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  • 特許-高吸湿耐屈曲性積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】高吸湿耐屈曲性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241112BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241112BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241112BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 101
B32B7/12
B65D65/40 D
B65D81/24 E
B32B15/085 A
B32B27/18 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020155989
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049776
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】常田 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(72)【発明者】
【氏名】前田 世蓮
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023230(JP,A)
【文献】特開2004-331855(JP,A)
【文献】特開2006-103761(JP,A)
【文献】特開2010-201630(JP,A)
【文献】特表2015-531324(JP,A)
【文献】特表2019-530772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、ガスバリア層と、吸湿シーラント層とが、この順に積層された構成を有する高吸湿耐屈曲性積層体であって、
該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、
該ガスバリア層は、金属または金属酸化物を含む層であり、
該吸湿シーラント層は、少なくとも、1つの吸湿層と、2つのヒートシール層とを有し、
該吸湿層は、線状低密度ポリエチレンと、吸湿剤と、柔軟性樹脂および/または接着性強化樹脂とを含有し
柔軟性樹脂は、ポリエチレン系エラストマーおよび/またはポリエチレン系プラストマーを含有し、
該接着性強化樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含有し、
該吸湿層中の該柔軟性樹脂および/または該接着性強化樹脂の含有量が、2質量%以上、20質量%以下であり、
該吸湿層中の該吸湿剤の含有量が、25質量%以上、65質量%以下であり、
該ヒートシール層は、線状低密度ポリエチレンを含有し、該吸湿剤を含有せず、該吸湿シーラント層の両表面の層であり、
該高吸湿耐屈曲性積層体の耐屈曲性は、ASTM F392に準拠したゲルボフレックス試験後における、1000回屈曲後の発生したピンホール個数が、0個以上、7個以下であることを特徴とする、高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項2】
前記ポリエチレン系エラストマーは、密度が、0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることを特徴とする、請求項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項3】
前記ポリエチレン系プラストマーは、密度が、0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることを特徴とする、請求項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項4】
前記吸湿剤は、金属酸化物であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項5】
前記金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、親水性ゼオライトからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項6】
23℃50%RH14日間の吸湿量が、6g/m2以上、10g/m2以下であることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項7】
前記吸湿シーラント層が、吸湿シーラントフィルムからなる層であることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載の高吸湿耐屈曲性積層体を用いて作製された、高吸湿耐屈曲性包装材料。
【請求項9】
請求項に記載の高吸湿耐屈曲性包装材料で包装された、高吸湿耐屈曲性包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸湿性と耐屈曲と耐衝撃性を有し、柔軟且つ高密着な、高吸湿耐屈曲性積層体、および該高吸湿耐屈曲性積層体から作製された高吸湿耐屈曲性包装材料、高吸湿耐屈曲性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物として、金属材料や金属を用いた部品等からなる金属製品や薬品、特に医療器具や医薬品の輸送や長期保管を目的とした包装材料であって、内容物の品質や機能を維持でき、且つ簡素な層構成で簡略な製造工程によって製造される包装材料が知られている。
そしてこれらは、内容物が、吸湿によって品質を劣化させたり錆を発生させたりするのを抑制するために、内容物への水分の到達を抑制したり、防錆処理したりする手法が採用されており、例えば、金属製品内容物への防錆を目的として、常温で揮発して防錆効果を発揮する気化性の高い防錆剤を樹脂に含有させた包装用積層体が、特許文献1~3で提案されている。
