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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/10 20060101AFI20241112BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20241112BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20241112BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20241112BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20241112BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20241112BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20241112BHJP
【FI】
H01G9/10 F
H01G2/10 300
H01G9/00 290L
H01G9/02
H01G9/08 F
H01G9/10 D
H01G11/52
H01G11/80
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020163174
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055638
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】仲田 光一
(72)【発明者】
【氏名】船戸 智貴
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-306596(JP,A)
【文献】実開昭54-118638(JP,U)
【文献】特開2000-114119(JP,A)
【文献】特開2016-46389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
H01G 9/00
H01G 9/02
H01G 9/08
H01G 9/10
H01G 11/52
H01G 11/80
H01M 50/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面から内側に突出する突出部と、曲げられた開口端部材により形成される曲げ部とを含む外装ケースと、
前記外装ケースの内部に配置され、本体層と前記突出部に接触する内側被覆層とを含み、前記突出部および前記曲げ部の先端部により固定される封口板と、
を備え、
前記封口板の側面と前記外装ケースの間に隙間が形成され、
前記封口板の内側部材は、前記内側被覆層を含み前記外装ケースの内部から前記隙間にガスを透過させ、前記封口板の外側部材は、前記隙間から前記外装ケースの外部にガスを透過させ、
前記内側部材のガス透過容易性が、前記外側部材のガス透過容易性よりも大きいことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記内側被覆層のガス透過係数は、前記本体層のガス透過係数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記内側被覆層のガス透過係数は、前記外側部材に含まれる外側被覆層のガス透過係数よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記内側被覆層は、前記外側部材に含まれる外側被覆層よりも厚いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記内側被覆層が弾性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記内側被覆層はゴム層であることを特徴とする請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記突出部の先端部が、前記曲げ部の前記先端部よりも前記外装ケースの中心側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項8】
さらに、前記外装ケースの内部に配置され、端部にセパレータ端部を含むコンデンサ素子を備え、
