(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ペースト塩化ビニル系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20241112BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20241112BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/42
E04F13/07 Z
(21)【出願番号】P 2020142225
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020033153
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和徳
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】備後 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋二
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/046654(WO,A1)
【文献】特開2004-224838(JP,A)
【文献】特開2020-007388(JP,A)
【文献】特開平09-309998(JP,A)
【文献】特開2006-096947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 3/00-13/08
C08F 14/00-14/28
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂の一次粒子を含むペースト塩化ビニル系樹脂粒子であって、下記(1)~(3)の特性を満足し、平均粒子径13.2~53.8μmを有するものであることを特徴とするペースト塩化ビニル系樹脂粒子。
(1)一次粒子が、粒子径0.1~5μmの範囲内にて連続的に分布し、0.5μm未満の粒子成分が
25~60vol%、0.5μm以上5.0μm未満の粒子成分が
75~40vol%である粒子径分布を有するものである。
(2)塩化ビニル系樹脂の重合度が1370以上1780以下である。
(3)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸塩0.05重量部以上2.5重量部以下を含むものである。
【請求項2】
アルキルベンゼンスルホン酸塩が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩及びドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のペースト塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項3】
発泡壁紙用であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のペースト塩化ビニル系樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面強度、伸び、発泡性、表面平滑性に優れ、特に発泡壁紙用として優れた特性を有するペースト塩化ビニル系樹脂粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。
【0003】
そして、壁紙用途分野においては、壁紙施工職人の人手不足や高齢化が課題となり、施工の容易な壁装材が求められている。このため、例えば、壁紙用裏打紙と樹脂層を備える壁装材においては、一般的に、製品重量が軽く取り扱いが容易な製品が好まれる。また、施工する下地の凹凸を隠蔽するために、発泡剤を用いてその厚さを厚くしたものが非常に多い。
【0004】
しかしながら、発泡剤を用いて壁紙を厚くすると、壁紙の表面強度が低下し、施工時や施工後の生活における破損のリスクが高まることがある。
【0005】
この課題を解決するために、例えば、高い表面強度と必要十分な厚みを備えつつ軽量化した発泡壁紙及びその製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案の発泡壁紙においては、発泡壁紙用としての塩化ビニル系樹脂、ペースト塩ビについては何ら検討のなされていないものであった。
【0008】
そこで、本発明は、高い表面強度、表面平滑性と発泡性を備え、特に発泡壁紙用として適したペースト塩ビを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の一次粒子を含んでなるとともに特定量のアルキルベンゼンスルホン酸塩を含むペースト塩ビ粒子が極めて表面強度が高く、発泡性の良好なものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、塩化ビニル系樹脂の一次粒子を含むペースト塩ビ粒子であって、下記(1)~(3)の特性を満足することを特徴とするペースト塩ビ粒子に関するものである。
(1)一次粒子が、粒子径0.05~10μmの範囲内にて連続的に分布し、0.5μm未満の粒子成分が20~70vol%、0.5μm以上5.0μm未満の粒子成分が80~30vol%である粒子径分布を有するものである。
(2)塩化ビニル系樹脂の重合度が1200以上2200以下である。
(3)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸塩0.05重量部以上2.5重量部以下を含むものである。
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0012】
