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7585647塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物及びそれを用いるポリアルキレングリコールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物及びそれを用いるポリアルキレングリコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/24 20060101AFI20241112BHJP
   C08G 65/12 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07F9/24 H
C08G65/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020132336
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029149
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 章朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】井上 善彰
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132179(JP,A)
【文献】特開2017-171708(JP,A)
【文献】特開2014-118353(JP,A)
【文献】特開2019-156722(JP,A)
【文献】特開2018-030980(JP,A)
【文献】特開2012-020981(JP,A)
【文献】特開2023-007590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/24
C08G 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩及び溶剤を含む塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物であって、
塩基性イミノホスファゼニウム塩の含有量が20~50wt%であり、
溶剤が水11~45wt%及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒5~69wt%を含有することを特徴とする塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X-はヒドロキシアニオン、炭酸水素アニオン又は炭素数1~4のアルコキシアニオンを表す。)
【請求項2】
溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール及びアセトニトリルからなる群より選択されるプロトン性有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
【請求項3】
一般式(1)のX-がヒドロキシアニオンであることを特徴とする請求項1に記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物と活性水素含有化合物を接触し重合開始剤を調製すると共に、溶媒及び副生水の除去を行った後、アルキレンオキシドを添加し、開環重合を行うことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項5】
活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項4に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項6】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項7】
開環重合を、反応圧力0.05~1MPa、反応温度40~130℃の条件下で行うことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機塩基として有用な塩基性イミノホスファゼニウム塩を保存することが可能な塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物、及びそれを用いるポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩基性イミノホスファゼニウム塩は、有用な有機塩基として知られており、例えば2級アミンのアルキル化、フェニルアセトニトリルのアルキル化、アルデヒドとα-ハロエステルとの縮合反応によるα,β-エポキシエステルの生成反応(ダーゼン反応)用の触媒としての使用が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
この塩基性イミノホスファゼニウム塩は、対アニオンとしてテトラフルオロホウ酸イオンを有する中性のイミノホスファゼニウム塩を、メタノールとジエチルエーテルの混合溶媒中水酸化カリウムと反応させ、得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液を減圧下溶媒除去する方法によって製造することができ、最終的に塩基性イミノホスファゼニウム塩は固体として得られる。
【0004】
一方、塩基性ホスファゼニウム塩は、その求核特性及び塩基性の点から、前記塩基性イミノホスファゼニウム塩同様、工業的に有用性が期待される化合物であり、例えばポリアルキレングリコール製造用触媒としての利用が提案されている(例えば特許文献2参照。)。そして、この塩基性ホスファゼニウム塩は、中性のホスファゼニウム塩をイオン交換樹脂又は塩基性化合物で処理後、溶媒を除去することによって、固体として単離することができる(例えば特許文献3、4参照。)。
【0005】
単離したホスファゼニウム塩は、固体状態のまま、あるいは水溶液として、ポリアルキレングリコールの製造に使用することが提案されている(例えば特許文献5参照。)。
【0006】
そして塩基性イミノホスファゼニウム塩を長期間安定に保存することが可能となる塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液からなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液およびそれを用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法が提案されている(例えば特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ国特許出願公開第102006010034号公報(特許請求の範囲)
【文献】特許第3497054号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開2001-031689号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開2001-089487号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開2000-038443号公報(特許請求の範囲)
【文献】特許第5609354号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に提案の方法により得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩は不安定であり、固体状態で保存しておくと、時間の経過とともに分解が進行するために合成後に保存をしておくことが困難であり、ポリアルキレングリコールの工業的触媒としては課題を有するものであった。
【0009】
