(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】樹脂成型用の型
(51)【国際特許分類】
F16L 58/10 20060101AFI20241112BHJP
F16L 58/18 20060101ALI20241112BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F16L58/10
F16L58/18
B29C39/26
(21)【出願番号】P 2021097835
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 知広
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大志郎
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123904(JP,A)
【文献】実開昭57-130086(JP,U)
【文献】特開昭62-031794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 58/10
F16L 58/18
B29C 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管接続部材に接続された管部材の雄ネジ部が露出する部分である余ねじ部を封止する樹脂を前記余ねじ部に付ける際に用いられる樹脂成型用の型であって、
前記管部材の外径に対応する第1の内径を有する第1の円筒部と、
前記管接続部材の外径に対応する第2の内径を有する第2の円筒部と、
前記第1の円筒部と前記第2の円筒部との間を接続する円錐台状の筒部と、を有し、
前記第1の円筒部及び前記第2の円筒部の一方の外径は他方の外径より小さく、
前記型のうち、前記一方の外径よりも大きい外径を有する部分において、前記管部材の周方向に並ぶように複数の貫通孔が形成され、外表面と内表面とを繋ぐように形成された切込み部を有
し、
前記型は、透光性を有すると共に、前記第2の円筒部の周方向に基準情報が表されている、
樹脂成型用の型。
【請求項2】
前記型は、力を加えると変形し、当該力を除くと元の形状に戻る弾性変形性を有する、
請求項
1に記載の樹脂成型用の型。
【請求項3】
前記複数の貫通孔は、前記管部材の周方向に、当該周の中心点を基準に、略60度から略90度の間隔で配置される、
請求項1
又は2に記載の樹脂成型用の型。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記第2の円筒部と前記円錐台状の筒部とに跨って形成されている、
請求項1乃至
3のいずれか一つに記載の樹脂成型用の型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型用の型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、都市ガス等の各種媒体は、供給元と消費場所との間に配管を設置し、当該配管を通じて供給されている。
【0003】
配管としては、例えば金属製の管や、金属管を樹脂で被覆した管が用いられている。そして、配管の設置場所や、配管に用いる管の長さ等に応じて、管接続部材を用い、管同士を接続することで配管が形成されている。
【0004】
管部材を管接続部材に接続する場合、管部材の管接続部材と接続する部分、及び管接続部材の管部材と接続する部分には、それぞれかみ合うようにねじを切り、該ねじにより管部材を管接続部材に固定する方法が用いられている。そして、管部材を管接続部材に接続した際に、管部材に切ったねじ部は管接続部材に完全には覆われておらず、露出したねじ部、すなわち余ねじ部が生じていた。配管は都市ガスなどの気体を供給している場合に、老朽化するなどの所定の原因が生じた場合には、余ねじ部から当該気体が漏れる可能性が存在する。このため、余ねじ部は、任意の部材で覆うのが好ましい。
【0005】
特許文献1には、腐食を防止するために、余ねじ部を樹脂で覆う技術が提案されている。樹脂で余ねじ部を覆うことで、腐食を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される従来技術は、腐食を防止するための技術であるため、余ねじ部のみならず、管接続部材との一部も樹脂封止している。このため、管接続部材よりも樹脂部材の径が大きくなり、配管の妨げになる可能性がある。
【0008】
