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  • 特許-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A63B37/00 214
A63B37/00 212
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020171228
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062980
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅之
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209298(JP,A)
【文献】特開2020-099669(JP,A)
【文献】特開2020-069309(JP,A)
【文献】特開2020-163103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、ポリウレタンであり、
前記ポリウレタンは、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであり、(A)前記ポリオール組成物は、ウレタンポリオールを含有し、前記ウレタンポリオールは、直鎖構造のオレフィンジオールを構成成分として含有し、
前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、0.3×10 Pa以上、1.9×10 Pa以下であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が-55℃以上、-40℃以下であることを特徴とするゴルフボール。
<測定条件>
測定モード:正弦波引張
測定温度範囲:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
【請求項2】
前記ポリウレタンの0℃での貯蔵弾性率(E’)が、0.1×10 Pa以上、0.7×10 Pa以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記直鎖構造のオレフィンジオールは、直鎖構造の主鎖が、シクロオレフィンが開環重合してなる骨格であり、主鎖の両末端にヒドロキシ基を有する化合物である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記直鎖構造のオレフィンジオールは、単環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位と多環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位とを有する共重合体である請求項3に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記直鎖構造のオレフィンジオールは、シクロペンテンを開環重合してなる単量体単位と、ノルボルネン環を有する化合物を開環重合してなる単量体単位とを有する共重合体である請求項3または4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
(B)前記ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート成分として、ジイソシアネートのイソシアヌレート体を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートである請求項6に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜を有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボール本体表面には、塗膜が設けられている。塗膜を改良することにより、ゴルフボールの特性を改良することが提案されている。
【0003】
特許文献1には、コアと、このコアの外側に位置するカバーと、このカバーの外側に位置するペイント層を備えており、上記カバーのショアD硬度が61以下であり、上記ペイント層のマルテンス硬度が2.0mgf/μm以下であるゴルフボールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ゴルフボール本体とゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、マルテンス硬度が2.0mgf/μm以下であり、10%モジュラスに対する50%モジュラスの比(50%モジュラス/10%モジュラス)が1.6以上であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献3には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、動的粘弾性装置により特定の測定条件にて測定した120℃~150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)が、1.00×10dyn/cm以上、1.00×10dyn/cm以下であり、且つ、10℃における損失正接(tanδ)が、0.050以上であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0006】
特許文献4には、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる損失正接tanδのピーク温度が、50℃以下であり、ピーク高さが0.8未満であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0007】
特許文献5には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
前記塗膜は、ゴルフボールの最外層に位置する最外層塗膜が、基材樹脂として、(A)ポリイソシアネート組成物と、(B)ポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記(B)ポリオール組成物が、ポリオール成分として、ウレタンポリオールを含有し、前記最外層塗膜は、動的粘弾性装置により特定条件にて測定した損失正接(tanδ)のピーク温度が、-40℃~40℃であるゴルフボールが開示されている。
【0008】
特許文献6には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであり、前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、1.00×10Pa以上であるゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-67595号公報
【文献】特開2011-217820号公報
【文献】特開2014-14383号公報
【文献】特開2017-209298号公報
【文献】特開2020-69309号公報
【文献】特開2020-99669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アプローチショットのスピン性能に優れた新規なゴルフボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、ポリウレタンであり、
前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、0.2×10Pa以上であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が0℃以下であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:正弦波引張
測定温度範囲:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
【0012】
アプローチショット時の打撃速度が16m/sであり、ウェッジのフェースランド部分の凹凸が、数μmであるとすると、アプローチショット時にゴルフボールの塗膜が受ける振動は、10Hzとなる。この常温で10Hzの振動の塗膜の動的粘弾性は、時間温度換算測により換算すると、-50℃で、10Hzの周波数で測定する動的粘弾性に相当する。本発明者らは、ゴルフボールの塗膜の最外層を構成するポリウレタンの-50℃で10Hzの周波数で測定した損失弾性率と損失正接(tanδ)のピーク温度とを制御することにより、アプローチショットのスピン性能が向上することを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明で採用する塗膜は、軟質である。本発明によれば、アプローチショットのスピン性能に優れたゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、ポリウレタンであり、
