは0.04~2、特に好ましくは0.1~1、(C)非イオン性界面活性剤を好ましくは0.5~10、より好ましくは1~6、特に好ましくは2~4の比率になるように含有する。
【0035】
ニオソームに含まれる(C)非イオン性界面活性剤は、化粧料に使用される非イオン性界面活性剤であれば、どのようなものでも使用可能であるが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸ソルビタンを併用することが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100のものが好ましく、脂肪酸ソルビタンがセスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンから選ばれる1以上であるものが好ましい。またポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸ソルビタンを配合する場合は、含有比率はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1としたとき脂肪酸ソルビタンを、好ましくは0.4~16、より好ましくは1~8、特に好ましくは2~6の質量比になるように含有する。
【0036】
ニオソームに含まれるセラミド類としては、セラミド1~6を例示できる。セラミド類は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、セラミド2又はセラミド3が特に好ましい。
【実施例
【0037】
以下に試験例、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
<試験例1:共重合体の合成>
1.共重合体の合成
共重合体の合成は、特許文献3に記載の方法によって合成した。なお反応過程の模式図を図1に示した。すなわち、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(MD)64.1g、メタクリレート(MAA)21.6g、ラウロキシテトラエチレングリコールメタクリレート(LT)14.4gおよびペルオキシジ炭酸ジプロピル1.94gを窒素雰囲気下で蒸留イソプロパノール(100g)に滴下して60℃で2時間静置した。窒素雰囲気下で溶液を80℃に昇温し、1時間反応させた。共重合体を凍結乾燥により回収した。共重合体収量は99.8g(97.8%)であった。.
得られた共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および多分散指数(Mw/Mn)はTHFを移動相としたGPCにより決定した。ポリマーの組成をプロトンNMRにより決定した。
【0038】
2.共重合体の特性
共重合体は、MD、MAAおよびLTのラジカル共重合により合成されるため、カルボキシ基、オリゴエチレングリコール基、疎水性基を有している。これら官能基の組成と分子量に関しては各々NMRとGPCにより評価し、その結果を下記表1に示す。
この結果、共重合体中のMD、MAAおよびLTの官能基比はモノマーの添加量によって、おおよそ制御できた。また、得られた共重合体の数平均分子量は22,000程度であった。また共重合体の、多分散度はラジカル重合であるため、2.7と比較的高い値を示した。また共重合体の分子量は、反応時間を調整することで制御できるものと考えられる。
【0039】
【表1】
【0040】
得られた共重合体の官能基比は、モノマーの添加量によって、おおよそ制御できた。また、得られた共重合体の数平均分子量は22,000程度であった。また共重合体の、多分散度はラジカル重合であるため、2.7と比較的高い値を示した。
以下の試験には、この共重合体を用いた。
【0041】
<試験例2:実施例1及び比較例1の組成物の調製>
試験例1で調製した共重合体を用いて本発明のニオソームを含有する組成物(実施例1)及び共重合体を含有しないニオソームを含有する組成物(比較例1)を調製した。それぞれの組成は下記表2に示す。
組成物の調製は常法による。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1及び比較例1の組成物は、それぞれpH5及びpH6.5の2種類のpHになるように調整した。
pH6.5に調整した実施例1及び比較例1の粒子径を、動的光散乱により測定したところ、いずれの組成物も単峰性の粒径分布を示した。この結果から、共重合体の有無に関わらず、セスキオレイン酸ソルビタンおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む組成物は、安定な曲率を有するニオソームを自発的に形成していることが明らかになった。また、得られた組成物はいずれも安定な溶液であった。
【0044】
<試験例3:経時安定性試験>
1.試験方法
pH6.5に調整した実施例1および比較例1の経時安定性を一ヶ月間、5、25、40、50℃に設定した恒温槽に保存することで評価した。所定時間経過後に、動的光散乱法により形成した種々のニオソームの平均粒径を測定し、粒径の変化を安定性の指標とした。
【0045】
2.結果
粒径の測定結果を図3に示す。
pH6.5に調整した実施例1および、比較例1のいずれも、どの温度帯においても単峰性の粒径分布測定結果を示し、温度安定性を有していることが分かった。試験試料の調製条件であるpH6.5 は、弱酸性化粧水を想定したものである。すなわちpH6.5の化粧料の場合、非イオン性界面活性剤として、セスキオレイン酸ソルビタンおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むニオソームは安定であることが確認できた。
【0046】
<試験例4:皮膚表面のpH条件及び温度安定性試験>
