(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H01H25/00 B
H01H25/00 A
(21)【出願番号】P 2020202946
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】清野 史崇
(72)【発明者】
【氏名】岡西 紀昌
(72)【発明者】
【氏名】西岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】大野 真稔
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153159(JP,A)
【文献】特開2016-181337(JP,A)
【文献】実開昭60-007118(JP,U)
【文献】特開2007-200707(JP,A)
【文献】特開2003-338235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00-13/88
H01H 25/00-25/06
H01H 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有するケースと、
前記上部開口を挿通して設けられ、押下操作およびスライド操作が可能な操作体と、
前記ケースの内部において、前記操作体を上下方向に移動可能に保持し、前記操作体とともに水平移動可能な保持部材と、
前記ケースの内部において、前記操作体の底部と対向する位置に設けられ、前記押下操作によって押下される押下検出部と、
前記ケースの内部において、前記操作体の前記底部と前記押下検出部との間に設けられた板状の付勢部材と
を備え、
前記付勢部材は、
当該付勢部材の中央に設けられ、前記押下操作がなされたときに、前記押下検出部を押下するとともに、前記操作体に対して復帰力を付与する平面部と、
前記平面部から前記平面部の外周に沿って延在して設けられ、先端部が前記ケースの内壁によって支持された複数の弾性腕部と
を有
し、
前記ケースの内部に方形状をなす開口が形成され、
前記付勢部材は、前記開口の角に内側に突出して設けられた台座部に、前記弾性腕部の前記先端部が載置されることにより、当該台座部によって吊持される
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記弾性腕部は、
前記先端部の高さ位置を異ならせるための段差部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記複数の弾性腕部は、前記平面部の中心に対して点対称に配置されている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記弾性腕部は、
前記平面部の外周の対応する辺の長さと略等しい長さを有する
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記付勢部材の前記平面部は、
前記操作体の前記底部のスライド移動可能な範囲よりも大きい面積を有する
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記付勢部材の前記平面部は、
前記操作体のスライド位置に依らず、前記操作体の押下操作に対して、略同等の操作感を呈する
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、
前記平面部と前記複数の弾性腕部とが一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記操作体のスライド操作を抵抗値の変化によって検出する抵抗体をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記ケースは、
前記押下検出部が設けられている領域と、前記抵抗体が設けられている領域とを互いに隔離する隔壁部を有する
ことを特徴とする請求項
8に記載の多方向入力装置。
【請求項10】
前記スライド操作がなされた際に、前記保持部材を、水平方向における初期位置に向かって付勢する水平付勢部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項11】
前記水平付勢部材は、環状コイルばねである
ことを特徴とする請求項
10に記載の多方向入力装置。
【請求項12】
前記保持部材は、
前記操作体が挿通されることによって前記操作体を上下方向に移動可能に保持する保持部と、
前記保持部の外周面から水平方向における外側に拡大して設けられた鍔部と
を有し、
前記環状コイルばねは、
前記保持部材の前記鍔部を、取り囲んで配置されており、前記スライド操作がなされた際に、前記保持部材の前記鍔部を、前記水平方向における初期位置に向かって付勢する
ことを特徴とする請求項
11に記載の多方向入力装置。
【請求項13】
前記保持部材は、
前記鍔部の上下方向の移動が前記ケースによって規制されることにより、当該保持部材の上下方向の移動と、当該保持部材の傾倒とを規制する
