(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】印画物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/382 20060101AFI20241112BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20241112BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20241112BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20241112BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20241112BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B41M5/382 420
B41M5/44 420
B41M5/42 420
B41M5/50 420
B32B33/00
B41J2/325 A
(21)【出願番号】P 2020133954
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-06-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】米山 泰史
(72)【発明者】
【氏名】江口 博
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065193(JP,A)
【文献】特開平04-197794(JP,A)
【文献】特開2011-062892(JP,A)
【文献】特開平09-175049(JP,A)
【文献】特開2009-154410(JP,A)
【文献】特開2014-198317(JP,A)
【文献】特開平10-175321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26-5/52
B44C 1/16-1/175
B32B 1/00-43/00
B41J 2/315-2/345
B41J 2/42-2/425
B41J 2/475-2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に白色層及び保護層が面順次に設けられた熱転写シートを加熱し、一方の面側に画像が形成された透明基材を有する被転写体の画像形成面の一部に前記白色層を転写する工程と、
前記熱転写シートを加熱し、前記白色層を覆うように前記被転写体に前記保護層を転写する工程と、
を備え、
前記白色層が形成された領域のヘイズ値が50%以上、前記白色層が形成されていない領域の少なくとも一部のヘイズ値が15%以下となるように、前記白色層が形成された領域における前記保護層の転写エネルギーを、前記白色層が形成されていない領域における前記保護層の転写エネルギーよりも高くする、印画物の製造方法。
【請求項2】
第1基材上に白色層が設けられた第1熱転写シートを加熱し、一方の面側に画像が形成された透明基材を有する被転写体の画像形成面の一部に前記白色層を転写する工程と、
第2基材上に保護層が設けられた第2熱転写シートを加熱し、前記白色層を覆うように前記被転写体に前記保護層を転写する工程と、
を備え、
前記白色層が形成された領域のヘイズ値が50%以上、前記白色層が形成されていない領域の少なくとも一部のヘイズ値が15%以下となるように、前記白色層が形成された領域における前記保護層の転写エネルギーを、前記白色層が形成されていない領域における前記保護層の転写エネルギーよりも高くする、印画物の製造方法。
【請求項3】
前記白色層が形成された領域の周縁部における前記保護層の転写エネルギーを、前記白色層が形成された領域の中央部における前記保護層の転写エネルギーよりも高くする、請求項1又は2に記載の印画物の製造方法。
【請求項4】
前記透明基材上の一部に前記画像が形成された受容層が設けられている、請求項1乃至3のいずれかに記載の印画物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印画物の製造方法及び印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基材の一面に画像を形成し、画像上に保護層を転写した印画物が知られている。また、意匠性向上のため、透明基材や画像上に白色層(白色隠蔽層)を形成してから保護層を転写する場合もある。
【0003】
白色層は透明基材との密着性が低く、白色層を透明基材に強固に密着させるために、保護層を転写する際の熱エネルギーを高くしていた。しかし、高エネルギーを印加することで、保護層の表面は微細な凹凸を有するマット状になり、ヘイズ値が上がり、印画物の透明性を損なうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6672680号公報
【文献】国際公開第2017/159805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、白色層を透明基材に強固に密着させつつ、印画物の透明性劣化を抑制する印画物の製造方法及び印画物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の印画物の製造方法は、基材上に白色層及び保護層が面順次に設けられた熱転写シートを加熱し、一方の面側に画像が形成された透明基材を有する被転写体の画像形成面の一部に前記白色層を転写する工程と、前記熱転写シートを加熱し、前記白色層を覆うように前記被転写体に前記保護層を転写する工程と、を備え、前記白色層が形成された領域における前記保護層の転写エネルギーを、前記白色層が形成されていない領域における前記保護層の転写エネルギーよりも高くするものである。
【0007】
本開示の印画物は、一方の面に画像が形成された透明基材と、前記透明基材の前記一方の面に、前記画像の少なくとも一部を覆うように設けられた白色層と、前記白色層を覆うように前記透明基材の前記一方の面に設けられた保護層と、を備え、前記白色層が設けられた領域ではヘイズ値が50%以上であり、前記白色層が設けられていない領域の少なくとも一部はヘイズ値が15%以下であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、白色層を透明基材に強固に密着させつつ、印画物の透明性劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る熱転写シートの断面図である。
【
図3】
図3a、
図3bは印画物の製造方法を説明する工程断面図である。
【
図4】
図4a、
図4bは印画物の製造方法を説明する工程断面図である。
【
図5】
図5a、
図5bは印画物の製造方法を説明する工程断面図である。
