(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】樹脂溶液、フレキシブル電子デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20241112BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20241112BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241112BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08L79/08
B32B7/06
B32B27/34
C08K3/22
C08K3/30
C08K3/34
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
H05K1/03 670
(21)【出願番号】P 2020121444
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】涌井 洋行
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 郷司
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/029766(WO,A1)
【文献】特開2018-132768(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147888(WO,A1)
【文献】特開平04-013763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
B32B 7/06
B32B 27/34
C08K 3/22
C08K 3/30
C08K 3/34
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を必須成分とする樹脂溶液。
(1)ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂成分、
(2)無機フィラー(a):樹脂成分に対して625ppm以上20000ppm以下の酸化亜鉛粒子、および/または、750ppm以上20000ppm以下の硫化亜鉛粒子
酸化亜鉛粒子と硫化亜鉛粒子の両方を用いる場合、両者の合計は、樹脂成分に対して750ppm以上20000ppm以下である、
(3)無機フィラー(b):樹脂成分に対して680ppm以上10000ppm以下の酸化ジルコニウム粒子、および/または、1000ppm以上10000ppm以下のケイ酸ジルコニウム粒子
酸化ジルコニウム粒子とケイ酸ジルコニウム粒子の両方を用いる場合、両者の合計は、樹脂成分に対して1000ppm以上20000ppm以下である、
(4)溶媒
【請求項2】
前記無機フィラーの粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂溶液。
【請求項3】
以下の工程を含むことを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
請求項1または2に記載の樹脂溶液を無機基板に塗布する工程A、
樹脂溶液から溶媒を除き、樹脂フィルム積層体を得る工程B、
樹脂フィルム上に電子デバイスを形成する工程C、
電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離し、フレキシブル電子デバイスを得る工程D
【請求項4】
前記、電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離する際に、無機基板側から紫外線レーザーを照射することを特徴とする請求項3に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
下記(1)~(3)を必須成分とし、全光線透過率85%以上、ヘイズ値10以下、波長350nmの紫外線透過率が50%以下である樹脂フィルムを部材に用いたことを特徴とするフレキシブル電子デバイス。
(1)ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂成分、
(2)無機フィラー(a):樹脂成分に対して625ppm以上20000ppm以下の酸化亜鉛粒子、および/または、750ppm以上20000ppm以下の硫化亜鉛粒子
酸化亜鉛粒子と硫化亜鉛粒子の両方を用いる場合、両者の合計は、樹脂成分に対して750ppm以上20000ppm以下である
(3)無機フィラー(b):樹脂成分に対して680ppm以上10000ppm以下の酸化ジルコニウム粒子、および/または、1000ppm以上10000ppm以下のケイ酸ジルコニウム粒子
酸化ジルコニウム粒子とケイ酸ジルコニウム粒子の両方を用いる場合、両者の合計は、樹脂成分に対して1000ppm以上20000ppm以下である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無色であり、透明性に優れるポリイミド系の樹脂フィルムを得るための樹脂溶液、ならびに、その樹脂フィルムを部材に用いたフレキシブル電子デバイスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは優れた耐熱性、良好な機械特性を有し、なおかつフレキシブルな素材として電気および電子分野にて広く使用されている。しかしながら、一般のポリイミドフィルムは黄褐色に着色しているため、表示装置などの光透過が必要な部分に適用することはできない。
一方で表示装置は薄型化、軽量化が進み、さらにフレキシブル化が求められてきている。そのため基板材料をガラス基板からフレキシブルな高分子フィルム基板に代えようという試みが進められているが、着色しているポリイミドフィルムは、光線透過をON/OFFすることによって表示を行う液晶ディスプレイの基板材料としては使用できず、表示装置の駆動回路が搭載されるTAB,COFなどの周辺回路や、反射型表示方式ないし自発光型表示装置における背面側など、ごく一部にしか適用することができない。
【0003】
かかる背景から、無色透明のポリイミドフィルムの開発が進められている。代表的な例としてフッ素化ポリイミド樹脂や半脂環型もしくは全脂環型ポリイミド樹脂などを用いた無色透明ポリイミドフィルムを開発する試みがある(特許文献1~3)。これらのフィルムは着色が少なく、かつ透明性を有している。またこれらの無色ポリイミドを、酸素含有量を規定した気体を噴きつけながら加熱処理する方法が提案されており(特許文献4)、さらに着色が抑制されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-106508号公報
【文献】特開2002-146021号公報