また、特許文献2~5のいずれにも塩基性ホスファゼニウム塩の保存安定性について言及した記載は何ら見当たらない。
【0010】
一方、特許文献6に提案の方法により得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液は、室温での保存安定性は有したものの、夏季の船便輸送や夏季の屋外保管を想定した高温下(50度以上)での保存安定性に課題を有するものであった。
【0011】
工業プロセスにおいては効率を重視することから原材料の作り置きは常識であり、保存安定性に劣るものは工業プロセスに適用することが著しく困難なものとなる。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有機塩基として有用性が期待される塩基性イミノホスファゼニウム塩を高温下(50度以上)でも長期間安定に保存、輸送することが可能となる塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物およびそれを用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、塩基性イミノホスファゼニウム塩を、水を含有する溶媒に溶解した溶液が、高温下での保存安定性とポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の各態様は以下に示す[1]~[5]である。
[1]下記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩及び溶剤を含む塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物であって、
塩基性イミノホスファゼニウム塩の含有量が20~50wt%であり、
溶剤が水9~45wt%及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒5~71wt%を含有することを特徴とする塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
【0015】
【化1】
【0016】
(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X-はヒドロキシアニオン、炭酸水素アニオン又は炭素数1~4のアルコキシアニオンを表す。)
[2]溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール及びアセトニトリルからなる群より選択されるプロトン性有機溶媒であることを特徴とする[1]に記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
[3]一般式(1)のX-がヒドロキシアニオンであることを特徴とする[1]に記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物と活性水素含有化合物を接触し重合開始剤を調製すると共に、溶媒及び副生水の除去を行った後、アルキレンオキシドを添加し、開環重合を行うことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
[5]活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする[4]に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
[6]アルキレンオキシドが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであることを特徴とする[4]又は[5]に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
[7]開環重合を、反応圧力0.05~1MPa、反応温度40~130℃の条件下で行うことを特徴とする[4]~[6]のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物は、有機塩基として有用な塩基性イミノホスファゼニウム塩を高温下(50℃以上)で長期間安定に保存、輸送することが可能である。その塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物を用いてポリアルキレングリコールを製造することができ、各種の樹脂材料として期待されるポリアルキレングリコールを提供することが可能となり、その工業的価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の一態様である塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩と、水及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒を含有する溶液である。
【0020】
上記塩基性イミノホスファゼニウム塩は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩である。
【0021】
ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。そして、炭素数1~20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、アリル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、へプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基等を挙げることができる。
【0022】
また、RとRが互いに結合した環構造としては、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、インドリル基、イソインドリル基等を挙げることができ、R同士又はR同士が互いに結合した環構造としては、例えば一方の置換基がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基となって、他方の置換基と互いに結合し環構造を形成している構造を挙げることができる。
【0023】
そして、特に強塩基性を示し、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として適した塩基性イミノホスファゼニウム塩が容易に得られることから、R、Rとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)におけるX-は、ヒドロキシアニオン、炭酸水素アニオン、炭素数1~4のアルコキシアニオンを表す。ここで、炭素数1~4のアルコキシアニオンとしては、例えばメトキシアニオン、エトキシアニオン、n-プロポキシアニオン、イソプロポキシアニオン、n-ブトキシアニオン、イソブトキシアニオン、t-ブトキシアニオン等が挙げられる。
【0025】
そして、特に強塩基性を示し、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として適した塩基性イミノホスファゼニウム塩となることからX-は、ヒドロキシアニオンであることが好ましい。
【0026】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物としては、安定性に優れる触媒溶液となることから、溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の濃度は20~50wt%であることが好ましい。
