(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
G01C 19/00 20130101AFI20241112BHJP
G01C 21/28 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2020181708
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】大谷 富美和
(72)【発明者】
【氏名】茅野 岳人
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度を検出し、アナログの出力信号を出力する角速度センサーと、
加速度を検出し、アナログの出力信号を出力する加速度センサーと、
前記角速度センサーの前記出力信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングしてデジ
タル値の角速度データに変換し、前記加速度センサーの前記出力信号を所定のサンプリン
グ間隔でサンプリングしてデジタル値の加速度データに変換する信号処理部と、
複数の補正パラメーターを記憶する記憶部と、
前記信号処理部から出力される前記角速度データ及び前記加速度データの少なくとも一
方に基づき、前記複数の補正パラメーターから選択補正パラメーターを選択するパラメー
ター制御部と、
前記選択補正パラメーターを用いて、
前記信号処理部から出力される前記角速度データ
及び前記加速度データの少なくとも一方を補正する補正演算部と、
を備える、
慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度センサーデバイスと加速度センサーデバイスとを有する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)の従来技術として、例えば、特許文献1には、角速度センサーデバイス及び加速度センサーデバイスから出力するアナログ信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータに対して温度補正、オフセット補正又は感度補正等の補正処理を行い、高精度化を図ったセンサーモジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のセンサーモジュールでは、感度を補正する補正パラメーターが最大の検出範囲から算出した補正パラメーターに固定されているため、センサーの検出範囲が狭い場合には、狭い検出範囲から算出した補正パラメーターで補正した値に比べ、補正精度が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
慣性計測装置は、慣性情報を出力する慣性センサーと、前記慣性情報の値の範囲に関連した複数の補正パラメーター、を記憶する記憶部と、前記複数の補正パラメーターから選択補正パラメーターを選択するパラメーター制御部と、前記選択補正パラメーターを用いて、前記慣性情報を補正する補正演算部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る慣性計測装置の構成を示すブロック図。
【
図2】パラメーター制御部の補正パラメーターを設定する方法を示すフローチャート図。
【
図3】補正パラメーター算出及び検査方法を示すフローチャート図。
【
図4】第2実施形態に係る慣性計測装置の構成を示すブロック図。
【
図5】パラメーター制御部の補正パラメーターを設定する方法を示すフローチャート図。
【
図6】第3実施形態に係る慣性計測装置の構成を示すブロック図。
【
図7】パラメーター制御部の補正パラメーターを設定する方法を示すフローチャート図。
【
図8】第4実施形態に係る慣性計測装置の構成を示すブロック図。
【
図9】パラメーター制御部の補正パラメーターを設定する方法を示すフローチャート図。
【
図10】第5実施形態に係る慣性計測装置を備える移動体の構成を示す図。
【
図11】第6実施形態に係る慣性計測装置を備える移動体の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る慣性計測装置1について、
図1、
図2、及び
図3を参照して説明する。
【0008】
本実施形態の慣性計測装置1は、
図1に示すように、慣性センサーとしての角速度センサー12及び加速度センサー14と、信号処理部16と、補正演算部18と、パラメーター制御部20と、記憶部22と、通信部24と、を備えている。従って、本実施形態における慣性情報とは、角速度センサー12から出力される角速度であり、加速度センサー14から出力される加速度である。