【文献】特開2002-348374号公報
【文献】WO2008/146637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
着色しているポリイミドは紫外域に吸収があるためUVレーザーでの加工が容易である。しかしながら、先に示したような無色ポリイミドは吸光度が低いため、UVレーザーでの加工には過剰なエネルギーが必要となる。
フレキシブルディスプレイなどのフレキシブル電子デバイスの製造においては、樹脂溶液をガラス基板に塗布・乾燥・必要に応じて化学反応を行ってガラス基板上で樹脂フィルムを得たのちに、樹脂フィルム上に電子デバイスを形成し、かかる電子デバイスを樹脂フィルムごとガラス基板から剥離してフレキシブル電子デバイスを得るプロセスが主流となっている。このプロセスにおいては、最後に樹脂フィルムをガラス基板から剥離する工程が鬼門となっている。すなわち、樹脂フィルムとガラス基板との接着性を制御することは難しく、接着力が強くなると剥離の際に樹脂フィルムに加わる張力が過大となり、樹脂フィルムの伸び、あるいは剥離点での屈曲によって電子デバイスが破損する場合がある。一方で接着力が小さすぎると、真空プロセスやウェットプロセスが続く電子デバイス作製行程中にフィルムが剥離するおそれがある。
そのため、剥離前、あるいは剥離中にガラス側から樹脂フィルムとガラスとの接合面に焦点してUVレーザーを照射し、界面の接合を破壊したうえで樹脂フィルムを剥離するレーザー剥離法が用いられる。
ところが、昨今では、これらフレキシブル電子デバイスの部材に用いられる樹脂フィルムの性能が向上し、高い透明性、無色性が実現されてきた結果、樹脂フィルムの紫外線透過率が高くなり、結果としてガラス界面と樹脂フィルムとの界面における光吸収が乏しくなってきている。
そのため、レーザー剥離工程でのUVレーザーの出力を上げるか、ないしは走査速度を落とす必要に迫られてきている。走査速度を落とすことは、生産スループットを落とすことになる。またUVレーザー出力を上げると、電力消費が増えるのは当然であるが、それ以上に、樹脂フィルム層の透明性が上がっているために、レーザー光があまり減衰することなく電子デバイスに照射されることになり、電子デバイスに悪影響するという重大な課題も生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる問題を解決するために鋭意研究を続けた結果、特定の無機成分を特定量、樹脂溶液に配合することで、得られる樹脂フィルムの無色性、透明性を維持しつつ高い紫外線遮蔽性を有する樹脂フィルムを得ることができ、レーザー剥離法が好適に適用でき、かつ得られる電子デバイスに高いフレキキシビリティが得られることを見出した。
すなわち本発明は以下の構成である。
[1])下記(1)~(4)を必須成分とする樹脂溶液。
(1)ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂成分、
(2)無機フィラー(a):樹脂成分に対して625ppm以上20000ppm以下の酸化亜鉛粒子、および/または、750ppm以上20000ppm以下の硫化亜鉛粒子
(3)無機フィラー(b):樹脂成分に対して680ppm以上10000ppm以下の酸化ジルコニウム粒子、および/または、1000ppm以上10000ppm以下のケイ酸ジルコニウム粒子
(4)溶媒
[2]
前記無機フィラーの粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする[1]に記載の樹脂溶液。
[3]
以下の工程を含むことを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
前記[1]または[2]に記載の樹脂溶液を無機基板に塗布する工程A、
樹脂溶液から溶媒を除き、樹脂フィルム積層体を得る工程B、
樹脂フィルム上に電子デバイスを形成する工程C、
電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離し、フレキシブル電子デバイスを得る工程D
[4]
前記、電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離する際に、無機基板側から紫外線レーザーを照射することを特徴とする[3]に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[5]
下記(1)~(3)を必須成分とし、全光線透過率85%以上、ヘイズ値10以下、波長350nmの紫外線透過率が50%以下である樹脂フィルムを部材に用いたことを特徴とするフレキシブル電子デバイス。
(1)ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂成分、
(2)無機フィラー(a):樹脂成分に対して625ppm以上20000ppm以下の酸化亜鉛粒子、および/または、750ppm以上20000ppm以下の硫化亜鉛粒子
(3)無機フィラー(b):樹脂成分に対して680ppm以上10000ppm以下の酸化ジルコニウム粒子、および/または、1000ppm以上10000ppm以下のケイ酸ジルコニウム粒子
【発明の効果】
【0007】
本発明は、無機フィラーとして酸化亜鉛粒子および/または硫化亜鉛粒子と、酸化ジルコニウム粒子および/またはケイ酸ジルコニウム粒子を所定量含む樹脂を用いて得られる、無色で透明性の高いポリイミド系フィルムを実現する。酸化亜鉛に紫外線吸収効果があることは一般に知られている。よって酸化亜鉛をフィルムに添加して紫外線遮蔽効果を得ることは公知である。が、十分な紫外線遮蔽効果を得るためには相当量の酸化亜鉛を添加する必要がある。酸化亜鉛の屈折率はポリイミド樹脂に比較すると高いために、添加量を増やすと、光線散乱効果のためにフィルムの白化が避けられず、フィルムのヘイズ値が上昇し透明性が低下してしまう。
一方の酸化ジルコニウム(ジルコニア)は酸化亜鉛より高い屈折率を有し、またケイ酸ジルコニウム(ジルコン)は、酸化亜鉛と同程度の屈折率ながら、複屈折効果を有する。そのため、いずれも少量の添加で光線散乱効果を発現し、両者を組み合わせることでフィルムの白化が顕著にならない程度の添加量で十分な紫外線吸収能を得ることが可能となる。
微粒子の光線散乱効果は粒子径に依存するため、粒子径を散乱させたい光線波長に整合させることで目的とする波長の散乱効果を高めることができる。したがって、酸化亜鉛の紫外線吸収領域と、光散乱効果を担う酸化ジルコニウムおよびまたはケイ酸ジルコニウムの粒子径を整合させることで、さらに高い紫外線吸収能を得ることが可能となる。
結果としてレーザー剥離法においてはガラス基板と樹脂フィルムの界面でレーザー光の吸収が生じて、易剥離となり、同時にフィルム内で適度にレーザーを拡散しつつ吸光するためにレーザー光のエネルギーが電子デバイスの裏側に直撃することなくソフトにフィルム全体で吸収されるため、電子デバイスへの悪影響が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<樹脂成分>
