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7585633二次電池の劣化度判定システム用のサーバ及び外部端末、劣化度判定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】二次電池の劣化度判定システム用のサーバ及び外部端末、劣化度判定システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H01M10/42 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020113171
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011802
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺井 知美
(72)【発明者】
【氏名】山本 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広康
(72)【発明者】
【氏名】林 克樹
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 雄也
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6555440(JP,B1)
【文献】特開2019-125482(JP,A)
【文献】特開2017-228103(JP,A)
【文献】特開2015-059933(JP,A)
【文献】特開2020-071070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池(21~26)の劣化度を判定するための劣化度判定システム(100)用のサーバ(1)であって、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値に基づいて劣化度を判定するための推定式と、予め用意された二次電池における電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準とが記憶されている推定式記憶部(52)と、
外部端末(9)において上記二次電池を充放電して取得された上記二次電池の電池状態の推移に関する電池特性に基づいて、上記推定式記憶部に記憶された上記推定式を更新する更新部(8)と、
上記二次電池に関する情報を含む電池情報と、上記電池特性取得基準との比較結果に基づいて、上記二次電池ごとに電池特性の取得の要否を判定する要否判定部(60)と、
該要否判定部の判定結果に基づいて、上記二次電池の電池特性を取得することを指示する指示情報を外部端末に送信する送信部(11)と、
上記指示情報を受信した上記外部端末により取得された取得情報又は該取得情報に基づく上記二次電池の電池特性を、上記外部端末から受信する受信部(12)と、
を備え、
上記更新部は、上記受信部が受信した上記取得情報に基づく上記二次電池の電池特性を利用して上記推定式を更新する、二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項2】
上記更新部は、上記受信部が受信した上記取得情報に基づく上記二次電池の電池特性を利用して上記電池特性取得基準を更新する、請求項1に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項3】
上記要否判定部は、上記電池特性取得基準に基づいて、上記二次電池の劣化度判定の可否を判定し、上記劣化度判定ができないと判定された上記二次電池の電池特性の取得が要であると判定するように規定されている、請求項1又は2に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項4】
上記送信部は、上記要否判定部により電池特性の取得が要であると判定された上記二次電池が所定数に達した場合に、上記指示情報を送信する、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項5】
上記要否判定部は、上記更新部が行った前回の更新から所定時間経過した後、上記要否を判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項6】
上記推定式と上記電池特性又は上記電池特性関係値とを比較して、比較結果に基づいて上記二次電池の劣化度を判定する劣化度判定部をさらに備え、
上記送信部は、上記劣化度判定部による判定結果を上記外部端末に送信する、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項7】
上記更新部が更新した推定式を外部端末に送信する送信部を備える、請求項1に記載の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ。
【請求項8】
二次電池(2)の劣化度を判定するための推定式が記憶された劣化度判定用のサーバ(1)を含む二次電池の劣化度判定システム(100)用の外部端末(9)であって、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(63)と、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値に基づいて劣化度を判定するための推定式が記憶されている推定式記憶部(52)と、
上記電池特性取得部が取得した上記電池特性又は上記電池特性に関係する電池特性関係値を上記サーバに送信する送信部(91)と、
上記サーバから送信された上記推定式の更新に関する更新情報を受信する受信部(92)と、
上記二次電池に関する情報を含む電池情報と、予め用意された二次電池における電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準との比較結果に基づいて、上記二次電池ごとに電池特性の取得の要否を判定する要否判定部(60)と、
を備える、二次電池の劣化度判定システム用の外部端末。
【請求項9】
上記受信部が受信した上記更新情報に基づいて、上記推定式記憶部に記憶された上記推定式を更新する更新部(8)と、
上記推定式と上記電池特性又は上記電池特性関係値とを比較して、比較結果に基づいて上記二次電池の劣化度を判定する劣化度判定部(65)と、
上記劣化度判定部による判定結果を表示する表示部(93)と、をさらに有する、請求項8に記載の二次電池の劣化度判定システム用の外部端末。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のサーバと、請求項8又は9に記載の外部端末とを含む二次電池の劣化度判定システム(100)であって、
上記サーバ又は上記外部端末において、上記推定式と上記電池特性又は上記電池特性関係値との比較結果に基づいて、劣化度判定を行うように構成されている、二次電池の劣化度判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の劣化度判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の装置の電源として二次電池が広く用いられている。二次電池は使用に伴って劣化していくが、その劣化の進行度合いにはバラツキがあるため、二次電池ごとに劣化度を取得する必要がある。そして、当該劣化度等は二次電池から直接検出することが難しいため、二次電池における種々の情報から推定することが行われている。例えば、特許文献1には、二次電池の電池容量の履歴を用いて、所定の基準に基づいて二次電池の満充電容量の劣化度を推定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2012/137456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、劣化度を推定するための基準は予め用意されたものとなっている。一方、二次電池の劣化の傾向は経時的に変化していくものであるため、これに応じて劣化度の推定基準を変化させずに、予め用意された基準に基づいて劣化度を推定する構成では、高い判定精度を維持することは困難となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、高精度に二次電池の劣化度の判定が可能な二次電池の劣化度判定システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、二次電池(21~26)の劣化度を判定するための劣化度判定システム(100)用のサーバ(1)であって、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値に基づいて劣化度を判定するための推定式と、予め用意された二次電池における電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準とが記憶されている推定式記憶部(52)と、
外部端末(9)において上記二次電池を充放電して取得された上記二次電池の電池状態の推移に関する電池特性に基づいて、上記推定式記憶部に記憶された上記推定式を更新する更新部(8)と、
上記二次電池に関する情報を含む電池情報と、上記電池特性取得基準との比較結果に基づいて、上記二次電池ごとに電池特性の取得の要否を判定する要否判定部(60)と、
該要否判定部の判定結果に基づいて、上記二次電池の電池特性を取得することを指示する指示情報を外部端末に送信する送信部(11)と、
上記指示情報を受信した上記外部端末により取得された取得情報又は該取得情報に基づく上記二次電池の電池特性を、上記外部端末から受信する受信部(12)と、
を備え
上記更新部は、上記受信部が受信した上記取得情報に基づく上記二次電池の電池特性を利用して上記推定式を更新する、二次電池の劣化度判定システム用のサーバにある。
【0007】
本発明の他の態様は、二次電池(2)の劣化度を判定するための推定式が記憶された劣化度判定用のサーバ(1)を含む二次電池の劣化度判定システム(100)用の外部端末(9)であって、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(63)と、
上記二次電池における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値に基づいて劣化度を判定するための推定式が記憶されている推定式記憶部(52)と、
上記電池特性取得部が取得した上記電池特性又は上記電池特性に関係する電池特性関係値を上記サーバに送信する送信部(91)と、
上記サーバから送信された上記推定式の更新に関する更新情報を受信する受信部(92)と、
上記二次電池に関する情報を含む電池情報と、予め用意された二次電池における電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準との比較結果に基づいて、上記二次電池ごとに電池特性の取得の要否を判定する要否判定部(60)と、
を備える、二次電池の劣化度判定システム用の外部端末にある。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、上記サーバと、上記外部端末とを含む二次電池の劣化度判定システム(100)であって、
上記サーバ又は上記外部端末において、上記推定式と上記電池特性又は上記電池特性関係値との比較結果に基づいて、劣化度判定を行うように構成されている、二次電池の劣化度判定システムにある。
【発明の効果】
【0009】
上記一態様における二次電池の劣化度判定システム用のサーバでは、劣化度を判定するための推定式が、二次電池を放電して取得された二次電池の電池状態の推移に関する電池特性に基づいて更新されるように構成されている。これにより、上記推定式が経時的に変化していく二次電池の劣化の傾向に追従することとなるため、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0010】
上記他の態様における二次電池の劣化度判定システム用の外部端末では、劣化度を判定するための推定式を上記サーバによって更新するのに適した構成を有している。これにより、上記サーバとともに使用することで、上記推定式を経時的に変化していく二次電池の劣化の傾向に追従させることができるため、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0011】
上記さらに他の態様における二次電池の劣化度判定システムは、上記サーバと上記外部端末とを含み、二次電池の劣化度判定を行うように構成されており、上記サーバにおける劣化度を判定するための推定式の更新をするのに適した構成となっている。これにより、上記推定式を経時的に変化していく二次電池の劣化の傾向に追従させることができるため、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0012】
以上のごとく、本発明の一態様によれば、高精度に二次電池の劣化度の判定が可能な二次電池の劣化度判定システムを提供することができる。
【0013】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図2】実施形態1における、組電池の構成を示す概念図、および組電池が搭載された車両の概念図。
図3】実施形態1における、電池特性を表す概念図。
図4】実施形態1における、可否判定基準を表す概念図。
図5】実施形態1における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図6】実施形態1における、組電池の製造方法を示すフロー図。
図7】変形形態1における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図8】変形形態2における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図9】変形形態3における、電池特性を表す概念図。
図10】変形形態4における、電池特性を表す概念図。
図11】変形形態5における、電池特性を表す概念図。
図12】変形形態6における、電池特性を表す概念図。
図13】変形形態7における、電池特性を表す概念図。
図14】実施形態2における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図15】変形形態8における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図16】変形形態9における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図17】変形形態10における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図18】変形形態11における、電池特性を表す概念図。