前記外装ケースの前記突出部が、前記セパレータ端部を前記外装ケースの中心側に押し曲げることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項9】
本体層と内側被覆層とを含む封口板を形成する工程と、
ケースの側面に突出部を形成し、前記封口板の前記内側被覆層を前記突出部に接触させる工程と、
前記ケースの開口端部材を内側に曲げて曲げ部を形成し、前記突出部および前記曲げ部の先端部により前記封口板を固定するとともに前記封口板の側面と前記ケースの間に隙間を形成する工程と、
前記封口板の内側部材が、前記内側被覆層を含み前記ケースの内部から前記隙間にガスを透過させるとともに、前記封口板の外側部材が、前記隙間から前記ケースの外部にガスを透過させる工程と
を備え、
前記内側部材のガス透過容易性が、前記外側部材のガス透過容易性よりも大きいことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装ケースおよび封口板を含むコンデンサ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外装ケースおよび封口板を含むコンデンサでは、外装ケースの開口部に封口板が設置される。外装ケースが突出部とカール部などの曲げ部とを有し、封口板が突出部と曲げ部の間に挟まれて、外装ケースに固定される(たとえば、特許文献1ないし特許文献3)。外装ケースおよび封口板が電解液を外装ケースの内部に閉じ込めるので、電解液の蒸散が抑制され、コンデンサの性能が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-146430号公報
【文献】特開平8-306596号公報
【文献】特開2000-91167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンデンサの大きさを維持しつつコンデンサの容量を高めるためには、たとえば、コンデンサ素子の陽極箔の酸化被膜を薄くすることにより陽極箔と陰極箔との距離を小さくして、単位面積あたりの容量が増加される(コンデンサの高容量化)。また、コンデンサの容量を維持しつつコンデンサの大きさを小さくするためには、たとえば、コンデンサ素子の陽極箔の酸化被膜を薄くしつつ、コンデンサ素子の全体の面積を小さくする(コンデンサの小型化)。つまり、陽極箔の酸化被膜を薄くすると、コンデンサを高容量または小型にすることができる。
【0005】
外装ケースの内部に閉じ込められた電解液は少しずつ蒸散する。余剰な電解液が外装ケースの内部に閉じ込められると、コンデンサのドライアップが遅くなり、コンデンサの寿命を延ばすことができる。
【0006】
ところで、コンデンサの高容量化または小型化のために、陽極箔の酸化被膜が薄くなると、コンデンサ素子の耐電圧が低下して、外装ケースの内部でガスが発生し易くなる。外装ケースの内部のガスは、外装ケースと封口板の間の隙間および曲げ部の内部を通って、外部に排出されることになる。水平に配置された基板の上面にコンデンサが設置される場合に、余剰な電解液が外装ケースと封口板の間の隙間を通って曲げ部の内部に溜まりガスの排出を妨げないように、コンデンサの構造を工夫する必要がある、という課題がある。ガスの排出が妨げられると、外装ケースの内部の圧力が想定よりも早くに上昇し、コンデンサの安全弁が想定よりも早く開く、という課題がある。つまり、コンデンサの小型化または高容量化は、コンデンサの安全弁の適正な動作のために制限されるという課題がある。
【0007】
特許文献1ないし特許文献3には、斯かる課題の開示や示唆はなく、特許文献1ないし特許文献3に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0008】
そこで、本開示は、たとえば、封口板が外装ケースの内部の電解液よりも下側に配置されても、曲げ部の内部における電解液の滞留を抑制して、適正なガス透過経路を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の第1の側面によれば、コンデンサは、外装ケースと、封口板とを含む。外装ケースは、側面から内側に突出する突出部と、曲げられた開口端部材により形成される曲げ部とを含む。封口板は、前記外装ケースの内部に配置され、本体層と前記突出部に接触する内側被覆層とを含み、前記突出部および前記曲げ部の先端部により固定される。前記封口板の側面と前記外装ケースの間に隙間が形成され、前記封口板の内側部材は、前記内側被覆層を含み前記外装ケースの内部から前記隙間にガスを透過させ、前記封口板の外側部材は、前記隙間から前記外装ケースの外部にガスを透過させ、前記内側部材のガス透過容易性が、前記外側部材のガス透過容易性よりも大きい。
