(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20241112BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B41J11/42
B41J11/70
(21)【出願番号】P 2020158320
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 晃男
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131578(JP,A)
【文献】特開2005-096103(JP,A)
【文献】特開2013-071313(JP,A)
【文献】特開平05-008475(JP,A)
【文献】特開平10-198865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置であって、
印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の
印刷データにおける印刷内容に続けて
前記今回
の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分
が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷
されるように制御する制御手段を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送部と前記印刷ヘッドを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記印刷ヘッドによる前記第1情報の印刷後であって前記搬送部による前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記印刷ヘッドよりも下流側に配置された、前記被印刷媒体を切断する切断装置を備え、
前記コントローラは、前記搬送終了時において前記切断装置と前記印刷ヘッドの間に留まる前記被印刷媒体の領域に、前記予備的印刷を行う、
ことを特徴とする
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1印刷命令後に第2情報の印刷を指示する第2印刷命令が入力されると、
前記第2情報が前記予備的印刷で印刷された予備情報に対して前方一致でない場合に、前記第2情報を先頭から印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第2情報が前記予備情報に対して前方一致である場合に、前記第2情報を途中から印刷するように、前記印刷ヘッドを制御する、
ことを特徴とする
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1印刷命令後に前記第2印刷命令が入力されると、前記第2情報が前記予備情報に対して前方一致でない場合に、前記被印刷媒体の前記予備情報が印刷された領域と前記被印刷媒体の前記第2情報が印刷された又は印刷される領域の間で前記被印刷媒体を切断するように、前記切断装置を制御する、
ことを特徴とする
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置が実行する制御方法であって、
印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の印刷データにおける印刷内容に続けて前記今回の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷されるように制御する制御処理を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置が実行する制御方法であって、
第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、制御処理を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置のコンピュータを、
印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の印刷データにおける印刷内容に続けて前記今回の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷されるように制御する制御手段として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置のコンピュータを、
第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、制御手段として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テープを被印刷媒体として利用することで文字や図形などの情報が印刷された帯状の印刷物(以降、ラベルと記す。)を作成するプリンタが知られている。そのようなプリンタは、ラベルプリンタ、又は、ラベルライターとも称される。
【0003】
ラベルプリンタでは、印刷ヘッドと切断装置はいずれもテープの搬送路上に設けられるが、空間的な制約から、切断装置は、印刷ヘッドよりも搬送方向の下流で印刷ヘッドからある程度離れた位置に配置される。このため、プラテンローラが順方向にのみ回転する場合には、ラベルプリンタ内における印刷位置と切断位置との違いに起因して、テープの先端に、印刷位置と切断位置の間の距離に応じた長さの無駄な余白が生じてしまう。