しかしながら、外装による密閉が必要であったり、気化した防錆剤が内容物に付着した場合に、内容物が劣化したり機能的障害を生じたり等、防錆効果以外の影響が懸念され、除去するにも手間が煩雑であるために用途が限定されていることから、揮発性の防錆剤を用いない包装材料が望まれている。
食品や医薬品の包装にはPTP包装、ブリスター包装が広く使われているが、従来は防湿性が不十分なものが多くあり、それを補うために、アルミニウム箔ピロー袋を外袋として用いて、乾燥剤をさらに同梱している。しかしながら、この方法では、外袋開封後の防湿性が不十分であり、また、乾燥剤の誤飲事故が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-254350号公報
【文献】特開2007-308726号公報
【文献】特開2010-052751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決して、積層体生産時の作業性に優れ、総構成層数が少なく、薄く、柔軟であり、高いヒートシール性を有し、吸湿性が高く、屈曲負荷のピンホール発生が少ない高吸湿耐屈曲性積層体、および該高吸湿耐屈曲性積層体から作製された高吸湿耐屈曲性包装材料、高吸湿耐屈曲性包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、1つの吸湿層と2つのヒートシール層とを有し、該吸湿層が特定の樹脂と吸湿剤とを含有する高吸湿耐屈曲性積層体が、上記の目的を達成することを見出した。
【0006】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、基材層と、ガスバリア層と、吸湿シーラント層とが、この順に積層された構成を有する高吸湿耐屈曲性積層体であって、
該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、
該ガスバリア層は、金属または金属酸化物を含む層であり、
該吸湿シーラント層は、少なくとも、1つの吸湿層と、2つのヒートシール層とを有し

該吸湿層は、ポリエチレン系樹脂と、吸湿剤と、柔軟性樹脂および/または接着性強化樹脂とを含有し、
該柔軟性樹脂は、ポリエチレン系エラストマーおよび/またはポリエチレン系プラストマーを含有し、
該接着性強化樹脂は、官能基含有変性ポリオレフィンを含有し、
該ヒートシール層は、線状低密度ポリエチレンを含有し、該吸湿剤を含有せず、該高吸水性耐屈曲フィルムの両表面の層であり、
該2つのヒートシール層のそれぞれまたは該吸湿層に含有される該線状低密度ポリエチレンは、同一または異なっていることを特徴とする、高吸湿耐屈曲性積層体。
2.前記吸湿層中の前記柔軟性樹脂の含有量が、2質量%以上、20質量%以下であり、
前記吸湿層中の前記吸湿剤の含有量が、25質量%以上、65質量%以下であることを特徴とする、上記1に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
3.前記ポリエチレン系エラストマーは、密度が、0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることを特徴とする、上記1または2に記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
4.前記ポリエチレン系プラストマーは、密度が、0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることを特徴とする、上記1~3の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
5.前記接着性強化樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレンであることを特徴とする、上記1~4の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
6.前記吸湿剤は、金属酸化物であることを特徴とする、上記1~5の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
7.前記金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、親水性ゼオライトからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、上記1~6の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
8.23℃50%RH14日間の吸湿量が、6g/m2以上、10g/m2以下であることを特徴とする、上記1~7の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
9.前記吸湿シーラント層が、吸湿シーラントフィルムからなる層であることを特徴とする、上記1~8の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体。
10.上記1~9の何れかに記載の高吸湿耐屈曲性積層体を用いて作製された、高吸湿耐屈曲性包装材料。
11.上記10に記載の高吸湿耐屈曲性包装材料で包装された、高吸湿耐屈曲性包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層体生産時の作業性に優れ、総構成層数が少なく、薄く、柔軟であり、高いヒートシール性を有し、吸湿性が高く、屈曲負荷のピンホール発生が少ない高吸湿耐屈曲性フィルム、および該高吸湿耐屈曲性フィルムから作製された高吸湿耐屈曲性包装材料、高吸湿耐屈曲性包装体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の高吸湿耐屈曲性積層体の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体、および該高吸湿耐屈曲性積層体から作製された高吸湿耐屈曲性包装材料、高吸湿耐屈曲性包装体について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
