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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241112BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142055
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037757
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】市川 義人
(72)【発明者】
【氏名】木下 明将
(72)【発明者】
【氏名】林 真吾
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-019045(JP,A)
【文献】特開2018-116986(JP,A)
【文献】特開2019-212718(JP,A)
【文献】特開2019-087736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1ベース領域と、
前記第1半導体層の内部に選択的に設けられた第2導電型の第2ベース領域と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた層間絶縁膜と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を備え、
隣り合う前記第1ベース領域の間に、前記トレンチ、前記ゲート電極および前記第2ベース領域が、複数配置され、
隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチが並ぶ方向で、離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置され
隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチ間に前記第1半導体領域が設けられている領域では、前記トレンチが並ぶ方向で、お互いに離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置され、さらに、前記トレンチ間に前記第2半導体領域が設けられている領域では、前記トレンチが並ぶ方向で、お互いに接して配置され、かつ、前記第1ベース領域と接して配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1ベース領域と、
前記第1半導体層の内部に選択的に設けられた第2導電型の第2ベース領域と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた層間絶縁膜と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を備え、
隣り合う前記第1ベース領域の間に、前記トレンチ、前記ゲート電極および前記第2ベース領域が、複数配置され、
隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチが並ぶ方向で、離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置され、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型または第2導電型の第3半導体領域をさらに備え、
前記おもて面からの平面視で、前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に前記第3半導体領域が配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記おもて面からの平面視で、前記第2半導体領域は島状に配置され、
前記第1ベース領域上に配置された前記第2半導体領域は、前記トレンチと離れ、
前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第2半導体領域は、前記トレンチと少なくとも一部が接していることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記おもて面からの平面視で、前記第1半導体領域は島状に配置され、
前記第1ベース領域上に配置された前記第1半導体領域は、前記トレンチと接し、
前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第1半導体領域は、前記トレンチと少なくとも一部が接していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板、前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域および前記第3半導体領域の半導体は、炭化珪素であることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)等が公知である。特に、炭化珪素(SiC)半導体を用いたMOSFET(以下、SiC-MOSFETとする)は、シリコン(Si)半導体を用いた従来の半導体装置と比べてオン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。このため、SiC-MOSFETは、インバータ、コンバータ等の電力変換回路に用いられている。これらの電力用半導体装置には低損失および高効率および信頼性の向上が求められている。
【0003】
電力用半導体装置においては、素子のオン抵抗の低減を図るためトレンチ構造を有する縦型SiC-MOSFETが作製(製造)されている(例えば、下記特許文献1参照)。縦型MOSFETでは、チャネルが基板表面に対して平行に形成されるプレーナ構造よりもチャネルが基板表面に対して垂直に形成されるトレンチ構造の方が単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0004】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する。図8は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図8に示すように、トレンチ型MOSFET150は、n+型炭化珪素基板101のおもて面にn-型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n-型炭化珪素エピタキシャル層102のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域105が設けられている。また、n型高濃度領域105のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面層には、第1p+型ベース領域103が選択的に設けられている。n型高濃度領域105には、トレンチ115の底面全体を覆うように第2p+型ベース領域104が選択的に設けられている。
【0005】
また、トレンチ型MOSFET150には、さらにp型ベース層106、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108、ゲート絶縁膜109、ゲート電極113、層間絶縁膜110、ソース電極116、裏面電極111、トレンチ115、ソース電極パッド(不図示)およびドレイン電極(不図示)が設けられている。ソース電極116は、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108上に設けられ、ソース電極116上にソース電極パッドが設けられている。
