(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】バッテリーパックの充電制御方法およびこれを利用するバッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241112BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/04 L
(21)【出願番号】P 2023565475
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(86)【国際出願番号】 KR2022021601
(87)【国際公開番号】W WO2023132563
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0002136
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェオム、インチェオル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナリ
(72)【発明者】
【氏名】イン、ジェオンヒェオン
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/166087(WO,A1)
【文献】特開2012-200781(JP,A)
【文献】国際公開第2016/113791(WO,A1)
【文献】特開2010-40499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0256961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックと、
前記バッテリーパックに対する充電目標SOC(State of Charge)および前記バッテリーパックの温度に基づいて充電率を導出し、前記複数のバッテリーセルのセル電圧のうちのいずれか一つと前記充電目標SOCに対応するOCV(Open Circuit Voltage)との間の誤差電圧に基づいたPID制御を通じて前記充電率を補償した補償充電率を生成するバッテリー管理システムと、を含むバッテリーシステム。
【請求項2】
前記バッテリー管理システムは、
前記誤差電圧に基づいた比例値、積分値、および微分値を生成してPID値を導出し、
前記充電率に前記PID値を掛けて前記補償充電率を生成する、請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項3】
前記バッテリー管理システムは、
前記比例値、前記積分値、および前記微分値を合算して前記PID値を導出する、請求項2に記載のバッテリーシステム。
【請求項4】
前記バッテリー管理システムは、
複数の充電目標SOCのそれぞれに対して、複数の前記バッテリーパックの温度のそれぞれに対応する充電率が定義された充電率マップを含み、
前記充電目標SOCおよび前記バッテリーパックの温度を受信し、前記充電率マップから前記受信した充電目標SOCおよび前記バッテリーパックの温度に対応する前記充電率を導出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーシステム。
【請求項5】
前記バッテリー管理システムは、
SOC対OCV変換関数を利用して前記充電目標SOCに対応する前記OCVを生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーシステム。
【請求項6】
前記バッテリー管理システムは、
前記OCVから前記複数のバッテリーセルのセル電圧のうちの最高セル電圧を差し引いて前記誤差電圧を生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーシステム。
【請求項7】
前記複数のバッテリーセルにおいて、p個の並列連結されたバッテリーセルグループがs個直列連結された場合、
前記バッテリー管理システムは、前記補償充電率にpを掛けて変調充電率を生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーシステム。
【請求項8】
バッテリー管理システムが制御する複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックの充電制御方法において、
前記バッテリーパックに対する充電目標SOCおよび前記バッテリーパックの温度に基づいて充電率を導出する段階と、
前記複数のバッテリーセルのセル電圧のうちのいずれか一つと前記充電目標SOCに対応するOCVとの間の誤差電圧を生成する段階と、
前記誤差電圧に基づいたPID制御を通じて前記充電率を補償した補償充電率を生成する段階と、を含むバッテリーパックの充電制御方法。