【0010】
上記コンデンサにおいて、前記内側被覆層のガス透過係数は、前記本体層のガス透過係数よりも大きくてもよい。
【0011】
上記コンデンサにおいて、前記内側被覆層のガス透過係数は、前記外側部材に含まれる外側被覆層のガス透過係数よりも大きくてもよい。
【0012】
上記コンデンサにおいて、前記内側被覆層は、前記外側部材に含まれる外側被覆層よりも厚くてもよい。
【0013】
上記コンデンサにおいて、前記内側被覆層が弾性を有してもよい。
【0014】
上記コンデンサにおいて、前記内側被覆層はゴム層でもよい。
【0015】
上記コンデンサにおいて、前記突出部の先端部が、前記曲げ部の前記先端部よりも前記外装ケースの中心側に配置されてもよい。
【0016】
上記コンデンサは、さらに前記外装ケースの内部に配置され、端部にセパレータ端部を含むコンデンサ素子を含んでもよい。前記外装ケースの前記突出部が、前記セパレータ端部を前記外装ケースの中心側に押し曲げてもよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本開示の第2の側面によれば、コンデンサの製造方法は、本体層と内側被覆層とを含む封口板を形成する工程と、ケースの側面に突出部を形成し、前記封口板の前記内側被覆層を前記突出部に接触させる工程と、前記ケースの開口端部材を内側に曲げて曲げ部を形成し、前記突出部および前記曲げ部の先端部により前記封口板を固定するとともに前記封口板の側面と前記ケースの間に隙間を形成する工程と、前記封口板の内側部材が、前記内側被覆層を含み前記ケースの内部から前記隙間にガスを透過させるとともに、前記封口板の外側部材が、前記隙間から前記ケースの外部にガスを透過させる工程とを含む。前記内側部材のガス透過容易性が、前記外側部材のガス透過容易性よりも大きい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、次のいずれかのような効果が得られる。
【0019】
(1) 内側部材のガス透過容易性が、外側部材のガス透過容易性よりも大きい。そのため、外装ケースの内部の圧力と、封口板の側面と外装ケースの間の隙間の圧力との差が小さくなり、この隙間に侵入する電解液の量を抑制することができる。
【0020】
(2) 封口板の側面と外装ケースの間の隙間に侵入する電解液の量が抑制されるので、この隙間またはカール部の内部における電解液の滞留が抑制され、適正なガス透過経路を確保することができる。
【0021】
(3) ガス透過経路の確保により、予想よりも早い圧力弁の作動が回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係るコンデンサの一例を示す図である。
図2】ガス透過容易性を説明するための図である。
図3】コンデンサの製造工程の一例を示す図である。
図4】変形例に係るコンデンサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1のAは、実施の形態に係るコンデンサの一例を示す図である。外装ケースおよび封口板の内部を示すために、図1のAにおいて、外装ケースおよび封口板が断面により示されている。図1のBは、図1のAの部分的な拡大図である。図1のB中の矢印は、ガスの流れる方向およびガスの流れ易さを示している。図1のAおよび図1のBに示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の技術が限定されるものではない。
【0024】
コンデンサ2は、たとえば電解コンデンサまたは電気二重層コンデンサである。コンデンサ2は、外装ケース12と封口板14とコンデンサ素子16と電解液18と端子部材20-1、20-2とを含んでいる。コンデンサ素子16および電解液18は外装ケース12の内部に封入され、封口板14は外装ケース12の開口部に取付けられている。端子部材20-1、20-2は封口板14に設置されている。なお、図1のAおよび図1のBに示されている電解液18は、余剰電解液である。電解液18の大部分は、コンデンサ素子16内に含浸している。
【0025】