本発明において、好ましく用いられる樹脂成分(以下、単に樹脂ともいう。)は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミドベンザゾール樹脂、ポリアミド酸樹脂などのポリイミド系樹脂である。ポリアミド酸樹脂はポリイミド系樹脂の前駆体である。なかでもポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
【0009】
<ポリイミド系樹脂>
本発明のポリイミド系樹脂は25μm厚のフィルムにした際のフィルムの、イエローインデックスが10以下であることが好ましい。透明性が良好となることから好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3以下である。イエローインデックスは低い方が良いため下限は特に限定されないが、工業的には0.1以上であれば良く、0.2以上であっても差し支えない。
【0010】
本発明のポリイミド系樹脂は25μm厚のフィルムとした場合の、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。透明性が良好となることから好ましくは87%以上であり、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは89%以上である。上限は特に限定されないが、工業的には99%以下であれば良く、98%以下であっても差し支えない。
【0011】
本発明のポリイミド系樹脂は25μm厚のフィルムとした場合の、ヘイズ値が2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1以下であり、より一層好ましくは0.8以下である。ヘイズ値の下限は特に限定されないが、工業的には0.01以上であれば十分であり、0.05以上であっても差し支えない。
【0012】
本発明のポリイミド系樹脂は25μm厚のフィルムとした場合の、紫外線透過率が50%以下であることが好ましい。より好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、より一層好ましくは35%以下である。紫外線透過率の下限は特に限定されないが、工業的には1%以上であれば十分であり、5%以上であっても差し支えない。
【0013】
<ポリイミド系樹脂の化学組成>
ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物とジアミンとの縮重合反応によって得られる。
本発明では以下の組成を有するポリイミド系樹脂が好ましい。
・全酸成分を100モル%としたとき、脂環族テトラカルボン酸無水物を70質量%以上含有するテトラカルボン酸無水物と、全アミン成分を100質量%としたとき、分子内にアミド結合を有するジアミンを70質量%以上含有するジアミンとの縮重合により得られる化学構造からなるポリイミド樹脂
・全酸成分を100モル%としたとき、脂環族テトラカルボン酸無水物を70質量%以上含有するテトラカルボン酸無水物と、トリフルオロメチル基を分子内に有するジアミンを70質量%以上含有するジアミンとの縮重合により得られる化学構造からなるポリイミド樹脂
・全酸成分を100質量%としたとき、芳香族テトラカルボン酸無水物を70質量%以上含有するテトラカルボン酸無水物と、全アミン成分を100質量%としたとき、少なくとも分子内にイオウ原子を有するジアミンを70質量%以上含有するジアミンから得られる化学構造からなるポリイミド
・全酸成分を100モル%としたとき、少なくともトリフルオロメチル基を分子内に含有するテトラカルボン酸を30質量%以上含有するテトラカルボン酸無水物と、少なくともトリフルオロメチル基を分子内に有するジアミンを70質量%以上含有するジアミンとの縮重合により得られる化学構造からなるポリイミド樹脂
【0014】
本発明における脂環族テトラカルボン酸無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、ビシクロ[2,2、1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、テトラヒドロアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、テトラデカヒドロ-1,4:5,8:9,10-トリメタノアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4-エタノ-5,8-メタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロプロパノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロブタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘプタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロオクタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロノナノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロウンデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロドデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロトリデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロテトラデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロペンタノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロヘキサノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の酸無水物構造を有する二無水物が好適であり、特に、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明における芳香族テトラカルボン酸無水物としては、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジフタル酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジフタル酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。なお、芳香族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明では、テトラカルボン酸無水物に加えてトリカルボン酸、ジカルボン酸を用いても良い。