【請求項9】
前記補償充電率を生成する段階は、
前記誤差電圧に基づいた比例値、積分値、および微分値を生成する段階と、
前記比例値、前記積分値、および前記微分値を合算してPID値を導出する段階と、
前記充電率に前記PID値を掛けて前記補償充電率を生成する段階をと、含む、請求項8に記載のバッテリーパックの充電制御方法。
【請求項10】
前記充電率を導出する段階は、
前記充電目標SOCおよび前記バッテリーパックの温度を受信する段階と、
充電率マップから前記受信した充電目標SOCおよび前記バッテリーパックの温度に対応する前記充電率を導出する段階と、を含む、請求項8または9に記載のバッテリーパックの充電制御方法。
【請求項11】
SOC対OCV変換関数を利用して前記充電目標SOCに対応する前記OCVを生成する段階をさらに含む、請求項8または9に記載のバッテリーパックの充電制御方法。
【請求項12】
前記誤差電圧を生成する段階は、
前記OCVから前記複数のバッテリーセルのセル電圧のうちの最高セル電圧を差し引いて前記誤差電圧を生成する段階を含む、請求項8または9に記載のバッテリーパックの充電制御方法。
【請求項13】
前記複数のバッテリーセルにおいて、p個の並列連結されたバッテリーセルグループがs個直列連結された場合、
前記補償充電率にpを掛けて変調充電率を生成する段階をさらに含む、請求項8または9に記載のバッテリーパックの充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2022年1月6日付韓国特許出願第10-2022-0002136号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本開示は、バッテリーパックの充電制御方法およびこれを利用するバッテリーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
既存の急速充電方式は、SOCと温度により固定されたC-rateから構成された急速充電マップ(map)に基づいて動作する。例えば、BMS(Battery Management System)は、目標SOCと現在温度を初期条件として受信し、急速充電マップ上で初期条件に該当するC-rateを決定する。BMSは、決定したC-rate値を車両あるいはサイクラー(cycler)などに伝達し、車両あるいはサイクラーは伝達されたC-rateのとおりバッテリーセル(cell)あるいはモジュール(module)に電流を印加して急速充電を行う。このような方式の短所は、セル(cell)が退化することによって発生する影響を急速充電過程に考慮することができないということである。一般的にセル(cell)が退化する場合、内部抵抗が増加するため、初期生産時点に比べて同一のSOCでより大きい電圧を出力するようになる。これにより、急速充電過程でセル電圧は超えてはならない上限電圧を超えることがある。SOC段階に応じて上限電圧は異なり得る。
【0004】
セル退化による上限電圧超過現象は、急速充電回数が繰り返されることによって持続的に発生するようになってセル退化をより加速する悪影響を及ぼす。上限電圧を超えるセル電圧が発生する時、電流の大きさを一定の比率で減らそうとする改善方案がある。しかし、多様な要因により、セル退化による電圧変化を予測することは不可能であるため、電流の大きさを一定の比率で減らす方案は効果的でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
急速充電速度を最大限維持しながらもセル退化による上限電圧超過現象を事前に防止することができるバッテリーパックの充電制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一特徴によるバッテリーシステムは、複数のバッテリーセルを含むバッテリーパック、および前記バッテリーパックに対する充電目標SOC(State of Charge)および前記バッテリーパックの温度に基づいて充電率を導出し、前記複数のセル電圧のうちのいずれか一つと前記充電目標SOCに対応するOCV(Open Circuit Voltage)との間の誤差電圧に基づいたPID制御を通じて前記充電率を補償した補償充電率を生成するバッテリー管理システムを含むことができる。
【0007】
前記バッテリー管理システムは、前記誤差電圧に基づいた比例値、積分値、および微分値を生成してPID値を導出し、前記充電率に前記PID値を掛けて前記補償充電率を生成することができる。
【0008】
前記バッテリー管理システムは、前記比例値、前記積分値、および前記微分値を合算して前記PID値を導出することができる。
【0009】
