(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】振幅変調回路および半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H03C 1/08 20060101AFI20241112BHJP
H03C 1/40 20060101ALI20241112BHJP
H03G 3/30 20060101ALI20241112BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H03C1/08
H03C1/40
H03G3/30 B
H04B1/04 R
(21)【出願番号】P 2020188075
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓二
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-158717(JP,U)
【文献】特開2016-131289(JP,A)
【文献】特開昭63-301607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03C 1/00-1/62
H03G 1/00-3/34
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ主信号を入力する第1の入力端子及び第2の入力端子と、
副信号を入力する第3の入力端子と、
前記副信号によって振幅変調された前記主信号を出力する第1の出力端子及び第2の出力端子と、
電流源と、
制御端子が前記第1の入力端子に接続され、一方の電流端子が前記第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が前記電流源を介して第1の電源に接続された第1のトランジスタと、
制御端子が前記第2の入力端子に接続され、一方の電流端子が前記第2の出力端子に接続され、他方の電流端子が前記第1のトランジスタの他方の電流端子に接続されると共に前記電流源を介して前記第1の電源に接続された第2のトランジスタと、
前記第1の出力端子と第2の電源との間に接続された第1の抵抗素子と、
前記第2の出力端子と前記第2の電源との間に接続された第2の抵抗素子と、
一方の電流端子が前記第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が前記第2の出力端子に接続され、制御端子が前記第3の入力端子に接続されたMOSトランジスタと、
を備え、
前記MOSトランジスタが非飽和領域で動作するように構成され、
前記MOSトランジスタのソース-ドレイン間抵抗が、前記第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子の抵抗値よりも大きい、
振幅変調回路。
【請求項2】
前記MOSトランジスタのバックゲートに前記第1の出力端子の電位と前記第2の出力端子の電位との間の中間電位を印加する中間電位生成回路と、
前記中間電位を基準にバイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路と、
前記バイアス電圧
に前記副信号
を重畳して前記MOSトランジスタの前記制御端子に印加する重畳回路と、
をさらに備える請求項1に記載の振幅変調回路。
【請求項3】
前記中間電位生成回路は、
前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の間に接続され、前記中間電位を生成する直列抵抗回路を有する、
請求項2に記載の振幅変調回路。
【請求項4】
前記バイアス電圧生成回路は、
制御端子が一方の電流端子に接続された第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタの前記一方の電流端子に接続され、前記第3のトランジスタを介して前記中間電位生成回路の出力に接続される電流源と、
を有する、
請求項2又は請求項3に記載の振幅変調回路。
【請求項5】
前記重畳回路は、前記第3の入力端子と前記MOSトランジスタの前記制御端子との間に接続されたキャパシタと、
前記バイアス電圧生成回路の出力と前記MOSトランジスタの前記制御端子との間に接続された抵抗素子と、
を有する、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の振幅変調回路。
【請求項6】
前記副信号によって生じる前記MOSトランジスタの前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間の電圧変化が、前記副信号によって生じる前記MOSトランジスタの前記制御端子の電圧変化より小さい、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の振幅変調回路。
【請求項7】
前記主信号のナイキスト周波数は、前記副信号の主たる周波数の1000倍以上である、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振幅変調回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の振幅変調回路と、
前記振幅変調回路にカスケード接続された差動増幅回路と、
を備える半導体集積回路。
【請求項9】
前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子から出力される前記副信号
によって振幅変調
された前記主信号の振幅を検出し、前記振幅を基に前記振幅変調回路の利得を調整する自動利得制御回路をさらに備える、