【0009】
角速度センサー12は、互いに交差する、理想的には直交する3軸方向の各々の角速度を計測し、計測した3軸角速度の大きさ及び向きに応じたアナログ信号を出力する。
【0010】
加速度センサー14は、互いに交差する、理想的には直交する3軸方向の各々の加速度を計測し、計測した3軸加速度の大きさ及び向きに応じたアナログ信号を出力する。
【0011】
信号処理部16は、角速度センサー12の出力信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングしてデジタル値の角速度データに変換する処理を行う。また、信号処理部16は、加速度センサー14の出力信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングしてデジタル値の加速度データに変換する処理を行う。
【0012】
なお、角速度センサー12及び加速度センサー14にA/D変換や温度補正の機能が組み込まれていてもよい。
【0013】
また、信号処理部16は、A/D変換処理後の角速度データ及び加速度データを補正演算部18に出力する。
【0014】
補正演算部18は、記憶部22のROMあるいは記録媒体に記憶されているプログラム、あるいはネットワークを介してサーバーから受信して記憶部22のRAMや記録媒体に記憶したプログラムに従って各種の処理を行う。
【0015】
補正演算部18は、パラメーター制御部20が角速度又は加速度の値の検出範囲に関連した複数の補正パラメーターを記憶する記憶部22から選択したユーザーの指定した角速度又は加速度の値の検出範囲に対応する選択補正パラメーターを用いて、信号処理部16から出力された角速度データ及び加速度データを補正する。
【0016】
また、補正演算部18は、信号処理部16が所定のサンプリング間隔で出力する角速度データ及び加速度データに対して所定の演算を行い、角速度データ及び加速度データを補正処理する。なお、補正演算部18が出力する補正後の角速度データ及び加速度データは、通信部24を介して外部に出力される。また、補正後の角速度データ及び加速度データは、角速度情報及び加速度情報として、記憶部22に記憶される。
【0017】
パラメーター制御部20は、補正演算部18の図示しない入力部からユーザーが入力したモード設定に伴い、記憶部22に記憶された補正パラメーター選択情報に基づいて、複数の補正パラメーターの中から、モード設定に対応する選択補正パラメーターを選択し、補正演算部18に設定する。
【0018】
具体的には、
図2に示すように、ステップS11において、ユーザーが慣性情報の値の検出範囲に関連したモードを設定すると、ステップS12では、モードAの場合は、ステップS13において、補正パラメーター選択情報に基づいて、記憶部22から第1パラメーターP1を選択し、選択補正パラメーターとして第1パラメーターP1を補正演算部18に設定する。また、モードBの場合は、ステップS14において、補正パラメーター選択情報に基づいて、記憶部22から第2パラメーターP2を選択し、選択補正パラメーターとして第2パラメーターP2を補正演算部18に設定する。また、モードCの場合は、ステップS15において、補正パラメーター選択情報に基づいて、記憶部22から第3パラメーターP3を選択し、選択補正パラメーターとして第3パラメーターP3を補正演算部18に設定する。
【0019】
なお、本実施形態では、慣性情報の値の範囲とは、慣性計測装置1の角速度又は加速度の値の検出範囲とし、選択補正パラメーターの違いは、検出範囲の差で異ならせてある。例えば、第1パラメーターP1は、角速度の値の検出範囲が最大である±500dpsの場合の補正パラメーターであり、第2パラメーターP2は、角速度の値の検出範囲が±250dpsの場合の補正パラメーターであり、第3パラメーターP3は、角速度の値の検出範囲が±100dpsの場合の補正パラメーターである。そのため、慣性情報の値の検出範囲で条件分けしたモードと対応する補正パラメーターとを関連付けしたものが補正パラメーター選択情報となる。
【0020】
角速度センサー12及び加速度センサー14は、それぞれ3軸が、慣性計測装置1に対して定義される直交座標系であるセンサー座標系の3軸(x軸、y軸、z軸)と一致するように慣性計測装置1に取り付けられるのが理想的だが、実際には取り付け角の誤差が生じる。そこで、信号処理部16は、取り付け角誤差に応じてあらかじめ算出された補正パラメーターを用いて、角速度データ及び加速度データをxyz座標系のデータに変換する処理も行う。さらに、信号処理部16は、角速度センサー12及び加速度センサー14の温度特性に応じて、角速度データ及び加速度データを温度補正する処理も行う。
