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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】RFタグ付き物品用什器
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20241112BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 144
G06K19/077 224
H04B1/59
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020151083
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045472
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 哲治
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021806(JP,A)
【文献】特開2012-003318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080507(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/043305(WO,A1)
【文献】特開2007-241788(JP,A)
【文献】新本 夏樹,図書館の効率的運用や盗難防止策に向けた書籍管理システム セルフォームを活用したUHF帯RFIDによる棚管理,月刊自動認識,日本,日本工業出版株式会社,2011年06月10日,第24巻 第6号,pp.35-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグを取り付けた物品であるRFタグ付き物品を載置する金属製の什器であって,
金属を少なくとも用いた壁部として、天壁部、一対の側壁部、背面部、および、少なくとも一つの棚壁部を備え、
ート抵抗値が1000Ω/sq以上かつ誘電率が10以下で厚み3mm以上の誘電体層、格子状金属層板状金属層を順に積層した誘電体壁部として、前記RFタグが接触または近接する前記壁部となる前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付け、前記一対の側壁部および前記棚壁部を前記板状金属層として使用する前記誘電体壁部を備えた、
ことを特徴とするRFタグ付き物品用什器。
【請求項2】
弱粘着型の粘着剤を用いて、前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付けたことを特徴とする、請求項に記載したRFタグ付き物品用什器。
【請求項3】
再剥離型の粘着剤を用いて、前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付けたことを特徴とする、請求項に記載したRFタグ付き物品用什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,無線による個体識別で用いられる媒体であるRFタグ(RF: Radio Frequency)を取り付けた物品を載置する什器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いた自動認識技術において,物品に取り付ける情報媒体をRFタグと呼んでいる。なお,RFタグは,無線タグ,ICタグ,または,RFIDタグなどと称されることもある。
【0003】
RFタグを取り付けた物品(これ以降,RFタグ付き物品と記す。)の載置(陳列または保管)に用いる什器として一般的に金属製の什器が利用される。これは,一つの棚壁部(棚板)に複数のRFタグ付き物品を載置するには,複数のRFタグ付き物品の重量を支えるのに必要な強度が什器に必要とされるからである。
【0004】
RFタグ付き物品に取り付けるRFタグは,無線通信を行うために,RFタグが利用する周波数帯に対応したアンテナとこれに接続するICチップを有する。RFタグが無線通信で用いる周波数帯には,LF帯(LF: Low Frequency),HF帯(HF: High Frequency)もあるが,UHF帯(例えば,860~960MHz)を無線通信に用いるRFタグが主流になっている。
【0005】
什器を構成する金属は,RFタグの無線通信を阻害する特性を有する。RFタグ付き物品に取り付けたRFタグが什器の金属面に接触または近接してしまうと,このRFタグの無線通信が什器を構成する金属によって阻害されてしまう。
【0006】
このため,RFタグ付き物品を載置する金属製の什器には,RFタグ付き物品に取り付けたRFタグの無線通信を阻害しない工夫が必要になる。
【0007】
RFタグ付き物品に取り付けたRFタグの無線通信を阻害しない什器に関連する発明として,RFタグのアンテナと金属面との距離を規定し発泡樹脂を含む低誘電体から成るスペーサが特許文献1で開示されている。特許文献1で開示されたスペーサを裏面に設けたRFタグを金属製の什器(例えば,デスク)に貼付しても,スペーサの効果によってRFタグは金属製の什器の影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-241788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
金属製の什器に載置するRFタグ付き物品としては,商品,書籍または資料など様々な物品がある。RFタグ付き物品のRFタグの仕様は,RFタグを取り付ける物品によって決まることが多い。このことからすると,金属の影響を排除する工夫は,RFタグではなく金属製の什器に設けることが望ましいと考えられる。
【0010】
