(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】チーズ風味付与剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/21 20160101AFI20241112BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20241112BHJP
【FI】
A23L27/21 Z
A23L27/20 A
(21)【出願番号】P 2020001746
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小倉 利江
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121343(JP,A)
【文献】特開2018-110558(JP,A)
【文献】特開2014-166166(JP,A)
【文献】特表2007-519410(JP,A)
【文献】特表2013-529469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0127300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニン
、並びにフマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを含有するチーズ風味付与剤。
【請求項2】
(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの重量比((1):(2):(3))が、1:0.05~20:0.05~20である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
さらに、バリン及び/又はリジンを含有する、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
さらに、カルシウム感知受容体活性化物を含有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニン
、並びにフマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを混合する工程を含む、チーズ風味付与剤の製造方法。
【請求項6】
さらに、バリン及び/又はリジンを混合する、請求項
5記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、カルシウム感知受容体活性化物を混合する、請求項
5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の剤を、食品に添加することを特徴とする、食品にチーズ風味を付与する方法。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の剤が、
食品におけるメチオニンの濃度が、0.005~0.75重量%となるように食品に添加され、
食品におけるイソロイシン及び/又はロイシンの濃度が、0.01~4重量%となるように食品に添加され、及び
食品におけるフェニルアラニンの濃度が、0.005~1.25重量%となるように食品に添加される、請求項
8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ風味付与剤及びその製造方法、並びに食品にチーズ風味を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは多くの食品にチーズ味を付与する目的等のために使用されているが、コストが高く、供給面での不安もある。従って、チーズの代替となり得る、安価で、かつ供給不安のない、チーズの風味を付与する調味料(チーズ風味付与剤)が求められている。
【0003】
特許文献1には、バリン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン及びプロリンと、ラクトースと、酪酸とを共存させ、70~250℃で5分間~3時間加熱して得られる加熱混合物を、飲食品に添加することを特徴とする、飲食品に焼きチーズ風味を付与する方法が開示されている。
特許文献2には、(a)タンパク質を含有する乳製品反応混合物を乳酸生成微生物と接触させて、ペプチドおよび遊離アミノ酸を提供するステップと、(b)前記ペプチド及び遊離アミノ酸を脱アミノ化して、α-ケト酸を提供するステップとを含み、前記α-ケト酸を、前記反応混合物内でさらに代謝させて、チーズ風味化合物を提供する方法が開示されている。
特許文献3には、1または複数の、非動物供給源から単離及び精製されたタンパク質を含むコアセルベートを含む乳成分非含有チーズ代替品が開示されている。
しかし、後述の本発明の特定の成分を組み合わせて含有するチーズ風味付与剤及びその製造方法、並びに該剤を使用した、食品にチーズ風味を付与する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6017133号公報
【文献】特許第4732306号公報
【文献】特開2019-122388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安価で、かつ供給不安ない、チーズ風味付与剤及びその製造方法、並びに食品にチーズ風味を付与する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意検討をしたところ、後述の本発明の特定の成分を組み合わせて含有することで、安価で、かつ供給不安ない、チーズ風味付与剤を提供できることを見出し、該知見に基づいてさらに検討して、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記を提供する。
[1](1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンを含有するチーズ風味付与剤。
[2](1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの重量比((1):(2):(3))が、1:0.05~20:0.05~20である、上記[1]記載の剤。
[3]さらに、バリン及び/又はリジンを含有する、上記[1]又は[2]に記載の剤。
[4]さらに、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]さらに、カルシウム感知受容体活性化物を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の剤。