請求項8に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振幅変調回路および半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、データを伝送する際の変調方式として、振幅変調(Amplitude Modulation)が用いられている。振幅変調は、主信号の振幅を副信号で変調する変調方式であり、この変調方式によって振幅変調信号が生成される。例えば、振幅変調信号を生成する回路としては、下記特許文献1に記載の増幅回路が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振幅変調を行う回路においては、線形性の向上が求められる。線形性の低い回路で振幅変調を行うと、振幅変調信号に副信号の高調波成分が重畳され、副信号が正しく伝送されなくなる傾向にある。例えば、第1の周波数ω1の正弦波と第2の周波数ω2の正弦波とを含む副信号を基に線形性の低い回路を用いて主信号を振幅変調しようとした場合には、3次相互変調歪により、周波数ω1、ω2の他に周波数(2×ω1-ω2)及び周波数(2×ω2-ω1)の2つの周波数成分が生じる。周波数ω1と周波数ω2とが近い場合は、これらの3次相互変調歪の周波数成分が周波数ω1と周波数ω2に近い値となる(例えば、ω1=1MHz、ω2=1.001MHzの場合には、3次相互変調歪により、0.999MHzと1.002MHzの周波数成分が生じる)。このため、線形性の低い回路で振幅変調を行うと、3次相互変調歪が大きくなり、本来無いはずの信号が受信側で誤って検出されるおそれが生じる。
【0005】
そこで、本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、高い線形性を有し、歪の低減された振幅変調信号を生成することが可能な振幅変調回路及びそれを含む半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一側面に係る振幅変調回路は、それぞれ主信号を入力する第1の入力端子及び第2の入力端子と、副信号を入力する第3の入力端子と、副信号によって振幅変調された主信号を出力する第1の出力端子及び第2の出力端子と、電流源と、制御端子が第1の入力端子に接続され、一方の電流端子が第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が電流源を介して第1の電源に接続された第1のトランジスタと、制御端子が第2の入力端子に接続され、一方の電流端子が第2の出力端子に接続され、他方の電流端子が第1のトランジスタの他方の電流端子に接続されると共に電流源を介して第1の電源に接続された第2のトランジスタと、第1の出力端子と第2の電源との間に接続された第1の抵抗素子と、第2の出力端子と第2の電源との間に接続された第2の抵抗素子と、一方の電流端子が第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が第2の出力端子に接続され、制御端子が第3の入力端子に接続されたMOSトランジスタと、を備え、MOSトランジスタが非飽和領域で動作するように構成され、MOSトランジスタのソース-ドレイン間抵抗が、第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子の抵抗値よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い線形性を有し、歪の低減された振幅変調信号を生成する回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る駆動回路200の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の振幅変調回路100の構成を示す回路図である。
【
図3】
図1の振幅変調回路100によって処理される信号の波形を示すグラフである。
【
図4】実施形態に係る光送信モジュール400の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る光送受信モジュール500の構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例に係る振幅変調回路100Aの構成を示す回路図である。
【
図7】変形例に係る振幅変調回路100Bの構成を示す回路図である。
【
図8】変形例に係る駆動回路200Aの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一側面に係る振幅変調回路は、それぞれ主信号を入力する第1の入力端子及び第2の入力端子と、副信号を入力する第3の入力端子と、副信号によって振幅変調された主信号を出力する第1の出力端子及び第2の出力端子と、電流源と、制御端子が第1の入力端子に接続され、一方の電流端子が第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が電流源を介して第1の電源に接続された第1のトランジスタと、制御端子が第2の入力端子に接続され、一方の電流端子が第2の出力端子に接続され、他方の電流端子が第1のトランジスタの他方の電流端子に接続されると共に電流源を介して第1の電源に接続された第2のトランジスタと、第1の出力端子と第2の電源との間に接続された第1の抵抗素子と、第2の出力端子と第2の電源との間に接続された第2の抵抗素子と、一方の電流端子が第1の出力端子に接続され、他方の電流端子が第2の出力端子に接続され、制御端子が第3の入力端子に接続されたMOSトランジスタと、を備え、MOSトランジスタが非飽和領域で動作するように構成され、MOSトランジスタのソース-ドレイン間抵抗が、第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子の抵抗値よりも大きい。
【0010】
上記一側面によれば、第1及び第2のトランジスタの一方の電流端子における電流のそれぞれが主信号によって変調されることにより、第1及び第2の出力端子から出力信号が出力される。また、第1のトランジスタの一方の電流端子と第2のトランジスタの一方の電流端子との間のMOSトランジスタの抵抗値が副信号に応じて増減し、その結果、主信号が副信号によって変調されて、第1及び第2の出力端子から副信号によって振幅変調された信号として出力される。ここで、MOSトランジスタが非飽和領域で動作し、かつ、MOSトランジスタのソース-ドレイン間抵抗が、負荷抵抗である第1及び第2の抵抗素子の抵抗値よりも大きくなるように構成されることにより、振幅変調回路の電圧利得が副信号に比例するようになる。その結果、線形性の高い振幅変調が実現され、歪の低減された振幅変調信号を生成することが可能となる。