図19】実施形態3における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図20】変形形態12における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図21】実施形態4における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図22】実施形態5における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図23】実施形態5における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図24】実施形態6における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図25】実施形態7における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図26】実施形態7における、電池特性を表す概念図。
図27】変形形態13における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図28】実施形態8における、劣化度判定システムの構成を表す概念図。
図29】実施形態8における、電池特性を表す概念図。
図30】変形形態14における、電池特性を表す概念図。
図31】変形形態15における、電池特性を表す概念図。
図32】実施形態9における、二次電池のSOC-OCV曲線を表す概念図。
図33】実施形態9における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図34】実施形態9における、(a)二次電池の放電カーブ、(b)二次電池の充電カーブを表す概念図。
図35】実施形態10における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図36】実施形態11における、二次電池のSOC-OCV曲線を表す概念図。
図37】実施形態12における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図38】実施形態12における、(a)二次電池の放電カーブ、(b)二次電池の他の放電カーブを表す概念図。
図39】実施形態13における、推定結果の例を表す概念図。
図40】実施形態14における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図41】実施形態14における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
上記二次電池の劣化度判定システム用のサーバの実施形態について、図1図6を用いて説明する。なお、本明細書では、劣化度判定システム用のサーバを「サーバ」ともいう。
本実施形態1のサーバ1は、図1に示すように、二次電池2の劣化度を判定するための劣化度判定システム100用のサーバ1である。
そして、サーバ1は、推定式記憶部52と更新部8とを備える。
推定式記憶部52は、二次電池2における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値に基づいて劣化度を判定するための推定式が記憶されている。
更新部8は、外部端末9において二次電池2放電して取得された二次電池2の電池状態の推移に関する電池特性に基づいて、推定式記憶部52に記憶された推定式を更新する。
【0016】
以下、本実施形態1のサーバ1を含む劣化度判定システム100について、詳述する。
図1に示すように、劣化度判定システム100は、サーバ1と外部端末9とが通信ネットワーク200を介して接続されて構成されている。サーバ1は演算装置からなる。例えば、サーバ1は単一又は複数のコンピュータから構成することができる。外部端末9は複数設けることができる。例えば、各地の拠点営業所に外部端末をそれぞれ配置し、一つの管理所にサーバ1を配置して、通信ネットワーク200を介して接続することができる。なお、通信ネットワークは専用回線であってもよいし、インターネットや電話回線など既存のものを利用してもよい。
【0017】
図1に示す劣化度判定システム100において、劣化度を判定する対象となる二次電池21~26の種類は限定されず、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの公知の二次電池を対象とすることができる。当該二次電池21~26は、単一又は複数のセルを有していてよい。本実施形態1では、図2(a)に示すように、二次電池21~26は、組電池20において個別に着脱可能なモジュールである二次電池モジュールを構成している。組電池20における二次電池の数は特に限定されないが、本実施形態1では6個であって、二次電池21~26は直列に接続されている。なお、これに替えて二次電池21~26は並列に接続されていてもよい。そして、当該組電池20は、図2(b)に示すように、バッテリとして車両900に搭載される。
【0018】
次にサーバ1について説明する。図1に示すように、本実施形態1では、サーバ1は、記憶部5、演算部6、更新部8及び通信部10を備える。
【0019】
図1に示す記憶部5は不揮発性メモリからなり、対応関係記憶部51、推定式記憶部52を備える。本実施形態1では、対応関係記憶部51には、電池特性と全容量との対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態は特に限定されず、例えば、算出式、マップ、グラフ、表などの形態とすることができる。当該対応関係は、測定用の二次電池を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池を用いて加速劣化試験を行って得られた実測定値を基に作成したり、二次電池のモデルを用いて所定の電圧区間における電池特性と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。なお、対応関係記憶部51に記憶された対応関係は、後述の電池特性取得部63により取得される電池特性に応じて適宜設定される。
【0020】
上記全容量は充電時における完全放電状態から満充電状態までの容量とすることができる。若しくは、全容量は充電時における満充電状態から完全放電状態までの容量とすることもできる。ここで完全放電状態とは、二次電池2が搭載される車両等のシステムで規定される実効的な完全放電状態でも良く、劣化度判定システム100を使用する使用者が定める下限電圧に到達した状態でも良い。また、満充電状態とは、上記車両等のシステムで規定される実効的な満充電状態でも良く、上記使用者が定める上限電圧に到達した状態でも良い。
【0021】
また、図1に示す推定式記憶部52には、後述の要否判定部60において使用される二次電池2における電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準と、後述の可否判定部62において使用される二次電池2における劣化度の判定の可否の基準である可否判定基準と、後述の劣化度判定部65において使用される劣化度を判定するための推定式とが予め記憶されている。当該基準及び推定式は、要否判定部60、可否判定部62及び劣化度判定部65における判定の態様に応じてそれぞれ適宜設定される。本実施形態1では、推定式は、劣化度を5段階に分けて判定できるように複数の推定式が設定されている。
【0022】
図1に示す演算部6は所定の演算装置からなり、要否判定部60、電池情報取得部61、可否判定部62、電池特性取得部63、推定部としての容量推定部64、劣化度判定部65を有する。
【0023】
図1に示す要否判定部60は、二次電池2に関する情報を含む電池情報と、推定式記憶部52に記憶された電池特性取得基準との比較結果に基づいて、二次電池2ごとに電池特性の取得の要否を判定する。本実施形態1では、後述の可否判定部62による劣化度判定の可否の結果を電池特性量取得基準とし、要否判定部60は可否判定部62によって可否判定基準に基づいて劣化度の判定が可でないと判定された二次電池について電池特性の取得が要と判定する。なお、要否判定部60による要否判定を行うタイミングは限定されず、可否判定部62による可否の判定がされる都度行ってもよいし、可否判定部62による可否の判定回数が所定回数に達したときに行うこととしてもよいし、前回の要否判定から所定時間経過した後に行うこととしてもよいし、これらを組み合わせたタイミングとしてもよい。
【0024】
図1に示す電池情報取得部61は、二次電池21~26に関する情報である電池情報を取得する。当該電池情報は、二次電池21~26の履歴情報としてもよいし、これに替えて又はこれとともに、後述の電池特性とすることもできる。本実施形態1では、電池情報取得部61は、後述の電池特性取得部63により取得された電池特性を電池情報として取得する。
【0025】
図1に示す可否判定部62は、電池情報取得部61が取得した電池情報又は当該電池情報から算出した電池情報関係値と、推定式記憶部52に記憶された可否判定基準とに基づいて、二次電池21~26ごとに劣化度判定の可否を判定する。本実施形態1では、可否判定部62において劣化度の判定が不可と判断された二次電池は、後述の劣化度判定部65における劣化度の判定基準を規定する際に用いられた訓練データの領域外のものであって、未学習領域のものである。そのため、当該二次電池については、今回の劣化度判定ではその判定精度を十分には確保できない可能性があるため、後述の劣化度判定をしないこととする。これにより、判定精度が十分確保できる二次電池について劣化度の判定を行うことができ、全体として判定精度を高くすることができる。
【0026】
図1に示す可否判定部62において用いる可否判定基準は、測定用の二次電池を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池を用いて加速劣化試験を行って得られた試験測定値や使用された二次電池から取得した実測値を基に作成したり、二次電池のモデルを用いて可否判定基準を論理的に導き出す関係式により作成したりすることができる。そして、当該可否判定基準は上下限値としたり、上限値のみ又は下限値のみとしたり、マップの形式としたりして表すことができる。例えば、図4に示すように、測定用の二次電池から取得した電池情報Aと電池情報Bとの対応関係を訓練データとして機械学習することにより算出した所定範囲を可否判定基準とすることができる。すなわち、当該訓練データに対するデータ間の距離を可否判定基準とすることができる。当該データ間の距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離などに基づいて規定することができる。
【0027】
本実施形態1では、可否判定部62は、予め設定された複数の電池情報に関する関係式を用いて、電池情報取得部が取得した上記電池情報から算出した電池情報関係値と、上記可否判定基準との比較結果として算出されたマハラノビス距離に基づいて、可否の判定を行うように構成されている。なお、可否判定基準は複数設定されていてもよい。すなわち、第1の可否判定基準に基づいて第1の劣化度判定の可否を判定した後、第1の劣化度判定が不可と判定された二次電池に対して第2の可否判定基準に基づいて第2の劣化度判定の可否を判定することとしてもよい。
【0028】
電池特性取得部63は、二次電池21~26の所定の電圧区間における電池特性を取得する。二次電池21~26の電池特性は、例えば、所定の電圧区間Vsにおける二次電池2の電圧推移や温度推移に基づく特性とすることができる。そして、当該電圧推移は、例えば、所定の電圧区間における二次電池21~26の区間容量、所定の電圧区間における二次電池2の容量変化に対する二次電池21~26の電圧変化の割合、所定の電圧区間における経過時間に対する二次電池21~26の電圧変化の割合の少なくとも一つに基づいて算出することができる。所定の電圧区間は、二次電池21~26の劣化度と電池状態の推移とが相関関係を示す電圧区間とすることができる。かかる電圧区間は、二次電池21~26の種類や構成に基づいて設定したり、二次電池を用いた機械学習により導き出したりすることができる。なお、電池特性取得部63は、取得した値の絶対値を電池特性として取得することとしてもよい。二次電池21~26の電池特性を取得する所定の電圧区間Vsは、二次電池21~26ごとに設定したり、適宜変更したりすることができる。
【0029】
さらに、電池特性取得部63は、可否判定部62によって劣化度の判定が不可と判定された二次電池について、特定の電圧区間又は容量区間における電池特性を取得する。当該電圧区間又は容量区間は特に限定されず、全容量となる区間としてもよいし、所定容量の区間としてもよい。なお、当該特定の容量区間における電池特性を容量電池特性という。例えば、全容量における容量電池特性は、完全放電状態から満充電状態までの電圧区間、又は充電時における満充電状態から完全放電状態までの電圧区間における二次電池2の電圧推移や温度推移に基づく特性とすることができる。
【0030】
本実施形態1では、電池特性として放電電圧特性を用いる。放電電圧特性は、図3に示すように、二次電池2が放電目標電圧VPまで放電される際の電圧推移に基づいて算出される。放電目標電圧VPは特に限定されないが、二次電池2の電圧値についての通常使用範囲Vnにおける下限値以下の電圧とすることができる。
【0031】
上記電圧推移は、例えば、所定の電圧区間Vsにおける二次電池2の区間容量、所定の電圧区間Vsにおける二次電池2の容量変化に対する二次電池2の電圧変化の割合、所定の電圧区間Vsにおける経過時間に対する二次電池2の電圧変化の割合の少なくとも一つに基づいて算出することができる。
【0032】
所定の電圧区間Vsは、二次電池2の劣化度と電池状態の推移とが相関関係を示す電圧区間とすることができる。かかる電圧区間Vsは、二次電池2の種類や構成に基づいて設定したり、二次電池2を用いた機械学習により導き出したりすることができる。例えば、本実施形態1では、図2に示すように、所定の電圧区間Vsを、電圧値V1からV2の区間としている。かかる電圧区間Vsは、二次電池2の劣化度に応じて、放電電圧特性の差異が顕著となっている区間である。
【0033】
そして、本実施形態1では、推定部として図1に示す容量推定部64を備える。本実施形態1では、容量推定部64は、可否判定部62によって劣化度判定が可と判定された二次電池2について、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、全容量を推定する。全容量の推定は、予め取得した訓練データに基づいて作成した回帰式などの予測モデルを利用することができ、例えば、線形回帰、LASSO回帰、Ridge回帰、決定木、サポートベクター回帰などを利用することができる。
【0034】
図1に示す劣化度判定部65は、電池特性又は電池特性関係値に基づいて、二次電池2の劣化度を判定する。電池特性関係値は電池特性に基づいて算出される値であって、本実施形態1では、電池特性関係値として容量推定部64の推定結果を採用している。従って、本実施形態1では、劣化度判定部65は容量推定部64の推定結果に基づいて、二次電池2の劣化度を判定する。判定方法は、容量推定部64の推定結果と、推定式記憶部52に予め記憶された推定式とを比較して行うことができる。
【0035】