【0006】
このような構造の縦型MOSFETは、ソース-ドレイン間にボディーダイオードとしてp型ベース層106とn-型炭化珪素エピタキシャル層102とで形成される寄生pnダイオードを内蔵する。この寄生pnダイオードは、ソース電極116に高電位を印加することで動作させることができ、p++型コンタクト領域108からp型ベース層106とn-型炭化珪素エピタキシャル層102とを経由してn+型炭化珪素半導体基板101への方向に電流が流れる。このように、MOSFETではIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と異なり、寄生pnダイオードを内蔵しているため、インバータに用いる還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)を省略することができ、低コスト化および小型化に貢献する。これ以降、MOSFETの寄生pnダイオードを内蔵ダイオードと称する。
【0007】
また、トレンチ間の第1半導体領域直下に当該第1半導体領域に接する第4半導体領域を配置することで、所定耐圧を確保して維持することができ、隣り合う第4半導体領域間に2つ以上のトレンチが配置されるように、第4半導体領域を間引いて配置することで、セルピッチを小さくすることができる半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-182032号公報
【文献】特開2018-19045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のSiC-MOSFETは、MOSセルと内蔵ダイオードセルとが交互に設けられる構造を有している。このため、この構造を有したままセルピッチを微細化していくと、JFET領域内の抵抗が増加して素子のオン抵抗が増大し、電力変換における効率の向上を妨げる。また、上記特許文献2には、セルピッチの微細化手法が記載されているが、低電流領域での安定性が劣るという課題がある。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、JFET領域内の抵抗を増大させずセルピッチを微細化することで、オン抵抗を削減して、高効率かつ信頼性が高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第1ベース領域が設けられる。前記第1半導体層の内部に選択的に第2導電型の第2ベース領域が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記ゲート電極上に層間絶縁膜が設けられる。前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。隣り合う前記第1ベース領域の間に、前記トレンチ、前記ゲート電極および前記第2ベース領域が、複数配置され、隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチが並ぶ方向で、離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置されている。隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチ間に前記第1半導体領域が設けられている領域では、前記トレンチが並ぶ方向で、お互いに離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置され、さらに、前記トレンチ間に前記第2半導体領域が設けられている領域では、前記トレンチが並ぶ方向で、お互いに接して配置され、かつ、前記第1ベース領域と接して配置されている。
【0012】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第1ベース領域が設けられる。前記第1半導体層の内部に選択的に第2導電型の第2ベース領域が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記ゲート電極上に層間絶縁膜が設けられる。前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。隣り合う前記第1ベース領域の間に、前記トレンチ、前記ゲート電極および前記第2ベース領域が、複数配置され、隣り合う前記第1ベース領域の間に配置された複数の前記第2ベース領域は、前記トレンチが並ぶ方向で、離れて配置され、かつ、前記第1ベース領域と離れて配置されている。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型または第2導電型の第3半導体領域をさらに備え、前記おもて面からの平面視で、前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に前記第3半導体領域が配置されている。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記おもて面からの平面視で、前記第2半導体領域は島状に配置され、前記第1ベース領域上に配置された前記第2半導体領域は、前記トレンチと離れ、前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第2半導体領域は、前記トレンチと少なくとも一部が接していることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記おもて面からの平面視で、前記第1半導体領域は島状に配置され、前記第1ベース領域上に配置された前記第1半導体領域は、前記トレンチと接し、前記第1ベース領域を介さずに隣り合う前記トレンチ間の領域上に配置された前記第1半導体領域は、前記トレンチと少なくとも一部が接していることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板、前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域および前記第3半導体領域の半導体は、炭化珪素であることを特徴とする。
【0018】
上述した発明によれば、ボディダイオードセルの間に2つ以上のMOSセルが配置される。これにより、ボディダイオードセル間に配置されるMOSセルの数を増やすことで、単位長さあたりのトレンチの側壁の数を多くすることができ、結果としてチャネル密度が大きくなりオン抵抗を小さくすることができる。
【0019】
また、隣り合う第1p+型ベース領域(第2導電型の第1ベース領域)の間に配置された複数の第2p+型ベース領域(第2導電型の第2ベース領域)は、お互いに離れて配置されている。これにより、ボディダイオードセルでアバランシェ降伏が発生した際に、ゲートに高電界がかかることを防ぎ、ゲートの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる半導体装置によれば、JFET領域内の抵抗を増大させずセルピッチを微細化することで、オン抵抗を削減して、高効率かつ信頼性が高いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図3のA-A断面図である。
図2】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図3のB-B断面図である。
図3】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図1および図2のC-C上面図である。