【0011】
上記一側面においては、MOSトランジスタのバックゲートに第1の出力端子の電位と第2の出力端子の電位との間の中間電位を印加する中間電位生成回路と、中間電位を基準にバイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路と、バイアス電圧を副信号によって振幅変調してMOSトランジスタの制御端子に印加する重畳回路と、をさらに備える、ことが好適である。この場合、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準としたバイアス電圧が生成され、そのバイアス電圧を副信号によって振幅変調した信号がMOSトランジスタの制御端子に印加される。これにより、振幅変調回路の線形動作を安定して維持することができる。
【0012】
また、中間電位生成回路は、第1の出力端子及び第2の出力端子の間に接続され、中間電位を生成する直列抵抗回路を有する、ことも好適である。かかる構成を採れば、振幅変調信号のコモンモード電圧をMOSトランジスタのバックゲートに印加することができ、MOSトランジスタの基板バイアス効果を抑制することにより、閾値変動を安定して吸収することができる。
【0013】
さらに、バイアス電圧生成回路は、制御端子が一方の電流端子に接続された第3のトランジスタと、第3のトランジスタを介して中間電位生成回路の出力に接続される電流源と、を有する、ことも好適である。こうすれば、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準としたバイアス電圧が生成され、そのバイアス電圧をMOSトランジスタの制御端子に印加することができる。これにより、振幅変調回路の線形動作を安定して維持することができる。
【0014】
またさらに、重畳回路は、第3の入力端子とMOSトランジスタの制御端子との間に接続されたキャパシタと、バイアス電圧生成回路の出力とMOSトランジスタの制御端子との間に接続された抵抗素子と、を有する、ことも好適である。この場合、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準としたバイアス電圧を副信号によって振幅変調した信号を生成することができる。これにより、振幅変調回路の線形動作を安定して維持することができる。
【0015】
さらにまた、副信号によって生じるMOSトランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間の電圧変化が、副信号によって生じるMOSトランジスタの制御端子の電圧変化より小さい、ことも好適である。この場合、振幅変調回路の線形動作をより安定して維持することができる。
【0016】
さらに、主信号のナイキスト周波数は、副信号の主たる周波数の1000倍以上である、ことも好適である。こうすれば、振幅変調信号の包絡線が主信号の波形の影響を受けにくくなり、受信側にて副信号を容易に復調することが可能となる。
【0017】
本開示の他の側面に係る半導体集積回路は、上述した振幅変調回路と、振幅変調回路にカスケード接続された差動増幅回路と、を備える。
【0018】
上記他の側面によれば、上記一側面の振幅変調回路を備えているため、線形性に優れた広帯域な振幅変調が可能な、低消費電力かつ小面積かつ広帯域の回路を提供できる。
【0019】
上記他の側面は、第1の出力端子及び第2の出力端子から出力される副信号による振幅変調成分の振幅を検出し、振幅を基に振幅変調回路の利得を調整する自動利得制御回路をさらに備える、ことが好適である。かかる構成を採れば、半導体集積回路の入力振幅が変化しても、出力振幅の大きさを一定とすることが可能になる。これにより、振幅変調回路の出力振幅を小さく抑えることが可能となるため、振幅変調回路における振幅変調に関して線形動作範囲を拡大することができ、線形動作の安定性を向上させることができる。
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、実施形態に係る駆動回路200の構成を示すブロック図である。駆動回路200は、光送信モジュール等の光通信用のデバイスに内蔵され、例えば、SiGe BiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスで製造された2mm×4mmのサイズの半導体集積回路(IC)であり、入力信号を基に振幅変調信号である差動信号を生成、増幅、出力する。駆動回路200は、第1及び第2の入力端子130a,130b、第3の入力端子132、第1及び第2の出力端子131a,131b、振幅変調回路100と差動アンプ110とを含む入力バッファ115、及び出力バッファ120を有している。
【0022】
入力端子130a,130bは、振幅が同じで互いに位相が反転した二つの信号からなる差動信号である主信号の入力を受ける。入力端子132は、シングルエンド信号である副信号の入力を受ける。
【0023】
入力バッファ115は、入力された主信号を副信号で変調することにより振幅変調信号を生成し、この振幅変調信号を増幅して出力する。この入力バッファ115は、振幅変調回路100、及び振幅変調回路100にカスケード接続された差動アンプ(差動増幅回路)110により構成される。振幅変調回路100は、振幅変調信号を生成する。差動アンプ110は、振幅変調回路100から出力された振幅変調信号を増幅して出力バッファ120に向けて出力する。出力バッファ(差動増幅回路)120は、入力バッファ115にカスケード接続され、差動アンプ110から出力された出力信号を増幅し、増幅した出力信号(差動信号)を出力端子131a,131bから出力する。