そこで,本発明は,RFタグ付き物品のRFタグが金属面に接触または近接しても,RFタグの無線通信が阻害されない金属製の什器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する本発明は,RFタグを取り付けた物品であるRFタグ付き物品を載置する金属製の什器であって,金属を少なくとも用いた壁部として、天壁部、一対の側壁部、背面部、および、少なくとも一つの棚壁部を備え、シート抵抗値が1000Ω/sq以上かつ誘電率が10以下で厚み3mm以上の誘電体層、格子状金属層板状金属層を順に積層した誘電体壁部として、前記RFタグが接触または近接する前記壁部となる前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付け、前記一対の側壁部および前記棚壁部を前記板状金属層として使用した前記誘電体壁部を備えたことを特徴とするRFタグ付き物品用什器である。
また,本発明に係るRFタグ付き物品用什器において,弱粘着型の粘着剤を用いて,前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付けることが望ましく,更には,再剥離型の粘着剤を用いて,前記一対の側壁部および前記棚壁部に,前記誘電体層を積層した前記格子状金属層を貼り付けることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るRFタグ付き物品用什器は,本発明に係る目的を達成するために,前記誘電体層を利用して前記RFタグが前記板状金属層の影響を受けないように構成されている。また,前記格子状金属層を設けることで,前記誘電体壁部の剛性を高めるとともに,前記RFタグを読み取り易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】物品用什器の全体構成を説明する図。
図2】RFタグ付き物品を説明する図。
図3】RFタグを説明する図。
図4】物品用什器の載置面の構造を説明する図。
図5】誘電体壁部の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明に係る物品用什器について図を参照しつつ説明する。なお,本発明の技術的範囲は,これから説明する実施形態の内容に限定されず,特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0015】
図1は,本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1の全体構成を説明する図である。本発明に係るRFタグ付き物品用什器1は,RFタグ21を取り付けた物品20であるRFタグ付き物品2を複数載置可能に構成された什器である。
【0016】
図2は,RFタグ付き物品2を説明する図である。RFタグ付き物品2は,RFタグ21を取り付けた物品20である。図2では,RFタグ21を取り付ける物品20を段ボール箱としているが,RFタグ21を取り付ける物品20としては,商品,書籍または資料など様々な物を想定できる。図2では,RFタグ21を取り付ける物品20の面は物品20の底面になっている。RFタグ21を取り付ける物品20の面を物品20の側面にすることもできる。
【0017】
図3は,RFタグ21を説明する図である。物品20に取り付けるRFタグ21は,シールラベルの形態をなしている。RFタグ21の形状は横長の略矩形である。図3で図示した如く,RFタグ21の層構成は,RFタグ21の表面になる表面シート210と,粘着剤などを用いて形成した第1粘着剤層211と,ICチップ217とこれに接続するアンテナ212を実装したインレイ213と,粘着剤などを用いて形成した第2粘着剤層214を積層した構造になっている。RFタグ21は,第2粘着剤層214を用いて物品20に取り付けられる。なお,図3で図示したRFタグ21の層構成は一例に過ぎず,物品20に取り付けるRFタグ21の層構成は任意である。
【0018】
RFタグ21には,UHF帯に対応したアンテナ212が実装されている。RFタグ21に実装するアンテナ212は,一対の面状素子216とアンテナ整合回路215から構成されている。ICチップ217はアンテナ整合回路215と接続し,アンテナ整合回路215は,一対の面状素子216の間に配置されている。
【0019】
図1で図示したごとく,本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1は,金属を少なくとも用いた壁部10として,天壁部10a,一対の側壁部10bおよび背壁部10cを少なくとも備えている。更に,本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1は,複数のRFタグ付き物品2を載置可能にするために,金属を少なくとも用いた壁部10として,少なくとも一つの棚壁部10d(ここでは,4枚)を備えている。
【0020】
本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1において,RFタグ付き物品2の載置に用いる壁部10は棚壁部10dになる。RFタグ21は,物品20の底面に取り付けられ,各々の物品20は,RFタグ21を取り付けた底面がRFタグ付き物品2の載置に用いる壁部10と接するように載置されている。
【0021】
何の工夫もなく,RFタグ付き物品2のRFタグ21がRFタグ付き物品用什器1の壁部10に接触または近接すると,RFタグ付き物品用什器1の壁部10を構成する金属の影響で,RFタグ21の無線通信が阻害されてしまう。そこで,本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1では,RFタグ付き物品2のRFタグ21がRFタグ付き物品用什器1の壁部10に接触または近接してもRFタグ21の無線通信が阻害されない工夫を,RFタグ付き物品2のRFタグ21と接触または近接する可能性がある壁部10に施している。本発明では,この工夫を施した壁部10を誘電体壁部11と呼んでいる。