図4】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図5A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図5B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図6A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図6B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
図7A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
図7B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
図8】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0023】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。この実施の形態にかかる半導体装置の構造について、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に説明する。図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図3のA-A断面図である。図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図3のB-B断面図である。図3は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図1および図2のC-C上面図である。
【0024】
図1および図2に示すように、トレンチ型MOSFET50は、炭化珪素からなる半導体基体(炭化珪素半導体基体:半導体チップ)100のおもて面(後述するp型ベース層6側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲートを備えている。
【0025】
+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2は、n+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている低濃度n型ドリフト層である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域5が形成されていてもよい。n型高濃度領域5は、n+型炭化珪素基板1よりも低くn-型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている高濃度n型ドリフト層である。以下、n+型炭化珪素基板1とn-型炭化珪素エピタキシャル層2と、p型ベース層(第2導電型の第2半導体層)6とを併せて炭化珪素半導体基体100とする。
【0026】
図1および図2に示すように、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(第2電極)11が設けられている。裏面電極11は、ドレイン電極を構成する。裏面電極11の表面には、ドレイン電極12が設けられている。
【0027】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型ベース層6、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p++型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)8、トレンチ15、ゲート絶縁膜9およびゲート電極13で構成される。
【0028】
炭化珪素半導体基体100の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ15は、p型ベース層6のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体100の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5(n型高濃度領域5を設けない場合にはn-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下単に(2)と記載する)に達する。トレンチ15の内壁に沿って、トレンチ15の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ15内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極13が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極13が、n-型炭化珪素エピタキシャル層2およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極13の一部は、トレンチ15の上方(ソース電極16側)からソース電極16側に突出していてもよい。
【0029】
-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1と反対側の表面層に、第1p+型ベース領域(第2導電型の第1ベース領域)3が選択的に設けられている。また、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の内部には、第2p+型ベース領域(第2導電型の第2ベース領域)4がそれぞれ選択的に設けられている。第1p+型ベース領域3は、トレンチ15と離して、かつトレンチ15の底部よりもドレイン側の深い位置まで達している。第1p+型ベース領域3からトレンチ15の側壁までの距離は、例えば第1p+型ベース領域3、第2p+型ベース領域4およびn型高濃度領域5の各不純物濃度に対する最適なJFET(Junction FET)幅によって決定されることが好ましい。JFET幅とは、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4との間に形成されるJFET領域の幅(第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4との間の距離)である。
【0030】
第2p+型ベース領域4は、トレンチ15の底部と深さ方向zに対向する位置に設けられる。第2p+型ベース領域4の幅は、トレンチ15の幅と同じかそれよりも広い。トレンチ15の底部は、第2p+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2+p型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5(2)内に位置していてもよい。第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4は、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされている。
【0031】
第1p+型ベース領域3の一部をトレンチ15側に延在させることで第2p+型ベース領域4に接続した構造となっていてもよい。その理由は、第2p+型ベース領域4とn-型炭化珪素エピタキシャル層2の接合部分でアバランシェ降伏が起こったときに発生するホールを効率よくソース電極16に退避させることでゲート絶縁膜9への負担を軽減し信頼性を上げるためである。図1には、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4を離して配置した構造を図示し、図2には、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4を接続した構造を図示する。
