(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20241112BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20241112BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20241112BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B65D30/02 ZAB
B65D30/16 A BRH
B65D33/25 A BSF
B32B27/32 E
B65D30/02 BSG
(21)【出願番号】P 2020045177
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】雨河 宏太朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171861(JP,A)
【文献】特開2018-202790(JP,A)
【文献】特開平09-094932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339498(US,A1)
【文献】国際公開第2013/161481(WO,A1)
【文献】特開2008-290406(JP,A)
【文献】特開2019-006421(JP,A)
【文献】再公表特許第2002/062572(JP,A1)
【文献】特開2005-329150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B65D 30/16
B65D 33/25
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルム層、インキ層、接着層、シーラント層が、この順に積層され、前記バリアフィルム層は密度0.940~0.980g/cm
3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材にガスバリア層を付加したガスバリアフィルムであり、前記シーラント層は、密度0.910~0.920g/cm
3、厚さ100~150μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂であ
る積層体と、前記シーラント層に溶着されたチャックと、から作製され、
前記チャックは、融点95~125℃、密度0.900~0.910g/cm
3の、低密度ポリエチレン樹脂または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の、単層で成形されてい
る、チャック付き自立性包装袋。
【請求項2】
前記バリアフィルム層に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、前記シーラント層のシール強度安定温度より30℃以上高い
、請求項1に記載のチャック付き自立性包装袋。
【請求項3】
前記バリアフィルムは、
前記高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材の一方の面に金属酸化物からなる蒸着層とガスバリア被膜層とをこの順序に積層してなり、前記ガスバリア被膜層は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含む
、請求項1または2に記載のチャック付き自立性包装袋。
【請求項4】
前記バリアフィルムは、
前記高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材と
前記蒸着層との間にアンカーコート剤を含有する密着層を有する
、請求項
3に記載のチャック付き自立性包装袋。
【請求項5】
前
記蒸着層は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含む
、請求項
3又は4に記載のチャック付き自立性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装材料を製袋して得られる自立性包装袋(スタンディングパウチ)に関し、主として単一素材の組み合わせからなり、ガスバリア性と再封止性を兼ね備えた、リサイクル性に優れた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂フィルムの積層体にアルミニウム箔等のガスバリア層を加えた包装材料を製袋加工して得られるガスバリア性包装袋が、各種食品や、トイレタリー用品等の収納容器として広く用いられている。
【0003】
ガスバリア層として、アルミニウム箔ではなく、ガスバリア性フィルムを用いたガスバリア性包装袋は、内容物の長期保存が可能であるばかりでなく、電子レンジによる直接加熱が可能であることから、食品用包装袋として広く普及しつつある。
【0004】
従来のガスバリア性包装袋は、耐熱性を有する基材フィルムと低温融着性を有するシーラント層とを少なくとも有する積層体を用いて製造されていた。耐熱性を有する基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムや、延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム、延伸ナイロン(ONy)樹脂フィルム等が用いられ、シーラント層としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂等のポリオレフィン系樹脂が多く用いられていた。
【0005】
しかし、これらの異種素材を組み合わせた軟包装材料は、廃棄後に分別するのが困難であるため、素材としてリサイクル使用することができないか、あるいは機械的に分別したとしても回収材料の純度を落とす結果となるため、処理方法としては、埋め立てるか焼却処理して熱エネルギーとして回収する方法が主流であった。
【0006】
近年、地球環境保護の必要性から、焼却処理(サーマルリサイクル)から、素材としてのリサイクル(マテリアルリサイクル)への気運が高まるにつれて、異種素材の組み合わせではなく、単一素材の組み合わせからなるモノマテリアル包装材料が注目を浴びるようになってきた。
【0007】
