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特許7585666液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241112BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 303
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020145604
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040751
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093678(JP,A)
【文献】特開2020-005155(JP,A)
【文献】特開2013-039838(JP,A)
【文献】特開2012-061781(JP,A)
【文献】特開平06-143795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、
前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行し、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、
前記第1画像データを構成する複数の単位データであって、前記第1領域を構成する複数の単位領域に対応する複数の単位データ毎の、前記所定時間に関連する関連情報を取得し、
前記複数の単位データの前記関連情報のいずれか、又は、前記複数の単位データの前記関連情報の平均値に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、
前記複数の単位データの前記関連情報のうち、前記所定時間が最長となる関連情報に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
複数のノズルを有するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、
前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行し、
前記第1記録処理と前記第2記録処理との組が複数ある場合において、
前記制御部は、
前記所定時間決定処理において、前記複数の組それぞれの前記所定時間が互いに同じになるように、前記所定時間を決定し、
前記所定時間決定処理の後、前記第1記録処理において前記複数のノズルから吐出される液体の量が少なくなるように前記第1画像データを補正する、吐出量補正処理をさらに実行することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項4】
前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、
前記走査方向と直交する搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、をさらに備え、
前記第1画像データは、
前記搬送機構により搬送された記録媒体が第1位置にあるときに、前記走査機構により前記ヘッドが前記走査方向に移動しながら前記第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させるための第1分割画像データと、
前記搬送機構により搬送された記録媒体が前記第1位置と異なる第2位置にあるときに、前記走査機構により前記ヘッドが前記走査方向に移動しながら別の前記第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させるための第2分割画像データと、を含み、
前記第2画像データは、
前記走査機構により前記ヘッドが前記走査方向に移動しながら前記第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させるための第3分割画像データと、
前記走査機構により前記ヘッドが前記走査方向に移動しながら前記別の第1領域と重複又は隣接する別の前記第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させるための第4分割画像データと、を含み、
前記所定時間は、
前記第1分割画像データに基づく前記第1記録処理と前記第3分割画像データに基づく前記第2記録処理との間の第1所定時間と、
前記第2分割画像データに基づく前記第1記録処理と前記第4分割画像データに基づく前記第2記録処理との間の第2所定時間と、を含み、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記第1所定時間と前記第2所定時間とが互いに同じになるように、前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
複数のノズルを有するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、
前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行し、
タイマと、
記憶部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1記録処理の開始時に前記タイマから取得される時点を第1記録処理開始時点として前記記憶部に記憶させる、記憶処理と、