ことを特徴とする請求項
12に記載の多方向入力装置。
【請求項14】
前記押下検出部は、
前記付勢部材の前記平面部によって押下されたときに、凹状に弾性変形することによって、複数の固定接点を互いに導通状態にする、ドーム状のメタルコンタクトを有する
ことを特徴とする請求項1から
13のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項15】
前記メタルコンタクトは、
前記付勢部材の前記平面部の面積よりも小さい面積を有する
ことを特徴とする請求項
14に記載の多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、操作体による押下操作およびスライド操作が可能な多方向入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、スライド操作によって操作体が水平方向に移動した状態で、操作体の押下操作を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る多方向入力装置は、上部開口を有するケースと、上部開口を挿通して設けられ、押下操作およびスライド操作が可能な操作体と、ケースの内部において、操作体を上下方向に移動可能に保持し、操作体とともに水平移動可能な保持部材と、ケースの内部において、操作体の底部と対向する位置に設けられ、押下操作によって押下される押下検出部と、ケースの内部において、操作体の底部と押下検出部との間に設けられた板状の付勢部材とを備え、付勢部材は、当該付勢部材の中央に設けられ、押下操作がなされたときに、押下検出部を押下するとともに、操作体に対して復帰力を付与する平面部と、平面部から平面部の外周に沿って延在して設けられ、先端部がケースの内壁によって支持された複数の弾性腕部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態に係る多方向入力装置によれば、操作体のスライド操作がなされた状態で当該操作体の押下操作を行うことができ、且つ、スライド位置による操作体の押下操作に係る操作荷重のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る多方向入力装置の外観斜視図
【
図2】一実施形態に係る多方向入力装置の分解斜視図
【
図4】一実施形態に係る付勢部材の上面側を示す外観斜視図
【
図5】一実施形態に係る付勢部材の下面側を示す外観斜視図
【
図6】一実施形態に係る付勢部材および下ケース部の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0009】
(多方向入力装置100の概要)
図1は、一実施形態に係る多方向入力装置100の外観斜視図である。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸方向を、上下方向とし、図中X軸方向およびY軸方向を、水平方向とする。
【0010】
図1に示す多方向入力装置100は、ゲーム機のコントローラ等に用いられる。
図1に示すように、多方向入力装置100は、ケース110の上部開口110Aを挿通して設けられた、柱状のレバー120(「操作体」の一例)を備える。多方向入力装置100は、レバー120による水平方向(X軸方向およびY軸方向)へのスライド操作と、レバー120による下方(Z軸負方向)への押下操作とを行うことが可能である。特に、多方向入力装置100は、レバー120のスライド操作がなされた状態で、レバー120の押下操作を行うことができ、且つ、レバー120のスライド方向およびスライド量(スライド位置)によるレバー120の押下操作に係る操作荷重のばらつきを低減できるように構成されている。
【0011】
(多方向入力装置100の構成)
図2は、一実施形態に係る多方向入力装置100の分解斜視図である。
図3は、一実施形態に係る多方向入力装置100の断面図である。
【0012】
図2および
図3に示すように、多方向入力装置100は、ケース110、レバー120、保持部材130、環状コイルばね140、第1スライダ151、第1摺動子152、第2スライダ153、第2摺動子154、第3スライダ155、付勢部材160、FPC(Flexible Printed Circuits)170、およびフレーム180を備える。
【0013】
ケース110は、内部に各構成部品が組み込まれる、容器状の部材である。ケース110は、樹脂素材が用いられて形成される。ケース110の上壁部の中央には、平面視において円形状をなす上部開口110Aが形成されている。上部開口110Aには、レバー120が挿通される。本実施形態では、ケース110は、平面視において八角形状を有している。但し、これに限らず、ケース110は、平面視においてその他の形状(例えば、円形状、四角形状等)を有してもよい。
【0014】