【0022】
図4は,RFタグ付き物品用什器1が有する誘電体壁部11の構造を説明する図である。図4(a)は,誘電体壁部11の層構成を説明する図である。図4(b)は,誘電体壁部11に積層した格子状金属層111を説明する図である。また,図4(c)は,粘着剤層113により,誘電体層112を積層した格子状金属層111を板状金属層110に貼った状態を説明する図である。
【0023】
図4(a)で図示したごとく,RFタグ付き物品用什器1の誘電体壁部11は,シート抵抗値が1000Ω/sq以上かつ誘電率が10以下の誘電体層112と,格子状金属層111と,板状金属層110を積層した構造になっている。
【0024】
図4(b)で図示したごとく,格子状金属層111は,金属がない網目111aが規則的に配置され,板状の金属が格子状(メッシュ状)になっている層である。格子状金属層111は,線状の金属材を交差させて製造することができるが,板状の金属に網目111aをあけることでも製造できる。なお,図4(b)において,網目111aは略正方形になっているが,網目111aはひし形であってもよい。
【0025】
RFタグ21と接触または近接する層は誘電体層112になる。本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1では,誘電体壁部11の誘電体層112の厚みを3mm以上にしており,RFタグ付き物品2のRFタグ21は格子状金属層111から3mm以上離間した状態になっている。なお,シート抵抗値が1000Ω/sq以上かつ誘電率が10以下の材料としては,例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)を利用できる。
【0026】
金属製の壁を有する市販の什器をRFタグ付き物品用什器1に用いる場合,RFタグ付き物品用什器1とし利用する金属製の什器の壁を板状金属層110に用いることができる。この場合,図4(c)で図示した如く,誘電体壁部11は,粘着剤層113を利用して,誘電体層112を積層した格子状金属層111を什器の壁に貼り付けることで実現できる。この場合,誘電体層112を積層した格子状金属層111を板状金属層110に強固に接着する必要は必ずしもない。貼った後に剥がすことが可能な弱粘着型の粘着剤を用いた粘着剤層113により,誘電体層112を積層させた格子状金属層111を板状金属層110として用いる什器の壁に貼り付ければ,RFタグ付き物品用什器1を廃棄する際の分別回収が容易になる。また,剥離可能な何度でも貼ったり剥がしたりできる再剥離型の粘着剤を用いた粘着剤層113により,誘電体層112を積層させた格子状金属層111を什器の壁に貼り付ければ,金属製の什器を本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1として利用する際,誘電体層112を積層させた格子状金属層111を使い回すことができる。
【0027】
上述した通り,図4を用いて説明した誘電体壁部11は,RFタグ付き物品2のRFタグ21と接触または近接する可能性がある壁部10に利用される。
【0028】
図4を用いて説明した誘電体壁部11は,少なくとも,RFタグ付き物品2を載置するための壁部10に利用される。図1を用いて説明したRFタグ付き物品用什器1において,RFタグ付き物品2を載置するための壁部10は,棚壁部10dになる。RFタグ付き物品2を載置するための壁部10においては,RFタグ付き物品2の載置面が誘電体壁部11の誘電体層112になる。
【0029】
加えて,図1を用いて説明したRFタグ付き物品用什器1において,図4を用いて説明した誘電体壁部11は,側壁部10bにも利用されている。これは,RFタグ21がRFタグ付き物品2の側面に取り付けられることを考慮したからである。
【0030】
図1を用いて説明したRFタグ付き物品用什器1において,天壁部10aと背壁部10cは,金属のみで構成された壁部10になる。これは,RFタグ付き物品用什器1の正面から電波を照射した場合,天壁部10aと背壁部10cで反射させ,RFタグ付き物品2のRFタグ21の読取り性能を向上させるためである。
【0031】
図5は,誘電体壁部11の効果を説明する図である。図5は,誘電体壁部11を棚壁部10dとして図示している。上述した通り,本実施形態に係るRFタグ付き物品用什器1では,誘電体壁部11に誘電体層112を積層しているので,RFタグ付き物品2のRFタグ21と板状金属層110の間には少なくとも誘電体層112が存在することになる。
【0032】
誘電体層112には,シート抵抗値が1000Ω/sq以上かつ誘電率が10以下の低誘電体が利用されているので,RFタグ21と板状金属層110の間を3mm以上にすれば,すなわち,誘電体層112の厚みを3mm以上にすれば,リーダライタが照射した電波が板状金属層110で吸収されるのを防ぐことができ,RFタグ21が板状金属層110の影響を受けづらくなる。
【0033】
加えて,本実施形態の誘電体壁部11には,誘電体層112と板状金属層110の間に格子状金属層111を設けている。板状金属層110の剛性が低い場合,格子状金属層111を利用して板状金属層110の剛性を高めることができる。また,誘電体層112と板状金属層110の間に格子状金属層111を設けることで,RFタグ21が読取り易くなる。これは,図4(b)で図示したごとく,格子状になっている格子状金属層111は金属がない複数の網目111aを有するため,誘電体層112を通過し格子状金属層111によって吸収された電波が網目111aに漏れ出すためと考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 RFタグ付き物品用什器
10 壁部
10a 天壁部
10b 側壁部
10c 背壁部
10d 棚壁部
11 誘電体壁部
110 板状金属層
111 格子状金属層
111a 網目
112 誘電体層
2 RFタグ付き物品
20 物品
21 RFタグ
図1
図2
図3
図4
図5