【0010】
本発明における、総構成層数とは、積層体を構成する、無機蒸着層、耐クラック性付与接着剤層、無機蒸着層支持層、基材層、シーラント層、及び接着剤層等の層の詳細な数で
あり、各層における蒸着層やアンカーコート層等の特殊処理コート層をも含む層数のことである。例えば、アルミニウム蒸着層付きPETフィルム層は、2層として数える。
本発明に係る積層体および該積層体からなる包装材料と包装袋について説明する。
本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものを用いることとする。また、本発明は、以降の列記された諸々の具体例に限定されるものでは無い。
本発明においては、フィルムとシートは、包括的にフィルムという語で記載する。
【0011】
≪高吸湿耐屈曲性積層体≫
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体は、少なくとも、基材層と、ガスバリア層と、吸湿シーラント層とが、この順に積層された構成を有する高吸湿耐屈曲性積層体である。
そして、各層間は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
基材層またはガスバリア層は、高吸湿耐屈曲性積層体中に1層であってもよく、2層以上であってもよい。
吸湿シーラント層は、高吸湿耐屈曲性積層体の片側の表面層である。
【0012】
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体の吸湿性は、例えば、23℃50%RH14日間の吸湿量が、6g/m2以上、10g/m2以下であることが好ましい。
【0013】
<基材層>
基材層には、公知公用の、樹脂フィルムや紙材等を用いることができ、1層で構成されていてもよく、組成が同一または異なる2層以上を含む多層構成であってもよい。
【0014】
基材層の厚さは、素材にもよるが、樹脂フィルムの場合には、好ましくは5μm以上、50μm以下、より好ましくは10μm以上、30μm以下である。
基材層に用いられる樹脂フィルムには、熱可塑性樹脂をフィルム化したものを用いることができ、化学的または物理的強度に優れ、金属や金属酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、それら金属酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
このような樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。
本発明においては、樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)が好ましい。
【0016】
本発明において、基材層に用いられる熱可塑性樹脂は、公知公用の各種製膜法でフィルム化することができる。
例えば、1種の樹脂を使用して、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて製膜する方法、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜する方法、2種以上の樹脂を製膜する前に混合して上記製膜法で製膜する方法、等が挙げられる。さらに、テンター方式やチューブラマ方式等を利用して1軸または2軸方向に延伸したフィルムとすることができる。
【0017】
または、他の樹脂フィルム上に、1種または2種以上の樹脂を、塗布及び乾燥してコーティングしたり、Tダイ法等によって溶融した樹脂を積層したりすることもできる。
本発明においては、樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが好ましく、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸PPフィルムまたはシートがより好ましく用いられる。
【0018】
なお、樹脂フィルムには、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を使用することができる。
【0019】
<ガスバリア層>
ガスバリア層は、高吸湿耐屈曲性積層体のガスの透過を抑制する層である。
ガスバリア層は、金属、金属酸化物またはガスバリア性樹脂を含む層であり、具体的には、ガスバリア層には、ガスバリア性樹脂フィルム、金属箔、金属または属酸化物蒸着層付き樹脂フィルム、ガスバリア性樹脂塗膜からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
ガスバリア性樹脂フィルムとしては、公知公用のガスバリア性を有する樹脂フィルムを用いることができる。例えば、ガスバリア性フィルムとしては、具体的には、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の樹脂からなる樹脂フィルムが好ましい。
【0021】
金属箔としては、厚さが3μm以上、15μm以下のアルミニウム箔が好ましい。
【0022】
金属または属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムとしては、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜を、上記の基材樹脂フィルムの少なくともいずれか一方の面上に形成したものが好ましい。商業的にも入手可能な酸化アルミニウム蒸着膜付き樹脂フィルムとしては、例えば、PVD法によりアルミナを片面に蒸着したPETフィルムである、大日本印刷株式会社製のアルミナ蒸着IB-PET-PIR(厚さ12μm)、シリカ蒸着IB-ON-UB(厚さ15μm)が挙げられる。