[6](1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンを混合する工程を含む、チーズ風味付与剤の製造方法。
[7]さらに、バリン及び/又はリジンを混合する、上記[6]記載の製造方法。
[8]さらに、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを混合する、上記[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9]さらに、カルシウム感知受容体活性化物を混合する、上記[6]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]上記[1]~[5]のいずれかに記載の剤を、食品に添加することを特徴とする、食品にチーズ風味を付与する方法。
[11]上記[1]~[5]のいずれかに記載の剤が、
食品におけるメチオニンの濃度が、0.005~0.75重量%となるように食品に添加され、
食品におけるイソロイシン及び/又はロイシンの濃度が、0.01~4重量%となるように食品に添加され、及び
食品におけるフェニルアラニンの濃度が、0.005~1.25重量%となるように食品に添加される、上記[10]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のチーズ風味付与剤は、チーズ等の高価で供給不安のある原料を使用しなくても製造することができるので、安価で、かつ供給不安なく、提供することができる。本発明のチーズ風味付与剤は、食品に添加することで、食品にチーズ風味を付与することができる。
本発明のチーズ風味付与剤の製造方法によれば、簡便に、本発明のチーズ付与剤を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のチーズ風味付与剤(以下、本発明の剤と略記する場合がある)は、(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン(すなわち、イソロイシン、ロイシン、又は、イソロイシン及びロイシン)、及び(3)フェニルアラニンを含有する。
【0010】
本発明の剤において、メチオニンの含有量は、例えば0.1~80重量%、好ましくは0.3~70重量%、より好ましくは0.5~60重量%、さらに好ましくは1~50重量%である。
本発明の剤において、イソロイシン及び/又はロイシンの含有量は、例えば0.1~90重量%、好ましくは0.3~85重量%、より好ましくは0.5~80重量%、さらに好ましくは1~75重量%である。
本発明の剤において、フェニルアラニンの含有量は、例えば0.1~80重量%、好ましくは0.3~70重量%、より好ましくは0.5~60重量%、さらに好ましくは1~50重量%である。
【0011】
本発明の剤において、イソロイシン及びロイシンを含有する場合、イソロイシンの含有量は、例えば0.1~90重量%、好ましくは0.3~85重量%、より好ましくは0.5~80重量%、さらに好ましくは1~75重量%であり、ロイシンの含有量は、例えば0.1~90重量%、好ましくは0.3~85重量%、より好ましくは0.5~80重量%、さらに好ましくは1~75重量%である。
【0012】
本発明の剤は、(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの重量比((1):(2):(3))が、例えば、1:0.05~20:0.05~20、好ましくは、1:0.1~15:0.1~15、より好ましくは、1:0.25~10:0.25~10、さらに好ましくは、1:0.5~5:0.5~5である。
【0013】
本発明の剤は、バリン及び/又はリジン(すなわち、バリン、リジン、又は、バリン及びリジン)を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の剤において、バリン及び/又はリジンの含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.01~50重量部、好ましくは0.075~25重量部、より好ましくは0.05~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0015】
本発明の剤において、バリン及び/又はリジンの含有量は、例えば0.1~80重量%、好ましくは0.3~75重量%、より好ましくは0.5~70重量%、さらに好ましくは1~65重量%である。
【0016】
本発明の剤において、バリン及びリジンを含有する場合、バリンの含有量は、例えば0.1~80重量%、好ましくは0.3~75重量%、より好ましくは0.5~70重量%、さらに好ましくは1~65重量%であり、リジンの含有量は、例えば0.1~80重量%、好ましくは0.3~75重量%、より好ましくは0.5~70重量%、さらに好ましくは1~65重量%である。
【0017】
本発明の剤は、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウム(すなわち、フマル酸一ナトリウム、酒石酸水素カリウム、又は、フマル酸一ナトリウム及び酒石酸水素カリウム)を含有することが好ましい。
【0018】
本発明の剤において、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムの含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.00001~2重量部、好ましくは0.0001~1重量部、より好ましくは0.0005~0.5重量部、さらに好ましくは0.001~0.1重量部である。
【0019】
本発明の剤において、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムの含有量は、例えば0.001~50重量%、好ましくは0.005~40重量%、より好ましくは0.01~30重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【0020】
本発明の剤は、カルシウム感知受容体活性化物を含有することが好ましい。
カルシウム感知受容体活性化物としては、例えば、γ-グルタミルバリルグリシン、グルタチオン高含有酵母エキス、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルタミン酸カルシウムが挙げられる。
本発明において用いられるグルタチオン高含有酵母エキスは、例えば、グルタチオンを0.1重量%以上含有する酵母エキスが挙げられる。そのようなグルタチオン高含有酵母エキスは、公知の方法(例えば、特願2018-537388に記載の方法)で製造することができ、また市販品(例えば、スーパー酵母エキス(商品名)、味の素社製)を用いることもできる。