前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、0.2×10Pa以上であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が0℃以下であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:正弦波引張
測定温度範囲:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
【0016】
本発明のゴルフボールの塗膜の最外層を構成するポリウレタンは、動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、0.2×10Pa以上である。
<測定条件>
測定モード:正弦波引張
測定温度範囲:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
【0017】
アプローチショットのスピン性能を高めるという観点から、前記損失弾性率(E”)は、0.3×10Pa以上であることがより好ましく、0.5×10Pa以上であることがさらに好ましく、5.0×10Pa以下であることが好ましく、9.0×10Pa以下であることがより好ましく、8.0×10Pa以下であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明のゴルフボールの塗膜の最外層を構成するポリウレタンは、動的粘弾性を前記条件で測定して得られる0℃での貯蔵弾性率(E’)は、0.05×10Pa以上、3.0×10Pa以下であることが好ましい。アプローチショット時のゴルフボールとウェッジのフェースの接触時間は、約500μ秒である。これは、1秒に約2000回(=2000Hz)、塗膜がウェッジのスコアラインへ食い込むことに相当する。常温で2000Hzの振動の塗膜の動的粘弾性は、時間温度換算測により換算すると、0℃で、10Hzの周波数で測定する動的粘弾性に相当する。そこで、本発明者らは、0℃で、10Hzの周波数で測定する貯蔵弾性率(E’)に着目した。前記貯蔵弾性率(E’)が前記範囲内であるポリウレタンを用いることにより、ウェッジのスコアラインへの塗膜の食い込みが良くなる。その結果、スピン性能が高くなる。
【0019】
アプローチショットのスピン性能を高めるという観点から、前記貯蔵弾性率(E’)は、0.1×10Pa以上であることがより好ましく、0.3×10Pa以上であることがさらに好ましく、9.0×10Pa以下であることがより好ましく、7.0×10Pa以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のゴルフボールの塗膜の最外層を構成するポリウレタンは、動的粘弾性を前記条件で測定して得られる損失正接(tanδ)のピーク温度は、0℃以下であることが好ましく、より好ましくは-40℃未満、さらに好ましくは-45℃以下であり、-90℃以上が好ましく、-60℃以上がより好ましく、-55℃以上がさらに好ましい。損失正接(tanδ)のピーク温度が、前記範囲内であれば、-50℃での損失弾性率/貯蔵弾性率の比率が高まり、アプローチスピン性能が高まるからである。
【0021】
本発明のゴルフボールの塗膜の最外層を構成するポリウレタンの10%モジュラスは、1kgf/cm2(0.10MPa)以上が好ましく、より好ましくは3kgf/cm2(0.29MPa)以上、さらに好ましくは5kgf/cm2(0.49MPa)以上であり、50kgf/cm2(4.9MPa)以下が好ましく、より好ましくは40kgf/cm2(3.9MPa)以下、さらに好ましくは30kgf/cm2(2.9MPa)以下である。前記最外層塗膜のポリウレタンの10%モジュラスが1kgf/cm2以上であれば塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、50kgf/cm2以下であれば塗膜の動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン量が増加する。
【0022】
前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、ポリウレタンである。前記ポリウレタンは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを構成成分として有する。本発明で使用するポリウレタンは、ポリオール成分として、直鎖構造のオレフィンジオールを含有することが好ましい。前記オレフィンジオールは、直鎖構造の主鎖が、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有するオレフィン骨格であり、主鎖の両末端にヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0023】
本発明で使用するポリウレタンは、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであることが好ましい。まず、前記ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物について説明する。
【0024】
(A)前記ポリオール組成物は、ヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリオールを含有する。(A)前記ポリオール組成物は、ポリオール成分として、直鎖構造のオレフィンジオールを含有することが好ましい。
【0025】
前記オレフィンジオールを構成するオレフィンモノマーは、重合性の不飽和炭素-炭素二重結合を有する炭化水素であれば限定されない。オレフィンは、シクロオレフィンであることが好ましい。すなわち、オレフィンジオールは、ポリ(シクロオレフィン)ジオールであることが好ましい。ポリ(シクロオレフィン)ジオールは、シクロオレフィンの開環重合体である。すなわち、ポリ(シクロオレフィン)ジオールは、直鎖構造の主鎖がシクロオレフィンが開環重合してなる骨格であり、主鎖の両末端にヒドロキシ基を有する化合物である。
【0026】
前記オレフィンジオールは、シクロオレフィンモノマーを開環重合することにより得られたものであることが好ましく、シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合することにより得られるものであることがより好ましい。
【0027】
前記オレフィンジオールを構成する繰返し単位中に存在する二重結合において、シス/トランス比(モル比)は、特に限定されないが、10/90以上が好ましく、40/60以下が好ましく、30/70以下がさらに好ましい。シス/トランス比は、シクロオレイン開環重合体の13C-NMRスペクトル測定により決定することができる。
【0028】
前記オレフィンジオールは、例えば、シクロオレフィンモノマーを、メタセシス重合触媒および後述する一般式(1)で表される連鎖移動剤を用いて重合することにより得られる。
【0029】
(シクロオレフィンモノマー)
前記シクロオレフィンモノマーとは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素-炭素二重結合」とは、連鎖重合(メタセシス開環重合)に関与する炭素-炭素二重結合をいう。
【0030】
前記シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素原子数に特に限定はないが、4個以上が好ましく、5個以上が好ましく、30個以下が好ましく、20個以下がより好ましく、15個以下がさらに好ましい。シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、及びアリール基などの炭素数1~30の炭化水素基や、カルボキシル基や酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。
【0031】
前記シクロオレフィンモノマーとしては、単環シクロオレフィンモノマーおよび多環シクロオレフィンモノマーが好ましい。
【0032】