図1に示す更新部8は所定の演算装置からなり、推定式更新部81を備える。推定式更新部81は、推定式記憶部52に記憶された電池特性取得基準すなわち可否判定基準、及び推定式を更新する。当該更新は、上述の可否判定部62において劣化度の判定が不可と判断された二次電池について、充放電制御部71により当該二次電池を充放電することで全容量の実測値を取得し、電池特性取得部63により全容量の実測値に基づいて容量電池特性を取得し、これを追加の訓練データとして推定式記憶部52に記憶された可否判定基準及び推定式を更新することにより行うことができる。これにより、二次電池の経時的な変化に合わせて判定基準を更新できるため、高い判定精度を維持することができる。なお、推定式更新部81が上記更新を行うタイミングは限定されず、上記容量電池特性が取得されたとき、上記容量電池特性のデータ数が所定数に達したとき、前回の更新タイミングから所定時間経過した後としてもよいし、これらを組み合わせて更新タイミングを決定してもよい。
【0036】
図1に示す通信部10は、通信ネットワーク200に有線又は無線で接続してデータの送受信が可能な演算装置からなり、送信部11と受信部12とを有する。送信部11は、可否判定部62の判定結果に基づいて、二次電池2の容量電池特性を取得することを指示する指示情報を後述の外部端末9に送信する。指示情報の送信は、可否判定部62により容量電池特性の取得が要であると判定された二次電池2が所定数に達した場合に行うこととしてもよい。本実施形態1では、受信部12は、指示情報を受信した外部端末9により取得された取得情報としての容量の実測値を外部端末9から受信する。なお、送信部11及び受信部12は、サーバ1と外部端末9との間のすべての情報の送受信が可能であってよい。
【0037】
次に外部端末9について説明する。図1に示すように、本実施形態1では、外部端末9は、検出部3、格納部4、制御部7、通信部90及び表示部93を備える。
【0038】
図1に示す検出部3は、電圧値検出部31、電流値検出部32を備える。電圧値検出部31は所定の電圧計からなり、二次電池21~26の電圧値を検出する。電流値検出部32は所定の電流計からなり、二次電池21~26に流れた電流値を検出する。なお、電圧値検出部31により検出された電圧値に基づいて、二次電池21~26の開放電圧が取得されるように構成されている。
【0039】
図1に示す格納部4は書き換え可能な不揮発性メモリからなり、電圧値格納部41、電流値格納部42を備える。電圧値格納部41には電圧値検出部31が検出した電圧値が格納され、電流値格納部42には電流値検出部32が検出した電流値が格納される。
【0040】
図1に示す制御部7は、充放電制御部71を備える。充放電制御部71は、二次電池2の充放電を行うように制御する。充放電制御部71は、所定のプログラムを実行可能な演算装置からなる。なお、充放電制御部71による充放電は、充電のみする場合、放電のみする場合、放電して充電する場合、及び充電して放電する場合のいずれの場合も含む。
【0041】
図1に示す通信部90は、通信ネットワーク200に有線又は無線で接続してデータの送受信が可能な演算装置からなり、送信部91と受信部92とを有する。送信部91及び受信部92は、外部端末9とサーバ1との間のすべての情報の送受信を可能となっている。本実施形態1では、送信部91は外部端末9の検出部3により検出された各値をサーバ1に送信可能となっており、受信部12はサーバ1から基準値、劣化度判定結果、更新情報等を受信可能となっている。
【0042】
図1に示す表示部93は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態1では劣化度判定結果や、更新情報などを表示することができる。
【0043】
本実施形態1の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法のフローについて、以下に説明する。
まず、図5に示すステップS1において、準備工程として、外部端末9を有する拠点営業所で、図2(a)に示す使用済みの組電池20からモジュールの形態の二次電池21~26を取り出す。そして、ステップS2において、外部端末9を用いて充放電制御部71により、二次電池21~26について、個別に残容量の放電を行う。当該放電は、図3に示すように、開放電圧が予め定められた放電目標電圧VPに到達するまで継続する。二次電池21~26がニッケル水素電池である場合には、当該二次電池21~26にメモリ効果が生じている場合があるが、二次電池21~26のうち放電目標電圧VPやこれに近い電圧まで放電されたものはメモリ効果の解除も同時に行われる。
【0044】
そして、図5に示すステップS2において残容量の放電とともに検出部3により放電における電圧値及び電流値を検出し、ステップS21において外部端末9の送信部91により検出値をサーバ1に送信して、サーバ1の受信部12により検出値を受信する。
【0045】
その後、図5に示すステップS3において、サーバ1の電池特性取得部63により各二次電池21~26の電池特性を取得する。本実施形態1では、電池特性として上述の放電電圧特性を取得する。放電電圧特性は、上述の通り、図3に示す各二次電池21~26の所定の電圧区間Vsにおける電圧推移に基づく。
【0046】
本実施形態1では、図3に示すように、電池特性取得部63は、第1の二次電池21に対して、電圧推移として放電開始Tから放電終了TP1までの時間経過に対する電圧変化の関係を示す電圧時間変化を取得する。そして、所定の電圧区間Vs内の電圧VAにおける微分値、すなわち図3に示す電圧時間変化のグラフにおける符号21Aで示す電圧VAでの接線の傾きを算出し、これを第1の二次電池21の放電電圧特性とする。また、図3に示すように、第2の二次電池22についても同様に電圧推移として電圧時間変化を取得し、符号22Aで示す所定の電圧区間Vs内の電圧VAでの微分値を算出し、これを第2の二次電池22の放電電圧特性とする。同様に、第3~第6の二次電池23~26についても、電圧推移として電圧時間変化を取得して電圧VAでの微分値を算出してそれぞれの放電電圧特性とする。
【0047】
なお、本実施形態1では放電電圧特性として、電圧推移としての電圧時間変化を取得して所定の電圧区間Vs内の電圧VAにおける微分値を用いたが、これに替えて、電圧推移として導き出した電圧時間変化における2点間の電圧変化の割合、すなわち電圧時間変化のグラフにおける当該2点を通る直線の傾きを算出して、これを放電電圧特性として用いてもよい。例えば、図3に示す第1の二次電池21の電圧時間変化における2点として、電圧区間Vsの開始時間TA1と終了時間TA2の2点を採用するとともに、他の二次電池22~26においても同様の2点を採用することができる。
【0048】
そして、図5のステップS4において、サーバ1の電池情報取得部61により、電池特性取得部63が取得した電池特性を電池情報として取得する。その後、ステップS5において、可否判定部62により劣化度の判定の可否を判定する。具体的には、可否判定部62は、推定式記憶部52に記憶された可否判定基準と取得した電池情報から算出した電池情報関係値とのデータ間距離が所定範囲内であるか否か、すなわち、当該電池情報関係値が図4に示す可否判定基準内にあるか否かに基づき、劣化度の判定の可否を判定する。
【0049】
取得した電池情報が可否判定基準内にない場合は、可否判定部62は劣化度の判定が可能でないと判定し、図5に示すステップS5のNoに進む。そして、ステップS6において、二次電池21~26のうち劣化度の判定が可能でないものについては、劣化度の判定をせずに後述のステップS9に進む。
【0050】
一方、図5に示すステップS5において、取得した電池情報が可否判定基準内にある場合は、可否判定部62は劣化度の判定が可能であると判定し、ステップS5のYesに進む。そして、ステップS7において、容量推定部64により、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、二次電池21~26のうち劣化度の判定が可能であると判定されたものについて全容量を推定する。本実施形態1では、容量推定部64は対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づく放電電圧特性と全容量との対応関係に基づいて、電池特性取得部63が取得した電池特性としての放電電圧特性から二次電池21~26の全容量を推定する。
【0051】
その後、図5に示すステップS8において、劣化度判定部65により、容量推定部64が推定した全容量に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。そして、ステップS81において、サーバ1の送信部11により劣化度判定結果を外部端末9に送信する。ステップS82に進み、外部端末9の受信部92により劣化度判定結果を受信して表示部93に表示する。そして、ステップS9に進み、今回の劣化度の判定を終了する。
【0052】
その後、図5に示す記号Aに進み、ステップS10において、要否判定部60により、容量電池特性の取得の要否を判定する。本実施形態1では、ステップS5において可否判定部62により劣化度の判定が不可と判定された二次電池について容量電池特性の取得を要と判定し、劣化度の判定が可と判定された二次電池について容量電池特性の取得を不要と判定する。ステップS10において、容量電池特性の取得が要と判定された二次電池がないと判定された場合は、ステップS10のNoに進み、この制御フローを終了する。一方、ステップS10において容量電池特性の取得が要と判定された二次電池があると判定された場合は、ステップS10のYesに進む。
【0053】
その後、図5に示すステップS101に進み、サーバ1の送信部11により容量電池特性の取得が要と判定された二次電池2について容量電池特性を取得することを指示する指示情報を外部端末9に送信し、外部端末9の受信部92により当該指示情報を受信する。
【0054】
その後、図5に示すステップS11において、上記指示情報に基づき容量電池特性の取得が要と判定された二次電池2について、充放電制御部71により充放電を行って容量を測定し実測値を取得する。当該測定後、ステップS111において外部端末9の送信部91により実測値をサーバ1に送信し、サーバ1の受信部12により当該実測値を受信する。そして、ステップS112により、電池特性取得部63により、当該実測値に基づいて容量電池特性を取得し、ステップS12において、推定式更新部81により当該容量電池特性を追加の訓練データとして推定式記憶部52に記憶された推定式を更新する。本実施形態1では、可否判定基準すなわち電池特性取得基準も更新する。当該両基準値は次回以降の劣化度判定に用いられることとなる。
【0055】
次に、使用済みの組電池20から取り出されたモジュールを構成する二次電池2を用いて、新たに組電池20に組み上げてリビルト品を製造する方法について以下に説明する。
まず、図6に示すステップS13において、組電池20から取り出された複数の二次電池2を用意する。そして、ステップS14において、各二次電池2の電池特性を取得する。当該電池特性の取得は、本実施形態1の劣化度判定システム100において電池特性を取得する場合と同様にすることができる。その後、ステップS15において、当該電池特性又は当該電池特性に基づいて算出した電池特性関係値に基づいて二次電池2のランク付けを行う。本実施形態1では、電池特性関係値として当該電池特性に基づいて二次電池2の全容量を推定し、当該全容量から算出された二次電池2の劣化度の絶対値が所定範囲内であるか否かに基づいて二次電池2のランク付けを行うものとする。そして、本実施形態1では、劣化度の絶対値を5段階の所定範囲に分けて、劣化度の絶対値の小さいものから順にAランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランクとする。なお、ランク付けの基準は適宜設定することができる。
【0056】
次に、図6に示すステップS16において、ランクに基づいて二次電池21~26を選別する。本実施形態1では、ランクごとに分別する。これにより、同一ランクに含まれる二次電池2は劣化度が同程度となる。そして、ステップS17において、同一ランクの二次電池2を組み合わせて、組電池20を組み上げてリビルト品を作成する。これにより、当該リビルト品の組電池20に含まれる二次電池2は劣化度の絶対値が同程度であって、劣化度の差分を所定の基準値以下とすることができる。なお、劣化度の差分の基準値はランク付けの基準に応じて適宜設定することができる。なお、本実施形態1では、同一ランクの二次電池2で組電池20を作成したが、これに限らず、所定範囲のランク内で組電池20を作成してもよく、例えば、Aランク及びBランクに含まれる二次電池2から組電池20を作成するなどしてもよい。なお、最低ランクのEランクにランク付けされた二次電池2は、使用不可として破棄したり、分解して部材のリサイクルに供したりしてもよい。
【0057】
その後、本実施形態1では、図6に示すステップS18において、組電池20単位で補充電を行う。これにより、二次電池21~26が組電池20として使用可能な状態となる。
【0058】
次に、本実施形態1の劣化度判定システム100及びサーバ1における作用効果について、詳述する。本実施形態1の二次電池の劣化度判定システム用のサーバ1では、劣化度を判定するための推定式が、二次電池2を放電して取得された二次電池2における電池状態の推移に関する容量電池特性に基づいて更新されるように構成されている。これにより、推定式が経時的に変化していく二次電池2の劣化の傾向に追従することとなるため、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態1では、サーバ1において、推定式記憶部52には、予め用意された二次電池2における容量電池特性の取得の要否判定の基準である電池特性取得基準が記憶されており、二次電池2に関する情報を含む電池情報と電池特性取得基準との比較結果に基づいて、二次電池2ごとに容量電池特性の取得の要否を判定する要否判定部60と、要否判定部60の判定結果に基づいて、二次電池2の容量電池特性を取得することを指示する指示情報を外部端末に送信する送信部11と、当該指示情報を受信した外部端末9により取得された取得情報としての容量の実測値を外部端末9から受信する受信部12と、を備える。そして、更新部8は、受信部12が受信した実測値に基づく容量電池特性を利用して推定式を更新する。これにより、サーバ1において、二次電池2における容量電池特性の取得の要否判定をしたうえで、容量電池特性を利用して推定式を更新することができ、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態1では、更新部8は、受信部12が受信した実測値に基づく容量電池特性を利用して電池特性取得基準を更新するように構成されている。これにより、経時的に変化していく二次電池2の劣化の傾向に電池特性取得基準を追従させることができ、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態1では、要否判定部60は、電池特性取得基準に基づいて、二次電池2の劣化度判定の可否を判定し、上記劣化度判定ができないと判定された上記二次電池の容量電池特性の取得が要であると判定するように規定されている。これにより、劣化度判定ができないと判定された二次電池について容量電池特性を取得して推定式を更新することができ、高精度に二次電池の劣化度の判定をすることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態1では、サーバ1の送信部11は、要否判定部60により容量電池特性の取得が要であると判定する都度、上記指示情報を送信することとしたが、これに替えて変形形態1では、図7に示すように、ステップS10において容量電池特性の取得が要と判定された二次電池があると判定された場合は、ステップS10のYesからステップS102に進んで、サーバ1に備えられた図示しないカウンタのカウント数を加算する。そして、ステップS103において送信部11はカウント数が所定値に達していないと判定された場合は、ステップS103のNoに進んで、上記指示情報を外部端末9に送信せずに当該フローを終了する。一方、ステップS103において送信部11はカウント数が所定値に達したと判定された場合は、ステップS103のYesからステップS101に進んで、本実施形態1の場合と同様にステップS101以降を実施する。