前記タイマから取得される時点が前記第1記録処理開始時点に前記所定時間を加算した時点に至ったか否かを判断する、判断処理と、を実行し、
前記判断処理において前記タイマから取得される時点が前記第1記録処理開始時点に前記所定時間を加算した時点に至ったと判断された場合に、前記第2記録処理を開始することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項6】
複数のノズルを有するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、
前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行し、
タイマと、
記憶部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1記録処理の終了時に前記タイマから取得される時点を第1記録処理終了時点として前記記憶部に記憶させる、記憶処理と、
前記タイマから取得される時点が前記第1記録処理終了時点に前記所定時間を加算した時点に至ったか否かを判断する、判断処理と、を実行し、
前記判断処理において前記タイマから取得される時点が前記第1記録処理終了時点に前記所定時間を加算した時点に至ったと判断された場合に、前記第2記録処理を開始することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項7】
前記色情報は、画像の色に対応したRGB値であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記色情報は、前記複数のノズルから吐出される液体の色に対応したデータであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1領域に記録される画像の色に対応したRGB値を、前記複数のノズルから吐出される液体の色に対応したデータに変換する、変換処理をさらに実行し、
前記所定時間決定処理において、前記変換処理において変換された前記液体の色に対応したデータに基づいて前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第1領域に記録される画像の色に対応したRGB値が変換されたデータであって、前記複数のノズルから吐出される液体の色に対応したデータを、外部装置から受信する、受信処理をさらに実行し、
前記所定時間決定処理において、前記受信処理において受信された前記液体の色に対応したデータに基づいて前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構をさらに備え、
前記第1領域及び前記第2領域は、それぞれ前記搬送方向と直交する直交方向に延び、かつ、互いに重複することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
複数のノズルを有するヘッドを備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、
前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行し、
前記所定時間決定処理において、
前記第1画像データを構成する複数の単位データであって、前記第1領域を構成する複数の単位領域に対応する複数の単位データ毎の、前記所定時間に関連する関連情報を取得し、
前記複数の単位データの前記関連情報のいずれか、又は、前記複数の単位データの前記関連情報の平均値に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする、制御方法。
【請求項13】
複数のノズルを有するヘッドを備えた液体吐出装置を、
第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録手段、及び、
前記第1記録手段による液体吐出から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録手段、として機能させ、
さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定手段として機能させ
前記所定時間決定手段は、
前記第1画像データを構成する複数の単位データであって、前記第1領域を構成する複数の単位領域に対応する複数の単位データ毎の、前記所定時間に関連する関連情報を取得し、
前記複数の単位データの前記関連情報のいずれか、又は、前記複数の単位データの前記関連情報の平均値に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを有するヘッドと制御部とを備え、記録媒体の第1領域に対する第1記録処理から所定時間が経過した後、記録媒体の第2領域に対する第2記録処理を実行する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の印刷装置(液体吐出装置)は、第1印刷モードにおいて、印刷領域に位置する連続媒体に複数の第1画像を印刷し(第1記録処理)、待機時間(所定時間)後に、第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作(第2記録処理)と、媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返す。