(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】燃料供給量制御装置、ボイラシステム、および、燃料供給量制御方法
(51)【国際特許分類】
F23N 1/00 20060101AFI20241112BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20241112BHJP
F23C 1/00 20060101ALI20241112BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F23N1/00 113Z
F22B35/00 A
F23C1/00 301
F23N1/00 116
F23N5/00 U
(21)【出願番号】P 2020170651
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直史
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-055308(JP,A)
【文献】特開2008-082651(JP,A)
【文献】特開2010-203710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00-5/26
F23C 1/00-99/00
F22B 35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラに対する
第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、前記ボイラに供給する
前記第1固体燃料と第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、前記ボイラに供給する前記第1固体燃料の流量を算出する第1流量算出部と、
前記第1流量算出部によって算出された前記第1固体燃料の流量、前記熱量混焼率、前記第1固体燃料の熱量、および、前記第2固体燃料の熱量に基づいて、前記ボイラに供給する前記第2固体燃料の流量を算出する第2流量算出部と、
を備え
、
前記第1固体燃料は石炭であり、前記第2固体燃料はバイオマス燃料である燃料供給量制御装置。
【請求項2】
前記第1流量算出部は、前記燃料流量指令値、前記熱量混焼率に加えて、前記第1固体燃料を前記ボイラに供給する第1燃料供給部の台数に基づいて、前記第1固体燃料の流量を算出する請求項1に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項3】
前記熱量混焼率は、前記第1固体燃料および前記第2固体燃料の熱量に占める前記第2固体燃料の熱量の割合であり、
前記第1流量算出部は、
第1固体燃料の流量=燃料流量指令値×{(100-熱量混焼率)/100}/第1燃料供給部の台数 …式(A)
に基づいて、前記第1固体燃料の流量を算出する請求項2に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項4】
前記第2流量算出部は、
前記第1流量算出部によって算出された前記第1固体燃料の流量、前記熱量混焼率に加えて、前記第2固体燃料を前記ボイラに供給する第2燃料供給部の台数に基づいて、前記第2固体燃料の流量を算出する請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項5】
前記熱量混焼率は、前記第1固体燃料および前記第2固体燃料の熱量に占める前記第2固体燃料の熱量の割合であり、
前記第2流量算出部は、算出された前記第1固体燃料の流量に補正値を
乗算して、前記第2固体燃料の流量を算出し、
前記補正値は、
補正値={熱量混焼率/(100-熱量混焼率)}×(第1固体燃料の熱量/第2固体燃料の熱量)×(第1燃料供給部の台数/第2燃料供給部の台数) …式(B)
に基づいて算出される請求項1から4のいずれいか1項に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項6】
ボイラと、
前記ボイラに第1固体燃料を供給する第1燃料供給部と、
前記ボイラに第2固体燃料を供給する第2燃料供給部と、
前記ボイラに対する
前記第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、前記ボイラに供給する
前記第1固体燃料と
前記第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、前記ボイラに供給する前記第1固体燃料の流量を算出する第1流量算出部と、前記
第1流量算出部によって算出された前記第1固体燃料の流量、前記熱量混焼率、前記第1固体燃料の熱量、および、前記第2固体燃料の熱量に基づいて、前記ボイラに供給する前記第2固体燃料の流量を算出する第2流量算出部と、を含む燃料供給量制御装置と、
を備え
、
前記第1固体燃料は石炭であり、前記第2固体燃料はバイオマス燃料であるボイラシステム。
【請求項7】
前記第1燃料供給部は、前記第1固体燃料を粉砕する粉砕部を備え、
前記第2燃料供給部は、前記第2固体燃料を粉砕する粉砕部を備える請求項
6に記載のボイラシステム。
【請求項8】
ボイラに対する
第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、前記ボイラに供給する