単環シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3,5-ジメチルシクロペンテン、3-クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3-メチルシクロへキセン、4-メチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3-クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどが挙げられる。これらの中でも、単環シクロオレフィンモノマーとして、シクロペンテンが好ましい。
【0033】
多環シクロオレフィンモノマーとしては、ノルボルネン環を含む化合物(以下、単に「ノルボルネン化合物」という場合がある)を挙げることができる。多環シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6]デカ-8-エンとも言う。)などのジシクロペンタジエン類;テトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-メチレンテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エン、9-フェニルテトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エンなどのテトラシクロドデセン類;2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシル-2-ノルボルネン、5-シクロペンチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキセニル-2-ノルボルネン、5-シクロペンテニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-2-ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.0 2,10.0 3,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレンとも言う。)、テトラシクロ[10.2.1.0 2,11.0 4,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などのノルボルネン類;などが挙げられる。これらの中でも、多環シクロオレフィンモノマーとして、2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロ[9.2.1.0 2,10.0 3,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.1 3,6.0 2,7]ドデカ-4-エンが好ましい。
【0034】
前記シクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明で使用するオレフィンジオールは、前記単環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位と多環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、前記単環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位と多環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位とからなる共重合体であることがより好ましい。共重合成分として、多環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位を有することにより、得られるオレフィンジオールが液状化しやすくなるからである。
【0036】
単環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位の含有率は、オレフィンジオールを構成する全単量体単位100質量%中、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、95質量%以下が好ましく、92質量%以下がより好ましく、90質量%以下が好ましい。
【0037】
多環シクロオレフィンモノマーを開環重合してなる単量体単位の含有率は、オレフィンジオールを構成する全単量体単位100質量%中、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0038】
シクロオレフィン開環共重合体中の単量体単位組成比は、例えば、H-NMRスペクトル測定から求めることができる。
【0039】
本発明で使用するオレフィンジオールは、前記単環シクロオレフィンモノマーとして、シクロペンテンを開環重合してなる単量体単位と、多環シクロオレフィンモノマーとして、ノルボルネン化合物を開環重合してなる単量体単位とを有するシクロペンテン・ノルボルネン開環共重合体であることが好ましい。前記シクロペンテン・ノルボルネン開環共重合体は、シクロペンテンを開環重合してなる単量体単位とノルボルネン化合物を開環重合してなる単量体単位とからなる共重合体であることがより好ましい。
【0040】
(メタセシス重合触媒)
本発明に用いるメタセシス重合触媒は、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能なものであれば、特に限定されない。
【0041】
メタセシス重合触媒としては、遷移金属原子を中心にして、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としてはタンタルが好ましい。6族の原子としては、モリブデンまたはタングステンが好ましい。8族の原子としては、ルテニウムまたはオスミウムが好ましい。
【0042】
これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーに由来する臭気が少ない樹脂成形体を効率的に生産することができる。また、8族のルテニウムやオスミウムの錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくい。
【0043】
ルテニウムカルベン錯体としては、例えば、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-オクタヒドロベンズイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3-ジ(1-フェニルエチル)-4-イミダゾリン-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-2,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4-トリフェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン-2-イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(2-フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(2-フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)(2-ピロリドン-1-イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
【0044】
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0045】
ベンジリデンビス(1,3-ジシクロヘキシル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3-ジイソプロピル-4-イミダゾリン-2-イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;などが挙げられる。
【0046】
また別のルテニウムカルベン錯体としては、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t-ブチルビニリデン)(1,3-ジイソプロピル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3-ジシクロヘキシル-4-イミダゾリン-2-イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0047】
メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常、1:2,000~1:2,000,000、好ましくは1:5,000~1:1,000,000、より好ましくは1:10,000~1:500,000の範囲である。
【0048】
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶剤としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、工業的に汎用な芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素の使用が好ましい。また、メタセシス重合触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、液状の可塑剤、液状のエラストマーを溶剤として用いてもよい。
【0049】
メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用することもできる。
【0050】
活性剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズの、アルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などを用いることができる。その具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
【0051】
活性剤の使用量は、(触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、通常、1:0.05~1:100、好ましくは1:0.2~1:20、より好ましくは1:0.5~1:10の範囲である。
【0052】
また、メタセシス重合触媒として、5族及び6族の遷移金属原子の錯体を用いる場合には、メタセシス重合触媒及び活性剤は、いずれもモノマーに溶解して用いるのが好ましいが、生成物の性質を本質的に損なわない範囲であれば少量の溶剤に懸濁又は溶解させて用いることができる。
【0053】
(連鎖移動剤)
シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合する際には、下記一般式(1)で表される化合物を連鎖移動剤として使用することが好ましい。
HO-X-CH=CH-Y-OH ・・・(1)
【0054】
一般式(1)中、X,Yは、それぞれ独立して、炭素数が1~30のアルキレン基を表す。X,Yのアルキレン基の炭素数は、1以上が好ましく、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましく、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記アルキレン基は、直鎖構造であってもよいし、分岐構造を有していてもよい。
【0055】
前記一般式(1)で表される連鎖移動剤を含有させることにより、シクロオレフィンポリマーの両末端に、連鎖移動剤に由来する-OH基が結合する。すなわち、開環したシクロオレフィン骨格を繰り返し単位とする主鎖の両末端にヒドロキシ基を有するオレフィンジオールが得られる。
【0056】
前記XまたはYのアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などを挙げることができる。
【0057】
前記連鎖移動剤の具体例としては、ブテンジオール(例えば、2-ブテン-1,2-ジオール)、ペンテンジオール、ヘキセンジオール(例えば、3-ヘキセン-2,5-ジオール)、オクテンジオール(例えば、4-オクテン-1,8-ジオール)、ノネンジオールなどを挙げることができる。
【0058】
連鎖移動剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0059】
(その他の配合剤)
シクロオレフィンモノマーのメタセシス開環重合には、前記シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤に加えて、所望により、重合調整剤、重合反応遅延剤、反応性流動化剤、難燃剤、酸化防止剤、及び着色料等のその他の配合剤を添加することができる。
【0060】
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合される。その具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、及びテトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合調整剤の使用量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)のモル比で、通常、1:0.05~1:100、好ましくは1:0.2~1:20、より好ましくは1:0.5~1:10の範囲である。
【0061】
シクロオレフィンモノマーのメタセシス重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよい。溶液中で重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、重合に用いるシクロオレフィンモノマーやルテニウム-カルベン錯体などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶剤としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n‐ヘキサン、n‐ヘプタン、n‐オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。また、ハロゲン系溶剤としてはジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン;などが挙げられる。
【0062】
また、重合溶媒として、水酸基を有する連鎖移動剤およびルテニウム化合物を含む重合触媒を良好に溶解させることができるという観点より、エーテル系溶媒またはケトン系溶媒を用いることが好ましい。エーテル系溶媒としては、たとえば、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエチレン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、2-ブタノン、アセトフェノンアセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、メチルノニルケトンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0063】
シクロオレフィンモノマーを重合する温度は、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合温度は特に限定されないが、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは90℃未満、さらに好ましくは80℃未満、特に好ましくは70℃未満である。重合温度が高すぎると、得られるシクロオレフィン開環重合体の分子量が低くなりすぎるおそれがあり、重合温度が低すぎると、重合速度が遅くなり、結果として、生産性に劣る場合がある。
【0064】
また、重合反応時間は、好ましくは1分間~72時間、より好ましくは5時間~20時間である。重合転化率が所定の値に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させることにより、シクロオレフィン開環重合体を製造することができる。
【0065】
前記オレフィンジオールは、常温液状であることが好ましい。オレフィンジオールの25℃の粘度は、50mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましく、300mPa・s以上がさらに好ましく、30000mPa・s以下が好ましく、20000mPa・s以下がより好ましく、15000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0066】
前記オレフィンジオールのガラス転移温度(Tg)は、-90℃以上であることが好ましく、-85℃以上であることがより好ましく、-80℃以上であることがさらに好ましく、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることがさらに好ましい。
【0067】
