(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】インク補給容器
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 133
B41J2/175 163
(21)【出願番号】P 2020135712
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 教幸
(72)【発明者】
【氏名】川手 寛之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-63098(JP,A)
【文献】特開2009-279876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218357(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0093340(KR,A)
【文献】特開2002-234185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターにインクを補給するインク補給容器であって、
前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、
前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、
を備え
、
前記インク導出部は、内周面に設けられた第1ネジ部を有し、
前記外装容器は、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部を有し、
前記外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが互いに螺合することにより前記インク導出部と着脱可能に接続される、インク補給容器。
【請求項2】
プリンターにインクを補給するインク補給容器であって、
前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、
前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、
を備え、
前記インク導出部と係合可能な係合部と、前記第1開口部を封止可能な栓部と、を有するキャップを、さらに備える、インク補給容器。
【請求項3】
請求項
2に記載のインク補給容器であって、
前記インク導出部は、内周面に設けられた第1ネジ部を有し、
前記外装容器は、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部を有し、
前記外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが互いに螺合することにより前記インク導出部と着脱可能に接続され、
前記インク導出部および前記外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との螺合を解除する方向の自身の回転を歯と爪との係合により規制するラチェット部を有し、
前記インク導出部は、外周面に設けられた第3ネジ部を有し、
前記係合部は、内周面に設けられ前記第3ネジ部に螺合する第4ネジ部を有する、インク補給容器。
【請求項4】
請求項
3に記載のインク補給容器であって、
前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが螺合するための第1回転方向と、前記第3ネジ部と前記第4ネジ部とが螺合するための第2回転方向と、は互いに逆であり、
前記第2回転方向は、前記ラチェット部が規制する、前記第1回転方向とは逆の回転方向と一致する、インク補給容器。
【請求項5】
プリンターにインクを補給するインク補給容器であって、
前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、
前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、
を備え、
前記インク導出部と前記外装容器とは、フィルム状の連結部材により互いに接続されている、インク補給容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリンターにインクを補給するインク補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンターとして、ユーザーによってインク補給容器を利用してインクタンクにインクが補給されるタイプのプリンターが用いられている。このとき用いられるインク補給容器の一例として、特許文献1には、インクを収容する容器本体部と、容器本体部の開口部分にラチェット機構にて取り付けられるインク出口形成部と、インク出口形成部に対してネジにより着脱自在に取り付けられるキャップとを備えるインク補給容器が開示されている。