トリカルボン酸類としては、トリメリット酸、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4’-トリカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,3’,4’-トリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸、或いはヘキサヒドロトリメリット酸などの上記芳香族トリカルボン酸の水素添加物、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート、1,4-ブタンジオールビストリメリテート、ポリエチレングリコールビストリメリテートなどのアルキレングリコールビストリメリテート、及びこれらの一無水物、エステル化物が挙げられる。これらの中でも、1個の酸無水物構造を有する一無水物が好適であり、特に、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。尚、これらは単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、或いは1,6-シクロヘキサンジカルボン酸などの上記芳香族ジカルボン酸の水素添加物、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、及びこれらの酸塩化物或いはエステル化物などが挙げられる。これらの中で芳香族ジカルボン酸及びその水素添加物が好適であり、特に、テレフタル酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸が好ましい。尚、ジカルボン酸類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明における分子内にアミド結合を有するジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂環族アミンを主に用いることができる。
芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、4,4’-[9H-フルオレン-9,9-ジイル]ビスアニリン(別名「9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン」)、スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス(5-アミノベンゾオキサゾール)、2,2’-p-フェニレンビス(6-アミノベンゾオキサゾール)、1-(5-アミノベンゾオキサゾロ)-4-(6-アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。また、上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシル基、またはシアノ基で置換されても良く、さらに前記炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されても良い。
【0019】
脂環族ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アデニン、2,4-ビス(4-アミノフェニル)シクロブタン-1,3-ジカルボン酸ジメチル、等が挙げられる。
【0020】
分子内にアミド結合を有するジアミンとしては、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミドが好ましい。アミド結合を有するジアミンは全、全ジアミン中の70質量%以上が好ましく、80質量%以上、さらには90質量%以上の使用が好ましい。
また、トリフルオロメチル基を有するジアミンとしては、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これら分子内にフッ素原子を有するジアミン化合物、特にトリフルオロメチル基を分子内に有するジアミンを使用する場合に、その使用量は、全ジアミン中の70質量%以上が好ましく、80質量%以上、さらには90質量%以上の使用が好ましい。
【0021】
<溶媒>
本発明で用いられる溶媒はポリイミド系樹脂を溶解するものであれば限定されず、さらにポリイミド系樹脂の原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであればさらに好ましい。特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。
これらのほか、溶解性の良いポリイミド系樹脂の場合にはメチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アルコール類、などの汎用溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、溶解する目的物(樹脂成分)を溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、樹脂成分を溶解した溶液に占める樹脂成分の質量が、通常5~40質量%、好ましくは10~30質量%となるような量が挙げられる。
【0022】
<無機フィラー>
本発明で無機フィラー(a)として用いられる酸化亜鉛は、化学式 ZnO で表される亜鉛の酸化物であり、亜鉛華、亜鉛白とも呼ばれる。酸化亜鉛は粒子状態でポリイミドフィルムに含有される。含有量は、ポリイミド樹脂の質量に対して625ppm以上、好ましくは800ppm以上、なお好ましくは1200ppm以上であり、20000ppm以下、好ましくは12000ppm以下、さらに好ましくは6000ppm以下である。ここで酸化亜鉛含有量の単位ppmは質量換算(mg/kg)の単位である。
市販されている酸化亜鉛粒子の具体例としては、ZnO-350、ZnO-510、ZnO-610、ZnO-650(住友大阪セメント社製)、MZ-300、MZY-303S、MZ-306X、MZ-500、MZY-505S、MZY-510M3S、MZ-506X、MZ-510HPSX(テイカ社製)、XZ-Fシリーズ、XZ-100P、FINEX-30、FINEX-30S-LP2、FINEX-30S-LPT、FINEX-30W-LP2、FINEX-30W-LPT、FINEX-50、FINEX-50S-LP2、FINEX-50W-LP2、FINEX-50S-LPT、FINEX-50W-LPT、ZINCA-20、微細酸化亜鉛(堺化学工業社製)、F-1、F-2(ハクスイテック社製)、FZO-50(石原産業社製)等を例示することができる。これらの酸化亜鉛は単独で用いても、二種以上を混合して用いても構わない。