ケース110は、上ケース部111と、中間ケース部112と、下ケース部113とを有しており、これら3つのケース部が組み合わされた積層構造を有する。上ケース部111、中間ケース部112、および下ケース部113は、いずれも、平面視において八角形状を有する、薄板状の部材である。
【0015】
上ケース部111は、中間ケース部112の上側に重ねて設けられる。上ケース部111は、下方に突出して設けられた、複数の位置決めピン111Bを有する。上ケース部111は、複数の位置決めピン111Bの各々が、中間ケース部112の複数の位置決め孔112Bの各々に嵌め込まれることにより、中間ケース部112に対して正確な位置決めがなされる。上ケース部111の中央には、平面視において円形状をなす開口111Aが形成されている。開口111Aは、中間ケース部112の開口112Aと重なり合うことにより、開口112Aとともにケース110の上部開口110Aを形成する。
【0016】
中間ケース部112は、下ケース部113の上側に重ねて設けられる。中間ケース部112は、下方に突出して設けられた、複数の位置決めピン112Cを有する。中間ケース部112は、複数の位置決めピン112Cの各々が、下ケース部113の複数の位置決め孔113Bの各々に嵌め込まれることにより、下ケース部113に対して正確な位置決めがなされる。中間ケース部112の中央には、平面視において円形状をなす開口112Aが形成されている。開口112Aは、上ケース部111の開口111Aと重なり合うことにより、開口111Aとともにケース110の上部開口110Aを形成する。
【0017】
下ケース部113は、中間ケース部112の下側に重ねて設けられる。下ケース部113は、四隅の各々に、中間ケース部112を正確に位置決めするための、位置決め孔113Bが形成されている。下ケース部113の中央には、平面視において正方形状をなす開口113Aが形成されている。開口113Aには、平面視において概ね正方形状をなす付勢部材160が配置される。下ケース部113には、開口113Aを間に挟んで、X軸方向に一対のスライド溝113Eが設けられている。一対のスライド溝113Eは、Y軸方向に直線状に延在しており、第1スライダ151の下方に突出した両端部を、Y軸方向にスライド可能に収容するために形成されている。また、下ケース部113には、開口113Aを間に挟んで、Y軸方向に一対のスライド溝113Fが設けられている。一対のスライド溝113Fは、X軸方向に直線状に延在しており、第2スライダ153の下方に突出した両端部を、X軸方向にスライド可能に収容するために形成されている。なお、下ケース部113において、スライド溝113Eと開口113Aとの間の壁部は、FPC170のメタルコンタクト172が設けられている領域と、FPC170の第1抵抗体174が設けられている領域とを互いに隔離する隔壁部113Gとなっている。また、下ケース部113において、スライド溝113Fと開口113Aとの間の壁部は、FPC170のメタルコンタクト172が設けられている領域と、FPC170の第2抵抗体176が設けられている領域とを互いに隔離する隔壁部113Gとなっている。
【0018】
レバー120は、操作者によって押下操作およびスライド操作がなされる部材である。レバー120は、レバー部121および基部122を有する。レバー部121は、ケース110の上部開口110Aから上方に向って延在する概ね円柱状の部分であって、操作者によって押下操作およびスライド操作がなされる部分である。基部122は、ケース110の内部においてレバー部121の下端部を支持する、レバー部121よりも大径の円柱状の部分である。レバー部121は、保持部材130の貫通孔133の小径部133Aより小径であり、貫通孔133を貫通する。このため、レバー部121は、
図3に示すように、小径部133Aを挿通した状態で、その下端部が小径部133Aによって支持される。基部122は、保持部材130の貫通孔133の小径部133Aより大径であり、保持部材130の貫通孔133の大径部133Bより小径である。このため、基部122は、
図3に示すように、小径部133Aを貫通することなく、大径部133Bに嵌め込まれ、大径部133Bによって支持される。レバー120は、その基部122が、大径部133Bの天井面に当接することによって、保持部材130に対する上方への移動が、所定の上限位置(
図3参照)に制限されるようになっている。なお、貫通孔133の小径部133Aの断面形状と、小径部133Aに挿通されるレバー部121の断面形状は、いずれも完全な円形状ではなく、いわゆるサイドカットがなされた円形状を有する。これにより、レバー部121は、貫通孔133の小径部133Aの内部で回転しないようになっている。すなわち、レバー部121は、保持部材130に対して相対的に回転しないようになっている。
【0019】
保持部材130は、ケース110の内部において、レバー120を上下方向に移動可能に保持し、レバー120とともに水平移動可能である。
図2および