【0023】
ガスバリア性樹脂塗膜としては、金属アルコキシドと水溶性高分子とから形成されたゾルゲル法加水分解重縮合物を含有する塗膜が好ましい。
【0024】
ガスバリア層用の金属箔、金属または金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムは、ドライラミネート接着剤を用いて、他の層と接着することができる。
あるいは、金属または金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムの樹脂フィルムに、基材層用の樹脂フィルムを用いることで、基材層への積層を省略することもできる。
【0025】
<吸湿シーラント層>
吸湿シーラント層は、少なくとも、1つの吸湿層と2つのヒートシール層とを有し、吸湿層が2つのヒートシール層に挟まれて積層されている層構成である。
一方のヒートシール層は、高吸湿耐屈曲性積層体中で基材層側に、他方のヒートシール層が反対側の、高吸湿耐屈曲性積層体の最表面に積層されている。
そして、各層間は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
吸湿層は、ポリエチレン系樹脂と、柔軟性樹脂と、接着性強化樹脂と、吸湿剤とを含有
し、該柔軟性樹脂は、ポリエチレン系エラストマーおよび/またはポリエチレン系プラストマーであってよい。そして、接着性強化樹脂は、官能基含有変性ポリオレフィンを含有するものが好ましい。
ヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂を含有する層であり、良好なヒートシール性を有する為に吸湿剤を含有しないことが好ましい。
ここで、2つのヒートシール層のそれぞれまたは該吸湿層に含有される、ポリエチレン系樹脂は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、ポリエチレン系樹脂は、LLDPEおよび/またはLDPEが好ましく、LLDPEがより好ましい。
【0026】
吸湿層中の柔軟性樹脂の含有量は、2質量%以上、20質量%以下が好ましく、5質量%以上、15質量%以下がより好ましい。上記範囲未満だと高吸湿耐屈曲性積層体の耐屈曲性と耐衝撃性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも多いと吸湿層および/または高吸湿耐屈曲性積層体全体の剛性が低すぎて包装材料としての適性に欠ける傾向になる。
【0027】
吸湿層中の接着性強化樹脂の含有量は、2質量%以上、20質量%以下が好ましく、5質量%以上、15質量%以下がより好ましい。上記範囲未満だと吸湿層界面の接着強度、高吸湿耐屈曲性積層体のヒートシール性、耐屈曲性、耐衝撃性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも多くて吸湿層界面の接着強度、高吸湿耐屈曲性積層体のヒートシール性、耐屈曲性、耐衝撃性はさほど向上しない。
【0028】
吸湿層中の吸湿剤の含有量は、0.5質量%以上、70質量%以下が好ましく、20質量%以上、55質量%以下がより好ましい。上記範囲未満だと吸湿性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも多いと製膜性や界面接着強度が低下したり耐屈曲性が不十分になったりするおそれがある。
【0029】
吸湿シーラント層の厚さは、特に制限は無いが、20μm以上、200μm以下が好ましく、30μm以上、150μm以下が好ましく、30μm以上、100μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いとヒートシール性と吸湿性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚いと高吸湿耐屈曲性積層体の剛性が強くなり過ぎて包装材料としての適性に劣り易い。
【0030】
吸湿層の厚さは、特に制限は無いが、10μm以上、100μm以下が好ましく、15μm以上、75μm以下が好ましく、15μm以上、50μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと高吸湿耐屈曲性積層体の吸湿性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても吸湿性はさほど向上せず、高吸湿耐屈曲性積層体の剛性が強くなり過ぎて包装材料としての適性に劣り易い。
【0031】
ヒートシール層の厚さは、特に制限は無いが、5μm以上、50μm以下が好ましく、7μm以上、40μm以下が好ましく、10μm以上、30μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと高吸湿耐屈曲性積層体のヒートシール性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚いと高吸湿耐屈曲性積層体の剛性が強くなり過ぎて包装材料としての適性に劣り易い。
【0032】
吸湿シーラント層は、吸湿シーラント層と同様な層構成を有した、吸湿シーラントフィルムから形成するができる。
吸湿シーラントフィルムは、耐屈曲性と耐衝撃性に優れている。
吸湿シーラントフィルムの耐屈曲性は屈曲処理後のピンホール発生個数で評価することができる。高吸湿耐屈曲性積層体の耐屈曲性は、例えば、ASTM F392に準拠した
ゲルボフレックス試験後における、1000回屈曲後の発生したピンホール個数が、0個以上、7個以下であることが好ましい。
吸湿シーラントフィルムの耐衝撃性は、例えば、ASTM D3420プラスチックフィルムの振り子耐衝撃性の標準試験法に準拠した衝撃破壊試験における衝撃強さが、1.5J以上、3J以下であることが好ましい。
【0033】
<吸湿層>
吸湿層は、高吸湿耐屈曲性積層体において、吸湿性を担う層であり、吸湿剤とバインダー樹脂としての熱可塑性樹脂と接着性強化樹脂とを含有する層である。
吸湿層は、高吸湿耐屈曲性積層体中に1層であってもよく、同一または異なる組成の2層以上であってもよい。