【0063】
変形形態1によれば、サーバ1の送信部11は、要否判定部60により容量電池特性の取得が要であると判定された二次電池2が所定数に達した場合に、上記指示情報を送信することとなる。これにより、推定式の更新頻度が過度に多くなることを抑制して適切な頻度で更新を行うことができ、劣化度の判定精度を高く維持しつつ、サーバ1の演算負荷が過度に大きくなることを抑制できる。
【0064】
さらに、変形形態1のカウンタに替えて、変形形態2ではサーバ1は図示しない時間計測部を有していてもよい。当該変形形態2では、時間計測部は更新した時点で時間計測を開始する。そして、当該変形形態2における制御フローでは、図8に示すように、記号AからステップS91に進んで、サーバ1の時間計測部により前回更新から所定時間が経過したか判定する。所定時間が経過していないと判定された場合は、ステップS91のNoに進んで、上記容量電池特性の取得の要否を判定せずに当該フローを終了する。一方、ステップS91において所定時間が経過したと判定された場合は、ステップS91のYesからステップS10に進んで、本実施形態1の場合と同様にステップS10以降を実施する。そして、ステップS12の後、ステップS121において時間計測部における時間計測をリセットしてリスタートする。
【0065】
変形形態2によれば、要否判定部60は、更新部8が行った前回の更新から所定時間経過した場合に容量電池特性の取得の要否を判定することとなる。これにより、推定式の更新頻度が過度に多くなることを抑制して適切な頻度で更新を行うことができ、劣化度の判定精度を高く維持しつつ、サーバ1の演算負荷が過度に大きくなることを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態1では、サーバ1は、推定式と上記電池特性又は上記電池特性関係値とを比較して、比較結果に基づいて上記二次電池の劣化度を判定する劣化度判定部をさらに備え、サーバ1の送信部11は、上記劣化度判定部による判定結果を上記外部端末に送信する。これにより、外部端末9における演算負荷を低減することができ、外部端末9に要求される処理能力を低減できる。これにより、外部端末9の小型化や製造コスト低減が図られ、多数の外部端末9を用いた劣化度判定システム100の構築に寄与する。
【0067】
また、本実施形態1の劣化度判定システム1では、二次電池2から取得した所定の電圧区間の電圧推移に関する電池特性又は電池特性関係値に基づいて二次電池の劣化度を判定する。そのため、簡素な工程で劣化度の判定を行うことができる。さらに、二次電池2の電池特性を取得するための電圧区間として、二次電池2の電圧推移と劣化度とが高い相関関係を示す電圧区間を設定することにより、二次電池2の劣化度を高精度に判定することができる。そして、二次電池2の劣化度の判定を行う前に、二次電池2ごとに劣化度の判定が可能か否かを判定したうえで、劣化度の判定が可と判定された二次電池2について劣化度の判定を行う。そのため、判定精度が十分確保できる二次電池2について劣化度の判定を行うことにより、全体として判定精度を高くすることができる。
【0068】
また、本実施形態1の劣化度判定システム1では、可否判定部62は、予め設定された複数の電池情報に関する関係式を用いて、電池情報取得部61が取得した電池情報から算出した電池情報関係値と、可否判定基準との比較結果に基づいて、上記可否の判定を行う。これにより、関係式を適宜調整することにより、判定精度の向上を図ることができる。
【0069】
そして、本実施形態1の劣化度判定システム1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池2を含む組電池20であって、二次電池2における所定の電圧区間Vsの電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に基づいて算出された電池特性関係値が所定範囲内となる組電池を提供することができる。かかるリビルト品としての組電池では、電池特性のバラツキが小さい組電池20が提供できる。そして、二次電池2の電池特性を取得する電圧区間Vsとして、二次電池2の電圧推移と劣化度とが高い相関関係を示す電圧区間Vsを設定することにより、組電池20に含まれる二次電池2の劣化度のバラツキが小さくなるため、組電池20の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0070】
なお、本実施形態1では、電池特性取得部63が取得した電池特性から容量推定部64が二次電池21~26の全容量を推定して、劣化度判定部65が当該推定結果に基づいて二次電池21~26の劣化度を判定することとしたが、これに替えて、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、全容量を推定せずに、劣化度判定部65が二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部63は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、劣化度判定部65は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、劣化度判定部65は、電池特性取得部63が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。
【0071】
そして、本実施形態1では、二次電池21~26の劣化度が所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池20を組み上げることとしたが、二次電池21~26の劣化度と劣化度の差分とが所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池20を組み上げてもよい。
【0072】
また、本実施形態1では、電池特性は、二次電池21~26における所定の電圧区間Vs1、Vs2での電圧推移に基づく放電電圧特性としている。二次電池21~26がニッケル水素電池である場合には、使用済みの二次電池21~26を再利用する際に、メモリ効果の解除などを目的として放電させることがあるが、当該放電の際に上記放電電圧特性を取得することにより、二次電池21~26の再利用のための作業工程を簡略化できる。
【0073】
なお、本実施形態1では、二次電池2の放電中の電圧推移に基づいて放電電圧特性を算出したが、これに替えて又はこれとともに、放電目標電圧VPまで放電されて放電が停止された後に開放電圧まで戻る電圧緩和時の電圧推移に基づいて、放電電圧特性を算出することとしてもよい。例えば、図9に示す変形形態3のように、第1の二次電池21において、放電目標電圧VPまで放電されて放電が停止された時間TP1以後の電圧緩和における所定の電圧区間Vsでの電圧推移に基づいて、符号21Aで示す所定電圧VAでの微分値を算出して放電電圧特性とすることができる。同様に第2の二次電池22において放電停止された時間TP2以後の電圧緩和における所定の電圧区間Vsでの電圧推移に基づいて、符号22Aで示す所定電圧VAでの微分値を算出して放電電圧特性とすることができ、図示しない他の二次電池23~26についても同様に電圧緩和における所定の電圧区間Vsでの電圧推移に基づいた放電電圧特性を取得することができる。この場合も、本実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0074】
また、本実施形態1では、電池特性関係値として、電池特性取得部63が取得した電池特性を用いて二次電池の全容量を推定する容量推定部64を備え、劣化度判定部65は、容量推定部64の推定結果に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。これにより、二次電池21~26の劣化度を高精度に検出することができる。
【0075】
本実施形態1では、電圧推移として、所定の電圧区間Vsにおける経過時間に対する二次電池2の電圧変化の割合、すなわち電圧時間変化における微分値を算出し、これを放電電圧特性としている。これにより、二次電池2の劣化度を高精度かつ簡便に判定することができる。
【0076】
なお、電池特性取得部63は、電圧推移として、所定の電圧区間Vsにおける経過時間に対する二次電池2の電圧変化の割合を算出することに替えて又はこれとともに、図10に示す変形形態4のように、所定の電圧区間Vsにおける各二次電池21~26の容量変化量を区間容量Qpとして算出し、これを放電電圧特性としてもよい。区間容量Qpは、電流値検出部32により検出した電圧区間Vsにおいて二次電池21~26に流れた電流値と電流が流れた時間とから算出できる。この場合も当該放電電圧特性に基づき、二次電池2の劣化度を高精度かつ簡便に判定することができる。
【0077】
また、各二次電池21~26における放電時の全区間T~TP1、T~TP2の容量として図10に示す総充放電容量Qtを算出し、当該総充放電容量Qtに対する区間容量Qpの比である容量比を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。また、総充放電容量Qtに替えて、電池特性を算出するための電圧区間を含む特定の電圧区間の容量である特定区間容量Qt’を算出し、当該特定区間容量Qt’に対する区間容量Qpの比である容量比を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。この場合も当該放電電圧特性に基づき、二次電池2の劣化度を高精度かつ簡便に判定することができる。
【0078】
また、本実施形態1では放電電圧特性として、電圧推移として電圧時間変化を取得して所定の電圧区間Vs内の電圧VAにおける微分値を用いたが、これに替えて、図11に示す変形形態5のように、電圧推移として放電開始時の容量Qから放電終了時の容量Qp1までの容量に対する電圧変化の関係を示す電圧-容量変化を取得してもよい。そして、所定の電圧区間Vs内の電圧VAにおける微分値、すなわち電圧-容量変化のグラフにおける電圧VAでの接線の傾きを算出し、これを第1の二次電池21の放電電圧特性としてもよい。この場合も、本実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0079】
なお、本実施形態1では、劣化度判定システム100に備えられた電池特性取得部63において電池特性を算出して電池特性を取得することとしたが、これに替えて、劣化度判定システム100が外部入力部を有するとともに、外部に設けられた演算装置を用いて電池特性を算出して、外部入力部を介して当該電池特性が電池特性取得部63に入力されることにより、電池特性取得部63が電池特性を取得することとしてもよい。
【0080】
なお、本実施形態1では、電池特性として放電電圧特性を採用したが、これとともに、図12に示す変形形態6のように、電池特性が、二次電池21~26が所定の充電目標電圧VQまで充電される際の電圧推移に基づく充電電圧特性を含むこととしてもよい。充電目標電圧VQは特に限定されないが、本実施形態1では通常使用範囲Vnの下限値よりも大きく、上限値よりも小さい値としている。その他の構成要素は実施形態1の場合と同様である。
【0081】
本変形形態6において、充電における電圧推移の算出は、実施形態1及び各変形形態における放電電圧特性における電圧推移の算出と同様に行うことができ、算出した結果を充電電圧特性とする。すなわち、図12に示すように、電圧推移として、放電終了TP1、TP2である充電開始から充電終了TQ1、TQ2までの時間経過に対する電圧変化の関係を示す電圧時間変化を取得する。そして、所定の電圧区間VsB内の電圧VBにおける微分値、すなわち図12に示す電圧時間変化のグラフにおける符号21Bで示す電圧VBでの接線の傾きを算出し、これを第1の二次電池21の充電電圧特性とする。また、図12に示すように、第2の二次電池22についても同様に電圧推移として電圧時間変化を取得し、符号22Bで示す所定の電圧区間Vs内の電圧VBでの微分値を算出し、これを第2の二次電池22の放電電圧特性とする。同様に、第3~第6の二次電池23~26についても同様に、電圧推移として電圧時間変化を取得して電圧VBでの微分値を算出してそれぞれの充電電圧特性とする。なお、所定の電圧区間VsBは、電圧値V3からV4の区間としており、二次電池2の劣化度に応じて充電電圧特性の差異が顕著となっている区間である。
【0082】
なお、充電電圧特性は、上述の実施形態1において放電電圧特性を算出する場合と同様に、所定の電圧区間VsBの開始時間TB11、TB21と終了時間TB12、TB22の2点間の電圧変化の割合としたり、電圧区間VsBにおける区間容量Qpとしたり、充電時の全区間TP1~TQ1、TP2~TQ2の容量、すなわち充電目標電圧VQまで充電したときの総充放電容量QTを算出して総充放電容量QTに対する区間容量Qpの容量比としたりしてもよい。また、充電目標電圧VQまで充電したときの総充放電容量QTに替えて、電池特性を算出するための電圧区間を含む特定の電圧区間の容量である特定区間容量QT’を算出し、当該特定区間容量QT’に対する区間容量Qpの容量比を算出し、これを充電電圧特性としてもよい。
【0083】
そして、本変形形態6では、電池特性取得部63は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得し、容量推定部64はこれらに基づいて二次電池2の全容量を推定する。これにより、一層精度よく、二次電池2の劣化度を判定することができる。
【0084】
なお、本変形形態6の劣化度判定システム100を用いて、リビルト品の組電池20を製造する場合は、組電池20を組み上げる前に各二次電池2の充電がなされることとなるため、図6におけるステップS18の組電池20の補充電は不要となる。
【0085】
また、本変形形態6では、電池特性取得部63は、二次電池2の放電後に充電を行うことにより、放電電圧特性を取得した後に充電電圧特性を取得することとしたがこれに限らず、二次電池の充電後に放電を行うことにより、充電電圧特性を取得した後に放電電圧特性を取得することとしてもよい。
【0086】
また、本変形形態6では、電池特性取得部63は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得することとしたが、これに替えて、充電電圧特性のみを取得することとしてもよい。この場合は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得する場合に比べて判定精度が劣るおそれがある。その一方で、二次電池21~26がニッケル水素電池である場合にはメモリ効果が生じている場合があり、放電電圧特性のみを取得する際に、放電電圧特性はメモリ効果の影響により電圧推移にバラツキが生じて判定精度の向上が抑制されるおそれがある。しかしながら、残容量の放電後に取得する充電電圧特性のみを取得する場合には、充電電圧特性はメモリ効果の解除が図られた後となるため、メモリ効果の影響が少ないため、判定精度の向上が期待できる。