外装ケース12は、たとえば有底筒状のアルミニウムケースである。外装ケース12はたとえばカール部22と突出部24と不図示の圧力弁とを含む。カール部22は、外装ケース12の開口部分の部材(以下、「開口端部材」という)により形成されている。つまり、カール部22は外装ケース12の開口端部に配置されている。カール部22は、曲げ部の一例である。開口端部材は、外装ケース12の側面に対して内側、つまり外装ケース12の中心側に曲げられている。そのため、カール部22は、外装ケース12に取付けられた封口板14の外側表面に対して、たとえば湾曲状に突出している。
【0026】
突出部24は、カール部22の近傍であってカール部22よりも外装ケース12の中央側に配置されている。突出部24は、外装ケース12の側面から内側に突出している。突出部24は、たとえば外装ケース12の側面の一周に形成されている。つまり、突出部24は環状の形状を有している。突出部24は、たとえば外装ケース12の加締めにより形成され、たとえば半円形状の断面形状を有している。
【0027】
封口板14は、外装ケース12の内部であって、外装ケース12の開口部に配置されて、外装ケース12を開口部で封止している。封口板14は外装ケース12の開口部の形状に応じた形状を有する。外装ケース12の開口部が円形である場合、封口板14は、たとえば開口部の内径と同じまたはわずかに小さい径を有する円盤形状を有している。そのため、封口板14の側面と外装ケース12の間には、わずかな隙間26が形成されている。封口板14はたとえば積層体であって、たとえば互いに積層された本体層28、外側被覆層30および内側被覆層32を含んでいる。
【0028】
本体層28は、たとえば紙フェノール樹脂などの樹脂を含む。紙フェノール樹脂は、積層された複数の紙基材とフェノール系樹脂とを含み、このフェノール系樹脂が紙基材に含浸することにより積層された複数の紙基材が結合している。本体層28は、外側被覆層30および内側被覆層32よりも高い剛性を有し、外側被覆層30および内側被覆層32よりも低いガス透過性を有する。本体層28は、高い剛性により封口板14に加わる圧力に対抗して封口板14の形状を維持するとともに、外装ケース12の内部の電解液18およびガスを遮断する。外装ケース12の内部のガスは、電解液18の気化により発生するガス、または外装ケース12の内部に元々存在している空気、コンデンサ2の温度上昇により発生する水素ガスなどである。本体層28は、単層であってもよく、複数層であってよい。
【0029】
外側被覆層30は、本体層28の外側表面に貼り付けられており、コンデンサ2の外側の被覆層および封口板14の外側表面を形成し、カール部22の先端部34に密着している。外側被覆層30は、たとえば樹脂層であって、たとえばポリプロピレンなどの樹脂材料を含む。そのため、外側被覆層30は、たとえば耐薬品性に優れ、ガス透過性を有し、外装ケース12の内部から、封口板14と外装ケース12の間の隙間26を通ったガスを透過させ、電解液18を遮断する。外側被覆層30は、本体層28よりも高いガス透過係数(gas permeability coefficient)を有してる。ガス透過係数は、本体層28、外側被覆層30、内側被覆層32などの部材のガスの透過のし易さを表す指標であって、部材を透過するガスの、単位厚さ、単位面積、単位時間および部材両面間の単位分圧差当たりのモル数を表す。ガス透過係数は、たとえば日本産業規格JIS K 6275-1:2009「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-ガス透過性の求め方-第1部:差圧法」およびJIS K 7126-1:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」において定義され、これらの日本産業規格に記載されている試験により求めることができる。コンデンサ2の内部では、たとえば電解液18によるガス、水素ガスなどが発生するので、本明細書において、ガス透過係数は、たとえば電解液18によるガスのガス透過係数でもよく、水素ガスのガス透過係数でもよい。
【0030】