かかるインク補給容器によれば、使用後において再利用が行われ得る。具体的には、使用後のインク補充容器において、ラチェット機構が解除(破壊)されて容器本体部とインク出口形成部とが分離され、洗浄後の容器本体部にインクが補充され、その後、容器本体部にインク出口形成部が取り付けられることにより、インク補給容器が再利用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のインク補給容器では、容器本体部とインク出口形成部とを分離した後に、容器本体部とインク出口形成部を洗浄しても、残留するインクや異物を十分に除去するのには非常に手間がかかる。このため、インク補給容器の再利用は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、プリンターにインクを補給するインク補給容器が提供される。このインク補給容器は、前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、を備え、前記インク導出部は、内周面に設けられた第1ネジ部を有し、前記外装容器は、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部を有し、前記外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが互いに螺合することにより前記インク導出部と着脱可能に接続される。
本開示の他の形態によれば、プリンターにインクを補給するインク補給容器が提供される。このインク補給容器は、前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、を備え、前記インク導出部と係合可能な係合部と、前記第1開口部を封止可能な栓部と、を有するキャップを、さらに備える。
本開示の他の形態によれば、プリンターにインクを補給するインク補給容器が提供される。このインク補給容器は、前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部が通過可能な開口を有し、前記容器本体部を、前記開口を通過させて挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、を備え、前記インク導出部と前記外装容器とは、フィルム状の連結部材により互いに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態としてのインク補給容器によりインクが補給されるプリンターの概略構成を示す透視斜視図である。
【
図2】インク補給容器の正置状態における正面図である。
【
図5】インク補給容器の中心軸を通る断面を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す部分領域を拡大して示す拡大図である。
【
図7】第1実施形態のラチェット部の構成を模式的に示す説明図である。
【
図8】第2実施形態のインク補給容器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
A1.全体構成:
図1は、本開示の一実施形態としてのインク補給容器10によりインクが補給されるプリンター500の概略構成を示す透視斜視図である。プリンター500は、インクを印刷媒体P上に吐出して印刷を行うインクジェットプリンターとして構成されている。
図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。X軸はプリンター500の幅方向に対応し、Y軸はプリンター500の奥行き方向に対応し、Z軸はプリンター500の高さ方向に対応する。プリンター500は、X軸方向とY軸方向とによって規定される水平な設置面に設置されている。本実施形態では、「X軸方向」とは、+X方向と-X方向との総称を意味する。同様に、「Y軸方向」とは、+Y方向と-Y方向との総称を意味し、「Z軸方向」とは、+Z方向と-Z方向との総称を意味する。
【0008】
プリンター500は、筐体510を有する。筐体510の内部には、主走査方向(X軸方向)に移動可能なキャリッジ520が設けられている。キャリッジ520の下面には、インクを印刷媒体P上に吐出する印刷ヘッド522が設置されている。筐体510の前面の一端には、開閉可能な蓋512が設けられている。蓋512により覆われた筐体510の内部位置には、複数のインクタンク530が設置されている。
【0009】
各インクタンク530は、チューブ534によってキャリッジ520の印刷ヘッド522に接続されている。各インクタンク530内のインクは、チューブ534を介して印刷ヘッド522に供給される。これらのインクタンク530は、インク補給タイプのインクタンクである。各インクタンク530の上面には、インクをインクタンク530に補給するための筒状のインク入口流路部材532が設けられている。これらのインクタンク530は、キャリッジ520上に載置されていない定置型のインクタンクである。なお、各インクタンク530の前面は、光透過性を有する部材で形成されており、各インクタンク530のインク残量が外部から目視可能である。インク残量が少なくなった場合には、蓋512を開けて、インクタンク530のインク入口流路部材532からインクを補給することが可能である。