前記バッテリー管理システムは、複数の充電目標SOCのそれぞれに対して、複数のバッテリーパックの温度のそれぞれに対応する充電率が定義された充電率マップを含み、前記充電目標SOCおよび前記バッテリーパック温度を受信し、前記充電率マップから前記受信した充電目標SOCおよび前記バッテリーパック温度に対応する前記充電率を導出することができる。
【0010】
前記バッテリー管理システムは、SOC対OCV変換関数を利用して前記充電目標SOCに対応する前記OCVを生成することができる。
【0011】
前記バッテリー管理システムは、前記OCVから前記複数のセル電圧のうちの最高セル電圧を差し引いて前記誤差電圧を生成することができる。
【0012】
前記複数のバッテリーセルにおいて、p個の並列連結されたバッテリーセルグループがs個直列連結された場合、前記バッテリー管理システムは、前記補償充電率にpを掛けて変調充電率を生成することができる。
【0013】
発明の他の特徴によるバッテリー管理システムが制御する複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックの充電方法は、前記バッテリーパックに対する充電目標SOC(State of Charge)および前記バッテリーパックの温度に基づいて充電率を導出する段階、前記複数のセル電圧のうちのいずれか一つと前記充電目標SOCに対応するOCV(Open Circuit Voltage)との間の誤差電圧を生成する段階、および前記誤差電圧に基づいたPID制御を通じて前記充電率を補償した補償充電率を生成する段階を含むことができる。
【0014】
前記補償充電率を生成する段階は、前記誤差電圧に基づいた比例値、積分値、および微分値を生成する段階、前記比例値、前記積分値、および前記微分値を合算して前記PID値を導出する段階、および前記充電率に前記PID値を掛けて前記補償充電率を生成する段階を含むことができる。
【0015】
前記充電率を導出する段階は、前記充電目標SOCおよび前記バッテリーパック温度を受信する段階、および充電率マップから前記受信した充電目標SOCおよび前記バッテリーパック温度に対応する前記充電率を導出する段階を含むことができる。
【0016】
前記バッテリーパックの充電制御方法は、SOC対OCV変換関数を利用して前記充電目標SOCに対応する前記OCVを生成する段階をさらに含むことができる。
【0017】
前記誤差電圧を生成する段階は、前記OCVから前記複数のセル電圧のうちの最高セル電圧を差し引いて前記誤差電圧を生成する段階を含むことができる。
【0018】
前記複数のバッテリーセルにおいて、p個の並列連結されたバッテリーセルグループがs個直列連結された場合、前記バッテリーパックの充電制御方法は、前記補償充電率にpを掛けて変調充電率を生成する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、セル電圧が上限電圧を超えないようにバッテリーパックの充電を制御する方法およびこれを利用するバッテリーシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態によるバッテリーシステムを示す図面である。
【
図2】一実施形態によるBMSの一部の構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態によるBMSの動作を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態によるBMSの構成を示すブロック図である。
【
図5】一実施形態によるバッテリーパックを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態は、充電中のセルの上限電圧超過現象を防止するために、充電目標SOCおよびセル電圧に基づいたPID制御を通じて充電速度を制御することができる。一実施形態に適用されるPID制御は、公知の制御方式であるが、一実施形態に適用されることによって、充電中のセルの上限電圧超過現象を防止することができる異質効果を提供することができる。PID(Proportional-Integral-Differential)制御は、ネガティブフィードバック(feedback)制御形態で、制御対象の出力値を測定し、これを制御目標に基づいた基準値と比較して誤差(error)を計算し、この誤差値を利用した比例項、積分項、および微分項を利用して制御対象を制御することに必要な制御値(以下、PID値)を算出することができる。一実施形態において、出力値はセル電圧であり、基準値は充電目標SOCに対応するOCV(Open Circuit Voltage)であり、PID値は充電速度に掛けられる加重値であり得る。比例項は現在状態での誤差値の大きさに比例する値であり、積分項は定常状態(steady-state)誤差を除去し、微分項は出力値の急激な変化に制約を加えてオーバーシュート(overshoot)を減らし、安定性(stability)を向上させることができる。