【0021】
記憶部22は、慣性情報の値の検出範囲に関連した複数の補正パラメーター及び補正パラメーター選択情報を記憶している。
【0022】
また、記憶部22は、補正演算部18が各種の処理を行うためのプログラム、アプリケーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶しているROMを含む。
【0023】
また、記憶部22は、補正演算部18の作業領域として用いられ、ROMから読み出されたプログラムやデータ、補正演算部18が各種プログラムに従って実行した演算結果、補正パラメーター選択情報、及び慣性情報の値の検出範囲に関連した複数の補正パラメーター等を一時的に記憶するRAMを含む。
【0024】
また、記憶部22は、補正演算部18の処理により生成されたデータのうち、長期的な保存が必要なデータを記憶する不揮発性の記録媒体を含む。なお、記録媒体は、補正演算部18が各種の処理を行うためのプログラムや、アプリケーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶していてもよい。
【0025】
通信部24は、補正演算部18で慣性情報の値の検出範囲に応じて補正した慣性情報を他の装置等に送信可能であり、他の装置等からの制御信号等を受信可能である。
【0026】
次に、本実施形態に係る慣性計測装置1の補正パラメーター算出及び検査方法について、
図3を参照して説明する。なお、補正パラメーター算出及び検査方法として、検出範囲が±500dpsである角速度センサー12を有する慣性計測装置1を一例として挙げ、説明する。
【0027】
本実施形態に係る補正パラメーター算出及び検査方法は、
図3に示すように、慣性情報取得工程、第1パラメーター算出工程、第2パラメーター算出工程、第3パラメーター算出工程、第1パラメーター検査工程、第2パラメーター検査工程、第3パラメーター検査工程、を含む。
【0028】
1.1 慣性情報取得工程
先ず、ステップS101において、慣性計測装置1に角速度範囲±500dpsの既知の角速度を、例えば、5dpsステップで印加し、慣性計測装置1の信号処理部16から出力された角速度データを得る。
【0029】
1.2 第1パラメーター算出工程
次に、ステップS102において、ステップS101で取得した角速度範囲±500dpsの既知の角速度値と信号処理部16から出力された角速度データから、最小二乗法等により、既知の角速度値の直線性に対する誤差となる非直線性の補正係数を算出し、第1パラメーターP1を得る。
【0030】
1.3 第2パラメーター算出工程
次に、ステップS103において、ステップS101で取得した角速度範囲±500dpsの既知の角速度値と信号処理部16から出力された角速度データから、角速度範囲±250dpsの既知の角速度値と信号処理部16から出力された角速度データとを抽出し、最小二乗法等により、既知の角速度値の直線性に対する誤差となる非直線性の補正係数を算出し、第2パラメーターP2を得る。
【0031】
1.4 第3パラメーター算出工程
次に、ステップS104において、ステップS101で取得した角速度範囲±500dpsの既知の角速度値と信号処理部16から出力された角速度データから、角速度範囲±100dpsの既知の角速度値と信号処理部16から出力された角速度データとを抽出し、最小二乗法等により、既知の角速度値の直線性に対する誤差となる非直線性の補正係数を算出し、第3パラメーターP3を得る。
【0032】
1.5 第1パラメーター検査工程
次に、ステップS105において、慣性計測装置1に角速度範囲±500dpsの既知の角速度を印加し、第1パラメーターP1を用いて補正演算し補正演算部18から出力された角速度データを得る。既知の角速度値と補正後の角速度データとを比較し、所望の検査誤差以内であるか検査する。
【0033】
1.6 第2パラメーター検査工程
次に、ステップS106において、慣性計測装置1に角速度範囲±250dpsの既知の角速度を印加し、第2パラメーターP2を用いて補正演算し補正演算部18から出力された角速度データを得る。既知の角速度値と補正後の角速度データとを比較し、所望の検査誤差以内であるか検査する。
【0034】
1.7 第3パラメーター検査工程
次に、ステップS107において、慣性計測装置1に角速度範囲±100dpsの既知の角速度を印加し、第3パラメーターP3を用いて補正演算し補正演算部18から出力された角速度データを得る。既知の角速度値と補正後の角速度データとを比較し、所望の検査誤差以内であるか検査する。
【0035】