【0024】
ここで、後述するように線形動作を実現するためには振幅変調回路100の出力振幅は小さいことが望まれるため、振幅変調回路100は、入力バッファ115内に設けられることが好ましい。さらに言えば、本実施形態のように入力バッファ115内に複数段のアンプが含まれる場合には、振幅変調回路100は入力バッファ115内の入力端子130a,130bにより近い段に設けられることが好ましい。これにより、増幅前の主信号を対象に振幅変調を行うことが可能となり、振幅変調回路100の出力振幅を小さくすることが可能となる。その結果、駆動回路200における振幅変調に関して線形動作範囲の拡大が可能となる。
【0025】
なお、駆動回路200の回路構成は適宜変更されてよく、差動アンプ110が省略されてもよいし、逆に他の差動アンプが追加されてもよい。また、主信号の伝達経路以外の経路において種々の他の回路が追加されてもよい。また、信号の伝達経路(チャネル)が1つの構成には限定されず、複数のチャネル(例えば、4つのチャネル)が並列に並ぶように構成されていてもよい。
【0026】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態にかかる振幅変調回路100の構成を説明する。
【0027】
図2は、
図1の振幅変調回路100の構成を示す回路図である。振幅変調回路100は、入力された差動信号である主信号の振幅を、入力された副信号を基に変調し、差動信号である振幅変調信号を生成する差動増幅回路であり、例えばSiGe BiCMOSプロセスを用いてSi基板上に形成された集積回路である。振幅変調回路100が搭載される集積回路の最大電源電圧は、例えば、3.3Vである。入力される主信号は、例えば、直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)で変調された信号点数が32点の32QAM信号であり、これらの信号の変調速度は100GBaudであり、これらの信号の最大振幅は差動で200mVである。入力される副信号は、例えば、周波数が1MHz、振幅が100mVのサイン波と、周波数が1.001MHz、振幅が100mVのサイン波との合成波であり、2つのサイン波の周波数差(例えば、1kHz)のうなり(ビート)を有する。出力される振幅変調信号の平均振幅(上側包絡線と下側包絡線のそれぞれの平均値の差)は、例えば差動で200mVである。なお、主信号として周波数が一定の搬送波(キャリア)を使用し、副信号としてデータ信号(ベースバンド信号)を使用することも可能である。
【0028】
図3には、振幅変調回路100によって処理される信号の波形の一例を示す。
図3の(a)部には主信号の波形を示し、
図3の(b)部には副信号の波形を示し、
図3の(c)部には振幅変調信号の波形を示す。このように、振幅変調信号は、主信号の振幅を副信号によって変調した波形を有する。ここで、振幅変調信号における一方の包絡線の電圧の平均値をVavg、その包絡線の電圧振幅をVampとすると、この振幅変調信号の変調度はVamp/Vavgで定義される。本実施形態における振幅変調信号の波形の例としては、Vavg=100mV、Vamp=10mV、変調度0.1(10%)である。
【0029】
なお、主信号のナイキスト周波数(変調速度の1/2の周波数。本実施形態では50GHz)は、副信号の周波数(本実施形態では1MHzまたは1.001MHz)に比べて1,000倍以上高いことが好ましい。この場合、副信号の周期程度の時間範囲において、主信号の上側包絡線と下側包絡線がほぼ直線状になる。その結果、主信号は実質的に一定振幅の信号とみなすことができ、振幅変調信号の包絡線が主信号の波形の影響を受けにくくなる。
【0030】
図2に戻って、振幅変調回路100は、バイポーラトランジスタ10a,10b,20a,20b,40、抵抗素子30a,30b,31a,31b、インダクタ35a,35b、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ50、副信号が入力される入力端子(第3の入力端子)61、主信号が入力される入力端子(第1及び第2の入力端子)62a,62b、振幅変調信号を出力する出力端子(第1及び第2の出力端子)63a,63b、接地端子70、バイアス供給端子21,41、及び電源端子80a,80bを含む。
【0031】
以下、振幅変調回路100を構成する構成要素について説明する。
【0032】
バイポーラトランジスタ(第1及び第2のトランジスタ)10a,10bにおいては、それぞれのベース(制御端子)が入力端子62a,62bに、それぞれのコレクタ(一方の電流端子)がバイポーラトランジスタ20a,20bのエミッタに、それぞれのエミッタ(他方の電流端子)が抵抗素子30a,30bの一端に接続されている。バイポーラトランジスタ10a,10bは、主信号によってコレクタ電流を変調する。バイポーラトランジスタ10a,10bは、例えば、NPN型のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)であってよい。また、バイポーラトランジスタ10a,10bは、例えば、n型のMOSトランジスタに置き換えられてもよい。その場合は、MOSトランジスタにおいて、ゲートが制御端子、ドレインが一方の電流端子、ソースが他方の電流端子として機能する。
【0033】
抵抗素子30a,30bは、それぞれ、その一端がバイポーラトランジスタ10a,10bのエミッタに接続され、その他端がバイポーラトランジスタ40のコレクタに接続されている。これらの抵抗素子30a,30bは、ディジェネレーション抵抗であり、振幅変調回路100の線形入力範囲の拡大を可能とする。抵抗素子30a,30bは、例えば、n型のポリSi抵抗である。なお、振幅変調回路100の線形入力範囲が使用範囲に比べて十分広い場合には、抵抗素子30a,30bは、省略されてよい。
【0034】