【0023】
本発明で無機フィラー(a)として用いられる硫化亜鉛は、化学式ZnSで表される亜鉛の硫化物である。硫化亜鉛粒子の含有量はポリイミド樹脂の質量に対して750ppm以上、好ましくは900ppm以上、なお好ましくは1200ppm以上であり、20000ppm以下、好ましくは12000ppm以下、さらに好ましくは6000ppm以下である。ここで硫化亜鉛含有量の単位ppmは質量換算(mg/kg)の単位である。
本発明では、酸化亜鉛粒子、硫化亜鉛粒子のいずれか、または両方がポリイミドフィルムに含有されることが必須である。なお酸化亜鉛粒子と硫化亜鉛粒子の両方が用いられる場合には、両者の合計が750ppm以上20000ppm以下の範囲となるように調製することが好ましい。酸化亜鉛粒子、硫化亜鉛粒子の配合量がこの範囲を超えるとフィルムの白化が無視できなくなりヘイズ値が上昇することがあり、この範囲に満たない場合には紫外線吸収効果が不十分となることがある。前記所定範囲が、後述する酸化ジルコニウムないしケイ酸ジルコニウムとの併用により十分な紫外線吸収能(紫外線遮蔽能)と、かつ可視光線の高い透過性(無色性、透明性)を両立できる範囲となる。
【0024】
本発明で無機フィラー(b)として用いられる酸化ジルコニウムは、化学式 ZrO2で表されるジルコニウムの酸化物であり、ジルコニアとも呼ばれる。酸化ジルコニウムは粒子状態でポリイミドフィルムに含有される。含有量は、ポリイミド樹脂の質量に対して680ppm以上、好ましくは900ppm以上、なお好ましくは1200ppm以上であり、10000ppm以下、好ましくは12000ppm以下、さらに好ましくは6000ppm以下である。ここで酸化ジルコニウム含有量の単位ppmは質量換算(mg/kg)の単位である。
本発明で無機フィラー(b)として用いられるケイ酸ジルコニウムは、化学式ZrSiO4、あるいはZrO2・SiO2で表されるジルコニウムのケイ酸塩であり、ジルコンとも呼ばれる。ケイ酸ジルコニウムの含有量はポリイミド樹脂の質量に対して1000ppm以上、好ましくは1200ppm以上、なお好ましくは2000ppm以上であり、10000ppm以下、好ましくは12000ppm以下、さらに好ましくは6000ppm以下である。ここでケイ酸ジルコニウム含有量の単位ppmは質量換算(mg/kg)の単位である。
本発明では、酸化ジルコニウム粒子、ケイ酸ジルコニウム粒子のいずれか、または両方がポリイミドフィルムに含有されることが必須である。なお酸化ジルコニウム粒子とケイ酸ジルコニウム粒子の両方が用いられる場合には、両者の合計が1000ppm以上20000ppm以下の範囲となるように調製することが好ましい。酸化ジルコニウム粒子、ケイ酸ジルコニウム粒子の配合量がこの範囲を超えるとフィルムの白化が無視できなくなりヘイズ値が上昇することがあり、この範囲に満たない場合には酸化亜鉛または硫化亜鉛の紫外線吸収能を十分にサポートすることができなくなることがある。かかる所定範囲が、十分な紫外線吸収能(紫外線遮蔽能)と、かつ可視光線の高い透過性(無色性、透明性)を両立できる範囲となる。
なお、ジルコニウムには不純物として同じ第4族元素であるハフニウムが含まれることが知られている。両者は化学的性質が非常に似ているために分離しにくいため、一般にジルコニウム化合物として販売されている製品にはハフニウム化合物が含まれている。本発明はジルコニウムとハフニウムの合計に対してハフニウムの含有量が5質量%以下であれば、ハフニウムを含めて総量をジルコニウムとして扱うこととする。
【0025】
無機フィラーの粒子径は、1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。また、10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上である。前記範囲内とすることで散乱効果を高めることができる。
【0026】
本発明の樹脂溶液では、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム以外に、下記のフィラーを添加して、溶液の粘弾性や得られる樹脂被膜の性情改質を行っても良い。かかる目的に使用できるフィラーとしては、粒子径0.03μm~3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0027】
<ポリイミド系樹脂のフィルム化、および積層体の製造方法>
一般に、ポリイミド系樹脂のフィルムは、溶媒中でテトラカルボン酸無水物とジアミンを反応させてポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、該ポリアミド酸溶液を仮支持体に塗布、乾燥、さらにアミド酸結合からイミド結合への化学的転化反応を行い、ポリイミド系樹脂フィルムを得る。また、溶液中でポリアミド酸からポリイミドへと転化させてポリイミド溶液とした後に仮支持体に塗布、乾燥させてポリイミドフィルムとする場合もある。さらにポリアミド酸溶液またはポリイミド溶液から再沈操作などによりポリマーを分離して、別の溶剤に再溶解させて得られた溶液を用いてフィルム化する場合もある。ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂はこの再沈-再溶解プロセスに適用しやすい。
【0028】
無機フィラーの添加は、溶媒中でのテトラカルボン酸無水物とジアミンを反応の前に、あらかじめ無機フィラーを溶媒に分散させた状態で添加する方法、あるいは重合後のポリイミドないしポリアミド酸溶液に添加する方法を用いることができる。無機粒子の前駆体(加熱により分解するなどの経緯を経て所定の無機粒子を生成する化合物)をあらかじめ溶液中に添加し、乾燥ないしアミド酸結合からイミド結合への化学反応の過程で無機粒子をフィルム内に生成させて含有させる方法も例示できる。
【0029】
本発明では、以下の工程を含むことでフレキシブル電子デバイスを製造することができる。具体的には、本発明の樹脂溶液を好ましくは無機物からなる基板(無機基板)に塗布する工程A、次いで前記樹脂溶液から溶媒を除き(乾燥)、必要に応じてポリアミド酸からポリイミドへの転化反応を行うことにより、樹脂フィルムと無機基板からなる積層体(樹脂フィルム積層体)を得る工程B、次いで、かかる積層体の樹脂フィルム上に電子デバイスを形成(加工)する工程C、次いで、電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離する工程Dを経ることで、フレキシブルな電子デバイスを得ることができる。すなわち、本発明の樹脂溶液から得られる樹脂フィルムはフレキシブル電子デバイスの部材として使用することができる。
【0030】
前記工程Dにおいて、電子デバイスを樹脂フィルムごと無機基板から剥離する方法としては、例えば下記の(1)~(2)の態様が挙げられる。