前記オレフィンジオールの数平均分子量は、800以上が好ましく、より好ましくは900以上、さらに好ましくは1000以上であり、6000以下が好ましく、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは4000以下である。前記オレフィンジオールの数平均分子量が800以上であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなり、塗膜が柔らかくなるため、スピン性能が向上する。前記数平均分子量が6000以下であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなりすぎず、塗膜の耐汚染性が良好となる。なお、オレフィンジオール成分の数平均分子量は、GPCにより決定することができる。
【0068】
なお、本発明で使用するオレフィンジオールには、分子鎖の両末端に水酸基を有するジエン重合体(例えば、両末端水酸基化ポリブタジエン(出光興産社製Poly bd R-45HT)、両末端水酸基化ポリペンタジエン、両末端水酸基化ポリヘキサジエンなど)は含まれないものとする。
【0069】
本発明の好ましい態様では、(A)前記ポリオール組成物は、ポリオール成分として、直鎖構造のオレフィンジオールを含有する。また、本発明のより好ましい態様では、(A)前記ポリオール組成物は、ウレタンポリオールを含有し、前記ウレタンポリオールは、直鎖構造のオレフィンジオールを構成成分として含有する。
【0070】
前記ウレタンポリオールとは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物である。ウレタンポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを、ポリオールのヒドロキシ基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを挙げることができる。
【0071】
本発明のより好ましい態様では、前記ウレタンポリオールを構成する第1ポリオール成分が、直鎖構造のオレフィンジオールを含有する。前記オレフィンジオールの詳細は、上述した通りである。
【0072】
前記ウレタンポリオールは、ウレタンポリオールを構成する第1ポリオール成分として、前記オレフィンジオールに加えて、他のポリオールを含有してもよい。
【0073】
他のポリオールとしては、分子量が500未満の低分子量ポリオール成分、平均分子量が500以上の高分子量ポリオール成分を含有してもよい。前記低分子量ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量ポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールなどが挙げられる。前記第2ポリオール成分は、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
【0074】
前記ウレタンポリオールを構成し得るポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられ、これらの中でもポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
【0075】
前記ウレタンポリオールは、ポリオール成分として、トリオール成分とジオール成分とを含有するものが好ましい。前記トリオール成分としては、トリメチロールプロパンが好ましい。前記トリオール成分とジオール成分の混合比率(トリオール成分/ジオール成分)は、OH基のモル比で、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、2.6以下が好ましく、2.4以下がより好ましい。
【0076】
前記ポリオール組成物は、ポリオール成分として、ウレタンポリオールに加えて、第2ポリオールを含有してもよい。すなわち、第2ポリオールは、ポリオール組成物が直接含有し、前記ウレタンポリオールを構成しないポリオールである。前記第2ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;および、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記第2ポリオールは、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
【0077】
前記ポリオール組成物が含有するポリオール中の前記ウレタンポリオールの含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記ポリオール組成物は、ポリオールとして、前記ウレタンポリオールのみを含有することも好ましい。
【0078】
前記ウレタンポリオールを構成し得る第1ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記ウレタンポリオールは、オレフィンジオールの含有率が、55質量%以上が好ましく、より好ましくは58質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。前記オレフィンジオールは、塗膜においてソフトセグメントを形成する。よって、前記オレフィンジオールの含有率が、55質量%以上であれば、得られるゴルフボールのスピン性能がより向上する。
【0080】
前記ウレタンポリオールは、数平均分子量が、1500以上が好ましく、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは2500以上であり、100000以下が好ましく、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。ウレタンポリオールの数平均分子量が1500以上であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなり、塗膜が柔らかくなるため、スピン性能が向上する。前記数平均分子量が100000以下であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなりすぎず、塗膜の耐汚染性が良好となる。なお、ウレタンポリオール成分の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0081】
前記ウレタンポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、200mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは190mgKOH/g以下、さらに好ましくは180mgKOH/g以下である。
【0082】
前記ポリオール組成物が含有するポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、400mgKOH/g以下が好ましく、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは170mgKOH/g以下であり、特に好ましくは160mgKOH/g以下である。ポリオール成分の水酸基価が上記範囲内であれば、ゴルフボール本体への塗膜の密着性が向上するからである。なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 1557-1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
【0083】
次に、ポリイソシアネート組成物について説明する。前記ポリイソシアネート組成物は、1種または2種以上のポリイソシアネートを含有する。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができる。なお、ウレタンポリオールを構成する第1ポリイソシアネートと区別する観点から、ポリイソシアネート組成物が、直接含有するポリイソシアネートを第2ポリイソシアネートと称する場合がある。
【0084】
前記第2ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ジイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート;およびこれらのジイソシアネートのアロハネート体、ビュレット体、イソシアヌレート体、アダクト体などのトリイソシアネート;が挙げられる。本発明では、前記ポリイソシアネートとして、1種のみのポリイソシアネートを使用することが好ましいが、2種以上のポリイソシアネートを使用してもよい。1種のみのポリイソシアネートを使用する場合、HDIのイソシアヌレート体、HDIのアダクト体、HDIのビゥレット体が好ましく、HDIのイソシアヌレート体が最も好ましい。得られるポリウレタンのー50℃における損失弾性率が大きくなるからである。