図3に示すように、保持部材130は、保持部131および鍔部132を有する。保持部131は、保持部材130の中央部に設けられている、概ね円柱状の部分である。保持部131の中央には、当該保持部131を上下方向に貫通する貫通孔133が形成されている。保持部131は、貫通孔133の内部にレバー120が挿通されることにより、レバー120の下部を上下方向に移動可能に保持する。鍔部132は、保持部131の外周側面から径方向外側に向かって広がるように形成されており、平面視において円環状を有する、円盤状の部分である。
図3に示すように、鍔部132は、上ケース部111の開口111Aの内壁と、中間ケース部112の開口112Aの内壁との間に形成されている隙間110B内に入り込む。これにより、鍔部132は、隙間110Bの外側に配置されている環状コイルばね140によって、径方向内側に向かって付勢される。なお、保持部材130は、鍔部132が隙間110Bに入り込むことによって、水平方向への移動が可能になるとともに、上下方向への移動が規制される。このため、保持部材130は、レバー120のスライド操作がなされた場合、レバー120とともに水平方向にスライド可能であり、レバー120の押下操作がなされた場合、自身が下方へ移動することなく、レバー120を下方に移動させることができるようになっている。
【0020】
環状コイルばね140は、円環状を有する弾性部材である。環状コイルばね140は、
図3に示すように、上ケース部111の開口111Aの内壁と、中間ケース部112の開口112Aの内壁との間に形成されている隙間110Bの外側に、当該隙間110Bを取り囲むように設けられている。これにより、環状コイルばね140は、隙間110Bの内側から当該隙間110B内に入り込んでいる、保持部材130の鍔部132の外周縁部を取り囲むように配置される。そして、環状コイルばね140は、保持部材130の鍔部132を、径方向における内側に付勢する。環状コイルばね140は、レバー120がスライド操作されたときに、保持部材130の鍔部132から径方向外側に向かって力が加えられることによって弾性変形するとともに、保持部材130の鍔部132に対して、径方向内側に向かって復帰力を付与する。これにより、環状コイルばね140は、保持部材130を初期位置に復帰させる。また、環状コイルばね140は、保持部材130が初期位置にあるときに、鍔部132の外周縁部の全周に対して均等に加圧することにより、保持部材130が初期位置にある状態を維持する。
【0021】
第1スライダ151は、平面視においてX軸方向を長手方向とする長方形状を有する、薄板状の部材である。第1スライダ151は、ケース110内において、第2スライダ153の上側に第2スライダ153と直交するように重ねられて、Y軸方向にスライド可能に設けられる。第1スライダ151のX軸正側の端部の底部には、金属製の第1摺動子152が設けられている。第1スライダ151の中央部には、開口部151Aが形成されている。開口部151Aは、平面視においてX軸方向を長手方向とする長方形状(長孔形状)を有する。開口部151Aには、保持部材130の保持部131が挿通して設けられる。これにより、第1スライダ151は、保持部材130のスライド移動にともなって、保持部材130とともにY軸方向にスライドする。これにより、第1スライダ151の下部に保持された第1摺動子152とFPC170に設けられた第1抵抗体174との電気的な接続状態が変化し、FPC170の接続部170Cから、レバー120のY軸方向へのスライド操作(スライド方向およびスライド量)に応じた抵抗値による操作信号が出力されることとなる。
【0022】
第2スライダ153は、平面視においてY軸方向を長手方向とする長方形状を有する、薄板状の部材である。第2スライダ153は、ケース110内において、下ケース部113の上側に重ねられて、X軸方向にスライド可能に設けられる。第2スライダ153のY軸正側の端部の底部には、金属製の第2摺動子154が設けられている。第2スライダ153の中央部には、開口部153Aが形成されている。開口部153Aは、平面視においてY軸方向を長手方向とする長方形状(長孔形状)を有する。開口部153Aには、保持部材130の保持部131が挿通して設けられる。これにより、第2スライダ153は、保持部材130のX軸方向へのスライド移動にともなって、保持部材130とともにX軸方向にスライドする。これにより、第2スライダ153の下部に保持された第2摺動子154とFPC170に設けられた第2抵抗体176との電気的な接続状態が変化し、FPC170の接続部170Cから、レバー120のX軸方向へのスライド操作(スライド方向およびスライド量)に応じた抵抗値による操作信号が出力されることとなる。
【0023】