【0010】
本明細書において、「インクの補給」という用語は、インクタンク530にインクを供給してインク残量を増やす動作を意味している。但し、「インクの補給」によってインクタンク530をインクで満杯にする必要はない。また、「インクの補給」は、プリンター500の初回使用時に、空のインクタンク530にインクを充填する動作も含む。
【0011】
図2は、インク補給容器10の正置状態における正面図である。
図3は、インク補給容器10の分解斜視図である。
図4は、インク補給容器10の分解断面図である。「インク補給容器10の正置状態」とは、外装容器200の底部を下にして机などの水平面の上に置いた状態を意味する。この正置状態におけるインク補給容器10の上端側を「先端側」と呼び、下端側を「後端側」と呼ぶ。
図2以降の各図における+Z方向は、インク補給容器10の正置状態における鉛直下向きの方向を示す。なお、
図2では、インク補給容器10の中心軸Cを一点鎖線で示している。また、本明細書において、インク補給容器10の中心軸Cと平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸Cから垂直な方向に向かう方向を「径方向」と呼ぶ。
図4では、中心軸Cを通る断面でのインク補給容器10の断面図を表している。
【0012】
図2ないし
図4に示すように、インク補給容器10は、インク容器100と、外装容器200と、キャップ300とを備える。
【0013】
インク容器100は、インクを直接的に収容可能に構成された容器である。インク容器100は、容器本体部140と、インク導出部150とを備える。容器本体部140は、インクを収容可能に構成されている。容器本体部140は、一端が底として形成された筒状の主収容部141と、主収容部141に対して先端側において隣接し、先端に向かうにつれて内径が狭くなる筒状の肩部142と、肩部142に対して先端側において隣接する第1開口部143とを備える。主収容部141は、インクを収容可能にカップ状に構成されている。なお、
図3、4では、容器本体部140の外観形状は、底の有る筒状の外観形状であるが、容器本体部140は柔軟性が高いため、様々な形状に変形されて様々な外観形状を有し得る。容器本体部140の内部には、インクを収容するインク収容部144が形成されている。第1開口部143は、後端側から先端側に向かうにつれて内径が小さくなる筒状の部位であり、最も先端には、第1開口OP1が形成されている。第1開口OP1を介して主収容部141へのインクの充填、および主収容部141からのインクの供給(補充)が行われる。ここで、本実施形態では、第1開口OP1の中心軸は、中心軸Cと一致している。このため、第1開口OP1を介してのインクの充填および供給が行われる際のインクの流れ方向は、この中心軸Cと平行な方向、すなわち軸方向に一致する。
図2に示すように、完成状態のインク補給容器10では、容器本体部140は、外装容器200の内部に収容されている。本実施形態において、容器本体部140の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。なお、ポリエチレンテレフタレートに限らず、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂材料や、鉄材やアルミニウムなどの金属材料であってもよい。
【0014】
インク導出部150は、プリンター500へのインク補給時に、容器本体部140内のインクを外部へと導出する。インク導出部150は、底を有する円筒状の外観形状を有する。換言すると、+Z方向に開口したカップ状の外観形状を有する。インク導出部150の内側の中央部分は、第1開口部143の先端に接続されている。インク導出部150は、第1開口OP1を含む容器本体部140(第1開口部143)の先端側の一部を周方向に囲む。インク導出部150は、側壁部151と、上面部154と、突出部155と、拡径部156とを備える。
【0015】
側壁部151は、円筒状の外観形状を有し、第1開口部143を周方向に囲む。側壁部151の外周表面には、外ネジ152が形成されている。外ネジ152は、キャップ300が有する後述の係合部311と螺合する。外ネジ152は、本開示の第3ネジ部に相当する。側壁部151の内周表面には、内ネジ153が形成されている。内ネジ153は、外装容器200が有する後述の外ネジ222と螺合する。内ネジ153は、本開示の第1ネジ部に相当する。
【0016】