【0027】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物を構成する溶媒は、水及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒である。ここで、非プロトン性溶媒、又は、溶解度パラメータが10(cal/cm1/2未満のプロトン性有機溶媒のみからなる溶媒である場合、塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物を構成する塩基性イミノホスファゼニウム塩の保存安定性が低下し、水のみからなる溶媒である場合、ポリアルキレングリコール製造時に溶媒を十分に除去することができず、触媒活性を発現できないため、ポリアルキレングリコール製造用触媒としての使用に課題を有するものとなる。
【0028】
該水としては、超純水、蒸留水、イオン交換水、水道水などを挙げることができ、使用する水に特に制限はない。
【0029】
水を多く添加することで塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物の熱安定性は向上するが、ポリアルキレングリコール製造時に溶媒を除去するのに長時間を要し、溶媒を十分に除去できない場合は触媒活性が発現しない。従って、本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物としては、水を9~45wt%含有していることが好ましく、水を11~32wt%含有していることが特に好ましい。
【0030】
該溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒としては、例えばメタノール(溶解度パラメータ14.5(cal/cm1/2)、エタノール(溶解度パラメータ12.7(cal/cm1/2)、n-プロパノール(溶解度パラメータ11.9(cal/cm1/2)、イソプロパノール(溶解度パラメータ11.5(cal/cm1/2)、n-ブタノール(溶解度パラメータ11.4(cal/cm1/2)、イソブタノール(溶解度パラメータ10.5(cal/cm1/2)、t-ブタノール(溶解度パラメータ10.6(cal/cm1/2)等のモノアルコール;エチレングリコール(溶解度パラメータ14.6(cal/cm1/2)、ジエチレングリコール(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、トリエチレングリコール(溶解度パラメータ10.7(cal/cm1/2)、プロピレングリコール(溶解度パラメータ12.6(cal/cm1/2)、1,3-ブタンジオール(溶解度パラメータ11.6(cal/cm1/2)、1,4-ブタンジオール(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、2,3-ブタンジオール(溶解度パラメータ11.1(cal/cm1/2)、グリセリン(溶解度パラメータ16.5(cal/cm1/2)等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル(溶解度パラメータ11.4(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノエチルエーテル(溶解度パラメータ10.5(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(溶解度パラメータ10.9(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(溶解度パラメータ11.5(cal/cm1/2)等の多価アルコール誘導体;蟻酸(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、酢酸(溶解度パラメータ10.1(cal/cm1/2)等の脂肪酸;エチレンジアミン(溶解度パラメータ12.3(cal/cm1/2)、アニリン(溶解度パラメータ10.3(cal/cm1/2)、アセトニトリル(溶解度パラメータ11.9(cal/cm1/2)等の含窒素化合物等を挙げることができ、その中でも、入手及び溶媒の除去が容易で特に保存安定性にも優れるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液となることから、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等の炭素数1~4であるモノアルコール;アセトニトリルが好ましい。または、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0031】
また、本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分を含んでいても良い。
【0032】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物の製造方法としては、例えば上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を水及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒に溶解する方法を挙げることができ、水及び溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒を添加する方法を挙げることができる。
【0033】
本発明における溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒とは、溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒であれば如何なる溶媒であってもよく、非プロトン性または溶解度パラメータが10(cal/cm1/2未満の溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0034】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物としては、安定性に優れる触媒溶液となることから、溶液中のプロトン性有機溶媒の濃度は5~71wt%であることが好ましい。
【0035】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を溶媒に溶解し、溶液を調製した後、80℃で60日間及び50℃で180日間を経過した後の該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度低下が3%以下であるものであることが好ましい。
この際、塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度の測定は、塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物の1H-NMR測定により行い、純度低下は溶液調製時の純度から絶対値として低下した純度値により算出することができる。すなわち、塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度低下(%)は、次式によって算出した。
【0036】
塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度低下(%)=(溶液調製時の純度値)-(加熱環境放置後の純度値)
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物の製造及び保存を行う際の雰囲気に関しては特に制限はなく、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、または空気下であってもよく、その中でも特に保存安定性に優れたポリアルキレングリコール製造用触媒溶液となることから、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