【0004】
このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のラベルプリンタは、印刷ヘッドによる印刷開始前にプラテンローラを逆方向に回転させテープを逆搬送することができるため、無駄な余白を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、順方向にのみ搬送可能なラベルプリンタには、特許文献1に記載の技術は適用できない。このため、任意のラベルプリンタにおいて適用可能な、印刷位置と切断位置との距離に応じて生じる無駄な余白を削減する技術が求められている。
【0007】
なお、以上では、切断装置を有するラベルプリンタを例に説明したが、切断装置を有しないラベルプリンタにおいても同様の問題が生じる。切断装置を有しないラベルプリンタでは、排出口から排出されたテープが鋏などを用いることで利用者によって手動で切断されるが、この場合、印刷位置と排出口の間の距離に応じた長さの無駄な余白がテープ先端に生じる。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、被印刷媒体の先端に生じる無駄な余白を削減する新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様の印刷装置は、被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置であって、印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の印刷データにおける印刷内容に続けて前記今回の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷されるように制御する制御手段を備える、ことを特徴とする。
また、本発明に係る第2の態様の印刷装置は、被印刷媒体を搬送する搬送部と、前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、前記搬送部と前記印刷ヘッドを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記印刷ヘッドによる前記第1情報の印刷後であって前記搬送部による前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第1の態様の制御方法は、被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置が実行する制御方法であって、印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の印刷データにおける印刷内容に続けて前記今回の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷されるように制御する制御処理を含む、ことを特徴とする。
また、本発明に係る第2の態様の制御方法は、被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置が実行する制御方法であって、第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、制御処理を含む、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第1の態様のプログラムは、被印刷媒体に対しての印刷ヘッドによる印刷実行位置と前記被印刷媒体に対しての切断手段による切断実行位置とが筐体内において所定の距離だけ離間しているとともに、前記印刷実行位置を通過後に前記切断実行位置を通過するように前記被印刷媒体が前記筐体内を搬送される印刷装置のコンピュータを、印刷内容が今回の印刷データにおける印刷内容と前方一致する印刷内容になるように且つ印刷内容の長さが前記所定の距離に対応した長さになるように前記今回の印刷データに基づいて予備的印刷データを作成し、前記予備的印刷データでの印刷を前記今回の印刷データでの印刷後に続けて実行させることにより、前記今回の印刷データにおける印刷内容に続けて前記今回の印刷データにおける印刷内容と同じ印刷内容のうち前記所定の距離に対応した長さ分が予備的印刷内容として前記被印刷媒体に印刷されるように制御する制御手段として機能させる、ことを特徴とする。
また、本発明に係る第2の態様のプログラムは、被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置のコンピュータを、第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御し、前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する、制御手段として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、被印刷媒体の先端に生じる無駄な余白を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】印刷装置1に収容されるテープカートリッジ30の斜視図である。
【
図3】印刷装置1のカートリッジ収納部14の斜視図である。
【