尚、本実施形態では、既知の角速度を慣性計測装置1に印加し、補正パラメーターを算出しているが、基準慣性計測装置を準備し、基準慣性計測装置と補正パラメーターを算出する慣性計測装置1とに検出範囲内の任意の角速度を印加し、基準慣性計測装置の出力した角速度データと、補正パラメーターを算出する慣性計測装置1の出力した角速度データと、から補正パラメーターを算出する方法でも構わない。
【0036】
以上で述べたように、本実施形態の慣性計測装置1は、パラメーター制御部20が補正パラメーター選択情報に基づいて、慣性情報の値の検出範囲に関連した複数の補正パラメーターから選択補正パラメーターを選択し、補正演算部18において、慣性情報の値の検出範囲に応じた選択補正パラメーターを用いて、角速度データや加速度データ等の慣性情報を補正する。そのため、補正パラメーターが、例えば、検出範囲が最大である場合の補正パラメーターだけの場合に比べ、検出範囲が狭い場合には、検出範囲の狭い場合の補正パラメーターを用いて補正することができるので、検出範囲が狭い場合において、慣性情報を高精度に補正することができる。従って、1個の慣性計測装置1で、慣性情報の値の検出範囲の全ての範囲を高精度に検出することができる。
【0037】
尚、本実施形態では、角速度の値の検出範囲に応じて、角速度データを補正しているが、これに限定されることはなく、加速度の値の検出範囲に応じて、加速度データを補正しても構わない。また、角速度及び加速度の値の検出範囲に応じて、角速度データ又は加速度データを補正しても構わない。また、角速度及び加速度の値の検出範囲に応じて、角速度データ及び加速度データを補正しても構わない。
【0038】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る慣性計測装置1aについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0039】
本実施形態の慣性計測装置1aは、第1実施形態の慣性計測装置1に比べ、パラメーター制御部20aが信号処理部16から出力される慣性情報に基づいて、複数の補正パラメーターから選択補正パラメーターを選択すること以外は、第1実施形態の慣性計測装置1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0040】
補正演算部18は、
図4に示すように、信号処理部16から出力される慣性情報である角速度データに基づいて、パラメーター制御部20aが複数の補正パラメーターから選択した選択補正パラメーターを用いて、角速度データ及び加速度データの補正処理を行う。
【0041】
パラメーター制御部20aは、信号処理部16から出力される角速度データに基づいて、記憶部22に記憶された複数の補正パラメーターの中から、角速度データに対応する選択補正パラメーターを選択し、補正演算部18に設定する。
【0042】
具体的には、
図5に示すように、ステップS21において、信号処理部16からの角速度データを検出する。ステップS22では、検出した角速度である想定角速度Dがy<Dの場合、ステップS23において、記憶部22から第1パラメーターP1を選択し、補正演算部18に設定する。尚、yは、例えば、±250dpsであり、第1パラメーターP1は、例えば、角速度の値の検出範囲が±500dpsの場合の補正パラメーターである。
【0043】
また、想定角速度Dがx≦D≦yの場合、ステップS24において、記憶部22から第2パラメーターP2を選択し、補正演算部18に設定する。尚、xは、例えば、±100dpsであり、第2パラメーターP2は、例えば、角速度の値の検出範囲が±250dpsの場合の補正パラメーターである。
【0044】
また、想定角速度DがD<xの場合、ステップS25において、記憶部22から第3パラメーターP3を選択し、補正演算部18に設定する。尚、第3パラメーターP3は、例えば、角速度の値の検出範囲が±100dpsの場合の補正パラメーターである。
【0045】
このような構成とすることで、本実施形態の慣性計測装置1aは、慣性情報である信号処理部16から出力される角速度データに基づいて、自動的に角速度データに応じた最適な選択補正パラメーターを選択することができるので、より正確に角速度データを補正することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、信号処理部16から出力される角速度データに基づいて、角速度データを補正しているが、これに限定されることはなく、信号処理部16から出力される角速度データに基づいて、加速度データを補正しても構わない。また、信号処理部16から出力される加速度データに基づいて、角速度データを補正しても構わない。また、信号処理部16から出力される角速度データ及び加速度データに基づいて、角速度データや加速度データを補正しても構わない。