【0022】
充電速度を以下の充電率(C-rate)で示すことができる。充電率(C-rate)は、充電または放電時にバッテリーの定格容量に対する充電電流([A])または放電電流([A])の大きさを意味し、C-rateの単位はCを使用する。これを示すと下記数式1のとおりである。数式1から分かるように、バッテリーの定格容量の単位はC-rateに考慮されない。
【0023】
[数式1]
C-Rate[C]=(充電または放電電流)[A]/(バッテリーの定格容量)
【0024】
以下、添付した図面を参照して本明細書に開示された実施形態を詳細に説明するが、同一または類似の構成要素には同一または類似の図面符号を付与し、これについての重複説明は省略する。以下の説明で使用される構成要素に対する接尾辞「モジュール」および/または「部」は、明細書作成の容易さだけを考慮して付与されたり混用されたりするものであって、それ自体で互いに区別される意味または役割を有するものではない。また、本明細書に開示された実施形態を説明するに当たり、関連した公知技術に対する具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明確にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、添付した図面は、本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、添付した図面により本明細書に開示された技術的な思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0025】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素を説明することに使用され得るが、前記構成要素は前記用語により限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0026】
本出願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0027】
一実施形態による構成のうち、特定の制御条件で他の構成を制御する構成には、他の構成を制御するために必要な制御アルゴリズムを具体化した命令語の集合で具現されたプログラムが設置され得る。制御構成は、設置されたプログラムにより入力データおよび保存されたデータを処理して出力データを生成することができる。制御構成は、プログラムを保存する不揮発性メモリおよびデータを保存するメモリを含むことができる。
【0028】
以下、図面を参照して、一実施形態によるバッテリーパックの充電制御方法およびこれを利用するバッテリーシステムを説明する。
【0029】
図1は一実施形態によるバッテリーシステムを示す図面である。
【0030】
図1に示されているように、バッテリーシステム1は、電力変換装置2に連結されている。
【0031】
電力変換装置2は、バッテリーパック10の放電によりバッテリーパック10から供給される電力を外部負荷(例えば、電気自動車に駆動力を提供するモータ)に供給することができる。電気自動車は、内燃機関なしにモータのみで駆動される車両、内燃機関とモータを全て含むハイブリッド車両などを含む。
【0032】
電力変換装置2は、外部商用電源からバッテリーパック10を充電するための電力を供給することができる。電力変換装置2は、サイクラー(CYCLER)のようにバッテリー性能をテストするための充放電装置であり得る。このように、電力変換装置2は、バッテリーパック10の放電または充電によりバッテリーパック10から外部にまたは外部からバッテリーパック10に電力伝達を行う装置であり得る。
【0033】
バッテリーシステム1は、バッテリーパック10、BMS20、および第1および第2コンタクタ101、102を含む。
【0034】
第1コンタクタ101は、バッテリーパック10の正極P+と電力変換装置2との間に連結されており、BMS20の制御によりスイッチングする。第2コンタクタ102は、バッテリーパック10の負極P-と電力変換装置2との間に連結されており、BMS20の制御によりスイッチングする。BMS20は、第1および第2コンタクタ101、102のスイッチング動作を制御するスイッチング信号SC1、SC2を生成して第1および第2コンタクタ101、102に供給することができる。
【0035】
バッテリーパック10は、直列連結された複数のバッテリーセル10_1~10_n(nは2以上の自然数)を含む。
【0036】