バイポーラトランジスタ20a,20bにおいては、それぞれのベースがバイアス供給端子21に、それぞれのエミッタがバイポーラトランジスタの10a,10bのコレクタに、それぞれのコレクタが一対の出力端子63a,63bに接続されている。これらのバイポーラトランジスタ20a,20bは、バイアス供給端子21に供給された直流電圧がベースに印加されたカスコードトランジスタである。このような構成により、バイポーラトランジスタ10a,10bのコレクタにおける電圧振幅が抑えられ、バイポーラトランジスタ10a,10bのミラー容量が小さくなるため、振幅変調回路100の広帯域化が可能となる。また、バイポーラトランジスタ20a,20bの存在によって振幅変調回路100の出力抵抗が大きくなるため、振幅変調回路100の電圧利得の向上が可能となる。なお、バイポーラトランジスタ20a,20bは、例えば、n型のMOSトランジスタに置き換えられてもよい。また、振幅変調回路100の帯域が十分広い場合には、バイポーラトランジスタ20a,20bは省略されてもよい。
【0035】
抵抗素子(第1及び第2の抵抗素子)31a,31bにおいては、それぞれの一端が出力端子63a,63bに接続され、それぞれの他端がインダクタ35a,35bを介して第2の電源電位(例えば、3.3V)を有する電源端子80a,80bに接続された、振幅変調回路100の負荷である。抵抗素子31a,31bは、例えば、n型のポリSi抵抗を使用することができ、それぞれの抵抗値は60Ωである。
【0036】
インダクタ35a,35bは、それぞれ、抵抗素子31a,31bと電源端子80a,80bとの間に接続されており、振幅変調回路100の負荷である。これらの素子により、振幅変調回路100の高周波利得が向上し、動作領域の広帯域化が可能となる。これらのインダクタ35a,35bとして、配線をスパイラル状にレイアウトしたスパイラルインダクタを使用することができる。なお、抵抗素子31a,31bとインダクタ35a,35bの接続位置は入れ替えられてもよい。また、振幅変調回路100の動作帯域が使用範囲に比べて十分広い場合には、インダクタ35a,35bは省略されてもよい。
【0037】
バイポーラトランジスタ40においては、そのコレクタが抵抗素子30a,30bの他端に、そのベースがバイアス供給端子41に、そのエミッタが0Vの接地電位(第1の電源電位)を有する接地端子70に接続され、電流源として機能する。バイポーラトランジスタ40により、バイアス供給端子41の電圧に応じた電流が生成され、その電流値は例えば8mAである。なお、バイアス供給端子41に、ダイオード接続された別のバイポーラトランジスタのベース電圧を印加するように構成されてもよい。この場合、カレントミラーが構成され、バイポーラトランジスタ40の生成する電流量の調整が容易となる。また、バイポーラトランジスタ40の代わりに、MOSトランジスタが使用されてもよい。また、バイポーラトランジスタ40に替えて、抵抗素子、あるいは、抵抗素子とインダクタとを含む回路が用いられてもよい。
【0038】
MOSトランジスタ50は、ドレイン(一方の電流端子)が出力端子63aに接続され、ソース(他方の電流端子)が出力端子63bに接続され、ゲート(制御端子)が入力端子61に接続されたn型のMOSトランジスタである。MOSトランジスタ50として、p型MOSトランジスタに比べて移動度が高いn型のMOSトランジスタを用いることにより、同じ変調度を実現するにあたってMOSトランジスタ50を小型化することができる。これにより、寄生容量が小さくなるため、振幅変調回路100の動作領域の広帯域化が可能となる。ただし、MOSトランジスタ50としてn型のMOSトランジスタを用いた場合は、ゲート電圧が上昇すると、ドレイン・ソース間抵抗が減少する結果、振幅変調信号の振幅が減少する。すなわち、振幅変調回路100は、反転増幅の機能を有することとなる。逆に、MOSトランジスタ50としてp型のMOSトランジスタを用いた場合には、ゲート電圧が上昇すると振幅変調信号の振幅が増大する結果、振幅変調回路100は、非反転増幅の機能を有することとなる。なお、MOSトランジスタ50は、複数のMOSトランジスタを含んでもよい。
【0039】
上記構成の振幅変調回路100は、線形動作を実現するために以下の3つの条件を満たすように設定されている。
【0040】
1つ目の条件は、MOSトランジスタ50が非飽和領域(トライオード領域、三極菅領域)で動作するように設定されることである。この条件は、MOSトランジスタ50としてn型のMOSトランジスタが使用されている本実施形態では、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間電圧をVds、ゲート・ソース間電圧をVgs、ゲート・ドレイン間電圧をVgd、閾値電圧をVthとすると、下記式で表わされる。
【数1】
上記式中、max{Vgs,Vgd}は、電圧Vgsと電圧Vgdのうち大きい方の値である。本実施形態では、MOSトランジスタ50が差動増幅器の出力端子間に接続された対称構造になっているため、MOSトランジスタ50の動作領域は、電圧Vgsと電圧Vgdのうちの大きい方と、電圧Vdsの絶対値との大小関係で決まる。
【0041】
ここで、計算の簡略化のためVdsが0以上の領域について考える。なお、振幅変調回路100は対称回路で差動信号を増幅する構成であるため、Vdsが0以下の場合も同じ結論が得られる。Vdsが0以上の場合は、式(1)は次のように表される。
【数2】
本実施形態の数値例では、振幅変調信号の最大振幅がVavg+Vamp/2=105mVであり、副信号(振幅が100mVの異なる周波数の合成波)の最大振幅が200mVである。この場合、例えば、閾値電圧Vth=250mVの場合、上記式(1)’の条件は、Vgをゲート電圧、Vsをソース電圧とすると、
105mV<(Vg-200mV/2)-(Vs-105mV/2)-250mV
の関係となる。この関係から、電圧Vgsの直流バイアス電圧が402.5mV以上であれば、上記式(1)’の条件が成立することとなる。
【0042】