図6】従来の印刷装置における印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。
【
図7】印刷装置1が行う印刷制御の方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】印刷装置1における
図7に示す印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。
【
図9】印刷装置1が行う印刷制御の方法の別の例を示すフローチャートである。
【
図10】印刷装置1における
図9に示す印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。
【
図11】第2情報が予備情報に対して前方一致する場合の別の例を示した図である。
【
図12】印刷装置1における予備的印刷の変形例を説明するための図である。
【
図13】印刷装置100と情報処理装置200を含むシステムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。印刷装置1は、熱転写方式のサーマルプリンタであり、且つ、被印刷媒体であるテープに文字などの情報を印刷することでラベルを作成するラベルライターである。ただし、印刷装置1の印刷方式は、熱転写方式に限らない。印刷装置1は、例えば、感熱テープを使用する感熱方式など、他の方式のサーマルプリンタであってもよい。また、印刷装置1は、サーマルプリンタに限らず、例えば、インクジェットプリンタなどであってもよい。
【0015】
本明細書において、テープとは、プラスチック、紙、その他の任意の材料からなる細長く薄い部材のことである。テープは、典型的には粘着層を有し、貼り付け可能である。ただし、テープは、粘着層を有しなくてもよい。また、ラベルとは、テープを被印刷媒体として利用して、テープ上に何らかの情報を印刷したもののことである。ラベルは、典型的には情報が印刷された(テープの)部分が情報が印刷されていない(テープの)部分から切り離されたものである。ただし、ラベルは、切断されたものに限らない。
【0016】
印刷装置1は、
図1に示すように、装置筐体2と、入力部3と、表示部4と、蓋5と、を備え、さらに、装置筐体2内部にカートリッジ収納部14を備える。装置筐体2の上面には、入力部3、表示部4、及び蓋5が配置されている。また、図示しないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられていてもよい。
【0017】
入力部3は、入力キー、十字キー、変換キー、決定キーなどの種々のキーを備える。表示部4は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイなどの表示装置である。なお、表示部4にはタッチパネルユニットが設けられていてもよく、その場合、表示部4を入力部3の一部として看做してもよい。
【0018】
蓋5は、カートリッジ収納部14の上部に開閉可能に配置されている。蓋5は、ボタン5aを押下することにより開放される。蓋5には、この蓋5が閉じた状態でもカートリッジ収納部14にテープカートリッジ30(
図2参照)が収容されているか否かを目視で確認可能とするために、窓5bが形成されている。また、装置筐体2の側面には、排出口2aが形成されている。印刷装置1内で印刷が行われた被印刷媒体Mは、排出口2aから装置外へ排出される。
【0019】
図2は、印刷装置1に収納されるテープカートリッジ30の斜視図である。
図3は、印刷装置1のカートリッジ収納部14の斜視図である。
図4は、印刷装置1の断面図である。
図2に示すテープカートリッジ30は、
図3に示すカートリッジ収納部14に着脱自在に収納される。
図4には、テープカートリッジ30がカートリッジ収納部14に収納された状態が示されている。以下、
図2から
図4を参照しながら、印刷装置1の印刷部23(
図5参照)の内部機構の一例について説明する。
【0020】
テープカートリッジ30は、
図2に示すように、被印刷媒体MとインクリボンRを収容するカートリッジケース31を有している。カートリッジケース31には、テープコア32とインクリボン供給コア34とインクリボン巻取りコア35が設けられている。また、サーマルヘッド被挿入部36及び係合部37も形成されている。
【0021】
被印刷媒体Mは、カートリッジケース31内部において、テープコア32にロール状に巻かれている。被印刷媒体Mは、例えば、粘着層を有する基材と、粘着層を覆うように剥離可能に基材に貼付された剥離紙と、を有するテープである。熱転写用のインクリボンRは、その先端がインクリボン巻取りコア35に巻きつけられた状態で、カートリッジケース31内部のインクリボン供給コア34にロール状に巻かれている。
【0022】
図3に示すように、装置筐体2のカートリッジ収納部14には、テープカートリッジ30を所定の位置で支持するための複数のカートリッジ受け部15が設けられている。また、カートリッジ受け部15には、テープカートリッジ30が収容するテープ(被印刷媒体M)の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ19が設けられている。
【0023】
テープ幅検出スイッチ19は、テープカートリッジの形状に基づいて被印刷媒体Mの幅を検出するためのスイッチである。テープ幅検出スイッチ19は、カートリッジ収納部14に複数設けられている。テープ幅の異なるテープカートリッジは、複数のテープ幅検出スイッチ19をそれぞれ異なる組み合わせで押下するように構成されている。これにより、後述するプロセッサ21(