【0047】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る慣性計測装置1bについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0048】
本実施形態の慣性計測装置1bは、第1実施形態の慣性計測装置1に比べ、パラメーター制御部20bが通信部24からの外部情報に基づいて、複数の補正パラメーターから選択補正パラメーターを選択すること以外は、第1実施形態の慣性計測装置1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0049】
補正演算部18は、
図6に示すように、通信部24からの外部情報であるPulse信号に基づいて、パラメーター制御部20bが複数の補正パラメーターから選択した選択補正パラメーターを用いて、角速度データ及び加速度データの補正処理を行う。なお、Pulse信号とは、例えば、慣性計測装置1bを搭載した移動体の加速度を計測した加速パルス信号や移動体に取り付けたGPSから出力するPPS(Pulse Per Second)信号である。
【0050】
パラメーター制御部20bは、通信部24からの外部情報であるPulse信号に基づいて、記憶部22に記憶された複数の補正パラメーターの中から、Pulse信号に対応する選択補正パラメーターを選択し、補正演算部18に設定する。
【0051】
具体的には、
図7に示すように、ステップS51において、通信部24からのPulse信号から加速度を検出する。ステップS52では、検出した加速度である想定加速度EがE<xの場合、ステップS53において、記憶部22から第1パラメーターP1を選択し、補正演算部18に設定する。尚、xは、例えば、1Gであり、第1パラメーターP1は、例えば、角速度の値の検出範囲が±500dpsの場合の補正パラメーターである。
【0052】
また、また、想定加速度Eがx≦E≦yの場合、ステップS54において、記憶部22から第2パラメーターP2を選択し、補正演算部18に設定する。尚、yは、例えば、5Gであり、第2パラメーターP2は、例えば、角速度の値の検出範囲が±250dpsの場合の補正パラメーターである。
【0053】
また、また、想定加速度Eがy<Eの場合、ステップS55において、記憶部22から第3パラメーターP3を選択し、補正演算部18に設定する。尚、第3パラメーターP3は、例えば、角速度の値の検出範囲が±100dpsの場合の補正パラメーターである。
【0054】
このような構成とすることで、本実施形態の慣性計測装置1bは、外部情報であるPulse信号から、自動的にPulse信号に応じた最適な選択補正パラメーターを選択することができるので、より正確に角速度データを補正することができる。
【0055】
尚、本実施形態では、外部情報であるPulse信号に基づいて、角速度データを補正しているが、これに限定されることはなく、Pulse信号に基づいて、加速度データを補正しても構わない。また、Pulse信号に基づいて、角速度データと加速度データとの両方を補正しても構わない。
【0056】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る慣性計測装置1cについて、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0057】
本実施形態の慣性計測装置1cは、第1実施形態の慣性計測装置1に比べ、補正演算部18cの構成が異なり、パラメーター制御部20cが通信部24からの外部情報に基づいて、選択補正パラメーターとして少なくとも2つの補正パラメーターを選択し、選択された補正パラメーターにそれぞれ、重み係数切換部26で設定する重み係数を掛けて、足し算すること以外は、第1実施形態の慣性計測装置1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0058】
慣性計測装置1cは、
図8に示すように、第1補正演算部181、第2補正演算部182、及び第3補正演算部183を有する補正演算部18cと、パラメーター制御部20c、と、重み係数切換部26と、を備えている。パラメーター制御部20cは、通信部24からの外部情報であるPulse信号に基づいて、選択補正パラメーターとして少なくとも2つの補正パラメーターを選択し、選択された補正パラメーターにそれぞれ重み係数Rを掛けて、慣性情報を補正演算し、補正演算した結果を足し算することで、慣性情報の補正処理を行う。なお、Pulse信号とは、例えば、慣性計測装置1cを搭載した自動車t等の移動体の速度を計測した車速パルス信号である。また、本実施形態では、3つの補正パラメーターを選択した場合を一例として挙げ、説明する。