【0085】
前記アロハネート体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られるトリイソシアネートである。アダクト体とは、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンあるいはグリセリンなどの低分子量トリオールとを反応させて得られるトリイソシアネートである。前記ビュレット体とは、例えば、下記式(2)で表わされるビュレット結合を有するトリイソシアネートである。ジイソシアネートのイソシアヌレート体とは、例えば、下記式(3)で表わされるトリイソシアネートである。
【0086】
【化1】
[式(2)、(3)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表わす。]
【0087】
前記ポリイソシアネート組成物は、トリイソシアネートを含有することが好ましい。前記ポリイソシアネート組成物が含有するポリイソシアネート中のトリイソシアネートの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。前記ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートとしてトリイソシアネートのみを含有することが最も好ましい。
【0088】
前記ポリイソシアネート組成物が含有するポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、ポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、100×[ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数×42(NCOの分子量)]/ポリイソシアネートの総質量(g)で表わすことができる。
【0089】
前記ポリイソシアネートの具体例としては、DIC社製バーノックD-800、バーノックDN-950、バーノックDN-955、住化バイエルウレタン社製デスモジュールN75MPA/X、デスモジュールN3300、デスモジュールL75(C)、スミジュールE21-1、日本ポリウレタン工業社製コロネートHX、コロネートHK、旭化成ケミカルズ社製デュラネート24A-100、デュラネート21S-75E、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デグサ社製VESTANAT T1890などを挙げることができる。
【0090】
本発明で使用するポリウレタンは、ポリイソシアネート成分として、ジイソシアネートのイソシアヌレート体を含有することが好ましい。前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートであることが好ましい。
【0091】
本発明のゴルフボールの塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを反応させて得られるポリウレタンを含有する。前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート組成物との反応において、ポリオール組成物が有するヒドロキシ基(OH基)に対するポリイソシアネート組成物が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が、0.5以上であれば、架橋密度が高くなり、得られる塗膜の耐汚染性より良好となる。また、前記モル比(NCO基/OH基)が大きくなりすぎると、イソシアネート基量が過剰となり、得られる塗膜が硬く脆くなる上に、外観も悪くなる。そのため、前記モル比(NCO基/OH基)は、2.0以下が好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましい。なお、塗料中のイソシアネート基量が過剰になると得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、イソシアネート基量が過剰になると、空気中の水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。
【0092】
本発明のゴルフボールの塗膜は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを含有する塗料から形成されることが好ましい。前記塗料としては、ポリオール組成物を含有する第一剤と、ポリイソシアネート組成物を含有する第二剤とからなる、いわゆる二液硬化型塗料が例示できる。前記塗料としては、水を主たる分散媒とする水系塗料、有機溶剤を分散媒とする溶剤系塗料のいずれであってもよい。溶剤系塗料の場合、好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0093】
前記二液硬化型塗料は、第一剤および第二剤の合計の固形分含有率が、30質量%以上が好ましく、より好ましくは31質量%以上、さらに好ましくは32質量%以上であり、45質量%以下が好ましく、より好ましくは44質量%以下、さらに好ましくは43質量%以下である。固形分含有率が30質量%以上であれば、塗料を均一に塗布しやすくなり、塗膜の厚さの均一性がより向上し、45質量%以下であれば塗料のレベリング性が良く、塗膜表面の凹凸が低減され、ゴルフボールの外観がより良好となる。
【0094】
前記塗料は、さらに必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有してもよい。
【0095】
次に、本発明の硬化型塗料の塗布方法について説明する。硬化型塗料の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装などを挙げることができる。
【0096】
エアーガンを用いたスプレー塗装の場合には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをそれぞれのポンプで供給して、エアーガン直前に配置されたラインミキサーで連続的に混合し、得られた混合物をスプレー塗装してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いて、ポリオールとポリイソシアネートとを別々にスプレー塗装してもよい。塗装は、1回でスプレー塗布しても良いし、複数回重ね塗りをしても良い。
【0097】
ゴルフボール本体に塗布された硬化型塗料は、例えば、30℃~70℃の温度で1時間~24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
【0098】
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有し、前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであれば、特に限定されない。
【0099】
前記塗膜が単層の場合は、単層の塗膜の基材樹脂が、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであればよい。
【0100】
前記塗膜が、二層以上の多層構造を有する場合、最外層の塗膜を構成する基材樹脂が、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであればよい。最外層以外の層を構成する基材樹脂としては、特に限定されず、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0101】
本発明のより好ましい態様では、ゴルフボールは、ゴルフボール本体と、ゴルフボール本体表面に設けられた二層の塗膜を有し、外層の塗膜を構成する基材樹脂が、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンである。
【0102】