本発明の一態様は、配管の余ねじ部などの所定の領域を覆うための樹脂部材の径が大きくなるのを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂成型用の型は、管接続部材に接続された管部材の雄ネジ部が露出する部分である余ねじ部を封止する樹脂を余ねじ部に付ける際に用いられる樹脂成型用の型であって、管部材の外径に対応する第1の内径を有する第1の円筒部と、管接続部材の外径に対応する第2の内径を有する第2の円筒部と、第1の円筒部と第2の円筒部との間を接続する円錐台状の筒部と、を有し、第1の円筒部及び第2の円筒部の一方の外径は他方の外径より小さく、型のうち、一方の外径よりも大きい外径を有する部分において、管部材の周方向に並ぶように複数の貫通孔が形成され、外表面と内表面とを繋ぐように形成された切込み部を有し、前記型は、透光性を有すると共に、前記第2の円筒部の周方向に基準情報が表されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、配管の余ねじ部などの所定の領域を覆うための樹脂部材の径が大きくなるのを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る樹脂成型用の型を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る樹脂成型用の型を装着する対象となる、配管を例示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る樹脂成型用の型を装着した配管を例示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る樹脂成型用の型を装着した配管における、
図3(B)のA-A'線に沿った断面を示した図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る樹脂充填工具を例示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る樹脂成型用の型の貫通孔から、樹脂充填工具を用いて樹脂を注入した場合の樹脂の流れを示した図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る樹脂成型用の型を用いた樹脂封止工法の流れを示した図である。
【
図8】
図8は、樹脂が合流した後に、さらに樹脂が充填された場合における樹脂成型用の型100の概念を例示した図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る樹脂成型用の型を取り外した後の、配管を例示した図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る複数の樹脂成型用の型を用いた樹脂封止工法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0013】
本実施形態の樹脂封止工法は、管部材と、管接続部材との間に生じる余ねじ部(管部材に形成されたねじ部のうち管接続部材によって覆われていない部分)を樹脂封止する。また、本実施形態は、樹脂成型用の型として以下の形状を有すると共に、樹脂封止工法として以下の工程を有することができる。
【0014】
本実施形態の樹脂封止工法で用いる樹脂成型用の型について説明する。
図1は、本実施形態の樹脂成型用の型を示した斜視図である。
図1に示される樹脂成型用の型100は、第1の円筒部101と、第2の円筒部103と、円錐台状の筒部102と、で構成されている。
【0015】
本実施形態に係る樹脂成型用の型100は、塩化ビニル樹脂で形成する例について説明するが、力を加えると変形し、力を除くと元の形状に戻る弾性変形性を有する部材であればよい。
【0016】
さらに、本実施形態に係る樹脂成型用の型100を形成する部材は、透光性を有している(換言すれば、透明、又は半透明の部材とする)。本実施形態に係る樹脂成型用の型100は、透光性を有する部材で形成することで、管部材及び管接続部材に装着する際の位置決めを容易にできる。作業者は、管部材及び管接続部材に型100が装着された後であっても、型100を通して管部材及び管接続部材のそれぞれの配置を確認できるためである。さらには、充填している樹脂の状態の視認が可能となる。
【0017】
第1の円筒部101は、第1の開口部111を有する。第1の開口部111は、円形状であって、当該円形状で示された第1の内径D1は、管部材の外径に対応している。
【0018】
第2の円筒部103は、第2の開口部112を有する。第2の開口部112は、円形状であって、当該円形状で示された第2の内径D2は、管接続部材の外径に対応している。
【0019】
円錐台状の筒部102は、第1の円筒部101と第2の円筒部103との間を接続する。つまり、円錐台状の筒部102のうち一端は、第1の円筒部101と同じ内径を有し、円錐台状の筒部102のうち他端は、第2の円筒部103と同じ内径を有している。
【0020】
樹脂成型用の型100は、スリット(切込み部の一例)106が設けられている。スリット106は、一方の端部100Aから、他方の端部100Bまで連続しており、型100の外表面と内表面とを繋ぐように形成されている。樹脂成型用の型100は、弾性変形性を有すると共に、スリット106が設けられている。このため、樹脂成型用の型100は、スリット106から左右方向(周方向)に容易に拡げることが可能となる。これにより、樹脂成型用の型100は、管接続部材、及び管部材に容易に装着することができる。