第3スライダ155は、平面視においてY軸方向を長手方向とする長方形状を有する、薄板状の部材である。第3スライダ155は、ケース110内において、第1スライダ151の上側に第1スライダ151と直交するように重ねられて、第2スライダ153とともにX軸方向にスライド可能に設けられる。第3スライダ155は、Y軸方向における両端部の各々に、下方に突出した脚部155Aを有する。脚部155Aは、第2スライダ153の上面に当接し、第2スライダ153と第3スライダ155との間に、第1スライダ151がスライド可能な空間を形成する。第3スライダ155の中央部には、開口部155Bが形成されている。開口部155Bは、平面視においてY軸方向を長手方向とする長方形状(長孔形状)を有する。開口部155Bには、保持部材130の保持部131が挿通される。これにより、第3スライダ155は、保持部材130のX軸方向へのスライド移動にともなって、保持部材130および第2スライダ153とともにX軸方向にスライドする。
【0024】
付勢部材160は、金属板から形成され、平面視において概ね正方形状をなす、薄板状の部材である。付勢部材160は、下ケース部113の開口113A内(すなわち、ケース110の内部において、レバー120の底部とメタルコンタクト172との間)に配置される。付勢部材160は、レバー120の押下操作がなされたときに、メタルコンタクト172を押下するとともに、レバー120に対して復帰力を付与する。なお、付勢部材160の詳細な構成については、
図4~
図6を用いて後述する。
【0025】
FPC170は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。FPC170は、主要部170A、延出部170B、および接続部170Cを有する。主要部170Aは、下ケース部113の下側に設けられる、平面視において八角形状を有する部分である。主要部170Aの中央には、2つの固定接点(図示省略)が設けられており、この2つの固定接点の上側には、ドーム状のメタルコンタクト172が重ねて設けられている。この2つの固定接点と、メタルコンタクト172とは、「押下検出部」の一例であるプッシュスイッチを構成する。なお、「押下検出部」の構成は、オンオフの切り換えが可能なプッシュスイッチに限定されるものではなく、押し下げ量に応じて徐々に出力値が変化するアナログ検出部であってもよい。また、主要部170Aには、第1抵抗体174および第2抵抗体176が設けられている。第1抵抗体174は、「スライド検出部」の一例であり、Y軸方向に直線状に延在して設けられており、第1スライダ151の下部に保持された第1摺動子152がY軸方向に摺動することにより、抵抗値が変化することにより、レバー120のY軸方向のスライド操作を検出する。第2抵抗体176は、「スライド検出部」の一例であり、X軸方向に直線状に延在して設けられており、第2スライダ153の下部に保持された第2摺動子154がX軸方向に摺動することにより、抵抗値が変化することにより、レバー120のX軸方向のスライド操作を検出する。延出部170Bは、主要部170Aからケース110の側方(図中Y軸負方向)へ延在する部分である。接続部170Cは、延出部170Bの先端に設けられており、外部のコネクタ等に接続される。FPC170は、レバー120の操作(押下操作およびスライド操作)に応じた操作信号を、外部へ向けて伝送する。FPC170は、帯状の導体配線(例えば、銅箔等)の両表面を、可撓性および絶縁性を有するフィルム状の素材(例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)等)で覆うことによって構成される。
【0026】
フレーム180は、ケース110の底面側の開口部を閉塞する、金属製且つ平板状の部材である。例えば、フレーム180は、金属板に対する各種加工方法(例えば、パンチング加工、折り曲げ加工等)がなされることによって形成される。フレーム180は、X軸正側の縁部およびX軸負側の縁部の各々に、垂直に立設された一対の係止片181を有する。フレーム180は、各係止片181が、上ケース部111の側面に設けられた爪部111C(
図2参照)と、中間ケース部112の側面に設けられた爪部112D(
図2参照)とに係合することにより、ケース110の下面との間にFPC170を挟み込んだ状態で、ケース110の下面に対して固定される。これにより、フレーム180は、上ケース部111と、中間ケース部112と、下ケース部113とを、互いに結合された状態(
図1参照)に固定する。
【0027】
(付勢部材160の詳細な構成)
次に、
図4~
図6を参照して、付勢部材160の詳細な構成について説明する。
図4は、一実施形態に係る付勢部材160の上面側を示す外観斜視図である。
図5は、一実施形態に係る付勢部材160の下面側を示す外観斜視図である。
図6は、一実施形態に係る付勢部材160および下ケース部113の外観斜視図である。
【0028】
図4~
図6に示すように、付勢部材160は、平面部161と、4本の弾性腕部162とを有する。
【0029】
平面部161は、付勢部材160の中央に設けられた、平面視において正方形状を有する部分である。平面部161の中央には、下方に突出した突起部161Aが形成されている。突起部161Aは、平面視において円形状を有する。突起部161Aは、プレス加工によって形成される。なお、平面部161のサイズは、レバー120のスライド操作範囲の全域をカバーするサイズとなっている。これにより、平面部161は、レバー120がいずれのスライド位置にあっても、レバー120によって押し下げ可能となっている。