吸湿層に含有されるバインダー樹脂は、耐屈曲性に優れ、吸湿剤の分散に適した親和性を有し、製膜性に優れた樹熱可塑性脂が好ましく、ヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0034】
このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂を含有することが好ましく、線状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと記載する。)および柔軟性樹脂を含有することがより好ましい。ポリエチレン系樹脂、中でも特にLLDPEと柔軟性樹脂との組み合わせは、相乗効果によって、耐屈曲性が高く、吸湿剤との親和性が高く、高吸湿耐屈曲性積層体の吸湿層のバインダー樹脂として優れている。
吸湿層に含有される接着性強化樹脂は、吸湿層が接する界面の層間接着強度と高吸湿耐屈曲性積層体のヒートシール強度とを強化する。
【0035】
吸湿層には、耐屈曲性、吸湿性、ヒートシール性、製膜性等に大きな悪影響を与えない範囲内で、多種類の熱可塑性樹脂を併用することができる。
【0036】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は吸湿シーラント層の両面の表面層であることが好ましく、製膜性に優れ、ヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂が好ましく、LLDPEを含有することがより好ましい。
ヒートシール層中のLLDPEの含有量は、75質量%以上、100質量%以下が好ましく、65質量%以上、95質量%以下がより好ましい。
【0037】
ヒートシール層には、ヒートシール性、製膜性等に大きな悪影響を与えない範囲内で、多種類の熱可塑性樹脂を併用することができる。
【0038】
<接着剤層>
接着剤層に用いられる接着剤に特に制限は無く、DL(ドライラミネート)用接着剤、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、任意のアンカーコート剤等を用いることができる。
また、接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のいずれであってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
【0039】
このような接着剤層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノ
マーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、LDPE等のポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
【0040】
<各原料について>
[吸湿剤]
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体に含有される吸湿剤としては、金属酸化物が好ましい。
そして、該金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、親水性ゼオライトからなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0041】
吸湿剤は、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、樹脂中に分散させた際の、均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
【0042】
本発明において、吸湿剤の平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径0.01μm以上、15μm以下が好ましく、1μm以上、12μm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には親水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、親水性ゼオライトを含有する層の製膜性が劣る傾向になる為に、親水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分な吸湿効果が得られない可能性が生じる。
【0043】
(親水性ゼオライト)
本発明において、吸湿剤として用いられる親水性ゼオライトは、A型ゼオライト、CHA型ゼオライト、MFI型ゼオライトからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
ここで、A型ゼオライトは細孔径が0.3~0.5nmのものが好ましく、CHA型ゼオライトは、細孔径が0.38nm前後のものが好ましく、MFI型ゼオライトは、細孔径が0.55nm前後のものおよび/または比表面積が300~400m2/gのものが好ましい。
上記のゼオライトは、水以外にも、その細孔径に応じた分子サイズのガスや、比表面積に応じた量のガスを吸収できる。例えば、CHA型ゼオライトは、低級炭化水素類、二酸化炭素を吸着する能力に優れ、MFI型ゼオライトは、二酸化炭素、低級炭化水素類、低級アルデヒド類、低級有機酸類、低級アルコール類を吸着する能力に優れる。
上記のゼオライトは、逆に極性の低い有機ガスに対しては、親和性が低く、吸着する能力に劣る。
【0044】
(吸湿剤の分散方法)
吸湿剤は、吸湿剤を熱可塑性樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。
具体的には、吸湿剤を熱可塑性樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、吸湿剤濃度になるように、マスターバッチとバインダー樹脂等の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。