内側被覆層32は、本体層28の内側表面に貼り付けられており、コンデンサ素子16側の被覆層および封口板14の内側表面を形成し、外装ケース12の突出部24に密着している。内側被覆層32は、たとえばゴム層であって、たとえばエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコンゴムなどのゴム材料を含む。そのため、内側被覆層32は、弾性およびガス透過性を有し、外装ケース12の内部のガスの一部を透過させ、電解液18を遮断する。このゴム材料は、たとえば日本産業規格JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準拠した硬度において、好ましくは50〔Hs〕以上85〔Hs〕以下の範囲内の硬度を有している。ゴム材料の硬度を調整することで、内側被覆層32が突出部24の形状および傾斜に応じて変形し、内側被覆層32と突出部24の密着性が高められる。また、ゴム材料の硬度を調整することで、端子部材20-1、20-2の一部が内側被覆層32に適切に食い込み、端子部材20-1、20-2と封口板14の取付け部の密封性が高められる。内側被覆層32の硬度は50〔Hs〕よりも小さくてもよく、85〔Hs〕よりも大きくてもよい。内側被覆層32の硬度は、たとえばコンデンサ2の使用環境、使用地域により異なっていてもよく、たとえば使用地域、製造地域の規格により異なっていてもよい。内側被覆層32は、たとえば外側被覆層30よりも高いガス透過係数を有してる。
【0031】
コンデンサ素子16は、たとえば第1の電極箔と第2の電極箔の間にセパレータを介在させて巻回させた巻回素子である。第1の電極箔および第2の電極箔は、それぞれコンデンサ2の第1の電極および第2の電極を形成する。コンデンサ2が電解コンデンサである場合、第1の電極箔はたとえば陽極箔であり陽極を形成し、第2の電極箔はたとえば陰極箔であり陰極を形成する。コンデンサ素子16は、素子本体部38と、電極タブ42-1、42-2とを含んでいる。電極タブ42-1、42-2はそれぞれ素子本体部38の第1の電極箔および第2の電極箔に接続されている。コンデンサ素子16には、電解液18が含浸されている。
【0032】
端子部材20-1、20-2は封口板14に設置されて、封口板14を貫いている。端子部材20-1、20-2は、アルミニウムなどの導電性部材を含み、導電性を有する。端子部材20-1、20-2の内側端部は、それぞれ電極タブ42-1、42-2に接続され、端子部材20-1、20-2がそれぞれコンデンサ2の第1電極の端子および第2電極の端子として機能する。端子部材20-1、20-2は、たとえば軸部44、頭部46、軸つば部48および外部端子50を含んでいる。頭部46は、軸部44の両端に配置され、軸つば部48は軸部44に固定されている。内側の頭部46と軸つば部48の間に電極タブ42-1または電極タブ42-2が挟まれ、外側の頭部46と軸つば部48の間に封口板14および外部端子50が挟まれている。軸つば部48が封口板14の内側表面に接触または食い込み、外部端子50が封口板14の外側表面に接触または食い込み、端子部材20-1、20-2と封口板14の接続部における密閉性が高められる。端子部材20-1、20-2の軸部44および軸つば部48はたとえばリベットであって、軸部44の端部をつぶすことで頭部46が形成される。
【0033】
外装ケース12の内部の圧力(以下、「ケース内圧力」という)が上昇すると、外装ケース12の内部のガスは、たとえば図1のBに示されている矢印に沿って流れようとする。図1のBに示されているように、封口板14が厚さ方向に内側部材14-1、内部部材14-2、および外側部材14-3に区分されると、ガスは、たとえば内側部材14-1の中、隙間26、カール部22の内部23、外側部材14-3の中を通ってコンデンサ2の外に到る。つまり、内側被覆層32を含む内側部材14-1が外装ケース12の内部から隙間26にガスを透過させ、外側被覆層30を含む外側部材14-3が、隙間26に連通するカール部22の内部23からコンデンサ2の外にガスを透過させる。内側部材14-1、隙間26、カール部22の内部23および外側部材14-3がガス透過経路を形成する。
【0034】
既述の通り、本体層28は外側被覆層30および内側被覆層32よりも低いガス透過性およびガス透過係数を有し、内側被覆層32はたとえば外側被覆層30よりも高いガス透過係数を有してる。また、図1のAおよび図1のBに示されているように、内側被覆層32は外側被覆層30よりも厚い。そのため、内側部材14-1のガス透過容易性は外側部材14-3のガス透過容易性よりも大きくなっている。内側部材14-1のガス透過容易性は、外装ケース12の内部から隙間26へのガスの透過のし易さを表す指標であり、外側部材14-3のガス透過容易性は、カール部22の内部23からコンデンサ2の外部へのガスの透過のし易さを表す指標である。ガス透過容易性が大きいと、ガスが透過し易くなる。つまり、内側部材14-1が外側部材14-3よりもガスを透過し易くなっている。
【0035】