前記第1固体燃料と第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、前記ボイラに供給する前記第1固体燃料の流量を算出する工程と、
算出された前記第1固体燃料の流量、前記熱量混焼率、前記第1固体燃料の熱量、および、前記第2固体燃料の熱量に基づいて、前記ボイラに供給する前記第2固体燃料の流量を算出する工程と、
を含
み、
前記第1固体燃料は石炭であり、前記第2固体燃料はバイオマス燃料である燃料供給量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料供給量制御装置、ボイラシステム、および、燃料供給量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量を削減するために、石炭に加えてバイオマス燃料をボイラで燃焼させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された石炭およびバイオマス燃料のように、熱量が異なる複数種類の固体燃料を混焼させる際、予め設定された熱量混焼率(熱量換算の混焼率)となるように、固体燃料ごとにボイラへの供給流量を制御する技術の開発が希求されている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑み、予め設定された熱量混焼率となるように、固体燃料ごとにボイラへの供給流量を制御することが可能な燃料供給量制御装置、ボイラシステム、および、燃料供給量制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る燃料供給量制御装置は、ボイラに対する第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、ボイラに供給する第1固体燃料と第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、ボイラに供給する第1固体燃料の流量を算出する第1流量算出部と、第1流量算出部によって算出された第1固体燃料の流量、熱量混焼率、第1固体燃料の熱量、および、第2固体燃料の熱量に基づいて、ボイラに供給する第2固体燃料の流量を算出する第2流量算出部と、を備え、第1固体燃料は石炭であり、第2固体燃料はバイオマス燃料である。
【0007】
また、第1流量算出部は、燃料流量指令値、熱量混焼率に加えて、第1固体燃料をボイラに供給する第1燃料供給部の台数に基づいて、第1固体燃料の流量を算出してもよい。
【0008】
また、熱量混焼率は、第1固体燃料および第2固体燃料の熱量に占める第2固体燃料の熱量の割合であり、第1流量算出部は、第1固体燃料の流量=燃料流量指令値×{(100-熱量混焼率)/100}/第1燃料供給部の台数 …式(A)に基づいて、第1固体燃料の流量を算出してもよい。
【0009】
また、第2流量算出部は、第1流量算出部によって算出された第1固体燃料の流量、熱量混焼率に加えて、第2固体燃料をボイラに供給する第2燃料供給部の台数に基づいて、第2固体燃料の流量を算出してもよい。
【0010】
また、熱量混焼率は、第1固体燃料および第2固体燃料の熱量に占める第2固体燃料の熱量の割合であり、第2流量算出部は、算出された第1固体燃料の流量に補正値を乗算して、第2固体燃料の流量を算出し、補正値は、補正値={熱量混焼率/(100-熱量混焼率)}×(第1固体燃料の熱量/第2固体燃料の熱量)×(第1燃料供給部の台数/第2燃料供給部の台数) …式(B)に基づいて算出されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るボイラシステムは、ボイラと、ボイラに第1固体燃料を供給する第1燃料供給部と、ボイラに第2固体燃料を供給する第2燃料供給部と、ボイラに対する第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、ボイラに供給する第1固体燃料と第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、ボイラに供給する第1固体燃料の流量を算出する第1流量算出部と、第1流量算出部によって算出された第1固体燃料の流量、熱量混焼率、第1固体燃料の熱量、および、第2固体燃料の熱量に基づいて、ボイラに供給する第2固体燃料の流量を算出する第2流量算出部と、を含む燃料供給量制御装置と、を備え、第1固体燃料は石炭であり、第2固体燃料はバイオマス燃料である。
【0013】
また、第1燃料供給部は、第1固体燃料を粉砕する粉砕部を備え、第2燃料供給部は、第2固体燃料を粉砕する粉砕部を備えてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る燃料供給量制御方法は、ボイラに対する第1固体燃料の目標流量である燃料流量指令値、および、ボイラに供給する第1固体燃料と第2固体燃料との熱量混焼率に基づいて、ボイラに供給する第1固体燃料の流量を算出する工程と、算出された第1固体燃料の流量、熱量混焼率、第1固体燃料の熱量、および、第2固体燃料の熱量に基づいて、ボイラに供給する第2固体燃料の流量を算出する工程と、を含み、第1固体燃料は石炭であり、第2固体燃料はバイオマス燃料である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、予め設定された熱量混焼率となるように、固体燃料ごとにボイラへの供給流量を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係るボイラシステムを説明する図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る目標流量算出部を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る出力補正部を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る燃料供給量制御方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