上面部154は、側壁部151の先端側端面に連なり、略円盤状の外観形状を有する。上面部154の中央には、突出部155が形成されている。突出部155は、上面部154よりも先端側(-Z方向)に突出している。突出部155は、略円筒状の外観形状を有し、最も先端側の端面に第3開口OP3が形成されている。第3開口OP3は、インクの出入口として機能する。本実施形態において、第3開口OP3の軸線は、第1開口OP1の軸線および中心軸Cと一致する。なお、第3開口OP3の軸線は、第1開口OP1の軸線および中心軸Cのうちの少なくとも一方とずれていてもよい。本実施形態では、プリンター500へのインク補給時に、インク補給容器10は、軸線方向に挿抜される。なお、突出部155の内側に弁構造を設けてもよい。かかる弁構造としては、例えば、シリコーンゴムや、ゴム弾性を有するエラストマーで形成されたスリット弁を採用してもよい。
【0017】
拡径部156は、側壁部151に比べて内径および外径が大きな略円筒状の外観形状を有する。拡径部156は、側壁部151の後端に連なる。拡径部156の内周面には、多数の歯157が所定の間隔を開けて周方向に並んで配置されている。かかる歯157は、後述するラチェット部400の一部を構成する。本実施形態において、拡径部156の軸方向の位置は、
図4に示すように、肩部142と第1開口部143の境界の位置とほぼ一致する。
【0018】
本実施形態において、インク導出部150の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。なお、ポリエチレンテレフタレートに限らず、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂であってもよい。
【0019】
外装容器200は、容器本体部140を収容し、インク補給容器10の外殻を構成する。外装容器200は、容器本体収容部210と、第2開口部220とを備える。
【0020】
容器本体収容部210は、主収容部211と、肩部212とを備える。主収容部211は、底を有する筒状の外観形状を有する。主収容部211の内側の空間である収容部202は、容器本体部140の一部を収容する。肩部212は、主収容部211に対して先端側において隣接し、先端に向かうにつれて内径が狭くなる筒状の外観形状を有する。主収容部211の直径は、主収容部141の直径よりも大きい。容器本体収容部210は、おおよそインク容器100のうちの主収容部141と、肩部142と、第1開口部143の後端側の一部とを収容する。
【0021】
第2開口部220は、円筒状の外観形状を有し、容器本体収容部210の先端側の端部に連なる。第2開口部220の先端は、第2開口OP2として形成されている。本実施形態において、第2開口部220の直径は、容器本体部140のうち最も直径が大きな主収容部141の直径よりも小さい。しかし、主収容部141は弾性を有し変形可能に構成されているため、主収容部141を萎めた状態で第2開口OP2から容器本体収容部210内に容器本体部140を挿入することは可能である。同様に、主収容部141を萎めた状態で第2開口OP2から容器本体収容部210内の容器本体部140を取り出すことは可能である。第2開口部220の外周表面には、外ネジ222が形成されている。外ネジ222は、上述のインク導出部150の内ネジ153と螺合する。これらの外ネジ222と内ネジ153とが螺合することにより、第2開口部220は、インク導出部150と着脱可能に接続されることとなる。換言すると、外ネジ222と内ネジ153とが螺合することにより、外装容器200とインク容器100とが着脱可能に接続されることとなる。外ネジ222は、本開示における第2ネジ部に相当する。外装容器200の外表面のうち、肩部212と第2開口部220との境界部分には、爪223が形成されている。かかる爪223は、後述するラチェット部400の一部を構成する。
【0022】
キャップ300は、インク導出部150に着脱自在に取り付けられ、第3開口OP3を封止する。
図2に示すように、キャップ300が取り付けられた状態において、インク導出部150は、外部から視認することはできない。キャップ300は、筒状部310と、ドーム部320とを備える。
【0023】
筒状部310は、円筒状の外観形状を有する。
図4に示すように、筒状部310の内周面には係合部311が形成されている。本実施形態において、係合部311は、内ネジにより構成されている。係合部311は、ユーザーの操作により、インク導出部150の外ネジ152と螺合する。ドーム部320は、ドーム状の外観形状を有する。ドーム部320は、筒状部310の先端側の端部に連なる。ドーム部320の内側中央には、栓部321が形成されている。栓部321は、+Z方向に突出した段付きの円筒形状を有する。栓部321は、キャップ300がインク導出部150に取り付けられた状態において、第3開口OP3を封止する。
【0024】
図5は、インク補給容器10の中心軸Cを通る断面を示す断面図である。
図5に示すように、栓部321は、第3開口OP3からインク容器100の内部に一部挿入されており、第3開口OP3を封止している。また、