メルトブレンドされる吸湿剤や熱可塑性樹脂のそれぞれは、1種であっても2種以上で
あってもよく、ひとつのマスターバッチに吸湿剤が1種または2種以上含有されていてもよい。
【0045】
マスターバッチ中の吸湿剤の含有量は、10質量%以上、90質量%以下が好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましく、上記の範囲であれば、必要かつ十分な量の吸湿剤を分散した状態で含有させることが容易である。
上記の熱可塑性樹脂は、吸湿層で含有されるバインダー樹脂としての熱可塑性樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
<熱可塑性樹脂>
吸湿層、ヒートシール層のそれぞれにバインダー樹脂として併用する熱可塑性樹脂や、マスターバッチに用いられる熱可塑性樹脂には、各層に同一の熱可塑性樹脂を用いてもよく、必要な性能に応じて、異なる熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0047】
具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、その他等の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、メチルペンテンポリマー等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、種類の異なる樹脂を含有する多層で用いてもよい。これらの共重合する不飽和カルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0049】
<ヒートシール性樹脂>
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体において用いることができるヒートシール性樹脂は、熱によって溶融して融着し得る熱可塑性樹脂であれば、特に制限無く、公知のヒートシール性樹脂を用いることができる。
ヒートシール性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(以下、VLDPEと記載する。)、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記載する。)、中密度ポリエチレン(以下、MDPEと記載する。)、高密度ポリエチレン(以下、HDPEと記載する。)、LLDPE、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。
【0050】
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でもポリエチレン系樹脂がより好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でもLDPE、LLDPEがさらに好ましく、LLDPEが特に好ましい。
本発明の高吸湿耐屈曲性フィルムにおいては、バインダー樹脂として用いている樹脂から選択することが好ましい。
【0051】
<ポリエチレン系樹脂>
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE、超低密度ポリエチレン(以下、VLDPEと記載する。)、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。
【0052】
上記のポリエチレン系樹脂の中でも、LDPE、LLDPE、VLDPEがより好ましく、VLDPEが更に好ましい。これらのポリエチレン系樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
[ポリエチレン系エラストマー]
本発明におけるポリエチレン系エラストマーとは、エチレンモノマーと他のモノマーとに由来する、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する共重合体であり、各モノマーに由来する繰り返し単位の配列状態によって、ランダム共重合型とブロック共重合型に分類される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
一般的に、ランダム共重合型の方がブロック共重合型よりも、相対的に柔らかく、低融点(軟化点)である。
ポリエチレン系エラストマーの具体例としては、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン/ブテンランダム共重合体、エチレン/オクテンブロック共重合体や、エチレンと各種の環状オレフィンコポリマー等が挙げられる。
ランダム共重合型のポリエチレン系エラストマーとは、各モノマーに由来する繰り返し単位が、ランダムに配列している場合のエチレン系共重合体である。
例えばモノマーAとモノマーBからなるランダム共重合体の主鎖構造は、-A-B-A-A-B-A-B-B-A-B-等で表される。
ブロック共重合型のポリエチレン系エラストマーとは、1種のモノマーに由来する繰り返し単位が数個連続したブロックを形成した後に、他種のモノマーに由来する繰り返し単位が数連続したブロックを形成して配列している場合のエチレン系系共重合体である。
例えばモノマーAとモノマーBからなるブロック共重合体の主鎖構造は、-A-A-A-A-B-B-B-B-B-A-A-A-等で表される。
ポリエチレン系エラストマーは、ゴムの様に常温で非常に大きな弾性を有し、通常のポリエチレン系樹脂よりも低密度、低弾性率、低軟化点である。
本発明におけるポリエチレン系エラストマーは、密度が、0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることが好ましく、0.88g/cm3以上、0.915g/cm3以下であることがより好ましい。
【0054】
[ポリエチレン系プラストマー]
プラストマーとは、プラスチックのように常温で可塑性を示す高分子化合物である。