【0087】
また、本変形形態6における充電電圧特性は、実施形態1の放電電圧特性の場合と同様に、所定の充電目標電圧VQまで充電されて充電が停止された後に開放電圧まで戻る電圧緩和時の電圧推移に基づいて算出することとしてもよい。例えば、図13に示す変形形態7のように、第1の二次電池21において充電が停止された時間TQ1以後の電圧緩和における所定の電圧区間VsBでの電圧推移に基づいて、符号21Bで示す所定電圧VBでの微分値を算出して充電電圧特性としてもよい。同様に第2の二次電池22において充電が停止された時間TQ2以後の電圧緩和における所定の電圧区間VsBでの電圧推移に基づいて、符号22Bで示す所定電圧VBでの微分値を算出して充電電圧特性としてもよい。この場合も、本実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0088】
以上のごとく、上記態様によれば、高精度に二次電池2の劣化度の判定が可能な二次電池の劣化度判定システム100を提供することができる。
【0089】
なお、本変形形態6でも、実施形態1の場合の変形形態と同様に、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、全容量を推定せずに劣化度判定部65が二次電池2の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部63は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、劣化度判定部65は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、劣化度判定部65は、電池特性取得部63が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池2の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池2の劣化度と劣化度の差分とが所定範囲内となるように二次電池2をクラス分けして組電池20を組み上げてもよい。
【0090】
(実施形態2)
実施形態1の劣化度判定システム100では、図1に示すように、サーバ1が、記憶部5、演算部6、更新部8及び通信部10を備え、外部端末9が、検出部3、格納部4、制御部7、通信部90及び表示部93を備えることとしたが、サーバ1が備える構成の一部を外部端末9が備えることとしてもよい。実施形態2の劣化度判定システム100では、図14に示すように、サーバ1が、更新部8及び通信部10を備え、外部端末9が、検出部3、格納部4、記憶部5、演算部6、制御部7、通信部90及び表示部93を備える。
【0091】
本実施形態2では、図14に示す外部端末9の送信部91は、演算部6における電池特性取得部63により取得された容量電池特性をサーバ1に送信する。サーバ1の受信部12は、外部端末9から送信された容量電池特性を受信して、サーバ1における推定式更新部81が更新情報を作成する。サーバ1における送信部11は、推定式更新部81による更新情報を外部端末9に送信する。外部端末9の受信部92はサーバ1から送信された更新情報を受信して、外部端末9の推定式記憶部52に記憶された推定式を更新する。さらに、更新情報に基づいて外部端末9の推定式記憶部52に記憶された基準値を更新してもよい。なお、その他の構成は実施形態1の場合と同様であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
本実施形態2では、サーバ1が更新部8が更新した推定式を外部端末9に送信する送信部11をさらに備え、外部端末9が二次電池2を充放電して容量電池特性を取得する電池特性取得部63と容量電池特性をサーバ1に送信する送信部91とを備える。これにより、サーバ1で複数の外部端末9から受信した容量電池特性に基づいて各外部端末9に記憶された推定式等を更新することができるため、外部端末9とサーバ1との間のデータの通信量を少なくすることができる。これにより、通信速度の低下が防止されるため、劣化度判定が遅延することを抑制しつつ、高い判定精度を維持することができる。なお、本実施形態2においても、実施形態1においてサーバ1が記憶部5、演算部6及び制御部7を備えることによる作用効果を除いて、実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0093】
また、本実施形態2では、外部端末9が上記に加えて、推定式等が記憶された推定式記憶部52と、更新情報を受信する受信部92と、更新情報に基づいて推定式等を更新する更新部8と、二次電池2の劣化度を判定する劣化度判定部65と、劣化度判定部65による判定結果を表示する表示部93とをさらに有する。これにより、サーバ1と通信しなくても外部端末9のみで二次電池の劣化度判定を行うことができる。そのため、良好な通信状態を確保できない場合や通信ネットワーク200と接続できない場所においても劣化度判定を行うことができ、使い勝手が向上する。
【0094】
本実施形態2の劣化度判定システム1による劣化度の判定方法のフローについて、以下に説明する。
まず、図5に示す実施形態1のステップS1、S2と同様に、図15に示すステップS1、ステップS2を行い、外部端末9を用いて充放電制御部71により、二次電池21~26を個別に残容量の放電を行う。そして、図5に示す実施形態1のステップS3~S8と同様に、図15に示すステップS3~S8を外部端末9において行う。その後、図15に示すステップS83に進み、外部端末9の表示部93に判定結果を表示する。そして、ステップS9に進み、今回の劣化度の判定を終了する。
【0095】
その後、図15に示す記号Aに進み、ステップS10において、外部端末9の要否判定部60により、容量電池特性の取得の要否を判定する。本実施形態2においても、実施形態1の場合と同様に、ステップS5において可否判定部62により劣化度の判定が不可と判定された二次電池について容量電池特性の取得を要と判定し、劣化度の判定が可と判定された二次電池について容量電池特性の取得を不要と判定する。ステップS10において、容量電池特性の取得が要と判定された二次電池がないと判定された場合は、ステップS10のNoに進み、この制御フローを終了する。一方、ステップS10において容量電池特性の取得が要と判定された二次電池があると判定された場合は、ステップS10のYesに進む。
【0096】
その後、図15に示すステップS11において、上記指示情報に基づき容量電池特性の取得が要と判定された二次電池2について、外部端末9の充放電制御部71により充放電を行って容量を測定し実測値を取得した後、ステップS112において、外部端末9の電池特性取得部63により、当該実測値に基づいて容量電池特性を取得する。
【0097】
そして、図15に示すステップS101に進み、外部端末9の送信部91により容量電池特性をサーバ1に送信し、サーバ1の受信部12により当該容量電池特性を受信する。その後、ステップS12において、推定式更新部81により当該容量電池特性を追加の訓練データとして推定式記憶部52に記憶された可否判定基準及び推定式を更新することを指示する指示情報を外部端末9に送信し、外部端末9の受信部92により当該指示情報を受信する。これにより、外部端末9の推定式記憶部52に記憶された可否判定基準及び推定式を更新する、当該可否判定基準及び推定式は次回以降の劣化度判定に用いられることとなる。当該実施形態2の劣化度判定システム100及びサーバ1においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0098】
なお、上述の変形形態1では実施形態1の構成においてさらにサーバ1にカウンタが備えられることとしたが、これと同様に、変形形態9では、実施形態2の構成においてさらに外部端末9にカウンタが備えられている。変形形態9における制御フローでは、図16に示すように、ステップS10において容量電池特性の取得が要と判定された二次電池があると判定された場合は、実施形態2と同様にステップS10のYesからステップS102に進んで、外部端末9に備えられた図示しないカウンタのカウント数を加算する。そして、ステップS103においてカウント数が所定値に達していないと判定された場合は、ステップS103のNoに進んで、外部端末9は容量の測定をせずに当該フローを終了する。一方、ステップS103においてカウント数が所定値に達したと判定された場合は、ステップS103のYesからステップS11に進んで、本実施形態2の場合と同様にステップS11以降を実施する。変形形態9においても、推定式の更新頻度が過度に多くなることを抑制して適切な頻度で更新を行うことができ、劣化度の判定精度を高く維持しつつ、外部端末9の演算負荷が過度に大きくなることを抑制できる。
【0099】
さらに、上述の変形形態2では変形形態1のカウンタに替えてサーバ1が時間計測部を有することとしたが、これと同様に、変形形態10では変形形態9のカウンタに替えて外部端末9が時間計測部を有する。当該変形形態10では、時間計測部は、推定式更新部81が更新をした時点で時間計測を開始する。そして、当該変形形態10における制御フローでは、図17に示すように、記号AからステップS91に進んで、外部端末9の時間計測部により前回更新から所定時間が経過したか判定する。所定時間が経過していないと判定された場合は、ステップS91のNoに進んで、上記容量電池特性の取得の要否を判定せずに当該フローを終了する。一方、ステップS91において所定時間が経過したと判定された場合は、ステップS91のYesからステップS10に進んで、本実施形態2の場合と同様にステップS10以降を実施する。そして、ステップS12の後、ステップS121において時間計測部における時間計測をリセットしてリスタートする。
【0100】
変形形態10によれば、要否判定部60は、更新部8が行った前回の更新から所定時間経過した場合に容量電池特性の取得の要否を判定することとなる。これにより、推定式の更新頻度が過度に多くなることを抑制して適切な頻度で更新を行うことができ、劣化度の判定精度を高く維持しつつ、外部端末9の演算負荷が過度に大きくなることを抑制できる。
【0101】
なお、本実施形態2では、外部端末9が演算部6の構成要素の全部を有することとしたが、これに替えて演算部6の構成要素をサーバ1と外部端末9との間で任意に振り分けて備えることとしてもよい。例えば、図18に示す変形形態11では、演算部6の構成要素のうち、要否判定部60、可否判定部62、容量推定部64及び劣化度判定部65はサーバ1に備えられ、電池情報取得部61及び電池特性取得部63は外部端末9に備えられることとしてもよい。
【0102】
当該変形形態11では、外部端末9における電池特性取得部63は、二次電池2における所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性又は電池特性に関係する電池特性関係値を取得し、外部端末9の送信部91は、電池特性取得部63が取得した電池特性又は上記電池特性関係値をサーバ1に送信する。これにより、外部端末9とサーバ1との間のデータ通信量を低減しつつ、外部端末9における演算負荷を低減して外部端末9に要求されるスペックを抑えて外部端末9の低コスト化を図ることができる。そのため、劣化度判定システム100が多数の外部端末9を備える場合に有利となる。
【0103】
(実施形態3)
上述の実施形態1及び実施形態2の劣化度判定システム1では、電池情報取得部61は電池情報として電池特性取得部63により取得される二次電池2の電池特性を取得することとした。これに替えて、実施形態3では、電池情報として二次電池2の履歴情報を取得する。二次電池21~26の履歴情報とは、各二次電池21~26における充電電気量、放電電気量、電池温度、充電状態(SOC)、均等化回数、外気温度、当該二次電池が搭載された装置の使用期間、温度などの所定期間における最大値、最小値、平均値、累積値、などとすることができる。当該所定期間は、現在までの任意の期間とすることができ、現在までの全期間としてもよい。その他の構成は実施形態1の場合と同様であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
そして、本実施形態3における劣化度判定のフローでは、図19に示すように、まず、実施形態1の場合と同様に、ステップS1を行う。その後、ステップS40に進み、サーバ1の電池情報取得部61により、通信ネットワーク200を介して外部端末9において二次電池21~26の電池情報の取得を試みる。本実施形態3では、電池情報取得部61は、例えば、電池情報Aとして、二次電池21~26におけるそれぞれの充電電気量の履歴情報の取得を試み、電池情報Bとして二次電池21~26におけるそれぞれの温度履歴の取得を試みる。なお、ここで取得を試みる履歴情報の種類はこれらに限定されない。
【0105】
次に、図19に示すステップS41に進み、外部端末9において電池情報A、Bを取得できたか否かを判定する。ステップS41で当該電池情報A、Bを取得できなかった場合は、ステップS41のNoに進み、ステップS42において測定不良であるとして二次電池2の劣化度の判定をせずに当該フローを終了する。
【0106】
一方、図19に示すステップS41で外部端末9において電池情報を取得できた場合は、ステップS41のYesに進む。ステップS45において、外部端末9の送信部91からサーバ1に電池情報を送信し、サーバ1の受信部12により電池情報を受信する。そして、ステップS5において、実施形態1の場合と同様に、サーバ1の可否判定部62により、劣化度の判定の可否を判定する。二次電池21~26のうち、取得した電池情報が可否判定基準内にないものについては、劣化度の判定が可能でないと判定して、実施形態1の場合と同様に、ステップS6及びS9を行って図5の記号Aに進み、ステップS10~S12を行って当該フローを終了する。
【0107】
一方、図19に示すステップS5において、二次電池21~26のうち、取得した電池情報が可否判定基準内にあるものについては、可否判定部62は劣化度の判定が可能であると判定し、ステップS5のYesに進む。そして、ステップS20において、二次電池21~26のうち、劣化度判定が可能と判定されたものについて、図5に示す実施形態1のステップS5と同様に、個別に残容量の放電を行う。また、二次電池21~26がニッケル水素電池である場合には、メモリ効果の解除も同時に行われる。
【0108】
その後、図19に示すステップS21において、実施形態1の場合と同様に、外部端末9において検出部3による検出値を送信部91によりサーバ1に送信し、サーバ1の受信部12により当該検出値を受信する。その後、ステップS3において、劣化度の判定が可能と判定されたものについて、電池特性として放電電圧特性を取得する。そして、実施形態1の場合と同様に、ステップS7~S9を行い、記号Aに進んで、図5に示すS10~S12を行って当該フローを終了する。
【0109】