図5に示すように、外装容器200の収容部202には、主収容部141が収容されている。このように、外装容器200は、インクを直接的に収容せずに、インク容器100(インク収容部144)に収容された状態で間接的にインクを収容している。このため、収容部202の内周面や、第2開口部220の内周面にインクが付着することが防止される。
【0025】
図6は、
図5に示す部分領域Ar1を拡大して示す拡大図である。
図6に示すように、インク導出部150の外周面に形成されている外ネジ152は、キャップ300の係合部311と螺合している。また、インク導出部150の内周面に形成されている内ネジ153は、外装容器200(第2開口部220)の外ネジ222と螺合している。このため、インク導出部150を介して、外装容器200とインク容器100とが接続され、かつ、外装容器200およびインク容器100がキャップ300に接続されている。拡径部156の直径が側壁部151の直径よりも大きいことから、拡径部156はフランジ状に構成され、拡径部156の-Z方向の端面は露わになっている。そして、
図6に示すように、かかる端面にキャップ300の+Z方向の端面が当接している。これにより、キャップ300の過度なネジ込みが規制されることとなる。
【0026】
A2.ラチェット部400の詳細構成および螺合方向:
図7は、第1実施形態のラチェット部400の構成を模式的に示す説明図である。
図7では、ラチェット部400を-Z方向に見たときの構成を模式的に表している。ラチェット部400は、拡径部156の内周面に形成された多数の歯157と、外装容器200における肩部212と第2開口部220との境界に形成された爪223とから構成される。ラチェット部400は、外装容器200がインク容器100(インク導出部150)に対して第2回転方向R2に回転することを規制し、第2回転方向R2とは逆の第1回転方向R1に回転することを許容する。第2回転方向R2は、インク導出部150の内ネジ153と、外装容器200の外ネジ222との螺合を解除する方向である。すなわち、ラチェット部400によって、インク容器100が外装容器200から取り外されてしまうことを規制している。
【0027】
本実施形態では、インク導出部150の内ネジ153と、外装容器200の外ネジ222とが螺合するための回転方向(第1回転方向R1)と、インク導出部150の外ネジ152と、キャップ300の係合部311とが螺合するための回転方向(第2回転方向R2)とは、互いに逆となるように設定されている。このため、ユーザーがキャップ300を通常よりも強く締めるように第2回転方向R2に回転させると、ラチェット部400において例えば歯157が破壊されて第2回転方向R2への回転規制が解除されることとなる。そうすると、インク導出部150の内ネジ153と、外装容器200の外ネジ222との螺合が解除され、インク容器100を外装容器200から取り出すことが可能となる。
【0028】
A3.インク補給容器10の再利用方法:
インク使用済みのインク補給容器10において、ユーザーは、キャップ300をインク導出部150に取り付けたまま、キャップ300を通常よりも強く締める方向に回転させる。そうすると、上述のように、ラチェット部400が破壊され、キャップ300とインク導出部150とが一体になったまま第2回転方向R2に回転して、インク導出部150と外装容器200との螺合が解除される。その後、ユーザーは、インク容器100のうちの容器本体部140を外装容器200から抜き出す。このとき、インク容器100の第3開口OP3はキャップ300(栓部321)によって封止されているので、外装容器200から取り出されるインク容器100から残留インクが漏れ出ることを抑制できる。このため、ユーザーや周辺環境が残留インクにより汚染されることを抑制できる。
【0029】
ユーザーは、新たなインク容器100を用意して、容器本体部140を外装容器200の第2開口OP2から収容部202へと挿入する。このとき、インク容器100の容器本体部140を弾性変形させて直径を第2開口OP2の直径よりも小さくしてから挿入する。その後、ユーザーは、インク導出部150の内ネジ153と外装容器200の外ネジ222とを螺合させて、インク容器100と外装容器200とを接続させる。ユーザーは、第3開口OP3からインクを容器本体部140内に注入する。インク注入が完了すると、ユーザーは、キャップ300をインク導出部150に装着する。このとき使用するキャップ300は、使用済みのインク補給容器10に用いられていたキャップ300であっても、新しいキャップ300であってもよい。こうして外装容器200を再利用して、インクが充填された新たなインク補給容器10が完成する。
【0030】
以上説明した第1実施形態のインク補給容器10によれば、インク使用後の空のインク補給容器10において、インク導出部150と外装容器200との接続を解除することにより、インク容器100を外装容器200から容易に取り外すことができる。このため、残留インクが付着するインク容器100と、残留インクの付着がほとんど無い外装容器200とを簡易に分離でき、インク補給容器10(外装容器200)を容易に再利用できる。