外装ケース12の内部およびガス透過経路は、図2に示されている説明モデル90のように表すことができる。説明モデル90の第1空間92、第1部材94、第2空間96、第2部材98は、それぞれ外装ケース12の内部、内側部材14-1、カール部22の内部23および隙間26、外側部材14-3を表している。第1空間92ではガスの発生により圧力が上昇し、そのためガスが第1部材94、第2空間96、第2部材98を通って外部に流れる。第1部材94のガス透過容易性が第2部材98のガス透過容易性と同じであるとき、平衡状態において第1空間92と第2空間96の圧力差(分圧差)は、第2空間96と外部の圧力差(分圧差)と同じになる。つまり、カール部22の内部23および隙間26の圧力(以下、「隙間内圧力」という)がケース内圧力とコンデンサ2の外部の圧力(以下、「外部圧力」という)の中間圧力〔(ケース内圧力+外部圧力)/2〕になる。第1部材94のガス透過容易性が第2部材98のガス透過容易性に対して大きくなるにつれて、第2空間96の圧力、つまり隙間内圧力は高くなる。高い隙間内圧力は、ケース内圧力と隙間内圧力の差を小さくし、隙間26への電解液18の侵入を妨げるように作用する。そのため、封口板14の内側部材14-1のガス透過容易性を外側部材14-3のガス透過容易性よりも大きくすることで、隙間26またはカール部22の内部23における電解液18の滞留が抑制できる。
【0036】
図2の説明モデル90において、ガス透過容易性は、ガス透過係数と、ガスの流れ方向に垂直な面の面積Sに比例し、ガスの流れ方向における部材の厚さTに反比例する。以下の調整要素(1)から調整要素(3)により内側部材14-1のガス透過容易性を大きくすることができ、以下の調整要素(4)から調整要素(6)により外側部材14-3のガス透過容易性を小さくすることができ、最終的に内側部材14-1のガス透過容易性が外側部材14-3のガス透過容易性よりも大きくなるように内側部材14-1または外側部材14-3が調整される。
調整要素(1): 内側被覆層32のガス透過係数を大きくする。
調整要素(2): 内側被覆層32を厚くする(本体層28よりも大きなガス透過係数を有する内側被覆層32の面積Sの拡大)。
調整要素(3): 外装ケース12の内部と隙間26の間の距離を短くする(厚さTの短縮)。
調整要素(4): 外側被覆層30のガス透過係数を小さくする。
調整要素(5): 外側被覆層30を薄くする(本体層28よりも大きなガス透過係数を有する外側被覆層30の面積Sの縮小)。
調整要素(6): カール部22の内部23とコンデンサ2の外部の間の距離を長くする(厚さTの延長)。
コンデンサ2では、内側被覆層32のガス透過係数が外側被覆層30のガス透過係数のたとえば約4倍であり、内側被覆層32が外側被覆層30よりもたとえば約4倍厚く、上記調整要素(1)、(2)、(4)、(5)により最終的に内側部材14-1のガス透過容易性が外側部材14-3のガス透過容易性よりも大きくされている。なお、記述のガス透過係数および厚さの倍数は約4倍に限らず、4倍よりも小さくてもよく、大きくてもよい。外側部材14-3に対して内側部材14-1をガスが透過し易くなるほど、隙間内圧力が高くなり、ガスの侵入の抑制効果を大きくできる。
【0037】
図3は、コンデンサの製造工程の一例を示している。コンデンサの製造工程は、本開示のコンデンサの製造方法の一例であって、部品の形成工程と、コンデンサ素子16および封口板14の挿入工程と、突出部24の形成工程と、カール部22の形成工程とを含んでいる。図3において、部品の形成工程の図示が省略されている。
【0038】
部品の形成工程では、外装ケース12の半製品(以下、「ケース13」という)、封口板14、コンデンサ素子16および端子部材20-1、20-2が形成される。ケース13の形成工程では、たとえばアルミニウムなどの金属材料をプレス加工、インパクト加工などの加工技術で加工して、ケース13が得られる。得られたケース13は、カール部22および突出部24を含まない。
【0039】
封口板14の形成工程では、たとえば積層された紙基材にフェノール系樹脂溶液を含浸させ、加熱や乾燥により紙基材およびフェノール系樹脂溶解液を硬化させて本体層28を形成する。フェノール系樹脂溶解液は、たとえばアルコールなどの溶剤とこの溶剤に溶解された架橋前のフェノール樹脂とを含む。本体層28にポリプロピレンフィルムなどの外側被覆層30およびゴム板などの内側被覆層32を重ね、重ねた本体層28、外側被覆層30および内側被覆層32を加熱圧着して積層体を得る。この積層体をたとえば剪断刃によって所定の形状に打ち抜き、ドリルにより貫通孔を形成して、封口板14を得る。