【0059】
第1補正演算部181は、パラメーター制御部20cで選択された第1パラメーターP1に重み係数切換部26で設定する重み係数Rを掛けた補正パラメーターを用いて、慣性情報を補正演算する。
【0060】
第2補正演算部182は、パラメーター制御部20cで選択された第2パラメーターP2に重み係数切換部26で設定する重み係数Rを掛けた補正パラメーターを用いて、慣性情報を補正演算する。
【0061】
第3補正演算部183は、パラメーター制御部20cで選択された第3パラメーターP3に重み係数切換部26で設定する重み係数Rを掛けた補正パラメーターを用いて、慣性情報を補正演算する。
【0062】
パラメーター制御部20cは、記憶部22に記憶された複数の補正パラメーターの中から選択した第1パラメーターP1に重み係数切換部26で設定する第1パラメーターP1に対応する重み係数Rを掛け、第1補正演算部181に設定する。
【0063】
パラメーター制御部20cは、記憶部22に記憶された複数の補正パラメーターの中から選択した第2パラメーターP2に重み係数切換部26で設定する第2パラメーターP2に対応する重み係数Rを掛け、第2補正演算部182に設定する。
【0064】
パラメーター制御部20cは、記憶部22に記憶された複数の補正パラメーターの中から選択した第3パラメーターP3に重み係数切換部26で設定する第3パラメーターP3に対応する重み係数Rを掛け、第3補正演算部183に設定する。
【0065】
重み係数切換部26は、通信部24からの外部情報であるPulse信号に基づいて、第1パラメーターP1に対する重み係数R、第2パラメーターP2に対する重み係数R、及び第3パラメーターP3に対する重み係数Rを切換える。
【0066】
補正演算部18cにおける慣性情報の補正処理は、
図9に示すように、先ず、ステップS31において、通信部24からのPulse信号から速度を検出する。次に、ステップS32において、検出した速度である想定速度Fに応じて条件分けをする。尚、xは、例えば、10Km/hであり、yは、例えば、80Km/hである。また、第1パラメーターP1は、例えば、角速度の値の検出範囲が±500dpsの場合の補正パラメーターであり、第2パラメーターP2は、例えば、角速度の値の検出範囲が±250dpsの場合の補正パラメーターであり、第3パラメーターP3は、例えば、角速度の値の検出範囲が±100dpsの場合の補正パラメーターである。
【0067】
想定速度FがF<xの場合、ステップS33において、重み係数切換部26で設定する重み係数R1(例えば、0.6)を掛けた第1パラメーターP1を用い第1補正演算部181で慣性情報を補正演算する。次に、ステップS34において、重み係数切換部26で設定する重み係数R2(例えば、0.3)を掛けた第2パラメーターP2を用い第2補正演算部182で慣性情報を補正演算する。ステップS35において、重み係数切換部26で設定する重み係数R3(例えば、0.1)を掛けた第3パラメーターP3を用い第3補正演算部183で慣性情報を補正演算する。その後、ステップS36において、第1補正演算部181の演算結果と、第2補正演算部182の演算結果と、第3補正演算部183の演算結果と、を足し算し、慣性情報の補正結果とする。
【0068】
想定速度Fがx≦F≦yの場合、ステップS37において、重み係数切換部26で設定する重み係数R4(例えば、0.2)を掛けた第1パラメーターP1を用い第1補正演算部181で慣性情報を補正演算する。次に、ステップS38において、重み係数切換部26で設定する重み係数R5(例えば、0.6)を掛けた第2パラメーターP2を用い第2補正演算部182で慣性情報を補正演算する。ステップS39において、重み係数切換部26で設定する重み係数R6(例えば、0.2)を掛けた第3パラメーターP3を用い第3補正演算部183で慣性情報を補正演算する。その後、ステップS40において、第1補正演算部181の演算結果と、第2補正演算部182の演算結果と、第3補正演算部183の演算結果と、を足し算し、慣性情報の補正結果とする。
【0069】