本発明のゴルフボールの塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、15μm以上が特に好ましい。膜厚が5μm未満では、継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなる傾向がある。また、膜厚を厚くすることによりアプローチショットのスピン量が増大するからである。また、塗膜の膜厚は、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。膜厚が50μmよりも大きいとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するおそれがある。塗膜の膜厚は、例えば、ゴルフボールの断面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)を用いて測定することができる。なお、塗料が多層構造の場合は、形成された塗膜全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0103】
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
【0104】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3と、このカバー3の表面に設けられた塗膜4を有する。前記カバー3の表面には、多数のディンプル31が形成されている。このカバー3の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。
【0105】
前記ゴルフボール本体は、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するものが好ましい。前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が大きくなる。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、アプローチショットのスピン量が高くなる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。
【0106】
前記カバーを構成するカバー材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは二液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0107】
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル))、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0108】
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
【0109】
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0110】
本発明において、全てのディンプルの面積の合計の仮想球の表面積に対する比率は、占有率と称される。仮想球とは、ディンプルが存在しないとしたときのゴルフボール(球体)である。本発明のゴルフボールにおいて、ディンプルの占有率は、60%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、66%以上がさらに好ましく、90%以下が好ましく、87%以下がより好ましく、84%以下がさらに好ましい。占有率が高くなりすぎると、摩擦係数に対する塗膜の寄与が小さくなる。また、占有率が小さすぎると、飛行性能が低下する。
【0111】
なお、ディンプルの面積は、無限遠からゴルフボールの中心を見た場合の、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプルの場合、面積Sは下記数式によって算出される。
S=(Di/2)・π (Di:ディンプルの直径)
【0112】
ゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は、42.67mm以上が好ましい。空気抵抗の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
【0113】
次に、糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコア、ならびに、ワンピースゴルフボール本体について説明する。
【0114】
前記コアおよびワンピースゴルフボール本体には、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0115】
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
【0116】
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
【0117】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0118】
本発明のゴルフボールが、スリーピース、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボールである場合には、コアと最外層カバーとの間に設ける中間層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
【実施例
【0119】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
[評価方法]
(1)オレフィンジオールの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC-8220(東ソー社製)により、HタイプカラムHZ-M(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、テトラヒドロフランを溶媒として、カラム温度40℃にて、オレフィンジオールの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定を行った。検出器は示差屈折計RI-8320(東ソー社製)を用いた。オレフィンジオールの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン換算値として測定した。
【0121】
(2)オレフィンジオールのガラス転移温度(Tg)
示差走査型熱量計(DSC、製品名「X-DSC7000」、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、-150℃~40℃までを10℃/分の昇温速度で測定を行い、測定結果から、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0122】
(3)オレフィンジオールの粘度
25℃における溶融粘度を、ブルックフィールド型粘度計DV-II+Pro(ブルックフィールド社製)により測定した。コーン・プレート型を用い、コーン(スピンドル)としては、CPE-52を使用した。また、測定時の剪断速度は、粘度に合わせて1.2sec-1~10sec-1の間で調整した。
【0123】
(4)動的粘弾性の測定
塗膜の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”および損失正接tanδを以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000
測定サンプル:主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11-0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:正弦波引張
測定温度:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
測定データ取り込み間隔:3℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
【0124】
(5)塗膜の10%モジュラス
塗膜の引張特性は、JIS K7161(2014)に準じて測定した。具体的には、ポリイソシアネート組成物およびポリオール組成物を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜(厚さ0.05mm)を作製した。この塗膜を、JIS K7127(1999)で規定された試験片タイプ2(平行部の幅10mm、標線間距離50mm)に打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標))を用いて引張試験を行った。試験条件は、つかみ具間距離100mm、引張速度50mm/min、試験温度23℃とした。そして、10%ひずみ時の引張応力(10%モジュラス)を記録した。
【0125】
(6)アプローチショットのドライスピン量Sd(rpm)