【0040】
コンデンサ素子16の形成工程では、第1の電極箔と第2の電極箔の間にセパレータを介在させてこれらを巻回して、コンデンサ素子16を形成する。コンデンサ素子16には、電解液18が含浸される。
【0041】
端子部材20-1、20-2の形成工程では、たとえばアルミニウムなどの金属材料をプレス加工、インパクト加工などの加工技術で加工して、軸部44および軸つば部48を有する端子部材20-1、20-2の半製品が得られる。軸部44の一端を封口板14および外部端子50の貫通孔に通した後に、軸部44の一端をつぶして頭部46を形成し、軸部44の他端を電極タブ42-1または電極タブ42-2の貫通孔に通した後に、軸部44の他端をつぶして頭部46を形成する。頭部46の形成により、封口板14および電極タブ42-1、42-2に接続された端子部材20-1、20-2が得られる。つまり、コンデンサ素子16が端子部材20-1、20-2および封口板14に接続される。
【0042】
コンデンサ素子16および封口板14の挿入工程では、図3のAに示すように、コンデンサ素子16および端子部材20-1、20-2が設置された封口板14がケース13の内部に挿入される。コンデンサ素子16はケース13の内部の奥側に配置され、封口板14は、ケース13の開口側に配置される。
【0043】
突出部24の形成工程では、図3のBに示すように、溝ローラ54でケース13を側面側から1周り加締めて、突出部24を形成する。図3のBに示すように、ケース13を回転させて溝ローラ54をケース13に対して1周りさせてもよく、ケース13の側面に沿って溝ローラ54を移動させて溝ローラ54をケース13に対して1周りさせてもよい。
【0044】
カール部22の形成工程では、図3のCに示すように、カールローラ56でケース13の開口端部材を内側に曲げて、カール部22を形成する。図3のCに示すように、ケース13を回転させてカールローラ56をケース13に対して1周りさせてもよく、ケース13の開口に沿ってカールローラ56を移動させてカールローラ56をケース13に対して1周りさせてもよい。カール部22の先端部34が封口板14に食い込み、封口板14が突出部24に押し付けられる。これにより、カール部22の先端部34および突出部24が封口板14に密着するとともに封口板14を固定する。カール部22および突出部24がケース13に形成されて、外装ケース12が得られる。
【0045】
実施の形態によれば、次のような作用または効果が得られる。
【0046】
(1) 封口板14の内側部材14-1のガス透過容易性が、外側部材14-3のガス透過容易性よりも大きい。そのため、ケース内圧力と隙間内圧力との差が小さくなり、この隙間26に侵入する電解液18の量を抑制することができる。
【0047】
(2) 隙間26に侵入する電解液18の量が抑制されるので、この隙間26またはカール部22の内部23における電解液18の滞留が抑制され、適正なガス透過経路を確保することができる。ガス透過経路の確保により、予想よりも早い圧力弁の作動が回避できる。
【0048】
(3) 内側被覆層32の硬度がたとえば50〔Hs〕以上85〔Hs〕以下の範囲内であると、内側被覆層32の突出部24との接触部分が突出部24の形状に一致するように変形して、封口板14と突出部24の密着性が高められる。
【0049】
上記実施の形態について、特徴事項、利点または変形例等を以下に列挙する。
【0050】
(1) 上記実施の形態では、コンデンサ素子16に電解液18を含浸して電解コンデンサを形成した。しかしながら、コンデンサ2は電解コンデンサに限らず、たとえば導電性高分子を含浸したコンデンサ素子16に電解液18を含浸させるハイブリッド型コンデンサでもよい。
【0051】
(2) 突出部24は、たとえば外装ケース12の加締めおよび座屈により形成され、図4に示すように、半円形状よりも鋭い断面形状を有し、たとえば先端部36が丸められた二等辺三角形の断面形状を有していてもよい。突出部24が半円形状よりも鋭い断面形状を有すると、封口板14に対する突出部24の角度が小さくなり、突出部24に対する封口板14の密接性が高められる。また、図4に示すように、突出部24の先端部36、つまり突出部24の最内周部分は、カール部22の先端部34よりも外装ケース12の中心側に配置されていてもよい。突出部24の先端部36がカール部22の先端部34よりも外装ケース12の中心側に配置されていると、封口板14に対する先端部34の接点の延長線上(つまり、図4に示されている加圧線LI上)およびその近傍において、封口板14の反対表面(内側表面)が突出部24に支えられ、カール部22の先端部34を封口板14に一層食い込ませることができる。また、突出部24の突出長さLが外装ケース12の内側面からカール部22の先端部34までの距離Dよりも大きくなるので、突出部24に対する封口板14の密着領域が拡大する。封口板14と突出部24の間の密着性が向上し、封口板14と外装ケース12の間の隙間26に侵入する電解液18の量を一層抑制することができる。