【0021】
なお、本実施形態は、スリット(切込み部の一例)106を、複数の貫通孔104A、104B間の中央近傍に設けた例について説明するが、本実施形態はスリット(切込み部の一例)106の位置を、複数の貫通孔104A、104B間の中央近傍に制限するものではなく、樹脂成型用の型100を管接続部材及び管部材に装着可能な位置であればよい。
【0022】
樹脂成型用の型100は、円錐台状の筒部102及び第2の円筒部103に跨った複数の貫通孔104A、104Bが、筒部102及び第2の円筒部103の周方向に並ぶように形成されている。このように形成することで、余ねじ部を封止すると共に、封止に使用する樹脂の量を低減できる。本実施形態では、貫通孔104A、104Bを、円錐台状の筒部102及び第2の円筒部103に跨るように設ける例について説明するが、当該配置に制限するものではない。複数の貫通孔は、円錐台状の筒部102及び第2の円筒部103のうちいずれか一方以上に設けられればよく、円錐台状の筒部102及び第2の円筒部103に跨るように設ける他に、円錐台状の筒部102のみに設けてもよいし、第2の円筒部103のみに設けてもよい。
【0023】
つまり、樹脂成型用の型100は、余ねじ部を封止できるように、第1の円筒部101の外形よりも大きい外径を有する部分において、管部材の周方向に並ぶように複数の貫通孔(例えば、貫通孔104A、104B)が形成されればよい。第1の円筒部101の外形よりも大きい外径を有する部分とは、円錐台状の筒部102、第2の円筒部103、及び、円錐台状の筒部102且つ第2の円筒部103の跨った部分とが含まれる。
【0024】
なお、本実施形態は、管接続部材の外径に対応している第2の円筒部103の外形が、管部材の外径に対応している第1の円筒部101の外形よりも大きい場合について説明している。しかしながら、本実施形態は、このような形状に制限するものではなく、例えば、管部材の外径に対応している第1の円筒部の外径が、管接続部材の外径に対応している第2の円筒部の外径よりも大きい場合に適用してもよい。このような場合に適用した型では、第2の円筒部の外形よりも大きい外径を有する部分(例えば、円錐台状の筒部、第1の円筒部、及び、円錐台状の筒部且つ第1の円筒部の跨った部分)において、管部材の周方向に並ぶように複数の貫通孔が形成される。なお、他の構成については、本実施形態と同様として、説明を省略する。
【0025】
本実施形態に戻り、樹脂成型用の型100には、第2の円筒部103の周方向に基準線105A、105B(基準情報の一例)が形成されている。基準線105A、105Bは、管接続部材に対して、樹脂成型用の型100の位置を特定するために設けられた構造(情報)であって、余ねじ部の面積や、充填する樹脂の量等の実施態様に応じて定められる。換言すれば、基準線105A、105Bに従って、樹脂成型用の型100を装着することで、作業者の負担を軽減すると共に、適切に余ねじ部の封止や、充填に用いる樹脂の量の抑制等を実現できる。なお、基準線105Aに従って、樹脂成型用の型100を装着することは、例えば、管接続部材の端部を基準線105Aに一致させることを含む。
【0026】
上述した本実施形態の樹脂成型用の型100は、管接続部材に接続された管部材の雄ネジ部が露出する部分である余ねじ部を、樹脂部材で封止する際に用いる。次に、樹脂成型用の型100を装着する、管接続部材、及び管部材について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る樹脂成型用の型100を装着する対象となる、配管を例示した図である。
図2に示されるように、配管200は、管部材201と、管接続部材202とを有している。なお、管部材201の外径D
1は、第1の円筒部101の内径に対応し、管接続部材202の外径D
2は、第2の円筒部103の内径に対応している。
【0028】
管部材201は、例えば、金属管や、樹脂被覆金属管等の金属管を含む構成であることが好ましい。管接続部材202も同様に、例えば、金属製の管接続部材や、樹脂被覆された金属製の管接続部材等が考えられる。なお、管接続部材の形状は、どのような形状であってもよく、例えば、エルボー、チーズ、ソケット等の各種管継ぎ手の形状を用いてもよい。
【0029】
管部材201は、管接続部材202と接続する側の端部の外表面に、雄ネジが切られている。一方、管接続部材202は、管部材201と接続する側の端部202Aの内表面に、(図示しない)雌ネジが切られている。そして、作業者は、管部材201の雄ネジが切られた部分を、管接続部材202の雌ネジが切られた部分にねじ込むことで、管部材201及び管接続部材202を接続して、配管200を形成できる。
【0030】
