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特許7585572建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠
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  • 特許-建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠 図1
  • 特許-建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠 図2
  • 特許-建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠 図3
  • 特許-建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20241112BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E04B1/16 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023190475
(22)【出願日】2023-11-08
【審査請求日】2023-11-08
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506391657
【氏名又は名称】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 康介
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-060910(JP,A)
【文献】特開2002-201650(JP,A)
【文献】特開2023-60617(JP,A)
【文献】特許第7344427(JP,B1)
【文献】特開昭60-109425(JP,A)
【文献】特開2000-328582(JP,A)
【文献】特許第7382557(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用され、コンクリートを打設した後はベー
ス基礎およびベース基礎に配設されたアンカーボルト・縦筋と一体となる型枠で、
前記型枠は、複数枚のパネルと、該パネルを型枠下部の両端外側部で保持する
巾止めを設けた複数個の矩形のジョイントと、前記パネルを型枠天端の両端外側部で保持する複数の天端用巾止め具からなり、
施工時には、前記矩形のジョイントを前記ベース基礎上の複数箇所に配置・固
定し、前記矩形のジョイントの両端外側部に前記パネルを配設して、パネル天端には天端用巾止め具を配置したことを特徴とする建物の立ち上がり基礎のパネル式捨て型枠
【請求項2】
前記パネル式捨て型枠において、前記ジョイントの形状を維持・補強には筋交いを設ける、また、立ち上がり基礎の強度を補強するときは前記ジョイントの上部や筋交い上に横筋を載置・固定したことを特徴とする請求項1に記載の建物の立ち上がり基礎のパネル式捨て型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠に
関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建物の立ち上がり基礎の捨て型枠として、本出願人の提案に係るU字
形捨て型枠やパネル式捨て型枠が公知である(特許文献1、2)。
基礎工事の法規制において、鉄筋ユニットの横筋を配設する必要が求められ
ていない場合でも、耐震等から使用することが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7112635号広報
【文献】特許第7344427号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のパネル式捨て型枠は、ベース基礎上に鉄筋ユニットが組まれた後に矩
形のジョイントを配置しパネルを取り付けるのであるが、ベース基礎上の鉄筋ユニットを通すために矩形のジョイントの底面を解放する方法によっており、この為ジョイントの強度を弱くするだけでなく、ベース基礎からズレル問題があった。
また、前記パネルを前記矩形のジョイントへの取り付けは、該矩形のジョイ
ントの接続用固定ボルト孔から前記パネルに組み込まれている固定受けボルト孔にボルトで締めて固定する方法によっており、取り付け位置が固定され、型枠の位置決め等を難しくしていた。
このような問題の根本には、建物基礎工事において規制上絶対的に必要としない横筋を設ける前提で対策が講じられ、解決を難解にしている。
一方、建設業の就業者は近年大幅に減少し、更にまた、受注高が減少した時代に他業種に流出した人が戻らず、仕事が肉体的にきつい上、雇用環境が劣悪で、とりわけ現場に不可欠な若い施工管理士が不足しており、国交省は生産性の向上等が必須としている。
本願発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、専門性を必要とせず、作業の簡素化、効率化を進め、作業者の安全の確保、更に作業期間の短縮を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