また、特許文献1には、上記待機時間(所定時間)を、第1画像の単位領域あたりの最大液体吐出量や、連続媒体の種類等に基づいて決定することで、画像の滲みを抑制し、処理時間を短縮することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-039838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、吐出量や媒体の種類等に基づいて所定時間を決定するが、本願発明者等は、種々の実験と鋭意研究とを重ねた結果、吐出量等の他、液体の含有成分である着色剤の種類が、第1画像の乾燥時間(ひいては、画像の滲み)に関連することを見出した。
【0005】
本発明の目的は、記録処理を連続して実行する場合において、より確実に画像の滲みを抑制しかつ処理時間を短縮することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によれば、複数のノズルを有するヘッドと、制御部と、を備え、前記制御部は、第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行することを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によれば、複数のノズルを有するヘッドを備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録処理と、前記第1記録処理から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録処理と、を実行し、さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行することを特徴とする、制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によれば、複数のノズルを有するヘッドを備えた液体吐出装置を、第1画像データに基づいて、記録媒体の第1領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第1記録手段、及び、前記第1記録手段による液体吐出から所定時間が経過した後、第2画像データに基づいて、記録媒体の前記第1領域と重複又は隣接する第2領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、第2記録手段、として機能させ、さらに、前記第1画像データの色情報に基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定手段として機能させることを特徴とする、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像データの色情報に基づいて所定時間を決定することで、記録処理を連続して実行する場合において、より確実に画像の滲みを抑制し、かつ処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図5図4に示す所定時間Tn決定処理のサブルーチンを示すフロー図である。
図6】走査動作に対応する各領域を示す模式図である。
図7図5のS23で用いられる評価テーブルの一例を示す図である。
図8図5のS25を説明するための模式図である。
図9図5のS28を説明するためのテーブルである。
図10】本発明の第2実施形態に係る所定時間Tn決定処理のサブルーチンを示すフロー図である。
図11】本発明の第3実施形態においてCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る所定時間Tn決定処理のサブルーチンを示すフロー図である。
図13】本発明の第4実施形態においてCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図14】本発明の第5実施形態においてCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
先ず、図1図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0012】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙P(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御装置90とを備えている。
【0013】
ノズルNは、走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0014】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が走査方向に移動する。
【0015】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが支持される。