【0021】
本発明の剤において、カルシウム感知受容体活性化物の含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.00001~10重量部、好ましくは0.00005~5重量部、より好ましくは0.0001~3重量部、さらに好ましくは0.0003~1重量部である。
【0022】
カルシウム感知受容体活性化物としてγ-グルタミルバリルグリシンを使用する場合、発明の剤において、γ-グルタミルバリルグリシンの含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.00001~10重量部、好ましくは0.00005~5重量部、より好ましくは0.0001~3重量部、さらに好ましくは0.0003~1重量部である。
カルシウム感知受容体活性化物としてグルタチオン高含有酵母エキスを使用する場合、発明の剤において、グルタチオン高含有酵母エキスの含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.0001~10重量部、好ましくは0.0005~5重量部、より好ましくは0.001~3重量部、さらに好ましくは0.005~1重量部である。
カルシウム感知受容体活性化物として乳酸カルシウムを使用する場合、発明の剤において、乳酸カルシウムの含有量は、「(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンの総量」1重量部に対して、例えば0.00001~20重量部、好ましくは0.0001~10重量部、より好ましくは0.005~5重量部、さらに好ましくは0.01~1重量部である。
【0023】
本発明の剤において、カルシウム感知受容体活性化物の含有量は、例えば0.00001~50重量%、好ましくは0.0001~50重量%、より好ましくは0.0001~30重量%、さらに好ましくは0.0005~20重量%、よりさらに好ましくは0.001~10重量%である。
【0024】
カルシウム感知受容体活性化物としてγ-グルタミルバリルグリシンを使用する場合、本発明の剤において、γ-グルタミルバリルグリシンの含有量は、例えば0.00001~10重量%、好ましくは0.00005~1重量%、より好ましくは0.000075~0.5重量%、さらに好ましくは0.0001~0.1重量%である。
カルシウム感知受容体活性化物としてグルタチオン高含有酵母エキスを使用する場合、本発明の剤において、グルタチオン高含有酵母エキスの含有量は、例えば0.001~50重量%、好ましくは0.01~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
カルシウム感知受容体活性化物として乳酸カルシウムを使用する場合、本発明の剤において、乳酸カルシウムの含有量は、例えば0.001~50重量%、好ましくは0.01~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
【0025】
本発明の剤としては、例えば、以下の態様が例示される。
メチオニン、イソロイシン、ロイシン、及びフェニルアラニンを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、イソロイシン、及びフェニルアラニンを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、ロイシン、及びフェニルアラニンを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、及びリジンを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、及びフマル酸一ナトリウムを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、及び酒石酸水素カリウムを含有するチーズ風味付与剤。
メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、及びカルシウム感知受容体活性化物(例えば、γ-グルタミルバリルグリシン、グルタチオン高含有酵母エキス、乳酸カルシウム)を含有するチーズ風味付与剤。
【0026】
本発明において、アミノ酸(メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、リジン)は、L-体、D-体及びDL-体のいずれであってもよいが、L-体が好ましい。
本発明におけるアミノ酸は、塩の形態であってもよい。医薬又は食品として許容される塩が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基との塩;塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0027】
本発明の剤は、後述するように、上記した成分を、混合することで製造することができる。
本発明の剤は、従来技術(例えば、前述の特許文献1~3)のような複雑な工程を必要とせずに、簡便な方法(混合)で製造できる点で有利である。
【0028】
本発明の剤は、チーズ風味を付与するための食品に添加する前に、上記した成分を予め混合した混合物であってもよく、上記した成分を、チーズ風味を付与するための食品に別々に添加して、食品中で混合したものであってもよい。
【0029】
本発明の剤は、本発明の目的を損なわない限り、上記した成分に加えて、食品添加物の分野において通常使用される基剤、添加物をさらに含有してもよい。
本発明の剤が含有し得る基剤としては、例えば、澱粉、デキストリン、シクロデキストリン、糖類、糖アルコール、蛋白質、ペプチド、無機塩類、有機酸類及びその塩、固形脂、二酸化ケイ素、酵母菌体、各種の粉末エキス類、水、並びにそれらの混合物等が挙げられる。添加物としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘安定剤、甘味料、酸味料、香辛料、着色料等が挙げられる。
本発明の剤の形態は特に制限されず、食品添加物の分野において通常使用される方法で、例えば、粉末状、微粒状、顆粒状、液体状、ゲル状、ペースト状等に製剤化してもよい。
【0030】
本発明はまた、本発明の剤の製造方法(以下、本発明の製造方法と略記する場合がある)にも関する。
本発明の製造方法は、(1)メチオニン、(2)イソロイシン及び/又はロイシン、及び(3)フェニルアラニンを混合する工程を含む。
本発明の製造方法においては、さらに、バリン及び/又はリジンを混合することが好ましい。
本発明の製造方法においては、さらに、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを混合することが好ましい。