管部材201に形成された雄ネジが切られた領域は、全ての領域が管接続部材202にねじ込まれるわけではないため、ねじ込まれない領域である余ねじ部203が生じる。
【0031】
そこで、本実施形態では、樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止工法によって、余ねじ部203を覆うように樹脂封止を行う。
図2に示されるように、樹脂成型用の型100の貫通孔104A、104Bが、余ねじ部203の外周方向に存在するように、樹脂成型用の型100を、管部材201及び管接続部材202に装着する。これにより、樹脂成型用の型100は、余ねじ部203を樹脂封止する精度を向上させて、余ねじ部203が露出することを抑制できる。
【0032】
なお、
図2では管接続部材202の一方の端部202Aにのみ管部材201を接続した例を示しているが、(図示しない)他方の端部も他の管部材を接続できる。この場合、管接続部材202の他方の端部に接続された管部材の余ねじ部も、本実施形態の樹脂封止工法により同様に樹脂封止できる。
【0033】
なお、本実施形態は、樹脂封止工法の適用を、
図2に示した管部材201及び管接続部材202の構成を有する配管200に制限するものではない。つまり、管部材及び管接続部材の接続された部分に余ねじ部が生じていれば、樹脂封止工法の適用の対象となる。
【0034】
次に、配管200に樹脂成型用の型100を装着した状況について説明する。
図3は、樹脂成型用の型100を装着した配管200を例示した図である。
図3(A)に示される例は、配管200の側面方向(X軸方向)から見た図であって、
図3(B)に示される例は、配管200の断面方向(Z軸方向)から見た図である。
図4は、樹脂成型用の型100を装着した配管200における、
図3(B)のA-A'線に沿った断面を示した図である。
【0035】
図3(A)に示される例では、樹脂成型用の型100を、管部材201及び管接続部材202に装着する際、樹脂成型用の型100に設けられた貫通孔104A、104Bが、管部材201の余ねじ部203の外周側に来るように装着する。本実施形態にかかる樹脂成型用の型100は、透光性を有するため、当該装着の位置決めを容易に実現できる。
【0036】
作業者は、樹脂成型用の型100を装着した後、固定用テープ302、301を樹脂成型用の型100の両端部に巻き付ける。これにより、作業者は、樹脂成型用の型100を、管部材201及び管接続部材202に固定する。
【0037】
図4に示されるように、樹脂成型用の型100の第1の円筒部101の内周が、管部材201の外周に接すると共に、第2の円筒部103の内周が、管接続部材202の外周に接するように、樹脂成型用の型100が装着される。換言すれば、第1の円筒部101の内周の径が、管部材201の外周の径と同一、又は多少のクリアランスだけ大きい径であることが好ましく、第2の円筒部103の内周の径が、管接続部材202の外周の径と同一、又は多少のクリアランスだけ大きい径であることが好ましい。
【0038】
さらには、樹脂成型用の型100と、管部材201及び管接続部材202と、の間に生じる空洞部351が、管部材201の余ねじ部203を覆う領域になるように、樹脂成型用の型100が装着される。
【0039】
空洞部351は、配管200の周方向に繋がるように(リング形状になるように)形成されている。さらに、第2の円筒部103の内周の径が、管接続部材202の外周の径と略同一であることから、空洞部351のうち最外周部も管接続部材202の外周と略一致する。
【0040】
また、空洞部351は、貫通孔104A、104Bを介して、樹脂成型用の型100の外部とつながっている。換言すれば、貫通孔104A、104Bから樹脂を注入することで、余ねじ部203を覆う空洞部351に樹脂を充填できる。つまり、空洞部351は、配管200(管部材201及び管接続部材202)と、樹脂成型用の型100と、の間の樹脂の注入用の空間として機能する。また、空洞部351の最外周部が、管接続部材202の外周と略一致していることから、充填された樹脂の径が、管接続部材202の外周の径より大きくなることを抑制できる。
【0041】
図3(B)に示されるように、2つの貫通孔104A、104Bの間の角度は、配管200(管部材201)の中心点311を基準に、略90度になるように設けられている。なお、本実施形態は、2つの貫通孔104A、104Bの間の角度は、配管200(管部材201)の中心点311を基準に、略90度となる例について説明するが、略90度に制限するものではなく、略60度から略90度の間であればよい。
【0042】