【
図7】
図7aは被転写体の平面図であり、
図7bは
図7aのVIIb-VIIb線断面図である。
【
図11】保護層転写エネルギーを変える領域の分割例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る熱転写シートの断面図である。
図1に示すように、熱転写シート10は、基材1の一方の面上に面順次に設けられた色材層3、白色層5及び保護層7を有する。基材1の他方の面上には背面層9が設けられている。
【0012】
色材層3は、面順次に設けられたイエローの色材を含有するイエロー色材層3Y、マゼンタの色材を含有するマゼンタ色材層3M、及びシアンの色材を含有するシアン色材層3Cを有する。イエロー色材層3Y、マゼンタ色材層3M、及びシアン色材層3Yに含有される色材は例えば昇華性染料である。色材層3は、染料層に代えて、又は染料層に加えて、熱溶融性インキ層を有していてもよい。
【0013】
保護層7と基材1との間に剥離層が設けられていてもよい。また、保護層7上に接着層が設けられていてもよい。
【0014】
イエロー色材層3Y、マゼンタ色材層3M、シアン色材層3C、白色層5及び保護層7の「5パネル」からなる集合体を「1ユニット」としたとき、熱転写シート10の基材1の一方の面上には、この「1ユニット」が繰り返し設けられている。
【0015】
次に、熱転写シート10の各構成について説明する。
【0016】
(基材)
基材1についていかなる限定もされることはなく、熱転写シートの分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができる。一例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用できる。
【0017】
また、基材1に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、帯電防止層付与等の易接着処理を行ってもよい。また、基材1は、必要に応じて、充填材、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等の添加材を含有してもよい。基材1の厚さについて特に限定はないが、2μm以上10μm以下の範囲が好ましい。
【0018】
(色材層)
色材層3は、色材及びバインダー樹脂を含有している。色材層3が含有する色材としては、例えば、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、ピラゾロメチン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料及びキノフタロン系染料等が挙げられる。色材層3は、色材として1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0019】
色材層3が含有しているバインダー樹脂についても特に限定はなく、ある程度の耐熱性を有し、昇華性染料と適度の親和性があるものを適宜選択して使用できる。このようなバインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール等のビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド及びポリエステル等を挙げることができる。
【0020】
色材層3は、無機粒子、有機粒子等の添加材を含有してもよい。無機粒子としては、タルク、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられ、有機粒子としては、ポリエチレンワックス、シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。色材層3は、離型剤を含有してもよい。離型剤としては、変性或いは未変性のシリコーンオイル(シリコーン樹脂と称されるものも含む)、リン酸エステル、脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0021】
色材層3の形成方法について特に限定はなく、バインダー樹脂、色材、必要に応じて添加される添加材や離型剤を、適当な溶剤中に溶解、或いは分散させた色材層用塗工液を調製し、この塗工液を、基材1、或いは基材1上に設けられる任意の層上に塗布・乾燥して形成できる。色材層3の厚みは、0.2μm以上2.0μm以下が一般的である。
【0022】
(白色層)
白色層5は、後述するように、画像を隠蔽する隠蔽層としての機能を有する。白色層5は、白色顔料及び樹脂材料を含む。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、白色度という観点からは、酸化チタンが好ましい。
【0023】
白色層5における白色顔料の含有量は、50質量%以上90質量%未満であることが好ましく、75質量%以上90質量%未満であることがより好ましい。これにより、画像の白色度をより向上できる。
【0024】
樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリカーボネート、並びにアイオノマー樹脂等が挙げられる。白色層は、これら樹脂材料を2種以上含むことができる。これらの中でも、白色層は、主たる樹脂材料として、(メタ)アクリル樹脂及びポリオール樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、白色層形成用塗工液における白色顔料の分散安定性を向上させることができる。なお、主たる樹脂材料とは、白色層に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、70質量部以上を占める樹脂材料をいう。
【0025】
白色層5における樹脂材料の含有量は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。これにより、白色顔料の再凝集が抑制され、高い隠蔽性が得られる。
【0026】
白色層5は、充填材、可塑材、帯電防止材、紫外線吸収材、無機粒子、有機粒子、離型材及び分散材等の添加材を含んでいてもよい。
【0027】
白色層5の厚さは、0.5m以上4.5μm以下である。これにより、形成される画像の白色度を向上できると共に、白色層5上への保護層転写性を向上できる。白色層5の厚さは、画像の白色度及び保護層転写性という観点から、1μm以上4.3μm以下であることが好ましく、2μm以上4μm以下であることがより好ましい。
【0028】
白色層5は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材1の上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0029】
(保護層)