図5参照)が、押下されたテープ幅検出スイッチ19の組み合わせから、テープカートリッジの種類を特定し、被印刷媒体Mの幅(テープ幅)を検出する。
【0024】
カートリッジ収納部14には、さらに、複数の発熱素子23a(
図5参照)を有し、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷ヘッドであるサーマルヘッド10と、被印刷媒体Mを搬送する搬送部の一例であるプラテンローラ16と、テープコア係合軸17と、インクリボン巻取り駆動軸18が設けられている。サーマルヘッド10には、サーミスタ11が埋め込まれている。サーミスタ11は、サーマルヘッド10の温度を測定する。
【0025】
テープカートリッジ30がカートリッジ収納部14に収納された状態では、
図4に示すように、カートリッジケース31の係合部37がカートリッジ収納部14のカートリッジ受け部15に支持される。また、サーマルヘッド10がカートリッジケース31に形成されたサーマルヘッド被挿入部36に挿入される。また、テープコア係合軸17には、テープカートリッジ30のテープコア32が係合し、さらに、インクリボン巻取り駆動軸18には、インクリボン巻取りコア35が係合する。
【0026】
利用者が入力部3を操作することによってラベル作成指示(印刷命令)が印刷装置1に入力されると、被印刷媒体Mは、プラテンローラ16の回転によりテープコア32から繰り出される。この際、インクリボン巻取り駆動軸18がプラテンローラ16に同調して回転することで、被印刷媒体MとともにインクリボンRがインクリボン供給コア34から繰り出される。これにより、被印刷媒体MとインクリボンRは重なった状態で搬送される。そして、サーマルヘッド10とプラテンローラ16の間を通過する際にインクリボンRがサーマルヘッド10によって加熱されることで、インクが被印刷媒体Mに転写され、印刷が行われる。
【0027】
サーマルヘッド10とプラテンローラ16の間を通過した使用済みのインクリボンRは、インクリボン巻取りコア35に巻き取られる。一方、サーマルヘッド10とプラテンローラ16の間を通過した印刷済みの被印刷媒体Mは、ハーフカッター12またはフルカッター13で切断され、排出口2aから排出される。なお、ハーフカッター12とフルカッター13は、被印刷媒体Mを切断する切断装置の一例であり、
図4に示すように、それぞれ被印刷媒体Mの搬送方向に対してサーマルヘッド10よりも下流側に配置されている。
【0028】
図5は、印刷装置1のブロック図である。印刷装置1は、
図5に示すように、1つ以上のプロセッサ21と、1つ以上の記憶装置22と、印刷部23と、入力装置24と、表示装置25と、通信装置26を備えていて、それがバス27を通じて接続されている。
【0029】
1つ以上のプロセッサ21のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むハードウェアであり、記憶装置22に記憶されているプログラム22aを実行する。1つ以上のプロセッサ21は、少なくともプラテンローラ16とサーマルヘッド10を制御する印刷装置1のコントローラの一例である。
【0030】
1つ以上の記憶装置22のそれぞれは、非一時的なコンピュータ読取可能媒体であり、印刷装置1の記憶部の一例である。なお、1つ以上のプロセッサ21と1つ以上の記憶装置22は、印刷装置1のコンピュータを構成する。記憶装置22の少なくとも1つは、プログラム22aを記憶する。1つ以上のプロセッサ21は、記憶装置22に記憶されているプログラム22aを実行することで、後述する印刷制御方法を実行するコントローラであり、印刷部23が被印刷媒体Mに印刷を行ってラベルを作成する。
【0031】
印刷部23は、サーマルヘッド10を用いて被印刷媒体Mに印刷を行うための構造である。また、入力装置24と表示装置25は、それぞれ上述した入力部3と表示部4であってもよい。通信装置26は、例えば、Wi-Fi(登録商標)モジュール、BLEモジュールなどの無線通信装置であるが、有線通信装置であってもよい。
【0032】
以下では、以上のように構成された印刷装置1によって行われる、被印刷媒体Mの先端に生じる無駄な余白を削減するための印刷制御方法について説明する。
【0033】
図6は、従来の印刷装置における印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。
図7は、印刷装置1が行う印刷制御の方法の一例を示すフローチャートである。
図8は、印刷装置1における
図7に示す印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。まず、
図6を参照しながら、従来の印刷装置において被印刷媒体Mの先端に生じる余白について説明し、その後、
図7及び
図8を参照しながら、印刷装置1の第1の実施形態に係る印刷制御方法について具体的に説明する。
【0034】
従来の印刷装置において印刷命令に応じて実行される印刷制御では、サーマルヘッド10での命令に応じた情報の印刷が終了すると、被印刷媒体Mの印刷済みの領域がサーマルヘッド10よりも下流に位置するフルカッター13を通過するまで被印刷媒体Mの搬送が継続され、その後、フルカッター13によって切断される。このように、従来の印刷装置においては、印刷命令に応じた情報の印刷後に印刷を伴わない搬送が発生する。このため、印刷命令に応じて実行される印刷と搬送を含む一連の印刷制御が終了した状態では、