本発明のペースト塩ビ粒子は、塩化ビニル系樹脂の一次粒子を含むものであって、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸塩0.05重量部以上2.5重量部以下を含むものである。
【0013】
本発明のペースト塩ビ粒子を構成する塩化ビニル系樹脂の一次粒子としては、(1)粒子径0.05~10μmの範囲内にて連続的に分布し、0.5μm未満の粒子成分(以下、A成分と記すこともある。)が20~70vol%、0.5μm以上5.0μm未満の粒子成分(以下、B成分と記すこともある。)が80~30vol%である粒子径分布を有する一次粒子であり、特に表面強度と表面平滑性に優れるものとなることから粒子径0.1~5μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が25~60vol%、B成分が75~40vol%のものであることが好ましい。ここで、粒子径0.05~10μmの範囲内にて独立的な分布を有するもの又は0.05~10μmの範囲を越えて分布を有するものである場合、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の上昇が激しいためハンドリングの点で劣るものとなる。また、A成分が20vol%未満又はB成分が80vol%を越えるものである場合、得られる製品の表面平滑性に劣るものとなる。一方、A成分が70vol%を越える、又はB成分が30vol%未満のものである場合、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の上昇が激しいためハンドリングの点で劣るものとなる。なお、本発明における粒子径分布の測定方法としては、粒子径分布の測定が可能であればいかなる方法を用いることも可能であり、例えばペースト塩ビ粒子を水に分散し、超音波分散を行い、一次粒子とした後、該一次粒子をレーザー回析/散乱式粒径測定装置を用い測定する方法を挙げることができる。
【0014】
本発明のペースト塩ビ粒子を構成する塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体はもとより、共重合体であってもよくその際の共重合可能な単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0015】
そして、該塩化ビニル系樹脂は、(2)重合度が1200以上2200以下ものであり、特に表面強度と表面平滑性に優れるものとなることから重合度1200以上1800以下ものであることが好ましく、更に重合度1200以上1600以下のものであることが好ましい。ここで、重合度が1200未満である場合、得られる製品の表面強度に劣るものとなる。一方、重合度が2200を越えるものである場合、得られる製品の表面平滑性に劣るものとなる。そして、塩化ビニル系樹脂の重合度の測定方法としては、例えばJIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により重合度として算出する方法を挙げることができる。
【0016】
また、本発明のペースト塩ビ粒子を構成するアルキルベンゼンスルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアンモニウム塩等を挙げることができ、中でも表面平滑性に優れるペースト塩ビ粒子を提供することが可能となることからドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩であることが好ましい。また、該アルキルベンゼンスルホン酸塩の配合量は、(3)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上2.5重量部以下を含むものであり、特に表面平滑性、表面強度に優れるものとなることから0.5重量部以上2.0重量部以下であることが好ましく、更に0.8重量部以上1.5重量部以下を含むものであることが好ましい。そして、該アルキルベンゼンスルホン酸塩は、塩化ビニル系樹脂を得る際の乳化剤であってもよく、塩化ビニル系樹脂調製時の乳化剤をそのまま、または別途添加・減量することにより添加量を調整したものであってもよい。ここで、アルキルベンゼンスルホン酸塩が0.05重量部未満である場合、得られる製品の表面平滑性に劣るものとなる。一方、2.5重量部を越える場合、得られる製品の表面強度に劣るものとなる。
【0017】
そして、本発明のペースト塩ビ粒子は、該一次粒子を含むものであり、該一次粒子そのもの又はその集合体であってもよく、中でも発泡性に優れるものとなることから平均粒子径1~70μmを有するものであることが好ましく、特に1~60μmを有するものであることが好ましい。また、特にその取扱い性と成形加工性のバランスに優れるものとなることから平均粒子性1~50μmを有するものであるが好ましく、特に4~20μmを有するものであることが好ましい。なお、この際の平均粒子径の測定方法としては、平均粒子径の測定が可能であればいかなる方法を用いることも可能であり、例えばレーザー回析/散乱式粒径測定装置を用い測定する方法を挙げることができる。
【0018】
本発明のペースト塩ビ粒子の製造方法としては、ペースト塩ビの一般的な重合法として知られている乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等を挙げることができ、これら重合法により塩化ビニル系樹脂ラテックスを得て、得られたラテックスの水分を除去することにより得ることができる。その際に、塩化ビニル系樹脂ラテックスから水分を除去する方法としては、例えば噴霧乾燥、流動層乾燥、通気乾燥、回転乾燥、伝導加熱乾燥による方法等が挙げられ、中でも、効率よく水分を除去できることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。
【0019】
以下に、該塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂ラテックスを製造する際の一例として、シードミクロ懸濁重合法による方法を示す。