【0016】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0017】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0018】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0019】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0020】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0021】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当し、RAM93が本発明の「記憶部」に該当する。
【0022】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)200と通信可能に接続されており、当該外部装置200やプリンタ100の入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0023】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、外部装置200等から受信した記録指令に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0024】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0025】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期毎に転送回路94bに出力する。記録周期は、用紙P上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0026】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1記録周期におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。
【0027】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期毎に生成される。
【0028】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0029】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙Pに向けて吐出させる。
【0030】
ASIC94は、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mに加え、タイマ61と電気的に接続されている。タイマ61は、時点を示すデータをASIC9に出力する。
【0031】
次いで、図4図9を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。当該プログラムは、制御装置90が外部装置200等から記録指令を受信した後、実行される。
【0032】
本実施形態において、CPU91は、記録指令に基づき、用紙Pの各領域R1~Rx(図6参照)に対し、1回目の走査動作(第1記録処理)を実行した後、2回目の走査動作(第2記録処理)を実行する。各領域R1~Rxは、本発明の「第1領域」及び「第2領域」に該当する。即ち、本実施形態において、「第1領域」及び「第2領域」は、互いに同じ(互いに全体的に重複する)領域である。領域R1~Rxは、それぞれ走査方向に延びる矩形状の領域であり、搬送方向に並んでいる。
【0033】
CPU91は、先ず、図4に示すように、記録指令に含まれる画像データのうち、1層目の画像データをRAM93に読み込む(S1)。「1層目の画像データ」は、各領域R1~Rx(図6参照)に対する1回目の走査動作(第1記録処理)で用いられる画像データであり、本発明の「第1画像データ」に該当する。
【0034】
本実施形態において、画像データは、画像の色情報として、画像の色に対応したRGB(レッド、グリーン、ブルー)値を含む。
【0035】
S1の後、CPU91は、画像データの色情報(RGB値)に基づいて、領域Rn(n=1~x)毎の所定時間Tnを決定する(S2)。S2は、本発明の「所定時間決定処理」に該当する。
【0036】
S2(所定時間Tn決定処理)において、CPU91は、先ず、図5に示すように、n=1とする(S21)。
【0037】
S21の後、CPU91は、1層目の画像データのうち、領域Rnに対する画像データを、複数の単位データに分割する(S22)。単位データは、各単位領域S(図6参照)に対する画像データであり、複数の画素で構成される。単位領域Sは、各領域R1~Rxを複数に区画(本実施形態では搬送方向及び走査方向にマトリクス状に区画)した領域である。
【0038】
S22の後、CPU91は、ROM92に記憶された評価テーブル(図7参照)を用いて、1層目の画像データに含まれる各画素のRGB値に対応する重み値を取得する(S23)。つまり、S23において、CPU91は、1層目の画像データを構成する複数の単位データであって、領域Rnを構成する複数の単位領域Sに対応する複数の単位データ毎の、重み値を取得する。
【0039】
評価テーブルは、図7に示すように、RGB値(0~255の階調値)と重み値とが対応付けられたものである。重み値は、画像の滲み易さ(インクの乾燥し難さ)を示す値であり、本実施形態では、数値が大きいほど、画像の滲みが生じ易く(インクが乾燥し難く)、所要時間(画像の滲みを抑制するために必要な時間)が長いことを示す。重み値は、本発明の「所定時間に関連する関連情報」に該当する。