本実施形態と異なる例として、複数の貫通孔の間隔が、配管の中心点を基準に、略180度とした場合、一方の貫通孔から注入された樹脂は、他方の貫通孔にたどり着いた時点で排出されるため、空洞部内に注入された樹脂の密度にバラつきが生じる可能性がある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係る樹脂成型用の型100は、貫通孔104A、104Bの間隔は、配管200(管部材201)の中心点311を基準に、例えば、略60度~略90度になるよう配置したことで、略180度の場合に比べ、密度のバラつきを抑制する効果が高いと考えられる。なお、貫通孔104A、104Bの位置に基づいた具体的な作用については後述する。
【0044】
図5は、本実施形態に係る樹脂充填工具を例示した図である。
図5に示される樹脂充填工具400は、ミキシングノズル401と、樹脂カートリッジ402と、トリガー(引き金)403と、を備えている。
【0045】
本実施形態の樹脂充填工具400は、トリガー403を引くことで、所定の量の樹脂を吐出する。このように、本実施形態の樹脂充填工具400は、樹脂を精度よく定量供給できる。
【0046】
また、本実施形態の樹脂カートリッジ402は、2種類の樹脂の各々を格納しているカートリッジとする。そして、樹脂カートリッジ402から出力された2種類の樹脂は、ミキシングノズル401によって混合された状態で吐出される。混合された状態で吐出された2種類の樹脂は、徐々に硬化していく。本実施形態では、硬化した樹脂によって、余ねじ部203を封止する。
【0047】
ところで、樹脂には様々な種類が存在する。例えば、樹脂のうち高粘度のものを適用した場合には、空洞部351内で樹脂がうまく回らず(隅々まで行き渡らず)、隙間なく充填するのが難しい可能性がある。さらには、高粘度の樹脂を用いると、樹脂の充填に時間を要するため、大口径の配管に適用した場合に、充填完了前に樹脂の硬化が開始する可能性がある。そこで、本実施形態では、低粘度アクリル系樹脂を用いることとした。なお、本実施形態では、一般的なアクリル系樹脂のうち、低粘度を用いるものとして説明するが、詳細な粘度については限定しないものとする。これは、2種類の樹脂を混合した段階で徐々に硬化していくためである。
【0048】
本実施形態は、低粘度であれば樹脂の種類を限定するものではなく、例えば管部材の材料等に応じて任意に選択することができる。本実施形態では、二液混合型の樹脂を用いることで、樹脂を注入する際に二液を混合し、硬化反応を開始することができるため、保存安定性、及び取扱い性を向上させることができる。
【0049】
ところで、一般的に、低粘度の樹脂を、狭い領域に充填する際、当該領域とつながっている開口部が一つのみの場合、当該開口部から樹脂を充填しようとすると、当該領域全体に粗密を生じさせることなく樹脂を行き渡らせるのが難しい。
【0050】
そこで、本実施形態に係る樹脂成型用の型100は、周方向に2つの貫通孔104A、104Bを設けた。つまり、一方の貫通孔(例えば、貫通孔104B)から樹脂を充填する場合に、他方の貫通孔(例えば、貫通孔104A)が空気孔として機能する。これにより、空洞部351に樹脂を行き渡らせるのが容易となる。
【0051】
次に、空洞部351内の樹脂の流れについて説明する。
図6は、本実施形態に係る樹脂成型用の型100の貫通孔104B(第1の貫通孔の例)から、樹脂充填工具400を用いて樹脂を注入した場合の樹脂の流れを示した図である。
【0052】
図6(A)に示される例は、樹脂充填工具400による樹脂の注入開始時を示している。なお、作業者は、貫通孔104Bから樹脂を注入する際に、樹脂充填工具400をX軸負方向(外周方向のうち、貫通孔104Aを向く方向とは反対の方向)に傾けた上で、樹脂を注入してもよい。
図6(A)に示されるように、樹脂501は、空洞部351において、樹脂成型用の型100の幅方向(Z軸方向)が略均一になった上で、矢印511方向(外周方向のうち、貫通孔104Aに近づく方向とは反対の方向)に進んでいく。なお、樹脂は、幅方向(Z軸方向)が略均一になった上で進むと説明したが、厳密には、樹脂成型用の型100に接している樹脂の両端部は、他の領域と比べて進行速度が遅くなる。
【0053】
図6(B)に示される例は、
図6(A)で示した注入開始時から所定の時間経過した後の、樹脂充填工具400による樹脂の注入継続時を示している。
図6(B)に示される例では、樹脂充填工具400による樹脂の注入で、矢印512方向(外周方向のうち、貫通孔104Aに近づく方向とは反対の方向)に進んでいく。なお、樹脂充填工具400による樹脂の注入によって、樹脂は、矢印512方向だけでなく、矢印513方向(外周方向のうち、貫通孔104Aが存在する方向)にも少しずつ流れていく。本実施形態では、当該樹脂の進みに応じて、空洞部351に樹脂が充填されていくことになる。
【0054】
本実施形態に係る樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止工法の流れについて説明する。