ゴルフラボラトリー社製スイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製RTX-3(58°))を取り付け、ヘッドスピード16m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて8回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。
【0126】
(7)ラフからのアプローチショットのラフスピン量Sr(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製RTX-3(58°))を装着した。その表面に野芝を2本貼り付けたゴルフボールを使用し、サンドウェッジのフェースとゴルフボールとの間に野芝が介在する状態で、ヘッド速度16m/sでゴルフボールを打撃して、スピン量(rpm)を測定した。スピン量の測定は、打撃されたゴルフボールの連続写真を撮影することによって行った。サンドウェッジのフェースとゴルフボールが接触した際に、野芝とフェースの溝が垂直になるように、野芝をセロハンテープでゴルフボールに取付けた。各ゴルフボールについて 、各8回測定して得られたデータの平均値をそれぞれ算出した。
【0127】
[ゴルフボールの作製]
1.センターの作製
表1に示す配合のセンター用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状センターを得た。なお、硫酸バリウムの配合量は、ゴルフボールの質量が45.3gとなるように調整した。
【0128】
【表1】
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製、「ZN-DA90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
【0129】
2.中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2、表3に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200~260℃に加熱された。
【0130】
【表2】
サーリン(登録商標)8945:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン(登録商標)AM7329:三井・デュポン・ポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
【0131】
【表3】
エラストラン(登録商標)XNY82A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
チヌビン(登録商標)770:BASFジャパン社製、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)
【0132】
3.球状コアの作製
上記で得た中間層用組成物を、前記球状センター上に直接射出成形することにより、前記センターを被覆する厚さ1.0mmの中間層を形成して、球状コアを作製した。成形用上下型は、半球状キャビティと、球状センターを支持する進退可能なホールドピンとを有している。中間層成形時には、上記ホールドピンを突き出し、センターを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きして球状コアを取り出した。
【0133】
4.ハーフシェルの成形
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
【0134】
5.カバーの成形
上記で得た球状コアを2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形により厚さ0.5mmのカバーを成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
【0135】
6.塗料の調製
第一剤(ポリオール組成物)の調製
ポリオール成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)またはオレフィンジオール(PCP1~PCP4)、トリメチロールプロパン(TMP)を溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/2、質量比)を用いて50質量%となるように溶解した。ここに、触媒としてジブチル錫ラウレートをポリオール成分の固形分に対して0.1質量%となるように添加した。このポリオール溶液を80℃に保持しながらポリイソシアネート成分としてのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を滴下混合した。滴下後は、イソシアネートがなくなるまで攪拌を続け、その後常温で冷却し、溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/2、質量比)を加えて、ウレタンポリオール(固形分:30質量%)を調製した。各ウレタンポリオールの組成等を表4に示した。
【0136】
【表4】
【0137】
ポリオレフィンジオールとしては、以下のものを使用した。
PCP1:日本ゼオン社製両末端水酸基化液状ポリシクロペンテン(ポリ(シクロペンテン)ジオール)、数平均分子量1000
PCP2:日本ゼオン社製両末端水酸基化液状ポリシクロペンテン(ポリ(シクロペンテン)ジオール)、数平均分子量2000
PCP3:日本ゼオン社製両末端水酸基化液状ポリシクロペンテン(ポリ(シクロペンテン)ジオール)、数平均分子量3100
PCP4:日本ゼオン社製両末端水酸基化液状ポリシクロペンテン(ポリ(シクロペンテン)ジオール)、数平均分子量4100
【0138】
第二剤(ポリイソシアネート組成物)の調製
ポリイソシアネート組成物No.1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(住化コベストロウレタン社製、スミジュールN3300)
ポリイソシアネート組成物No.2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(住化コベストロウレタン社製、スミジュールN3300)とイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート(住化コベストロウレタン社製、デスモジュールZ4470)のモル比1:1の混合物
ポリイソシアネート組成物No.1~2に溶媒として、メチルエチルケトン、酢酸n-ブチル、トルエンの混合溶媒を追加し、ポリイソシアネート成分の濃度が60質量%になるように調整した。
【0139】
塗料の調製
上記で調製した第一剤(ウレタンポリオール)に対して、表5に示したNCO/OHモル比となるように第二剤を配合して塗料を調製した。
【0140】
7.塗膜の形成
上記で得たゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.3gのゴルフボールを得た。塗膜の厚さは、20μmとした。塗装は、3本のプロングを備えた回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、重ね塗り;2回、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃~27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールの評価結果を表5に示した。
【0141】
【表5】
【0142】
ゴルフボールNo.2~No.5、7、8、10は、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであり、前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、0.2×10Pa以上であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が0℃以下である。ゴルフボールNo.No.2~No.5、7、8、10は、優れたスピン性能を有している。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、塗装ゴルフボールに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0144】
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:カバー、4:塗膜、31:ディンプル、32:ランド
図1