1.試験方法
実施例1の組成物をヒト皮膚表面の示すpH条件であるpH5.0に調整した溶液、同じくpH5.0に調整した比較例1の組成を持つ溶液、それぞれ5、25、40℃に設定した恒温槽に8時間保存した。保存後、動的光散乱による粒径測定および顕微鏡観察を行った。粒径及び顕微鏡観察における外観の変化からpHおよび温度に対する応答性を評価した。
なお実施例1の組成物及び比較例1の組成物をpHのみを6.5に調整したものを、比較のため25℃で8時間保存した。
顕微鏡観察では、このpH6.5、40℃で8時間保存した実施例1の組成物も観察した。
【0047】
2.結果
粒径の測定結果を図3に示す。
また顕微鏡観察による画像を図4及び図5に示す。
比較例の組成物の平均粒径は、pH及び温度に関わらず変化しなかった。この結果は、比較例の組成物に含有されるニオソーム、すなわちニオソームに共重合体を含まないものが皮膚のpHであるpH5.0の条件にした場合、および温度40℃にした場合も、条件変化に応答しなかったことを示している。
一方実施例1の組成物は、pH5.0において温度が25℃に上昇すると、やや粒径が増大し、40℃に上昇すると著しい粒径の増大を示した。すなわち実施例1のニオソームは、皮膚表面の温度及びpHにおいて、ニオソームが不安定化して、構造変化を起こしていると考えられる。
【0048】
図4及び図5の画像からは次のことが明らかとなった。
pH6.5の条件では、実施例1の組成物に含まれるニオソームは、均一な球状の形態を維持している(図4)これを拡大してみても均一な球状のベシクルが観察される(図4中の拡大画像を参照)。
一方で、pH5.0の条件では、ニオソーム粒子が膨張し、セラミド結晶の放出が確認された(図5)。
【0049】
以上の試験結果から、本発明のニオソームを含有する組成物は、pH6.5の条件では、含有されるニオソームが極めて安定であるが、一方皮膚表面のpHにおくと、ニオソームが崩壊して、セラミドを放出することが明らかとなった。これは、実施例1の組成物に含まれるニオソームに共重合体が含有されているためであることが分かった。
【0050】
<試験例5:セラミド放出量測定試験>
1.試験方法
pH5.0の条件で、5℃、25℃、40℃の恒温槽保存条件下で実施例1、比較例1のニオソームを含有する組成物を保存し、8時間経過後、各々の組成物を孔径0.45μmのメンブレンフィルターによりろ過し、放出されて結晶化したセラミドを除去した。ろ液中のセラミド濃度を、HPLCを用いて測定した。セラミドの測定は、液体クロマト用カラム(CAPCELLPAK MGIII:大阪ソーダ社製)を用いて常法により定量した。
【0051】
2.結果
ニオソームからのセラミド放出量測定試験結果(ろ過液のセラミド量測定結果)を図6に示す。図6に示す通り、組成物のろ過液中のセラミド量が明らかに減少している。これは、ニオソーム状態のセラミドが減少していることを表している。すなわち、実施例1のニオソームは、pH5.0の条件で、温度依存的に、セラミドを放出する。温度が25℃に上昇すると放出量が増加し、40℃でその効果は最大となった。
この試験結果から実施例1の組成物は、皮膚のpH条件では、温度依存性にセラミドを放出することが明らかとなった。
【0052】
<試験例6:ヒト連用試験による角層ラメラ形成効果評価>
1.試験方法
被験者3名に1週間の間、実施例1の組成物及び比較例1の組成物を、それぞれ右前腕内側部(実施例1の組成物)、左前腕内側(比較例1の組成物)に、1日2回塗布して評価した。
評価にあたっては、連用前後における角層ラメラを定量することで効果を確認した。
なお角層ラメラの定量は、連用開始前、後において、テープストリッピング法により角層を採取し、マイクロスコープを用いる画像解析法によって行った。すなわち角層細胞の面積に対するラメラの面積を、ラメラ率として算出した。このラメラ面積の変化(増加)がラメラ形成効果を表している。
【0053】
2.結果
ラメラ率の測定結果を図7に示す。
なお、測定結果は3名のラメラ率の平均値及び標準偏差値である。図7に示す通り、実施例1はラメラ率が顕著に増加した。一方、比較例1は、セラミドを実施例と同様に高含有しているにも関わらずラメラ形成がほとんど促進されなかった。
【0054】
<試験例7:ヒト連用試験による保湿性向上効果評価>
1.試験方法
試験例5と同様に、被験者3名に実施例1の組成物及び比較例1の組成物を、それぞれ右前腕内側部(実施例1の組成物)、左前腕内側(比較例1の組成物)に塗布して評価した。
皮膚の保湿効果は、水分量計を用いて測定することで評価した。測定は、塗布後に塗布部のコンダクタンスを30分、1時間、2時間、3時間、4時間後測定し、塗布前に対するコンダクタンス値の増加を皮膚保湿効果とした。
【0055】
2.結果
使用前のコンダクタンス値から増加したコンダクタンス値(μS)を測定時間をX軸としてプロットしたグラフを図8に示す。なお測定結果は3名のコンダクタンス変化の平均値と標準偏差である。
塗布後30分までは、実施例1、比較例1の組成物には、大きな差は認められなかったが1時間経過後から、比較例1の組成物はコンダクタンス値が時間経過とともに大きく減少した。一方本発明のニオソームを含有する組成物を塗布した場合は、コンダクタンスの低下が緩やかであった。すなわち本発明の実施例1は、保湿性を長時間維持できた。
【0056】
<実施例2~7>
実施例2~7について、実施例1と同様に調製し、試験(安定性と、pHと温度に対する応答性)を行った。
実施例1と同等の試験結果が得られた。以下表3にその組成と結果を示す。安定性及びpHと温度に対する応答性評価の欄が「〇」の表記は、実施例1と同等であることを示している。
【0057】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8