想定速度Fがy<Fの場合、ステップS41において、重み係数切換部26で設定する重み係数R7(例えば、0.1)を掛けた第1パラメーターP1を用い第1補正演算部181で慣性情報を補正演算する。次に、ステップS42において、重み係数切換部26で設定する重み係数R8(例えば、0.3)を掛けた第2パラメーターP2を用い第2補正演算部182で慣性情報を補正演算する。ステップS43において、重み係数切換部26で設定する重み係数R9(例えば、0.6)を掛けた第3パラメーターP3を用い第3補正演算部183で慣性情報を補正演算する。その後、ステップS44において、第1補正演算部181の演算結果と、第2補正演算部182の演算結果と、第3補正演算部183の演算結果と、を足し算し、慣性情報の補正結果とする。
【0070】
このような構成とすることで、本実施形態の慣性計測装置1cは、外部情報であるPulse信号から、自動車等の移動体の動きに応じて自動的に、選択補正パラメーターの重み係数Rを切換えることができるので、より正確に慣性情報を補正することができる。
【0071】
5.第5実施形態
次に、第5実施形態に係る慣性計測装置1,1a,1b,1cを備える移動体100について、
図10を参照して説明する。なお、以下の説明では、慣性計測装置1bを適用した構成を例示して説明する。
上記実施形態の慣性計測装置1bは、飛行装置の姿勢制御などにおいて効果的に用いることができ、移動体100として飛行装置の一例であるドローンを挙げて説明する。
【0072】
移動体100は、
図10に示すように、慣性計測装置1bと、加速度センサー114と、を備えている。
慣性計測装置1bは、通信部24からの外部情報である加速度センサー114からの加速度情報に基づいて、慣性計測装置1bの慣性情報の値の検出範囲に関連した複数の補正パラメーターから、加速度情報に対応した選択補正パラメーターを選択し、その選択補正パラメーターを用いて慣性情報を補正する。
そのため、移動体100がホバリングし低速の場合には、例えば、角速度は大きく変化しないので、検出範囲の狭い補正パラメーターを用いて角速度データを補正し、移動体100が高速で移動している場合には、例えば、角速度は大きく変化する可能性があるので、検出範囲の広い補正パラメーターを用いて角速度データを補正することができる。従って、移動体100の姿勢制御を精度良く行うことができる。
【0073】
本実施形態では、移動体100からの加速度情報に基づいて、自動的に慣性情報に応じた最適な選択補正パラメーターを選択することができるので、より正確に慣性情報を補正することができ、移動体100の姿勢制御などにおいて効果的である。
【0074】
6.第6実施形態
次に、第6実施形態に係る慣性計測装置1,1a,1b,1cを備える移動体600について、
図11及び
図12を参照して説明する。なお、以下の説明では、慣性計測装置1を適用した構成を例示して説明する。
上記実施形態の慣性計測装置1は、建設機械の姿勢制御などにおいて効果的に用いることができ、移動体600として建設機械の一例である油圧ショベルを挙げて説明する。
【0075】
移動体600は、
図11に示すように、車体が下部走行体612と、下部走行体612上に旋回可能に搭載された上部旋回体611と、で構成され、上部旋回体611の前部側に上下方向に回動可能な複数の部材で構成された作業機構620が設けられている。上部旋回体611には、不図示の運転席が設けられ、運転席には、作業機構620を構成する各部材を操作する不図示の操作装置が設けられている。そして、上部旋回体611には、上部旋回体611の傾斜角を検出する傾斜センサーとして機能する上記実施形態の慣性計測装置1が配置されている。
【0076】
作業機構620は、複数の部材として、上部旋回体611の前部側に俯仰動可能に取付けられたブーム613と、ブーム613の先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム614と、アーム614の先端側に回動可能に取付けられたバケットリンク616と、アーム614及びバケットリンク616の先端側に回動可能に取付けられたバケット615と、ブーム613を駆動するブームシリンダー617と、アーム614を駆動するアームシリンダー618と、バケット615をバケットリンク616を介して駆動するバケットシリンダー619と、を備えている。
【0077】
ブーム613の基端側は、上部旋回体611に上下方向に回動可能に支持され、ブームシリンダー617の伸縮によってブーム613が上部旋回体611に対して相対的に回転駆動される。そして、ブーム613には、ブーム613の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能する慣性計測装置103が配置されている。
【0078】
ブーム613の先端側には、アーム614の一端側が回転可能に支持され、アームシリンダー618の伸縮によってアーム614がブーム613に対して相対的に回転駆動される。アーム614には、アーム614の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能する慣性計測装置102が配置されている。