本実施形態3では、電池情報取得部61は電池情報として、二次電池21~26における履歴情報を取得する。これにより、二次電池21~26の履歴情報に基づいて劣化度の判定の可否が判断されるため、判定精度を高めることができる。
【0110】
上述の実施形態1の劣化度判定システム100では電池情報取得部61は電池情報として電池特性取得部63により取得される二次電池2の電池特性を取得し、実施形態3の劣化度判定システム100では電池情報取得部61は電池情報として二次電池2の履歴情報を取得することとした。これに替えて、変形形態12の劣化度判定システム100では、電池情報として電池特性取得部63が取得する電池特性と二次電池2の履歴情報との両方を取得するように構成されている。その他の構成は実施形態1及び実施形態3の場合と同様であって、実施形態1及び実施形態3の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0111】
そして、変形形態12における劣化度判定のフローでは、図20に示すように、まず、実施形態3の場合と同様に、ステップS1、ステップS40及びステップS41を行う。ステップS41で外部端末9において電池情報を取得できなかった場合は、実施形態3の場合と同様に、ステップS41のNoに進み、ステップS42において測定不良であるとして二次電池2の劣化度の判定をせずに当該フローを終了する。
【0112】
一方、図20に示すステップS41において電池情報を取得できた場合は、図5に示す実施形態1の場合のステップS2~ステップS3と同様に、図20に示すステップS2において、電池情報を取得できた二次電池の残容量の放電と二次電池がニッケル水素電池である場合にはメモリ効果の解除も同時に行う。そして、ステップS21において外部端末9において検出部3による検出値を送信部91によりサーバ1に送信し、サーバ1の受信部12により当該検出値を受信する。その後、ステップS3において、劣化度の判定が可能と判定されたものについて、電池特性として放電電圧特性を取得し、ステップS50に進む。
【0113】
図20に示すステップS50では、可否判定部62により、電池情報としての二次電池21~26の電池特性及び履歴情報と、可否判定基準とに基づいて、劣化度の判定の可否を判定する。二次電池21~26のうち、取得した電池情報が可否判定基準内にないものについては、劣化度の判定が可能でないと判定して、実施形態1の場合と同様に、ステップS6及びS9を行って図5の記号Aに進み、ステップS10~S12を行って当該フローを終了する。一方、二次電池21~26のうち、劣化度の判定が可能であると判定されたものについては、実施形態1の場合と同様に、ステップS7~S9を行って図5の記号Aに進み、ステップS10~S12を行って当該フローを終了する。
【0114】
当該変形形態12によれば、上述のごとく劣化度の判定の可否判定に用いられる電池情報は、二次電池21~26における電池特性及び履歴情報の両方を含むため、一層高精度に劣化度の判定の可否を判定することができる。なお、当該変形形態12においても、実施形態1、2の場合と同様の作用効果を奏する。
【0115】
(実施形態4)
本実施形態4の劣化度判定システム100は、上記実施形態3の場合と同様の構成を有する。そして、本実施形態4においては、推定式記憶部52には、第1の可否判定基準D1と第2の可否判定基準D2とが記憶されている。本実施形態4では、第1の可否判定基準D1はデータ間距離D1としてマハラノビス距離D1が記憶されており、第2の可否判定基準D2はデータ間距離D2としてマハラノビス距離D2が記憶されており、両者の関係はD1<D2としている。
【0116】
また、本実施形態4においては、対応関係記憶部51には、第1の対応関係と第2の対応関係とが記憶されている。第1の対応関係は、第1の可否判定基準D1により劣化度の判定が可能であると判定された二次電池の劣化度を判定するのに適合した対応関係である。また、第2の対応関係は、第2の可否判定基準D2により劣化度の判定が可能であると判定された二次電池の劣化度を判定するのに適した対応関係である。当該対応関係は、実施形態1の場合と同様に作成することができる。
【0117】
次に、本実施形態4の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法のフローについて、図21を用いて以下に説明する。なお、本実施形態4において、図19に示す実施形態3の場合と同等のものは、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態4におけるフローでは、図19に示す実施形態3の場合に替えて、図21に示すように、ステップS44においてサーバ1で電池情報を受信した後、ステップS51において、可否判定部62により、第1の可否判定基準D1に基づいて電池情報が取得できた二次電池の劣化度の判定が可能か否かを判定する。そして、ステップS51において、当該二次電池のうち劣化度の判定が可能であると判定されたものについては、ステップS51のYesに進み、図19に示す実施形態3のステップS20~ステップS3と同様に図21に示すステップS20、ステップS21及びステップS3を行う。
【0118】
その後、図21に示すステップS71において、容量推定部64により、対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づく電池特性と全容量との第1の対応関係に基づいて、電池特性取得部63が取得した電池特性から、二次電池21~26のうち、ステップS51で劣化度の判定が可能であると判定されたものについて全容量すなわち満充電容量又は満放電容量を推定する。そして、実施形態3の場合と同様にステップS8において劣化度を判定し、ステップS9を行って図5の記号Aに進み、ステップS10~S12を行って当該フローを終了する。
【0119】
一方、図21に示すステップS51において、二次電池21~26のうち第1の可否判定基準D1に基づいて劣化度の判定が可能でないとものについては、ステップS51のNoに進む。そして、ステップS52において、二次電池21~26のうち、ステップS51で劣化度の判定が可能でないと判定されたものについて、可否判定部62により第2の可否判定基準D2に基づいて劣化度の判定が可能か否かを判定する。そして、ステップS52において、劣化度の判定が可能であると判断された場合は、ステップS52のYesに進み、図19に示す実施形態3の場合のステップS20~ステップS3と同様に図21に示すステップS22、ステップS23及びステップS24を行う。
【0120】
その後、図21に示すステップS72において、容量推定部64により、対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づく電池特性と全容量との第2の対応関係に基づいて、電池特性取得部63が取得した電池特性から、二次電池21~26のうち、ステップS52で劣化度の判定が可能であると判定されたものについて、全容量すなわち満充電容量又は満放電容量を推定する。そして、実施形態3の場合と同様にステップS8において劣化度を判定し、ステップS9に進んで今回の劣化度の判定を終了する。一方、二次電池21~26のうち、ステップS52において劣化度の判定が可能でないと判断されたものについては、ステップS52のNoに進み、実施形態1の場合と同様にステップS6及びS9に進んで今回の劣化度の判定を終了する。ステップS9の後は、図5の記号Aに進み、ステップS10~S12を行って当該フローを終了する。
【0121】
本実施形態4の劣化度判定システム100では、複数の可否判定基準として、第1の可否判定基準D1と第2の可否判定基準D2とを有し、複数の対応関係として、それぞれの可否判定基準により劣化度の判定が可能と判定されたものに適した第1の対応関係と第2の対応関係とを有する。これにより、劣化度の判定可否の基準と劣化度の判定の基準との整合性が高く、より高精度に劣化度の判定を行うことができる。なお、本実施形態においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0122】
(実施形態5)
実施形態5の劣化度判定システム100では、図22に示すように、演算部6は、車両情報取得部66をさらに備える。車両情報としては、車両900の車種、組電池や二次電池のモジュール等の品番、組電池におけるモジュールの位置、車両900の製造年や使用期間や走行距離、車両900の販売店の所在地などを例示することができる。そして、推定式記憶部52には、劣化度の判定の可否を判断するための車両情報の判定基準として、車両情報基準が記憶されている。本実施形態5では、車両情報として、特定の車種が複数記憶されている。また、対応関係記憶部51には、当該特定の車種に応じた対応関係がそれぞれ記憶されている。その他の構成は図1に示す実施形態1及び図示しない実施形態3の場合と同様であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0123】
次に、本実施形態5の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法のフローについて、図23を用いて以下に説明する。本実施形態5において、図19に示す実施形態3の場合と同等のものは、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態5におけるフローでは、図19に示す実施形態3のステップS40に替えて、図23に示すように、ステップS1の後、ステップS46に進み、車両情報取得部66により、通信ネットワーク200を介して外部端末9において組電池20が搭載された車両900の車両情報の取得を試みる。そして、ステップS47において、外部端末9の送信部91から車両情報をサーバ1へ送信し、サーバ1の受信部12により当該車両情報を受信する。なお、当該車両情報は限定されないが、本実施形態5では車両900の車種としている。
【0124】
その後、図23に示すステップS48において、可否判定部62により、車両情報取得部66が取得した車両情報が車両情報基準に該当するか否かを判定する。本実施形態5では、車両情報取得部66により取得された車種が推定式記憶部52に記憶された特定の車種に該当するか否かを判定する。ステップS48において、当該車種が特定の車種に該当しないと判定された場合は、ステップS48のNoに進み、実施形態3の場合と同様にステップS42において劣化度の判定を行わず当該フローを終了する。
【0125】
一方、図23に示すステップS48において、取得された車両情報が車両情報基準に該当すると判定された場合には、ステップS48のYesに進む。そして、実施形態3の場合と同様にステップS40以降制御フロー終了までを実施する。ただし、ステップS73では、実施形態3の場合のステップS7に替えて、容量推定部64によって車両情報に応じて全容量を推定する。すなわち、容量推定部64において当該全容量の推定に用いる推定式を車両情報に応じて変更する。
【0126】
本実施形態5の劣化度判定システム100によれば、容量推定部64は車両情報として車種に対応した全容量を推定する推定式を利用することにより、車種に応じて劣化度を判定することができ、より一層推定精度が向上される。なお、本実施形態5の劣化度判定システム100によっても、本実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0127】
(実施形態6)
本実施形態6の劣化度判定システム100では、図1に示す実施形態1の構成に加えて、図24に示すように演算部6がインピーダンス特性取得部67を備える。インピーダンス特性取得部67は、複素インピーダンス測定を行う構成を有しており、二次電池21~26のインピーダンスを測定可能に構成されている。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0128】
本実施形態6では、電池特性取得部63は実施形態1の場合と同様に、図3に示す所定の電圧区間Vsにおける放電電圧特性を取得する。そして、インピーダンス特性取得部67は、図3に示す放電終了時TP1、TP2において複素インピーダンス測定を行い、所定の周波数におけるインピーダンスを取得し、複素平面上にて実軸と虚軸の値を算出する。
【0129】
ここで、インピーダンス特性は、所定の周波数f1におけるインピーダンスの実軸と虚軸の値、実軸の値と虚軸の値から算出される絶対値を用いることができる。またそれに加えて、所定の周波数f1における実軸の値と虚軸の値から算出される偏角を用いることもできる。また、所定の周波数f1と所定の周波数f2における実軸の値の差分、虚軸の値の差分、実軸の値の差分と虚軸の値の差分から算出される絶対値の差分、偏角を用いることもできる。
【0130】
なお、対応関係記憶部51には、インピーダンス特性と全容量との対応関係が予め記憶されている。当該対応関係は、測定用の二次電池2を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池を用いて加速劣化試験を行って得られた実測値を基に作成したり、二次電池のモデルを用いて所定の電圧におけるインピーダンス特性と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。
【0131】
本実施形態6では、実施形態1と同様に、可否判定部62によって劣化度判定の可否を判定した後、図24に示す容量推定部64は、電池特性取得部63が取得した放電電圧特性とインピーダンス特性取得部67が取得したインピーダンス特性とに基づき、二次電池2の全容量を推定する。劣化度判定部65は実施形態1の場合と同様に容量推定部64の推定結果に基づいて、二次電池2の劣化度を判定する。本実施形態6によれば、放電電圧特性とインピーダンス特性とに基づいて全容量が推定されるため、判定精度を一層向上することができる。
【0132】
なお、本実施形態6では、インピーダンス特性取得部67が複素インピーダンス測定を行うタイミングを放電終了時TP1、TP2としたが、これに限らず、他のタイミングで行うこととしてもよい。例えば、変形形態4のように電池特性取得部63が充電電圧特性を取得する場合には、図12に示す充電終了時TQ1、TQ2でインピーダンス特性取得部67が複素インピーダンス測定を行うこととしてもよい。また、容量推定部64はインピーダンス特性の代わりに、インピーダンス特性に基づいて算出されたインピーダンス特性関係値を用いてもよい。インピーダンス特性関係値として、例えば、インピーダンス特性取得部67により取得されたインピーダンス特性の差分を採用することができる。
【0133】
そして、本実施形態6の劣化度判定システム100によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、電池特性と、二次電池が放電又は充電されたときのインピーダンスに関するインピーダンス特性とを用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0134】