【0020】
シードミクロ懸濁重合法とは、i)ミクロ懸濁重合法により油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックスを得る第一段階、ii)得られたシードラテックスを塩化ビニルモノマー、又は塩化ビニルモノマーとこれと共重合可能な単量体を、脱イオン水、乳化剤、緩衝剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化助剤の存在下で緩やかな攪拌で重合を行い、シードラテックスを肥大化させて塩化ビニル系樹脂ラテックスを得る第二段階からなる重合方法である。
【0021】
ここで、塩化ビニルモノマーと共重合可能な単量体としては、上記した単量体を例示することができる。また、乳化剤としては、前述のアルキルベンゼンスルホン酸塩以外に、例えばラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ミリスチル硫酸エステル塩等のアルキル硫酸エステル塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩等のスルホコハク酸塩類;ラウリン酸アンモニウム塩、ステアリン酸カリウム塩等の脂肪酸塩類;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等のアニオン系乳化剤,ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のソルビタンエステル類;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類等のノニオン系乳化剤等の従来より知られているものを1種類又は2種類以上用いることができる。緩衝剤としては、例えばリン酸一水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸-苛性カリウム溶液等が挙げられる。
【0022】
さらに、必要に応じて用いられる乳化助剤としては、例えばセチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、そのエステル;芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0023】
また、シードミクロ懸濁重合法に用いられる塩化ビニル系樹脂シードラテックスは、以下のようなミクロ懸濁重合法で調製することが可能である。まず、塩化ビニルモノマー、油溶性重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を添加してプレミックスし、ホモジナイザーにより均質化処理して油滴の調整を行なう。この際のホモジナイザーとしては、例えば、コロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプ等を用いることができる。そして、均質化処理した液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行なうことにより油溶性重合開始剤を含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックスを調整することが可能である。
【0024】
その際の油溶性重合開始剤としては、10時間半減期温度30~70℃のジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような油溶性重合開始剤としては、例えばイソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等が挙げられる。
【0025】
本発明のペースト塩ビ粒子は、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲において、その他、重合開始剤、乳化剤、乳化助剤、緩衝剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の分散助剤、重合度調整剤等の塩化ビニル系樹脂調製時において、一般的に添加される物質等を含むものであってもよい。
【0026】
本発明のペースト塩ビ粒子の製造方法としては、如何なる製造方法によるものであってもよい。また、ラテックスの乾燥方法としては、上記した塩化ビニル系樹脂ラテックスから水分を除去する方法と同様の方法を挙げることができ、中でも、効率よく水分を除去できるために、噴霧乾燥による方法が好ましい。そして、噴霧乾燥により本発明のペースト塩ビ粒子は、取り扱い性に優れる一次粒子の集合体である粒状物として製造することができる。
【0027】
本発明のペースト塩ビ粒子は、可塑剤、充填剤、顔料、発泡剤、希釈剤、安定剤等を配合することにより、成形加工性に優れるペースト塩ビゾルとすることが可能となり、フィルム、シート、壁紙、床材、発泡シート等の各種用途に適用可能であり、特に表面平滑性、表面強度、発泡性等の要求される発泡壁紙用として特に適したものとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のペースト塩ビ粒子は、表面強度、表面平滑性、発泡性に優れる発泡体を提供することが可能であり、その工業的価値は非常に高いものである。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例より得られたペースト塩ビ粒子の評価方法を示す。
【0030】
<平均粒子径の測定>
レーザー透過率が75~85%となるように得られたペースト塩ビ粒子に水を添加し濃度調整を行った測定用試料を、レーザー回析/散乱式粒径測定装置((商品名)LA920、堀場製作所(株)製)を用い測定を行った。
【0031】
<一次粒子の粒子径分布の測定>