【0032】
-型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側には、p型ベース層6が設けられている。p型ベース層6は、第1p+型ベース領域3に接する。p型ベース層6の不純物濃度は、例えば第1p+型ベース領域3の不純物濃度よりも低くてもよい。これにより、第1p+型ベース領域3およびp型ベース層6からなるベース領域の、オン時にn型の反転層(チャネル)が形成される部分のp型不純物濃度を低くすることができるため、ゲートしきい値電圧(Vth)やオン抵抗が高くなることを防止することができる。また、ベース領域のドレイン側の部分(第1p+型ベース領域3)のp型不純物濃度を高くすることができるため、所定の耐圧を確保することができる。p型ベース層6の内部には、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7およびp++型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)8が選択的に設けられている。
【0033】
-型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側の表面層の第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4に挟まれた領域と、p型ベース層6と第2p+型ベース領域4に挟まれた領域にn型高濃度領域5が設けられていてもよい。このn型高濃度領域5は、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4よりも深い位置まで設けられている。このため、n型高濃度領域5の深さ(厚さ)は、第1p+型ベース領域3の深さ(厚さ)と第2p+型ベース領域4の深さ(厚さ)より大きい。また、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4は、同じ深さの位置まで設けられていてもよい。また、n型高濃度領域5は、第1p+型ベース領域3および第2p+型ベース領域4のドレイン側に、第1p+型ベース領域3および第2p+型ベース領域4を囲むように設けられていてもよい。
【0034】
図1図3に示すように、実施の形態にかかるトレンチ型MOSFET50の単位セルは、複数のMOSセル21と、MOSセル21と隣接する複数のボディダイオードセル20とにより構成される。図1図3では、単位セルは、2つのMOSセル21と、MOSセル21と隣接する2つのボディダイオードセル20とにより構成される。ボディダイオードセル20とは、p++型コンタクト領域8、p型ベース層6およびn-型炭化珪素エピタキシャル層2から構成される内蔵ダイオードを有する領域である。MOSセル21とは、トレンチ15、ゲート電極13およびn+型ソース領域7から構成されるMOSゲート構造を有する領域である。
【0035】
図1図3に示すように、実施の形態では、ボディダイオードセル20の間に2つ以上のMOSセル21が配置される。このため、実施の形態では、隣り合う第1p+型ベース領域3の間に、トレンチ15、ゲート電極13および第2p+型ベース領域4が、複数配置されている。
【0036】
単位セルのx方向のセルピッチw1は、ボディダイオードセル20のx方向のセルピッチw2と、ボディダイオードセル20間に配置されるMOSセル21のx方向のセルピッチw3の総和で決まる。ボディダイオードセル20にMOSセル21をn個配置する場合は、単位セルのx方向のセルピッチw1=2×w2+(n×w3)となる。ボディダイオードセル20のx方向のセルピッチw2は、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8のイオン注入の位置精度およびイオンの拡散による制限が大きい。ボディダイオードセル20のx方向のセルピッチw2を3.4μm、MOSセル21のx方向のセルピッチw3を1.7μm、単位セルに含まれるトレンチ15の側壁の数をNchとすると、Nch=4+2nとなる。x方向の単位長さあたりのトレンチ15の側壁の数は、(4+2n)/(6.8+1.7n)となる。このように、ボディダイオードセル20間に配置されるMOSセル21の数を増やすことで、単位長さあたりのトレンチ15の側壁の数を多くすることができ、結果としてチャネル密度が大きくなりオン抵抗を小さくすることができる。
【0037】
また、図1に示すように、隣り合う第1p+型ベース領域3の間に配置された複数の第2p+型ベース領域4は、トレンチ15が並ぶ方向(x軸方向)で、お互いに離れて配置され、かつ、第1p+型ベース領域3と離れて配置されている。これにより、ボディダイオードセル20でアバランシェ降伏が発生した際に、ゲートに高電界がかかることを防ぎ、ゲートの信頼性を向上させることができる。
【0038】
ただし、複数の第2p+型ベース領域4は、トレンチ15間にn+型ソース領域7が設けられている領域(図1参照)では、トレンチ15が並ぶ方向で、お互いに離れて配置され、かつ、第1p+型ベース領域3と離れて配置されているが、トレンチ15間にn+型ソース領域7が設けられていなく、p++型コンタクト領域8が設けられている領域(図2参照)では、トレンチ15が並ぶ方向で、お互いに接して配置され、かつ、第1p+型ベース領域3と接して配置されていてもよい。n+型ソース領域7が設けられていない領域では、チャネルに電流が流れないため、ボディダイオードセル20でアバランシェ降伏が発生した際に、ゲートに高電界がかかることがないためである。
【0039】
また、図3に示すように、トレンチ型MOSFET50のC-C断面をおもて面からみると、p++型コンタクト領域8は島状に設けられている。ボディダイオードセル20に設けられたp++型コンタクト領域8、つまり、第1p+型ベース領域3上に配置されたp++型コンタクト領域8はトレンチ15と離して配置されている。また、MOSセル21に設けられたp++型コンタクト領域8、つまり、第1p+型ベース領域3を介さず、トレンチ15間の領域上に配置されたp++型コンタクト領域8はトレンチ15と少なくとも一部が接している。
【0040】
ボディダイオードセル20でp++型コンタクト領域8が設けられていない領域S1のx方向のMOSセル21ではp++型コンタクト領域8が設けられていなく、ボディダイオードセル20でp++型コンタクト領域8が設けられている領域S2のx方向のMOSセル21ではp++型コンタクト領域8が部分的に設けられている。このため、領域S1の長さL1が長いと、MOSセル21でのp++型コンタクト領域8の面積が減り、コンタクト抵抗が増加する。また、領域S1の長さL1が短いと、MOSセル21でのp++型コンタクト領域8の面積が増え、チャネル密度が小さくなりオン抵抗を増加する。このため、領域S1の長さL1は、3μm以上5μm以下であることが好ましい。また、領域S2のp++型コンタクト領域8とトレンチ15との間の距離L2は、プロセスで決まり、0μmより大きく、1μm以下であることが好ましい。
【0041】
また、図3に示すように、トレンチ型MOSFET50のC-C断面をおもて面からみると、n+型ソース領域7は島状に設けられている。ボディダイオードセル20に設けられたn+型ソース領域7、つまり、第1p+型ベース領域3上に配置されたn+型ソース領域7はトレンチ15と接して配置されている。また、MOSセル21に設けられたn+型ソース領域7、つまり、第1p+型ベース領域3を介さず、トレンチ15間の領域上に配置されたn+型ソース領域7はトレンチ15と少なくとも一部が接している。