【0079】
アーム614の先端側には、バケットリンク616とバケット615とが回動可能に支持されていて、バケットシリンダー619の伸縮に応じてバケットリンク616がアーム614に対して相対的に回転駆動され、それに連動してバケット615がアーム614に対して相対的に回転駆動される。そして、バケットリンク616には、バケットリンク616の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能する慣性計測装置101が配置されている。
【0080】
慣性計測装置101,102,103は、作業機構620の各部材や上部旋回体611に作用する角速度、及び加速度の少なくともいずれかを検出することができる。また、慣性計測装置101,102,103は、
図12に示すように、直列的に接続され、検出信号を演算装置630に送信することができる。このように、慣性計測装置101,102,103を直列接続することにより、可動領域内における検出信号を送信するための配線数を減らし、コンパクトな配線構造を得ることができる。コンパクトな配線構造により、配線の敷設方法の選択が容易となり、配線の劣化や損傷などの発生を低減させることが可能となる。
【0081】
更に、移動体600には、
図12に示すように、上部旋回体611の傾斜角や作業機構620を構成するブーム613、アーム614、バケット615の位置姿勢を演算する演算装置630が設けられている。
図12に示すように、演算装置630は、姿勢推定装置631と制御装置632とを含む。姿勢推定装置631は、慣性計測装置1,101,102,103の出力信号に基づいて、移動体600の姿勢情報を推定する。制御装置632は、姿勢推定装置631が推定した移動体600の姿勢情報に基づいて、移動体600の姿勢の制御を行う。具体的には、演算装置630は、各慣性計測装置1,101,102,103からの各種検出信号を入力し、各種検出信号に基づいてブーム613、アーム614、バケット615の位置姿勢又は姿勢角や上部旋回体611の傾斜状態を演算する。演算されたブーム613、アーム614、バケット615の姿勢角を含む位置姿勢信号や上部旋回体611の姿勢角を含む傾斜信号、例えばバケット615の位置姿勢信号は、運転席のモニター装置(図示せず)の表示、又は、作業機構620や上部旋回体611の動作を制御するためのフィードバック情報に用いられる。
【0082】
なお、上記実施形態の慣性計測装置1が用いられる建設機械としては、上記に例示した油圧ショベル(ユンボ、バックホー、パワーショベル)の他にも、例えば、ラフテレーンクレーン(クレーン車)、ブルドーザー、掘削機・積み込み機、ホイールローダー、高所作業車(リフト車)などがある。
【0083】
本実施形態によれば、慣性計測装置1により、姿勢の情報を高精度に求めることができるため、移動体600の適切な姿勢制御を実現できる。また、移動体600によれば、コンパクトな慣性計測装置1を装着しているため、例えば、バケットリンク616などの極めて限られた狭い領域内であっても、慣性計測装置1の設置箇所毎に、複数の慣性計測装置1を直列接続(マルチ接続)してコンパクトに配置したり、各箇所に設置されている慣性計測装置1同士をケーブルで直列的に接続するケーブルの引き回しをコンパクトにしたりすることが可能な建設機械を提供することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、慣性計測装置1が用いられる移動体として、農業機械等の四輪自動車や建設機械を例にとり説明したが、これら以外にも、オートバイ、自転車、電車、飛行機、二足歩行ロボット、又は、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、ドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)などがある。
【0085】
また、慣性計測装置1が用いられる例としては、移動体以外に、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル機器やスタビライザー等を有するカメラ、ビデオカメラ等の電子機器等が挙げられる。
【符号の説明】
【0086】
1,1a,1b,1c…慣性計測装置、12…角速度センサー、14…加速度センサー、16…信号処理部、18…補正演算部、20…パラメーター制御部、22…記憶部、24…通信部、26…重み係数切換部、100,600…移動体。