図6(a)に示すように、被印刷媒体Mの先端(フルカッター13)とサーマルヘッド10との間に印刷できない無駄な余白が生じてしまう。
【0035】
その後、新たな印刷命令に応じて印刷制御が開始されると、
図6(b)に示すように、被印刷媒体Mの先端の無駄な余白の一部は、新たに作成されるラベルの先端(ハーフカッター12で入れた切れ目)と印刷情報との間の必要な余白(前余白)として活用されるが、残りの多くは無駄な余白として残ってしまう。具体的には、印刷命令に応じた印刷が終了し印刷済みの領域がフルカッターを通過すると(
図6(c)参照)、被印刷媒体Mが切断されて(
図6(d)参照)、印刷制御が終了するが、作成されたラベル(テープ片TP)のうち必要な部分は、ハーフカッター12で入れた切れ目よりも後方のみであり、切れ目よりも前方の部分は無駄になってしまう。
【0036】
そこで、印刷装置1では、このような被印刷媒体Mの無駄を削減するために、
図7及び
図8に示す印刷制御を行う。なお、
図8には、新品のテープカートリッジ30を、被印刷媒体Mの先端をフルカッター13まで引き出した状態で印刷装置1に収容し、その後、初めて印刷命令が入力された場合の様子が描かれている。以降では、情報“ABCDEF”の印刷を指示する印刷命令(第1印刷命令)が入力された場合を例に説明する。なお、情報“ABCDEF”は、第1情報の一例であり、印刷命令は、第1印刷命令の一例である。
【0037】
利用者が入力部3を用いて印刷命令を印刷装置1へ入力すると、プロセッサ21は、
図7に示す印刷制御を開始する。まず、プロセッサ21は、プラテンローラ16を制御して、
図8(a)に示す状態から被印刷媒体Mの搬送を開始する(ステップS1)。さらに、プロセッサ21は、サーマルヘッド10を制御して、印刷命令に対応する印刷を開始する(ステップS2)。なお、ステップS1とステップS2の処理は時間的に並列に実行されてもよく、印刷命令が指示する印刷情報に応じてステップS1の処理の後にステップS2の処理が開始されてもよい。
【0038】
その後、プロセッサ21は、印刷の途中で、ハーフカッター12を制御して、
図8(b)に示すように、印刷領域の前方に切れ目を入れ、
図8(c)に示すように、印刷命令で指示された情報“ABCDEF”全てが印刷されると、サーマルヘッド10による印刷命令に対応する印刷を終了する。
【0039】
印刷命令に対応する印刷後、プロセッサ21は、再びサーマルヘッド10を制御して、
図8(d)に示すように、印刷命令で指示された情報“ABCDEF”に基づいて、情報“AB”を被印刷媒体Mに印刷する予備的印刷を行い(ステップS3)、その後、プラテンローラ16を制御して、被印刷媒体Mの搬送を終了する(ステップS4)。
【0040】
即ち、プロセッサ21は、第1情報(情報“ABCDEF”)の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、サーマルヘッド10による第1情報の印刷後であってプラテンローラ16による被印刷媒体Mの搬送終了前に、第1情報に基づく予備的印刷を行うように、サーマルヘッド10を制御する。なお、情報“AB”は、予備情報の一例である。より詳細には、プロセッサ21は、
図8(d)に示すように、搬送終了時においてフルカッター13とサーマルヘッド10の間に留まる被印刷媒体Mの領域、即ち、従来の印刷装置において無駄な余白となる部分に、予備的印刷を行う。
【0041】
なお、ステップS3の予備的印刷は、第1情報に基づいて行われるが、より具体的には、プロセッサ21は、例えば、
図8(d)に示すように、第1情報に基づいて、第1情報(情報“ABCDEF”)が予備的印刷で印刷される予備情報(情報“AB”)に対して前方一致するように、予備情報を作成してもよい。なお、“前方一致する”とは、検索の結果、先頭が検索語に一致する単語やフレーズが見つかることをいう。
【0042】
その後、さらに、プロセッサ21は、
図8(e)に示すように、フルカッター13を制御して、印刷命令で指示された情報“ABCDEF”(第1情報)と予備情報“AB”の間で、被印刷媒体Mを切断し、印刷命令で指示された情報が印刷されたテープ片TP(ラベル)を作成してもよい。
【0043】
以上のように、印刷装置1では、
図7に示す印刷制御を行うことで、印刷命令に応じた印刷後で搬送が終了するまでの間に予備的印刷を行うことができる。印刷装置1は、サーマルヘッド10よりも下流の領域に進んだ被印刷媒体Mの領域には印刷を行うことができないが、予備的印刷を行うことで、搬送終了までにサーマルヘッド10よりも下流まで進んでしまう被印刷媒体Mの領域に予め印刷を行うことができる。このため、有効な情報を予備的印刷で印刷することで、無駄な余白を削減することが可能となる。また、第1情報に基づいて予備的印刷を行うことで、闇雲に印刷する場合に比べて有効な情報が印刷される可能性を高めることができる。従って、高い確率で無駄な余白を削減することが可能となる。
【0044】
特に、印刷装置1では、搬送終了時にフルカッター13とサーマルヘッド10の間に留まる被印刷媒体Mの領域に予備的印刷を行うことができる。これにより、印刷装置の構造上の制約によって被印刷媒体Mの先端に生じ得る無駄な余白を削減することが可能となる。
【0045】