なお、本実施形態6でも、電池特性取得部63が取得した電池特性とインピーダンス特性とに基づいて、全容量を推定せずに、劣化度判定部65が二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部63は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、劣化度判定部65は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、劣化度判定部65は電池特性取得部63が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池21~26の劣化度と劣化度の差分とが所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池20を組み上げてもよい。
【0135】
(実施形態7)
本実施形態7では、図1に示す実施形態1の構成に加えて、図25に示すように初期電圧取得部68を備える。初期電圧取得部68は、図26に示すように、放電開始時Tにおける二次電池2の開放電圧である初期電圧VI1、VI2を取得する。そして、対応関係記憶部51には、初期電圧の値と電池特性と全容量との対応関係が予め記憶されている。当該対応関係は実施形態1の場合と同様に作成することができる。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0136】
本実施形態7の劣化度判定システム100によれば、電池特性に加えて初期電圧も考慮されて二次電池2の劣化度が判定されるため、簡易な構成で判定精度を一層向上することができる。なお、初期電圧に替えて、初期電圧に基づいて算出された初期電圧関係値を用いてもよい。初期電圧関係値として例えば、初期電圧の絶対値としたり、初期電圧取得部68により取得された初期電圧の差分としたりすることができる。
【0137】
そして、本実施形態7の劣化度判定システム100によれば、使用履歴を有する二次電池21~26を含む組電池20であって、複数の二次電池21~26が、電池特性の取得を開始するときの二次電池21~26の開放電圧である初期電圧と電池特性とを用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池20を提供することができる。かかる組電池20では、組電池20に含まれる二次電池21~26劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池20の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0138】
なお、本実施形態7でも、実施形態1の場合の変形形態と同様に、電池特性取得部63が取得した電池特性と初期電圧とに基づいて、全容量を推定せずに、劣化度判定部65が二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部63は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、劣化度判定部65は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、劣化度判定部65は電池特性取得部63が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池21~26の劣化度と劣化度の差分とが所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池20を組み上げてもよい。
【0139】
また、他の変形形態13として、図27に示すように、演算部6が二次電池21~26の内部抵抗を取得する内部抵抗取得部69を有しており、対応関係記憶部51に内部抵抗と電池特性と全容量との対応関係が予め記憶されていることとしてもよい。内部抵抗取得部69において、内部抵抗は、電圧値検出部31により検出された電圧値そのものである測定電圧と、二次電池21~26の開放電圧と、二次電池21~26に流れる電流とから算出して取得することができる。なお、二次電池2の開放電圧は、二次電池21~26の残放電量と初期電圧との対応関係を示すマップを用いて時間ごとに推定して取得することができる。本変形形態13の劣化度判定システム100によれば、電池特性に加えて内部抵抗も考慮されて二次電池21~26の劣化度が判定されるため、簡易な構成で判定精度を一層向上することができる。
【0140】
(実施形態8)
本実施形態8の劣化度判定システム100は、図1に示す実施形態1の構成に加え、図28に示すように温度検出部33を備える。そして、上述の実施形態1では電池特性取得部63は、電池特性として所定の電圧区間Vsにおける二次電池2の電圧推移に基づく放電電圧特性を取得するように構成したが、本実施形態8では、これに替えて、電池特性取得部63は、電池特性として所定の電圧区間VsA、VsBにおける二次電池2の温度推移に基づく温度特性を取得する。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、電圧区間VsAは二次電池2の劣化度に応じて、放電電圧特性の差異が顕著となっている区間であり、電圧区間VsBは二次電池2の劣化度に応じて、充電電圧特性の差異が顕著となっている区間である。
【0141】
本実施形態8では、図29(a)、図29(b)に示すように、温度検出部33により、充放電中の二次電池2の温度を取得する。本実施形態8では劣化度の判定が可能と判定された二次電池2として、組電池20から取り出した第1の二次電池21と、別の組電池から取り出した第7の二次電池27とを採用している。
【0142】
充放電における二次電池2の温度推移は、組み込まれていた組電池が異なる場合には、二次電池2の測定環境やソーク状態により異なった挙動を示すことがある。本実施形態8では、図29(b)に示すように、第1の二次電池21と第7の二次電池27における温度推移は、測定した室温設定範囲Tn内に収まっているが、互いに若干異なる挙動を示している。そして、本実施形態8では、可否判定部62により劣化度の判定が可能と判定された後、放電における所定の電圧区間VsAと、放電後の充電における所定の電圧区間VsBとの両方において温度検出部33により検出した電池温度に基づいて、電池特性取得部63が放電における温度特性と充電における温度特性を取得する。そして、容量推定部64が両温度特性に基づいて各二次電池21、27の全容量を推定して、劣化度判定部65が劣化度を判定する。
【0143】
電池特性取得部63が取得する温度特性は、実施形態1の場合の放電電圧特性を算出する場合及び実施形態4の場合の充電電圧特性を算出する場合と同様に、所定の電圧区間VsA、VsBにおける所定電圧VA、VBでの温度変化の微分値としたり、所定の電圧区間VsA、VsBにおける2点間の温度変化の割合としたり、電圧区間VsA、VsBにおける二次電池2の容量変化に対する二次電池2の温度変化の割合としたりすることができる。
【0144】
本実施形態8においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏することができる。なお、本実施形態8では、温度特性として、放電と充電の両方において取得することとしたが、これに限らず、放電と充電の一方のみとしてもよい。
【0145】
そして、本実施形態8の劣化度判定システム100によれば、使用履歴を有する二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、所定の電圧区間VsA、VsBにおける二次電池の温度推移に基づく温度特性を含む電池特性を用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の品質向上を図ることができる。
【0146】
なお、本実施形態8でも、電池特性取得部63が取得した温度特性に基づいて、全容量を推定せずに、劣化度判定部65が二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部63は取得した値の絶対値を温度特性として取得し、劣化度判定部65は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、劣化度判定部65は電池特性取得部63が取得した温度特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池21~26の劣化度と劣化度の差分とが所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池20を組み上げてもよい。
【0147】
本実施形態8では、図29(a)に示すように、充電時の温度特性として充電目標電圧VQが通常使用範囲Vn内であって通常使用範囲Vn内に所定の電圧区間VsAがあるときの温度特性を取得することとしたが、これ替えて、図30(a)に示す変形形態14のように、充電時の温度特性として、充電目標電圧VQが通常使用範囲Vnを超えており通常使用範囲Vnを超えた領域に所定の電圧区間VsBがあるときの温度特性を取得することとしてもよい。この場合、図30(b)に示すように二次電池21、27の温度は上昇しやすいため、温度推移に劣化度が反映されやすくなる。その結果、判定精度の向上を図ることができる。なお、本変形形態14では、二次電池21、27を充電目標電圧VQまで充電した後に放電を行って二次電池21、27の電圧を通常使用範囲Vn内に戻している。
【0148】
また、変形形態14では二次電池2の放電を行った後、充電を行ってその後再度放電を行うこととしたが、これに替えて、図31(a)、図31(b)に示す変形形態15のように、最初に放電を行わずに、先に充電を行ってから放電を行うこととしてもよい。この場合、電池特性取得部63は、充電時に充電時の温度特性を取得した後、放電時に放電時の温度特性を取得することとしてもよい。この場合も実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0149】
(実施形態9)
上述の実施形態1では、推定部としての容量推定部64は、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、二次電池2の全容量を推定することとしたが、これに限らず、容量推定部64は、正極容量、負極容量、負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量、二次電池21~26を構成する複数のセル間の全容量バラツキ、上記二次電池21~26の電池抵抗、正極抵抗、負極抵抗のうちの少なくともいずれか一つを推定することとしてもよい。そして、実施形態9では、容量推定部64は二次電池21~26のそれぞれの正極容量Qcを推定することとする。さらに、対応関係記憶部51には、電池特性と正極容量Qcとの対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態及び作成方法は特に限定されず、実施形態1の場合と同様に、例えば、算出式、マップ、グラフ、表などの形態とすることができる。当該対応関係は、測定用の二次電池2を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池2を用いて加速劣化試験を行って得られた実測定値を基に作成したり、二次電池2のモデルを用いて所定の電圧区間における電池特性と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。本実施形態9では、対応関係記憶部51には、例えば、図32(a)~(c)に示す予測モデルに基づき、電池特性と正極容量Qcとの対応関係が記憶されている。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0150】
次に、本実施形態9の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法について、以下に説明する。なお、図5に示す実施形態1の場合と同様のステップについては、同一の符号を用いてその説明を省略する場合がある。
まず、本実施形態9では、図5に示す実施形態1の場合と同様に、図33に示すステップS1~S5行う。これにより、図34(a)に示すように、電池特性取得部63により各二次電池21~26の電池特性として放電カーブを、所定の電圧区間Vsにおいて取得する。なお、所定の電圧区間は、特定のSOC範囲に対応する区間とすることができる。
【0151】
次いで、図33に示すステップS74において、容量推定部64により、対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づき、電池特性と正極容量Qcとの対応関係に基づいて、電池特性取得部63が取得した放電カーブから、二次電池21~26の正極容量Qcを推定する。その後、図33に示すステップS8において、劣化度判定部65により、容量推定部64が推定した正極容量Qcに基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他のステップは図5に示す実施形態1の場合と同様に行う。ただし、図5に示す実施形態1のステップS11では容量の実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信していたが、本実施形態9ではこれに替えて図33に示すステップS11では正極容量Qcの実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。本実施形態9においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0152】
なお、本実施形態9では、電池特性取得部63により図34(a)に示す放電カーブを取得したが、これに替えて、図34(b)に示す充電カーブを取得してもよい。この場合も実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0153】
(実施形態10)
上記実施形態9では、容量推定部64は、正極容量Qcを推定することとしたが、これに替えて、本実施形態10では、容量推定部64は負極容量QAを推定する。すなわち、実施形態10では、図35に示すように、ステップS75において、容量推定部64により、図32(a)~(c)に示す予測モデルに基づき、電池特性と負極容量QAとの対応関係に基づいて二次電池21~26の負極容量QAを推定する。その後、図35に示すステップS8において、劣化度判定部65により、容量推定部64が推定した負極容量QAに基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他のステップは実施形態1と同様であるが、ステップS11では負極容量QAの実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。当該実施形態10においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0154】
(実施形態11)
本実施形態11では、容量推定部64は二次電池21~26のそれぞれの負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量を推定する。さらに、対応関係記憶部51には、電池特性と負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量との対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態及び作成方法は特に限定されず、実施形態1の場合と同様とすることができる。