建物の立て基礎は法的に定められ、この規制を遵守しなければならないが、
一般的に立て基礎の高さが低い場合には必ずしも横筋は必要とせず、基礎に十分な強度があり、且つ、建物の重量をサポートできるのであれば横筋は絶対的に必要とされていない。
しかし、日本の建築業界においては、耐震性や建築の業界の標準化等により、特別な規制が無い場合でも、横筋を使用することが一般的となっている。
本願発明はそうした慣行に拘らず、現在の建築基準法上の規則に定められている方法を基本の考えで、横筋を設けない方法で行っている。
なお、耐震強度不足等で横筋を必要とする場合には、本願発明の請求項2において追加的処置を行う方法により対処している。
【0006】
本願発明は上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、建物基礎の立
ち上がり基礎工事に使用され、コンクリートを打設した後はベース基礎およびベース基礎に配設されたアンカーボルト・縦筋と一体となる型枠で、
前記型枠は、複数枚のパネルと、該パネルを型枠下部の両端外側部で保持する
巾止めを設けた複数個の矩形のジョイントと、前記パネルを型枠天端の両端外側部で保持する複数の天端用巾止め具からなり、
施工時には、前記矩形のジョイントを前記ベース基礎上に設けられたアンカー
ボルトおよび縦筋を避けた複数箇所に配置・固定し、前記矩形のジョイントの両端外側部に前記パネルを配設して、パネル天端には天端用巾止め具を配置したことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、前記パネル式捨て型枠において、前記ジョイントの形
状を維持・補強には筋交いを設ける、また、立ち上がり基礎の強度を補強するときは前記ジョイントの上部や筋交い上に横筋を載置・固定したことを特徴とする
【0008】
本発明の第3の態様は、前記パネルはコンクリート、金属や合成樹脂製からな
ることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明の建物用立ち上がり基礎のパネル式捨て型枠は、基本的に鉄筋ユニットに横筋を設けない方法であるから、これまでの捨て型枠の工法が変わることで、型枠の製造~搬送~設置の各工程の作業が簡単になり、材料費の低減、作業効率の向上、作業期間の迅速化が図れ、工期短縮、コスト削減となる。
なお、強度的に横筋を設ける必要がある時は、型枠を設置後に横筋を前記矩形のジョイントの上部、下部あるいは筋交いに載置・固定することで対応を可能とした。
【0010】
型枠の製造、設置の作業を詳細に説明すれば、パネルはジョイント底部の枠外の巾止めにより、パネル天面には別途天面用巾止め具により固定されることから、先行文献のパネルとジョイントを決められた位置に取り付けるための固定ボルト孔・固定ボルトが不要となる。
これにより、パネルはボルト孔の位置決めの設定が不要となり、作業効率の大幅な向上が可能となる。
更にまた、左右の対称性等を自由に選択できることから、使用するパネルの長さを同じにする必要は無く、パネルの無駄の排除等により効率的な利用が可能となり、コストの低減になる。
パネル式捨て型枠は、型枠を構成する矩形のジョイントおよびパネルは、組み立て前の状態で製造・保管・搬送が可能となり、現場での作業者の安全・効率化・迅速化を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】パネル式捨て型枠を構成する図1-1.矩形のジョイント斜視図、図1-2.パネル天端の巾止め具斜視図、図1-3.パネル斜視図
図2】パネル式捨て型枠を組み立てた正面図、側面図、平面図
図3】パネル式捨て型枠を補強した時のジョイントの正面図
図4】パネル式捨て型枠を補強して組み立てた型枠の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施
形態は本発明の技術思想を具体化するための建物の立ち上がり基礎のベース基礎10に配設されたパネル式捨て型枠20を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るパネル式捨て型枠20を構成する部材で、それぞれについて順次説明する。
図1-1は矩形のジョイント30図でパネル式捨て型枠20の骨格を成す重要な部材で、ジョイント30の上部301およびパネルを支える側壁部302は10~15ミリメートルの棒鋼または角筋で、底部303は厚さ1~3ミリメートル、幅10~50ミリメートルの平鋼で該底部長手方向延長上にパネル40を固定するため、端部を10~20ミリメートル垂直に折り曲げて巾止め304を設けている。
【0014】
矩形のジョイント30をベース基礎上10に設けられたアンカーボルト11および縦筋12を避けた予め定めた複数箇所に配置・固定するが、ジョイント30の両外側部にパネル40を配設するにおいて、ベース基礎10とジョイント底部303を固定するためジョイント底部303の中央にビス孔306を設けておきベース基礎10とビス止めすると良い。
また、ジョイント30の配置は予め定めた箇所で、基本パネルの強度を勘案し50~100センチメートル間隔が良い。パネル40の接合部には追加的に設けても良い。