【0037】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物は、ポリアルキレングリコールの製造に用いることが可能であり、その際の製造方法としては、例えば本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物と活性水素含有化合物を接触し重合開始剤を調製すると共に、溶媒及び副生水の除去を4~6時間行った後に、アルキレンオキシドを添加し、アルキレンオキシドの開環重合を行う方法を挙げることができる。
【0038】
重合開始剤を調製する際の活性水素含有化合物としては、例えばヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、チオール化合物等を挙げることができ、より具体的には、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;2-ナフトール、ビスフェノール等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。また、水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いることも可能であり、例えばポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル等を挙げることができ、この際のポリエーテルポリオールの分子量に特に制限はなく、その中でも低粘度で流動性に優れる分子量200~3000のポリエーテルポリオールが好ましい。また、これら活性水素含有化合物は単独でも数種類を混合して用いても良い。
【0039】
重合開始剤を調製する際の該塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物と活性水素化合物の割合は任意であり、その中でも効率よくポリアルキレングリコールを製造することが可能となることから、活性水素含有化合物1モルに対して該ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩が1×10-4~1×10-1モルとなる範囲、好ましくは5×10-3~5×10-2モルとなる範囲で用いることが好ましい。
【0040】
重合開始剤を調製する際に副生する水及び塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物に含まれている溶媒を除去する方法としては、例えば減圧下で溶媒および副生水を除去する方法を挙げることができ、その際の減圧度としては、例えば50kPa以下、好ましくは10kPa以下、特に好ましくは5kPa以下の減圧下を挙げることができる。また、その際の温度条件としては、例えば30~130℃の温度範囲、好ましくは40~100℃の範囲を挙げることができる。また、時間としては、例えば4~6時間での実施が挙げられる。
【0041】
該アルキレンオキシドとしては、例えば炭素数2~20のアルキレンオキシドを挙げることができ、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ペンテンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等を挙げることができる。これらの中で、入手容易で工業的価値の高いことから、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、単一で用いても2種以上を混合して用いても良い。2種以上を混合して用いる場合は、例えば第1のアルキレンオキシドを反応させた後、第2のアルキレンオキシドを反応させても良いし、2種以上のアルキレンオキシドを同時に反応させても良い。
【0042】
アルキレンオキシドの開環重合を行う際の圧力は、例えば0.05~1MPaの範囲、好ましくは、0.1~0.6MPaの範囲である。また、反応温度は、例えば40~130℃の範囲、好ましくは60~130℃の範囲である。
【0043】
本発明の塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物を用いて得られるポリアルキレングリコールは、水酸基価の異なるポリアルキレングリコールとすることが可能であり、得られるポリアルキレングリコールの水酸基価に特に制限は無く、その中でも、5~500mgKOH/gの範囲が好ましく、特に10~170mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0044】
本発明により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。以下に、本発明により得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩含有組成物およびポリアルキレングリコールの分析方法について説明する。
【0046】
~塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度(単位:%)~
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置(日本電子社製、製品名:GSX270WB)を用い、重溶媒に重水を使用して1H-NMRを測定した。2.60~3.10ppmの範囲のピークの面積中の2.85ppmのピークの面積の割合により、塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を算出した。
【0047】
~塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度低下(単位:%)~
塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度低下(%)=(溶液調製時の純度値)-(加熱環境放置後の純度値)
~ポリアルキレングリコールの水酸基価(単位:mgKOH/g)測定~
JIS K-1557記載の方法により、算出した。
【0048】
~ポリアルキレングリコールの分子量(単位:g/mol)測定~
算出したポリアルキレングリコールの水酸基価(dとする)から、次式によって、ポリアルキレングリコールの分子量を算出した。
【0049】
ポリアルキレングリコールの分子量(単位:g/mol)=(1/((d/56.1)/開始剤の官能基数))×1000
~ポリアルキレングリコールのエチレンオキシド含有量(単位:重量%)測定~
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置(日本電子社製、(製品名)GSX270WB)を用い、重溶媒に重クロロホルムを使用して、ポリアルキレングリコールの1H-NMRを測定した。0.80~1.50ppmの範囲のピーク(ポリアルキレングリコール中のプロピレンオキシド鎖のピーク)の積分値と、3.20~3.90ppmの範囲のピーク(ポリアルキレングリコール中のプロピレンオキシド鎖およびエチレンオキシド鎖のピーク)の積分値から、ポリアルキレングリコールのエチレンオキシド含有量を算出した。
【0050】
合成例1(イミノホスファゼニウム塩の塩化物体の合成)
攪拌翼を付した200mlの4つ口フラスコを窒素雰囲気とし、五塩化リン2.3g(11mmol)とトルエン23mlを加え、-20℃で攪拌した。フラスコ内を-20℃に維持したまま、テトラメチルグアニジン13g(110mmol)を滴下し、-20℃で1時間攪拌を継続した。さらに、110℃に昇温し15時間攪拌を行った。得られた白色懸濁液を濾過し、濾物として白色固体を得た。この白色固体をアセトンに溶解し、濾過を行い、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、目的とするイミノホスファゼニウム塩の塩化物体の粗生成物を白色固体として得た。
【0051】
得られた粗生成物をクロロホルムと水で分液抽出した。クロロホルム相を濃縮し、目的とするイミノホスファゼニウム塩の塩化物体5.1g(9.7mmol;収率88%;一般式(2)におけるRがメチル基、Rがメチル基、A-が塩素アニオンに相当するイミノホスファゼニウム塩)を白色固体として得た。