【0030】
4本の弾性腕部162の各々は、平面部161から、平面部161の4辺の各々に対して平行に(すなわち、平面部161の外周に沿って)延在して設けられている、腕状(平面視において一定の幅を有する直線帯状)の部分である。各弾性腕部162は、その末端部が、平面部161の外周に連結されており、その先端部に、係合部162Aが設けられている。4本の弾性腕部162は、平面部161の中心に対して、点対称となるように設けられている。すなわち、4本の弾性腕部162の各々は、平面部161の対応する辺に対して、同一方向に延在して設けられている。
【0031】
図6に示すように、付勢部材160は、平面視において下ケース部113の開口113Aと略同サイズの略正方形状を有しており、下ケース部113の開口113A(「ケースの開口部」の一例)内に配置される。この際、
図6に示すように、4本の弾性腕部162の各々の係合部162Aが、開口113Aの4つ角の各々に内側に突出して設けられた台座部113Cの上面に載置され、さらに、係合部162Aの切り欠き162Bが、台座部113Cの上面から突出して設けられた位置決めピン113Dに係合する。これにより、付勢部材160は、下ケース部113によって4点で支持される。
【0032】
図3に示すように、平面部161の中央の上面には、レバー120の下端部が当接する。また、平面部161の中央の下側には、メタルコンタクト172が配置される。これにより、付勢部材160は、レバー120の押下操作がなされたときに、複数の弾性腕部162が弾性変形しながら、平面部161が略水平状態を維持したまま下方に移動して、平面部161の突起部161Aの下面によって、プッシュスイッチを構成するメタルコンタクト172を押下する。これにより、メタルコンタクト172が凹状に弾性変形し、メタルコンタクト172を介して、FPC170に設けられた2つの固定接点が電気的に接続し、FPC170の接続部170Cから、押下操作に応じた操作信号(スイッチオン信号)が出力されることとなる。そして、付勢部材160は、複数の弾性腕部162の弾性力により、平面部161の上面において、レバー120に対して上方への復帰力を付与する。これにより、付勢部材160は、レバー120の押下操作が解除されたときに、レバー120を初期位置(
図3に示す上限位置)に復帰させることができる。
【0033】
なお、レバー120の押下操作がなされていない初期状態において、レバー120は、付勢部材160の平面部161によって上方に付勢されており、レバー120の基部122が、保持部材130の貫通孔133の大径部133Bの天井面に押し当てられている。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120の押下操作がなされていない初期状態において、レバー120の上下方向のがたつきを抑制することができる。
【0034】
ここで、一実施形態に係る多方向入力装置100は、保持部材130によってレバー120を上下方向に移動可能に保持し、且つ、付勢部材160の平面部161を介して、メタルコンタクト172を押下する構成を採用しているため、レバー120のスライド操作がなされた状態(すなわち、レバー120および保持部材130が初期位置から水平方向にスライド移動している場合)において、レバー120の押下操作がなされた場合であっても、レバー120が保持部材130に対して相対的に下方に移動して、当該レバー120の底部によって、付勢部材160の平面部161を介して、メタルコンタクト172を押下することができる。
【0035】
特に、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160が、4本の弾性腕部162によって平面部161を4点で弾性支持する構成を採用しているため、4本の弾性腕部162を弾性変形させながら、平面部161を略水平状態を維持したまま下方へ移動させることができ、よって、レバー120のスライド位置に依らず、略同等の操作荷重で、メタルコンタクト172を押下することができる。
【0036】
さらに、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160が、レバー120から受けた操作荷重を、平面部161の中央に形成されている突起部161Aに集中させることができるため、レバー120のスライド位置に依らず、略同等の操作荷重で、突起部161Aによってメタルコンタクト172をより確実に押下することができる。
【0037】
また、
図4~
図6に示すように、複数の弾性腕部162の各々は、係合部162Aの高さ位置を異ならせるための段差部162Cを有する。本実施形態では、一例として、複数の弾性腕部162の各々は、段差部162Cにより、係合部162Aの高さ位置が高められている。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、弾性腕部162が段差部を有しない構成とするよりも、弾性腕部162の長さ(すなわち、ばね長)を長くすることが可能となっている。