図7は、本実施形態に係る樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止工法の流れを示した図である。本実施形態にかかる樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止工法は、以下に示す手順で行われる。なお、本実施形態で示した樹脂封止工法の手順を行う主体は、作業者でもよいし、作業用のロボット等でもよい。
【0055】
まず、作業者又は作業用のロボットは、樹脂成型用の型100を、樹脂成型用の型100の貫通孔104A、104Bの近傍に余ねじ部203が配置されるように、管部材201及び管接続部材202に装着する(型装着工程の一例)。
【0056】
上述したように、樹脂成型用の型100には、第2の円筒部103の周方向に延びる基準線105A、105Bが形成されている。そこで、作業者又は作業用のロボットは、樹脂成型用の型100の基準線105A、又は基準線105Bが、管接続部材202の端部に合うように型100を装着してもよい。これにより、作業者又は作業用のロボットは、貫通孔104A、104Bの近傍に余ねじ部203が配置されるように型100を装着できる。さらには、作業者又は作業用のロボットは、基準線105A、又は基準線105Bに従った装着を行えばよいので、樹脂成型用の型100の位置決めは容易になる。そのため、この構成は、作業負担を軽減できる。
【0057】
次に、作業者又は作業用のロボットは、樹脂成型用の型100の複数の貫通孔104A、104Bのうち一方の貫通孔(例えば貫通孔104B)から樹脂を充填する(第1の樹脂充填工程の一例)。その際に、他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)は、空気孔として機能する。
【0058】
図7に示される例では、樹脂充填工具400のミキシングノズル401の先端が、貫通孔104Bに挿入された後、樹脂充填工具400のトリガー403が引かれたため、進行方向701(反時計回り)に所定の量の樹脂が充填されている。
【0059】
作業者又は作業用のロボットは、トリガー403を引き切り、一方の貫通孔(例えば貫通孔104B)から所定の量の樹脂を充填した後、樹脂の充填を停止する(樹脂充填停止工程の一例)。
【0060】
図7に示されるように、樹脂の充填を停止した後であっても、樹脂は進行方向702(反時計回り)に従って進んでいく。そして、樹脂の充填は停止しているため、所定の時間経過した後に、樹脂の動き(進行)は停止する。所定の時間は、樹脂の粘度や空洞部351の広さ、充填した樹脂の量等に応じた時間であって、例えば2秒~3秒等が考えられる。
【0061】
本実施形態は、所定の時間を予め設定された時間に制限するものではない。例えば、作業者又は作業用のロボットが、透光性を有する樹脂成型用の型100を介して樹脂の進行度合いを視認し、樹脂の進行が停止したと判断した場合に、次の処理に移ってもよい。
【0062】
そこで、作業者又は作業用のロボットは、樹脂の充填を停止させてから所定の時間(樹脂の移動する速度に応じた時間の一例)が経過した後、又は樹脂の進行が停止したと判断した場合に、再び一方の貫通孔(例えば貫通孔104B)から樹脂を充填する(第2の樹脂充填工程の一例)。
【0063】
図7に示されるように、樹脂の再充填によって、新たに充填された樹脂が、前回充填された樹脂を押し進める。これにより、樹脂は進行方向703に従って進んでいく。
図6で説明したように、樹脂の充填は周方向のうち一方向のみではなく、当該一方向の反対方向にも樹脂が充填されていく。つまり
図7で示される例では、貫通孔104Bから充填を行う際、進行方向701~703だけでなく、進行方向704にも徐々に樹脂が充填されていく。
【0064】
そして、本実施形態においては、進行方向701~703に従って進む樹脂と、進行方向704に従って進む樹脂と、が、空気孔として機能する他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)の近傍で合流する。
【0065】
ところで、当該樹脂の充填においては、周方向のうち一方向から進む樹脂と、周方向のうち他方向から進む樹脂と、の合流地点において気泡が生じることが多い。
【0066】
そこで、作業者又は作業用のロボットは、他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)の近傍で樹脂が合流した後、さらに、一方の貫通孔(例えば貫通孔104B)から樹脂を充填する。
【0067】
図8は、樹脂が合流した後に、さらに樹脂が充填された場合における樹脂成型用の型100の状態を概略的に例示した図である。
図8に示されるように、空洞部351に樹脂601が充填されて、他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)の近傍で樹脂が合流した後、さらに一方の貫通孔(例えば貫通孔104B)から樹脂を充填した場合に、他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)から、気泡を含んだ樹脂602が排出される。