【0040】
評価テーブルは、例えば、プリンタ100の製造時に、実験結果に基づき作製され、ROM92に記憶される。
【0041】
S23の後、CPU91は、単位データ毎の重み値の平均値を算出する(S24)。具体的には、S24において、CPU91は、各単位データを構成する複数の画素の重み値を積算し、積算値を各単位データの面積で除することで、単位データ毎の重み値の平均値を算出する。
【0042】
S24の後、CPU91は、S24で算出された単位データ毎の重み値の平均値のうち、最大値に基づいて、所定時間Tnを決定する(S25)。例えば、図8に示すように、複数の単位領域Sのそれぞれに対応する複数の単位データについて、S24において重み値の平均値(各単位領域S内に記載された値)がそれぞれ算出され、算出された平均値のうちの最大値「30」に基づいて所定時間Tnが決定される。本実施形態では、最大値の数値が大きいほど、所定時間Tnが長くなる。最大値は、本発明に係る「複数の単位データの関連情報のいずれか」であり、「所定時間が最長となる関連情報」である。
【0043】
S25の後、CPU91は、n=xか否かを判断する(S26)。
【0044】
n=xでない場合(S26:NO)、CPU91は、n=n+1とし(S27)、処理をS22に戻す。
【0045】
n=xである場合(S26:YES)、CPU91は、領域Rn(n=1~x)毎に決定された所定時間Tnを平均化する(S28)。
【0046】
本実施形態では、各領域R1~Rxに対する1回目の走査動作(第1記録処理)と2回目の走査動作(第1記録処理)とを1組として、複数の領域R1~Rxに対応する複数の組が存在する。S28において、CPU91は、各領域R1~Rxに対する1回目の走査動作(第1記録処理)と2回目の走査動作(第1記録処理)との組の所定時間Tnが互いに同じになるように、所定時間Tnを決定する。
【0047】
ここで、S28について、図9を参照して具体的に説明する。
【0048】
図9の例では、1回の走査動作に要する時間が10秒であり、領域R1に対する1回目の走査動作の開始後、10秒後に領域R2に対する1回目の走査動作が開始され、さらにその10秒後に領域R3に対する1回目の走査動作が開始される、という処理が領域Rxまで行われ、その後、領域R1~Rxに対する2回目の走査動作が実行される。S25で決定された所定時間Tnは、領域R1については20秒、領域R2については100秒、領域R3については10秒、領域R4については0秒、領域R5については10秒である。各領域Rnに対する2回目の走査動作の開始可能時点t2は、対応する領域Rnの1回目の走査動作の開始時点t1に所定時間Tnを加算した時点である。各領域Rnに対する2回目の走査動作の通常開始時点t2’は、1回の走査動作を10秒として走査動作間に待ち時間を設けずに連続して走査動作を実行した場合の、当該走査動作の開始時点である。
【0049】
図9の例において、領域R1,R3~R5では、2回目の走査動作の開始可能時点t2が通常開始時点t2’以前であるため、2回目の走査動作を待機させる必要がない。これに対し、領域R2では、2回目の走査動作の開始可能時点t2が通常開始時点t2’よりも後であるため、2回目の走査動作を待機させる必要がある。この場合、領域R1~Rxのうちの一部の領域R2のみにおいて、2回目の走査動作を待機させることになり、1層目の画像の乾燥時間が領域R1~Rx間で異なることで、画像の色ムラが生じ得る。
【0050】
そこで本実施形態では、S28において、各領域Rn(n=1~x)についてS25で決定された所定時間Tnを平均化し、各領域Rn(n=1~x)の所定時間Tnが互に同じになるように調整する。これにより、一部の領域R2のみにおいて2回目の走査動作を待機させるという事態を防止し、画像の色ムラを抑制できる。
【0051】
「1層目の画像データ(第1画像データ)」は、例えば、領域R1(第1領域)がヘッド10の可動範囲(走査機構30の駆動によりヘッド10が移動可能な領域)と鉛直方向に重なる位置(第1位置)にあるときに、領域R1に対して1回目の走査動作を実行するための「第1分割画像データ」と、領域R2(別の第1領域)がヘッド10の可動範囲と鉛直方向に重なる位置(第2位置)にあるときに、領域R2に対して1回目の走査動作を実行するための「第2分割画像データ」とを含む。
【0052】
「2層目の画像データ(第2画像データ)」は、例えば、領域R1(第2領域)がヘッド10の可動範囲と鉛直方向に重なる位置(第1位置)にあるときに、領域R1に対して2回目の走査動作を実行するための「第3分割画像データ」と、領域R2(別の第2領域)がヘッド10の可動範囲と鉛直方向に重なる位置(第2位置)にあるときに、領域R2に対して2回目の走査動作を実行するための「第4分割画像データ」とを含む。
【0053】
所定時間Tnは、領域R1に対する1回目の走査動作(第1分割画像データに基づく第1記録処理)と領域R1に対する2回目の走査動作(第3分割画像データに基づく第2記録処理)との間の第1所定時間(図9の「20秒」)と、領域R2に対する1回目の走査動作(第2分割画像データに基づく第1記録処理)と領域R2に対する2回目の走査動作(第4分割画像データに基づく第2記録処理)との間の第2所定時間(図9の「100秒」)とを含む。S28において、CPU91は、第1所定時間と第2所定時間とが互いに同じになるように、所定時間Tnを平均化する。