【0052】
(3) 図4に示すように、突出部24がコンデンサ素子16の端部に配置されたセパレータ端部40を外装ケース12の中心側に押し曲げてもよい。セパレータ端部40は、第1の電極箔および第2の電極箔の端部から突出するセパレータを含み、第1の電極箔および第2の電極箔の接触を防止する。突出部24がセパレータ端部40を押し曲げると、セパレータ端部40が、封口板14と突出部24の密着領域、または封口板14と外装ケース12の間の隙間26から離間され、セパレータを伝う電解液18がセパレータから離れ難くなり、隙間26に侵入する電解液18の量がさらに抑制される。
【0053】
(4) 上記実施の形態では、外側被覆層30がたとえば樹脂材料であり、内側被覆層32がたとえばゴム材料であり、内側被覆層32が外側被覆層30の材料とは異なる材料を有している。しかしながら内側被覆層32および外側被覆層30が同じ材料であってもよい。外側被覆層30が省略されていてもよく、外側被覆層30は樹脂材料とは異なる材料から作られていてもよい。また、内側被覆層32は弾性およびガス透過性を有していればよく、ゴム材料とは異なる材料から作られていてもよい。封口板14の内側に形成される内側被覆層32に弾性が備わることで、封口板14と突出部24の間の密着性が向上し、封口板14と外装ケース12の間の隙間26に侵入する電解液18の量を抑制することができる。
【0054】
(5) 外装ケース12、封口板14の本体層28、コンデンサ素子16および端子部材20-1、20-2の形成材料は、上記材料に限定されることなく、適宜変更してもよい。
【0055】
(6) 上記実施の形態では、コンデンサ素子16、封口板14などがケース13の内部に挿入された後、突出部24が形成されている。しかしながら、コンデンサ素子16、封口板14などが、突出部24を有するケース13の内部に挿入され、ケース13の内部でコンデンサ素子16に電解液18が含浸されてもよい。電解液18が含浸される前のコンデンサ素子16は、電解液18が含浸されたコンデンサ素子16の外径よりも小さい外径を有し、突出部24を有するケース13に挿入可能である。
【0056】
(7) 上記実施の形態では、コンデンサ2が曲げ部として湾曲状のカール部22を含んでいる。しかしながら、曲げ部は、たとえば封口板14の外側表面に沿うようにL字状に折曲げられた折曲げ部でもよい。このようにすることで、外装ケース12の高さを低くすることができる。また、封口板14の外側表面の外周側を面で押圧するため、より封口板14の内側表面と突出部24が密着する。また、曲げ部は、角を有するU字状に折曲げられた折曲げ部でもよい。
【0057】
(8) 上記実施の形態では、本体層28が外側被覆層30および内側被覆層32よりも高い剛性を有することで、封口板14に加わる圧力に対抗して封口板14の形状を維持させたが、内側被覆層32や外側被覆層30に剛性を備えさせることで、封口板14の形状を維持させてもよい。
【0058】
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本開示の技術は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の技術は、広く電子機器に利用でき、有用である。
【符号の説明】
【0060】
2 コンデンサ
12 外装ケース
13 ケース
14 封口板
14-1 内側部材
14-2 内部部材
14-3 外側部材
16 コンデンサ素子
18 電解液
20-1、20-2 端子部材
22 カール部
23 内部
24 突出部
26 隙間
28 本体層
30 外側被覆層
32 内側被覆層
34 先端部
36 先端部
38 素子本体部
40 セパレータ端部
42-1、42-2 電極タブ
44 軸部
46 頭部
48 軸つば部
50 外部端子
54 溝ローラ
56 カールローラ
図1
図2
図3
図4