また、一般に、印刷装置においてある情報が印刷された場合、次に印刷される情報も同じ情報である可能性が高い。印刷装置1では、第1情報が予備情報に対して前方一致するように、予備情報が作成されるため、このような一般に可能性が高い同じ情報を連続して印刷する場合において、被印刷媒体Mの先端に生じ得る無駄な余白を削減することが可能となる。より詳細には、予備的印刷で次に印刷される情報の先頭部分を予め印刷することができるため、予備的印刷で印刷された領域を次回の印刷命令で作成するラベルの一部として活用することができる。
【0046】
なお、印刷装置1では、予備情報は元々無駄な余白として捨てられる部分に印刷される。このため、仮に、予備的印刷で印刷される予備情報が次の印刷で印刷される情報の先頭部分とは異なり、次回の印刷命令で作成するラベルの一部として活用できない場合であっても、これまでに以上に無駄な余白が生じるといった不利益はない。
【0047】
[第2の実施形態]
図9は、印刷装置1が行う印刷制御の方法の別の例を示すフローチャートである。
図10は、印刷装置1における
図9に示す印刷制御の各段階における被印刷媒体Mの状態を示した図である。以下、
図9及び
図10を参照しながら、印刷装置1の第2の実施形態に係る印刷制御方法について具体的に説明する。
【0048】
本実施形態では、印刷装置1が、予備的印刷を有効に活用できるかどうかを予備的印刷後に入力された印刷命令に基づいて判定し、判定結果に応じた処理を行う点が、第1の実施形態とは異なっている。
【0049】
なお、
図10には、
図8と同様に、新品のテープカートリッジ30を、被印刷媒体Mの先端をフルカッター13まで引き出した状態で印刷装置1に収容し、その後、初めて印刷命令が入力された場合の様子が描かれている。
【0050】
プロセッサ21は、
図9に示す印刷制御を開始すると、まず、印刷命令が入力されたか判定する(ステップS11)。印刷命令が入力されていないと判定すると(ステップS11NO)、プロセッサ21は、さらに、印刷終了が指示されたか否かを判定し(ステップS12)、印刷終了指示が入力されていない場合には(ステップS12NO)、印刷命令が入力されるまでステップS11とステップS12の処理を繰り返す。
【0051】
プロセッサ21は、印刷命令が入力されると(ステップS11YES)、印刷命令で指示された印刷の情報である印刷情報と、前回の印刷で予備印刷した情報である予備情報と、を対比する(ステップS13)。そして、プロセッサ21は、印刷情報と予備情報とを対比して、印刷情報が予備情報に対して前方一致するか否かを判定する(ステップS14)。なお、印刷情報は、例えば、情報“ABCDEF”である。また、初めて印刷が行われる場合、予備情報が存在しない。そのため、この場合、プロセッサ21は、印刷情報が予備情報に対して前方一致しないと判定する(ステップS14NO)。
【0052】
前方一致しないと判定されると(ステップS14NO)、プロセッサ21は、プラテンローラ16を制御して、
図10(a)に示す状態から被印刷媒体Mの搬送を開始し(ステップS17)、サーマルヘッド10を制御して、印刷情報を先頭(ここでは“A”)から印刷する(ステップS18)。そして、被印刷媒体Mに印刷された印刷情報の前方がフルカッター13の位置に到達すると、プロセッサ21は、フルカッター13を制御して、被印刷媒体Mを印刷情報の前方で切断する(ステップS19)。これにより、
図10(b)に示すように、無駄な余白(テープ片TP1)が切断される。なお、ステップS19の切断は、フルカッター13の代わりにハーフカッター12を用いて行われてもよい。
【0053】
その後、
図10(c)に示すように、印刷命令で指示された印刷情報の印刷が終了すると、プロセッサ21は、サーマルヘッド10を制御して、印刷情報に基づいて予備情報を印刷する予備的印刷を行う(ステップS20)。ここでは、プロセッサ21は、例えば、第1の実施形態と同様に、印刷情報に基づいて、印刷情報(情報“ABCDEF”)が予備情報(情報“AB”)に対して前方一致するように予備情報を作成してもよく、
図10(d)に示すように、作成された予備情報に基づいて、予備的印刷が行われてもよい。
【0054】
予備的印刷が終了すると、プロセッサ21は、プラテンローラ16を制御して、被印刷媒体Mの搬送を終了する(ステップS21)。搬送終了後、プロセッサ21は、フルカッター13を制御して、
図10(e)に示すように、被印刷媒体Mを切断し、印刷情報が印刷されたラベル(テープ片TP2)を作成してもよい。
【0055】
印刷命令に伴う一連の印刷制御が終了すると、プロセッサ21は、再び印刷命令の入力を監視する(ステップS11)。そして、新たな印刷命令が入力されると、プロセッサ21は、新たな印刷情報とステップS20で印刷した予備情報とを対比し(ステップS13)、印刷情報が予備情報に対して前方一致するか否かを判定する(ステップS14)。
【0056】
ここで、新たな印刷命令で印刷情報として情報“ABCDEF”が指定された場合、つまり、前回と同じ印刷情報が指定された場合には、印刷情報が予備情報に対して前方一致する(ステップS14YES)。その場合、プロセッサ21は、プラテンローラ16を制御して、
図10(e)に示す状態から被印刷媒体Mの搬送を開始し(ステップS15)、サーマルヘッド10を制御して、印刷情報の途中(ここでは“C”)から印刷する(ステップS16)。これにより、