【0155】
例えば、二次電池21~26がニッケル水素電池からなる場合は、図36に示すように、電槽容器中から水素が反応系から抜け出ると、負極SOCと正極SOCとの相対関係がずれるため、負極のOCV曲線は図の右側にずれることとなる。例えば、二次電池21~26がリチウムイオン電池からなる場合は、図36に示すように、電解液中のリチウムがSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜の形成で消費されることにより、負極SOCと正極SOCとの相対関係がずれるため、負極のOCV曲線は図の右側にずれることとなる。
【0156】
本実施形態11では、図36に示す予測モデルに基づき、負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量Qxと、電池特性との対応関係が対応関係記憶部51に記憶されている。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0157】
本実施形態11の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法では、上述の実施形態9の場合と同様に行うが、図37に示すようにステップS3において、電池特性取得部63は電池特性として電池としての低SOC範囲に対応する所定の電圧区間Vsの放電カーブを取得する。その後、図5に示す実施形態1の場合と同様に、図37に示すステップS4~ステップS5を行う。そして、ステップS76において、容量推定部64により、当該放電カーブから算出される電池特性との対応関係記憶部51に記憶された負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量Qxとの対応関係に基づいて、二次電池21~26のズレ量Qxを推定する。その後、図37に示すステップS8において、劣化度判定部65により、容量推定部64が推定したズレ量Qxに基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他のステップは実施形態1と同様であるが、ステップS11ではズレ量Qxの実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。当該実施形態11においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。なお、本実施形態11では電池特性を電池としての低SOC範囲から取得したが、これに替えて高SOC範囲から取得してもよい。また、本実施形態11では電池特性として放電カーブを取得したが充電カーブを取得してもよい。
【0158】
(実施形態12)
本実施形態12では、対応関係記憶部51には、二次電池21~26ごとに電池特性と充放電カーブにおける放電容量の変化量との対応関係が記憶されており、容量推定部64は、所定の電圧区間Vsにおける充放電カーブにおける放電容量の変化量を推定し、劣化度判定部65は、劣化度として推定結果に基づいてセルの自己放電量が大きくなっているかを検知する。本実施形態12では、その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0159】
本実施形態12では、二次電池21~26はそれぞれ6つのセルを有している。そして、例えば、図38(a)に示す放電カーブは初期状態を示す放電カーブとして対応関係記憶部51に記憶されており、図38(b)に示す放電カーブはセルの一つが自己放電量が大きくなっていることを示す放電カーブとして対応関係記憶部51に記憶されている。容量推定部64により所定の電圧区間Vsの電池特性に基づいて、図38(a)に示す放電カーブに推定された場合は、劣化度判定部65において自己放電量が大きくなっているセルがないと判定される。一方、容量推定部64により所定の電圧区間Vsの電池特性に基づいて、図38(b)に示す放電カーブに推定された場合は、劣化度判定部65において自己放電量が大きくなっているセルが一つあると判定される。なお、図38(b)に示す放電カーブに推定された場合は、使用下限を二次電池において自己放電量が大きくなっているセルがない場合の第1使用下限Vmin1よりも高い値である第2使用下限Vmin2に設定することができる。これにより、各セルが過剰に放電することを防止できる。
【0160】
(実施形態13)
本実施形態13では、二次電池21~26はそれぞれ、6個のセルを含む。そして、対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26内におけるセル間の全容量バラツキと電池特性との対応関係が記憶されている。セル間の全容量バラツキとは、一つの二次電池21~26に含まれた複数のセルにおいて、各セルの全容量のバラツキの程度を示す。本実施形態13では、セル間の全容量バラツキとして、図39に示すように、複数のセルの全容量における最大Qmaxから最小Qminを差し引いた差分Qmax-minを採用する。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0161】
本実施形態13では、容量推定部64は、電池特性取得部63が取得した電池特性に基づいて、対応関係記憶部51に記憶された対応関係から差分Qmax-minを推定する。そして、劣化度判定部65は、推定した差分Qmax-minに基づいてセルの特異的な容量劣化の有無を検知する。例えば、推定した差分Qmax-minが所定値以上であると判定した場合は、当該二次電池21~26のセルのいずれかに特異的な容量劣化が生じていると判定する。
【0162】
なお、実施形態2のように外部端末9に上記対応関係記憶部51、容量推定部64等が備えられる場合には、図15におけるステップS7に替えて、本実施形態9~13におけるステップS74、S75又はS76を行うことにより、本実施形態9~13と同等の作用効果が得られる。
【0163】
(実施形態14)
実施形態14では、図40に示すように、推定部として実施形態1の容量推定部64に替えて、抵抗推定部641を有する。抵抗推定部641は、二次電池21~26の電池特性に基づいて、二次電池21~26の内部抵抗を推定する。対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26の内部抵抗と電池特性との対応関係が記憶されている。電池特性取得部63は、二次電池21~26が互いに接続されたスタックの状態で、パルス充放電を行って電池特性を取得することができる。電池特性を取得する電圧区間は、特定のSOC範囲に対応する所定の電圧区間とすることができる。
【0164】
また、二次電池21~26間で、温度やSOCが異なっている場合は、温度と充放電中の電圧変化又は充放電終了後の電圧緩和中の電圧変化とを電池特性として取得して、温度及びSOCが同条件となる場合の抵抗値を推定することができる。この場合は、対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26の内部抵抗と温度と電池特性との対応関係が記憶されているものとする。なお、二次電池21~26を個別に充放電して電池特性を取得することとしてもよい。この場合は、温度及びSOCを同条件に合わせる必要がなく、判定時間の短縮を図れる。
【0165】
次に、本実施形態14の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法について、以下に説明する。まず、本実施形態14では、図5に示す実施形態1の場合と同様に、図41に示すステップS1~S5を行う。次いで、図41に示すステップS77において、抵抗推定部641により、電池特性取得部63が取得した電池特性から、対応関係記憶部51に記憶された二次電池21~26の内部抵抗と電池特性との対応関係に基づいて、二次電池21~26の内部抵抗を取得する。その後、図41に示すステップS8において、劣化度判定部65により、抵抗推定部641が推定した内部抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0166】
また、実施形態1では図5に示すステップS10において、要否判定部60により、電池特性としての容量電池特性の取得の要否を判定することとしたが、本実施形態14ではこれに替えて、図41に示すステップS100において、要否判定部60により、電池特性としての抵抗電池特性の取得の要否を判定する。抵抗電池特性は、所定状態での抵抗値に基づく二次電池21~26の電池特性をいう。その他のステップは実施形態1と同様であるが、ステップS11では内部抵抗の実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。当該実施形態14においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0167】
(実施形態15)
実施形態15の劣化度判定システム100では、抵抗推定部641により、二次電池21~26の負極抵抗を推定し、劣化度判定部65により二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0168】
二次電池21~26の電圧カーブにおける周波数特性から、二次電池21~26における正極や負極やその他の電池要素の抵抗値を算出することができる。そして、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池では、電圧カーブにおいて高周波領域に負極抵抗が顕著に反映され、低周波領域に正極抵抗が顕著に反映される。本実施形態15では、二次電池21~26としてニッケル水素電池を用いることとし、電池特性取得部63は、電池特性として、高周波領域における所定電圧区間の電圧カーブを取得する。対応関係記憶部51には、電池特性としての高周波領域における電圧カーブと負極抵抗との対応関係が予め記憶されている。その他の構成要素は実施形態14の場合と同様であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0169】
そして、二次電池21~26の劣化度と相関関係を有する内部抵抗において、劣化モードによって支配的となる抵抗要素が異なる。まず、二次電池の内部抵抗は、電子抵抗、反応抵抗、内部物質移動の抵抗の3つの抵抗成分の関係性から決まり、二次電池はこれらの3つの抵抗成分の直列等価回路と考えることができる。一般的に、電子抵抗は電池に定電流を付加した直後の時間領域で主に生じる抵抗成分である。また、反応抵抗は電子抵抗が生じる時間領域後の時間領域で主に生じる抵抗成分である。また、内部物質移動の抵抗は定電流を長時間付加した際に生じ、反応抵抗の時間領域後の時間領域に主に生じる抵抗成分である。そして、負極反応抵抗支配領域とは、上記3つの抵抗成分において、放電期間における負極の反応抵抗の占める割合が最も大きい時間的領域である。当該負極反応抵抗支配領域では、負極の反応抵抗が二次電池2の内部抵抗を支配的に決定する。本実施形態15では、劣化度判定部65は、当該負極反応抵抗支配領域において、抵抗推定部641により推定された負極抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0170】
本実施形態15の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法では、実施形態14の場合と同様に、図41に示すステップS1~S5を行う。そして、ステップS77において、抵抗推定部641により、電池特性取得部63が取得した電圧カーブと、対応関係記憶部51に記憶された対応関係とに基づいて、二次電池21~26の負極抵抗を推定する。そして、劣化度判定部65は、推定された負極抵抗から二次電池21~26の劣化度を判定する。その後、図41に示すステップS8において、劣化度判定部65により、抵抗推定部641が推定した負極抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他のステップは実施形態1と同様であるが、ステップS11では負極抵抗の実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。当該実施形態15においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0171】
(実施形態16)
実施形態16の劣化度判定システム100では、抵抗推定部641により、二次電池21~26の正極抵抗を推定し、劣化度判定部65により二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態16では、二次電池21~26としてニッケル水素電池を用いることとし、電池特性取得部63は、電池特性として、低周波領域における所定電圧区間の電圧カーブを取得する。対応関係記憶部51には、電池特性としての電圧カーブと正極抵抗との対応関係が予め記憶されている。そして、劣化度判定部65は、正極反応抵抗支配領域において、抵抗推定部641により推定された正極抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他の構成要素は実施形態15の場合と同様であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0172】
本実施形態16の劣化度判定システム100による劣化度の判定方法では、実施形態15の場合と同様に、図41に示すステップS1~S5を行う。そして、ステップS77において、抵抗推定部641により、電池特性取得部63が取得した電圧カーブと、対応関係記憶部51に記憶された対応関係とに基づいて、二次電池21~26の正極抵抗を推定する。そして、劣化度判定部65は、推定された正極抵抗から二次電池21~26の劣化度を判定する。その後、図41に示すステップS8において、劣化度判定部65により、抵抗推定部641が推定した内部抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他のステップは実施形態1と同様であるが、ステップS11では正極抵抗の実測値を取得し、ステップS111では当該実測値を外部端末9からサーバ1に送信する。当該実施形態16においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0173】
なお、実施形態2の外部端末9における上記容量推定部64に替えて、抵抗推定部641が備えられるとともに、外部端末9に上記対応関係記憶部51等が備えられる場合には、図15におけるステップS7に替えて、本実施形態14~16におけるステップS77を行うことにより、本実施形態14~16と同等の作用効果が得られる。
【0174】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0175】
1 サーバ
2、21~27 二次電池
11、91 送信部
12、92 受信部
52 推定式記憶部
60 要否判定部
61 電池情報取得部
62 可否判定部
63 電池特性取得部
64 容量推定部
65 劣化度判定部
8 更新部
9 外部端末
100 劣化度判定システム
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