【0054】
S28の後、CPU91は、当該サブルーチンを終了する。
【0055】
S2(所定時間Tn決定処理)の後、CPU91は、図4に示すように、領域Rn(n=1~x)毎に、S2で決定された所定時間Tnが所要時間未満か否かを判断する(S3)。所要時間とは、S25で決定された重み値に基づく所定時間であり、S28で平均化される前の所定時間をいう。
【0056】
領域Rn(n=1~x)のうち所定時間Tnが所要時間未満のものがある場合(S3:YES)、CPU91は、当該領域Rnに対する1回目の走査動作(第1記録処理)において複数のノズルNから吐出されるインクの量が少なくなるように1層目の画像データ(第1画像データ)を補正する(S4)。S4は、本発明の「吐出量補正処理」に該当する。
【0057】
S4の後、又は、全ての領域Rn(n=1~x)において所定時間Tnが所要時間未満でない場合(S3:NO)、CPU91は、n=1とする(S5)。
【0058】
S5の後、CPU91は、1層目の画像データのうち、領域Rnに対応する画像データに基づいて、領域Rnに対して走査動作を実行する(S6)。S6は、本発明の「第1記録処理」に該当する。
【0059】
S6の後、CPU91は、S6の開始時にタイマ61(図3参照)から取得される時点を「1回目の走査動作の開始時点t1」としてRAM93に記憶させる(S7)。S7は、本発明の「記憶処理」に該当する。開始時点t1は、本発明の「第1記録処理開始時点」に該当する。
【0060】
S7の後、CPU91は、n=xか否かを判断する(S8)。
【0061】
n=xでない場合(S8:NO)、CPU91は、n=n+1とし(S9)、処理をS6に戻す。
【0062】
n=xである場合(S8:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データのうち、2層目の画像データをRAM93に読み込む(S10)。「2層目の画像データ」は、各領域R1~Rx(図6参照)に対する2回目の走査動作(第2記録処理)で用いられる画像データであり、本発明の「第2画像データ」に該当する。
【0063】
S10の後、CPU91は、n=1とする(S11)。
【0064】
S11の後、CPU91は、当該領域Rnに対する1回目の走査動作の開始後、S2で決定された所定時間Tnが経過したか否かを判断する(S12)。具体的には、CPU91は、S12において、タイマ61(図3参照)から取得される時点が、S7で記憶された開始時点t1にS2で決定された所定時間Tnを加算した時点に至ったか否かを判断する。
【0065】
当該領域Rnに対する1回目の走査動作の開始後、S2で決定された所定時間Tnが経過していないと判断された場合(S12:NO)、CPU91は、S12の処理を繰り返す。
【0066】
当該領域Rnに対する1回目の走査動作の開始後、S2で決定された所定時間Tnが経過したと判断された場合(S12:YES)、CPU91は、2層目の画像データのうち、領域Rnに対応する画像データに基づいて、領域Rnに対して走査動作を実行する(S13)。S13は、本発明の「第2記録処理」に該当する。つまり、CPU91は、タイマ61(図3参照)から取得される時点が、S7で記憶された開始時点t1にS2で決定された所定時間Tnを加算した時点に至ったと判断された場合(S12:YES)、2層目の画像データのうち、領域Rnに対応する画像データに基づいて、領域Rnに対して複数のノズルNからインクを吐出させる。なお、本実施形態において、領域Rn(n:2以上の整数)は、領域Rn-1と隣接する領域であるが、領域Rn-1と重複する領域であってもよい。
【0067】
S13の後、CPU91は、n=xか否かを判断する(S14)。
【0068】
n=xでない場合(S14:NO)、CPU91は、n=n+1とし(S15)、処理をS12に戻す。
【0069】
n=xである場合(S14:YES)、CPU91は、当該ルーチンを終了する。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、画像データの色情報(RGB値)に基づいて、所定時間Tnを決定する(図5のS23~S25、図7等参照)。色情報は、インクの含有成分である着色剤の種類に関連し、1層目の画像(第1画像)の乾燥時間(ひいては、画像の滲み)に関連する。画像データの色情報に基づいて所定時間Tnを決定することで、所定時間Tnを適切に決定できる。したがって、記録処理を連続して実行する場合において、より確実に画像の滲みを抑制し、かつ処理時間を短縮することができる。
【0071】
CPU91は、S2(所定時間Tn決定処理)において、1層目の画像データ(第1画像データ)を構成する複数の単位データの重み値(所定時間に関連する関連情報)に基づいて、所定時間Tnを決定する(図5のS23~S25参照)。この場合、第1画像データ全体の情報ではなく、複数の単位データの情報に基づいて所定時間Tnを決定することで、所定時間Tnをより適切に決定できる。
【0072】
さらに、CPU91は、S2(所定時間Tn決定処理)において、複数の単位データの重み値(平均値)のうち、最大値(所定時間が最長となる関連情報)に基づいて、所定時間Tnを決定する(図5のS25参照)。この場合、ある単位領域Sにおいて所定時間Tnが短いために滲みが発生するという問題を抑制できる。
【0073】