本発明におけるポリエチレン系プラストマーは、主鎖が主にエチレンモノマー単位からなるポリエチレンであるが、側鎖の影響及び分子量分布が狭いことによって、弾性を示すと同時に熱可塑性を示す。
ポリエチレン系プラストマーは、プラスチック特性とエラスチック特性を有し、通常のポリエチレン系樹脂よりも、大きな柔軟性、透明性、低温シール性、耐衝撃性を有する。
本発明の高吸湿耐屈曲性積層体に用いられるポリエチレン系プラストマーは、密度が0.86g/cm3以上、0.935g/cm3以下であることが好ましく、0.88g/c
3以上、0.915g/cm3以下であることがより好ましい。
【0055】
<接着性強化樹脂>
接着性強化樹脂は、接着性を強化する樹脂であり、高吸湿耐屈曲性積層体内の含有される層周辺の界面密着強度や、高吸湿耐屈曲性積層体のヒートシール強度を向上させることができる。
本発明において、接着性強化樹脂は、官能基含有変性ポリオレフィンを含有することが好ましい。
接着性強化樹脂が含有される吸湿層にはLLDPEおよび柔軟性樹脂が含有されることから、接着性強化樹脂の主骨格は、これらの樹脂と親和性の高いポリオレフィン系骨格が好ましく、接着性を強化する為に官能基を含有するように変性されていることが好ましい。
そして、官能基含有変性ポリオレフィンは、さらに、無水マレイン酸変性ポリエチレンであることがより好ましい。
吸湿層が含有するポリエチレン系樹脂及び柔軟性樹脂の主骨格がポリエチレン系の場合には、同じ吸湿層に含有される接着性強化樹脂の主骨格も同様なポリエチレン系である方が、より高い親和性を有することができ、そして、高い接着性を有する為には、極性の高い官能基を有することが好適であり、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン系樹脂がより好適である。
【0056】
[高吸湿耐屈曲性積層体の作製方法]
下記に示す作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
高吸湿耐屈曲性積層体を構成する各層の製膜、積層は、特に限定されず、公知または慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
得られた高吸湿耐屈曲性積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
吸湿シーラント層は、吸湿シーラントフィルムを作製した後に他の層と積層してもよく、押出しまたは共押出しで、ガスバリア基材層等の他の層上に、エクストルージョンコート法で積層してもよい。エクストルージョンコート法の場合でも、必要に応じて接着剤層を介して、積層してもよい。
【0057】
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0058】
以下に、例えば、基材層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/吸湿シーラント層[接着性強化層/吸湿層/ヒートシール層]という層構成を有する高吸湿耐屈曲性積層体(高吸湿耐屈曲性積層体包装材料)を作製する場合について、一例を説明する。
【0059】
(吸湿シーラントフィルムの作製)
接着性強化層用の樹脂組成物と、吸湿層用の樹脂組成物と、ヒートシール層用の樹脂組成物とをそれぞれ調製して準備し、インフレーション法により、下記層構成の吸湿シーラントフィルムを得る。
層構成:接着性強化層/吸湿層/ヒートシール層
【0060】
(高吸湿耐屈曲性積層体の作製)
次に、吸湿シーラント層用の上記で得た吸湿シーラントフィルムと、基材層用の基材フィルムと、ガスバリア層用のアルミニウム箔とを、この順で接着剤層用のDL接着剤を介したドライラミネーション(塗布量:3.5g/m2、乾燥温度:70℃)によって張り合わせて、上記層構成の高吸湿耐屈曲性積層体を得る。
【0061】
≪高吸湿耐屈曲性包装材料≫
本発明の高吸湿耐屈曲性包装材料は、本発明の高吸湿耐屈曲性積層体を用いて作製された法材料であり、該高吸湿耐屈曲性積層体と同一物であってもよく、必要に応じて、種々の機能層や、印刷層等をさらに含むこともできる。
また、本発明の高吸湿耐屈曲性包装材料に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施すこともできる。
【0062】
≪高吸湿耐屈曲性包装体≫
本発明の高吸湿耐屈曲性包装体は、本発明の高吸湿耐屈曲性包装材料で包装された包装体である。
本発明の高吸湿耐屈曲性包装体は、例えば、本発明の高吸湿耐屈曲性包装材料を使用し、これを二つ折にするか、又は高吸湿耐屈曲性包装材料2枚を用意し、そのヒートシール層の面を対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の高吸湿耐屈曲性包装体を製造することができる。
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【実施例
【0063】
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
[基材層]
・PETフィルム1:東洋紡(株)社製E5100。12μm厚。
[AL層]
・アルミニウム箔1:東洋アルミニウム(株)社製。7μm厚。
[接着層]
・DL接着剤1:ロックペイント(株)社製、アドロックRU77T/H7。ポリエステル系接着剤。
[吸湿剤]
・金属酸化物1:(株)カルファイン社製酸化カルシウム Fライム1300-K。平均粒子径4.3μm。
・金属酸化物2:協和化学工業(株)社製酸化マグネシウム キョウワマグ30。平均粒子径3.16μm。
・金属酸化物3:巴工業(株)社製親水性ゼオライト、4A。平均粒子径10μm。
【0064】
[熱可塑性樹脂]
・LLDPE1:(株)プライムポリマー社製LLDPE、エボリューSP1540。密度0.913g/cm3、MFR3.8g/10分。
【0065】
[柔軟性樹脂]
・エラストマー1:三井化学(株)社製ポリエチレン系エラストマー、タフマー A8050S。密度0.885g/cm3、MFR3.6g/10分。