(1)積層体の無機基板側からレーザーを照射して、支持体とポリイミド系樹脂フィルムとの界面をアブレーション加工することにより、ポリイミド系樹脂フィルムを剥離する方法。
ここにレーザーの種類としては、固体(YAG)レーザー、ガス(紫外線(UV)エキシマー)レーザー等が挙げられ、特に波長308nm等のスペクトルを用いることが好ましい。
(2)無機基板に樹脂溶液を塗工する前に、無機基板表面に剥離層を形成し、その後に樹脂溶液を塗布し、ポリイミド系樹脂フィルム/剥離層/無機基板含む構成体を得て、ポリイミド系樹脂フィルムを剥離する方法。
ここに、剥離層としては、パリレン(登録商標、日本パリレン合同会社製)、タングステン薄膜、モリブデン薄膜、アモルファスシリコン薄膜等が挙げられる。剥離層形成とレーザー照射を併用するのも好ましい態様のひとつである。
【0031】
本発明で用いられる無機基板としては、ガラス基板、シリコンウェハ、金属板を用いることができる。ガラス基板としては、ディスプレイ用に販売されているものが好ましい。
【0032】
また樹脂溶液を別の基板、好ましくはフレキシブルな高分子フィルム、あるいは金属箔に塗布し、半乾燥フィルムの状態、すなわち溶剤と高分子、あるいは溶剤と高分子前駆体を含むフィルムとなるまで乾燥し、その後に無機基板に転写接着して、その後に最終乾燥あるいは乾燥と化学反応を生じさせて高分子フィルムと無機基板の積層体とする方法を用いることもできる。この方法によれば、ポリイミド系樹脂フィルムと無機基板は直接的に接する形態となる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、製造例、実施例中の各物性値などは以下の方法で測定した。
【0034】
<フィラーの粒子径>
島津製作所製のーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-2300から得られる中心径D50を各フィラーの粒子径とした。
【0035】
<フィルムの厚さ測定>
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0036】
<引張弾性率、引張強度(破断強度)、および、破断伸度>
フィルムを、塗布時の流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG-5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張強度及び破断伸度を求め、MD方向とTD方向の測定値の平均値を求めた。
【0037】
<線膨張係数(CTE)>
フィルムを、塗布時の流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、各々の寸法について、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃~45℃、45℃~60℃のように15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出し、さらにMD方向とTD方向の測定値の平均値を求めた。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 300℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0038】
<ヘイズ>
HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてフィルムのヘイズを測定した。光源としてはD65ランプを使用した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0039】
<全光線透過率>
HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてフィルムの全光線透過率(TT)を測定し
【0040】
<紫外線透過率>
分光光度系により波長350nmの透過率をもって紫外線透過率とした。
【0041】
<イエローインデックス>
カラーメーター(ZE6000、日本電色社製)およびC2光源を使用して、ASTM D1925に準じてフィルムの三刺激値XYZ値を測定し、下記式により黄色度指数(YI)を算出した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
YI=100×(1.28X-1.06Z)/Y
【0042】
<フィルムの反り>
100mm×100mmのサイズの正方形に裁断したフィルムを試験片とし、室温で平面上に試験片を凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1rt、h2rt、h3rt、h4rt:単位mm)を測定し、その平均値を反り量(mm)とした。
【0043】
〔製造例1 ポリアミド酸溶液A(PAA溶液A)の製造〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、22.73質量部の4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)を、201.1質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に加えて溶解させ、次いで、19.32質量部の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無二水物(CBDA)を固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、173.1質量部のDMAcを加え希釈し、NV10%、還元粘度3.10dl/gのポリアミド酸溶液Aを得た。
【0044】
〔製造例2 ポリアミド酸溶液B(PAA溶液B)の製造〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、32.02質量部の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を、279.9質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ、次いで、9.81質量部の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無二水物(CBDA)及び15.51質量部の(ODPA)をそれぞれ固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、固形分17質量%、還元粘度3.60dl/gのポリアミド酸溶液Bを得た。
【0045】
〔製造例3 ポリイミド溶液C(PI溶液C)の製造〕