図10(f)に示すように、予備的印刷で印刷された情報“AB”をラベルの一部として活用して、無駄な余白を削減しながら、新たなラベルを作成することができる。
【0057】
一方、新たな印刷命令で印刷情報として、例えば、情報“123456”が指定された場合、つまり、前回とは全く異なる印刷情報が指定された場合には、印刷情報が予備情報に対して前方一致しない(ステップS14NO)。その場合、プロセッサ21は、プラテンローラ16を制御して、被印刷媒体Mの搬送を開始し(ステップS17)、サーマルヘッド10を制御して、印刷情報を先頭(ここでは“1”)から印刷する(ステップS18)。そして、被印刷媒体Mに印刷情報(情報“123456”)の前方がフルカッター13の位置に到達すると、プロセッサ21は、フルカッター13を制御して、被印刷媒体Mを印刷情報の前方で切断する(ステップS19)。換言すると、プロセッサ21は、
図10(g)に示すように、予備情報と印刷情報の間で被印刷媒体Mを切断するように、フルカッター13を制御する。これにより、有効に活用できない情報(予備情報)が印刷された部分(テープ片TP3)を被印刷媒体Mから取り除く。これにより、
図10(h)に示すように、前回とは全く異なる印刷情報が指定された場合であっても、印刷情報が正しく印刷されたラベルが作成される。
【0058】
以上のように、印刷装置1では、
図9に示す印刷制御を行うことで、プロセッサ21は、ある印刷命令(第1印刷命令)後に別の印刷命令(第2印刷命令)が入力されると、別の印刷命令で指示された印刷すべき情報(第2情報)が先の印刷における予備的印刷で印刷された予備情報に対して前方一致でない場合に、印刷すべき情報(第2情報)を先頭から印刷するように、サーマルヘッド10を制御する。その一方で、印刷すべき情報(第2情報)が予備情報に対して前方一致である場合に、印刷すべき情報(第2情報)を途中から印刷するように、サーマルヘッド10を制御する。
【0059】
これにより、被印刷媒体Mに印刷された予備情報を活用できる場合には、印刷済みの予備情報を活用してラベルを作成する。その結果、無駄な余白を削減することができる。さらに、被印刷媒体Mに印刷された予備情報を活用できない場合には、印刷すべき情報を予備情報の後方から改めて印刷する。その結果、無駄な余白を削減できない場合であっても、印刷すべき情報を正しく印刷してラベルを作成することができる。このように、印刷装置1によれば、印刷すべき情報によらず、ラベルを正しく作成しながら、無駄な余白の削減に貢献することができる。
【0060】
さらに、印刷装置1では、
図9に示す印刷制御を行うことで、プロセッサ21は、ある印刷命令(第1印刷命令)後に別の印刷命令(第2印刷命令)が入力されると、別の印刷命令で指示された印刷すべき情報(第2情報)が先の印刷における予備的印刷で印刷された予備情報に対して前方一致でない場合に、被印刷媒体Mの予備情報が印刷された領域と被印刷媒体Mの第2情報が印刷された領域の間で被印刷媒体Mを切断するように、フルカッター13又はハーフカッター12を制御する。
【0061】
これにより、有効活用できない予備情報を印刷情報が印刷されたラベルから分離することができる。このため、予備情報が活用できない場合であっても、予備情報を取り除くための追加の作業を利用者に要求するなどの不利益を及ぼすことを防止することができる。
【0062】
従って、本実施形態に係る印刷制御を行うことによっても、印刷装置1によれば、第1の実施形態に係る印刷制御を行う場合と同様に、被印刷媒体の先端に生じる無駄な余白を削減することができる。
【0063】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。即ち、印刷装置、制御方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0064】
上述した実施形態では、同じ情報が印刷される場合に無駄な余白が削減される例を示したが、無駄な余白の削減は必ずしも同じ情報が印刷される場合に限らず実現可能である。例えば、
図11に示すように、最初に情報“ABCDEF”の印刷を指示する印刷命令が入力され、その次に情報“ABABA”の印刷を指示する印刷命令が入力された場合にも、予備的印刷で印刷される情報“AB”を活用してラベルを作成することができる。このように、予備的印刷後に印刷される情報が予備情報に対して前方一致している限り、予備情報を有効に活用することができるため、無駄な余白を削減することができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、予備情報に既に印刷された印刷情報の先頭部分の情報を用いる例を示したが、予備情報は、別の方法で作成されてもよい。プロセッサ21は、既に印刷された情報(第1情報)に基づいて、次の印刷命令(第2印刷命令)において印刷を指示される情報(第2情報)を予測し、その予測結果に基づいて予備情報を作成してもよい。例えば、最初の印刷命令で情報“ABCDEF”を印刷した場合、アルファベットを順番に印刷している可能性がある。このため、次の印刷命令で“GHIJK・・・”の印刷が指示されることを予測して、
図12に示すように、予備情報として情報“GH”を印刷してもよい。この場合も、前方一致で予備情報を作成する場合と同様に、無駄な余白の削減に貢献することができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、