【0052】
合成例2(塩基性イミノホスファゼニウム塩の合成)
磁気回転子を付した300mlのシュレンクフラスコに、合成例1で得られたイミノホスファゼニウム塩の塩化物体21g(40mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ水酸化カリウム2.2g(40mmol)、イソプロパノール80mlを加え、室温中で3時間攪拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁溶液を、濾紙を付した漏斗を用い、減圧下にて濾過を行った。濾液側に目的とする塩基性イミノホスファゼニウム塩のイソプロパノール溶液が得られ、濾物側に副生塩である塩化カリウムが得られた。
【0053】
得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩のイソプロパノール溶液を減圧下濃縮し、塩基性イミノホスファゼニウム塩(一般式(1)におけるRがメチル基、Rがメチル基、X-がヒドロキシアニオンに相当する塩基性イミノホスファゼニウム塩)を得た。この塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を分析した結果、純度は99%以上であった。
【0054】
実施例1
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水1.8g(100.0mmol)/イソプロパノール0.2g(3.3mmol)の混合溶媒を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Aを得た。このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Aの純度を1H-NMRにより測定したところ95.5%であった。
【0055】
該溶液を80℃で60日間、50℃で180日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度をそれぞれ1H-NMRにより測定し、純度低下は0.4%(80℃/60日)、0.2%(50℃/180日)であった。いずれの溶液も純度低下は3%以内を満たし、高温下での十分な保存安定性を保持した。詳細を表1に示す。
【0056】
そして、攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、(80℃/60日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液A4.0g、および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で溶媒及び副生水の除去を6時間行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88~92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88~92℃の範囲で6時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1250gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0057】
また、(50℃/180日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液A4.0gを用いた以外は、上記と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0058】
実施例2
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水1.3g(72.2mmol)/イソプロパノール0.7g(11.6mmol)の混合溶媒を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Bを得た。このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Bの純度を1H-NMRにより測定したところ95.3%であった。
【0059】
該溶液を80℃で60日間、50℃で180日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度をそれぞれ1H-NMR測定し、純度低下は0.3%(80℃/60日)、0.1%(50℃/180日)であった。いずれの溶液も純度低下は3%以内を満たし、高温下での十分な保存安定性を保持した。詳細を表1に示す。
【0060】
そして、(80℃/60日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液B4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0061】
また、(50℃/180日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液B4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1235gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0062】
実施例3
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水1.1g(60.0mmol)/イソプロパノール6.9g(115.0mmol)の混合溶媒を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Cを得た。このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Cの純度を1H-NMRにより測定したところ95.5%であった。
【0063】
該溶液を80℃で60日間、50℃で180日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度をそれぞれ1H-NMR測定し、純度低下は2.0%(80℃/60日)、1.4%(50℃/180日)であった。いずれの溶液も純度低下は3%以内を満たし、高温下での十分な保存安定性を保持した。詳細を表1に示す。
【0064】
そして、(80℃/60日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液C10.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1300gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.7mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0065】
また、(50℃/180日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液C10.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0066】
実施例4
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水0.9g(52.0mmol)/イソプロパノール7.1g(118.3mmol)の混合溶媒を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Dを得た。このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Dの純度を1H-NMRにより測定したところ95.4%であった。
【0067】