得られたペースト塩ビ粒子を水に分散し、超音波分散を行い、1次粒子とした後、レーザー透過率が75~85%となるように水を添加し濃度調整を行った測定用試料を、レーザー回析/散乱式粒径測定装置(LA920、堀場製作所(株)製)を用いた。また、A成分は上記装置により測定された粒子径分布の0.5μm以下の積算体積%、B成分は粒子径分布の0.5μm以上の積算体積%により算出した。
【0032】
<塩化ビニル系樹脂の重合度>
JIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により重合度を算出した。
【0033】
<発泡倍率>
得られたペースト塩ビ粒子を発泡体として以下の(1)式により算出した。
発泡倍率=(発泡体の厚み-原反の厚み)/原反の厚み (1)
<表面平滑性>
得られたペースト塩ビ粒子を発泡体とし、その表面平滑性を目視で観察評価した。
表面平滑性の評価基準を以下に示す。
○:表面が平滑。
×:表面が粗い。
【0034】
<表面強度>
壁紙工業会制定の規格「表面強化壁紙性能規定」に準拠した試験により、引っ掻き時の表面の破損状態を目視判定した。評価基準を以下に示す。
○:表面層の破れが見えるが紙等の裏打材が見えない。
×:表面が破けて紙等の裏打材が明らかに見える。
【0035】
合成例1
1m3ステンレス製オートクレーブに脱イオン水360kg、塩化ビニルモノマー300kg、過酸化ラウロイル5.7kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液30kgを仕込み、ホモジナイザーを用いて3時間循環し均質化処理を行なった後、反応系の温度を45℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率35重量%、平均粒子径0.55μm、塩化ビニル系樹脂に対して2重量%の過酸化ラウロイルを含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)を得た。
【0036】
合成例2
1m3ステンレス製オートクレーブに脱イオン水400kg、塩化ビニルモノマー350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液5kgを仕込み、反応系の温度を60℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率40重量%、平均粒子径0.15μmである塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)を得た。
【0037】
実施例1
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水610g、塩化ビニルモノマー730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液15g、2重量%過硫酸カリウム2g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し7重量部仕込み、この反応混合物の温度を51℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液を連続的に添加した。重合圧が51℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.33MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。
【0038】
得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥し、ペースト塩ビ粒子を得た。得られたペースト塩ビ粒子は、一次粒子が、粒子径0.15~4.0μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が33vol%、B成分が67vol%であり、平均粒子径13.2μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。また、塩化ビニル樹脂の重合度は1370であった。
【0039】
得られたペースト塩ビ粒子100重量部に対し、可塑剤としてジイソノニルフタレート((株)ジェイ・プラス、グレード工業用)40重量部、充填剤として炭酸カルシウム(三共精粉(株)、グレード一級)20重量部、顔料として酸化チタン(テイカ(株)、(商品名)JR600A)15重量部、発泡剤(大塚化学(株)、(商品名)AZウルトラ1050)3重量部、希釈剤(JX日鉱日石(株)、(商品名)N10)10重量部、安定剤(大協化成工業(株)、(商品名)LFX88)3重量部を用い、ディゾルバーを用いて混練し、ペースト塩ビゾルを得た。
【0040】
得られたペースト塩ビゾルを、予め180℃で5秒加熱した難燃紙上に0.14mmの厚みでコーティングし、180℃で12秒加熱することにより、原反を得た。
【0041】
得られた原反の厚みを測定した後、230℃で35秒加熱することにより発泡体を得た。その後、得られた発泡体の厚みを測定し、発泡倍率、表面平滑性、セル構造を評価した。試験結果を表1に示す。発泡倍率は6.1倍であり、表面平滑性、表面強度に優れるものであった。
【0042】
実施例2
重合温度を46℃としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビ粒子を得た。また、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
得られたペースト塩ビ粒子は、一次粒子が、粒子径0.15~3.5μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が28vol%、B成分が72vol%、平均粒子径13.6μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。塩化ビニル樹脂の重合度は1700であった。