BMS20は、複数のバッテリーセル10_1~10_nのそれぞれの両端に連結されている。BMS20は、モニタリング周期ごとに複数のバッテリーセル10_1~10_nのそれぞれのセル電圧を測定し、バッテリーパック10の電流(以下、バッテリーパック電流)および温度(以下、バッテリーパック温度)を測定することができる。複数のバッテリーセル10_1~10_nの温度はバッテリーパック温度に従うことができる。しかし、発明がこれに限定されるのではなく、バッテリーパック10内に複数の温度センサーを配置し、BMS20は複数の温度センサーから獲得される温度情報に基づいて複数のバッテリーセル10_1~10_nのそれぞれに対する温度を推定することができる。以下の説明でバッテリーパック温度はバッテリーセル温度に代替され得る。
【0037】
電流センサー21は、バッテリーパック電流IBを測定し、測定したバッテリーパック電流に関する情報をBMS20に伝送することができる。
【0038】
温度センサー22は、バッテリーパック温度を測定し、バッテリーパック温度に関する情報をBMS20に伝送することができる。
【0039】
BMS20は、複数のセル電圧に基づいて複数のバッテリーセル10_1~10_nに対するセルバランシングを制御および遂行することができる。BMS20は、複数のバッテリーセル10_1~10_nの複数のセル電圧、測定されたバッテリーパック10に関する情報(バッテリーパック電流、バッテリーパック温度など)に基づいてバッテリーパック10のSOC(State of Charge)、SOH(State of Health)、SOP(State of Power)などを推定することができる。
【0040】
BMS20は、バッテリーパック10に対する充電目標SOC、複数のセル電圧、およびバッテリーパック温度に基づいて充電率を決定することができる。充電目標SOCは、バッテリーシステム1が電気自動車に装着された場合、電気自動車を制御する電子制御回路からCAN通信を通じてBMS20に伝送され得る。または、バッテリー性能テストのためにユーザーがインターフェースを通じてBMS20に充電目標SOCを伝送することができる。
【0041】
BMS20は、充電目標SOCおよびバッテリーパック温度に基づいて充電率を設定したマップ(以下、充電率マップ)を含むことができる。充電率マップには、複数の充電目標SOCのそれぞれに対して、複数のバッテリーパック温度のそれぞれによる充電率が定義されている。BMS20は、充電目標SOCに対応する目標OCVを導出することができる。BMS20は、目標OCVと複数のセル電圧のうちの一つのセル電圧との間の差である誤差電圧をモニタリング周期ごとに生成し、モニタリング周期ごとに誤差電圧に基づいてPID値を導出し、充電目標SOCおよびバッテリーパック温度に基づいて決定した充電率に導出したPID値を掛けて補償充電率を生成することができる。
【0042】
BMS20は、電力変換装置2に補償充電率を伝送する。電力変換装置2は、補償充電率によりバッテリーパック10に電力を供給することができる。BMS20は、モニタリング周期ごとに前述したPID値の導出および補償充電率の生成を繰り返すことができる。
【0043】
図2は一実施形態によるBMSの一部の構成を示すブロック図である。
【0044】
図3は一実施形態によるBMSの動作を示すフローチャートである。
【0045】
図2には、BMS20の構成はPID値を導出して補償充電率を生成することに必要な構成のみが示されている。
【0046】
BMS20は、充電率導出部21、OCV変換部22、差し引き部23、比例部24、積分部25、微分部26、合算部27、および掛け算部28を含む。BMS20を構成する構成21-28のそれぞれは、当該機能を行うためのモジュールであって、当該機能を行うための制御命令を含むプログラムが当該モジュールに設置され得る。充電率導出部21、OCV変換部22、差し引き部23、比例部24、積分部25、微分部26、合算部27、および掛け算部28のそれぞれは、設置されたプログラムに基づいて動作して入力による出力を生成することができる。
【0047】
充電率導出部21は、充電率マップを保存している。充電率導出部21は、充電目標SOCおよびバッテリーパック温度を受信し、充電目標SOCおよびバッテリーパック温度に基づいた充電率cr1を充電率マップから導出する(S1)。
【0048】
OCV変換部22は、SOC対OCV変換関数を具現したプログラムを含み、充電目標SOCを受信すると、プログラムを利用して充電目標SOCに対応するOCVを生成することができる(S2)。
【0049】
差し引き部23は、OCVからセル電圧vcを差し引いて誤差電圧veを生成することができる(S3)。セル電圧vcは、複数のセル電圧のうちの最も高いセル電圧(以下、最高セル電圧)であり得る。複数のセル電圧の間には差があり得、複数のセル電圧のうちの最高セル電圧より低いセル電圧を基準としてPID値を導出する場合、最高セル電圧を有するセルに対して過充電が発生することがある。これは当該セルのセル電圧が過電圧となる原因になり得る。
【0050】