【0068】
上述した樹脂封止工法において、樹脂の進行が停止するまで、樹脂の再充填を停止したのは、前回充填した樹脂が進みきっていないうちに、新たな樹脂を充填すると、進行方向701~703(反時計回り)に進まず、進行方向704(時計回り)に比較的多くの樹脂が流れていくためである。このような状況が生じた場合に、空気孔として機能していた他方の貫通孔(例えば貫通孔104A)の近傍で樹脂が合流するのが難しくなる。そこで、本実施形態の樹脂封止工法においては、上述した手順で進めることにした。なお、上記のは貫通孔104Bから樹脂を充填する場合について説明したが、貫通孔104A、104Bのうち、どちらから樹脂を充填してもよい。
【0069】
ところで、配管200の状況によっては、当該配管200の余ねじ部203から気体が漏れ出ている場合もある。このような場合であっても、上述した手順に従って、樹脂を形成できれば、当該気体の漏れを抑制できる。ただし、上述した手順を行う際には、配管200において気体の供給の停止させておくことが望ましい。これは、配管200から漏れ出る気体の圧力によって、樹脂と余ねじ部203との間に空隙が生じるのを抑制するためである。
【0070】
しかしながら、配管200の余ねじ部203から気体が漏れている場合であっても、気体の漏れで生じる内圧よりも、樹脂成型用の型100の外表面から高い圧力を加えることで、樹脂と余ねじ部203との間に空隙が生じるのを抑制できる。
【0071】
そこで、作業者又は作業用のロボットは、上述した樹脂の充填が終了した後、余ねじ部203から気体が漏れている状況であれば、樹脂成型用の型100の外表面の略全領域に、所定の圧力を加圧してもよい(加圧工程の一例)。当該所定の圧力は、配管から漏れる気体で生じる圧力より高い圧力であって、実施態様に応じて異なる値とする。また加圧する外表面の略全領域としたが、気体が漏れ出ている箇所等に応じて、加圧する領域を異ならせてもよい。また、加圧の手法は、どのような手法を用いてもよく、弾性変形性を有する樹脂成型用の型100を、作業者等の手で握ってもよいし、所定の用具を用いて加圧してもよい。
【0072】
そして、上述した樹脂封止工法を行い、樹脂が硬化した後、樹脂成型用の型100が、配管200から取り外される。当該取り外し工程を実施する場合において、樹脂成型用の型100を容易に離型できるように、樹脂成型用の型100の内表面に離型剤等を塗布しておいてもよい。
【0073】
図9は、本実施形態に係る樹脂成型用の型100を取り外した後の、配管を例示した図である。
図9に示されるように、樹脂成型用の型100を取り外した後の配管200は、管部材201と、管接続部材202とを有すると共に、管部材201と管接続部材202とを接続して余ねじ部203が生じていた箇所に、樹脂部材700が形成されている。
【0074】
図9に示されるように、樹脂部材700は、円錐台状であって、一方の端部の径の長さが長さD
2であって、他方の端部の径の長さが長さD
1となる。つまり、本実施形態は、樹脂成型用の型100が上述した形状を備えることで、樹脂部材700の径が管接続部材202の径よりも長くなることを抑制している。
【0075】
(変形例)
なお、上述した本実施形態では、樹脂成型用の型100を用いて、配管200の余ねじ部203を樹脂封止する例について説明した。しかしながら、樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止を、管部材201と管接続部材202との間の余ねじ部203の封止のみに制限するものではなく、配管の途中の所定の領域を、複数の樹脂成型用の型100を用いて樹脂封止することに適用することも可能である。
【0076】
図10は、本変形例に係る、複数の樹脂成型用の型100を用いた樹脂封止工法を例示した図である。
図10に示されるように、本変形例における樹脂封止工法においては、管部材に存在する所定の領域を樹脂封止するために、以下の手順で処理を進める。
【0077】
まず、作業者又は作業用のロボットは、複数の樹脂成型用の型100_1、100_2を、管部材800に装着する際に、複数の樹脂成型用の型100_1、100_2の各々の、第2の円筒部103の端部同士が接するように装着するとともに、第2の円筒部103の端部同士が接することで生じる複数の型100_1、100_2の内部の空洞部に、樹脂封止の対象である所定の領域が覆われるように装着する(型装着工程の一例)。なお、所定の領域は、どのような領域でもよく、例えば腐食した箇所などが考えられる。その際に、樹脂成型用の型100_1を固定用テープ301_1、302_1で固定し、樹脂成型用の型100_2を固定用テープ301_2、302_2で固定する。
【0078】