【0031】
また、インク導出部150の内ネジ153と、外装容器200の外ネジ222との螺合を解除することにより、インク導出部150と外装容器200との接続を容易に解除でき、インク容器100を外装容器200から容易に取り出すことができる。
【0032】
また、インク導出部150と係合可能な係合部311と、第3開口OP3を封止可能な栓部321とを有するキャップ300を備えるので、キャップ300をインク導出部150に係合(装着)させたまま、インク容器100を外装容器200から取り出すことができる。このため、インク容器100と外装容器200とを分離する際に、作業者や周辺環境に残留インクが付着して汚染されることを抑制できる。
【0033】
また、インク補給容器10は、ラチェット部400を備え、ラチェット部400は、インク導出部150の内ネジ153と外装容器200の外ネジ222との螺合を解除する方向の回転、すなわち第2回転方向R2の回転を規制する。かかる第2回転方向R2の回転は、キャップ300とインク導出部150とが螺合する方向の回転であるので、キャップ300とインク導出部150とを螺合させる際に、インク容器100(インク導出部150)と外装容器200との接続が解除されることを抑制できる。他方、キャップ300を取り外す際には、外装容器200とインク容器100(インク導出部150)との接続は維持される。また、キャップ300を強く締めることにより、ラチェット部400を破壊してインク容100器を外装容器200から取り外すことができる。加えて、インク容器100を外装容器200から取り外す際、キャップ300はインク導出部150に係合(装着)された状態となるため、作業者や周辺環境に残留インクが付着して汚染されることを抑制できる。
【0034】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態のインク補給容器10aの構成を示す断面図である。
図8では、
図5と同様に、インク補給容器10aの中心軸Cを通る断面を示している。第2実施形態のインク補給容器10aは、ラチェット部400を備えていない点と、連結部材20を備えている点とにおいて、第1実施形態のインク補給容器10と異なる。第2実施形態のインク補給容器10aにおけるその他の構成は、第1実施形態のインク補給容器10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
第2実施形態のインク補給容器10aは、ラチェット部400を備えていない。すなわち、拡径部156の内周面に歯157は形成されていない。また、外装容器200の外表面において、主収容部211と肩部212との境界部分に爪223は形成されていない。
【0036】
連結部材20は、フィルム状の外観形状を有し、インク補給容器10aの外表面のうち、中心軸Cに沿ってインク導出部150の後端側と外装容器200の先端側とに亘って、全周を取り囲むように密着して配置されている。連結部材20は、インク導出部150と外装容器200とを接続する。このような連結部材20により、インク補給時や、キャップ300が取り外される時等において、インク容器100が外装容器200から外れてしまうことを抑制できる。
【0037】
連結部材20には、軸方向(Z軸方向)に予めミシン目21が形成されている。ユーザーは、かかるミシン目21から連結部材20を破って取り外すことができる。このため、インク補給容器10aを再利用する際に、インク容器100と外装容器200との接続を容易に解除できる。加えて、かかる解除の際における外装容器200の変形や損傷を抑制できる。
【0038】
以上説明した第2実施形態のインク補給容器10aは、第1実施形態のインク補給容器10と同様な効果を有する。加えて、フィルム状の連結部材20によってインク導出部150と外装容器200とを接続するので、インク容器100と外装容器200とを簡単な手段で接続固定でき、インク補給時にこれらが互いに外れてしまうことを抑制できる。また、フィルム状の連結部材20は破断や取り外しが簡便であるため、インク使用後の空のインク補給容器10aにおいて、インク導出部150と外装容器200との接続を容易に解除できる。このため、インク容器100を外装容器200から取り出し易くできる。また、例えば、第1実施形態のラチェットのような固定構造とは異なり、部分的に破壊する必要が無いため、外装容器200からインク容器100を取り外す際に、外装容器200の変形や破損を抑制できる。
【0039】
C.他の実施形態:
(C1)各実施形態において、インク導出部150と外装容器200との接続は、内ネジ153と外ネジ222との螺合により実現されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、スナップフィットなどの任意の種類の接続手段により、インク導出部150と外装容器200とが着脱自在に接続されてもよい。