【0042】
後述するように、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8は、イオン注入により形成される。このため、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8との間にn+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なった領域(不図示)が形成される。実施の形態では、MOSセル21のこの領域、つまり、第1p+型ベース領域3を介さず、トレンチ15間の領域上に配置されたn+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なった領域は、トレンチ15と離して配置されている。
【0043】
また、MOSセル21では、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とを離して形成し、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8との間にp型コンタクト領域(第2導電型の第3半導体領域)14またはn型コンタクト領域(不図示:第1導電型の第3半導体領域)を設けてもよい。p型コンタクト領域14は、おもて面上にp型ベース層6が露出した領域、またはp++型コンタクト領域8より低不純物濃度でp型ベース層6より高不純物濃度の領域である。n型コンタクト領域は、n+型ソース領域7より低不純物濃度の領域である。これによって、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なった領域がトレンチ15と接することを防ぎ、ゲートの信頼性を向上させることができる。
【0044】
また、p型コンタクト領域14をp++型コンタクト領域8より低不純物濃度、およびn型コンタクト領域をn+型ソース領域7より低不純物濃度にすることで、ゲートの波形を安定させることができる。
【0045】
層間絶縁膜10は、ゲート電極13を覆うように、半導体基板のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜10には、層間絶縁膜10を深さ方向zに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。
【0046】
ソース電極(第1電極)16は、コンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜10によりゲート電極13と電気的に絶縁されている。ソース電極16上に、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。
【0047】
図1図3では、2つのボディダイオードセル20の間に2つのMOSセル21を配置した単位セルの構造のみを図示している。この場合、さらに多くの単位セルを並列に配置するには、ボディダイオードセル20の外側に、それぞれMOSセル21、ボディダイオードセル20をこの順で設ける。つまり、MOSセル21とボディダイオードセル20が交互に設けられていればよい。その際に、ボディダイオードセル20の間に3つ以上のMOSセル21を配置してもよい。また、ボディダイオードセル20は、MOSセル21より少ない本数であれば、2つ以上のボディダイオードセル20が並んで配置されていてもかまわない。例えば、2つのボディダイオードセル20、3つのMOSセル21、2つボディダイオードセル20が並ぶ配置であってもかまわない。
【0048】
(実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図4図7Bは、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0049】
まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図4に示されている。
【0050】
次に、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の下部第1p+型ベース領域3aおよび第2p+型ベース領域4を形成する。
【0051】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域5aを形成してもよい。下部n型高濃度領域5aの不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。ここまでの状態が図5Aおよび図5Bに記載される。図5Aは、図3のA-A断面に対応する部分の製造途中の状態を示し、図5Bは、図3のB-B断面に対応する部分の製造途中の状態を示す。
【0052】
次に、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bを、0.5μm程度の厚さで形成する。上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aと上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bを併せてn-型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0053】
次に、上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の上部第1p+型ベース領域3bを、下部第1p+型ベース領域3aに重なるように形成する。上部第1p+型ベース領域3bと下部第1p+型ベース領域3aは連続した領域を形成し、第1p+型ベース領域3となる。上部第1p+型ベース領域3bの不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0054】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域5bを形成してもよい。上部n型高濃度領域5bの不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。この上部n型高濃度領域5bと下部n型高濃度領域5aは少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域5を形成する。ただし、このn型高濃度領域5が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。
【0055】
次に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型ベース層6を1.1μm程度の厚さで形成する。p型ベース層6の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。p型ベース層6をエピタキシャル成長により形成した後、p型ベース層6にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、イオン注入してもよい。
【0056】
次に、炭化珪素半導体基体100の第1主面層(p型ベース層6の表面層)に、MOSゲートを構成する所定領域を形成する。具体的には、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型ベース層6の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型ベース層6の表面の一部にホウ素(B)等のp型の不純物をイオン注入し、p++型コンタクト領域8を形成してもよい。p++型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度より高くなるように設定する。