【0038】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、複数の弾性腕部162の各々の先端部(係合部162A)が、下ケース部113の開口113Aを形成する内壁から内側に突出して設けられた台座部113Cに載置されることにより、当該台座部113Cによって吊持される。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160を上方から開口113A内に落とし込むだけで、付勢部材160が台座部113Cによって支持された状態にすることができる。このため、一実施形態に係る多方向入力装置100は、下ケース部113に対する付勢部材160の組み立て性を高めることができる。
【0039】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、複数の弾性腕部162が、平面部161の中心に対して点対称に配置されている。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120のスライド方向に依らず、略同等の操作荷重で、メタルコンタクト172を押下することができる。
【0040】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、各弾性腕部162が、平面部161の外周の対応する辺の長さと略等しい長さを有する。すなわち、一実施形態に係る多方向入力装置100は、各弾性腕部162が、平面部161における一の角部の近傍から、平面部161における他の角部の近傍まで、これら2つの角部を繋ぐ辺に沿って延在する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160の外形を大型化することなく、弾性腕部162の長さ(すなわち、ばね長)を最大限長くすることができる。
【0041】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160の平面部161が、レバー120の底部のスライド移動可能な範囲よりも大きい面積を有する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120を最大限スライドさせた場合であっても、平面部161を介して、メタルコンタクト172を押下することができる。
【0042】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160が、平面部161と複数の弾性腕部162とが一体的に形成されたものである。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、平面部161と複数の弾性腕部162とを、プレス加工によって一括して形成することができ、且つ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0043】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120のスライド操作を抵抗値の変化によって検出する第1抵抗体174および第2抵抗体176をさらに備える。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120のスライド操作方向およびスライド操作量を、比較的簡単な構成で高精度に検出することができる。
【0044】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、ケース110(下ケース部113)が、FPC170のメタルコンタクト172が設けられている領域と、FPC170の第1抵抗体174および第2抵抗体176が設けられている領域とを互いに隔離する隔壁部113Gを有する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、例えば、第1抵抗体174および第2抵抗体176の摺動によって生じる金属粉が、FPC170のメタルコンタクト172が設けられている領域内に入り込むことを抑制することができる。
【0045】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120によるスライド操作がなされた際に、保持部材130を、水平方向における初期位置に向かって付勢する水平付勢部材をさらに備える。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120によるスライド操作が解除された際に、レバー120を初期位置に復帰させることができる。