CPU91は、S2(所定時間Tn決定処理)において、各領域R1~Rxに対する1回目の走査動作(第1記録処理)と2回目の走査動作(第1記録処理)との組の所定時間Tnが互いに同じになるように、所定時間Tnを決定する(図5のS28参照)。この場合、所定時間Tnを平均化することで、画像のムラが抑制され、画質が向上する。
【0074】
CPU91は、S2(所定時間Tn決定処理)の後、1回目の走査動作(第1記録処理)において複数のノズルNから吐出されるインクの量が少なくなるように1層目の画像データ(第1画像データ)を補正する(S4)。S28で所定時間Tnを平均化した場合、ある領域Rnにおいて所定時間Tnが短いために滲みが発生するという問題が生じ得るが、上記のようにインク量を補正することで当該問題を抑制できる。
【0075】
1回目の走査動作(第1記録処理)の対象となる領域(第1領域)と、2回目の走査動作(第2記録処理)の対象となる領域Rn(第2領域)とは、それぞれ走査方向(搬送方向と直交する直交方向)に延び、かつ、互いに重複する(図6参照)。この場合、同一領域Rnに重ねて記録を行うことで画像の発色を良好にすると共に、所定時間Tnを適切に決定することで画像の滲みを抑制できる。
【0076】
<第2実施形態>
続いて、図10を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
【0077】
本実施形態は、図4のS2(所定時間Tn決定処理)の内容が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
【0078】
本実施形態では、S2(所定時間Tn決定処理)として、図5のサブルーチンの代わりに図10のサブルーチンが適用される。図5のサブルーチンと図10のサブルーチンとの違いは、S25,S55である。第1実施形態では、S25において、S24で算出された単位データ毎の重み値の平均値のうち、「最大値」に基づいて所定時間Tnを決定するが、本実施形態では、S55において、S24で算出された単位データ毎の重み値の平均値の、「平均値」に基づいて所定時間Tnを決定する。例えば、図8に示す各単位領域S内に記載された値(単位データの重み値の平均値)を積算し、積算値を領域Rnの面積で除することで「平均値」を算出し、この「平均値」に基づいて所定時間Tnが決定される。
【0079】
本実施形態は、「最大値」ではなく「平均値」に基づいて所定時間Tnを決定する点において第1実施形態と異なるが、第1画像データ全体の情報ではなく複数の単位データの情報に基づいて所定時間Tnを決定するという第1実施形態と同様の構成を有することで、所定時間Tnをより適切に決定できる。
【0080】
<第3実施形態>
続いて、図11及び図12を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
【0081】
第1実施形態では、色情報として画像の色に対応したRGB値を用いて所定時間Tnを決定する(図5のS23参照)。これに対し、本実施形態では、色情報としてインクの色に対応したCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)値を用いて所定時間Tnを決定する(図12のS63参照)。
【0082】
本実施形態において、CPU91は、図11に示すように、1層目の画像データ(RGB値)をRAM93に読み込んだ後(S1)、当該RGB値をCMYK値に変換し(S61)、その後、S2(所定時間Tn決定処理)を実行する。S61は、本発明の「変換処理」に該当する。図11に示すプログラムは、S1とS2との間にS61が追加された点を除き、図4のプログラムと同じである。
【0083】
本実施形態では、S2(所定時間Tn決定処理)として、図5のサブルーチンの代わりに図12のサブルーチンが適用される。図5のサブルーチンと図12のサブルーチンとの違いは、S23,S63である。第1実施形態では、S23において各画素のRGB値に対応する重み値を取得するが、本実施形態では、S63において各画素のCMYK値に対応する重み値を取得する。S23ではRGB値と重み値とが対応付けられた評価テーブル(図7参照)が用いられるが、S63ではCMYK値と重み値とが対応付けられた評価テーブル(図示略)が用いられる。
【0084】
<第4実施形態>
続いて、図13を参照し、本発明の第4実施形態について説明する。
【0085】
本実施形態は、第3実施形態と同様、色情報としてインクの色に対応したCMYK値を用いて所定時間Tnを決定する。
【0086】
第3実施形態(図11)では、外部装置200等から受信した画像データはRGB値で構成されており、プリンタ100のCPU91がRGB値をCMYK値に変換する(S61)。これに対し、本実施形態では、外部装置200がRGB値をCMYK値に変換し、CPU91は外部装置200からCMYK値を受信する(図13のS71)。S71は、本発明の「受信処理」に該当する。図13に示すプログラムは、S1がS71に置換された点を除き、図4のプログラムと同じである。CPU91は、S71において受信されたCMYK値に基づいて、所定時間Tnを決定する(S2)。
【0087】
本実施形態では、S2(所定時間Tn決定処理)として、第3実施形態と同様、図12のサブルーチンが適用される。
【0088】