【0044】
実施例3
2重量%過硫酸カリウムを4gとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビ粒子を得た。また、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
得られたペースト塩ビ粒子は、一次粒子が、粒子径0.13~3.0μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が52vol%、B成分が48vol%、平均粒子径14.0μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。塩化ビニル樹脂の重合度は1780であった。
【0046】
実施例4
回転円盤式のスプレードライヤーの熱風温度を110℃、出口温度を50℃とし、噴霧乾燥を行った以外は、実施例1と同様の方法により、ペースト塩ビ粒子を得、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
得られたペースト塩ビ粒子は、一次粒子が、粒子径0.15~4.0μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が33vol%、B成分が67vol%、平均粒子径53.8μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。塩化ビニル樹脂の重合度は1370であった。
【0048】
実施例5
実施例1により得られたペースト塩ビ粒子と実施例4により得られたペースト塩ビ粒子を重量比1:1で混合し、ペースト塩ビ粒子を得、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
得られたペースト塩ビ粒子は、一次粒子が、粒子径0.15~4.0μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が33vol%、B成分が67vol%、平均粒子径24.3μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。塩化ビニル樹脂の重合度は1370であった。
【0052】
【0053】
比較例1
重合温度を56℃としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0054】
得られたペースト塩ビは、一次粒子が、粒子径0.15~4.0μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が29vol%、B成分が71vol%、平均粒子径12.9μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。また、塩化ビニル樹脂の重合度は1180であった。
【0055】
実施例1と同様の方法によりペースト塩ビゾルを調製し、発泡体としての評価を行った。発泡倍率、表面平滑性、セル構造を評価した。試験結果を表2に示した。発泡倍率は6.3倍であったが、表面強度が劣る結果となった。
【0056】
比較例2
重合温度を45℃とし、2重量%過硫酸カリウムを未添加にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0057】
得られたペースト塩ビは、一次粒子が、粒子径0.25~5.2μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が6vol%、B成分が94vol%、平均粒子径2.8μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。また、塩化ビニル樹脂の重合度は1610であった。
【0058】
実施例1と同様の方法によりペースト塩ビゾルを調製し、発泡体としての評価を行った。発泡倍率、表面平滑性、セル構造を評価した。試験結果を表2に示した。発泡倍率は4.3倍であり、表面平滑性も劣る結果となった。
【0059】
比較例3
重合温度を64℃とし、2重量%過硫酸カリウムを未添加にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0060】
得られたペースト塩ビは、一次粒子が、粒子径0.2~5.2μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が13vol%、B成分が87vol%、平均粒子径3.6μmを有し、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.9重量部を含むものであった。また、塩化ビニル樹脂の重合度は830であった。
【0061】
実施例1と同様の方法によりペースト塩ビゾルを調製し、発泡体としての評価を行った。発泡倍率、表面平滑性、セル構造を評価した。試験結果を表2に示した。発泡倍率は5.9倍であり、表面強度が劣る結果となった。
【0062】
比較例4
重合温度を48℃とし、2重量%過硫酸カリウムを未添加にし、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液を5重量%ラウリル硫酸ナトリウムにした以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0063】
得られたペースト塩ビは、一次粒子が、粒子径0.2~5.2μmの範囲内にて連続的に分布し、A成分が6vol%、B成分が94vol%、平均粒子径2.6μmを有するものであった。また、塩化ビニル樹脂の重合度は1650であった。
【0064】
実施例1と同様の方法によりペースト塩ビゾルを調製し、発泡体としての評価を行った。発泡倍率、表面平滑性、セル構造を評価した。試験結果を表2に示した。発泡倍率は6.2倍であり、表面平滑性が劣る結果となった。
【0065】