[ボイラシステム100]
図1は、本実施形態に係るボイラシステム100を説明する図である。なお、
図1中、破線の矢印は、石炭、バイオマス燃料、および、蒸気の流れを示す。また、
図1中、実線の矢印は、信号の流れを示す。
【0019】
図1に示すように、ボイラシステム100は、燃料供給部110と、ボイラ120と、タービン130と、発電機140と、燃料供給量制御装置200とを含む。本実施形態において、ボイラシステム100は、3台の燃料供給部110を備える。
【0020】
燃料供給部110は、ボイラ120に固体燃料を供給する。燃料供給部110は、搬送部112と、粉砕部114とを含む。搬送部112は、例えば、コンベアである。搬送部112は、貯蔵場から粉砕部114に固体燃料を搬送する。粉砕部114(ミル)は、固体燃料を粉砕する。粉砕された固体燃料は、ボイラ120に気流搬送される。
【0021】
本実施形態において、3台の燃料供給部110のうち、2台の燃料供給部110は、ボイラ120に石炭(第1固体燃料)を供給する燃料供給部110A(第1燃料供給部)として機能する。また、残りの1台の燃料供給部110は、ボイラ120にバイオマス燃料(第2固体燃料)を供給する燃料供給部110B(第2燃料供給部)として機能する。
【0022】
燃料供給部110Aは、後述する燃料供給量制御装置200から出力されたミルマスタ指令MMD[t/h]で石炭を供給する。
【0023】
石炭は、無煙炭、半無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、および、褐炭のうちのいずれか1である。
【0024】
燃料供給部110Bは、燃料供給量制御装置200から出力されたバイオミルマスタ指令BMMD[t/h]でバイオマス燃料を供給する。
【0025】
バイオマス燃料は、木質系バイオマス、草本系バイオマスおよび、廃棄物系バイオマスのうちのいずれか1または複数がペレットに加工されたものである。木質系バイオマスは、例えば、木材チップ、おがくず、樹皮等である。また、草本系バイオマスは、例えば、麦わら、稲わら等である。廃棄物系バイオマスは、例えば、パーム椰子からパーム油を生産した結果生じるパーム椰子殻(PKS:Palm Kernel Shell)、空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)等である。
【0026】
ボイラ120は、石炭およびバイオマス燃料を混焼させる。ボイラ120は、燃焼熱によって蒸気を生成する。蒸気は、タービン130に導かれる。タービン130は、蒸気が有するエネルギーを回転エネルギーに変換する。発電機140は、タービン130と同軸で接続されている。発電機140は、タービン130から伝達された回転エネルギーによって発電する。
【0027】
燃料供給量制御装置200は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。燃料供給量制御装置200は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。
【0028】
本実施形態において、燃料供給量制御装置200は、目標流量算出部210、第1流量算出部220、補正値算出部230、出力補正部240として機能する。
【0029】
目標流量算出部210は、燃料流量指令値FRDおよび実燃料流量FRCに基づき、目標流量FRT[t/h]を算出する。燃料流量指令値FRDは、ボイラ120に対して決定される値である。燃料流量指令値FRDは、発電機140による目標発電量を満たすために必要な、ボイラ120に供給する石炭の流量を示す指令値[t/h]である。換言すれば、燃料流量指令値FRDは、石炭100%でボイラ120を稼動させる場合に、目標発電量を満たす石炭の流量を示す指令値である。実燃料流量FRCは、現在ボイラ120に供給されている固体燃料(石炭およびバイオマス燃料)の流量[t/h]を石炭の流量に換算した値である。
【0030】
図2は、本実施形態に係る目標流量算出部210を説明する図である。
図2に示すように、目標流量算出部210は、減算部212と、PI調整部214とを含む。減算部212は、燃料流量指令値FRDと、実燃料流量FRCとの差分(偏差)を算出する。本実施形態において、減算部212は、燃料流量指令値FRDから実燃料流量FRCを減算する。PI調整部214は、減算部212によって算出された偏差が0(ゼロ)になるようにPI制御により出力値(目標流量FRT)を変化させる。PI調整部214は、第1流量算出部220に目標流量FRTを出力する。
【0031】
図1に戻って説明すると、第1流量算出部220は、目標流量FRT、熱量混焼率[%]、および、燃料供給部110Aの台数(ここでは、2)に基づいて、1台の燃料供給部110Aからボイラ120に供給する石炭の流量(ミルマスタ指令MMD)[t/h]を算出する。