【0057】
また、MOSセル21では、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とを離して形成し、おもて面上にp型ベース層6が露出したp型コンタクト領域14、p++型コンタクト領域8より低不純物濃度でp型ベース層6より高不純物濃度のp型コンタクト領域14またはn+型ソース領域7より低不純物濃度のn型コンタクト領域(不図示)を形成してもよい。
【0058】
次に、イオン注入で形成した全領域を活性化するための熱処理(活性化アニール)を行う。例えば、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域3、第2p+型ベース領域4、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8、p型コンタクト領域14およびn型コンタクト領域の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。ここまでの状態が図6Aおよび図6Bに記載される。図6Aは、図3のA-A断面に対応する部分の製造途中の状態を示し、図6Bは、図3のB-B断面に対応する部分の製造途中の状態を示す。
【0059】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型ベース層6を貫通し、n型高濃度領域5(2)に達するトレンチ15を形成する。トレンチ15の底部はn型高濃度領域5(2)に形成された第2p+型ベース領域4に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0060】
次に、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8の表面と、トレンチ15の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0061】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ15内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ15内部に残すことによって、ゲート電極13を形成する。ここまでの状態が図7Aおよび図7Bに記載される。図7Aは、図3のA-A断面に対応する部分の製造途中の状態を示し、図7Bは、図3のB-B断面に対応する部分の製造途中の状態を示す。
【0062】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極13を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜10を形成する。次に、層間絶縁膜10を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル(不図示)を形成してもよい。層間絶縁膜10およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜10を平坦化する。
【0063】
次に、層間絶縁膜10を選択的に除去して炭化珪素半導体基体100の表面に、ニッケル(Ni)かTiの膜を成膜する。次に、表面を保護してn+型炭化珪素基板1の裏面側にNiかTiの膜を成膜する。次に1000℃程度の熱処理を行い炭化珪素半導体基体100の表面側とn+型炭化珪素基板1の裏面の表面側にオーミック電極を形成する。
【0064】
次に、上記コンタクトホール内に形成したオーミック電極部分に接触するように、層間絶縁膜10上にソース電極16となる導電性の膜を設け、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8とソース電極16とを接触させる。
【0065】
次いで、n+型炭化珪素基板1の第2主面上に、例えばニッケル(Ni)膜でできた裏面電極11を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、n+型炭化珪素基板1と裏面電極11とをオーミック接合する。
【0066】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体100のおもて面のソース電極16上および層間絶縁膜10の開口部に、ソース電極パッド(不図示)となる電極パッドを堆積する。電極パッドの層間絶縁膜10上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。電極パッドは、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、ソース電極パッドを選択的に除去する。
【0067】
次に、裏面電極11の表面に、ドレイン電極12として例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)をこの順に成膜する。以上のようにして、図1図3に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0068】
以上、説明したように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置によれば、ボディダイオードセルの間に2つ以上のMOSセルが配置される。これにより、ボディダイオードセル間に配置されるMOSセルの数を増やすことで、単位長さあたりのトレンチの側壁の数を多くすることができ、結果としてチャネル密度が大きくなりオン抵抗を小さくすることができる。
【0069】
また、隣り合う第1p+型ベース領域の間に配置された複数の第2p+型ベース領域は、お互いに離れて配置されている。これにより、ボディダイオードセルでアバランシェ降伏が発生した際に、ゲートに高電界がかかることを防ぎ、ゲートの信頼性を向上させることができる。
【0070】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用される高耐圧パワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0072】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n-型炭化珪素エピタキシャル層
2a 下部n-型炭化珪素エピタキシャル層
2b 上部n-型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 第1p+型ベース領域
3a 下部第1p+型ベース領域
3b 上部第1p+型ベース領域
4、104 第2p+型ベース領域
5、105 n型高濃度領域
5a 下部n型高濃度領域
5b 上部n型高濃度領域
6、106 p型ベース層
7、107 n+型ソース領域
8、108 p++型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 層間絶縁膜
11、111 裏面電極
12 ドレイン電極
13、113 ゲート電極
14 p型コンタクト領域
15、115 トレンチ
16、116 ソース電極
20 ボディダイオードセル
21 MOSセル
50、150 トレンチ型MOSFET
100 炭化珪素半導体基体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8