2つ目の条件は、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間抵抗が、抵抗素子31a,31bの抵抗値よりも十分大きいという条件である。この条件は、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間抵抗をRmos、抵抗素子31a,31bの抵抗値をRloadとすると、下記式によって表される。
【数3】
本実施形態では、Rload=60Ωである。後述する近似が成立するために、抵抗値Rmosは抵抗値Rloadの10倍以上であることが好ましい。本実施形態では、Rload=60Ωであるので、Rmosは600Ω以上であることが条件とされる。
【0043】
3つ目の条件は、副信号によりMOSトランジスタ50のゲート電圧が変化する際において、ドレイン・ソース間電圧の変化ΔVds(すなわち、振幅変調信号の両側包絡線の振幅変化)が、ゲート電圧の変化ΔVgs(副信号の振幅)に比べて十分に小さいことである。すなわち、副信号によって生じるMOSトランジスタ50のドレイン・ソース間電圧の変化ΔVdsは、副信号によって生じるMOSトランジスタ50のゲート電圧の変化ΔVgsより小さい。この条件は、下記式で表わされる。
【数4】
後述する近似が成立するためには、上記式(3)の左辺の値は1/5以下であることが好ましい。本実施形態では、ΔVds=2×Vamp=20mV、ΔVgs=200mVであるから、ΔVds/ΔVgs=0.1であり、この条件が満たされている。なお、電圧変化ΔVdsは、電圧変化ΔVgsによる電圧変化であり、主信号の振幅変化による電圧変化ではない。
【0044】
なお、3つ目の条件を満たすためには、例えば、MOSトランジスタ50のゲート幅及びゲート長、抵抗素子31a,31bの抵抗値、等を調整して、上記式(3)を満たすようにすればよい。
【0045】
上記の3つの条件が成立する時の振幅変調回路100の負荷抵抗について評価する。
【0046】
まず、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間抵抗を計算する。MOSトランジスタ50のドレイン電流Idは、式(1)’が成立するとき、下記式によって表される。
【数5】
上記式(4)中のβは、移動度μ、ゲート酸化膜の単位面積のキャパシタンスCox、ゲート幅W、ゲート長Lを用いて、下記式のように表される。
【数6】
また、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間抵抗Rmosは、上記式(4)から、下記式によって求められる。
【数7】
ここでは、ΔVds=ΔVd-ΔVs=-2ΔVs、ΔVgs=ΔVg-ΔVsであり、ゲート電圧はドレイン・ソース間電圧と独立であることから求められる下記式の関係を用いた。
【数8】
次に、振幅変調回路100の電圧利得を計算する。上記式(2)が成立するとき、振幅変調回路の差動での負荷抵抗Rsumは、以下のように近似される。
【数9】
上記式(8)に式(6)を代入すると、振幅変調回路100の負荷抵抗Rsumは下記式によって計算される。
【数10】
上記式(9)を電圧Vgsで微分すると下記式が導かれる。
【数11】
上記式(3)の関係を基に式(10)は次のように近似される。
【数12】
上記式(11)は定数を表しているので、振幅変調回路100の負荷抵抗Rsumは、電圧Vgsに対して線形に変化する。さらに、振幅変調回路100の電圧利得はRsumに比例することから、振幅変調回路100の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとすると、以下のような関係が導かれる。
【数13】
上記式中、k及びCは定数、Vinは主信号、Vgsは副信号、Voutは振幅変調信号である。上記式(12)から振幅変調回路100の電圧利得(kVgs+C)が副信号Vgsに比例し、高調波成分が含まれないことが分かり、振幅変調回路100により線形性に優れた振幅変調が実現されることが分かる。
【0047】
図4には、本実施形態に係る光送信モジュール400の構成を示す。光送信モジュール400は、上述した駆動回路200と、光変調装置300とを含む。駆動回路200は、例えば、入力された四つの差動信号を振幅変調及び増幅して出力し、光変調装置300は、駆動回路200から出力された四つの差動信号に基づいて変調される光信号を生成し、例えば偏波多重QAM変調された1つの光信号を出力する。光送信モジュール400は、例えば、セラミックのパッケージに駆動回路200と光変調装置300を集積・実装した光モジュールであり、外形が例えば30mm×15mm×5mmである。上記構成の光送信モジュール400によれば、振幅変調回路100を搭載した駆動回路200が使用されているため、線形性に優れた広帯域な振幅変調が可能な、低消費電力かつ小面積の光送信モジュールが実現される。
【0048】
図5には、本実施形態に係る光送受信モジュール500の構成を示す。光送受信モジュール500は、上述した駆動回路200及び光変調装置300に加え、受信回路600と、受光装置700とを含む。受光装置700は、光伝送路を経由して外部から入力された光信号を受信し、例えば偏波多重QAM変調された光信号から、4つの信号(受光電流)を分離して出力する。受信回路600は、4つの受光電流を電圧に変換して増幅して出力する。上記構成の光送受信モジュール500によれば、振幅変調回路100を搭載した駆動回路200が使用されているため、線形性に優れた広帯域な振幅変調が可能な、低消費電力かつ小面積の光送受信モジュールが実現される。
【0049】