窒素導入管、ディーン・スターク管及び還流管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、窒素ガスを導入しながら、32.02質量部の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、230質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加えて完全に溶解させ、次いで、44.42質量部の4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)を固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、固形分25質量%、還元エンド1.10dl/gのポリアミド酸溶液Caaを得た。
次に、得られたポリアミド酸溶液にDMAc204質量部を加えてポリアミド酸の濃度が15質量%になるように希釈した後、イミド化促進剤としてイソキノリン1.3質量部を加えた。次いで、ポリアミド酸溶液を攪拌しながら、イミド化剤として無水酢酸12.25質量部をゆっくりと滴下した。その後、24時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液Cpiを得た。
次に、得られたポリイミド溶液100質量部を攪拌装置と攪拌機を備えた反応容器に移し替え、攪拌しながらメタノール150質量部をゆっくりと滴下させたところ、粉体状の固体の析出が確認された。
その後、反応容器の内容物である粉末を脱水濾過し、さらにメタノールを用いて洗浄した後に50℃で24時間真空乾燥した後、260℃で更に5時間加熱し、ポリイミド粉体Cpdを得た。得られたポリイミド粉体20質量部を80質量部のDMAcに溶解させてポリイミド溶液Cを得た。
【0046】
〔製造例4 ポリイミド溶液D(PI溶液D)の製造〕
窒素導入管、ディーン・スターク管及び還流管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、窒素ガスを導入しながら、120.5質量部の4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、51.6質量部の3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、500質量部のガンマブチロラクトン(GBL)を加えた。続いて217.1質量部の4,4’-オキシジフタル酸無二水物(ODPA)、223質量部のGBL、260質量部のトルエンを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミド溶液Dを得た。
【0047】
〔製造例5 ポリアミド酸溶液E(PAA溶液E)の製造〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)161質量部とN-メチルー2-ピロリドン1090質量部を混合攪拌して溶解させた後、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸ニ無水物112質量部を室温にて固体のまま分割添加し、室温下12時間攪拌した。次に共沸溶媒としてキシレン400質量部を添加して180℃に昇温して3時間反応を行い、共沸してくる生成水を分離した。水の流出が終わったことを確認し、1hかけて190℃に昇温しながらキシレンを除去することでポリアミド酸溶液Eを得た。
【0048】
〔製造例6 ポリアミド酸溶液F(PAA溶液F)の製造)〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、11.36質量部の4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)、および16.01質量部の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を、201.1質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え完全に溶解させた。次いで、19.32質量部の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無二水物(CBDA)を固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、173.1質量部のDMAcを加え希釈し、NV10%、還元粘度3.10dl/gのポリアミド酸溶液Fを得た。
【0049】
製造例にて得られたポリイミド溶液、ポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)を以下の方法でフィルム化し、光学特性、機械特性を測定した。結果を表1に示す。
(単独で物性測定のためのフィルムを得る方法)
ポリイミド溶液またはポリアミド酸溶液を、一辺30cmのガラス板の中央部、おおむね20cm四方のエリアにバーコーターを用いて、最終厚さが25±2μmとなるように塗布し、ドライ窒素を静かに流したイナートオーブンにて100℃で30分間加熱し、塗膜の残溶剤量が40質量%以下であることを確認した後に、ドライ窒素で置換したマッフル炉にて300℃にて20分間加熱した。次いでマッフル炉から取り出し、乾燥塗膜(フィルム)の端をカッターナイフで起こし、慎重にガラスから剥離してフィルムを得る。
【0050】
【0051】
〔無機フィラー〕
表2に示す無機フィラーを準備し、実施例、比較例に用いた。参考に記載した屈折率は化学便覧、各種物性表などに掲載されている代表的な数値である。
【0052】
【0053】
(実施例1)
製造例にて得られたポアミド酸溶液Bに、無機フィラーとしてZnO-65を樹脂成分に対して質量比で2000ppm、ZriO2-10を樹脂成分に対して質量比で700ppm加え、均一に分散させた。
25℃45%RHに空調された大気中にて、ロールトゥロール式のコンマコーターと連続式乾燥炉と熱処理炉を備えた装置を用い、まず、前記無機フィラーを分散したポリアミド酸溶液を、仮支持体であるポリエチレンテレフタレート製フィルムA4100(東洋紡株式会社製、以下PETフィルムと略記する)の無滑材面上に最終膜厚が18μmとなるよう塗布し、次いで連続式乾燥炉にて110℃にて15分間乾燥し、残溶剤量23質量%の自己支持性フィルムを得た。該自己支持性フィルムを支持体としてきたA4100フィルムから剥離し、ピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンに差し込むことにより把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なたるみが生じないようにピンシート間隔を調整して搬送し、200℃で5分、250℃で5分、300℃で10分の条件で加熱し、溶媒除去とイミド化反応を進行させた。その後、3分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、幅580mm、長さ200mのフィルム(実1)のロールを得た。