先行事例では、パネル40の側壁にビス受けを設け、ジョイント側からビス締めして固定する方法を採用、この為作業精度・効率を悪くしていたが、今般の発明はジョイント30の両外壁部302とパネル天面の巾止め具50でパネル40を挟み込むように固定する方法としたことで。より作業効率の向上を図った。
【0015】
図1-2は、ジョイント両側壁部302にパネル40を固定するために該パネル40天端に配される天端用巾止め具50で、型枠内にコンクリート90を打設し硬化した後は取り外される。
【0016】
図1-3のパネル40は、型枠内に打設したコンクリート90を型枠20内に保ち、コンクリート90が硬化した後はそのまま立ち上がり基礎となるもので、コンクリート、金属や合成樹脂等から成る。
パネル40の厚さは使用材料により異なるが、コンクリートによる場合は15~30ミリメートルで、パネル40の割れ防止のためにメッシュ材等を入れても良い、また、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を使用する場合はパネル40の厚さを更に薄くすることが可能となる。強度等に問題がなければ断熱材を使用することも可能である。
パネル40の長さは使用材料によるが、コンクリートによる場合の標準的とする長さは90~200センチメートルが良い。
先行事例では、パネル40に横筋13やビス受けが組み込まれていたが、本発
明では強度的に問題がないときは横筋13を設けない方法を基本としており、これによりパネル40を製造するための型枠の形状が簡素となり、パネル製造工場における作業能率・製造歩留まりの向上・迅速化が図れ、パネル40のコスト低減を可能とした。
【0017】
次に図2は、パネル式捨て型枠20を組み立てた正面図、側面図、平面図である。
先行事例では、施工時には型枠に組み込まれたジョイントの位置を見ながらベース基礎上に設けられたアンカーボルトおよび鉄筋ユニットを避けたところに型枠を配設していたが、本願発明では矩形のジョイント30を予め定めた箇所に配設し、底部303をビスで固定した後、側壁部302両サイドにパネル40を取り付けて固定する。
ジョイントの両側壁302とパネル天端の巾止め具50とでパネル40を挟み込むように固定する方法により、先行事例ではジョイントのビスとパネル側のビス受けの位置合わせを行い、また、パネルを左右対称の対で使用せざるを得なかったが、本願発明においてはビス位置を合わせる必要もなく、パネル40の長短の選択が自由に行え、組み立ての効率を図ることができた。
【0018】
次に図3は、ジョイント30の形状を維持・補強するため筋交い305に、立ち上がり基礎の強度を補強するために横筋13を配設した型枠の正面図である。
横筋13の取り付けは、図のようにジョイント上部301や筋交い305上に固定すると良い。
図4はパネル式捨て型枠20に、筋交い305、及び横筋13を配設して補強された組み立てた型枠の斜視図である。
【0019】
次に図示していないが、組み立てられたパネル式捨て型枠20にコンクリート90を打設するときに問題となるのが気泡やあばたである。
気泡やあばたの発生原因はコンクリート90と型枠20の親和性にある。
コンパネは元々親水性で気泡等は残りにくいが、脱型が難しいことから型枠を再度の使用のため樹脂塗装を施し、更にコンクリート剥離剤を塗布し、気泡やあばたの解消を難解にし、また基礎の強度を弱めている。
また、鉄製の型枠に於いても、やはりコンパネと同様で、鉄面は親水性であるが脱型が難しいことからコンクリート剥離剤を塗布しており、基礎の強度を弱めている。
一方、本願発明の型枠は、型枠も打設する材料もコンクリートであり、いずれも親水性で強固に決着することから、気泡やあばたの問題は発生しない。
また、一般的な気泡やあばた対策として、今後も継続してバイブレーターにより締め固めを行うこととしており、空気泡等が残る不安要素は起こらないものと考えている。
【符号の説明】
【0020】
10 ベース基礎
11 アンカーボルト
12 縦筋
13 横筋
20 パネル式捨て型枠
30 矩形のジョイント
301 矩形のジョイントの上部
302 矩形のジョイントの側壁部
303 矩形のジョイントの底部
304 巾止め
305 筋交い
306 ビス孔
309 立ち上がり基礎の天端
40 パネル
50 パネルの天端用巾止め具
90 コンクリート
【要約】

【課題】建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用されるパネル式捨て型枠
【解決手段】建物基礎の立ち上がり基礎工事に使用され、コンクリートを打設した後はベース基礎およびベース基礎に配設されたアンカーボルト・縦筋と一体となる型枠で、
前記型枠は、複数枚のパネルと、該パネルを型枠下部の両端外側部で保持する
巾止めを設けた複数個の矩形のジョイントと、前記パネルを型枠天端の両端外側部で保持する複数の天端用巾止め具からなり、
施工時には、前記矩形のジョイントを前記ベース基礎上に設けられたアンカー
ボルトおよび縦筋を避けた複数箇所に配置・固定し、前記矩形のジョイントの両
端外側部に前記パネルを配設して、パネル天端には天端用巾止め具を配置した
ことを特徴とする
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4