【0040】
(C2)各実施形態において、キャップ300を省略してもよい。かかる構成においては、インク導出部150において外ネジ152を省略してもよい。
【0041】
(C3)第1実施形態において、インク導出部150と外装容器200とが螺合するための回転方向(第1回転方向R1)と、インク導出部150とキャップ300とが螺合するための回転方向(第2回転方向R2)とは、互いに逆方向であったが、これに代えて、互いに同じ方向であってもよい。かかる構成においては、これらの螺合方向は、第2回転方向R2であってもよい。このようにすることで、キャップ300とインク導出部150の螺合解除方向(係合部311と外ネジ152との螺合を解除する方向)が、インク導出部150と外装容器200との螺合解除方向(内ネジ153と外ネジ222との螺合を解除する方向)と同じであっても、キャップ300をインク導出部150から取り外す際に、インク導出部150と外装容器200との接続が解除されることが規制される。このため、インク補給のためにキャップ300を取り外す際に、外装容器200からインク導出部150およびインク容器100が外れてしまうことを抑制できる。他方、第1実施形態と同様に、キャップ300をきつく締めようとすることにより、ラチェット部400を破壊してインク容器100(インク導出部150)と外装容器200との接続を解除できる。尚、ラチェット部400は設けなくてもよく、そのようにすれば、インク容器100と外装容器200との接続は解除し易い。その場合、キャップ300とインク導出部150の螺合解除方向と、インク導出部150と外装容器200との螺合解除方向とを逆にすれば、キャップ300をインク導出部150から取り外す際に、外装容器200からインク導出部150およびインク容器100が外れてしまうことを抑制し易い。また、ラチェット部400が無い構成において、キャップ300とインク導出部150の螺合解除方向と、インク導出部150と外装容器200との螺合解除方向とが同じであっても、それぞれの部材の色を変えたり、開閉方向を示す等、注意を喚起する表示や形態等により、キャップ300をインク導出部150から取り外す際に、外装容器200からインク導出部150およびインク容器100が外れないように抑制することは可能である。
【0042】
(C4)各実施形態において、インク容器100(容器本体部140)および外装容器200(主収容部211)は、いずれも底を有する円筒状の外観形状を有していたが、本開示はこれに限定されない。これらのうちの少なくとも一方は、底を有する直方体の筒状の外観形状を有していてもよい。
【0043】
(C5)各実施形態において、第2開口部220の直径は、容器本体部140のうち最も直径が大きな主収容部141の直径よりも小さかったが、本開示はこれに限定されない。第2開口部220の直径は、主収容部141の直径と同じまたはそれよりも大きくてもよい。かかる構成によれば、容器本体部140が弾性(収縮性)を有することを要しないので、容器本体部140を比較的剛性の高い構造にでき、変形に伴う経年劣化を抑制できる。
【0044】
(C6)第2実施形態において、ミシン目21を省略してもよい。また、第2実施形態の連結部材20は、インク補給容器10aの外表面のうち、中心軸Cに沿ってインク導出部150の後端側と外装容器200の先端側とに亘って、全周を取り囲むように配置されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、連結部材20を、拡径部156と外装容器200の外周面とに亘って貼付された1つ又は複数の接着テープにより構成してもよい。かかる構成において1つの接着テープにより構成する場合、1つの接着テープが、全周に亘ってインク導出部150(拡径部156)と外装容器200との境界部分に貼付される構成としてもよいし、全周のうちの一部において、インク導出部150(拡径部156)と外装容器200との境界部分に貼付される構成としてもよい。
【0045】
(C7)本開示は、インク補給容器などのインク収容容器に限らず、インク以外の任意の種類の液体を収容する他の種類の液体収容容器にも適用可能である。
【0046】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0047】
(1)本開示の一形態によれば、プリンターにインクを補給するインク補給容器が提供される。このインク補給容器は、前記インクを収容可能に構成され、前記インクを流通可能な第1開口部を有する容器本体部と、前記第1開口部に接続され前記第1開口部を含む前記容器本体部の一部を周方向に囲むインク導出部と、を有するインク容器と、前記容器本体部を収容可能な容器本体収容部と、前記インク導出部に着脱可能に接続され、前記容器本体部を挿抜可能に構成された第2開口部と、を有する外装容器と、を備える。