【0046】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、水平付勢部材は、環状コイルばね140である。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、少ない部品点数で、レバー120による全ての方向のスライド操作に対して、初期位置に向かう復帰力を付与することができる。また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、環状コイルばね140を用いたことにより、レバー120を初期位置に復帰させるための構成の大型化を抑制することができる。
【0047】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、保持部材130が、レバー120が挿通されることによってレバー120を上下方向に移動可能に保持する保持部131と、保持部131の外周面から水平方向における外側に拡大して設けられた鍔部132とを有し、環状コイルばね140は、保持部材130の鍔部132を取り囲んで配置されており、レバー120のスライド操作がなされた際に、保持部材130の鍔部132を、水平方向における初期位置に向かって付勢する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、少ない部品点数で、レバー120による全ての方向のスライド操作に対して、初期位置に向かう復帰力を付与することができる。また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、環状コイルばね140を用いたことにより、レバー120を初期位置に復帰させるための構成の大型化を抑制することができる。また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120が水平方向における初期位置にあるときに、全方向から保持部材130の鍔部132を加圧することにより、レバー120が水平方向における初期位置にある状態を安定的に維持することができる。
【0048】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、保持部材130の鍔部132の上下方向の移動が、ケース110によって規制されることにより、ケース110に対する保持部材130の上下方向の移動と、ケース110に対する保持部材130の傾倒とを規制する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120の直立状態を維持した状態のまま、レバー120の押下操作およびスライド操作を行うことができる。
【0049】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、プッシュスイッチとして、付勢部材160の平面部161によって押下されたときに、凹状に弾性変形することによって、FPC170の複数の固定接点を互いに導通状態にする、ドーム状のメタルコンタクト172を有する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、付勢部材160の弾性変形のみならず、メタルコンタクトの弾性変形によっても、レバー120の押下操作に対して、作動力および復帰力を呈することができる。
【0050】
また、一実施形態に係る多方向入力装置100は、メタルコンタクト172が、付勢部材160の平面部161の面積よりも小さい面積を有する。これにより、一実施形態に係る多方向入力装置100は、レバー120のスライド位置に依らず、レバー120から平面部161に加えられた押圧操作の操作荷重を、メタルコンタクト172に集中させることができ、よって、平面部161を介して、メタルコンタクト172をより確実に押下することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 多方向入力装置
110 ケース
110A 上部開口
110B 隙間
111 上ケース部
111A 開口
111B 位置決めピン
111C 爪部
112 中間ケース部
112A 開口
112B 位置決め孔
112C 位置決めピン
112D 爪部
113 下ケース部
113A 開口
113B 位置決め孔
113C 台座部
113D 位置決めピン
113E スライド溝
113F スライド溝
113G 隔壁部
120 レバー
121 レバー部
122 基部
130 保持部材
131 保持部
132 鍔部
133 貫通孔
133A 小径部
133B 大径部
140 環状コイルばね
151 第1スライダ
151A 開口部
152 第1摺動子
153 第2スライダ
153A 開口部
154 第2摺動子
155 第3スライダ
155A 脚部
155B 開口部
160 付勢部材
161 平面部
161A 突起部
162 弾性腕部
162A 係合部
162B 切り欠き
162C 段差部
170 FPC
170A 主要部
170B 延出部
170C 接続部
172 メタルコンタクト
174 第1抵抗体
176 第2抵抗体
180 フレーム
181 係止片