本発明の製造方法においては、さらに、カルシウム感知受容体活性化物を混合することが好ましい。
上記した成分の説明、具体例は、本発明の剤について記載した成分の説明、具体例と同じである。
本発明の製造方法において上記した成分の使用量は、本発明の剤について記載した成分の含有量に準じて、設定することができる。本発明の製造方法において、本発明の目的を損なわない限り、上記した成分に加えて、食品添加物の分野において通常使用される基剤、添加物をさらに添加してもよい。
【0031】
本発明の製造方法において、上記した成分の混合の順番は特に限定されない。
本発明の製造方法において、混合方法は、特に限定されず、食品添加物の分野で一般的な方法で行うことができる。混合は、室温(例えば1~40℃)で行うことができる。
本発明の製造方法は、複雑な工程を必要とせず、簡便な方法である点で有利である。
【0032】
本発明はまた、本発明の剤を食品に添加することを特徴とする、食品にチーズ風味を付与する方法にも関する。
本明細書において、チーズ風味の「付与」とは、例えば、チーズ風味を有しない食品に、チーズ風味を新たに付与することだけでなく、チーズ風味を有する食品に、チーズ風味をさらに付与すること、すなわちチーズ風味を増強することも含む概念である。チーズ風味の有無や程度は、専門パネルによる官能評価(例えば、後述の実施例に示される官能評価等)によって評価できる。
【0033】
本発明の剤を添加し得る食品は、チーズ風味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されない。本発明において、「食品」は、経口で摂取し得るものを広く包含する概念であり、飲料や調味料等も包含される。
本発明の剤を添加し得る食品は、例えば、カルボナーラソース、ドレッシング、ホワイトソース、プロセスチーズ、中華まん、アイス、パン、焼き菓子、生菓子、飲料、カレー、シチュー等が挙げられる。
本発明の剤を添加し得る食品は、例えば、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、ダイエタリーサプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、医療用食品、メディカルフード等として提供されるものであってよい。
【0034】
本発明の剤を食品に添加する方法及び条件は特に限定されず、本発明の剤の形態や食品の種類等に応じて適宜設定できる。本発明の剤を食品に添加する時期は特に限定されず、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、食品の製造中、食品の完成後(例、食品の喫食直前、食品の喫食中等)等が挙げられる。食品を製造する前の食品原料に本発明の剤を添加してもよい。
【0035】
本発明の剤は、より好ましい効果を奏し得ることから、本発明の剤の各成分(メチオニン、イソロイシン及び/又はロイシン、フェニルアラニン、及び、任意に添加してもよい成分(バリン及び/又はリジン、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウム、カルシウム感知受容体活性化物))の食品における濃度(喫食時濃度(喫食%))が、以下の範囲になるように、食品に添加されることが好ましい。
本明細書中、「喫食時濃度」とは、食品を喫食する際における濃度をいう。例えば、食品が喫食に適した態様となるために水等で希釈することを必要とする濃縮物等である場合、該食品における食品添加物の喫食時濃度とは、喫食に適した態様となるために水等で希釈した後の食品における該食品添加物の濃度をいう。
【0036】
本発明の剤は、食品におけるメチオニンの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~1重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.005~0.75重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.01~0.75重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましく、0.02~0.6重量%となるように食品に添加されることがよりさらに好ましい。
本発明の剤は、食品におけるイソロイシン及び/又はロイシンの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.005~5重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.01~4重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.01~3重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましく、0.05~3重量%となるように食品に添加されることがよりさらに好ましく、0.1~3重量%となるように食品に添加されることが特に好ましい。
本発明の剤は、食品におけるフェニルアラニンの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~1.5重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.005~1.25重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.02~1.25重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましく、0.05~1重量%となるように食品に添加されることがよりさらに好ましい。
本発明の剤は、好適には、食品におけるメチオニンの濃度が0.005~0.75重量%(好ましくは、0.01~0.75重量%、より好ましくは、0.02~0.6重量%)となるように食品に添加され、食品におけるイソロイシン及び/又はロイシンの濃度が0.01~4重量%(好ましくは、0.01~3重量%、より好ましくは0.05~3重量%、さらに好ましくは、0.1~3重量%)となるように食品に添加され、及び、食品におけるフェニルアラニンの濃度が0.005~1.25重量%(好ましくは、0.02~1.25重量%、より好ましくは、0.05~1重量%)となるように食品に添加される。
【0037】