このような形態によれば、インク使用後の空のインク補給容器において、インク導出部と外装容器との接続を解除することにより、インク容器を外装容器から容易に取り外すことができる。このため、残留インクが付着するインク容器と、残留インクの付着がほとんど無い外装容器とを簡易に分離でき、インク補給容器(外装容器)を容易に再利用できる。
【0048】
(2)上記形態のインク補給容器において、前記インク導出部は、内周面に設けられた第1ネジ部を有し、前記外装容器は、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部を有し、前記第1外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが互いに螺合することにより前記インク導出部と着脱可能に接続されてもよい。
このような形態によれば、第1ネジ部と第2ネジ部との螺合を解除することにより、容易にインク容器を外装容器から取り出すことができる。
【0049】
(3)上記形態のインク補給容器において、前記インク導出部と係合可能な係合部と、前記第1開口部を封止可能な栓部と、を有するキャップを、さらに備えてもよい。
このような形態によれば、キャップをインク導出部に係合(装着)させたまま、インク容器を外装容器から取り出すことができる。このため、インク容器と外装容器とを分離する際に、作業者や周辺環境に残留インクが付着して汚染されることを抑制できる。
【0050】
(4)上記形態のインク補給容器において、前記インク導出部および前記外装容器は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との螺合を解除する方向の自身の回転を歯と爪との係合により規制するラチェット部を有し、前記インク導出部は、外周面に設けられた第3ネジ部を有し、前記係合部は、内周面に設けられ前記第3ネジ部に螺合する第4ネジ部を有してもよい。
このような形態によれば、キャップとインク導出部の螺合解除方向(第3ネジ部と第4ネジ部との螺合を解除する方向)が、インク導出部と外装容器との螺合解除方向(第1ネジ部と第2ネジ部との螺合を解除する方向)と同じであっても、キャップをインク導出部から取り外す際に、インク導出部と外装容器との接続が解除されることが規制される。このため、インク補給のためにキャップを取り外す際に、外装容器からインク導出部およびインク容器が外れてしまうことを抑制できる。
【0051】
(5)上記形態のインク補給容器において、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部とが螺合するための第1回転方向と、前記第3ネジ部と前記第4ネジ部とが螺合するための第2回転方向と、は互いに逆であり、前記第2回転方向は、前記ラチェット部が規制する、前記第1回転方向とは逆の回転方向と一致してもよい。
このような形態によれば、キャップを取り外す際には、外装容器とインク容器(インク導出部)との接続は維持される。他方、キャップを強く締めることにより、ラチェット部を破壊してインク容器を外装容器から取り外すことができる。加えて、インク容器を外装容器から取り外す際、キャップはインク導出部に係合(装着)された状態となるため、作業者や周辺環境に残留インクが付着して汚染されることを抑制できる。
【0052】
(6)上記形態のインク補給容器において、前記インク導出部と前記外装容器とは、フィルム状の連結部材により互いに接続されていてもよい。
このような形態によれば、インク容器と外装容器とを簡単な手段で接続固定でき、インク補給時にこれらが互いに外れてしまうことを抑制できる。加えて、フィルム状の連結部材は破断や取り外しが簡便であるため、インク使用後の空のインク補給容器において、インク導出部と外装容器との接続を容易に解除できる。このため、インク容器を外装容器から取り出し易くできる。また、例えば、ラチェットのような固定構造とは異なり、部分的に破壊する必要が無いため、外装容器からインク容器を取り外す際に、外装容器の変形や破損を抑制できる。
【符号の説明】
【0053】
10…インク補給容器、10a…インク補給容器、20…連結部材、21…ミシン目、100…インク容器、140…容器本体部、141…主収容部、142…肩部、143…第1開口部、144…インク収容部、150…インク導出部、151…側壁部、152…外ネジ、153…内ネジ、154…上面部、155…突出部、156…拡径部、157…歯、200…外装容器、202…収容部、210…容器本体収容部、211…主収容部、212…肩部、220…第2開口部、222…外ネジ、223…爪、300…キャップ、310…筒状部、311…係合部、320…ドーム部、321…栓部、400…ラチェット部、500…プリンター、510…筐体、512…蓋、520…キャリッジ、522…印刷ヘッド、530…インクタンク、532…インク入口流路部材、534…チューブ、Ar1…部分領域、C…中心軸、OP1…第1開口、OP2…第2開口、OP3…第3開口、R1…第1回転方向、R2…第2回転方向