以上説明した本実施形態に係る振幅変調回路100によれば、バイポーラトランジスタ10a,10bのコレクタ電流のそれぞれが主信号によって変調されることにより、出力端子63a,63bから差動信号が出力される。また、バイポーラトランジスタ10aのコレクタとバイポーラトランジスタ10bのコレクタとの間のMOSトランジスタ50の抵抗値が副信号に応じて増減し、その結果、差動信号が副信号によって変調されて、出力端子63a,63bから振幅変調信号として出力される。ここで、MOSトランジスタ50が非飽和領域で動作し、かつ、MOSトランジスタ50のソース-ドレイン間抵抗が、負荷抵抗である抵抗素子31a,31bの抵抗値よりも大きくなるように構成されることにより、振幅変調回路100の電圧利得が副信号に比例するようになる。その結果、線形性の高い振幅変調が実現され、歪の低減された振幅変調信号を生成することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、差動増幅器の出力端子間に接続されたMOSトランジスタだけで振幅変調が可能であるため、消費電力が小さく、回路面積が小さいという効果も得られる。また、MOSトランジスタはバイポーラトランジスタに比較して寄生容量が小さいため、例えばギルバートセルを使用する場合に比べて、広帯域化が可能となる。すなわち、本実施形態により、線形性に優れた振幅変調が可能な、低消費電力かつ小面積かつ広帯域の振幅変調回路を提供することができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る振幅変調回路100においては、副信号が入力された際に、MOSトランジスタ50のドレイン・ソース間の電圧変化が、MOSトランジスタ50のゲート電圧の変化より小さくされ、1/5以下とされている。このような構成により、振幅変調回路100の線形動作をより一層安定して維持することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、主信号のナイキスト周波数が副信号の周波数の1000倍以上とされている。このように設定されることにより、振幅変調信号の包絡線が主信号の波形の影響を受けにくくなり、受信側にて副信号を容易に復調することが可能となる。
【0053】
本実施形態に係る駆動回路200によれば、振幅変調回路100を内蔵しているため、線形性に優れた振幅変調が可能な、低消費電力かつ小面積かつ広帯域の回路を提供できる。特に、振幅変調回路100が入力バッファ115に設けられているため、駆動回路200での振幅変調において線形動作範囲の拡大が可能となる。
【0054】
以上、好適な実施の形態において本開示の原理を図示し説明してきたが、本開示は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本開示は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0055】
図6には、変形例に係る振幅変調回路100Aの構成を示している。この振幅変調回路100Aの構成は、MOSトランジスタ50のゲートに印加するバイアス電圧を生成する回路が追加されている点が、上述した実施形態と異なる。
【0056】
すなわち、振幅変調回路100Aには、抵抗素子32a,32bを含む直列抵抗回路である中間電位生成回路32と、中間電位を基準にバイアス電圧を生成する、MOSトランジスタ56及び電流源44を含むバイアス電圧生成回路36と、バイアス電圧に副信号の交流成分を重畳する、キャパシタ34及び抵抗素子33を含む重畳回路37とが追加して設けられている。
【0057】
抵抗素子32a,32bは、振幅変調信号の出力端子63a,63b間に直列に接続され、それらの間の接続点である直列抵抗回路の出力がMOSトランジスタ50のバックゲートに接続され、その接続点に振幅変調信号の中間電位を生成してMOSトランジスタ50のバックゲートに印加する。これらの抵抗素子32a,32bは、振幅変調回路100の負荷抵抗を低下させないように、抵抗素子31a,31bに比べて抵抗値が10倍以上大きくされていることが好ましい。また、抵抗素子32a,32bの抵抗値は略等しいことが望ましい。
【0058】
MOSトランジスタ56は、ソース(一方の電流端子)が上記直列抵抗回路の出力に接続され、ゲート(制御端子)及びドレイン(他方の電流端子)が電流源44の一端に接続された、ダイオード接続されたMOSトランジスタである。MOSトランジスタ56は、MOSトランジスタ50と同種のトランジスタ、すなわち、n型のMOSトランジスタであることが好ましい。
【0059】
電流源44は、その一端がMOSトランジスタ56のドレイン及びゲートに接続され、その他端が第3の電源電位(例えば、3.3V)を有する電源端子80cに接続されている。この電流源44は、MOSトランジスタ56及び抵抗素子32a,32bを経由してバイポーラトランジスタ40に向けて流れる電流を生成する。これにより、MOSトランジスタ56のドレインに、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準にしたバイアス電圧が生成される。この電流源44は、例えば、MOSトランジスタで構成されるカレントミラー回路である。
【0060】
抵抗素子33及びキャパシタ34を含む重畳回路37は、ハイパスフィルタを構成する。詳細には、キャパシタ34は、入力端子61とMOSトランジスタ50のゲートとの間に接続され、抵抗素子33は、上記バイアス電圧生成回路36の出力とMOSトランジスタ50のゲートとの間に接続されている。これにより、MOSトランジスタ56のドレインに発生するバイアス電圧に入力端子61から入力された副信号の交流成分が重畳されて、交流成分が重畳されたバイアス電圧がMOSトランジスタ50のゲートに印加される。このハイパスフィルタの遮断周波数は、抵抗素子33の抵抗値をR、キャパシタ34のキャパシタンスをCとすると、1/(2πRC)で計算される。このキャパシタ34としては、例えば、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタを使用することができる。
【0061】