その後、作業者又は作業用のロボットは、複数の樹脂成型用の型100_1、100_2の複数の貫通孔104A_1、104B_1、104A_2、104B_1の各々から樹脂を充填する(樹脂充填工程の一例)。なお、樹脂の充填手順は、複数の型100_1、100_2の両端部を合わせることで生じた空洞部を樹脂で充填できれば、どのような充填手法を用いてもよい。
【0079】
本変形例では、複数の樹脂成型用の型100_1、100_2を複数利用することで、管部材の所定の領域の樹脂封止ができる。これによって、1種類の樹脂成型用の型100_1、100_2で様々な樹脂封止を実現できるので、作業性を向上させることができる。
【0080】
本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、塩化ビニル等の弾性変形性を有する部材で形成した場合について説明したが、当該部材に制限するものではなく、弾性変形性を有さない硬質な材料を用いてもよい。この場合、樹脂成型用の型を、管接続部材、及び管部材に装着するために、切り込み部を備えたうえで、ヒンジなどの開閉可能な機構を備えた形状が考えられる。
【0081】
本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、複数の貫通孔の間隔を、中心点を基準に略60度~略90度になるよう配置した例である。しかしながら、複数の貫通孔の間隔を、略60度~略90度に制限するものではない。つまり、複数の貫通孔が、樹脂成型用の型の周方向に配置されていれば、一方の貫通孔で充填し、他方の貫通孔が空気孔として機能するため、樹脂の充填を容易にすることができる。
【0082】
本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、透光性を有することで、作業者又は作業用のロボットは、樹脂の進行度合いを視認できるので、樹脂の再充填を行うタイミングを把握できる。これによって、本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、作業負担を軽減できる。なお、本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、透光性を有する部材に制限するものではなく、不透明の部材であってもよい。当該不透明の部材であっても予め充填の停止時間(所定時間の一例)を定めておくことで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
さらには、樹脂成型用の型は、透光性を有すると共に、基準線が形成されているため、樹脂成型用の型を装着する際の位置決めを容易にできる。これによって、作業負担を軽減できる。
【0084】
本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型は、弾性変形性を有する部材で形成された。これによって、上述した樹脂成型用の型の外表面から加圧を行うことで、配管から気体が漏れ出ている場合でも樹脂封止を行うことができる。さらには、作業スペースが狭い場合であっても、樹脂成型用の型100を変形させながら、管部材201と管接続部材202とに樹脂成型用の型100を装着できるので、作業性を向上させることができる。
【0085】
本実施形態及び変形例では、樹脂成型用の型の貫通孔が、上述した間隔で配置されているため、一方の貫通孔で充填した場合に、他方の貫通孔を空気孔として機能させると共に、樹脂の合流点の近傍に他方の貫通孔が設けられている。これによって、気泡の含んだ樹脂を排出することで、形成される樹脂部材の品質の向上を実現できる。さらには、樹脂成型用の型が、上述した形状を備えているため、形成された樹脂部材の径が、管接続部材の径より大きくなることを抑制できる。これにより、樹脂部材が配管の妨げになるのを抑制できる。
【0086】
したがって、本実施形態及び変形例に係る樹脂成型用の型、及び樹脂成型用の型を用いた樹脂封止工法においては、余ねじ部などの所定の領域の樹脂封止の精度を向上すると共に、成型された樹脂部材が管接続部材等よりも径が大きくなるのを抑止できる。これにより、作業スペースの効率的な利用と、作業負担の軽減を実現できる。
【0087】
以上、本発明に係る樹脂成型用の型、及び樹脂成型用の型を用いた樹脂封止工法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0088】
100、100_1、100_2 樹脂成型用の型
101 第1の円筒部
102 円錐台状の筒部
103 第2の円筒部
104A、104B、104A_1、104B_1、104A_2、104B_2 貫通孔
105A、105B 基準線
106 スリット
111 第1の開口部
112 第2の開口部
200 配管
201、800 管部材
202 管接続部材
203 余ねじ部
301、302、301_1、302_1、301_2、302_2 固定用テープ
400 樹脂充填工具
401 ミキシングノズル
402 樹脂カートリッジ
403 トリガー(引き金)
700 樹脂部材