第3及び第4実施形態において、CPU91は、画像データの色情報(CMYK値)に基づいて所定時間Tnを決定する(図12のS63,S24~S25参照)。CMYK値は、RGB値と同様、インクの含有成分である着色剤の種類に関連し、1層目の画像(第1画像)の乾燥時間(ひいては、画像の滲み)に関連する。したがって、第3及び第4実施形態においても、第1実施形態と同様、画像データの色情報に基づいて所定時間Tnを決定することで、所定時間Tnを適切に決定でき、記録処理を連続して実行する場合において、より確実に画像の滲みを抑制し、かつ処理時間を短縮することができる。
【0089】
<第5実施形態>
続いて、図14を参照し、本発明の第5実施形態について説明する。
【0090】
第1実施形態では、S12(図4参照)において、領域Rnに対する1回目の走査動作の「開始」後、S2で決定された所定時間Tnが経過したか否かを判断する。これに対し、本実施形態では、領域Rnに対する1回目の走査動作の「終了」後、S2で決定された所定時間Tnが経過したか否かを判断する。
【0091】
図14に示すプログラムは、S7がS87に置換された点を除き、図4のプログラムと同じである。CPU91は、S87において、S6(第1記録処理)の終了時にタイマ61(図3参照)から取得される時点を「1回目の走査動作の終了時点t1’」としてRAM93に記憶させる。S87は、本発明の「記憶処理」に該当する。終了時点t1’は、「第1記録処理終了時点」に該当する。S12において、CPU91は、タイマ61(図3参照)から取得される時点が、S87で記憶された終了時点t1’にS2で決定された所定時間Tnを加算した時点に至ったか否かを判断する。そして、S87で記憶された終了時点t1’にS2で決定された所定時間Tnを加算した時点に至ったと判断された場合(S12:YES)、CPU91は、S13(第2記録処理)を実行する。
【0092】
本実施形態は、「開始時点t1」ではなく「終了時点t1’」を基準として所定時間Tnが経過したか否かを判断する点において第1実施形態と異なるが、その他第1実施形態と同様の構成を有することで、第1実施形態と同様の効果(記録処理を連続して実行する場合において、より確実に画像の滲みを抑制し、かつ処理時間を短縮することができるという効果等)を得ることができる。
【0093】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0094】
第1実施形態では第1記録処理の「開始時点」、第5実施形態では第1記録処理の「終了時点」を基準として所定時間が経過したか否かを判断するが、これに限定されず、第1記録処理の任意の時点を基準として所定時間が経過したか否かを判断してよい。
【0095】
上述の実施形態では、複数の画素を含む単位領域S(図6参照)に対応する単位データ毎の重み値(所定時間に関連する関連情報)を取得し、これに基づいて所定時間を決定するが、これに限定されない。例えば、1画素を単位データとし、第1画像データに含まれる複数の画素(単位データ)の重み値のいずれか又は平均値に基づいて、所定時間を決定してもよい。
【0096】
ノズルから吐出される液体の色に対応したデータとして、第3及び第4実施形態ではCMYK値を例示したが、これに限定されず、例えばCMYKW(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト)値であってもよい。
【0097】
上述の実施形態では、各領域R1~Rxに対して2回の走査動作を実行するが、各領域R1~Rxに対して3回以上の走査動作を実行してもよい。この場合においても、各領域に対する走査動作毎に所定時間を設けることで、画像の滲みを抑制することができる。
【0098】
第1画像データ及び第2画像データは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。例えば、発色を良好にするため、互いに重複する第1領域及び第2領域に対し、互いに同じ第1画像データ及び第2画像データに基づく記録を行ってよい。或いは、互いに重複する第1領域及び第2領域に対し、第1画像データに基づく白色の下地を記録した後、第2画像データに基づくカラーや黒色の画像を記録してもよい。
【0099】
第2領域は、第1領域と重複又は隣接する領域である限り、第1領域と同じ(即ち、全体的に重複する)領域に限定されない。例えば、第2領域は、第1領域と部分的に重複する領域であってもよいし、第1領域と搬送方向又は走査方向に隣接する領域であってもよい。
【0100】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。
【0101】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0102】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0103】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0104】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 ヘッド
30 走査機構
50 搬送機構
61 タイマ
91 CPU(制御部)
93 RAM(記憶部)
94 ASIC(制御部)
100 プリンタ(液体吐出装置)
N ノズル
P 用紙(記録媒体)
R1~Rx 領域(第1領域,第2領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14