本発明の剤は、バリン及び/又はリジンを含有する場合、食品におけるバリン及び/又はリジンの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~5重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.01~3重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.1~2重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
【0038】
本発明の剤は、フマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムを含有する場合、食品におけるフマル酸一ナトリウム及び/又は酒石酸水素カリウムの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~5重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.005~2.5重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.01~1重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の剤は、カルシウム感知受容体活性化物を含有する場合、食品におけるカルシウム感知受容体活性化物の濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.000001~10重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.00001~5重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.0005~2.5重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.001~1重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の剤は、γ-グルタミルバリルグリシンを含有する場合、食品におけるγ-グルタミルバリルグリシンの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.000001~10重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.0005~5重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.001~1重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
本発明の剤は、グルタチオン高含有酵母エキスを含有する場合、食品におけるグルタチオン高含有酵母エキスの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~10重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.01~5重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.1~1重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
本発明の剤は、乳酸カルシウムを含有する場合、食品における乳酸カルシウムの濃度(好ましくは喫食時濃度)が、0.001~10重量%となるように食品に添加されることが好ましく、0.01~5重量%となるように食品に添加されることがより好ましく、0.1~3重量%となるように食品に添加されることがさらに好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例、試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
[試験例1]
下記表1-1、1-2の配合で、市販のカルボナーラソース(セブンプレミアム カルボナーラ:日本製粉社)に食品添加物(実施例1~4のチーズ風味付与剤、比較例1~6の添加物)を、各成分を個別に添加し、混合して、得られた混合物について官能評価を実施した。
官能評価はトレーニングされたパネル3名にて、以下の評価基準に従って実施した。結果を表1-1、1-2に示す。
(評価基準)
-:食品添加物無添加に対して、変化なし
+++:食品添加物無添加に対して、有用なチーズ風味付与の効果あり
+++++:食品添加物無添加に対して、非常に有用なチーズ風味付与の効果あり
【0043】
【0044】
【0045】
[試験例2]
下記表2の配合で、市販のカルボナーラソース(セブンプレミアム カルボナーラ:日本製粉社)に食品添加物(実施例1、5~9のチーズ風味付与剤)を、各成分を個別に添加し、混合して、得られた混合物について官能評価を実施した。
官能評価はトレーニングされたパネル3名にて、以下の評価基準に従って実施した。結果を表2に示す。
(評価基準)
-:コントロールに対して、変化なし
+++:コントロールに対して、有用なチーズ風味付与の効果あり
+++++:コントロールに対して、非常に有用なチーズ風味付与の効果あり
【0046】
【0047】
[試験例3]
下記表3の配合で、市販のカルボナーラソース(セブンプレミアム カルボナーラ:日本製粉社)に食品添加物(実施例1、10~12のチーズ風味付与剤)を、各成分を個別に添加し、混合して、得られた混合物について官能評価を実施した。
官能評価はトレーニングされたパネル3名にて、以下の評価基準に従って実施した。結果を表3に示す。
(評価基準)
-:コントロールに対して、変化なし
++:コントロールに対して、チーズ風味付与の効果あり
+++:コントロールに対して、有用なチーズ風味付与の効果あり
+++++:コントロールに対して、非常に有用なチーズ風味付与の効果あり
【0048】
【0049】
[試験例4]
下記表4の配合で、市販のカルボナーラソース(セブンプレミアム カルボナーラ:日本製粉社)に食品添加物(実施例13~18のチーズ風味付与剤)を、各成分を個別に添加し、混合して、得られた混合物について官能評価を実施した。
官能評価はトレーニングされたパネル3名にて、以下の評価基準に従って実施した。結果を表4に示す。
(評価基準)
-:食品添加物無添加に対して、変化なし
+:食品添加物無添加に対して、ややチーズ風味付与の効果あり
++:食品添加物無添加に対して、チーズ風味付与の効果あり
+++:食品添加物無添加に対して、有用なチーズ風味付与の効果あり
+++++:食品添加物無添加に対して、非常に有用なチーズ風味付与の効果あり
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のチーズ風味付与剤は、チーズの風味を付与する調味料として有用である。