該溶液を80℃で60日間、50℃で180日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度をそれぞれ1H-NMR測定し、純度低下は2.7%(80℃/60日)、2.3%(50℃/180日)であった。いずれの溶液も純度低下は3%以内を満たし、高温下での十分な保存安定性を保持した。詳細を表1に示す。
【0068】
そして、(80℃/60日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液D10.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1280gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.2mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す
また、(50℃/180日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液D4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
比較例1
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水0.2g(10.0mmol)/イソプロパノール7.8g(130.0mmol)の混合溶媒を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Eを得た。このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Eの純度を1H-NMRにより測定したところ95.0%であった。
【0071】
該溶液を80℃で1日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を1H-NMR測定し、純度低下は5.2%であった。純度低下が3%を超過し、高温下での保存安定性を保持できなかった。詳細を表2に示す。
【0072】
そして、80℃で1日間経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液E10.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を検討した。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール240gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は121mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1400g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表2に示す。
【0073】
比較例2
水を用いなかった以外は、比較例1と同様の方法を行い、塩基性イミノホスファゼニウム塩-イソプロパノール溶液Fを合成し、純度を1H-NMRにより測定したところ95.1%だった。
【0074】
該溶液を80℃で1日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を1H-NMR測定し、純度低下は23.1%であった。純度低下が3%を大きく超過し、高温下での保存安定性を保持できなかった。詳細を表2に示す。
【0075】
そして、80℃、1日間経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩-イソプロパノール溶液F9.8gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を検討した。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール190gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は158mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1100g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表2に示す。
【0076】
比較例3
イソプロパノール7.1g(118.3mmol)の代わりに、非プロトン性有機溶媒であるテトラヒドロフラン7.1g(98.6mmol)を用いた以外は、実施例4と同様の方法を行い、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-テトラヒドロフラン溶液Gを合成し、純度を1H-NMRにより測定したところ95.2%だった。
【0077】
該溶液を80℃で1日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を1H-NMR測定し、純度低下は12.1%であった。純度低下が3%を大きく超過し、高温下での保存安定性を保持できなかった。詳細を表2に示す。
【0078】
そして、80℃、1日間経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-テトラヒドロフラン溶液G4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を検討した。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は134mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1300g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表2に示す。
【0079】
比較例4
塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)に、水4.6g(255.6mmol)/イソプロパノール3.4g(56.7mmol)の混合溶媒を加えた以外は、比較例1と同様の方法を行い、塩基性イミノホスファゼニウム塩-水-イソプロパノール溶液Hを合成し、純度を1H-NMRにより測定したところ95.1%だった。
【0080】
該溶液を80℃で60日間、50℃で180日間の環境下に置いた後の、該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度をそれぞれ1H-NMRにより測定したところ95.0%(80℃/60日)、94.7%(50℃/180日)であった。いずれの溶液も純度低下は3%以内を満たし、高温下での十分な保存安定性を保持した。詳細を表2に示す。
【0081】
そして、(80℃/60日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液H14.4gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を検討した。しかしながら、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で6時間、溶媒及び副生水の除去を試みたが、十分に溶媒が除去できなかったため、触媒の活性が発現せず、開環重合反応は進行しなかった。詳細を表2に示す。
【0082】
また、(50℃/180日)経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液H14.4gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を検討した。しかしながら、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で6時間、溶媒及び副生水の除去を試みたが、十分に溶媒が除去できなかったため、触媒の活性が発現せず、開環重合反応は進行しなかった。詳細を表2に示す。
【0083】
【表2】