このような変形例に係る振幅変調回路100Aによれば、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準としたバイアス電圧が生成され、そのバイアス電圧に副信号の交流成分が重畳された信号がMOSトランジスタ50のゲートに印加される。これにより、振幅変調回路100Aの線形動作を安定して維持することができる。つまり、温度変動あるいはプロセスばらつき等によるMOSトランジスタ50の閾値変動を吸収することができる。例えば、温度変動あるいはプロセスばらつきによって、MOSトランジスタ50の閾値電圧が標準値からずれる場合があり、そのような場合には、振幅変調回路100Aが線形動作するための最適なバイアス電圧(MOSトランジスタ50のゲート直流電圧)もずれてしまう。本変形例では、ダイオード接続されたMOSトランジスタ56を用いてバイアス電圧を生成するため、閾値電圧の変動を吸収することが可能となる。これにより、振幅変調回路100Aの線形動作を安定して維持することができる。
【0062】
また、本変形例では、中間電位を発生させる直列抵抗回路の出力がバックゲートに接続されている。このような回路構成により、振幅変調信号のコモンモード電圧をMOSトランジスタ50のバックゲートに印加することができ、MOSトランジスタ50の基板バイアス効果を抑制することにより、MOSトランジスタ50の閾値変動をより安定して吸収することができる。なお、中間電位を発生させる直列抵抗回路の出力がバックゲートに接続されていなくてもよい。
【0063】
図7には、他の変形例に係る振幅変調回路100Bの構成を示している。この振幅変調回路100Bの構成は、MOSトランジスタ52としてp型MOSトランジスタが用いられており、それに対応して、MOSトランジスタ56に替えてp型MOSトランジスタであるMOSトランジスタ51が用いられている点が、
図6に示す変形例と異なる。また、電流源44は、MOSトランジスタ51のドレイン及びゲートと接地電位を有する接地端子71との間に接続され、電源端子80a,80bから抵抗素子32a,32b及びMOSトランジスタ51を経由して流れる電流を生成する。
【0064】
MOSトランジスタ52が非飽和領域(トライオード領域、三極菅領域)で動作するには、下記式(13)に示す条件を満たせばよい。なお、MOSトランジスタ52のドレイン・ソース間電圧をVds、ゲート・ソース間電圧をVgs、ゲート・ドレイン間電圧をVgd、閾値電圧をVthとする。
【数14】
【0065】
上記構成の振幅変調回路100Bによっても、振幅変調信号のコモンモード電圧を基準としたバイアス電圧が生成され、そのバイアス電圧に副信号の交流成分が重畳された信号がMOSトランジスタ50のゲートに印加される。これにより、振幅変調回路100Bの線形動作を安定して維持することができる。
【0066】
図8には、変形例に係る駆動回路200Aの構成を示している。この駆動回路200Aの構成は、自動利得制御機能を実現する自動利得制御回路140を有する点で上述した駆動回路200の構成と異なる。
【0067】
自動利得制御回路140は、入力端子130a,130bと出力端子131a,131bとの間に接続され、利得調整用の制御端子133を有する。この自動利得制御回路140は、入力バッファ115及び出力バッファ120によって増幅された振幅変調信号の振幅を検出し、その検出結果を基に、振幅変調回路100及び差動アンプ110の利得を調整するフィードバック信号を生成する。振幅変調回路100及び差動アンプ110は、フィードバック信号を受けて、その信号に応じて利得を調整する。
【0068】
振幅変調回路100における利得調整のための構成としては、例えば、抵抗素子30a,30bを可変抵抗とする構成が挙げられる。あるいは、バイポーラトランジスタ10a,10bのエミッタ間にMOSトランジスタを配置する構成も挙げられる。このような構成において、MOSトランジスタのゲート電圧を変化させるように動作させることにより、MOSトランジスタのドレイン・ソース間抵抗が変化し、振幅変調回路100の利得を調整することができる。
【0069】
上記変形例においては、制御端子133に、例えば、振幅設定電圧(直流電圧)が与えられ、振幅設定電圧の大きさにより駆動回路200Aの出力振幅の大きさを設定することができる。例えば、駆動回路200Aに入力される主信号の振幅が変化した場合でも、出力端子131a,131bにおける信号振幅を検出し、振幅設定電圧と比較してフィードバック信号の大きさを自動調整することにより、駆動回路200Aの出力振幅を一定とすることができる。
【0070】
上記変形例に係る駆動回路200Aによれば、駆動回路200Aの入力振幅が変化しても、出力振幅の大きさを一定とすることが可能になる。これにより、振幅変調回路100の出力振幅を小さく抑えることが可能となるため、振幅変調回路100における振幅変調に関して線形動作範囲を拡大することができ、線形動作の安定性を向上させることができる。
【0071】
なお、自動利得制御回路140による信号利得の検出箇所は適宜変更することができる。例えば、自動利得制御回路140は、振幅変調回路100の出力端子63a,63bにおける出力振幅を検出し、その検出結果を基に振幅変調回路100の利得を調整するように構成されてもよい。これにより、振幅変調回路100の出力振幅を直接的に制御することが可能となり、振幅変調の線形動作の安定性をさらに高めることができる。また、自動利得制御回路は複数備えられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10a,10b,20a,20b,40…バイポーラトランジスタ
21,41…バイアス供給端子
35a,35b…インダクタ
62a,62b,61,130a,130b,132…入力端子
63a,63b,131a,131b…出力端子
30a,30b,31a,31b,32a,32b,33…抵抗素子
32…中間電位生成回路
34…キャパシタ
36…バイアス電圧生成回路
37…重畳回路
44…電流源
50,51,52,56…MOSトランジスタ
70,71…接地端子
80a,80b,80c…電源端子
100,100A,100B…振幅変調回路
110…差動アンプ(差動増幅回路)
115…入力バッファ
120…出力バッファ(差動増幅回路)
133…制御端子
140…自動利得制御回路
200,200A…駆動回路
300…光変調装置
400…光送信モジュール
500…光送受信モジュール
600…受信回路
700…受光装置