保護層7を構成するバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリエステルウレタン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物等を挙げることができる。保護層7は、紫外線吸収性樹脂や活性光線硬化樹脂を含有してもよい。なお、活性光線硬化樹脂とは、活性光線硬化性樹脂に活性光線を照射することで硬化せしめたものを意味する。また、活性光線とは、活性光線硬化性樹脂に対して化学的に作用させて重合を促進せしめる光線を意味し、具体的には、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味する。
【0030】
保護層7を構成するバインダー樹脂の含有量について特に限定はないが、保護層7の固形分総量に対し、バインダー樹脂は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量の上限について特に限定はなく、その上限は100質量%である。また、保護層7は、バインダー樹脂に加え、各種フィラーや、蛍光増白剤、耐侯性を向上させるための紫外線吸収剤等、その他の材料を含有してもよい。
【0031】
保護層7の形成方法についても特に限定はなく、上記で例示したバインダー樹脂、必要に応じて添加される添加材を、適当な溶媒に溶解、或いは分散させた保護層用塗工液を調製し、この塗工液を、基材1、或いは基材1上に設けられる任意の層上に塗布・乾燥して形成できる。保護層7の厚みについて特に限定はないが、通常は、0.5μm以上10μm以下である。
【0032】
保護層7の転写性を向上させるべく、基材1と保護層7との間に剥離層を設けることができる。剥離層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含む。樹脂材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂並びにポリエステル等が挙げられる。
【0033】
被転写体と保護層7との密着性を向上させるべく、保護層7上に接着層を設けてもよい。接着層は、加熱により軟化し、密着性を発揮する熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、セルロース樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、並びにスチレン樹脂等が挙げられる。
【0034】
(背面層)
背面層9の材料について限定はなく、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース樹脂、ポリビニルアセタール等のビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂等を挙げることができる。背面層9は、これらの樹脂の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0035】
背面層9は、固形あるいは液状の滑剤を含有してもよい。滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸およびその誘導体、金属石鹸、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の粒子等を挙げることができる。背面層における滑剤の含有量は、5質量%以上50質量%以下が一般的であり、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
【0036】
背面層の形成方法について特に限定はなく、樹脂、必要に応じて添加される滑剤等を、適当な溶剤中に溶解、或いは分散させた背面層用塗工液を調製し、この塗工液を、基材1上に塗布・乾燥することで形成できる。背面層の厚みは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。
【0037】
図2aに示すように、被転写体20は、透明基材21と、透明基材21の一方の面に設けられた受容層23とを有する。なお、本実施形態では透明基材21上に受容層23が設けられた構成について説明するが、透明基材21の材質自体が染料を受容可能なものであれば、受容層23を省略できる。
【0038】
透明基材21は、一方の面側に形成した画像を、他方の面側から視認できる光透過性を有し、ヘイズ値が15%以下であることが好ましい。透明基材21の材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルスチレン等を挙げることができる。
【0039】
透明基材21の厚さは、200μm以上800μm以下が好ましい。
【0040】
(受容層)
受容層23は、熱転写シート10が備える色材層3から移行してくる色材(昇華性染料)を受容し、形成された画像を維持する層である。
【0041】
受容層23は、樹脂材料を含む。樹脂材料としては、染料が染着し易い樹脂であれば限定されるものではなく、例えば、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。受容層23は、上記樹脂材料を2種以上含むことができる。
【0042】
受容層23における上記樹脂材料の含有量は、80質量%以上98質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。
【0043】
一実施形態において、受容層23は、離型剤を含む。これにより、熱転写シート10との離型性を向上できる。離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系又はリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、及び各種シリコーン樹脂などが挙げられる。上記シリコーンオイルとしては、変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を好ましく用いる事ができるが、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーンが特に好ましい。受容層23は、上記離型剤を2種以上含むことができる。
【0044】
受容層23における離型剤の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。これにより、受容層23の透明性を維持しつつ、熱転写シート10との離型性を向上できる。
【0045】
受容層23の厚みは、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。これにより、受容層23上に形成される画像濃度を向上できる。
【0046】