・エラストマー2:ダウ・ケミカルカンパニー(株)社製ポリエチレン系エラストマー、
INFUSE9107。密度0.866g/cm3、MFR1g/10分。
・プラストマー1:日本ポリエチレン(株)社製ポリエチレン系プラストマー、カーネルKS340T。密度0.880g/cm3、MFR3.5g/10分。
・プラストマー2:日本ポリエチレン(株)社製ポリエチレン系プラストマー、カーネルKF282密度0.915g/cm3、MFR2.2g/10分。
【0066】
[接着性強化樹脂]
・接着性強化樹脂1:三井化学(株)社製無水マレイン酸変性ポリエチレン、アドマー NF557。密度0.903g/cm3、MFR1.7g/10分。
・接着性強化樹脂2:ダウ・ケミカル(株)社製、無水マレイン酸変性ポリエチレン。アンプリファイTY1052H。密度0.87g/cm3、MFR1.25g/10分。
【0067】
[マスターバッチの調製]
ガス吸着層に使用するマスターバッチは下記のように調製した。
【0068】
(マスターバッチ1の調製)
LLDPE1と金属酸化物1とを下記の割合でメルトブレンドして、マスターバッチ1(MB1)を得た。
LLDPE1 30質量部
金属酸化物1 70質量部
【0069】
[マスターバッチ2~4の調整]
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、各原料をメルトブレンドして、マスターバッチ2~4(MB2~4)得た。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例1]
【0072】
(吸湿層樹脂組成物の調製)
吸湿層に使用する吸湿層樹脂組成物は下記のように調製した。
【0073】
MB1、LLDPE1、エラストマー1、接着性強化樹脂1を下記の割合でドライブレンドして、吸湿層樹脂組成物を得た。
MB1 72質量部
LLDPE1 25質量部
接着性強化樹脂1 3質量部
【0074】
(吸湿シーラントフィルムの作製と評価)
上記で得た吸湿層樹脂組成物とLLDPE1とを、共押出し製膜によって製膜及び積層して、下記層構成の高吸湿耐屈曲性積層体(40μm厚)を得た。そして、各種評価を実施した。
層構成:ヒートシール層1/吸湿層/ヒートシール層2=LLDPE1(10μm厚)/吸湿層樹脂組成物1(20μm厚)/LLDPE1(10μm厚)
【0075】
(高吸湿耐屈曲性積層体の作製と評価)
次に、上記で得た吸湿シーラントフィルムとPETフィルム1とアルミニウム箔1とを、DL接着剤1を介したドライラミネーション(塗布量:3.5g/m2、乾燥温度:70℃)によって張り合わせて、下記層構成の高吸湿耐屈曲性積層体を得た。
高吸湿耐屈曲性積層体の構成:基材層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/吸湿シーラント層[ヒートシール層1/吸湿層/ヒートシール層2]=PETフィルム1(12μm)/DL接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm)/DL接着剤1(3.5g/m2)/[LLDPE1(10μm)/吸湿層樹脂組成物(20μm)/LLDPE1(10μm)]
得られた高吸湿耐屈曲性積層体を用いて、ヒートシール性評価、吸湿量評価を実施した。
評価結果を表2に示す。
【0076】
[実施例2~15、比較例1~7]
表2に記載された素材を用いて、実施例1と同様に操作して、吸湿層樹脂組成物、吸湿シーラントフィルム、高吸湿耐屈曲性積層体を作製し、同様に評価した。
【0077】
<評価方法>
[製膜性]
高吸湿耐屈曲性積層体の外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通りである。
○:皺やぶつが生じることなく製膜が可能。
×:皺やぶつが多数生じ、製膜が困難。
【0078】
[ヒートシール性]
高吸湿耐屈曲性積層体を100mm×100mmに切り分け、ヒートシール層を重ね合せ、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、10mm×100mmの領域を下記条件でヒートシールして、端部はヒートシールされずに接着しておらず、二股に分かれている状態の引き剥がし強度の試験片を作製した。
この試験片を、15mm幅で短冊状に切り、二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して下記条件で引き剥がし強度(N/15mm)を測定して、下記合否判定基準で合否判定した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
試験条件
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
合否判定基準
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
【0079】
[吸湿量]
高吸湿耐屈曲性積層体を100mm×100mmに切り出し、23℃50%RH環境下における重量を測定し、下記式から吸湿量を算出した。
吸湿量(g/m2)=[2週間後の湿重量(g)―初期の乾重量(g)]/0.01(m2
【0080】
<結果まとめ>
全実施例の高吸湿耐屈曲性積層体は、良好な製膜性、ヒートシール強度、吸湿性を示した。
しかしながら、柔軟性樹脂および/または接着性強化樹脂を含有しないまたは含有量が少なすぎる比較例1~4は劣ったヒートシール性示し、吸湿剤含有量が少なすぎる比較例5は不十分な吸湿性を示し、吸湿剤含有量が多すぎる比較例6は不十分な製膜性示した。
柔軟性樹脂および/または接着性強化樹脂の含有量が多すぎる比較例7は、劣った製膜性を示した。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【符号の説明】
【0083】
1 高吸湿耐屈曲性積層体
2 ヒートシール性吸湿包装材料
3 基材層
4 接着剤層
5 ガスバリア層
6 吸湿シーラント層
6a ヒートシール層
6b 吸湿層
6c 吸湿剤
図1