図1に示すように、入力部3と表示部4を備える印刷装置1を例示したが、印刷装置は、入力部3と表示部4を備える、いわゆるスタンドアローンタイプの印刷装置に限らない。例えば、
図13に示すように、情報処理装置200から指示された印刷命令に従って印刷を行う印刷装置100であってもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、切断装置を有する印刷装置を例示したが、切断装置は必ずしも必要ない。切断装置を有さない印刷装置において、上述した印刷制御を行うことで、無駄な余白を削減することができる。
【0068】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよい。
【0069】
本明細書において、名詞を修飾する“第1の”、“第2の”などの用語は、名詞で表現される要素の量又は順序を限定するものではない。これらの用語は、2つ以上の要素間を区別するために用いられ、それ以下でもそれ以上でもない。従って、“第1の”と“第2の”要素が特定されていることは、“第1の”要素が“第2の”要素に先行することを意味するものではなく、また、“第3の”要素の存在を否定するものでもない。
【0070】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送部と前記印刷ヘッドを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記印刷ヘッドによる前記第1情報の印刷後であって前記搬送部による前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記2]
付記1に記載の印刷装置において、さらに、
前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記印刷ヘッドよりも下流側に配置された、前記被印刷媒体を切断する切断装置を備え、
前記コントローラは、前記搬送終了時において前記切断装置と前記印刷ヘッドの間に留まる前記被印刷媒体の領域に、前記予備的印刷を行う
ことを特徴とする印刷装置。
[付記3]
付記2に記載の印刷装置において、
前記コントローラは、前記第1印刷命令後に第2情報の印刷を指示する第2印刷命令が入力されると、
前記第2情報が前記予備的印刷で印刷された予備情報に対して前方一致でない場合に、前記第2情報を先頭から印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第2情報が前記予備情報に対して前方一致である場合に、前記第2情報を途中から印刷するように、前記印刷ヘッドを制御する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記4]
付記3に記載の印刷装置において、
前記コントローラは、前記第1印刷命令後に前記第2印刷命令が入力されると、前記第2情報が前記予備情報に対して前方一致でない場合に、前記被印刷媒体の前記予備情報が印刷された領域と前記被印刷媒体の前記第2情報が印刷された又は印刷される領域の間で前記被印刷媒体を切断するように、前記切断装置を制御する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記5]
付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の印刷装置において、
前記コントローラは、前記第1情報に基づいて、前記第1情報が前記予備的印刷で印刷される予備情報に対して前方一致するように、前記予備情報を作成する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記6]
付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の印刷装置において、
前記コントローラは、
前記第1情報に基づいて、前記第1印刷命令後の第2印刷命令において印刷を指示される第2情報を予測し、
予測結果に基づいて、前記予備的印刷で印刷される予備情報を作成する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記7]
被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置の制御方法であって、
第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御する
ことを特徴とする制御方法。
[付記8]
被印刷媒体を搬送する搬送部と前記被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備える印刷装置のコンピュータに、
第1情報の印刷を指示する第1印刷命令が入力されると、前記被印刷媒体を搬送するように、前記搬送部を制御し、且つ、前記第1情報を印刷するように、前記印刷ヘッドを制御し、
前記第1情報の印刷後で前記被印刷媒体の搬送終了前に、前記第1情報に基づく予備的印刷を行うように、前記印刷ヘッドを制御する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0071】
1、100 印刷装置
10 サーマルヘッド
12 ハーフカッター
13 フルカッター
16 プラテンローラ
21 プロセッサ
22 記憶装置
22a プログラム
M 被印刷媒体
TP テープ片