PID値を導出するための比例部24、積分部25、および微分部26は、誤差電圧veをモニタリング周期ごとに受信することができる。PID値を導出するための比例パラメータ、積分パラメータ、および微分パラメータは、実験的な方法を利用したチューニングを通じて設定され得る。
【0051】
比例部24は、誤差電圧veに所定の比例パラメータを掛けて比例値pvを生成する(S4)。
【0052】
積分部25は、誤差電圧veを時間に対して積分した結果に積分パラメータを掛けて積分値ivを生成する(S5)。この時、積分区間は、以前のモニタリング時点と今回のモニタリング時点との間の期間、つまり、モニタリング周期であり得る。つまり、積分部25は、誤差電圧veにモニタリング周期を掛けた結果に積分パラメータを掛けて積分値ivを生成することができる。
【0053】
微分部26は、誤差電圧veを時間に対して微分した結果に微分パラメータを掛けて微分値dvを生成する(S6)。この時、微分区間もモニタリング周期であり得る。つまり、微分部26は、今回のモニタリング時点での誤差電圧veから以前のモニタリング時点での誤差電圧を差し引いた値をモニタリング周期で割った値に微分パラメータを掛けて微分値dvを生成することができる。
【0054】
合算部27は、比例値pv、積分値iv、および微分値dvを合算してPID値を生成する(S7)。
【0055】
掛け算部28は、充電率cr1にPID値を掛けて補償充電率cr2を生成する(S8)。
【0056】
BMS20は、補償充電率cr2を電力変換装置2に伝送し、電力変換装置2は、補償充電率cr2による充電電流でバッテリーパック10を充電することができる。
【0057】
BMS20は、次回のモニタリング周期で複数のバッテリーセル10_1~10_nのセル電圧を測定し、複数のセル電圧のうちの最高セル電圧を導出して前述した動作を行うことができる。このように、BMS20は、モニタリング周期ごとに最高セル電圧を基準として補償充電率を生成することができる。ただし、発明がこれに限定されるのではなく、モニタリング周期の所定の整数倍ごとに補償充電率を生成することができる。
【0058】
図4は一実施形態によるBMSの構成を示すブロック図である。
【0059】
図5は一実施形態によるバッテリーパックを示す回路図である。
【0060】
図4に示された内容のうち
図2に示された内容と重複する内容は省略する。
【0061】
図4に示されているように、BMS20は、前述の実施形態に比べて変調部29をさらに含む。変調部29は、バッテリーパック10を構成する複数のバッテリーセルの構造により補償充電率を変調することができる。
【0062】
例えば、
図1では複数のバッテリーセル10_1~10_nが直列連結したものと示されているが、
図5に示されたバッテリーパック10'は、複数のバッテリーセル10_1~10_nのそれぞれに対して並列連結されたバッテリーセルを含むことができる。複数のバッテリーセル10_1~10_nのうちの一つと複数のバッテリーセル11_1~11_nのうちの一つとが並列連結されてバッテリーセルグループを形成し、並列連結されたバッテリーセルグループが複数個直列連結されている。
図5はp個の並列連結されたバッテリーセルグループがs個直列連結された場合の一例である(pおよびsは2以上の自然数)。
【0063】
図5に示されたバッテリーパック10'では、2個のバッテリーセル同士で並列連結されているため、充電電流は2個の経路に分かれて各セルに流れる。したがって、補償充電率が2倍とならなければならない。変調部29は、補償充電率cr2に2個の並列電流経路を考慮した比例定数2を掛けた変調充電率cr3を生成することができる。変調部29は、並列連結されたバッテリーセルの個数、つまり、pにより比例定数値を決定することができる。例えば、並列連結されたバッテリーセルの数が3である場合、比例定数は3であり得る。
【0064】
BMS20は、変調充電率cr3を電力変換装置2に伝送し、電力変換装置2は、変調充電率cr3による充電電流でバッテリーパック10を充電することができる。
【0065】
従来の急速充電方式は、一定のC-Rateで充電を行う途中、セル電圧が上限電圧を超得る場合に電流を減らす。これとは異なり、一実施形態による充電方法は、充電目標SOCをOCVに変換して、充電目標SOCのための充電での上限電圧として設定し、複数のバッテリーセル電圧とOCV間の誤差電圧に基づいたPID制御を行うことによって、セル電圧が上限電圧を超えることを防止することができる。
【0066】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるのではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者が多様に変形および改良した形態も本発明の権利範囲に属する。