受容層23は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、これを、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、透明基材21上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0047】
受容層23は、
図2aに示すように、透明基材21の全面に設けてもよいし、
図2bに示すように、一部(部分的)に設けてもよい。
図2bに示す構成では、例えば、受容層23は画像を形成する領域にのみ設けられる。受容層23が設けられていない領域では、透明基材21の面が露出する。
【0048】
次に、
図3~
図5を参照して、印画物の製造方法について説明する。
図3a、
図4a、
図5aは、
図2aに示す被転写体20を用いて印画物を製造する例を示す。
図3b、
図4b、
図5bは、
図2bに示す被転写体20を用いて印画物を製造する例を示す。
【0049】
まず、熱転写シート10及び被転写体20を準備する。次に、熱転写シート10と被転写体20とを、色材層3と受容層23とが対向するように重ね合わせ、熱転写プリンタのサーマルヘッド等により熱転写シート10を背面層9側から加熱して、色材層3が含有している色材を熱転写し、
図3a、
図3bに示すように、受容層23に画像G1、G2を形成する。受容層23が省略されている場合は、透明基材21の表面に画像G1,G2が形成される。
【0050】
画像形成処理に続いて、白色層転写処理を行う。白色層転写処理では、熱転写シート10と被転写体20とを、白色層5と受容層23(被転写体20の画像形成面)とが対向するように重ね合わせ、サーマルヘッドで熱転写シート10を背面層9側から加熱し、所望の領域に白色層5を転写する。
【0051】
図4a、
図4bに示す例では、画像G2及びその近傍を覆うように白色層5を転写する。画像G1上には白色層5を転写していない。
図4bに示す例では、白色層5の一部が画像G2上に転写され、その他の部分は透明基材21上に転写される。
【0052】
次に、少なくとも白色層5を覆うように保護層7を転写し、印画物を作製する。
図5a、
図5bに示す例では、保護層7を被転写体20の全面に転写して印画物30を作製している。
図5bに示す構成では、保護層7は、白色層5上に転写される部分、受容層23上に転写される部分、及び透明基材21上に転写される部分を含む。
【0053】
保護層転写処理では、熱転写シート10と被転写体20とを、保護層7と受容層23とが対向するように重ね合わせ、サーマルヘッドで熱転写シート10を背面層9側から加熱する。このとき、白色層形成領域R1における保護層7の転写エネルギーE1(サーマルヘッドによる印加エネルギー)を、それ以外の領域(白色層非形成領域)R2における保護層7の転写エネルギーE2よりも高くする。転写エネルギーE1は、転写エネルギーE2の1.2倍以上4.0倍以下程度が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0054】
図6は、作製された印画物30を表側(透明基材21側)から見た状態と、裏側(保護層7側)から見た状態を示す。印画物30を表側から見た場合、透明基材21を介して画像G1,G2が視認できる。一方、印画物30を裏側から見た場合、画像G1は視認できるが、画像G2は白色層5によって隠蔽され、視認しにくくなっている。
【0055】
保護層転写時に白色層5に高い熱エネルギーが印加されるため、白色層5を透明基材21や受容層23に強固に密着させることができる。白色層形成領域R1では、高い熱エネルギーの印加により、保護層7の表面がマット状になりヘイズ値があがるが、白色層5が設けられている領域であるため、印画物30の透明性に影響を与えない。
【0056】
白色層非形成領域R2では、保護層転写時の熱エネルギーが低いため、保護層7の表面がマット状になることを抑制し、印画物30の透明性劣化を抑制できる。
【0057】
印画物30の白色層5や画像G1,G2が形成されていない領域におけるヘイズ値は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。なお、ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠した方法で測定でき、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150Nにより測定できる。
【0058】
印画物30の白色層5が形成されている領域におけるヘイズ値は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。ヘイズ値は、上述の方法で測定できる。
【0059】
図7a、
図7bに示すように、透明基材21の他方の面(受容層23が設けられている面とは反対の面)の周縁部に、オフセット印刷等の公知の印刷法によって、金属顔料やパール顔料を含む着色層40が枠状に形成された被転写体20Aを使用して印画物を作製してもよい。
図8は、被転写体20Aを使用した印画物30Aの断面図であり、
図9は印画物30Aの平面図である。
【0060】
図10に示すように、白色層5上に熱溶融性インキ等を転写して二次元コード等を形成してもよい。印画物30を表側から見た場合は、白色層5により二次元コードQは隠蔽され、裏側から見ると、二次元コードQが視認できる。
【0061】
図9に示すような着色層40が形成されている場合は、透明基材21を挟んで着色層40の裏側に二次元コードQを形成してもよい。この場合も、印画物30Aを表側から見た場合、着色層40により二次元コードQが隠蔽される。
【0062】
上記実施形態では、白色層形成領域R1における保護層7の転写エネルギーE1を、白色層非形成領域R2における保護層7の転写エネルギーE2よりも高くする例について説明したが、
図11に示すように、白色層形成領域R1の周縁部R11における転写エネルギーE11を、白色層形成領域R1の中央部R12における転写エネルギーE12よりも高くしてもよい(E11>E12>E2)。転写エネルギーE11は、転写エネルギーE12の1倍以上2倍以下程度が好ましい。
【0063】
周縁部R11の幅は、例えば5ドット程度である。ドットは、サーマルヘッドが備える発熱素子の印字密度に依存する。
【0064】
上記実施形態では、イエロー色材層3Y、マゼンタ色材層3M、シアン色材層3C、白色層5及び保護層7の5パネルが面順次に設けられる熱転写シートについて説明したが、少なくとも1つのパネルが別の熱転写シートになっていてもよいし、各パネルが別々の熱転写シートになっていてもよい。
【0065】
上記実施形態において、受容層23を省略し、透明基材21上に、直接、色材を転写して画像を形成したり、白色層5を転写したりしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
3 色材層
5 白色層
7 保護層
9 背面層
10 熱転写シート
20 被転写体
21 透明基材
23 受容層