一方、包装材料として必要とされる性質としては、製袋適性、ガスバリア性等が挙げられる。製袋適性の中でも、ヒートシール適性は重要であり、安定したヒートシールを可能とするためには、基材層とシーラント層の溶融温度差が30℃以上あることが望ましいとされている。
【0008】
ガスバリア性については、近年PETフィルムを基材として用いた無機酸化物蒸着フィルムが広く用いられているが、包装材をすべてPET樹脂系で統一しようとすると、シール温度が高くなり、製袋適性に問題が生じる。
【0009】
特許文献1に記載された積層構造体及びそれから作製されるスタンドアップパウチは、PE樹脂系材料を組み合わせて構成された積層構造体と、これを用いて作製されたスタンディングパウチである。特許文献1に記載されたスタンディングパウチは、単一のPE樹脂系材料から構成されているため、マテリアルリサイクルが可能であるが、バリア性や再封止性については、一切考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、マテリアルリサイクルが可能であり、しかもガスバリア性や再封止性にも優れた包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、バリアフィルム層、インキ層、接着層、シーラント層が、この順に積層され、前記バリアフィルム層は密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材にガスバリア層を付加したガスバリアフィルムであり、前記シーラント層は、密度0.910~0.920g/cm3、厚さ100~150μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂であることを特徴とする積層体から作製されたチャック付き自立性包装袋である。
【0013】
本発明に係る自立性包装袋は、包装袋を構成する積層体の主要な成分がポリエチレン樹脂で統一されているため、マテリアルリサイクルが可能である。また積層体がバリアフィルム層を備えているため、ガスバリア性を有し、さらにチャックを備えているため、再封止が可能である。
【0014】
なお前記バリアフィルム層に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、前記シーラント層のシール強度安定温度より30℃以上高いことが望ましい。
【0015】
また、前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材の一方の面に金属酸化物からなる蒸着層とガスバリア被膜層とをこの順序に積層してなり、前記ガスバリア被膜層は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含むことができる。
【0016】
また、前記バリアフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材と蒸着層との間にアンカーコート剤を含有する密着層を有することができる。
【0017】
また、前記バリアフィルムの金属酸化物蒸着層は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含むことができる。
【0018】
また、前記チャックは、融点95~125℃、密度0.900~0.910g/cm3の、低密度ポリエチレン樹脂または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の、単層で成形されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る自立性包装袋は、包装袋を構成する積層体の主要な成分がポリエチレン樹脂で統一されているため、マテリアルリサイクルが可能である。またバリアフィルム層を備えているため、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア性を有し、内容物の保存性が高い。さらにチャックを備えたことにより、再封止性の包装袋とすることができ、容易に再封止することができる。
【0020】
積層体の表層となる高密度ポリエチレン樹脂フィルムの疑似接着開始温度と、シーラント層のシール強度安定温度との間に30℃以上の差がある場合には、自立性包装袋を安定して能率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る自立性包装袋の一例を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した自立性包装袋の平面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る自立性包装袋を構成する積層体の層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。
【
図4】
図4は、積層体を構成するバリアフィルムの層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明に係る自立性包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る自立性包装袋1の一例を示した斜視図である。また
図2は、
図1に示した自立性包装袋1の平面模式図である。
【0023】
一般にスタンディングパウチと呼ばれる自立性包装袋は、表面積層体2と裏面積層体3の2枚の積層体のシーラント層同士を対向させ、この間にシーラント層を外側にして逆V字状に折った底テープ4を挿入し、周縁をヒートシールして作製される。スタンディングパウチの場合、単なる四方袋や三方袋と異なり、底テープの存在する部分すなわちサイドシール部6の下部とボトムシール部7においては、積層体の表面同士が接触した状態でヒートシールされるため、シーラント同士をヒートシールする際に、表面同士が疑似接着することを避けなければならない。
【0024】
従来のスタンディングパウチの場合、積層体の表面側には例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムのような耐熱性の高い材料を用い、裏面側のシーラント層には溶融温度の低いポリエチレン(PE)樹脂を用いるといったことで、この問題を容易に解決することができた。
【0025】