【0032】
本実施形態において、第1流量算出部220は、下記式(1)からミルマスタ指令MMDを算出する。
ミルマスタ指令MMD=目標流量FRT×{(100-熱量混焼率)/100}/燃料供給部110Aの台数 …式(1)
上記熱量混焼率は、石炭およびバイオマス燃料の熱量(ボイラ120に供給される固体燃料全体の熱量)に占めるバイオマス燃料の熱量の割合である。熱量混焼率は、予め設定される値である。
【0033】
第1流量算出部220によって算出されたミルマスタ指令MMDは、複数の出力補正部240それぞれに出力される。
【0034】
補正値算出部230は、ミルマスタ指令MMDを補正するための補正値CVを算出する。補正値算出部230は、下記式(2)から補正値CVを算出する。
補正値CV={熱量混焼率/(100-熱量混焼率)}×(石炭の熱量/バイオマス燃料の熱量)×(燃料供給部110Aの台数/燃料供給部110Bの台数) …式(2)
上記石炭の熱量[kJ/kg]およびバイオマス燃料[kJ/kg]の熱量は、熱量分析等によって予め測定された値である。補正値算出部230によって算出された補正値CVは、複数の出力補正部240それぞれに出力される。
【0035】
出力補正部240は、燃料供給部110の台数分(ここでは、3つ)設けられる。なお、
図1において、出力補正部240Aは、燃料供給部110Aに流量を出力する出力補正部240を示す。また、
図2において、出力補正部240Bは、燃料供給部110Bに流量を出力する出力補正部240を示す。
【0036】
出力補正部240は、出力先が燃料供給部110Bである場合、入力されたミルマスタ指令MMDを補正する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る出力補正部240を説明する図である。
図3に示すように、出力補正部240は、入力切替部242と、変化率制限部244と、
乗算部246とを含む。
【0038】
入力切替部242には、補正値CV、および、固定値FV(ここでは、1.0)が入力される。入力切替部242は、出力補正部240の出力先に応じて入力値を切り替える。本実施形態において、入力切替部242は、出力先が燃料供給部110Aである場合、つまり、出力補正部240Aの入力切替部242である場合、入力を固定値FVに切り替える。また、入力切替部242は、出力先が燃料供給部110Bである場合、つまり、出力補正部240Bの入力切替部242である場合、入力を補正値CVに切り替える。そして、入力切替部242は、入力された値を変化率制限部244に出力する。
【0039】
変化率制限部244は、入力値の変化率(上昇率および下降率)を制限して出力する。例えば、固定値FVが補正値CV未満である場合であって、入力値が固定値FVから補正値CVに切り替わる場合、変化率制限部244は、固定値FVから補正値CVまで一定の上昇率で出力値を漸増させる。また、固定値FVが補正値CV未満である場合であって、入力値が補正値CVから固定値FVに切り替わる場合、変化率制限部244は、補正値CVから固定値FVまで一定の下降率で出力値を漸減させる。変化率制限部244を備えることにより、燃料供給部110の安定化を図ることができる。
【0040】
乗算部246は、変化率制限部244の出力と、ミルマスタ指令MMDとを乗算する。つまり、出力補正部240が出力補正部240Aとして機能する場合、乗算部246は、ミルマスタ指令MMDに固定値FVを乗算する。このため、出力補正部240Aは、ミルマスタ指令MMDをそのまま燃料供給部110Aに出力する。
【0041】
一方、出力補正部240が出力補正部240Bとして機能する場合、乗算部246は、ミルマスタ指令MMDに補正値CVを乗算する。このため、出力補正部240Bは、ミルマスタ指令MMDに補正値CVが乗算されたバイオミルマスタ指令BMMD[t/h]を燃料供給部110Bに出力する。つまり、出力補正部240Bは、目標流量FRT、熱量混焼率、石炭の熱量、バイオマス燃料の熱量、および、燃料供給部110Bの台数(ここでは、1)に基づいて、ボイラ120に供給するバイオマス燃料の流量(バイオミルマスタ指令BMMD)を算出する第2流量算出部として機能する。
【0042】
[燃料供給量制御方法]
また、上記燃料供給量制御装置200を用いた燃料供給量制御方法が提供される。
図4は、本実施形態に係る燃料供給量制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、燃料供給量制御方法は、第1流量算出工程S110と、第1流量出力工程S120、補正値算出工程S130と、第2流量出力工程S140とを含む。
【0043】
[第1流量算出工程S110]
第1流量算出工程S110は、第1流量算出部220が、目標流量FRT、熱量混焼率、および、燃料供給部110Aの台数に基づいて、1台の燃料供給部110Aからボイラ120に供給するミルマスタ指令MMDを算出する工程である。
【0044】
[第1流量出力工程S120]
第1流量出力工程S120は、出力補正部240Aが、第1流量算出工程S110で算出されたミルマスタ指令MMDを燃料供給部110Aに出力する工程である。
【0045】
[補正値算出工程S130]
補正値算出工程S130は、補正値算出部230が、熱量混焼率、石炭の熱量、バイオマス燃料の熱量、燃料供給部110Aの台数、および、燃料供給部110Bの台数に基づいて、補正値CVを算出する工程である。
【0046】
[第2流量出力工程S140]