得られたフィルム(実1)の評価結果を表3に示す。
【0054】
(実施例2~17)(比較例1~7)
以下同様に、表3、表4、表5、表6に示すポリアミド酸溶液または、ポリイミド溶液と、無機フィラーを組み合わせて実施例1と同様にフィルムを製造し評価した。結果を表3、表4、表5、表6に示す。紫外線透過率が50%以下であれば、UVレーザーでの加工性が良好となる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
(実施例18~21、比較例8、9)
製造例にて得られたポリイミド溶液Dに、無機フィラーとしてZnO-300とZrSiO4-700を、表7に従って均一に分散させた。次いで、ディスプレイ用ガラス(370mm×470mm、厚さ0.7mmのガラス基板:日本電気硝子社製OA10G)にフィラーを分散させたポリイミド溶液をバーコーターで最終膜厚が18μmとなるように塗布し、ドライ窒素を静かに流したイナートオーブンにて100℃で20分間加熱し、塗膜の残溶剤量が40質量%以下であることを確認した後に、ドライ窒素で置換したマッフル炉にて300℃にて15分間加熱し、乾燥とポリアミド酸からポリイミドへの転化反応を行い、ポリイミドフィルムとガラス基板からなる積層体を得た。
得られた積層体からポリイミドフィルムを剥離して、光学特性を測定した。結果を表7に示す。
比較例8、9ではヘイズ値が高くなり透明性が低下している。
【0060】
【0061】
(応用実施例1)
まず、実施例1で得たポリイミドフィルム(実1)を360mm×460mmの長方形に切り出した。 次に、フィルム表面処理として UV/O3照射器(LANテクニカル製SKR1102N-03)を用い、(a)層側にUV/O3の照射を3分間行った。この時UV/O3ランプとフィルムとの距離は30mmとした。
ディスプレイ用ガラス(370mm×470mm、厚さ0.7mmのガラス基板:日本電気硝子社製OA10G)にシランカップリング剤として3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-903)をスプレーコーターにて塗布した。なおガラス基板は、純水洗浄、乾燥後にUV/O3照射器(LANテクニカル製SKR1102N-03)で1分間照射してドライ洗浄したものを用いた。
次いで、シランカップリング剤を塗布したガラス基板を、シリコーンゴムローラーを装備したロールラミネータにセットし、まずシランカップリング剤塗布面にスポイトで500mlの純水を基板全体に広がるように滴下し、基板を濡らした。
前記表面処理を行った多層ポリイミドフィルム(実25)の表面処理面を、ガラス基板のシランカップリング剤塗布面、すなわち純水で濡らした面に対向するように重ね、ガラス基板の一方の一辺から順次回転ロールでポリイミドフィルムとガラス基板間の純水を押し出しながら加圧してガラス基板とポリイミドフィルムをラミネートして仮積層体を得た。使用したラミネータは、MCK社製の有効ロール幅650mmのラミネータであり、貼合条件は、エアー元圧力:0.5MPa、ラミネート速度:50mm/秒、ロール温度:22℃、環境温度22度、湿度55%RHであった。
得られた仮積層体を、クリーンオーブンにて200℃10分間加熱処理し、多層ポリイミドフィルムとガラス基板からなる積層体LB-E01を得た。
【0062】
得られた積層体LB-E01のポリイミドフィルム面に、以下の工程によりタングステン膜(膜厚75nm)を形成し、さらに大気にふれることなく、絶縁膜として酸化シリコン膜(膜厚150nm)を積層形成した。次いで、プラズマCVD法で下地絶縁膜となる酸化窒化シリコン膜(膜厚100nm)を形成し、さらに大気にふれることなく、アモルファスシリコン膜(膜厚54nm)を積層形成した。
【0063】
得られたアモルファスシリコン膜を用いてTFT素子を作製した。まず、アモルファスシリコン薄膜をパターニングを行って所定の形状のシリコン領域を形成し、適宜、ゲート絶縁膜の形成、ゲート電極の形成、活性領域へのドーピングによるソース領域またはドレイン領域の形成、層間絶縁膜の形成、ソース電極およびドレイン電極の形成、活性化処理を行い、PチャンネルTFTのアレイを作製した。
TFTアレイ外周の0.5mm程度内側に沿ってUV-YAGレーザーにてポリイミドフィルム部を焼き切り、さらにガラス基板面から85mJ/平方cmのエネルギー量で308nmのラインビームによるエキシマレーザーの照射を行った。なお、ラインビームのオーバーラップ率は50%とした。次いで、切れ目の端部から薄いカミソリ状の刃を用いてすくい上げるように剥離を行い、フレキシブルなA3サイズのTFTアレイを得た。剥離は極微力で可能であり、TFTにダメージを与えること無く剥離することが可能であった。UV-YAGレーザーによる切断面は乱れなく、スミアなどの飛び散りも見られなかった。得られたフレキシブルTFTアレイは5mmφの丸棒に巻き付けても性能劣化は見られず、良好な特性を維持した。
【0064】
(応用実施例2)
実施例21にて得られた積層体LB-E21を用い、応用実施例1と同様にポリイミド面にアモルファスシリコンTFTを形成し、同様に周囲をUV-YAGレーザーでトリミングし、さらに応用実施例1と同じ条件にてガラス基板面側からエキシマレーザーの照射を行い、以下同様にガラス基板から剥離し、フレキシブルTFTアレイを得た。得られたフレキシブルTFTアレイは5mmφの丸棒に巻き付けても性能劣化は見られず、良好な特性を維持した。
【0065】
(応用比較例1)
比較例3で得られたポリイミドフィルム比3を用い、応用実施例1と同様の操作にてガラス基板にラミネートして積層体LB-C03を得た。得られた積層体LB-C03を用いて同様にTFT形成を行い、さらに同様に周囲をUV-YAGレーザーにてトリミングした後にガラス基板から剥離し、フレキシブルTFTアレイを得た。UV-YAGレーザーによる切断面にギザが見られ、さらにTFTの約20%程度が動作不良であった。動作不良個所を詳細に分析した結果、素子内の絶縁層のガラス面側の一部に微細な剥離個所が見出された。これは、ポリイミドフィルムを透過したエキシマレーザー光の影響と推察される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上述べてきたように、本発明のポリイミドフィルムは、適度なUV遮蔽性能を有し、高い透明性、無色性を維持しつつ、さらに必要最低限度の無機フィラー量でフィルム化が可能であるためフィルム機械物性に優れた特性を有する。
本発明のポリイミドフィルムはガラス基板などの無機基板との積層体を経由して、フレキシブルでかつ軽量な表示装置の部材として、あるいは透明性が必要なタッチパネルなどのスイッチ素子、ポインティングデバイスなどに広く利用することができる。