しかし、マテリアルリサイクルの観点から、すべての層を単一の材料で構成しようとした時に、積層体の表裏面の溶融温度差を大きくすることは、容易ではない。本発明に係る自立性包装袋においては、表面側に密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムを用い、裏面側に厚さ100~150μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムを使用することで、この問題を解決したものである。
【0026】
一方、再封止性に関しては、チャック9を備えることにより、解決できる。チャック9の材質としては、一般的なポリエチレン樹脂製のチャックでも良いが、融点95~125℃、密度0.850~0.910g/cm3の、低密度ポリエチレン樹脂または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の、単層で成形されているものがより好ましい。
【0027】
また、バリア性の問題についても、従来PETフィルムベースで供給されていたガスバリアフィルムを密度0.940~0.980g/cm3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムとすることで、同様に解決することができたものである。
【0028】
図3は、本発明に係る自立性包装袋1を構成する積層体10の層構成を模式的に示した断面模式図である。積層体10は、バリアフィルム層11、インキ層12、接着層13、シーラント層14が、この順に積層されており、前述の通りバリアフィルム層11は密度
0.940~0.980g/cm
3、厚さ20~40μmの高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材に金属酸化物を蒸着したバリアフィルムであり、シーラント層14は、厚さ100~150μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムである。
【0029】
バリアフィルム層11に用いられている高密度ポリエチレン樹脂の疑似接着開始温度は、シーラント層14のシール強度安定温度より30℃以上高いことが望ましい。この温度差が大きい程、ヒートシール条件の幅が広くなり、品質が安定すると共に、生産効率も向上する。
【0030】
図4は、積層体10を構成するバリアフィルム11の層構成の一例を模式的に示した断面模式図である。この例では高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材21の一方の面に、アンカーコート剤を含有する密着層22を介して金属酸化物からなる蒸着層23とガスバリア被膜層24とをこの順序に積層してなる。高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材21以外の層は、いずれもごく薄い層であるから、例えばガスバリア層としてエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のような層を用いる場合に較べて、リサイクル時の純度低下を防ぐ効果が高い。
【0031】
蒸着層23は、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも1種を含むことが望ましい。すなわち、蒸着層23は、酸化アルミニウムあるいは酸化ケイ素の少なくとも1種を含むものであることが望ましい。
【0032】
また、ガスバリア被膜層24は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を少なくとも含むものであることがより望ましい。以下実施例に基づいて本発明に係る自立性包装袋についてより具体的に説明する。
【0033】
チャック9は、一般的に凸条側と凹条側が組み合う形状を持っているので、自立性包装袋1を製袋する前に、表面積層体2と裏面積層体3のいずれか一方が凸条側に、他方が凹条側になるようにヒートシールしておく。この時、表裏面の積層体のシーラント層14側にチャック9が溶着され、製袋の段階ではサイドシール部6をシールするときに、チャック9も一緒につぶされて溶着する。
【0034】
実施例1~3においては、融点の異なる3種類のチャックを用いて、積層体とチャックとの接着シール強度を測定した。積層体の構成としては、厚さ30μm、密度0.960g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂フィルムに金属酸化物からなる蒸着層を形成したガスバリアフィルムを用いた。シーラント層としては、厚さ130μm、密度0.915g/cm3のLLDPEフィルムを用いた。水性フレキソインキを用いてフレキソ印刷を施したガスバリアフィルムの印刷面と、シーラントフィルムとをドライラミネートして積層体を得た。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
融点95℃、密度0.900g/cm3のポリエチレン樹脂製チャックを用いて、上記積層体と、シール温度を170℃、180℃、190℃、200℃、210℃の5段階に変えてシール実験を行った。他のシール条件は、シール時間0.3秒、シール圧力0.2MPaで一定とした。評価方法としては、チャックと積層体のシーラント層とが溶着しているものを〇、一部溶着していないものを△、溶着していないものを×とした。
【0036】
<実施例2>
融点125℃、密度0.910g/cm3のポリエチレン樹脂製チャックを用いた以外は、実施例1と同様に評価した。
【0037】
<実施例3>
融点135℃、密度0.920g/cm3のポリエチレン樹脂製チャックを用いた以外は、実施例1と同様に評価した。以上の結果を表1にまとめた。
【0038】
【0039】
表1の結果から、融点95~125℃、密度0.900~0.910g/cm3の低密度ポリエチレン樹脂製のチャックを用いた実施例1、2においては、シール温度幅として±10℃の温度幅が確保できることが分かる。実施例3では、最適シール温度幅が狭いことが分かる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・自立性包装袋
2・・・表面積層体
3・・・裏面積層体
4・・・底テープ
5・・・トップシール部
6・・・サイドシール部
7・・・ボトムシール部
8・・・開封開始部
9・・・チャック
10・・・積層体
11・・・バリアフィルム層
12・・・インキ層
13・・・接着層
14・・・シーラント層
21・・・高密度ポリエチレン樹脂フィルム基材
22・・・密着層
23・・・蒸着層
24・・・ガスバリア被膜層