第2流量出力工程S140では、まず、出力補正部240Bが、第1流量算出工程S110で算出されたミルマスタ指令MMDに、補正値算出工程S130で算出された補正値CVを乗算してバイオミルマスタ指令BMMDを算出する。そして、出力補正部240Bは、算出したバイオミルマスタ指令BMMDを燃料供給部110Bに出力する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料供給量制御装置200、および、これを用いた燃料供給量制御方法は、予め設定された熱量混焼率となるように、固体燃料ごとにボイラ120への供給流量を制御することが可能となる。
【0048】
また、燃料供給量制御装置200は、補正値算出部230および出力補正部240Bを備える。これにより、燃料供給量制御装置200は、ミルマスタ指令MMDに補正値CVを乗算するだけといった簡易な処理でバイオミルマスタ指令BMMDを算出することができる。
【0049】
また、燃料供給量制御装置200は、入力切替部242を有する出力補正部240を備える。これにより、燃料供給量制御装置200は、燃料供給部110に供給される固体燃料が石炭からバイオマス燃料に切り替わった場合、または、燃料供給部110に供給される固体燃料がバイオマス燃料から石炭に切り替わった場合に、出力値を容易に切り替えることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、上述した実施形態において、第1固体燃料として石炭を例に挙げ、第2固体燃料としてバイオマス燃料を例に挙げた。しかし、第1固体燃料と第2固体燃料とは単位熱量が異なれば、種類に限定はない。例えば、第1固体燃料および第2固体燃料は、異なる種類のバイオマス燃料(例えば、木質系バイオマスと廃棄物系バイオマス)であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、燃料供給部110が粉砕部114を備える場合を例に挙げた。しかし、燃料供給部110は、粉砕部114を備えずともよい。例えば、ボイラ120が循環流動層ボイラ(CFBボイラ)である場合、粉砕部114を備えずともよい。
【0053】
また、上記実施形態において、第1流量算出部220が、燃料流量指令値、熱量混焼率、および、燃料供給部110Aの台数に基づいてミルマスタ指令MMDを算出する場合を例に挙げた。しかし、燃料供給部110Aが1台である場合、第1流量算出部220は、燃料流量指令値、および、熱量混焼率に基づいて、ミルマスタ指令MMDを算出してもよい。同様に、上記実施形態において、補正値算出部230が、熱量混焼率、石炭の熱量、バイオマス燃料の熱量、燃料供給部110Aの台数、および、燃料供給部110Bの台数に基づいて、補正値CVを算出する場合を例に挙げた。しかし、燃料供給部110Aと燃料供給部110Bとが同数である場合、補正値算出部230は、熱量混焼率、石炭の熱量、および、バイオマス燃料の熱量に基づいて、補正値CVを算出してもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、第2流量算出部として機能する出力補正部240Bが、第1流量算出部220が算出したミルマスタ指令MMDに補正値CVを乗算してバイオミルマスタ指令BMMDを算出する場合を例に挙げた。しかし、第2流量算出部は、燃料流量指令値FRD(目標流量FRT)、熱量混焼率、第1固体燃料の熱量、第2固体燃料の熱量、および、燃料供給部110Bの台数に基づいて、バイオミルマスタ指令BMMDを算出できれば、算出方法に限定はない。
【0055】
例えば、第2流量算出部は、下記式(3)に基づいて、バイオミルマスタ指令BMMDを算出してもよい。
【0056】
バイオミルマスタ指令BMMD=目標流量FRT×(熱量混焼率/100)×(石炭の熱量/バイオマス燃料の熱量)/燃料供給部110Bの台数 …式(3)
【0057】
また、燃料供給部110Bが1台である場合、第2流量算出部は、燃料流量指令値、熱量混焼率、石炭の熱量、および、バイオマス燃料の熱量に基づいて、第2固体燃料の流量を算出してもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、熱量混焼率が、第1固体燃料および第2固体燃料の熱量に占める第2固体燃料の熱量の割合である場合を例に挙げた。しかし、熱量混焼率は、第1固体燃料および第2固体燃料の熱量に占める第1固体燃料の熱量の割合であってもよい。この場合、第1流量算出部220は、
第1固体燃料の流量=燃料流量指令値×(熱量混焼率/100)/第1燃料供給部の台数 …式(4)
に基づいて、第1固体燃料の流量を算出するとよい。
【0059】
同様に、補正値算出部230は、
補正値={(100-熱量混焼率)/熱量混焼率}×(第1固体燃料の熱量/第2固体燃料の熱量)×(第1燃料供給部の台数/第2燃料供給部の台数) …式(5)
に基づいて、補正値を算出するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、燃料供給量制御装置、ボイラシステム、および、燃料供給量制御方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 ボイラシステム
110A 燃料供給部(第1燃料供給部)
110B 燃料供給部(第2燃料供給部)
114 粉砕部
200 燃料供給量制御装置
220 第1流量算出部
240B 出力補正部(第2流量算出部)